(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】汚染された産業用機器を清浄化するための溶剤組成物およびプロセス
(51)【国際特許分類】
C11D 1/75 20060101AFI20220727BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20220727BHJP
C11D 3/386 20060101ALI20220727BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20220727BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C11D1/75
C11D3/37
C11D3/386
C11D7/50
B08B3/08 Z
(21)【出願番号】P 2019559002
(86)(22)【出願日】2018-01-16
(86)【国際出願番号】 US2018013803
(87)【国際公開番号】W WO2018132813
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-15
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510331157
【氏名又は名称】ユナイテッド ラボラトリーズ インターナショナル, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】マッツァ,スティーヴン,ディー.
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03091066(EP,A1)
【文献】米国特許第09206380(US,B1)
【文献】特開2008-094881(JP,A)
【文献】特表2013-518148(JP,A)
【文献】特開平11-116988(JP,A)
【文献】米国特許第05642743(US,A)
【文献】特開平08-014499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D1/00-19/00
C23G1/00-5/06
B08B3/00-3/14
C08G77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンオキシド、
ポリジメチルシロキサン、および
水、を含み、
前記ポリジメチルシロキサン
が1ppm
~100ppmの量で存在する、溶剤組成物。
【請求項2】
前記アミンオキシドが5個~22個の-CH
2-基を含む、請求項1に記載の溶剤組成物。
【請求項3】
前記アミンオキシド
が30ppm
~2,100ppmの量で存在する、請求項1に記載の溶剤組成物。
【請求項4】
酵素混合物をさらに含む、請求項1に記載の溶剤組成物。
【請求項5】
前記酵素混合物が、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ペクチナーゼまたはそれらの組合せを含む、請求項4に記載の溶剤組成物。
【請求項6】
前記酵素混合物
が1ppm
~100ppmの量で存在する、請求項4に記載の溶剤組成物。
【請求項7】
容器を除染する方法であって、
アミンオキシド、ポリジメチルシロキサンおよび水を含む溶剤組成物を提供すること、
前記溶剤組成物を前記容器に導入すること、
前記溶剤組成物が前記容器に存在する汚染物の少なくとも一部と接触することを可能にすること、および
前記溶剤組成物を前記容器から排出すること、を含み、
前記溶剤組成物を前記容器に導入する工程が、スチームを前記容器に導入することを含む、方法。
【請求項8】
前記汚染物が、炭化水素、硫化水素、金属硫化物またはそれらの組合せを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶剤組成物が酵素混合物をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶剤組成物を前記容器に導入する前記工程が、前記溶剤組成物を前記容器の内部で循環させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記溶剤組成物を前記容器に導入する前記工程が液体ボイルアウトを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記溶剤組成物を、スチームを含むスチームラインに注入することをさらに含み、前記スチームラインにより、前記スチームが前記容器に導入される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記スチーム
が50psi
~200psiの圧力での飽和スチームである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶剤組成物の沸点が前記スチームラインにおける水の沸点とほぼ等しくなるように前記溶剤組成物の各成分の濃度を調節する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記溶剤組成物が廃棄物容器に排出され、かつ、使用済みアミンオキシドがすくい取られる、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
容器を除染するためのシステムであって、
