(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
A61B1/005 512
(21)【出願番号】P 2020002242
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】細越 泰嗣
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-230201(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086311(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/203627(WO,A1)
【文献】特開2017-86389(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部内に配置されており、硬度調整シースと前記硬度調整シース内に挿入された硬度調整ワイヤと、前記硬度調整シースと前記硬度調整ワイヤとを連結する連結具とを有する硬度調整索と、
前記硬度調整索の操作部側で前記硬度調整ワイヤに固定された抜止部材と、
前記硬度調整ワイヤに張力が加わった場合に前記抜止部材に連結されるカム機構と、
前記硬度調整索の操作部側で前記硬度調整シースに連結されたシース固定部と、
前記挿入部と操作部との間に配置されており、前記カム機構および前記シース固定部をそれぞれ独立して前記挿入部の長手方向に移動可能に保持するガイド枠と
を備える内視鏡。
【請求項2】
前記ガイド枠は円筒形状であり、
前記カム機構は
前記ガイド枠が内挿されたカムリングと、
前記カムリングの回動に連動して前記挿入部の長手方向に移動する従動体とを有し、
前記抜止部材は、前記従動体に連結される
請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記シース固定部は、
前記硬度調整シースに固定されたシース受具と、
前記ガイド枠が内挿されており、前記シース受具が固定されたシース固定リングとを有する
請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記カムリングと前記シース固定リングとの間に配置されており、前記ガイド枠が内挿されたカラーリングを備える
請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記カラーリングは樹脂製である
請求項4に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記挿入部が直線状である場合、
前記カム機構が動作の一方の端である第1の状態である場合には、前記カラーリングは前記挿入部の長手方向に移動可能であり、
前記カム機構が動作の他方の端である第2の状態である場合には、前記カラーリングは前記挿入部の長手方向に移動不能である
請求項4または請求項5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記硬度調整索は、前記連結具に接続されており、前記挿入部の先端側に延びる接続索を有する
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の内視鏡。
【請求項8】
前記硬度調整シースはコイルであり、
前記接続索は、前記硬度調整索よりも外径が細いコイルである
請求項7に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記接続索の引張剛性は、前記硬度調整シースの引張剛性よりも低い
請求項7または請求項8に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記硬度調整索の端部に連結された先端係止具と、
前記挿入部に設けられており、前記先端係止具を保持する先端保持部と
を備える請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の内視鏡。
【請求項11】
前記先端保持部は、前記先端係止具を前記挿入部の長手方向に移動可能に保持する
請求項10に記載の内視鏡。
【請求項12】
前記挿入部は、軟性部と、複数の湾曲駒を有する湾曲部と、前記軟性部と前記湾曲部とを接続する接続管とを有し、
