(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】エアロゾル形成基体を抵抗加熱するための電気加熱組立品、エアロゾル発生装置および方法
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20220727BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20220727BHJP
H05B 3/22 20060101ALI20220727BHJP
H05B 3/14 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F47/00
H05B3/22
H05B3/14 Z
(21)【出願番号】P 2019557381
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067176
(87)【国際公開番号】W WO2019002330
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】クルバ ジェローム クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/001818(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/200815(WO,A2)
【文献】欧州特許出願公開第0250094(EP,A1)
【文献】独国実用新案第202013010986(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00 - 47/00
H05B 3/02 - 3/18
H05B 3/40 - 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体を抵抗加熱するための加熱組立品を備える、エアロゾル形成基体と併用するためのエアロゾル発生装置であって、前記加熱組立品が、
- AC駆動電流を提供するように構成された制御回路と、
- 前記エアロゾル形成基体を加熱するための導電性の強磁性またはフェリ磁性材料を含む電気抵抗性のある発熱体であって、前記発熱体が、前記制御回路に動作可能に結合され、前記制御回路によって提供されるAC駆動電流が前記発熱体を通過する際にジュール加熱によって加熱されるように構成され、前記発熱体が、少なくとも一つの支持層と少なくとも一つの加熱層とを含む多層発熱体であって、少なくとも前記発熱体が前記導電性の強磁性またはフェリ磁性材料を含み、前記多層発熱体の縁層であり、前記少なくとも一つの支持層の層の厚さが前記少なくとも一つの加熱層の層の厚さよりも大きい、電気抵抗性のある発熱体と、を備える、電気加熱組立品。
【請求項2】
前記多層発熱体が、前記少なくとも一つの加熱層に加えて少なくとも一つのさらなる加熱層を含み、前記少なくとも二つの加熱層が前記支持層を挟み、前記加熱層の少なくとも一つが導電性の強磁性またはフェリ磁性材料を含む、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの支持層が導電性材料を含む、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つまたは二つの加熱層の前記導電性材料の比抵抗が、前記少なくとも一つの支持層の前記導電性材料の比抵抗よりも低い、請求項3に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つまたは二つの加熱層の前記導電性材料の相対透磁率が、前記少なくとも一つの支持層の前記導電性材料の相対透磁率よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つまたは二つの加熱層の前記導電性材料が強磁性またはフェリ磁性である、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つの支持層の前記導電性材料が常磁性である、請求項3~6のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記二つの加熱層が前記多層発熱体の縁層である、請求項2~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記多層発熱体の少なくとも一つの層が実質的に固体材料からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項10】
前記発熱体がブレード構成またはロッド構成またはメッシュ構成または芯構成である、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項11】
前記発熱体のAC抵抗が、500kHz~30MHzの範囲の周波数を有する前記発熱体を通過するAC駆動電流に対して、10mΩ~1500mΩの範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル形成基体を抵抗加熱するためのエアロゾル発生装置の電気加熱組立品に関する。本発明はさらに、こうした加熱組立品を備えるエアロゾル発生装置、ならびにエアロゾル形成基体を抵抗加熱するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル形成基体を抵抗加熱することによってエアロゾルを発生することは、従来技術から一般的に公知である。このために、加熱に伴い吸入可能なエアロゾルを形成する能力を有するエアロゾル形成基体は、抵抗発熱体と熱的に近接するか、またはそれと直接的物理接触する。発熱体は、DC(直流電流)駆動電流を通過させる際にジュール加熱によって加熱される導電性材料を含む。発熱体は、例えば、その上に形成された導電性金属トラックを有するセラミックブレードであってもよく、これは、DC駆動電流をトラックに通過させる際に加熱される。しかしながら、セラミック材料の壊れやすい性質に起因して、こうした加熱用ブレードは、特にエアロゾル形成基体と接触する際、およびエアロゾル形成基体と接触しなくなる際の破損のリスクが大きい。別の方法として、加熱用ブレードは金属で作製されてもよい。しかしながら、金属は非常に低いDC抵抗を有するため、低い加熱効率、有害な電力損失および再現性のない加熱結果をもたらす。それ以外に、抵抗加熱は一般に、エアロゾル形成基体の望ましくない過熱を回避するために、いくつかの種類の温度制御を必要とする。
【0003】
従って、先行技術の解決策の利点を有しつつも、それらにおける制限事項がない、エアロゾル形成基体を抵抗加熱するための電気加熱組立品、エアロゾル発生装置、および方法を有することが望ましい。特に、望ましくない過熱のリスクなしに、エアロゾル形成基体を抵抗加熱するための堅牢で効率的な可能性を提供する加熱組立品、エアロゾル発生装置、および加熱方法を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明によると、エアロゾル形成基体を抵抗加熱するためのエアロゾル発生装置の電気加熱組立品が提供されている。加熱組立品は、AC(交流電流)駆動電流を提供するように構成された制御回路を備える。加熱組立品はさらに、エアロゾル形成基体を加熱するための導電性の強磁性またはフェリ磁性材料を含む電気抵抗性のある発熱体を備える。発熱体は、制御回路と動作可能に結合され、制御回路によって提供されるAC駆動電流を発熱体に通過させる際にジュール加熱によって加熱されるように構成される。そのため、AC駆動電流が通過するのは、発熱体の導電性の強磁性またはフェリ磁性材料である。