アミンオキシド、ポリジメチルシロキサンおよび水を含む溶剤組成物、
スチームライン、ならびに
前記溶剤組成物を前記スチームラインに導入すること、を含むシステム。
【請求項17】
前記スチームライン
が50psi
~200psiの圧力での飽和スチームを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記スチームライン
が50psi
~200psiの圧力での不飽和スチームを含む、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援による研究開発に関する記載
該当せず。
本発明は産業用設備浄化の分野に関連し、より具体的には、残油、硫化水素、可燃性ガス、発火性鉄硫化物および他の汚染物質を産業用機器から解離させ、続いて除くことに関連する。
【背景技術】
【0002】
原油および天然ガスの精製プロセスの稼働期間中において、様々な汚染物質(例えば、残油、硫化水素および発火性化合物など)が副産物として生じる場合がある。これらの汚染物質により、容器、タンク、または他のタイプの産業用機器が汚染される場合がある。産業用機器の汚染は、運転停止時間の増大、不良な処理結果、ならびに毒性化合物および発火性化合物に伴う安全上の危険などの様々な問題を引き起こし得る。
【0003】
産業用機器の清浄化および除染のための数多くの取り組み法が開発されている。一部の精油所では、単位装置の単純なスチーム洗浄(steaming out)が、汚染物を除くために実施される場合がある。スチームでは発火性鉄硫化物が除けないことがあり、また、硫化水素が中和されないことがあるので、単独でのスチーム導入(steaming)は不完全な取り組み法である場合がある。スチーム洗浄は、典型的には単位装置が長期間にわたって運転停止されなければならないことがある一般に緩慢なプロセスである場合がある。加えて、除染のためのスチームに伴う過度な温度は、機器に存在する炭化水素を炭化し、その結果、元々存在していたものよりも頑固な堆積物をもたらす場合がある。当該頑固な炭化水素堆積物は、より長い運転停止時間または機器損傷をもたらすことがある機械的作用によって除かれ得る。
【0004】
化学薬品(例えば、柑橘類由来水性製造物、水系製造物、低沸点石油留分(例えば、ナフサ、ガソリン、ベンゼンなど)、強力な酸化剤、ターペンタインなど)を使用する他の取り組み法、同様にまた、凍結および掻き取りなどの物理的な取り組み法が開発されており、これらはすべてが、様々な成功度ではあるが、汚染物質を除くために使用されている。溶剤(例えば、d-リモネンまたは各種テルペンなど)を含む除染用製造物は多くの場合、脱油を達成するために、強力な乳化剤(例えば、アニオン性乳化剤または非イオン性乳化剤など)とともに使用される。溶剤系製造物を使用しての機器の除染または清浄化は一般には、機器内に給送するために当該溶剤を液体形態で循環させるか、または当該溶剤をスチームでの注入により導入することによって達成されている。蒸留塔の場合には、前記液体が、複数の注入点を使用してスチームによって蒸留塔全体に注入され得る。除染産物が混合タンクまたは他の容器に集められ、その結果、乳化物が処理され、その後、廃棄物を処理施設に送ることができるようにされる場合がある。
【0005】
従前の工業的除染技術では、汚染物を除去するための多段階プロセスが、硫化物中和および他の反応の期間中における従来の酸化剤に伴う大きい発熱反応に起因して含まれる場合がある。典型的には、一連の脱油および/または脱ガスが実施される場合があり、その後、一連の酸化が実施される場合がある。これらの別個の工程により、引火性汚染物と組み合わされる高熱の安全上の危険性が最小限に抑えられ得ることが保証される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのような従来の取り組み法は様々な欠点を有し得る。例えば、柑橘類由来水性製造物では、強力な乳化剤を伴わない場合でさえ、乳化物を形成することがあり、そのため、破壊するための乳化破壊剤が使用される場合がある。水系製造物では、炭化水素のどれもがリサイクルプロセスのために回収されることになるならば、冗長な分離労力が必要となる場合がある。加えて、いくつかの水系製造物ではまた、溶剤前処理が、汚染物質の溶解を開始させるために必要となる場合がある。石油留分は非常に引火性であり、水により容易に洗い流すことができない場合がある。凍結および掻き取りによる方法は、さらなる作業者を必要とすることがあり、それらの作業者にとって使いやすく、かつ安全である容器において使用され得るだけである。最後に、これらの同じ取り組み法の多くは生分解性でない。生分解性の欠如により、所与の取り組み法が使用され得る用途だけでなく、当該取り組み法が使用され得る操作部位もまた限定される。
【0007】
したがって、汚染物質を除去するための新規な溶剤組成物およびプロセスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
好ましい実施形態のいくつかの概要
当技術分野におけるこれらの要求および他の要求が、1つの実施形態においては、アミンオキシド、ポリジメチルシロキサンおよび水を含む溶剤組成物によって対処される。
【0009】