前記先端係止具は、前記挿入部の外周側に向けて突出する係止突起を有し、
前記接続管は、前記湾曲部側に開口して、前記係止突起が挿入される係止具溝を側面に有し、
前記接続管に隣接する湾曲駒は、前記接続管側に開口する受溝を側面の前記係止具溝に対応する部分に有し、
前記先端保持部は、前記係止具溝と前記受溝とが重なる部分により形成されている
請求項11に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡検査中に、挿入部の硬さを変更できる内視鏡が提案されている(特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-230201号公報
【文献】特開2002-355217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2の内視鏡では、挿入部の内部に硬度調整用コイルと、硬度調整用コイルの内側に挿入された硬度調整用ワイヤとを硬度調整機構に使用する。硬度調整用コイルと硬度調整用ワイヤとは、挿入部の先端側に固定されている。操作部側で硬度調整用ワイヤのみを牽引することにより、硬度調整用コイルが圧縮されて硬くなることを利用して、挿入部の硬さを変更する。
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の内視鏡では、挿入部が複雑に屈曲した場合に硬度調整用コイルおよび硬度調整用ワイヤに張力または圧縮力が加わるため、ユーザが硬度調整機構を動作させても十分な効果を得られない場合がある。
【0006】
一つの側面では、硬度調整機構がスムーズに動作する内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
内視鏡は、挿入部内に配置されており、硬度調整シースと前記硬度調整シース内に挿入された硬度調整ワイヤと、前記硬度調整シースと前記硬度調整ワイヤとを連結する連結具とを有する硬度調整索と、前記硬度調整索の操作部側で前記硬度調整ワイヤに固定された抜止部材と、前記硬度調整ワイヤに張力が加わった場合に前記抜止部材に連結されるカム機構と、前記硬度調整索の操作部側で前記硬度調整シースに連結されたシース固定部と、前記挿入部と操作部との間に配置されており、前記カム機構および前記シース固定部をそれぞれ独立して前記挿入部の長手方向に移動可能に保持するガイド枠とを備える。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、硬度調整機構がスムーズに動作する内視鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】
図5におけるVI-VI線による挿入部の部分断面図である。
【
図10】硬度調整ノブを除去した硬度調整操作部の斜視図である。
【
図11】硬度調整ノブを除去した硬度調整操作部の正面図である。
【
図12】硬度調整ノブ、カムリング、カラーおよびシース固定リングを除去した硬度調整操作部の正面図である。
【
図13】
図3におけるXIII-XIII線による硬度調整操作部の部分断面図である。
【
図14】
図3におけるXIV-XIV線による硬度調整操作部の部分断面図である。
【
図15】硬度調整索が先端側に引きこまれた場合の、硬度調整操作部の断面図である。
【
図16】硬度調整ノブを最大に回動させた場合の、硬度調整ノブを除去した硬度調整操作部の拡大斜視図である。
【
図17】硬度調整ノブを最大に回動させた場合の、硬度調整操作部の断面図である。
【
図18】実施の形態2の挿入部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1は、内視鏡10の外観図である。本実施の形態の内視鏡10は、大腸内視鏡である。内視鏡10は、挿入部14、硬度調整操作部30、操作部20およびユニバーサルコード25を有する。操作部20は、湾曲ノブ21およびチャンネル入口22を有する。硬度調整操作部30の表面は、硬度調整ノブ31で覆われている。
【0011】