【0005】
本発明によると、導電性発熱体の有効抵抗、およびそれ故に加熱効率は、DC駆動電流の代わりにAC駆動電流を発熱体に通過させることで、著しく増大しうることが認識されている。DC電流とは異なり、AC電流は主に、導体の外表面と表皮厚さと呼ばれるレベルとの間の導電体の「表皮」を流れる。AC電流密度は、導体の表面の近くで最も大きく、導体における深さが大きくなると共に減少する。AC駆動電流の周波数が増大すると、表皮厚さが減少し、これにより導体の有効断面が減少し、そしてそれ故に導体の有効抵抗が増大する。この現象は、基本的にはAC駆動電流に由来する変動する磁場よって誘起される対向する渦電流に起因する表皮効果として公知である。
【0006】
AC駆動電流を使用して発熱体を動作させることによりさらに、発熱体を、特に固体の導電性の強磁性材料またはフェリ磁性材料材料で実質的に作製する、またはそれらからなるようにすることが可能となるとともに、熱生成のための十分に高い熱抵抗をなおも提供することが可能になる。特に、発熱体は、少なくとも大部分、または全体が、金属から実質的になる、または実質的に金属で作製されてもよい。上述のセラミック発熱体と比較して、実質的に金属からなる、または金属で作製される発熱体は、発熱体の機械的安定性および堅牢性を著しく増大させ、そしてそれ故に、発熱体の変形または破損のリスクを減少させる。
【0007】
さらに、AC駆動電流を使用して抵抗発熱体を動作させることにより、電気加熱組立品の導電性システム内の材料転移、例えば、溶接またははんだ付け点で発生する望ましくない容量挙動の影響も小さくなる。
【0008】
本発明によると、AC駆動電流を通過させるための導電性の強磁性またはフェリ磁性材料を有する発熱体は、抵抗加熱プロセスの温度制御を容易にし、さらに好ましくは自己制限も容易にすることが認識されている。これは、導電性材料の磁性が温度の増大と共に変化するという事実に起因する。特に、キュリー温度に達すると、磁性は強磁性またはフェリ磁性からそれぞれ常磁性に変化する。すなわち、導電性材料の透磁率は、温度の増大と共に連続的に減少する。透磁率が減少すると、表皮厚さが増大し、そしてそれ故に導電性材料の有効AC抵抗が減少する。キュリー温度に達すると、相対透磁率がほぼ均一に低下し、有効AC電気抵抗が最小に達する。こうして、発熱体を通過するAC駆動電流の対応する変化を監視することは、発熱体の導電性磁性材料がそのキュリー温度に達した時を示す温度マーカーとして使用されうる。発熱体の導電性磁性材料は、エアロゾル形成基体の所定の加熱温度に対応するキュリー温度を有するように選択されることが好ましい。
【0009】
さらに、継続的な加熱プロセス中のAC抵抗が減少することに起因して、温度の増大と共に有効加熱レートが連続的に減少する。キュリー温度に達すると、なおも駆動電流を発熱体に通過させても発熱体の温度がそれ以上増大しない範囲にまで有効加熱レートが低減されうる。発熱体の温度は、エアロゾル形成基体への熱放出に応じて、発熱体の導電性磁性材料のキュリー温度に達するのに伴い、なおもわずかに減少しうる。有利なことに、この効果は加熱プロセスの自己制限を提供し、それ故にエアロゾル形成基体の望ましくない過熱が防止される。従って、発熱体の導電性磁性材料は、エアロゾル形成基体の所定の最大加熱温度に対応するキュリー温度を有するように選択されうる。
【0010】
AC駆動電流は、DC構成要素を有さない、またはDCオフセットを有さない、または0に等しいDC構成要素を有する、バイポーラAC駆動電流および/またはAC駆動としうる。
【0011】
有利なことに、発熱体の導電性の強磁性材料またはフェリ磁性材料のキュリー温度は、150℃(摂氏)~500℃(摂氏)、特に250℃(摂氏)~400℃(摂氏)、好ましくは270℃(摂氏)~380℃(摂氏)の範囲である。
【0012】
表皮厚さは、導電性発熱体の透磁率だけでなく、導電性発熱体の比抵抗、ならびにAC駆動電流の周波数にも依存する。従って、表皮厚さは、導電性発熱体の比抵抗を減少させる、導電性発熱体の透磁率を増大させる、またはAC駆動電流の周波数を増大させる、のうちの少なくとも一つによって減少されうる。従って、発熱体の(初期)有効抵抗、およびそれ故に加熱効率は、発熱体の材料特性の適切な選択により、特に、低い比抵抗または高い透磁率のうちの少なくとも一つを有する導電性材料を含む発熱体を有することにより、著しく増大しうる。
【0013】
発熱体は、少なくとも10μH/m(マイクロヘンリー/メートル)、特に少なくとも100μH/m、好ましくは少なくとも1mH/m(ミリヘンリー/メートル)、最も好ましくは少なくとも10mH/mまたは少なくとも25mH/mの絶対透磁率を有する導電性の強磁性材料またはフェリ磁性材料を含むことが好ましい。同様に、導電性の強磁性材料またはフェリ磁性材料は、少なくとも10、特に少なくとも100、好ましくは少なくとも1000、最も好ましくは少なくとも5000または少なくとも10000の相対透磁率を有しうる。
【0014】
例えば、発熱体の少なくとも一部分は、ニッケルコバルト合金(例えば、コバールまたはフェルニコ1)、ミューメタル、パーマロイ(例えば、パーマロイCなど)、またはフェライトステンレス鋼またはマルテンサイトステンレス鋼のうちの少なくとも一つを含んでもよく、または実質的にそれらで作製されてもよい。
【0015】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置の電気加熱組立品」という用語は、エアロゾル発生装置のサブユニットとしての電気加熱組立品を意味する。そのため、電気加熱組立品は、少なくともエアロゾル発生装置での使用に適切である。
【0016】
導電性の強磁性またはフェリ磁性材料を含む発熱体を有することは、発熱体の少なくとも一部分が導電性の常磁性材料、例えば、タングステン、アルミニウム、またはオーステナイトステンレス鋼を含む、または実質的にそれらからなってもよいことを除外しない。
【0017】
発熱体の有効抵抗、およびそれ故に加熱効率は、高周波AC駆動電流を通過させる際に著しく増大しうる。有利なことに、AC駆動電流は、500kHz(キロヘルツ)~30MHz(メガヘルツ)、特に1MHz~10MHz、好ましくは5MHz~7MHzの範囲の周波数を有する。したがって、制御回路は、500kHz~30MHz、特に1MHz~10MHz、好ましくは5MHz~7MHzの範囲の周波数を有するAC駆動電流を提供するように構成されることが好ましい。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、発熱体のAC抵抗は、500kHz~30MHz、特に1MHz~10MHz、好ましくは5MHz~7MHzの範囲の周波数を有する、発熱体を通過するAC駆動電流に関して、10mΩ(ミリオーム)~1500mΩ(ミリオーム)、特に20mΩ~1500mΩ、好ましくは100mΩ~1500mΩの範囲である。この範囲のAC抵抗は、有利なことに、十分に高い加熱効率を提供する。前述の範囲は、好ましくは、室温と導電性の強磁性材料またはフェリ磁性材料のキュリー温度との間の発熱体の温度範囲に関連する。
【0019】