当技術分野におけるこれらの要求および他の要求が、他の実施形態においては、アミンオキシド、ポリジメチルシロキサンおよび水を含む溶剤組成物を提供することを含む、容器を除染する方法によって対処される。本方法はまた、前記溶剤組成物を容器内に導入することを含む。本方法はさらに、前記溶剤組成物が前記容器に存在する汚染物の少なくとも一部と接触することを可能にすることを含む。加えて、本方法は、前記溶剤組成物を前記容器から排出することを含む。
【0010】
当技術分野におけるこれらの要求および他の要求が、さらなる実施形態においては、アミンオキシド、ポリジメチルシロキサンおよび水を含む溶剤組成物を含む、容器を除染するためのシステムによって対処される。本システムはまた、スチームラインを含む。加えて、本システムは、前記溶剤組成物を前記スチームラインに導入することを含む。
【0011】
前記では、下記の発明の詳細な説明がよりよく理解され得るために、本発明の特徴および技術的利点がかなり大まかに概説されている。本発明の請求項の主題を形成する本発明のさらなる特徴および利点が本明細書中下記において記載されるであろう。開示される概念および具体的な実施形態は、本発明の同じ目的を行うために他の実施形態を改変するための、または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されなければならない。そのような同等な実施形態は、添付された請求項において示されるような発明の精神および範囲から逸脱しないこともまた、当業者によって認識されなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい実施形態の詳細な説明
様々な実施形態において、溶剤組成物は、水、界面活性剤、消泡剤および酵素の混合物を含む場合がある。限定されないが、本発明の溶剤組成物は、産業用設備(例えば、製油所、天然ガス処理プラント、石油化学設備、港湾ターミナルなど)における産業用機器からの汚染物質の解離および/または溶解をもたらし得る。様々な実施形態において、本発明の溶剤組成物は、容器、タンク、真空塔、熱交換器、配管および蒸留塔などを含めて、産業用設備において使用されるどのような産業用の機器または容器からであっても汚染物質を除くために使用され得る。さらには、限定されないが、本発明の溶剤組成物は、有人での進入を安全な様式で可能にするように、十分な量の汚染物質を前記産業用の機器または容器から除去し得る。様々な実施形態において、除去される汚染物質には、原油精製、天然ガス加工、炭化水素輸送、炭化水素加工および炭化水素浄化などのプロセスの期間中に生じる、貯蔵される、輸送される、または他によるどのような汚染物質も含まれ得る。様々な実施形態において、汚染物質の例には、残油、硫化水素、可燃性ガスおよび発火性鉄硫化物など、またはどのような組合せであれ、それらの組合せが含まれ得る。様々な実施形態において、前記汚染物質は、当該汚染物質が解離および/または溶解させられ、その後、続いて上記産業用機器から除去され得るように、本発明の溶剤組成物と接触させられる。前記汚染物質は前記過程において酸化され、無害な形態にされ得る。
【0013】
上記で議論されたように、工業用除染溶液を配合する様々な試みでは、多段階工程が、汚染物が安全に除去されることを確実にするために一般に使用されている。本明細書中に記載される溶剤組成物は、前記酸化剤が従来の酸化剤と比較して比較的穏やかであり得るので、脱油および酸化の前記別個の工程を含まなくてもよい。穏やかな酸化剤は、大きい発熱反応およびその後の温度上昇を有しないことがある。限定されないが、当該酸化プロセスはエネルギーがより低いため、本発明の溶剤組成物を使用する工業的除染作業では、除染サイクルのすべての工程が1つの化学的適用により同時かつ安全に実施され得る。
【0014】
一実施形態において、汚染物除去プロセスでは、本発明の溶剤組成物が、本発明の溶剤組成物である1つの化学的配合物を要する一段階プロセスにおいて必要とされる。本発明の溶剤組成物を含む前記汚染物除去プロセスでは、除染の様々な異なる要素の汚染物が前記一段階プロセスにおいて除去され得る。この場合、そのような要素には、脱油、脱ガス、発火性中和、毒性成分除去、またはどのような組合せであれ、それらの組合せが含まれる。様々な実施形態において、限定されないが、前記汚染物除去プロセスは、脱油/脱ガス、発火性中和および硫化物酸化を、別個で、かつ逐次的な工程として含まない。これは、限定されないが、安全上の危険性の原因となる大きい発熱が存在しないからである。例えば、一実施形態において、第三級アミンオキシドは、前記汚染物除去プロセスが、除染の実質的にすべての工程が一回の適用によりほぼ同時かつ安全に行われる迅速かつ効率的なプロセスであることを可能にする穏やかな酸化剤である。様々な実施形態において、本発明の溶剤組成物は炭化水素溶剤をどのようなものであれ含まない。一実施形態において、前記汚染物除去プロセスでは、本発明の溶剤組成物が、スチームに分散される液体(例えば、スチーム分散物)として送られるのではなく、むしろ、本発明の溶剤組成物の実質的に完全な気化が含まれ、このことは、前記アミンオキシドが真の蒸気として送られ、汚染された機器または容器を通り抜けることを可能にする。
【0015】
本発明の溶剤組成物の実施形態は水を含む場合がある。本発明の溶剤組成物において使用される前記水には、例えば、淡水または塩水(例えば、1つもしくは複数の塩またはそのイオンを含有する水)が含まれ得る。前記水は、どのような供給源のものであってもよい。様々な実施形態において、前記水は、本発明の溶剤組成物における他の成分に望ましくない影響を与え得る化合物を過剰に含有しない。当業者は、本開示の助けにより、特定の適用のための水の適切な供給源およびタイプを選択することができるはずである。