本実施の形態の内視鏡10は、内視鏡検査中にユーザである医師が硬度調整ノブ31を操作することにより軟性部11の硬度を調整できる、いわゆる硬度調整機能を備える。さらに具体的にはユーザは軟性部11の一部である硬度変化部111の硬度を調整できる。ここで軟性部11の硬度とは、軟性部11の曲げ剛性を意味する。以下の説明で、軟性部11の硬度が高いとは、軟性部11の曲げ剛性が高いことを意味し、軟性部11の硬度が低いとは、軟性部11の曲げ剛性が低いことを意味する。
【0012】
挿入部14は長尺であり、一端が折止部16を介して操作部20に接続されている。挿入部14は、操作部20側から順に軟性部11、湾曲部12および先端部13を有する。湾曲部12は、湾曲ノブ21の操作に応じて湾曲する。
【0013】
硬度調整操作部30から軟性部11と湾曲部12との境界部までの間に、硬度調整索40が配置されている。硬度調整索40の構成については後述する。チャンネル入口22から先端部13まで、挿入部14を貫通するチャンネルが設けられている。
【0014】
以後の説明では、挿入部14の長手方向を挿入方向と記載する。同様に、挿入方向に沿って操作部20に近い側を操作部側、操作部20から遠い側を先端側と記載する。
ユニバーサルコード25は長尺であり、第一端が操作部20に、第二端が図示を省略するコネクタ部にそれぞれ接続されている。コネクタ部は、図示を省略する内視鏡用プロセッサ等に接続される。
【0015】
図2は、
図1におけるII部の断面図である。
図2を含む各断面図においては、たとえばケーブル、送気チューブ、送水チューブ、チャンネルおよび湾曲ワイヤ等の、硬度調整機構以外の内蔵物の図示を省略する。
【0016】
図2は、軟性部11の先端部分を示す。軟性部11の表面は、外装チューブ15で覆われている。湾曲部12には、筒状の湾曲駒121が複数配置されている。
図2においては、最も操作部側に配置された湾曲駒121の一部を示す。湾曲駒121を覆う湾曲ゴムについては、図示を省略する。外装チューブ15と湾曲駒121とは、接続管48により接続されている。
【0017】
硬度調整索40は、硬度調整シース41、硬度調整ワイヤ44、連結具46、接続索42および先端係止具47を有する。接続索42は挿入部14の先端側に、硬度調整シース41および硬度調整ワイヤ44は、挿入部14の操作部側に配置されている。硬度調整ワイヤ44は、硬度調整シース41に挿通されている。接続索42と、硬度調整シース41および硬度調整ワイヤ44とは、連結具46により連結されている。
【0018】
硬度調整シース41は、丸線を密着巻きした密巻コイルにより構成されている。接続索42は、平角線を密着巻きした密巻コイルにより構成されている。接続索42の引張剛性は、硬度調整シース41の引張剛性よりも低い。硬度調整シースは、樹脂製チューブにより構成されていても良い。接続索42は、ワイヤにより構成されていても良い。連結具46および先端係止具47の詳細については、後述する。
【0019】
図3は、
図1におけるIII部の断面図である。
図3は、軟性部11の硬度が最も低い状態に設定して、挿入部14全体をほぼ直線状にした状態を示す。硬度調整ノブ31に、ガイド枠35が挿通されている。ガイド枠35は略円筒形状である。ガイド枠35は、挿入部14の長手方向と一致する向きに中心軸を有する。
【0020】
図3の右側において、ガイド枠35の外側に操作部筐体23が固定されている。操作部筐体23は、操作部20を構成する筐体である。
図3の左側において、ガイド枠35の内側に挿入部14の端部に取り付けられた後端口金17が固定されている。後端口金17は折止部16に覆われている。折止部16の操作部側の端部には、折止口金161が固定されている。ガイド枠35を介して操作部20と挿入部14とは相互に回動不能に固定されている。
【0021】
ガイド枠35と硬度調整ノブ31との間に、操作部20側から順にカムリング322、カラーリング33およびシース固定リング342が配置されている。カムリング322、カラーリング33およびシース固定リング342は、それぞれ独立してガイド枠35の長手方向に移動可能である。
【0022】
カムリング322は、硬度調整ノブ31と連結している。ユーザが硬度調整ノブ31を回した場合、カムリング322は硬度調整ノブ31と一体に回動する。カムリング322は、後述するカム機構32の構成要素の一つである。カムリング322およびカム機構32の構成については、後述する。
【0023】