本発明による加熱組立品が併用される電気的に作動するエアロゾル発生装置は、DC電源によって、例えば、電池によって作動されうることが好ましい。したがって、制御回路は、AC駆動電流を供給するための少なくとも一つのDC/ACインバータを含むことが好ましい。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、DC/ACインバータは、スイッチング電力増幅器、例えばクラスE増幅器またはクラスD増幅器を含む。クラスDおよびクラスE増幅器については、スイッチング移行中のスイッチングトランジスタでの電力損失が最小であることが公知である。クラスE電力増幅器は、高周波での動作に関して特に有利であり、同時に単純な回路構造を有する。クラスE電力増幅器は、単一のトランジスタスイッチのみを有するシングルエンドの一次クラスE電力増幅器であることが好ましい。
【0021】
スイッチング電力増幅器は、特にクラスE増幅器の場合、トランジスタスイッチ、トランジスタスイッチ駆動回路、およびLC負荷ネットワークを含んでもよく、LC負荷ネットワークはコンデンサーとインダクタの直列接続を含む。さらに、LC負荷ネットワークは、コンデンサーとインダクタの直列接続と並列、かつトランジスタスイッチと並列な分路コンデンサーを含みうる。これらの少ない数の構成要素は、スイッチング電力増幅器の容積を非常に小さく保つことを可能にし、それ故に加熱組立品の全体的な容積も非常に小さく保つことを可能にする。
【0022】
スイッチング電力増幅器のトランジスタスイッチは、任意のタイプのトランジスタとすることができ、バイポーラジャンクショントランジスタ(BJT)として埋め込んでもよい。ただし、トランジスタスイッチは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)または金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)などの、電界効果トランジスタ(FET)として埋め込まれることがより好ましい。
【0023】
上述の構成では、制御回路は追加的に、発熱体と並列に、特に発熱体を通る抵抗導体経路に並列に接続される少なくとも一つのバイパスコンデンサーを含みうる。このため、発熱体は抵抗を構成するだけでなく(小さな)インダクタンスを構成することに注目するべきである。従って、等価回路図では、発熱体は抵抗とインダクタの直列接続によって表現されうる。バイパスコンデンサーの容量の適切な選択によって、発熱体のインダクタ/インダクタンスおよびバイパスコンデンサーは、AC駆動電流の大部分が通過するLC共振器を形成し、AC駆動回路のわずかな部分のみがLCネットワークのインダクタおよびコンデンサーを介してトランジスタスイッチを通過する。このため、バイパスコンデンサーは、有利なことに、発熱体から制御回路に向けた熱伝達の減少を生じさせる。有利なことに、バイパスコンデンサーの容量は、LCネットワークのコンデンサーの容量よりも大きく、特に少なくとも2倍大きく、好ましくは少なくとも5倍大きく、最も好ましくは少なくとも10倍大きい。
【0024】
さらに、バイパスコンデンサーおよび好ましくはLCネットワークのインダクタもまた、制御回路の残りの部分よりも発熱体の近くに、特に発熱体のできるだけ近くに配置されうる。
【0025】
例えば、LCネットワークのインダクタおよびバイパスコンデンサーは、残りの構成要素から遠隔配置された別個の電子構成要素として具体化されてもよく、これがPCB(プリント回路基板)上に配置されてもよい。バイパスコンデンサーは、発熱体に直接接続されてもよい。
【0026】
制御回路および発熱体に電力供給するために、加熱組立品はさらに、制御回路、およびそれ故に制御回路を介して発熱体に動作可能に接続される電源、好ましくはDC電源を備えうる。DC電源は一般的に、適切な任意のDC電源、例えば、一つ以上の使い捨て電池、一つ以上の再充電可能電池、または要求されるDC電源電圧および要求されるDC電源アンペア数を提供する能力を有するその他の任意の適切なDC電源を含みうる。DC電源のDC電源電圧は約2.5V(ボルト)~約4.5V(ボルト)の範囲であってもよく、DC電源アンペア数は約1~約10アンペアの範囲(DC電源電力約2.5W(ワット)~約45W(ワット)の範囲に相当)である。
【0027】
原則として、特定の値に関連して「約」という用語が本明細書全体を通して使用される時はいつでも、「約」という用語に続く値は、技術的な考慮事項のため、厳密に正確なその特定の値を持つ必要はないと理解される。ただし、特定の値に関連して使用される「約」という用語は常に、用語「約」に続く特定の値を含み、かつ明示的に開示するものと理解される。
【0028】
加熱されるエアロゾル形成基体の条件に応じて、発熱体は異なる幾何学的構成を有しうる。例えば、発熱体は、ブレード構成またはロッド構成またはピン構成であってもよい。すなわち、発熱体は、導電性材料を含む、または実質的に導電性材料で作製される一つ以上のブレード、ロッドまたはピンであってもよく、またはそれらを含んでもよい。これらの構成は、固体またはペースト様のエアロゾル形成基体との併用に特に適している。特に、これらの構成は、発熱体が加熱されるエアロゾル形成基体と接触する際のエアロゾル形成基体の中への貫通を容易に可能にする。近位端において、ブレード形状またはロッド状の発熱体は、エアロゾル形成基体の中への貫通を容易に可能にする先細りした先端部分を含みうる。
【0029】
発熱体は、導電性材料、特に固体導電性材料を含む、または実質的に導電性材料で作製される少なくとも一つのブレードを含むことが好ましい。ブレードは、ブレードを加熱されるエアロゾル形成基体の中へと貫通することを容易にする先細りした先端部分を含みうる。ブレードは、5mm(ミリメートル)~20mm(ミリメートル)、特に10mm~15mmの範囲の長さ、2mm~8mm、特に4mm~6mmの範囲の幅、および0.2mm~0.8mm、特に0.25mm~0.75mmの範囲の厚さを有しうる。
【0030】
別の方法として、発熱体は芯構成またはメッシュ構成であってもよい。すなわち、発熱体は、導電性材料を含む、または実質的に導電性材料で作製される一つ以上のメッシュまたは芯としうる、またはそれらを含みうる。一つ以上のメッシュまたは芯を含む構成は、液体エアロゾル形成基体との併用に特に適している。
【0031】
発熱体の外表面は、表面処理または被覆されてもよい。すなわち、発熱体は表面処理または被覆を含んでもよい。表面処理または被覆は、エアロゾル形成基体が発熱体の表面に固着することを回避する、材料拡散、例えば発熱体からエアロゾル形成基体の中への金属拡散を回避する、発熱体の機械的剛性を改善する、のうちの少なくとも一つを行うように構成されうる。表面処理または被覆は非導電性であることが好ましい。
【0032】
一般に、発熱体は、AC駆動電流を通過させるための少なくとも一つの抵抗導体経路を含みうる。本明細書で使用される「導体経路」という用語は、AC駆動電流を発熱体に通過させるための所定の電流経路を意味する。この経路は基本的に、発熱体の導電性材料の幾何学的構成によって与えられる。
【0033】
発熱体は、単一の抵抗導体経路を含みうる。別の方法として、発熱体は、AC駆動電流を通過させるための、複数の相互に並列な抵抗導体経路を含んでもよい。
【0034】
複数の相互に並列な抵抗導体経路を含む構成では、複数の抵抗導体経路は、発熱体の共通セクション内で合流してもよい。有利なことに、これは発熱体のコンパクトな設計を提供する。この構成では、制御回路のスイッチング電力増幅器は、複数の並列な抵抗導体経路の各々に対して、説明した少なくとも一つのLCネットワークを含みうる。同様に、制御回路のスイッチング電力増幅器は、上述のように、発熱体から制御回路への熱伝達を低減するために、複数の並列な抵抗導体経路の各々に対して少なくとも一つのバイパスコンデンサーを含んでもよい。