【0016】
本発明の溶剤組成物の実施形態は、アミンオキシドなどのカチオン性界面活性剤を含む界面活性剤を含む場合がある。好適なアミンオキシドは一般には、下記に示されるような式1に従い得る。式1は第三級アミンオキシドを例示しており、しかし、当業者は、第一級アミンオキシドおよび第二級アミンオキシドもまた使用され得ることを理解するであろう。前記アミンオキシドの構造は複数の-CH
2-基を含んでもよく、その数が式1において文字「n」によって示される。前記アミンオキシドの実施形態は5個~22個の-CH
2-基を含む場合がある。例えば、nは約5~約22である場合があり、代替において約6~約20である場合があり、代替において約8~約20である場合があり、さらなる代替において約10~約18である場合があり、あるいは代替において約12~約16である場合がある。溶剤組成物は、様々な数の-CH
2-基を有するいくつかのアミンオキシドを含む場合がある。本発明の溶剤組成物の実施形態は、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の異なるアミンオキシドを含む場合がある。好適なアミンオキシドの例には、N,N-ジメチルデシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルテトラデシルアミン、N,N-ジメチルヘキサデシルアミン、N,N-ジメチルオクタデシルアミン、またはどのような組合せであれ、それらの組合せが含まれる。汚染物の中には、より短鎖のアミンオキシドとのより大きい反応性を有し得るものがあり、また、汚染物の中には、より長鎖のアミンオキシドとのより大きい反応性を有し得るものがあるので、1つまたは複数のアミンオキシドを選択することにより、汚染物除去が支援され得る。
【化1】
【0017】
アミンオキシドは界面活性剤として作用し、かつ、蒸気と、液体との間での表面張力を低下させ得るので、ガス(例えば、可燃性ガス)が、例えば、製油所スチームなどによって、より容易に機器から放出され、かつ、除去され得る。ガスが、表面張力における低下を伴うことなく、液体が通常は漏れないであろうところにまで液体に十分に同伴または溶解し得る。ガスが同伴または溶解し得る前記液体は、プロセス機器に存在するどのような液体であってもよい。一般に、製油所または化学プラントにおける液体は、炭化水素の液体(例えば、油など)、他の半固体の炭化水素(例えば、ビチューメンまたは石油ゲルなど)、またはそれらの組合せであり得る。前記ガスは、どのようなガスであってもよく、例えば、限定されないが、爆発下限界(LEL)を超える量で存在する炭化水素ガスおよび他の可燃性ガスなどである場合がある。LELを超えて存在する可燃性ガスは、高温にさらされるならば、自然発火する場合がある。アミンオキシドは、液体に同伴されるガスの少なくとも一部を放出させることを助け得ることが理解されなければならない。
【0018】
アミンオキシドはまた、乳化剤および/または湿潤化剤として作用し得る。例えば、前記アミンオキシドは、相間(例えば、油-水の間または水-蒸気の間など)の表面張力を低下させ得る。限定されないが、前記アミンオキシドによるそのような作用は、撹拌が行われている間は短時間にわたって水に分散するように油の小さい液滴を含むことができ、これにより、一時的な水中油型エマルションを形成することを容易にし得る(なお、このエマルションは、当該撹拌が止むと、すぐに壊れることがある)。本発明の溶剤組成物に存在する前記アミンオキシドは、機器に存在する油および他の炭化水素を乳化し得る。前記油は本発明の溶剤組成物のバルク水相に乳化され、懸濁され得る。乳化されると、油はバルク相とともに移動し、プロセス機器から搬送され得る。アミンオキシドを使用することの1つの潜在的利点が、形成されるエマルションが緩く保持されるということであり得る。緩く保持されたエマルションは、破壊するための解乳化剤を必要としなくてもよいエマルションを示す(すなわち、乳化破壊剤が存在しなくてもよい)。緩く保持されたエマルションにおいて形成されるミセルは、撹拌が停止されると、すぐに合体し得るので、該緩く保持されたエマルションは比較的容易に壊れ得る。前述されたように、プロセス機器汚染物除去のための溶剤組成物を配合する他の試みでは一般に、強力な解乳化剤が、形成されたエマルションを破壊するために添加され得る保持タンクが使用される。様々な実施形態において、本開示の溶剤組成物では、自己崩壊が、強力な解乳化剤を必要とすることなくもたらされ得ることにより、機器を除染するために必要とされる機器、化学物質および時間が潜在的に少なくなる。
【0019】
ガスを汚染機器から放出させ、油を乳化することに加えて、アミンオキシドはまた、硫化水素をイオウのあまり有害でない形態または無害な形態に変換し得るし、発火性鉄硫化物を中和し得る。アミンオキシドは、硫化水素を元素状イオウおよびチオ硫酸塩に変換するための十分な酸化剤であり得る。元素状イオウは水に不溶性であり、撹拌を停止すると溶液から沈降し得る。チオ硫酸塩は非常に水溶性であり、溶剤組成物のバルク移動によって機器から搬送され得る。その上、前記アミンオキシドは発火性鉄硫化物を表面酸化により酸化し得る。鉄硫化物の酸化生成物には、酸化鉄および元素状イオウが含まれ得る。本発明の溶剤組成物に存在するアミンオキシドは、本質的にすべての硫化水素および硫化鉄を除去し得るし、また、汚染物の再生を、前記イオウを機器から除去することによって防止し得る。硫化鉄のみが本明細書中では議論されるが、アミンオキシドは、硫化鉄に加えて、他の金属硫化物を除去し得ることが理解されなければならない。