カラーリング33は、ガイド枠35の外径よりも大きい内径と、硬度調整ノブ31の内径よりも小さい外径とを有する円筒形状である。カラーリング33は、カムリング322とシース固定リング342との間で、ガイド枠35の軸方向に自由に移動できる。
【0024】
カラーリング33は、たとえばポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレンまたは硬質ポリエチレン等の、潤滑性の高い樹脂製である。カラーリング33は、たとえばフッ素樹脂コーティングまたは硬質クロムメッキ等の、潤滑性を高める表面処理を施した金属製であっても良い。
【0025】
硬度調整シース41の操作部側の端部に、硬度調整ワイヤ44の長手方向の動作を妨げないようにして、シース受具421が固定されている。シース受具421は、2本の固定ネジ341(
図11参照)によりシース固定リング342に固定されている。シース固定リング342およびシース受具421は、シース固定部34の構成要素である。シース固定部34の構成については、後述する。
【0026】
ガイド枠35の内部に、略円筒形状の従動体36が配置されている。従動体36は、ガイド枠35と同軸の略円筒形状である。従動体36の外径は、ガイド枠35の内径よりも僅かに小さい。従動体36は、内面側に突出するワイヤ保持部361を有する。
【0027】
ワイヤ保持部361には、従動体36の軸方向に沿って貫通するワイヤ孔362が設けられている。硬度調整シース41の操作部側の端部から突出する硬度調整ワイヤ44が、ワイヤ孔362を貫通する。硬度調整ワイヤ44の端部に、抜止部材441が固定されている。
【0028】
図4は、
図2におけるIV部拡大図である。
図5は、
図4におけるV矢視図である。
図6は、
図5におけるVI-VI線による挿入部14の部分断面図である。
図7は、挿入部14の分解斜視図である。
図7は、湾曲駒121を先端側にスライドさせた状態を示す。
図8は、挿入部14の分解図である。
図8は、湾曲駒121および先端係止具47をそれぞれ先端側にスライドさせた状態を示す。
図4から
図8を使用して、軟性部11の先端部分の構成を説明する。
【0029】
接続索42の端部に先端係止具47が固定されている。先端係止具47は、一端を操作部側に、他端を挿入部14の外側に向けた略L字型である。先端係止具47は、操作部側に向けた端部に固定孔475を有する。接続索42の端部は、固定孔475の内部に接着またはロー付け等の任意の手法により固定されている。先端係止具47の挿入部14の外側を向いた端面の操作部側の端に、係止突起471が設けられている。
【0030】
図5、
図7および
図8に示すように、接続管48の側面に、先端側に開口する係止具溝481が設けられている。湾曲駒121の側面の係止具溝481に対応する位置に、操作部側に開口する受溝129が設けられている。係止具溝481と受溝129とが重なる部分により構成された先端保持部内に、係止突起471が配置される。
【0031】
図6および
図7に示すように、係止具溝481の横断面形状は外周側の幅が広い略V字溝状になっている。先端係止具47の横断面形状も、挿入部14の外周側が広くなっている。
図6に示すように、先端係止具47の先端部分は、受溝129の縁に覆われている。
【0032】
以上の構成により、先端係止具47は
図4に示す長さAの範囲で長手方向に移動可能である。先端係止具47は、係止具溝481と湾曲駒121とに保持されているため、挿入部14の半径方向には移動しない。
【0033】
図9は、
図2におけるIX部拡大図である。連結具46は、先端側に比べて操作部側が太い段付き円柱形状である。連結具46の両方の端面に、それぞれ穴が設けられている。先端側の穴の内部に、接続索42の端部が接着またはロー付け等の任意の手法により固定されている。
【0034】
連結具46の操作部側の穴は、段付き穴になっている。奥側の細径の部分に、硬度調整ワイヤ44が接着またはロー付け等の任意の手段により固定されている。硬度調整シース41は、段付き穴の段の部分に突き当てられている。段付き穴の太径の部分に、硬度調整シース41が接着またはロー付け等の任意の手段により固定されている。
【0035】
硬度調整シース41は、端部の外周が除去されて細径化されている。これにより、硬度調整シース41と連結具46との接触面積の増大による固定強度の増加、および、挿入部14の細径化が実現されている。
【0036】