【0035】
少なくとも一つの抵抗導体経路または複数の抵抗導体経路のうちの少なくとも一つは、それぞれの加熱経路にAC駆動電流を供給するための二つの供給点を含みうる。二つの供給点は、発熱体の一方の側に配置されることが好ましい。この配置は、発熱体のコンパクトな設計を提供し、また発熱体を制御回路に動作可能に結合することを容易にする。
【0036】
少なくとも一つの抵抗導体経路または複数の抵抗導体経路のうちの少なくとも一つは、それぞれの加熱経路にAC駆動電流を供給するための二つの供給点を含みうる。二つの供給点は、発熱体の一方の側に配置されることが好ましい。この配置により、発熱体のコンパクトな設計が可能となり、また発熱体を制御回路に動作可能に結合することが容易になる。
【0037】
導体経路に沿った放熱、およびそれ故に発熱体の加熱効率は、導体経路の長さの増大に伴い増大する。したがって、抵抗導体経路の幾何学的構成は、できる限り長い経路長さを有するようなものであることが好ましい。
【0038】
少なくとも一つの抵抗導体経路または複数の抵抗導体経路のうちの少なくとも一つは、発熱体の少なくとも一つのセクションに沿ったスリッティングによって形成されてもよい。結果として、少なくとも一つの抵抗導体経路または複数の抵抗導体経路のうちの少なくとも一つは、少なくとも一つのスリットによって形成されうるが、ここで発熱体は、スリットの深さ延長部に沿ってスリットによって完全に中断され、かつスリットの長さ延長部に沿ってスリットによって部分的にのみ中断される。
【0039】
例えば、固体導電性材料で作製されたブレード形状またはロッド状の発熱体は、発熱体の一つの端で開始するが、発熱体の長さ部分に沿って一部分にのみ延びてU字形状の導体経路を提供する、一つのスリットを含みうる。
【0040】
同様に、発熱体は、発熱体の同一の端で開始するが、発熱体の長さ部分に沿って一部分にのみ延びて一つの共通の中央分岐を有する二つの並列なU字形状の導体経路を提供する、二つの並列なスリットを含んでもよい。
【0041】
複数の抵抗導体経路の場合、制御回路は、それに並列に接続された抵抗導体経路それぞれに対するそれぞれのバイパスコンデンサーを含んでもよい。
【0042】
本発明の好ましい態様によれば、発熱体は、複数の層、特に少なくとも二つの層を含む多層発熱体としうる。有利なことに、発熱体の多層セットアップにより、異なる機能および効果を組み合わせることが可能となるが、ここで各層は少なくとも一つの特定の機能または効果を提供することが好ましい。このため、異なる層は、異なる材料を含んでもよく、および/または異なる幾何学的構成、特に異なる層の厚さを有してもよい。
【0043】
多層セットアップは、導電性強磁性またはフェリ磁性材料を含む本発明による発熱体に関して、特に有利である場合がある。強磁性またはフェリ磁性材料、特に高い透磁率を有する強磁性またはフェリ磁性材料は、むしろ可塑性である。従って、発熱体は、有利なことに、少なくとも一つの支持層および少なくとも一つの加熱層を含む多層発熱体である。少なくとも加熱層は、エアロゾル形成基体を加熱するための導電性の強磁性材料またはフェリ磁性材料を含む。対照的に、支持層は有利なことに、加熱層の強磁性またはフェリ磁性材料と比較して可塑性が少ない材料を含む。特に、支持層の曲げ剛性および/または回転剛性は、加熱層の曲げ剛性および/または回転剛性よりも大きい。こうした構成は有利なことに、支持層に起因する高い機械的剛性、および少なくとも一つの強磁性またはフェリ磁性加熱層に起因する高いAC抵抗およびそれ故に高い加熱効率を組み合わせる。
【0044】
好ましい実施形態によると、多層発熱体は、少なくとも一つの支持層および支持層を挟む少なくとも二つの加熱層を含み、加熱層の少なくとも一つ、好ましくは両方が、導電性の強磁性またはフェリ磁性材料を含む。両方の加熱層は、同一の導電性の強磁性またはフェリ磁性材料を含む、またはそれで作製され、同一の厚さを有することがさらにより好ましい。同一の導電性材料で作製される構成の対称的セットアップは、様々な層の熱膨張挙動の考えられる差異に起因する引張応力状態または圧縮応力状態が補正されるために特に有利である。
【0045】
加熱層はまた、異なる組成を有してもよく、すなわち、加熱層は異なるキュリー温度を有する異なる材料を含んでもよい。有利なことに、これは、例えば、較正または温度制御の目的で、加熱温度についての追加的な情報を提供しうる。
【0046】
少なくとも一つの加熱層または支持層を挟む二つの加熱層は、多層発熱体の縁層であることが好ましい。これにより、発熱体からエアロゾル形成基体への直接的な熱伝達が容易になる。
【0047】
十分な機械的剛性を確保するために、多層加熱組立品の少なくとも一つの層、好ましくは少なくとも支持層は固体材料で作製される。すべての層がそれぞれの固体材料で作製されることがより好ましい。
【0048】
さらに、少なくとも一つの支持層の層の厚さは、少なくとも一つまたは二つの加熱層の層の厚さよりも大きくてもよい。これはまた、十分な機械的剛性を提供することを容易にする。
【0049】
少なくとも一つの支持層は、非導電性材料で作製されうる。したがって、支持層は、二つの加熱層を並列に動作させるように、二つの挟んでいる加熱層を相互に分離する。別の方法として、二つの挟んでいる加熱層が直列に動作するとともに、なおもその間に配置された非導電性支持層によって分離されてもよい。このために、加熱層は、一方の端、特に発熱体の近位端において電気的に接続されうる。この構成では、非導電性の支持層は、発熱体を補強するためだけでなく、二つの加熱層の直列接続からなる発熱体を通る単一の導体経路を形成するためにも使用される。
【0050】
少なくとも一つの支持層はまた、導電性材料を含んでもよい。この場合、支持層のAC抵抗は、少なくとも一つの加熱層のAC抵抗とは異なる、好ましくはそれより低いことが好ましい。特に、少なくとも一つの加熱層が縁層である場合、AC駆動電流は、加熱層内の少なくとも一部または大部分に流れることが想定されるが、支持層のAC抵抗は、加熱層のAC抵抗よりも低くてもよい。結果として、放熱は主に加熱層内に発生する。さらに、最も低いAC抵抗を有する層のみを取る場合と比較して、AC抵抗が異なる層を有する多層発熱体の全体的なAC抵抗は、著しく増大しうる。
【0051】
従って、少なくとも一つの加熱層の導電性材料の比抵抗は、少なくとも一つの支持層の導電性材料の比抵抗よりも大きくてもよい。
【0052】
別の方法としてまたは追加的に、少なくとも一つまたは二つの加熱層の導電性材料の相対透磁率は、少なくとも一つの支持層の導電性材料の相対透磁率よりも大きい。少なくとも一つの支持層の導電性材料は、例えば、タングステン、アルミニウム、またはオーステナイトステンレス鋼などの常磁性であることが好ましい。
【0053】
層のそれぞれは、それぞれの隣接する層上にメッキ、堆積、被覆、クラッディングまたは溶接されてもよい。特に、いずれかの層は、スプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、電気メッキ、クラッディング、または抵抗溶接によって、それぞれの隣接した層上に塗布されてもよい。
【0054】
