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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】非水電解液及び非水電解液電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20220727BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20220727BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019550411
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2018040327
(87)【国際公開番号】W WO2019088097
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2017210134
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000157119
【氏名又は名称】関東電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏明
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511588(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047020(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/028567(WO,A1)
【文献】特開2008-135273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電解質と3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルとホスファゼン化合物とを含み、
ホスファゼン化合物が、下記一般式(I)で表される環状ホスファゼン化合物である、非水電解液。
【化1】
(式中、Rは、それぞれ独立してハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルチオ基及びアリールチオ基から選ばれる基を表し、pは、3又は4を表す。)
【請求項2】
3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル以外のフッ素化エステル化合物を更に含有する請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
前記3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル以外のフッ素化エステル化合物が、フルオロエチレンカーボネート又は酢酸2,2,2-トリフルオロエチルである、請求項に記載の非水電解液。
【請求項4】
ホスファゼン化合物の含有量が0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の非水電解液。
【請求項5】
ホスファゼン化合物の含有量が0.1質量%以上9質量%以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の非水電解液。
【請求項6】
更に、下記一般式(4)で表されるフッ素化鎖状エーテルを含む、請求項1~5の何れか1項に記載の非水電解液。
2i+1-b-O-C2j+1-k (4)
(式中、iは1~8の整数であり、jは1~8の整数であり、bは0から2i+1までのいずれかの整数であり、kは0から2j+1までのいずれかの整数であり、b及びkのうち少なくとも一方は1以上の整数である。)
【請求項7】
非水電解液中の全溶剤体積に対して、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルの含有量が30体積%以上である、請求項1~6の何れか1項に記載の非水電解液。
【請求項8】
非水電解液中の全溶剤体積に対して、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル以外のフッ素化エステル化合物の量が5体積%以上70体積%以下である、請求項又はに記載の非水電解液。
【請求項9】
正極と負極とを備え、請求項1~8の何れか1項に記載の非水電解液を含む非水電解液電池。
【請求項10】
一般式(I)におけるRがそれぞれ独立してハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基及びアルキルチオ基から選ばれる基を表す、請求項1~8の何れか1項に記載の非水電解液。
【請求項11】
一般式(I)におけるRのうち少なくとも一つがアルコキシ基である、請求項1~8の何れか1項に記載の非水電解液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解液及び非水電解液電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に用いる非水電解液には可燃性の有機溶剤を用いている。このため、電池からの漏液や内部短絡などによる発火などの問題が起こっている。そのような状況下、リチウムイオン二次電池の電池容量は増加傾向にあり、その安全を確保する技術が重要性を増している。
【0003】
リチウムイオン二次電池の非水電解液に用いることができる難燃剤として、フッ素化ホスファゼン等のホスファゼン化合物が有効であることが知られている(例えば特許文献1)。可燃性の高い鎖状カーボネートを用いた電解液では、十分な難燃効果を付与するためにホスファゼン化合物を高濃度に添加する必要がある。しかし、ホスファゼン化合物そのものはリチウム塩を溶解できない。このためホスファゼン化合物の添加量の増大により、電解液の導電率が低下し、これに伴って電池性能が低下するという課題がある。そのためホスファゼン化合物によっても、電池性能を保ったまま完全に不燃化することはできていなかった。
【0004】
非水電解液に用いる溶媒とホスファゼン化合物との組み合わせによる効果を見出そうとした取り組みもなされている。例えば燃焼性の低いフッ素化溶媒を組み合わせる方法などが提案されている(特許文献2、3)。
【0005】
また、特許文献4には、電解液に種々のフッ素化エステルを用いたリチウムイオン電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US2007172740 A1
【文献】US2015221987 A1
【文献】US2014038059 A1
【文献】US2010081062 A1
【発明の概要】
【0007】
しかしながら特許文献2及び3で用いられているフッ素化溶媒はフッ素を含有するゆえに粘度が高く、それが電池特性を悪化させるといった課題や、ホスファゼン化合物と組み合わせたときの難燃性がなお乏しいといった課題を有していた。
また、特許文献4に記載の電解液は、引火点や燃焼性では一般的に使用される非フッ素系の低粘性溶媒を用いた電解液と大きな差はなく、難燃性の改善という課題がなお存在していた。
【0008】
フッ素化溶媒といっても、その粘度、不燃性や難燃性などの物性は様々であるところ、本発明者は、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルを含有するリチウム塩含有電解液に、更に安全性を高めるためのホスファゼン化合物を添加したところ、ホスファゼン化合物の添加量が極めて少量であっても燃焼点の大幅な向上が見られ、しかも、非水電解液電池の出力特性を高いレベルに維持できることを見出した。すなわち、特定のフッ素化鎖状エステル化合物とフッ素化ホスファゼンの相乗効果によって極めて少量においても高い難燃効果が得られる上、電池特性との両立も図れることを見出した。