連結具46の両端に設けられた穴同士が連通していないため、接続索42および硬度調整ワイヤ44はそれぞれ穴の底に突き当てて固定できる。したがって、組み立て時に接続索42および硬度調整ワイヤ44の連結具46への挿入長を管理する必要がなく、組み立てが容易である。
【0037】
また、連結具46の両端に設けられた穴同士が連通していないため、たとえば接続索42の固定に使用した接着剤が、硬度調整ワイヤ44側の穴を塞いで、硬度調整ワイヤ44の組付けを阻害するようなトラブルも防止できる。なお、連結具46の両端に設けられた穴同士は、たとえば中央部の小孔等で連通していても良い。このようにする場合には、接着剤の流出等のトラブルが生じないような工程管理を行なう。
【0038】
図10は、硬度調整ノブ31を除去した硬度調整操作部30の斜視図である。
図10は、
図3と同様に軟性部11の硬度が最も低い状態に設定して、挿入部14全体をほぼ直線状にした状態を示す。
図11は、硬度調整ノブ31を除去した硬度調整操作部30の正面図である。
図11はシース固定リング342が先端側にスライドした状態を示す。シース固定リング342のスライドについては後述する。
【0039】
図12は、硬度調整ノブ31、カムリング322、カラーリング33およびシース固定リング342を除去した硬度調整操作部30の正面図である。
図12は、
図3と同様に軟性部11の硬度が最も低い状態に設定して、挿入部14全体をほぼ直線状にした状態を示す。
図13は、
図3におけるXIII-XIII線による硬度調整操作部30の部分断面図である。
図14は、
図3におけるXIV-XIV線による硬度調整操作部30の部分断面図である。
【0040】
図10および
図11に示すように、カムリング322は操作部側に太径のノブ係合部326を有する段付き円筒形状である。ノブ係合部326には、長手方向に延びる複数のノブ係合溝325が設けられている。ノブ係合溝325と、硬度調整ノブ31の内面に設けられた図示を省略する突起とが係合することにより、硬度調整ノブ31の回動に連動してカムリング322が回動する。
【0041】
カムリング322の側面に2本の第1カム溝321が設けられている。2本の第1カム溝321は同一形状であり、カムリング322の中心軸周りに軸対称に配置されている。第1カム溝321は、先端側においてはカムリング322の端面に対して傾斜し、操作部側においてはカムリング322の端面に略平行である。
【0042】
シース固定リング342は、側面に深ザグリ形状の調整孔345を有する。端面からの距離が等しい2個の調整孔345が1組となり、合計4組の調整孔345が配置されている。それぞれの組を構成する調整孔345同士の距離は等しい。なお、調整孔345の数は4組8個に限定しない。任意の数の調整孔345を配置できる。
【0043】
図12に示すように、ガイド枠35の側面の操作部側に第2カム溝352が設けられている。第2カム溝352は、ガイド枠35の中心軸周りに軸対称に2本配置されている。ガイド枠35の側面の先端側に2本のスライド溝355が設けられている。
【0044】
図3および
図14に示すように、ガイド枠35の内側に、従動体36が配置されている。従動体36はCリング状であり、Cリングの一方の縁から内向きに突出するワイヤ保持部361を有する。ワイヤ保持部361は、従動体36の先端側に設けられている。ワイヤ保持部361に、ガイド枠35の軸方向に沿って貫通するワイヤ孔362が設けられている。
【0045】
ワイヤ孔362の縁に、硬度調整ワイヤ44が通過可能で、抜止部材441が通過不能な幅のワイヤスリット363が設けられている。
図14において、抜止部材441を仮想線で示す。なお、ワイヤ孔362は、カムピン365が螺合されていない場合、および、浅く螺合されている場合には、抜止部材441が容易に通過できる寸法である。カムピン365が螺合されている状態では、抜止部材441はワイヤ孔362を通過できない。したがって、抜止部材441は、従動体36よりも先端側に移動しない。
【0046】
従動体36には、側面を貫通する2個のネジ孔が中心軸に対して対称に設けられている。そのうち1個のネジ孔は、ワイヤ孔362に向けて貫通している。2個のネジ孔に、それぞれカムピン365が螺合している。カムピン365の頭部は、第2カム溝352および第1カム溝321を通過する。カムピン365の頭部の端面は、カムリング322の側面よりも内側に配置されている。