多層発熱体は、ロッド構成またはピン構成またはブレード構成であってもよい。ブレード構成の場合、各層自体はブレード構成であってもよい。ロッド構成またはピン構成の場合、多層発熱体は、加熱層として外側ジャケットによって囲まれる、または封入される、または被覆される支持層として内部コアを含みうる。ロッド状の発熱体は、その遠位端からその近位端に向かって発熱体の長さ部分に沿ってのみ延びてそれを通るU字形状の導体経路を提供する、長軸方向の中央スリットを含みうる。
【0055】
別の方法として、ロッド状の多層発熱体は、第一の加熱層として内部コア、および第二の加熱層として外側ジャケットを含みうる。内側コアと外側ジャケットとの間に、発熱体はさらに、第一の加熱層と第二の加熱層を分離するように、非導電性材料で作製された中間スリーブを支持層として含んでもよい。ただし、内部コアおよび外側ジャケットは、第一の加熱層と第二の加熱層との間の導体経路を提供するように、一方の端、好ましくはロッド状の発熱体の近位端において電気的に接続されうる。
【0056】
発熱体から制御回路に向けた熱伝達を低減するために、加熱組立品はさらに、制御回路を発熱体と動作可能に結合する導電性コネクターを備えうる。コネクターのAC抵抗は、発熱体のAC抵抗よりも低い。低いAC抵抗により、ジュール加熱によって生じる熱発生は、発熱体と比較して導電性コネクターにおいて著しく減少する。
【0057】
有利なことに、導電性コネクターは、500kHz~30MHz、特に1MHz~10MHz、好ましくは5MHz~7MHzの範囲の周波数を有する、発熱体を通過するAC駆動電流に関して、最大で25mΩ、特に最大で15mΩ、好ましくは最大で10mΩ、最も好ましくは最大で10mΩのAC抵抗を有する。
【0058】
導電性コネクターのAC抵抗は、表皮厚さを増大させることによって低減または最小化されうる。次に、表皮厚さは、導電性コネクターの比抵抗を低減すること、または透磁率を低減することの少なくとも一つによって増大する。従って、導電性コネクターの材料特性は、低比抵抗または低透磁率のうちの少なくとも一つを有するように選択されることが好ましい。特に、コネクターの導電性材料の相対透磁率は、発熱体の導電性材料の相対透磁率よりも低いことが好ましい。有利なことに、コネクターの導電性材料は常磁性である。例えば、発熱体はパーマロイCで作製されてもよく、コネクターはタングステンで作製されてもよい。
【0059】
追加的に、または別の方法として、加熱組立品はさらに、任意の過剰な熱を吸収し、そしてそれ故に制御回路における有害な熱効果を低減するために、制御回路またはコネクターのうちの少なくとも一つに熱的に結合された吸熱器を備えてもよい。吸熱器は、例えば、ヒートシンクまたは熱貯蔵部または熱交換器を含みうる。
【0060】
熱交換器の場合、熱交換器は、特に少なくとも一つの熱電発電機を含みうる。熱電発電機は、ゼーベックの原理に基づいて熱を電力に変換するためのエネルギー変換装置である。少なくとも一つの熱電発電機は、加熱組立品の電源に、または制御回路に直接的に、動作可能に接続されることが好ましい。一例として、熱電発電機は再充電の目的で、変換された電力を供給するために、電池に動作可能に接続されてもよい。
【0061】
吸熱器が熱貯蔵部である場合、吸熱器は相変化材料(PCM)を含む。相変化材料は、材料がその相を固体から液体、固体から気体、または液体から気体に、およびその逆に変化する際に、大量のエネルギーを貯蔵および放出する能力を有する高い融解熱を有する物質である。PCMは無機であってもよく、例えば、塩水和物であってもよい。別の方法として、PCMは有機、例えば、パラフィンまたは炭水化物であってもよい。
【0062】
ヒートシンクとして、吸熱器は、制御回路またはコネクターのうちの少なくとも一つと熱的に接触する冷却フィンまたは冷却リップを含みうる。加熱組立品がエアロゾル発生装置内に取り付けられる際、冷却フィンまたは冷却リップは、熱が気流通路内に放散されることを許容するように、エアロゾル発生装置の気流通路内に配置されてもよい。
【0063】
上述の通り、発熱体は、温度センサーとして、特にエアロゾル形成基体の温度を制御するように、好ましくは実際の温度を調整するように構成されうる。この可能性は、抵抗発熱体を形成するために使用される抵抗材料の温度依存抵抗特性に依存する。加熱組立品は、発熱体の抵抗を測定するための読み取り装置をさらに備えうる。読み取り装置は、制御回路の一部であってもよい。測定された温度は発熱体の実際の温度に直接対応する。測定された温度はまた、加熱されるエアロゾル形成基体に対する発熱体の位置、および発熱体からエアロゾル形成基体への熱供給の所定の特性に応じて、エアロゾル形成基体の実際の温度を示すものでありうる。
【0064】
加熱組立品、特に制御回路は、発熱体の温度を制御するための温度コントローラをさらに備えうる。このため、温度コントローラは、発熱体を通過するAC駆動電流を制御するように構成されることが好ましく、特に、温度コントローラは、発熱体の抵抗、およびそれ故に温度を測定するために上述の読み取り装置に動作可能に結合されうる。
【0065】
本発明によれば、エアロゾル形成基体と併用するためのエアロゾル発生装置も提供されており、エアロゾル発生装置は、本発明による、および本明細書で説明されている加熱組立品を備える。
【0066】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、少なくとも一つのエアロゾル形成基体と相互作用して、基体を加熱することによってエアロゾルを発生する能力を有する電気的に作動する装置を記述するために使用される。エアロゾル発生装置は、ユーザーによってユーザーの口を通して直接吸入可能なエアロゾルを生成するための吸煙装置であることが好ましい。特に、エアロゾル発生装置は手持ち式のエアロゾル発生装置である。
【0067】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体を意味する。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよく、または液体エアロゾル形成基体であってもよい。両方の場合において、エアロゾル形成基体は固体成分または液体成分のうちの少なくとも一つを含んでもよい。特に、エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含むたばこ含有材料を含んでもよい。それ故に、エアロゾル形成基体は、たばこ含有エアロゾル形成基体であってもよい。たばこ含有材料は、ばらの充填されたたばこまたは詰められたたばこ、またはたばこのシートの集合体もしくはたばこの捲縮したシートを含んでもよい。別の方法として、または追加的に、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。エアロゾル形成基体はまた、その他の添加物および成分(ニコチンまたは風味剤、特にたばこ風味剤など)を含んでもよい。エアロゾル形成基体はまた、ペースト様の材料、エアロゾル形成基体を含む多孔性材料のサシェ、または例えばゲル化剤または粘着剤と混合されたルースたばこであってもよく、これはグリセリンなどの一般的なエアロゾル形成体を含むことができ、これはプラグへと圧縮または成形される。
【0068】
エアロゾル形成基体は、エアロゾルを発生するためにエアロゾル発生装置と相互作用する、エアロゾル発生物品の一部であってもよく、消耗品であることが好ましい。例えば、物品は、固体、好ましくはたばこ含有エアロゾル形成基体を含む従来の紙巻たばこの形状に似た、ロッド状のエアロゾル発生物品であってもよい。別の方法として、物品は、液体、好ましくはたばこ含有エアロゾル形成基体を含むカートリッジであってもよい。