【0020】
本発明の溶剤組成物は、汚染物質の少なくとも一部が産業用機器から除去され得るように、汚染物質の解離、溶解、乳化および/または酸化のために好適な任意のwt.%のアミンオキシドを有し得る。様々な実施形態において、本発明の溶剤組成物はアミンオキシドの濃度が約240ppm~約2,400ppmであり、代替において約600ppm~約1,800ppmである。例えば、前記汚染物質が、炭化水素油および炭化水素堆積物の場合には産業用機器の表面から除去され得るし、または鉄硫化物の場合には該表面において中和され得る。一実施形態において、本発明の溶剤組成物は約30ppm~約2,100ppmのアミンオキシドを水に含み得る。代替において、本発明の溶剤組成物は、約30ppm~約500ppmの間のアミンオキシドを水に、約500ppm~約1,250ppmの間のアミンオキシドを水に、約500ppm~約1,500ppmの間のアミンオキシドを水に、または約1,500ppm~約2,100ppmの間のアミンオキシドを水に含み得る。本開示の利点により、当業者は、選ばれた適用のための適切なタイプのアミンオキシドおよび適切な濃度を選択することができるはずである。
【0021】
本発明の溶剤組成物の実施形態はポリジメチルシロキサンを含む場合がある。ポリジメチルシロキサンは、消泡剤として作用し得るケイ素系有機ポリマーである。比較的より高い濃度では、アミンオキシドは本発明の溶剤組成物の発泡を引き起こすことがあり、このことにより、不十分な性能がもたらされる場合がある。過度な発泡は、本発明の溶剤組成物の成分が機器の表面に到達することを妨げ、これにより、清浄化不良が引き起こされる場合がある。ポリジメチルシロキサンは発泡の程度を制限し得るし、かつ、より高濃度のアミンオキシドが使用されることを可能にし得る。具体的には、ポリジメチルシロキサンが十分である場合、アミンオキシドが、2,400ppm以上もの高濃度で使用され得る。上記で議論されたように、アミンオキシドは、汚染機器に存在する油とのエマルションを形成し得る。空気および他のガスが前記エマルションにおいて、あるいは機器に存在するどのような液体または凝縮物においてでも捕捉され得る。ポリジメチルシロキサンは、トラップされている空気および他のガス分子を不安定化させ、これにより、前記ガスが前記液体から逃れることを可能にし得る。前記ガスを不安定化させることは、全体的なガス放出を増大させることがあり、これにより、ガス除去の効率が改善され得る。ポリジメチルシロキサンおよび前記アミンオキシドは相乗的に協力して働き、汚染されたプロセス機器における油堆積物または他の炭化水素堆積物に存在する実質的にすべてのガスを放出させ得る。相乗的に協力して働くとは、清浄化に通常の場合には伴い、例えば、Zyme-Flow(登録商標)を単独で使用することなどに伴い、かつ、ガスがスチーム清浄化(例えば、Vapour-Phase(登録商標)またはボイルアウト(boilout)などによるスチーム清浄化)の期間中に排出され得ることがその発生により妨げられる泡の量を制限することにおいてポリジメチルシロキサンから得られる利益を示す。Zyme-Flow(登録商標)およびVapour-Phase(登録商標)は、United Laboratories International,LLCの登録商標である。
【0022】
ポリジメチルシロキサンは、平均分子量範囲が重合度に依存して約6,800~約30、000であり得る。前記重合度は他の物理的特性(例えば、粘度および気化温度など)に影響を及ぼし得る。様々な実施形態において、気化温度は、除染のために使用されるスチームの種類に影響を及ぼし得る。本発明の溶剤組成物は、捕捉されたガスの消泡および不安定化のために好適な任意の重量パーセントのポリジメチルシロキサンを有し得る。一実施形態において、本発明の溶剤組成物は約1ppm~約100ppmのポリジメチルシロキサンを水に含み得る。代替において、本発明の溶剤組成物は約1ppm~約10ppmのポリジメチルシロキサンを水に含み得るし、または約10ppm~約30ppmのポリジメチルシロキサンを水に含み得るし、または約30ppm~約50ppmのポリジメチルシロキサンを水に含み得るし、または約50ppm~約70ppmのポリジメチルシロキサンを水に含み得るし、または約70ppm~約100ppmのポリジメチルシロキサンを水に含み得る。本開示の利点により、当業者は、選ばれた適用のための適切なポリジメチルシロキサン分子量範囲および適切な濃度を選択することができるはずである。
【0023】