【0047】
カムリング322が回動した場合、第1カム溝321、第2カム溝352およびカムピン365の作用により、従動体36が中心軸方向に移動する。すなわち、第1カム溝321が形成されたカムリング322と、第2カム溝352が形成されたガイド枠35と、カムピン365が固定された従動体36とは、中心軸周りの回動運動を、中心軸に沿った進退運動に変換するカム機構32を構成する。
【0048】
図13に示すように、シース受具421は略Y字型の板である。Y字の下側の縦線に相当する部分に、
図3に示すように先端側が太く、操作部側が細い段付き孔が設けられている。段付き孔の太径の部分に、硬度調整シース41の端部が接着またはロー付け等の任意の手法により固定されている。段付き孔の細径の部分は、硬度調整ワイヤ44の外径より太く、硬度調整ワイヤ44が滑らかに進退可能である。
【0049】
図12および
図13に示すように、Y字の上側の2本の斜め線に相当する部分は、ガイド枠35の内側からスライド溝355に係合している。シース受具421には、Y字の上側に対応する2か所の端面のそれぞれに、固定ネジ穴425が設けられている。前述の4組の調整孔345の内の1組と、固定ネジ穴425とが、2本の固定ネジ341により結合されている。シース受具421と、シース固定リング342と固定ネジ341とは、硬度調整シース41の操作部側の端部と一体に進退するシース固定部34を構成する。
【0050】
図13に示すように、硬度調整ノブ31は略六角形断面を有する。各辺の中央部は窪んでいる。したがって、ユーザは医療用手袋を嵌めたままでも滑らず確実に硬度調整ノブ31を回動させられる。
【0051】
図15は、硬度調整索40が先端側に引きこまれた場合の、硬度調整操作部30の断面図である。
図3、
図10、
図11および
図15を使用して、シース固定リング342のスライドについて説明する。
【0052】
ユーザは、軟性部11の硬度が低い状態で挿入部14の大腸への挿入を開始する。挿入を開始する際の硬度調整操作部30は、
図3および
図10を使用して説明した状態である。ユーザは、湾曲ノブ21を適宜操作しながら、挿入部14を大腸に挿入する。挿入が進むにつれて湾曲部12の湾曲および軟性部11の屈曲により、硬度調整索40が先端側に引きこまれる。なお、以後の説明では湾曲部12の湾曲と、軟性部11の屈曲とをまとめて、挿入部14の屈曲と記載する場合がある。
【0053】
硬度調整シース41が先端側に引きこまれることにより、
図11および
図15に示すようにシース固定部34が先端側にスライドする。硬度調整ワイヤ44が先端側に引きこまれることにより、
図15に示すように抜止部材441が先端側にスライドする。
【0054】
図2、
図4、
図11および
図15を使用して、先端係止具47の動作について説明する。
図11および
図15に示すように、シース固定リング342が折止口金161に突き当たった場合には、硬度調整シース41の後端側は挿入部14にそれ以上引き込まれない。同様に抜止部材441が従動体36に突き当たった場合には、硬度調整ワイヤ44の後端側は挿入部14にそれ以上引き込まれない。
【0055】
このように後端側が固定された状態で、硬度調整索40が挿入部14に引き込まれた場合には、連結具46が先端側に押し出される。先端係止具47が
図4に示す長さAの範囲でスライドすることにより、硬度調整索40に加わる圧縮力を低減する。
【0056】
以上に説明した、シース固定リング342のスライド機構、先端係止具47のスライド機構、および、抜止部材441のスライド機構により、挿入部14の屈曲により硬度調整索40に加わる張力および圧縮力を低減する。したがって、挿入部14が屈曲した場合であっても軟性部11の硬さが変動しにくい内視鏡10を提供できる。
【0057】
固定ネジ341は、
図11に示すように、カムピン365が第1カム溝321の先端側の端に位置する状態で、カラーリング33が軸方向に移動可能な隙間が存在するような調整孔345を用いて取り付けられている。シース固定リング342に複数組の調整孔345が設けられているため、外装チューブ15の長さ、および、硬度調整シース41の長さにばらつきが存在する場合であっても、シース固定リング342を適切な位置に固定できる。