【0009】
本発明は上記知見に基づくものであり、リチウム電解質とフッ素化鎖状エステル化合物とホスファゼン化合物とを含み、フッ素化鎖状エステル化合物として3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルを含む、非水電解液を提供するものである。
【0010】
また本発明は、正極と負極とを備え、上記非水電解液を含む非水電解液電池を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0012】
(溶媒)
リチウムイオン電池に使用される電解液溶媒には、広い電位窓、低粘性、リチウム塩の溶解性等の種々の特性が求められる。本発明者は、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル(以下、FMPともいう)は、難燃性と粘度とのバランスが、リチウムイオン電池に用いる非水電解液に非常に適していること、このため、ホスファゼン化合物の添加量が少ない場合であっても高い難燃性を有するとともに、これを用いた非水電解液電池を出力特性に優れたものとすることができることを見出した。
これに対し、低粘性溶媒として従来検討されてきた、種々のフッ素化鎖状エステル化合物は、その難燃化のためには高いフッ素含有量が必要となる。このフッ素化に伴い、同時に粘度も上昇するため、従来のフッ素化鎖状エステル化合物は、不燃性と高い充放電特性とを両立することが難しかった。また例えばフッ素化エーテル化合物のみを用いる場合、不燃化するまでフッ素を導入した場合、リチウム塩の溶解度が低くなり、実用的ではない。
【0013】
FMPは、以下の化学式で表される化合物である。
【化1】
【0014】
非水電解液中の全溶剤体積に対して、FMPの体積割合は、30体積%以上であることが、好ましく、FMPによる難燃化効果及び電池特性の点で好ましい。この観点から、非水電解液中の全溶剤体積に対して、FMPの体積割合は、40体積%以上であることが特に好ましく、50体積%以上であることがとりわけ好ましい。非水電解液中の全溶剤体積に対して、FMPの体積割合は100体積%であってもよいが、別の溶剤成分を添加することによる電池特性向上効果や難燃性向上効果等を得る観点から、FMPの体積割合は95体積%以下であることが好ましい。
なお、本明細書中の体積比率は、25℃におけるものを指す。
【0015】
上述した通り、本発明の非水電解液は、FMP以外に他の溶剤成分を含有できる。そのような他の溶剤成分としては、エステル化合物、エーテル化合物、スルホン化合物、リン酸誘導体やホスホン酸誘導体、ニトリル化合物等が挙げられ、非フッ素化溶媒とフッ素化溶媒のいずれを用いてもよい。
【0016】
本明細書中、エステル化合物は、-CO-O-基を含有する化合物であり、例えば、下記一般式(1)~(3)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
【0017】
【化2】
(Rは、フッ素化されているか若しくはフッ素化されていないアルキル基を表す。Rは、フッ素化されているか若しくはフッ素化されていないアルキル基、又は、フッ素化されているか若しくはフッ素化されていないアルコキシ基を表す。但し、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルを除く。)
なお、フッ素化された式(1)の化合物とは、R及びRの何れか少なくとも一方がフッ素化されている基である化合物をいう。
【0018】
【化3】
(R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素化されているか若しくはフッ素化されていないアルキル基を表す。nは1又は2を示し、R13及びR14が複数存在する場合、同一であってもよく異なっていてもよい。)
なお、フッ素化された式(2)の化合物とは、R11、R12、R13及びR14の何れか少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素化されている基である化合物をいう。
【0019】
【化4】
(R21、R22、R23、R24、R25及びR26は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、フッ素化されているか若しくはフッ素化されていないアルキル基を表す。mは1又は2を示し、R23及びR24が複数存在する場合、同一であってもよく異なっていてもよい。)
なお、フッ素化された式(3)の化合物とは、R21、R22、R23、R24、R25及びR26の何れか少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素化されている基である化合物をいう。
【0020】
、R、R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、R24、R25及びR26で表されるフッ素化されていないアルキル基としては、炭素数1~10のものとして、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルブチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0021】
これらのなかでも、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、炭素数1~2のアルキル基が更に好ましい。なかでも、直鎖状アルキル基が好ましい。特に好ましいものとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が最も好ましい。
【0022】
、R、R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、R24、R25及びR26で表されるフッ素化されているアルキル基としては、例えば上記のR等で表されるフッ素化されていないアルキル基の水素原子の1以上がフッ素原子に置換された基が挙げられ、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。これらのフッ素化されているアルキル基の中でも、炭素数1~4の基が好ましく、炭素数1~3の基がより好ましく、とりわけ、炭素数1~2の基が好ましい。
【0023】
で表されるフッ素化されていない若しくはフッ素化されているアルコキシ基としては、例えば上記のR及びR等で表されるフッ素化されていない若しくはフッ素化されているアルキル基の結合手に酸素原子が結合したアルコキシ基が挙げられる。これらのフッ素化されていない若しくはフッ素化されているアルコキシ基の中でも、炭素数1~12の基が好ましく、とりわけ、炭素数1~2の基が好ましい。置換基中に複数のエーテル結合が含まれていても良い。
【0024】
式(1)~(3)中の水素原子、つまり、R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、R24、R25及びR26で表される水素原子又はR、R、R11、R12、R13、R14、R21、R22、R23、R24、R25及びR26で表される上記の各基中の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。その場合の置換基としてはハロゲン原子、アミノ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基が挙げられ、これらの置換基中の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。