本開示の溶剤組成物は酵素を含む場合がある。酵素により、目的とする物質が分解され得る。酵素には、天然酵素が含まれ得る。除染において使用されるためのいくつかの好適な酵素には、油を分解するリパーゼ、セルロース系物質を分解するセルラーゼ、デンプンを分解するアミラーゼ、タンパク質を分解するプロテアーゼ、植物物質を分解するペクチナーゼ、またはどのような組合せであれ、それらの組合せが含まれ得る。前記酵素は、所望の結果を示すために、単独で、または任意の組合せもしくは混合物で使用され得る。様々な実施形態において、酵素は、変性温度よりも低い任意の温度で使用され得る。いくつかの実施形態において、前記温度は約50℃以下である。一実施形態において、前記酵素は、溶剤適用において使用されるときには油および他の汚染物質の除去を容易にし得る。酵素は、低温適用において、また、液体循環適用において特に注目され得る。一実施形態において、本発明の溶剤組成物は約1ppm~約100ppmの総酵素を水に含み得る。代替において、本発明の溶剤組成物は約1ppm~約10ppmの総酵素を水に含み得るし、または約10ppm~約30ppmの総酵素を水に含み得るし、または約30ppm~約50ppmの総酵素を水に含み得るし、または約50ppm~約70ppmの総酵素を水に含み得るし、または約70pppm~約100ppmの総酵素を水に含み得る。本開示の利点により、当業者は、選ばれた適用のための適切な酵素組合せおよび適切な濃度を選択することができるはずである。
【0024】
様々な実施形態において、汚染物質除去プロセスは、前記汚染物質および/または前記産業用機器を本発明の溶剤組成物と接触させることを含み得る。例えば、内部に配置される汚染物質を含有する容器を含む実施形態では、本発明の溶剤組成物が、前記容器内に配置される前記汚染物質と接触するように、本発明の溶剤組成物が前記容器内に注がれ、ポンプ送液され、注入され、または任意の他の好適な手段を使用して入れられ得る。別の一例として、汚染物質が表面に配置されている産業用機器を含む実施形態では、本発明の溶剤組成物が、前記産業用機器の表面に配置される前記汚染物質と接触するように、本発明の溶剤組成物が前記産業用機器の汚染部分に注がれ得るか、または前記産業用機器の前記汚染部分が本発明の溶剤組成物に浸され得る。別の実施形態において、本発明の溶剤組成物が、液体循環として知られているプロセスで汚染機器に通して循環させられ得る。様々な実施形態において、液体循環が周囲温度で行われ得る。
【0025】
随意的な実施形態において、上記汚染物質除去プロセスは、熱を本発明の溶剤組成物に加えることを含み得る。前記熱は、どのような手段であれ、好適な手段によって、例えば、スチーム、加熱されたコイル、その他、またはどのような組合せであれ、それらの組合せなどによって加えられ得る。別の実施形態において、上記汚染物質除去プロセスは液体ボイルアウトを含み得る。液体ボイルアウトにおいて、スチームの流れが、当該液体を加熱し、内容物を撹拌するために本発明の溶剤組成物に導入され得る。得られた溶液が、どのような手段であれ、例えば、前記汚染機器にポンプ送液されること、または前記汚染機器内に循環されることなどの好適な手段によって該汚染機器に導入され得る。液体ボイルアウトは、部分的に気化された溶剤組成物をもたらし得る。さらなる随意的な実施形態において、本発明の溶剤組成物は、水性溶剤については212°Fまたは約212°F付近の温度にまで加熱され得る。本発明の溶剤組成物が汚染物質と接触する前に、または本発明の溶剤組成物が汚染物質と接触している間は同時に、前記熱が本発明の溶剤組成物に加えられ得る。限定されないが、これらの随意的な実施形態において、前記熱は、本発明の溶剤組成物と、前記汚染物質との間における解離プロセス、溶解プロセスおよび酸化プロセスを促進させるために加えられ得る。
【0026】
別の実施形態において、上記汚染物質除去プロセスは、Vapour-Phase(登録商標)として示されるプロセスを含み得る。なお、Vapour-Phase(登録商標)は、United Laboratories International,LLCの登録商標である。本発明の溶剤組成物は、汚染された容器または機器に接続されるスチーム供給ラインに直接に注入され得る。一実施形態において、本発明の溶剤組成物は完全に気化させられ、蒸気相として前記スチームとともに機器内に搬送され得る。本発明の溶剤組成物の完全な気化を促進させるために、本発明の溶剤組成物の成分の濃度は、本発明の溶剤組成物の沸点が前記スチームラインにおける水の沸点と一致するように調節され得る。沸点を一致させることにより、本発明の溶剤組成物は、スチーム内に注入されたとき、蒸気の一部となることが可能となり得る。産業用機器を除染する際に使用されるための溶剤組成物を配合する従来の試みでは、当該従来技術は一般にはスチーム分散にだけ依拠しているので、当該溶剤組成物の沸点は一致させられていない。本発明の溶剤組成物が完全に気化させられるならば、最小数の注入点が、機器を効果的に除染するために使用され得る。いくつかの実施形態において、前記スチームは飽和スチームであり得る。飽和スチームが、使用された方法であるが、スチームを発生させるためのボイラーの使用に起因して、製油所または他の産業用設備においては一般に、不飽和スチームに遭遇し得る。ボイラーにより、いくらかの湿り度、または1未満のスチーム品質を有するスチームが放出され得る。当業者は、飽和スチームおよび不飽和スチームの両方が本開示の溶剤組成物とともに使用され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、前記スチームは、約50psiから約200psiまでの、代替では約100psiから約150psiまでの飽和スチームまたは不飽和スチームを含み得る。より低いスチーム圧(例えば、約50psi未満~約30psiなど)は、より大きい直径のパイプ(例えば、約5インチ~約8インチ~それ以上の直径のパイプなど)とともに使用され得ることが理解されなければならない。水が上流側に注入されるならば、約600psi未満~約400psiのスチーム圧が使用され得ることもまた理解される。汚染機器における温度が、前記スチームの凝縮を最小限に抑えるために十分に高く、かつ、本発明の溶剤組成物における成分の熱分解を防止するために十分に低い温度で維持され得る。いくつかの実施形態において、前記プロセス機器の内部温度はほぼ周囲温度~約400°Fであり得るし、代替では約200°F~約400°Fの間であり得るし、代替では約220°F~約400°Fの間であり得るし、代替では約240°F~約300°Fであり得るし、さらに代替では約260°F~約280°Fであり得る。正確な温度範囲は、本発明の溶剤組成物のために使用されるスチームの圧力および該溶剤組成物の成分に依存する。