【0058】
硬度調整機構の動作について説明する。軟性部11の硬度を高くする必要がある場合、ユーザは硬度調整ノブ31を操作部側からみて時計回りに回動させる。前述のように硬度調整ノブ31に連動してカムリング322が回動する。
【0059】
図16は、硬度調整ノブ31を最大に回動させた場合の、硬度調整ノブ31を除去した硬度調整操作部30の拡大斜視図である。
図17は、硬度調整ノブ31を最大に回動させた場合の、硬度調整操作部30の断面図である。ユーザが
図3および
図10に示す状態から、
図16および
図17に示す状態まで硬度調整ノブ31を回動する過程における、硬度調整機構の動作を説明する。
【0060】
挿入部14の屈曲が少なく、硬度調整索40が挿入部14に引き込まれていない場合においては、
図10に示すようにシース固定リング342と折止口金161との間に隙間が存在する。カムリング322の回動開始時には、カムピン365が第1カム溝321内を移動することにより、カムリング322が先端側に移動する。カムリング322によりカラーリング33およびシース固定部34が先端側に向けて押し込まれる。
【0061】
シース固定部34が先端側に向けて押し込まれることにより、連結具46が先端側に移動して、硬度調整ワイヤ44を引き込む。抜止部材441が、先端側に向けてスライドする。連結具46により接続索42が先端側に向けて押し込まれ、先端係止具47が
図4を使用して説明した長さAの範囲でスライドする。先端係止具47は、係止突起471が受溝129の底に突き当たった状態で停止する。
【0062】
一方、挿入部14の屈曲が多く、硬度調整索40が挿入部14に引き込まれている状態においては、
図11に示すようにシース固定リング342は先端側にスライドしている。前述のとおり、カラーリング33が軸方向に移動可能な隙間が存在する。カムリング322の回動開始時には、カムピン365が第1カム溝321内を移動することにより、カムリング322が先端側に移動する。カムリング322によりカラーリング33がシース固定部34に向けて押し込まれる。
【0063】
以上に説明したように、挿入部14の屈曲が少ない場合であっても、多い場合であっても、カムリング322は比較的小さい力で回動を開始する。すなわち、ユーザは硬度調整ノブ31の操作を比較的小さい力で開始できる。したがって、硬度調整ノブ31を正しく掴んで操作しているか否かについて、ユーザに不安を感じさせない内視鏡10を提供できる。
【0064】
シース固定リング342、カラーリング33およびカムリング322は、折止口金161に突き当たる。その後もユーザが硬度調整ノブ31を回した場合、第1カム溝321および第2カム溝352により、カムピン365および従動体36が操作部側に移動する。抜止部材441がワイヤ保持部361に突き当たった後、抜止部材441を介して硬度調整ワイヤ44が操作部側に向けて牽引される。
【0065】
硬度調整ワイヤ44が操作部側に向けて牽引されることにより、連結具46および接続索42が操作部側に牽引される。先端係止具47が
図4を使用して説明した長さAの範囲で操作部側にスライドする。先端係止具47は、係止突起471が係止具溝481の底に突き当たった状態で停止する。
【0066】
前述のように、内視鏡10は、先端係止具47の係止具溝481の底部への突き当てと、シース固定リング342、カラーリング33およびカムリング322の折止口金161への突き当てと、抜止部材441のワイヤ保持部361への突き当てとの、3か所の突き当て部を有する、3か所の突き当ての発生順序は、硬度調整索40の組付け状態および挿入部14の屈曲状態等の種々の条件により変化する。しかしながら、ユーザが硬度調整ノブ31をある程度以上に回動した場合には、3か所すべてで突き当てが発生する。
【0067】
3か所すべてで突き当てが発生した状態で、ユーザがさらに硬度調整ノブ31を回した場合、カム機構32、従動体36および抜止部材441により硬度調整ワイヤ44および連結具46が操作部側に牽引される。
【0068】
シース固定リング342およびカラーリング33は、折止口金161とカムリング322とに挟まれているため移動しない。したがって、シース固定部34と連結具46との間で、硬度調整シース41が圧縮される。硬度調整シース41に圧縮力が加わることにより、軟性部11の硬度、さらに具体的には、軟性部11のうち硬度調整シース41が配置された部分である硬度変化部111の硬度が上昇する。