【0025】
式(1)~(3)で表される化合物がフッ素化物である場合、これらの化合物中のフッ素原子の数としては、1以上10以下が好ましく、2以上6以下がより好ましい。特に式(1)で表される化合物中のフッ素原子の数は1以上10以下が好ましく、3以上7以下がより好ましい。また特に式(2)又は式(3)で表される化合物中のフッ素原子の数は1以上6以下が好ましく、1以上3以下がより好ましい。
【0026】
式(1)で表される化合物は、鎖状エステルともいわれる。式(1)で表される化合物としては、低粘性として非水電解液電池の出力特性を高める点から、炭素数が3以上6以下のものが好ましく、3以上5以下のものがより好ましく、3以上4以下のものが特に好ましい。具体的な化合物としては以下のものが挙げられる。
式(1)で表される非フッ素化鎖状エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、及び酪酸ブチル等の鎖状カルボン酸エステル等が挙げられる。
また式(1)で表されるフッ素化鎖状エステルとしては、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、1-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、メチルフルオロメチルカーボネート、エチル(1-フルオロエチル)カーボネート、エチル(2-フルオロエチル)カーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、メチル(1-フルオロエチル)カーボネート、メチル(2-フルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、エチル(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、及び2,2,2-トリフルオロエチルプロピルカーボネート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメチルカーボネート等のフッ素化鎖状カーボネート;ギ酸2,2,2-トリフルオロエチル、酢酸2,2-ジフルオロエチル、酢酸2,2,2-トリフルオロエチル(以下、FEAという場合もある)、酢酸トリフルオロメチル、酢酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2-フルオロプロピオン酸メチル、2-フルオロプロピオン酸エチル、2,2-ジフルオロプロピオン酸メチル、2,2-ジフルオロプロピオン酸エチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸エチル、2,2-ジフルオロプロピオン酸2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸2,2,2-トリフルオロエチル、2,3,3,3-テトラフルオロプロピオン酸メチル、2,3,3,3-テトラフルオロプロピオン酸エチル、ペンタフルオロプロピオン酸メチル、ペンタフルオロプロピオン酸エチル、ヘプタフルオロ酪酸メチル、ジフルオロ酢酸メチル、ジフルオロ酢酸エチル、ジフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチル、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸トリフルオロメチル、トリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチル、トリフルオロ酢酸ペルフルオロエチル、トリフルオロ酢酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル等のフッ素化鎖状カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0027】
式(2)又は式(3)で表される化合物は、環状エステルともよばれる。
式(2)で表される化合物としては、炭素数3以上10以下のものが好ましく、特に炭素数3以上4以下のものが好ましい。具体的な化合物としては以下のものが挙げられる。
式(2)で表される非フッ素化環状エステルとしては、エチレンカーボネート(以下、ECという場合もある)、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネート等の環状カーボネートが挙げられる。
式(2)で表されるフッ素化環状エステルとしては、フルオロエチレンカーボネート(以下、FECという場合もある)、ジフルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0028】
式(3)で表される化合物としては、炭素数3以上10以下のものが好ましく、特に炭素数4以上6以下のものが好ましい。具体的な化合物としては以下のものが挙げられる。
式(3)で表される非フッ素化環状エステルとしては、γ-ブチロラクトン、2-メチル-γ-ブチロラクトン、3-メチル-γ-ブチロラクトン、4-メチル-γ-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、及びδ-バレロラクトンが挙げられる。
式(3)で表されるフッ素化環状エステルとしては、これらのラクトンの1以上の水素原子がフッ素原子に置換されたものが挙げられる。
【0029】
上記のエーテル化合物としては、具体的な化合物としては以下のものが挙げられる。
非フッ素化溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタンが挙げられる。
フッ素化溶媒としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル(2,2,3,3テトラフルオロプロピル)エーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルトリフルオロメチルエーテル、4,4,4,3,3,2,2-ヘプタフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、4,4,3,2,2-ペンタフルオロブチル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、ジフルオロメチル(1,1,1-トリフルオロエチル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル(3,3,3-トリフルオロエチル)エーテル及びジフルオロメチル(1,1,1,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2-トリフルオロメチル-2,3,3,3-テトラフルオロプロピル)メチルエーテル、1-(2-フルオロエトキシ)-2-メトキシエタン、1-(2,2-ジフルオロエトキシ)-2-メトキシエタン、1-メトキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、1-エトキシ-2-(2-フルオロエトキシ)エタン、1-(2,2-ジフルオロエトキシ)-2-エトキシエタン、1-エトキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン等が挙げられる。