【0069】
エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基体または加熱されるエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品を受けるための受入れチャンバーを備えうる。受入れチャンバーは、エアロゾル発生装置の近位端に配置されることが好ましい。受入れチャンバーは、エアロゾル形成基体を受入れチャンバーの中へと挿入するための受入れ開口部を含みうる。一例として、エアロゾル発生装置は、上述の通り、固体エアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品、または液体エアロゾル形成基体を含むカートリッジを受けるためのくぼみを含みうる。別の方法として、エアロゾル発生装置は、その中に液体エアロゾル形成基体を直接受けるための貯蔵部を備えてもよい。
【0070】
加熱組立品の発熱体は、エアロゾル発生装置の受入れチャンバー内に少なくとも部分的に配置されてもよい。制御回路、および存在する場合には加熱組立品の電源は、エアロゾル発生装置の装置ハウジング内に配置されうる。加熱組立品は、エアロゾル発生装置のグローバル電源から電力供給されることが好ましい。
【0071】
エアロゾル発生装置はさらに、受入れチャンバーを通って延びる気流通路を備えてもよい。装置はさらに、気流通路と流体連通する少なくとも一つの空気吸込み口を備えてもよい。
【0072】
本発明によるエアロゾル発生装置のさらなる特徴および利点については、加熱組立品に関連して既に説明されており、繰り返さない。
【0073】
本発明によると、エアロゾル形成基体を抵抗加熱してエアロゾルを生成するための方法も提供されている。方法は、以下の工程、
- 加熱されるエアロゾル形成基体を提供する工程と、
- エアロゾル形成基体を加熱するための導電性の強磁性またはフェリ磁性材料を含む電気抵抗性のある発熱体を提供する工程であって、発熱体が、AC駆動電流を通過させる際にジュール加熱によって加熱されるように構成される、提供する工程と、
- エアロゾル形成基体を、エアロゾル形成基体に近接させて、またはエアロゾル形成基体に接触させて配置する工程と、
- AC駆動電流を提供する工程と、
- AC駆動電流を発熱体に通過させる工程と、を含む。
【0074】
方法は、本発明による、および本明細書に記載の通りの加熱組立品またはエアロゾル発生装置を使用して実施されることが好ましい。またはその逆として、本発明による、および本明細書に記載の通りの加熱組立品またはエアロゾル発生装置は、本発明による、および本明細書に記載の通りの方法を使用して動作されうる。
【0075】
加熱組立品に関して上述した通り、AC駆動電流を提供する工程は、有利なことに、500kHz~30MHz、特に1MHz~10MHz、好ましくは5MHz~7MHzの範囲の周波数を有するAC駆動電流を提供することを含む。
【0076】
加熱組立品に関してさらに上述した通り、AC駆動電流は、スイッチング電力増幅器を使用することにより提供されうる。
【0077】
さらに、スイッチング電力増幅器を使用してAC駆動電流を提供する工程は、スイッチング電力増幅器を20%(パーセント)~99%(パーセント)、特に30%~95%、好ましくは50%~90%、最も好ましくは60%~90%の範囲の負荷サイクルで動作させることを含みうる。この範囲の負荷サイクルでスイッチング電力増幅器を動作させることは、有利なことに、制御回路の熱損傷のリスクなしに、制御回路の温度を合理的に低いままとし、なおも発熱体がエアロゾル発生のための十分に高い温度に達することを可能にする。
【0078】
本発明による方法のさらなる特徴および利点については、加熱組立品およびエアロゾル発生装置に関連して既に説明されており、繰り返さない。
本発明を、添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】
図1は、エアロゾル形成基体を抵抗加熱するための、本発明による電気加熱組立品を備えるエアロゾル発生装置の例示的な実施形態を概略的に図示する。
【
図2】
図1による加熱組立品の回路図の第一および第二の実施形態を概略的に図示する。
【
図3】
図1による加熱組立品の回路図の第一および第二の実施形態を概略的に図示する。
【
図4】本発明による加熱用ブレードの第一、第二、第三および第四の実施形態を概略的に図示する。
【
図5】本発明による加熱用ブレードの第一、第二、第三および第四の実施形態を概略的に図示する。
【
図6】本発明による加熱用ブレードの第一、第二、第三および第四の実施形態を概略的に図示する。
【
図7】本発明による加熱用ブレードの第一、第二、第三および第四の実施形態を概略的に図示する。
【
図8】本発明による多層加熱用ブレードの例示的な実施形態を概略的に図示する。
【
図9】本発明による多層加熱用ブレードの例示的な実施形態を概略的に図示する。
【
図10】本発明による多層加熱用ロッドの例示的な実施形態を概略的に図示する。
【
図11】本発明による多層加熱用ロッドの例示的な実施形態を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1は、エアロゾル形成基体210を抵抗加熱するための、本発明による電気加熱組立品100を備えるエアロゾル発生装置1の例示的な実施形態の概略図である。
【0081】
エアロゾル発生装置1は、装置1の近位端2において、加熱されるエアロゾル形成基体210を受けるための受入れチャンバー20を含む装置ハウジング10を備える。本実施形態において、エアロゾル形成基体210は固体たばこ含有エアロゾル形成基体である。基体210は、ロッド状のエアロゾル発生物品200の一部である。物品200は、従来的な紙巻たばこの形状に似ており、装置1の受入れチャンバー20内で受けられるように構成される。エアロゾル形成基体210に加えて、物品200は、支持要素220、エアロゾル冷却要素230およびフィルター要素240を備える。これらのすべての要素はエアロゾル形成基体210に連続して配置され、基体は物品200の遠位端に配置され、フィルター要素は物品200の近位端に配置される。基体210、支持要素220、エアロゾル冷却要素230およびフィルター要素240は、物品200の外周面を形成する紙ラッパーによって囲まれている。
【0082】
本発明による加熱組立品の主要概念は、AC駆動電流を抵抗発熱体110に通過させ、これにより、抵抗発熱体110がエアロゾル形成基体210と熱的に近接する、または密接する、ということに基づく。AC駆動電流を使用することで、有利なことに、エアロゾル形成基体210を加熱するのに適した範囲の温度に達するなど、十分なジュール加熱(表皮効果による)をなおも提供する、大量かつそれ故に機械的に堅牢な発熱体を使用することが可能になる。
【0083】
図1に示す加熱組立品100の実施形態では、発熱体110は、500kHz~30 MHzの範囲の周波数を有するAC駆動に対して10mΩ~1500mΩの範囲のAC抵抗Rを有する固体の導電性の強磁性またはフェリ磁性材料(例えば、パーマロイ)で作製されたブレードである。加熱用ブレード210は固体材料で作製されることが好ましい。有利なことに、この範囲の抵抗は、エアロゾル形成基体210を加熱するのに十分に高い。同時に、発熱体110は、変形または破損のリスクなしに、エアロゾル形成基体210と接触する、およびエアロゾル形成基体210と接触しなくなるのに十分な機械的安定性を提供する。特に、発熱体110のブレード形状の構成は、エアロゾル発生物品200をエアロゾル発生装置1の受入れチャンバー20の中へと挿入する際に、エアロゾル形成基体210の中へと容易に貫通させることを可能にする。