【0069】
以上により、硬度調整ノブ31を操作部側からみて時計回りに回すことにより、ユーザは軟性部11の硬度を高くできる。硬度調整ノブ31を操作部側からみて反時計回りに回すことにより、ユーザは軟性部11の硬度を低くできる。
【0070】
硬度調整ワイヤ44の牽引量が多くなるほど、牽引に必要な力は大きくなる。しかしながら、前述のとおり操作部側においてはカムリング322の端面に略平行であるため、
図16に近い状態においては、カムリング322を回した場合の従動体36の移動量は小さい。したがって、ユーザは硬度調整ノブ31を容易に
図16に示す状態まで回動させられる。
【0071】
図16に示す状態では、カムピン365には先端側に向けて牽引する力が作用している。しかしながら第1カム溝321は略円周方向である。したがって、ユーザが硬度調整ノブ31から手を離した場合であっても、カムリング322は
図16に示す状態のまま保持され、軟性部11は硬度が高い状態に維持される。
【0072】
本実施の形態によると、硬度調整機構がスムーズに動作する内視鏡10を提供できる。先端係止具47、シース固定リング342および抜止部材441の3つの部材が、それぞれ突き当たるまで自由に移動できるため、挿入部14が屈曲しただけでは硬度調整シース41の圧縮が生じにくい。したがって、ユーザが硬度調整ノブ31を操作していない場合には、軟性部11の硬度変化が生じにくい内視鏡10を提供できる。
【0073】
本実施の形態によると、カラーリング33が自由に移動できる隙間が確保されているため、ユーザが小さい力で硬度調整ノブ31の操作を開始できる内視鏡10を提供できる。ユーザは、内視鏡画像から目を離さずに、安心して硬度調整機構を操作できる。
【0074】
本実施の形態によると、カラーリング33の摺動性が高いため、カムリング322が滑らかに回動する。したがって、ユーザが違和感なく硬度調整ノブ31を操作できる内視鏡10を提供できる。
【0075】
本実施の形態によると、接続索42、硬度調整シース41および硬度調整ワイヤ44の長さを適宜選択することにより、硬度変化部111の長さを決定できる。したがって、他の構成部材を変更することなく、用途に応じた長さの硬度変化部111を有する内視鏡10のラインアップを提供できる。
【0076】
[実施の形態2]
本実施の形態は、硬度調整ワイヤ44が接続索42を兼ねる内視鏡10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0077】
図18は、実施の形態2の挿入部14の部分断面図である。
図18は、
図2と同様の断面を示す。本実施の形態においては、硬度調整ワイヤ44は連結具46を貫通している。連結具46は硬度調整シース41の端部および硬度調整ワイヤ44に固定されている。硬度調整ワイヤ44の端部に、先端係止具47が固定されている。
【0078】
本実施の形態によると、硬度調整ワイヤ44のうち連結具46よりも先端側の部分が、接続索42の機能を果たすため、硬度調整索40を構成する部品の数を削減できる。
【0079】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
10 内視鏡
11 軟性部
111 硬度変化部
12 湾曲部
121 湾曲駒
129 受溝
13 先端部
14 挿入部
15 外装チューブ
16 折止部
161 折止口金
17 後端口金
20 操作部
21 湾曲ノブ
22 チャンネル入口
23 操作部筐体
25 ユニバーサルコード
30 硬度調整操作部
31 硬度調整ノブ
32 カム機構
321 第1カム溝
322 カムリング
325 ノブ係合溝
326 ノブ係合部
33 カラーリング
34 シース固定部
341 固定ネジ
342 シース固定リング
345 調整孔
35 ガイド枠
352 第2カム溝
355 スライド溝
36 従動体
361 ワイヤ保持部
362 ワイヤ孔
363 ワイヤスリット
365 カムピン
40 硬度調整索
41 硬度調整シース
42 接続索
421 シース受具
425 固定ネジ穴
44 硬度調整ワイヤ
441 抜止部材
46 連結具
47 先端係止具
471 係止突起
475 固定孔
48 接続管
481 係止具溝