【0030】
エーテル化合物として、式(4)で表されるフッ素化鎖状エーテルが好ましく挙げられる。
i2i+1-b-O-C2j+1-k(4)
[式(4)中、iは1~8の整数であり、jは1~8の整数であり、bは0から2i+1までのいずれかの整数であり、kは0から2j+1までのいずれかの整数であり、b及びkのうち少なくとも一方は1以上の整数である。]
【0031】
上記式(4)で表されるフッ素化鎖状エーテルにおいて、Ci2i+1-b及びC2j+1-kで表される基としては、上記のR等の例として挙げた直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基における水素原子がフッ素原子に置換された基が挙げられる。
【0032】
式(4)で表されるフッ素化鎖状エーテルとしては、粘度の点から、iが1以上8以下であり、jが1以上8以下であるものが好ましく、iが1以上4以下であり、jが1以上4以下であるものがより好ましい。
電池特性及び難燃性の点から、化合物中のフッ素含有量は60質量%以上のものが好ましい。またi+j=4~7であることが好ましく、i+j=4~6であることが更に好ましい。
【0033】
上記のリン酸誘導体又はホスホン酸誘導体としては、具体的な化合物としては以下のものが挙げられる。
非フッ素化リン酸誘導体としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリス(2-クロロエチル)、リン酸トリプロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリトリル、リン酸メチルエチレン、及びリン酸エチルエチレンが挙げられる。
フッ素化リン酸誘導体又はフッ素化ホスホン酸誘導体としては、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸トリス(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)、リン酸トリス(ヘキサフルオロ-イソプロピル)、(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)リン酸ジメチル、ビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)リン酸メチル、及びリン酸トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)、リン酸トリス(4-フルオロフェニル)及びリン酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロメチルホスホン酸ジメチル,トリフルオロメチルジ(トリフルオロメチル)ホスホン酸塩、(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)ホスホン酸ジメチル、フェニルジ(トリフルオロメチル)ホスホン酸塩及び4-フルオロフェニルホスホン酸ジメチル等が挙げられる。
【0034】
上記のスルホン化合物としては、具体的には、ジメチルスルホン及びエチルメチルスルホン等の非フッ素化スルホン、メチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、メチルペンタフルオロエチルスルホン、及びエチルペンタフルオロエチルスルホン等の部分的にフッ素化されたスルホン、ならびにジ(トリフルオロメチル)スルホン、ジ(ペンタフルオロエチル)スルホン、トリフルオロメチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチルノナフルオロブチルスルホン、及びペンタフルオロエチルノナフルオロブチルスルホン等が挙げられる。
【0035】
上記のニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル等が挙げられる。
【0036】
溶媒としてその他のものとして、イオン液体や、炭化水素、芳香族炭化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化芳香族炭化水素等の上記で挙げていない溶媒を用いてもよい。
【0037】
その他の溶媒の中でも、エステル化合物を用いることがFMPを用いることによる難燃性向上効果と出力特性向上効果の両立を工業的に実現しやすいという観点で好ましい。
【0038】
本発明において、非水電解液がFMP以外のフッ素化エステル化合物を含有することが難燃性の点で好ましい。好ましいフッ素化エステル化合物は、上記で挙げた式(1)、(2)又は(3)で表されるフッ素化エステル化合物である。難燃性の点から、特に、式(2)又は(3)で表されるフッ素化エステル化合物を含有することが好ましく、とりわけ式(2)で表されるフッ素化エステル化合物を含有することが好ましい。式(1)、(2)又は(3)で表されるフッ素化エステル化合物として上記で挙げた好ましい化合物を含有することがより好ましい。特に好ましいフッ素化エステル化合物としては、酢酸2,2,2-トリフルオロエチル、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートが挙げられ、特に酢酸2,2,2-トリフルオロエチル、フルオロエチレンカーボネートが好ましい。
【0039】
非水電解液中の全溶剤体積に対して、FMP以外のフッ素化エステル化合物を含有する場合、その量は、5体積%以上70体積%以下であることが、FMPを含有することによる難燃性向上効果及び非水電解液電池の出力特性向上効果を維持しながら、FMP以外のフッ素化エステル化合物による効果も発揮しやすい点から好ましい。
【0040】
また本発明において、式(2)若しくは(3)で表される非フッ素化環状エステル化合物を用いることも、一定の難燃性が得られるため好ましい。とりわけ好ましい化合物としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0041】
本発明の非水電解液において、式(1)で表されるフッ素化エステル化合物、又は、式(2)若しくは(3)で表されるフッ素化若しくは非フッ素化エステル化合物を含有する場合、その量は非水電解液中の全溶媒体積に対し、5体積%以上70体積%以下であることが、FMPを含有することによる難燃性向上効果及び非水電解液電池の出力特性向上効果を維持しながら、FMP以外のこれらのエステル化合物による効果も発揮しやすい点から好ましく、5体積%以上50体積%以下であることがより好ましい。この割合は、(1)で表されるフッ素化エステル化合物、及び、式(2)若しくは(3)で表されるエステル化合物の両方を含有する場合、両者の合計量である。
【0042】
特に、式(2)又は式(3)で表されるエステル化合物は、高誘電率溶媒であり、電解質の解離度を高めてイオン電導度を向上するため、非水電解液中に含有することが好ましい。式(2)又は式(3)で表されるエステル化合物は引火点が高いため混合することによって電解液としての引火点や燃焼点は上昇する点でも好ましい。また、難燃性と電池特性と両立させる観点から、式(2)又は式(3)で表されるエステル化合物の配合量は、FMPと式(1)で表されるフッ素化エステル化合物の合計体積に対し、5体積%以上100体積%以下が好ましく、より好ましくは10体積%以上50体積%以下である。
なお、ここでいうFMPと式(1)で表されるフッ素化エステル化合物の合計体積とは、式(1)で表されるフッ素化エステル化合物を非含有である場合は、FMPの量である。
【0043】