【0027】
随意的な実施形態において、上記汚染物除去プロセスは、撹拌を本発明の溶剤組成物に加えることを含み得る。前記撹拌は、どのような手段であれ、好適な手段によって、例えば、かき混ぜ、振とう、ポンプによる吸入排出(pumping)、スチーム導入、窒素流など、またはどのような組合せであれ、それらの組合せによって加えられ得る。本発明の溶剤組成物が汚染物質と接触する前に、または本発明の溶剤組成物が汚染物質と接触している間は同時に、前記撹拌が本発明の溶剤組成物に加えられ得る。限定されないが、これらの随意的な実施形態において、前記撹拌は、本発明の溶剤組成物と、前記汚染物質との間における解離プロセスおよび/または溶解プロセスを促進させるために加えられる。さらなる随意的な実施形態において、本発明の溶剤組成物では、上記で記載されるような撹拌および加熱の両方が行われ得る。本開示の利点により、当業者は、選ばれた適用のための適切な圧力および温度と一緒に本発明の溶剤組成物の適切な適用方法を選択することができるはずである。
【0028】
本発明の溶剤組成物が前記汚染物質と接触している好適な時間枠はどれも使用され得る。様々な実施形態において、前記時間枠は、前記汚染物質の少なくとも一部が除去される(すなわち、解離させられる、溶解させられる、乳化させられる、中和される、および/または酸化される)十分な期間にわたって及び得る。一実施形態において、前記時間枠は約1分~約3週間であり得る。代替となる実施形態において、前記時間枠は約1時間~約48時間であり得る。さらなる代替となる実施形態において、前記時間枠は約1時間~約12時間であり得る。
【0029】
様々な実施形態において、前記汚染物質が除去される(すなわち、解離および/または溶解させられる)と、該汚染物質は本発明の溶剤組成物に存在している場合があり、したがって、本発明の溶剤組成物の内部では流体および/または流動性であり得る。上記で議論されたように、一部の汚染物質(例えば、金属硫化物および硫化水素など)は固体生成物を本発明の溶剤組成物による処理の後でもたらし得る。固体生成物は、液体循環適用または液体ボイルアップ(boil up)適用ではバルク液体とともに搬送され得るし、Vapour-Phase(登録商標)適用ではスチームまたはバルク流体によって搬送され得る。加えて、除染期間中に放出されるガスはどれも、水相のバルク流によって除去され得るか、またはVapour-Phase(登録商標)の場合には、前記ガスはバルク蒸気とともに移動し得る。本発明の溶剤組成物に存在する前記汚染物質はその後、該溶剤組成物と一緒に前記産業用機器からポンプ排出され、流出させられ、または他の場合には除かれ得る。
【0030】
随意的な実施形態において、汚染物質によって汚染された表面が、該汚染物質に本発明の溶剤組成物が接触した後で清浄化され得る。限定されないが、前記表面を清浄化することにより、前記汚染物質のさらなる微粒子および/または残留物が除去され得る。前記清浄化が、どのような方法であれ、好適な方法によって、例えば、すすぎ洗い、吹きつけ、こすり取り、掻き取り、酸性化、不動態化およびその他によって達成され得る。すすぎ洗いおよび/または吹きつけが、水を単独で用いた、あるいはソーダ灰、苛性アルカリ、硝酸ナトリウム/亜硝酸ナトリウム、抑制塩酸(inhibited hydrochloric acid)、クエン酸、ギ酸、エチレンジアミン四酢酸、またはどのような組合せであれ、それらの組合せを含有する水を用いたどちらでのすすぎ洗いおよび/または吹きつけを含む任意の好適な方法によって達成され得る。
【0031】
随意的な実施形態において、前記汚染物質は回収および/またはリサイクルされ得る。回収およびリサイクルの当該プロセスは、除去された(すなわち、解離させられた、および/または溶解させられた)汚染物質を含む使用済み溶剤組成物をコンテナまたは容器に移すことを含み得る。上記除染の期間中に、前記アミンオキシドは、硫化物または他の汚染物との反応の後では水不溶性の生成物に変換され得る。前記使用済みアミンオキシドは上記水溶液から漸次除かれる場合があり、また、すくい取られて、洗浄廃液を生じさせる場合がある。前記使用済み溶剤組成物に存在する固形物は、どのような手段であれ、他の好適な手段によってろ過または除去され得る。前記使用済み溶剤組成物の水相は廃水処理施設に排出され得る。
【0032】
随意的な実施形態において、本発明の溶剤組成物は、汚染物質または他の場合には望まれない物質のための、産業用機器を処理するために使用される他の製造物と併せて使用され得る。例えば、本発明の溶剤組成物は、汚染物質などの溶解および/または軟化をもたらすための他の有機溶剤および/または有機溶剤添加剤と併せて使用され得る。例としては、溶剤Rezyd-X(登録商標)(United Laboratories International,LLCの登録商標)、溶剤添加剤HOB(登録商標)(United Laboratories International,LLCの登録商標)、溶剤Rezyd-HP(商標)(United Laboratories International,LLCの商標)、ならびに他の好適なアスファルトタンク用および重質炭化水素タンク用の洗浄剤が挙げられる。