【0084】
図1でさらに分かるように、加熱用ブレード110は、エアロゾル発生装置1の装置ハウジング10内に固定して配置され、受入れチャンバー20内の中心に延びる。加熱用ブレード110の近位端111における先細りした近位端部分は、装置1の近位端2における受入れ開口部に向かって面している。
【0085】
発熱体110に加えて、加熱組立品100は、発熱体110と動作可能に結合され、500kHz~30MHzの範囲のAC駆動電流を提供するように構成された制御回路120を備える。従って、AC駆動電流を発熱体110に通過させる際、発熱体はジュール加熱によって加熱される。
【0086】
制御回路120、およびそれ故に加熱プロセスは、DC電源140によって電力供給される。本実施形態では、DC電源140は、装置1の遠位端3において装置ハウジング10内に配置された再充電可能電池である。電池は、装置1の他の構成要素にも使用されうるエアロゾル発生装置1の加熱組立品100の一部またはグローバル電源の一部としうる。
【0087】
図2は、
図1に示すエアロゾル発生装置1で使用される加熱組立品100の回路図の第一の実施形態の概略図である。この第一の実施形態によれば、制御回路120は基本的に、DC電源140によって提供されるDC電流/電圧IDC/+VDCを、発熱体110を動作させるための500kHz~30MHzの範囲のAC駆動電流に反転するためのDC/ACインバータ121を含む。
【0088】
本実施形態では、DC/ACインバータ121はクラスE増幅器を含む。クラスE増幅器は、トランジスタスイッチT1、例えば金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、トランジスタスイッチ駆動回路PG、およびLC負荷ネットワークを含む。LC負荷ネットワークは、コンデンサーC1とインダクタL1の直列接続を含む。さらに、LC負荷ネットワークは、トランジスタスイッチT1に並列、かつコンデンサーC1とインダクタL1の直列接続に並列な分路コンデンサーC2を含む。さらに、制御回路は、クラスE増幅器にDC供給電圧+VDCを供給するためのチョークL2を含む。上述の通り、発熱体は抵抗を構成するだけでなく(小さな)インダクタンスを構成する。したがって、
図2による回路図では、発熱体110は、抵抗R110とインダクタL110の直列接続によって表される。発熱体110の抵抗負荷R110はまた、インダクタL1の抵抗負荷を表しうる。これらの少ない数の構成要素は、DC/ACインバータ121の容積を非常に小さく保つことを可能にし、それ故に加熱組立品100の全体的な容積も非常に小さく保つことを可能にする。
【0089】
クラスE増幅器の一般的な動作原理は一般的に周知である。クラスE増幅器およびその一般的動作原理基準の詳細については、例えば、記事「Class-E RF Power Amplifiers(クラスE RF電力増幅器)」(Nathan O.Sokal、American Radio Relay League(ARRL)(米国コネチカット州ニューイントン5)の隔月誌QEX、2001年1月/2月号、9~20ページに公表)を参照されたい。上記記事は、DC/ACインバータ121の様々な構成要素の寸法について考慮される関連する等式についても説明している。
図2に示す第一の実施形態では、インダクタL1は、50nH(ナノヘンリー)~200nH(ナノヘンリー)の範囲のインダクタンスを有してもよく、インダクタL2は、0.5μH(マイクロヘンリー)~5μH(マイクロヘンリー)の範囲のインダクタンスを有してもよく、コンデンサーC1およびC2は、1nF(ナノファラド)~10nF(ナノファラド)の範囲の静電容量を有してもよい。
【0090】
図3は、加熱組立品100の回路図の第二の実施形態の概略図である。この第二の実施形態による回路図は、
図2に示す第一の実施形態と非常に類似している。従って、同一または類似の構成要素は、同一の参照番号で示されている。
図2の回路図に加えて、第二の実施形態の回路図は、発熱体110に並列に、すなわち、抵抗R110とインダクタL110の直列接続に並列に接続されるバイパスコンデンサーC3を含む。有利なことに、バイパスコンデンサーC3の容量は、LCネットワークのコンデンサーC1の容量よりも大きく、特に少なくとも2倍大きく、好ましくは少なくとも5倍大きく、最も好ましくは少なくとも10倍大きい。したがって、発熱体110のバイパスコンデンサーC3およびインダクタL110は、AC駆動電流の大部分が通過するLC共振器を形成し、AC駆動回路のわずかな部分のみがLCネットワークのインダクタL1およびコンデンサーC1を介してトランジスタスイッチを通過する。このため、バイパスコンデンサーC3は、有利なことに、発熱体110から制御回路120に向けた、特に、トランジスタスイッチT1に向けた熱伝達の減少を生じさせる。バイパスコンデンサーC3は、発熱体110の近くに配置されるが、制御回路120の残りの部分からは離れている場合がある。制御回路120の残り部分は、PCB(プリント回路基板)上に配置されることが好ましい。
【0091】
発熱体110から制御回路120に向けた熱伝達は、制御回路120を発熱体110に動作可能に結合する導電性コネクターを提供することによってさらに低減されうるが、コネクター130のAC抵抗は発熱体110のAC抵抗よりも低い。これは、例えば、コネクター130および発熱体110に対して適切な導電性材料を選択することによって達成されうる。特に、それぞれの材料は、コネクター130の導電性材料の相対透磁率が発熱体110の導電性材料の相対透磁率よりも低くなるように選択されうる。このため、表皮厚さが大きくなり、そしてそれ故にAC抵抗は、発熱体110におけるよりもコネクター130において低くなる。コネクター130の導電性材料は常磁性であることが好ましい。
図1に示す実施形態では、発熱体120は、例えば、タングステンで作製される二つのコネクター素子131、132によって動作可能に結合されており、発熱体110はパーマロイCで作製される。
【0092】
追加的に、または別の方法として、加熱組立品は、制御回路120に対する有害な熱効果を低減するために、制御回路120またはコネクター130のうちの少なくとも一つに熱的に結合された吸熱器を備えてもよい。例えば、
図2および
図3に示されるLC回路のインダクタL1は、熱吸収材料内、例えば、高温セメント内に組み込まれうる。
【0093】
図4は、
図1による加熱組立品110で使用される抵抗加熱用ブレード110の拡大図である。この実施形態では、加熱用ブレードは、遠位端112から加熱用ブレードの近位端111に向かって延びる長軸方向の中央スリット113を含む。ただし、加熱用ブレード110は、ブレードの長さ延長部に沿ってスリット113によって部分的にのみ中断される。対照的に、ブレードは、ブレード110の深さまたは厚さ延長部に沿って、スリット113によって完全に中断される。その結果、加熱用ブレードは、AC駆動電流をブレードに通過させるためのU字形状の導体経路(破線両方向矢印で示す)を提供する。その遠位端112において、導体経路は、AC駆動電流を供給するための二つの供給点114を含む。
【0094】