また、式(1)で表されるフッ素化エステル化合物を含有することは、非水電解液の低粘性を高めながら難燃性向上効果を高める点で好ましい。本発明において式(1)で表されるフッ素化されたエステル化合物を含有する場合、その低粘性や難燃性等の効果と、FMPを含有することによる難燃性向上効果及び非水電解液電池の出力特性向上効果とを発揮させる点から、式(1)で表されるフッ素化されたエステル化合物の含有量は、FMPの体積に対して、250体積%以下であることが好ましく、100体積%以下であることがより好ましい。式(1)で表されるフッ素化エステル化合物の粘度は1mPa・s以下が好ましく、その低粘性を活かす観点から、0.8mPa・s以下がより好ましい。なお、ここでいう粘度は25℃におけるものである。
【0044】
とりわけ、本発明においては、FMPと、式(1)で表されるフッ素化エステル化合物と式(2)又は式(3)で表されるエステル化合物とを組み合わせて用いることが、高い難燃性を有しながら優れた出力特性の非水電解液電池が得られる点で好ましく、FMPと、式(1)で表されるフッ素化エステル化合物と式(2)又は式(3)で表されるフッ素化エステル化合物とを組み合わせることが更に好ましく、FMPと、式(1)で表されるフッ素化エステル化合物と式(2)で表されるフッ素化エステル化合物とを組み合わせることが最も好ましい。
【0045】
本発明の電解液は式(4)で表される鎖状フッ素化エーテルを含有することも、難燃性を向上させる点から好ましい。とりわけFMPと、式(2)又は(3)で表されるフッ素化鎖状エステルと、式(4)で表される鎖状フッ素化エーテルとを含有することが好ましい。本発明の電解液が式(4)で表される鎖状フッ素化エーテルを含有する場合、電池特性及び難燃性の観点から、その量は、非水電解液中、0.1質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。また非水電解液の全溶剤体積中、0.1体積%以上50体積%以下が好ましく、6体積%以上30体積%以下がより好ましい。
【0046】
(電解質)
リチウム電解質としては4フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)や6フッ化リン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(LiFSA)、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)アミド(LiTSFA)が好適に挙げられる。電解質の濃度は、電解液を構成する溶媒中、例えば0.5mol/L以上3.0mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることがより好ましく、0.8mol/L以上1.8mol/L以下であることが更に好ましく、0.8mol/L以上1.5mol/L以下であることが最も好ましい。通常は、電解質であるリチウム塩は溶剤に1mol/L程度の濃度として使用されるが、電解質を濃くすればするほど蒸気圧降下によって引火性の溶剤蒸気圧が低下することから、これに伴って引火点や燃焼点も上昇するため、1.2mol/L以上とすることで安全性はより高くなる。
【0047】
(ホスファゼン化合物)
ホスファゼン化合物は、P=N結合を有する化合物である。本発明で用いるホスファゼン化合物は、下記一般式(I)で表される環状ホスファゼン化合物であることが、電池異常時等の高温環境下で分解し、消火作用を発揮する観点から好ましい。
【化5】
(式中、Rは、それぞれ独立してハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基から選ばれる基を表し、pは、3又は4を表す。)
【0048】
一般式(I)中のRとして表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。
Rとして表されるアルコキシ基としては、炭素数1~12、特に炭素数1~6のものが好ましく挙げられ、具体的には、メトキシ基やエトキシ基等が挙げられる。
Rとして表されるアリールオキシ基としては、炭素数6~14、特に炭素数6~10のものが好ましく挙げられ、具体的には、フェノキシ基やメチルフェノキシ基等が挙げられる。
Rとして表されるアルキル基としては、炭素数1~10、特に炭素数1~6のものが好ましく挙げられ、具体的には、メチル基やエチル基等が挙げられる。
【0049】
Rとして表されるアリール基としては、炭素数6~14、特に炭素数6~10のものが好ましく挙げられ、具体的には、フェニル基やトリル基等が挙げられる。
Rとして表されるアミノ基としては、アミノ基の1又は2以上の水素原子が、アルキル基やアリール基で置換された置換型アミノ基を含み、メチルアミノ基などが挙げられる。
Rとして表されるアルキルチオ基としては、炭素数1~12、特に炭素数1~6のものが好ましく挙げられ、具体的には、メチルチオ基やエチルチオ基等が挙げられる。
【0050】
Rとして表されるアリールチオ基としては、炭素数6~14、特に炭素数6~10のものが好ましく挙げられ、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0051】
一般式(I)で表されるホスファゼン化合物の中でも、FMPと組み合わせた時の非水電解液の難燃性を高める観点から、複数のRのうち、1個以上がフッ素原子であるものが好ましく、3個以上がフッ素原子であるものがより好ましく、4個以上がフッ素原子であるものが更に好ましく、5個以上がフッ素原子であるものが、更に一層好ましい。
また、FMPと組み合わせた時の非水電解液の難燃性を高める観点から、複数のRのうち、少なくとも一つがアルコキシ基であるものが好ましい。
【0052】
ホスファゼン化合物の添加量は、非水電解液中に0.1質量%以上であることが非水電解液の難燃性を高める点から好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、ホスファゼン化合物の添加量は、多すぎると電池特性を低下させてしまうことから、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0053】
(その他の添加剤)
その他の添加剤は非水電解液に添加することでリチウムイオン二次電池の特性を改善できることから非常に多くの種類が提案されている。通常はその添加量は例えば5%以下と少なく、またフッ素化エステルよりも引火点が高いことから、引火点、燃焼点に対して悪影響はない。
【0054】
(難燃性)
本発明の非水電解液は、引火点が40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。引火点は高ければ高いほど好ましく、引火点がないことが好ましい。なお、従来技術では、ホスファゼン化合物を用いた非水電解液で引火しない非水電解液は知られていない。
【0055】
また、本発明の非水電解液は、燃焼点が60℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。燃焼点がないことが最も好ましい。
【0056】
本明細書でいう引火点と燃焼点とは、「JIS 2265-4:2007 引火点の求め方:クリーブランド開放法」に基づく。このJIS規格において、引火点及び燃焼点とは、以下のように定義されている。
【0057】
「3.1 引火点(flash point)
規定条件下で引火源を試料蒸気に近づけたとき、試料蒸気がせん(閃)光を発して瞬間的に燃焼し、かつ、その炎が液面上を伝ぱ(播)する試料の最低温度を 101.3 kPa の値に気圧補正した温度。」
「3.2 燃焼点(fire point)