本発明の実施形態のより良い理解を容易にするために、いくつかの実施形態のある特定の局面の下記の実施例が提供される。いかなる点においても、下記の実施例は、前記実施形態の範囲全体を限定するように、または定義するように読み取ってはならない。
【実施例】
【0033】
実施例1
下記の実施例は、本発明の溶剤組成物と、撹拌溶液に対する消泡剤の影響との間での比較を例示したものである。上記で議論されたように、アミンオキシドは、撹拌されるとき、過剰に泡立つ傾向がある。
【0034】
発泡分析試験を、表1に示されるように準備した。それぞれのサンプルが、アミンオキシド、水、酵素混合物および選択された消泡剤を含む溶剤組成物の28mlの初期容量を含有した。
【表1】
【0035】
それぞれのサンプルを1分間撹拌し、次いで静置させた。消泡剤を何ら含有しないサンプル1はおよそ100mlの泡を有し、TA消泡剤を含有するサンプル2はおよそ1mlの泡を有し、上記ポリジメチルシロキサン消泡剤を含有するサンプル3はおよそ3mlの泡を有することが認められた。TAは、Taylor Antifoam(商標)によるポリジメチルシロキサン配合物である。サンプル3もまた、Piedmont(商標)によるポリジメチルシロキサン消泡剤である。第2のサンプルにおける泡は15秒後に崩壊することが認められ、第3のサンプルにおける泡は30秒後に崩壊することが認められた。第1のサンプルからの泡は、長期間にわたって安定なままであることが認められた。
【0036】
実施例2
酸化分析を、消泡剤を伴う溶液におけるアミンオキシドの酸化能について試験するためにサンプル2およびサンプル3に対して行った。それぞれのサンプルの一部を試験管に入れ、一定量の硫化鉄を加えた。酸化鉄が溶液から沈殿し、その後での濁った混合物が形成されたことが両方のサンプルで認められ、したがって、このことから、硫化鉄の酸化が確認された。それぞれのサンプルの別個の一部を新しい試験管に加え、1wt.%のH2Sを含む一定量のサワー水(sour water)を加えた。アミンオキシド対硫化水素のモル比がそれぞれの試験において1.5:1であった。酢酸鉛紙をそれぞれの試験管に浸した。すべての硫化水素が除去されたことが認められた。
【0037】
上記組成物および方法は、種々の成分または工程を「含む(comprising)」、「含有する(containing)」または「含む(including)」という用語で記載されており、上記組成物および方法はまた、前記様々な成分および工程「から本質的になり」得ること、または前記様々な成分および工程「からなり」得ることが理解されなければならない。そのうえ、不定冠詞の「a」または「an」は、請求項において使用される場合、請求項によって導入される要素の1つまたは2つ以上を意味するように本明細書中では定義される。
【0038】
簡潔さのために、ある特定の範囲のみが本明細書中において明示的に開示される。しかしながら、任意の下限からの範囲は、明示的に記載されていない範囲を記載するために任意の上限と組み合わせられ得るし、同様にまた、任意の下限からの範囲は、明示的に記載されていない範囲を記載するために任意の他の下限と組み合わせられ得るし、同じように、任意の上限からの範囲は、明示的に記載されていない範囲を記載するために任意の他の上限と組み合わせられ得る。加えて、下限および上限を有する数値範囲が開示されるときは常に、前記範囲に含まれる任意の数および任意の包含された範囲が具体的に開示される。特に、本明細書中に開示される(「約a~約b」、または同等には「およそaからbまで」、または同等には「およそa~b」の形態の)値のどの範囲も、明示的に記載されていない場合でさえ、より広い値の範囲に包含されるすべての数字および範囲を示すように理解されなければならない。したがって、すべての点または個々の値が、明示的に記載されていない範囲を記載するために、任意の他の点または個々の値あるいは任意の他の下限または上限と組み合わされるそれ自身の下限または上限として役立ち得る。
【0039】
したがって、本発明は、述べられた目的および利点、同様にまた、本発明において固有である目的および利点を達成するように十分に適合化される。本発明は、本明細書中の教示の利益を有する当業者には明らかである、異なるが、同等な様式での改変および実施がなされ得るので、上記で開示された特定の実施形態は例示にすぎない。個々の実施形態が議論されているにもかかわらず、本発明は、すべてのそれらの実施形態のすべての組合せに及ぶ。さらに、下記の請求項において記載されるのとは異なる、本明細書中に示される構造または設計の細部に対する限定は何ら意図されない。また、請求項における用語は、特許権者によって別途、明示的かつ明確に定義されている場合を除いて、その平易で、通常の意味を有する。したがって、上記で開示される特定の例示的な実施形態は変更または改変がなされてもよく、すべてのそのような変形は本発明の範囲および精神の範囲内であると見なされることは明白である。本明細書と、参照によって本明細書中に組み込まれ得る1つもしくは複数の特許または他の文書とにおける単語または用語の使用において何らかの矛盾があるならば、本明細書と一致している定義が採用されるものとする。