その近位端111において、加熱用ブレード110は、ブレードを物品200のエアロゾル形成基体210の中へと容易に貫通することを可能にする先細りした先端部分を含む。
【0095】
加熱用ブレード110は、5mm(ミリメートル)~20mm(ミリメートル)、特に10mm~15mmの範囲の長さ、2mm~8mm、特に4mm~6mmの範囲の幅、および0.2mm~0.8mm、特に0.25mm~0.75mmの範囲の厚さを有しうる。
【0096】
図5は、加熱用ブレード110の第二の実施形態を示す。
図4とは対照的に、この第二の実施形態による加熱用ブレード110は、加熱用ブレード110の長さ部分に沿って相互に並列に延びる二つの長軸方向のスリット113.1、113.2を含む。その結果、加熱用ブレード110は、AC駆動電流をブレードに通過させるための二つの並列なU字形状の導体経路を提供しており、二つの経路(破線両方向矢印によって示す)は、一つの共通分岐を有する。したがって、導体経路は、AC駆動電流を供給するための合計三つの供給点114を含む。並列な二つの経路を有することにより、有利なことに、放熱が増大し、そしてそれ故に加熱効率が高まる。
【0097】
図6および
図7は、加熱用ブレード110の第三および第四の実施形態を示しており、これらもまた、放熱、およびそれ故に熱効率を高めることを目的としている。両実施形態において、加熱用ブレード110は複数のセクションに沿ったスリット113を有し、蛇行様またはジグザグ様構成を有する単一の導体経路をもたらす。このため、導体経路の全長およびそれ故に放熱の総量は、
図4の構成と比較して著しく増大している。
【0098】
図6に示す第三の実施形態によれば、加熱用ブレード110は、加熱用ブレード110の長さ部分に沿って相互に並列な二つの長軸方向のスリット113.1、113.2を含む。二つの長軸方向のスリット113.1、133.2は、近位端111からブレード110の遠位端112に向かって延びているが、遠位端112には達していない。さらに、加熱用ブレード110は、二つの並列なスリット113.1、113.2を少なくとも部分的に囲むU字形状のスリット113.3を含む。U字形状のスリット113.3の基部は加熱用ブレード110の遠位部分に配置され、U字形状のスリット113.3の分岐はブレード110の近位端111に向かって延びているが、近位端111には達していない。さらに、加熱用ブレード110は、遠位端112から加熱用ブレード110の近位端111に向かって加熱用ブレード110の長さ部分に沿って延びるが、近位端111には達していない、長軸方向の中央スリット113.4を含む。
図6から分かるように、長軸方向の中央スリット113.4は、二つの長軸方向軸のスリット113.1の間に並列かつ少なくとも一部に延び、U字形状のスリット113.3の基部と交差する。その結果、スリット113.1、113.2、113.3、113.4は、蛇行形状またはジグザグ形状の導体経路を提供する。
【0099】
図7に示す第四の実施形態によれば、加熱用ブレード110は、加熱用ブレード110の遠位端112から近位端111に向かって加熱用ブレード110の長さ部分に沿って延びるが、近位端111には達していない、長軸方向の中央スリット113.1を含む。長軸方向の中央スリット113.1と並行して、加熱用ブレード110はさらに、ブレード110の長軸方向の端に向かって延びるがこれには達しておらず、これによって、横断方向の構成で中央スリット113.1と交差する、複数の横断方向のスリット113.2を含む。さらに、加熱用ブレード110は、ブレード110の両方の長軸方向の端に沿って配置された複数の側面スリット113.3を含む。側面スリット113.2は、横断方向のスリット113.2に対してオフセット構成にある。側面スリット113.2それぞれは、ブレード110のそれぞれの長軸方向の端から長軸方向の中央スリット113.1に向かって延びるが、長軸方向の中央スリット113.1には達していない。その結果、スリット113.1、113.2、113.3、113.4は、蛇行形状またはジグザグ形状の導体経路を提供する。
【0100】
図8および
図9は、多層発熱体110の第一の実施形態の概略図である。多層発熱体は、
図4に示す加熱用ブレード110と本質的に同一の外側形状を有するブレード構成である。従って、同一または類似の構成要素は、同一の参照番号で示されている。
図4による加熱用ブレードは実質的に単一の固体導電性材料または部品で作製されるが、
図8および9による多層加熱用ブレード110は、縁層として二つの加熱層110.1、110.2と、二つの加熱層110.1と110.2との間に挟まれた一つの支持層110.3とを含む。加熱層110.1、110.2は、固体導電性強磁性材料、例えば、パーマロイで作製される。強磁性材料はむしろ可塑性であってもよいが、支持層110.3は、加熱用ブレード110の全体的な機械的剛性を増大させることを目的としている。このために、支持層110.3は、例えば、加熱層110.1、110.2の材料よりも著しく可塑性が少ない固体導電性材料、例えばタングステンまたはステンレス鋼を含む。
【0101】
AC駆動電流を加熱用ブレード110に通過させる際、AC駆動電流は加熱層110.1、110.2内の少なくとも一部または大部分に流れることが想定されるが、支持層110.3のAC抵抗は、加熱層110.1、110.2のAC抵抗よりも低くてもよい。結果として、放熱は主に加熱層110.1、110.2内に発生する。支持層のみを取る場合と比較して、多層発熱体の全体的なAC抵抗は著しく増大する。
【0102】
図8による加熱用ブレード110の先細りした近位先端部分の断面図である
図9から特に分かる通り、少なくとも二つの加熱層110.1、110.2は、同一の層の厚さを有し、同一の材料で作製される。このため、加熱用ブレード110の全体的なセットアップは対称的であり、それ故に、様々な層の熱膨張挙動の考えられる差異に起因する引張応力状態または圧縮応力状態が補正される。
【0103】
本実施形態では、様々な層110.1、110.2、110.3は、クラッディングによって相互に接続される。
【0104】
図10および
図11は、多層発熱体110の第二の実施形態の概略図である。ブレード構成の代わりに、この実施形態による発熱体110はロッド構成である。この構成では、多層発熱体110は、支持層110.5としての内部コアを含み、これは加熱層110.4としての外側ジャケットによって囲まれる。加熱層110.4は、固体導電性強磁体材料、例えば、パーマロイで作製される。対照的に、支持層110.5は、例えば、加熱層110.4の材料よりも著しく可塑性が少ない固体導電性材料、例えばタングステンまたはステンレス鋼で作製される。
図8および9に関して上述する通り、支持層110.5は、ロッド状の加熱ブレード110の全体的な機械的剛性を増大させることを意図している。同様に、AC駆動電流を加熱用ブレード110に通過させる際に、AC駆動電流は、外側加熱層110.4内の少なくとも一部または大部分に流れることが想定され、ここで放熱が主に発生する。
【0105】
図10によるロッド状の発熱体110の断面図である
図11から特に分かる通り、発熱体110は、それを通るU字形状の導体経路を提供するために、その遠位端112からその近位端112に向かって、発熱体の長さ部分に沿って延びる長軸方向の中央スリット113を含む。
【0106】
その近位端111において、ロッド形状の発熱体110は、加熱ロッドのエアロゾル形成基体の中への貫通を容易に可能にする先細りした先端部分を含む。