規定条件下で引火源を試料蒸気に近づけたとき、試料蒸気がせん(閃)光を発して瞬間的に燃焼し、かつ、5秒間以上継続的に燃焼する試料の最低温度を 101.3 kPa の値に気圧補正した温度。」
具体的な方法は以下の通りである。
試料を試料カップの標線まで入れ、試料を毎分14~17℃の速度で上がるように加熱を調節し、試料の予期引火点より56℃低い温度に達したら加熱を弱め、予期引火点より23℃±5℃低い温度から毎分5~6℃の速度で上がるように加熱を調節する。温度計の読みが2℃上昇するごとに,試験炎を試料カップの上に通過させ,試料の蒸気に引火し、かつ、その炎が液面上を伝ぱ(播)する試料の最低温度を、室内の気圧における測定引火点とする。また試験をそのまま継続して、試料の蒸気に引火し、かつ、5秒間以上継続的に燃焼する試料の最低温度を室内の気圧における測定燃焼点とする。これらの温度は,数式を用いて標準気圧における値に補正し、それぞれ引火点及び燃焼点とする。予期引火点は、予備試験として室温から毎分5~6℃の昇温速度で昇温をはじめ、温度が2℃上昇するごとに引火を測定することで求めた。また、引火点が観測されない場合は、その沸点を予期引火点とした。
具体的な引火点及び燃焼点は、後述する実施例に記載の方法にて求めることができる。本明細書では、燃焼点の測定の上限は測定電解液の沸点とし、電解液の沸騰をもって燃焼点なしと判断する。なお、下記の実施例及び比較例において、測定対象の電解液の沸点は概ね100℃であった。
【0058】
従来の難燃性電解液の難燃性評価では、UL-94HBやUL-94V0を参考に非水電解液をガラスフィルターに含侵させて行う着火試験の結果をもって行われる場合が多い。これらの試験は樹脂などの固形物において、その燃焼距離を測定することによって不燃性、難燃性を評価する試験法である。不燃性のガラスフィルターに液体を含侵して行う場合、電解液本来の性質を表しているとは言えず、燃焼距離の測定も曖昧になりやすい。また、室温下での評価試験であり、温度が高い環境において同じように不燃性や難燃性が発揮されるか否かは不明であった。その他にも、実際に電池を組んで充電し、釘刺し試験、過充電試験、あるいは加熱試験等によって検証する方法があるが、組み合わせる正極、負極、セパレータ、外装体の種類の影響を受けるため、これらの試験結果は電解液そのものの安全性とは言えない。
そこで、本発明者では、非水電解液についても可燃性液体の評価試験である引火点及び燃焼点測定によって不燃性の評価、及び難燃性の優劣を判定している。
【0059】
(リチウムイオン二次電池)
次いで、本発明の非水電解液電池について説明する。本発明の非水電解液電池は、正極と負極とを備え、電解質として、本発明の非水電解液を含むものであり、好適にはリチウムイオン二次電池である。
【0060】
[1]負極
負極は、負極集電体、負極活物質層からなる。負極活物質層は、負極活物質を含むいわゆる負極合材から形成され、必要に応じて導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。負極活物質としては、例えば炭素材料、ケイ素(Si)、Sn等の金属又は半金属、Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物、ポリリン酸化合物等が挙げられる。
【0061】
炭素材料としては、黒鉛(グラファイト)、非晶質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、又はこれらの複合物を用いることができる。
【0062】
金属としては、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La、又はこれらの2種以上の合金を用いることができる。
【0063】
負極用結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等を用いることができる。
【0064】
負極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、及びそれらの合金が用いられ、銅又は銅合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。つまり、負極基材としては銅箔が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
【0065】
[2]正極
正極は、正極集電体、正極活物質層からなる。正極活物質層は、正極活物質を含むいわゆる正極合材から形成され、必要に応じて導電補助剤、結着剤、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0066】
正極活物質としては、例えば、LiMO(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(層状のα―NaFeO型結晶構造を有するLiCoO,LiNiO,LiMnO,LiNiαCo(1-α),LiNiαMnβCo(1-α-β)等、スピネル型結晶構造を有するLiMn,LiNiαMn(2-α)等)、LiMe(XO(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO,LiMnPO,LiNiPO,LiCoPO,Li(PO,LiMnSiO,LiCoPOF等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。
【0067】
正極活物質は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
正極用結着剤としては、負極用結着剤と同様のものと用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0068】
正極集電体としては、負極集電体と同様のものを用いることができる。
正極活物質を含む正極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助剤を添加してもよい。導電補助剤としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
【0069】
[4]セパレータ
セパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、アラミド等の多孔質フィルムや不織布を用いることができる。これらの樹脂を複合してもよい。また、セパレータとしては、それらを積層したものを用いることもできる。なお、セパレータと電極との間に、無機層が配設されていても良い。
【0070】
[5]外装体
外装体としては、電解液に安定で、かつ十分な水蒸気バリア性を持つものであれば、適宜選択することができ、本発明に係る非水電解液電池の構成については特に限定されるものではなく、コイン状、円筒状、角形、アルミラミネートシート型等の形状の非水電池が組み立てられる。
【実施例
【0071】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。各表におけるリチウム電解質量に係る「M」は「mol/L」の略である。
【0072】
(実施例1)
FECとFMPとを体積比20対80で混合した溶媒に、LiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解した後、ホスファゼン化合物として日本化学工業社製ヒシコーリンE(一般式(I)において、pが3であり、6個のRのうち5個がフッ素原子であり、1個がエトキシ基である化合物)を非水電解液中2質量%の含有率となるように添加して非水電解液を調製した。
【0073】
(実施例2)
LiPFの量を、溶媒中1.2mol/Lに変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0074】
(実施例3)
ECとFMPとを体積比20対80で混合して溶媒を調製した。その点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
【0075】
(実施例4)
FECとFMPとFEAとを体積比10対50対40で混合して溶媒を調製した。その点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
【0076】
(実施例5)
ヒシコーリンEの量を非水電解液中5質量%とした以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0077】
(比較例1~3)
ECとEMCとを体積比30対70で混合して溶媒を調製し、ヒシコーリンEの添加量を表1に示す通りとした。その点以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0078】
(比較例4)
ヒシコーリンEを添加しなかった。この点以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0079】
(比較例5)
ECとDMCとEMCとを体積比30対40対30で混合して溶媒を調製した。また、ヒシコーリンEの量を表1に示す量とした。それらの点以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0080】
(比較例6)
ヒシコーリンEを添加しなかった。この点以外は実施例4と同様にして非水電解液を調製した。
【0081】
実施例1~5及び比較例1~6の非水電解液について、以下の方法にて難燃性を評価した。結果を表1に示す。
【0082】
(難燃性:引火点及び燃焼点の測定)
実施例1~5及び比較例1~6で得られた非水電解液はアントンパール製クリーブランド引火点測定機CLA5または田中科学機器試作製クリーブランド引火点測定機ace-8を用い、JIS 2265-4:2007に準じて引火点と燃焼点の測定を行った。引火点や燃焼点は燃焼の自動検出機能によって測定されるが、ホスファゼン化合物を添加した電解液は試料容器直上まで火炎が伝播しにくいため装置の検出器が反応しない場合がある。その場合は、目視による引火点の確認温度を採用し、燃焼時間についてはストップウォッチを用いて計測を行った。上述した通り、燃焼点の測定の上限は測定電解液の沸点とし、電解液の沸騰をもって燃焼点なしと判断した。
【0083】
上記の両測定機では、試験火炎が試料カップ上を通過する時間は1秒以内である。上述した通り、5秒間以上継続的に燃焼する試料の最低温度を燃焼点とした。
【0084】
【表1】
【0085】
比較例1の一般的な電解液は、引火と同時に5秒間以上燃焼し、自己消火性を有していないことがわかる。一方、実施例1~4のように、FMPを主成分とした電解液にホスファゼン化合物をわずか2質量%添加すると、燃焼点が観測されなくなるほどの改善がみられた。特に、実施例2では、すべての測定温度範囲において1秒以内に消火した。わずか2質量%の添加量であるため、電池特性に及ぼす悪影響も最小限に抑えられる。
一方、一般的な電解液では比較例3に示すように、ホスファゼン化合物を10質量%混合しても燃焼点が無くなることはなかった。添加量が10質量%であるため、電池特性への影響が懸念される。比較例4のようにフッ素化エステルを主成分としていてもホスファゼン化合物を添加しない場合の燃焼点は60℃であった。したがって、FMPとホスファゼン化合物の相乗効果により、燃焼点が観測されない状態まで自己消火性が改善されたと言える。
【0086】
(比較例7)
ヒシコーリンEを添加しなかった。この点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
【0087】
(実施例6)
ヒシコーリンEの添加量を非水電解液中5質量%とした。この点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
【0088】
(実施例7)
ヒシコーリンEの添加量を非水電解液中10質量%とした。この点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
【0089】
(実施例8)
LiPFの濃度を1.2mol/Lから1.5mol/Lに変更した。その点以外は実施例6と同様として非水電解液を調製した。
【0090】
(実施例9)
LiPFの濃度を1.2mol/Lから1.5mol/Lに変更した。その点以外は実施例7と同様として非水電解液を調製した。
【0091】
(実施例10)
LiPFの濃度を1.5mol/Lから1.8mol/Lに変更した。その点以外は実施例9と同様として非水電解液を調製した。
【0092】
得られた比較例7、実施例6~10の非水電解液について、上記と同様の方法で難燃性を評価した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表2の結果から、ホスファゼン化合物の添加量は5質量%を超えると、その添加量増加による引火点上昇効果は小さくなることが判る。
【0095】
(実施例11)
LiPFの濃度を1.5mol/Lから1.6mol/Lに変更し、またFECの量とFMPとの量比を体積比29:71に変更した。その点以外は実施例8と同様にして非水電解液を調製した。
【0096】
(実施例12)
ヒシコーリンEの量を非水電解液中5質量%に変更し、またLiPFを溶媒中2.7mol/Lとなる量に変更した。その点以外は実施例10と同様として非水電解液を調製した。
【0097】
実施例11及び12の非水電解液について、上記と同様の方法で難燃性を評価した。結果を表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
表3における実施例11及び12の通り、FECの量をFMPに対して増加させることや、LiPFの量を増加させることで、引火点や燃焼性がなくなるまで、不燃性を高めることができた。
【0100】
(実施例13)
LiPFの濃度を1.5mol/Lから1.8mol/Lに変更した。また1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE347 pc-f)を、非水電解液中5質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して6容量部)添加した。それらの点以外は実施例8と同様として非水電解液を調製した。
【0101】
(実施例14)
1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE347 pc-f)の添加量を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して13容量部)とした。それらの点以外は実施例13と同様として非水電解液を調製した。
【0102】
(実施例15)
ヒシコーリンEの添加量を非水電解液中2質量%とした。それらの点以外は実施例14と同様として非水電解液を調製した。
【0103】
(実施例16)
HFE347 pc-fの代わりに、3M社製のNOVEC7100を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して12容量部)添加した以外は、実施例14と同様にして非水電解液を調製した。NOVEC7100はCOCHからなる。
【0104】
(実施例17)
HFE347 pc-fの代わりに、3M社製のNOVEC7200を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して13容量部)添加した以外は、実施例14と同様にして非水電解液を調製した。NOVEC7200はCOCからなる。
【0105】
(実施例18)
HFE347 pc-fの代わりに、3M社製のNOVEC7300を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して11容量部)添加した以外は、実施例14と同様にして非水電解液を調製した。NOVEC7300はCCF(OCH)Cからなる。
【0106】
(実施例19)
HFE347 pc-fを添加せず、CCOOCH(ヘプタフルオロ酪酸メチル)を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計100容量部に対して13容量部)添加した以外は、実施例14と同様にして非水電解液を調製した。
【0107】
実施例13~19の電解液について、上記の方法にて難燃性を評価した。結果を表4に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
実施例11及び12と同様、実施例13~19でも、種々の不燃成分を添加することで引火点、燃焼点がないところまで不燃化できた。FMPの蒸気分圧を下げることで、相対的にホスファゼンの効果が高まるためと考えられる。
【0110】
(比較例8)
LiPFを用いず、溶媒として、FMPのみを用いた。その点以外は比較例1と同様とした。
【0111】
(比較例9)
LiPFを用いず、溶媒として、EMCのみを用いた。その点以外は比較例1と同様とした。
【0112】
比較例1、3、4、8及び9と、実施例8及び14で得られた電解液について、燃えにくさの指標として燃焼限界酸素濃度測定を実施した。ここで、燃焼限界酸素指数とは、J I S K 7 2 0 1 -2:2007に規定の所定の試験条件下において、材料が燃焼を持続するのに必要な体積%で表される最低酸素濃度の値をいい、限界酸素指数が高いことは発火・引火の危険性が低いことを意味する。測定方法はK 7201-2:2007「酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法」に規定する試験装置による。具体的には、内径25mm、深さ12mmのガラス製容器に、試料3mLを入れ、気体流通用の円筒内に配置可能な形状をしたステンレス製支持台の上に、このガラス容器を乗せる。支持台をガラス容器ごとガラス円筒内に装着する。ガラス円筒内部に酸素及び窒素を流し、試料が燃焼するのに十分な酸素濃度に調整する。規定の着火装置を用いて、試料を燃焼させ、30秒保持したのち、所定の酸素濃度に調整する。酸素濃度を調整したのち180秒以上継続して燃焼したものを「燃焼」とし、180秒未満で消炎した場合は、「不燃」とする。180秒以上燃焼が継続する最低酸素濃度を「燃焼限界酸素濃度」とする。支持台の形状は消防庁より平成7 年5 月31 日に通知された「消防危第50 号消防庁危険物規制課長通知」に記載されたものである。
結果を表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
上記の通り、実施例8及び14の電解液は、燃焼限界酸素濃度が高いことからも燃焼し難く、安全性に優れることがわかる。
【0115】
また、実施例1、4、6、8及び14並びに比較例1、3、4及び5の電解液を用い、以下の方法にて非水電解液電池を製造し、その特性を評価した。その結果を表6に示す。
【0116】
(電池特性)
[二次電池の作製]
<正極の作製>
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)93質量部を用い、アセチレンブラック4質量部とポリフッ化ビニリデン3質量部を混合し、N-メチル-2-ピロリドンを加えスラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に均一に12.7mg/cmとなるように塗布、乾燥した後、正極活物質層の密度が2.8g/cmになるようにプレスして正極とした。
【0117】
<負極の作製>
黒鉛(日立化成MAG-D)97質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)と、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に7.5mg/cmとなるように塗布して乾燥し、その後、負極活物質層の密度が1.36g/cmになるようにプレスして負極とした。また、スラリーは乾燥後の負極において、黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン-ブタジエンゴム=97.3:1.5:1.2の質量比となるように作成した。
【0118】
<非水系電解液二次電池の製造>
前記の正極及び負極それぞれの塗工面を、セパレータを挟んで互いに対向させた。セパレータにはポリプロピレン製、厚み20μm、空孔率54%のものを用いた。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前述の電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。更に、電極間の密着性を高めるために、アルミ板でシート状電池を挟んで加圧した。
【0119】
[電池の評価]
<出力特性の測定>
45℃の恒温槽中、シート状の非水系電解液二次電池を1Cで20分充電後、15時間休止させ、その後4.2Vまで0.2Cで定電流-定電圧充電し、これに続いて0.2Cで2.75Vまで定電流放電した。その後、4.2Vまでの定電流-定電圧充電と、これに続く2.75Vまでの定電流放電とを、0.2C、1C,0.2Cの順番で繰り返して初期のコンディショニングを行った。続いて、4.2Vまでの0.2Cで定電流-定電圧充電と、これに続く0.2Cで2.75Vまでの定電流放電とを行って、その放電容量を出力特性の基準とした。次に、4.2Vまでの0.2C定電流-定電圧充電と、これに続く2.75Vまでの定電流放電を、放電電流は0.5C、1C、2C、3C、5C、7C、10Cの順番で変更しながら繰り返した。これにより0.2Cの放電容量に対する5C、7C、10C時の放電容量比を求めた。なお、1Cとは電池の全容量を1時間で放電させる場合の電流値のことである。
【0120】
【表6】
【0121】
表6に示す通り、各実施例は一般の溶媒を用いた比較例1、3に比して高い出力特性を示している。また比較例4と実施例1との比較から、FMPを用いた場合、ホスファゼン化合物を添加することによる出力特性の低下が起きにくく、優れた出力と安全性とを両立できることもわかる。
特に、リチウム電解質の量が同レベルである実施例4及び6では、0.2C容量に対する効率放電容量10Cが実施例4の方が高く、出力特性を維持しながらも安全性に優れた電解液であると言える。
更に、実施例14の放電容量が高いことから、FMPの存在下においては、フッ素化エーテル溶媒の添加によっても出力特性に優れた電解液が得られることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、高い出力特性を有しながら、高温まで燃焼点のない難燃性電解液を提供する。また電池が温度上昇した際も、発火の危険が効果的に防止され、また機械的に電池が破壊された際に漏液したとしても引火しにくく、火災の危険性が低減された電池を提供する。