(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】ビークル用電子制御ユニット及びビークルを制御する方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/08 20200101AFI20220727BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20220727BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20220727BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220727BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20220727BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W40/08
G08G1/09 F
G08G1/16 F
G08G1/09 V
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2020148792
(22)【出願日】2020-09-04
(62)【分割の表示】P 2018057546の分割
【原出願日】2018-03-26
【審査請求日】2020-09-11
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518102470
【氏名又は名称】トヨタ リサーチ インスティテュート,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ニコラオス ミカラキス
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー ペプケ
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-95851(JP,A)
【文献】特開2007-196809(JP,A)
【文献】特表2016-522769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビークル用電子制御ユニットであって、前記電子制御ユニットは、
1又は複数のプロセッサと、
ドライバ状態信号を出力するように構成された、1又は複数のドライバ状態センサと、
前記1又は複数のプロセッサに通信可能に結合され、ネットワークを通して遠隔サーバに通信するように構成された、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアと、
前記1又は複数のプロセッサに通信可能に結合された1又は複数のメモリであって、前記1又は複数のメモリは論理を記憶しており、前記論理は前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、
やがて現れる運転環境が前記ビークルの自律運転モードに不適切であることから前記ビークルの自律運転モードが終了することになると判断することと、
前記ビークルの自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、第1の期間にわたり、遠隔オペレータからの受信指令に応答して、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して前記ビークルを制御することと、
前記1又は複数のドライバ状態センサによって出力される前記ドライバ状態信号に基づいてドライバが制御を実施可能になったかを判断するために、前記第1の期間の間前記ドライバを監視することと、
前記ドライバが前記ビークルの制御を実施可能になっていると判断されたことに応答して、前記ビークルの制御を前記ドライバに移行することと、
を前記電子制御ユニットに行わせる、1又は複数のメモリと、
を具備する、電子制御ユニット。
【請求項2】
前記電子制御ユニットは、前記ドライバに前記ビークルの制御を実施するように警告を発する、請求項1に記載の電子制御ユニット。
【請求項3】
前記電子制御ユニットは
、
前記1又は複数のドライバ状態センサによって出力される前記ドライバ状態信号に基づいて、前記自律運転モードの終了時に、前記ドライバの、前記ビークルの制御の実施可能性を判断し、
前記自律運転モードの終了時に前記ドライバが前記ビークルの制御を実施不能であると判断したことに応答して、前記遠隔オペレータに前記ビークルの制御を移行する、
請求項1
又は2に記載の電子制御ユニット。
【請求項4】
前記電子制御ユニットは、前記第1の期間の終了時に前記ドライバが実施不能であると判断されたときに、前記第1の期間が経過した後に、前記ビークルの制御を前記ビークルの自律運転モードに移行する、請求項1から
3までのいずれか1つに記載の電子制御ユニット。
【請求項5】
前記電子制御ユニットは
、
前記自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、前記ドライバに前記ビークルの制御を実施するように警告を発する、
請求項1から
4までのいずれか1つに記載の電子制御ユニット。
【請求項6】
前記電子制御ユニットは
、
前記自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して前記遠隔オペレータに前記ビークルの制御を実施するように警告を発し、
前記遠隔オペレータに前記警告を発した後、前記ビークルの制御を前記遠隔オペレータに移行する前に、観察期間の間待機し、
前記遠隔オペレータに前記ビークルの制御を移行する、
請求項1から
5までのいずれか1つに記載の電子制御ユニット。
【請求項7】
ビークル用電子制御ユニットであって、前記電子制御ユニットは、
1又は複数のプロセッサと、
前記1又は複数のプロセッサに通信可能に結合され、ネットワークを通して遠隔サーバに通信するように構成された、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアと、
前記1又は複数のプロセッサに通信可能に結合された1又は複数のメモリであって、前記1又は複数のメモリは論理を記憶しており、前記論理は前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、
やがて現れる運転環境が前記ビークルの自律運転モードに不適切であることから前記ビークルの自律運転モードが終了することになると判断することと、
前記ビークルの自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、第1の期間にわたり、遠隔オペレータからの受信指令に応答して、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して前記ビークルを制御することと、
前記第1の期間の間、ドライバ制御挙動を同時点の遠隔オペレータ制御挙動と比較することと、
前記ドライバ制御挙動が前記同時点の前記遠隔オペレータ制御挙動と実質的に一致するときに前記ビークルの制御をドライバに移行することと、
を前記電子制御ユニットに行わせる、1又は複数のメモリと、
を具備する、電子制御ユニット。
【請求項8】
ドライバ状態信号を出力するように構成された、1又は複数のドライバ状態センサを更に備え、前記電子制御ユニットは、前記1又は複数のドライバ状態センサによって出力される前記ドライバ状態信号に基づいて前記ドライバが制御を実施可能になったかを判断するために、前記第1の期間の間前記ドライバを監視する、請求項
7に記載の電子制御ユニット。
【請求項9】
前記電子制御ユニットは、前記ドライバに前記ビークルの制御を実施するように警告を発する、請求項
7又は
8に記載の電子制御ユニット。
【請求項10】
前記電子制御ユニットは
、
1又は複数のドライバ状態センサによって出力されるドライバ状態信号に基づいて、前記自律運転モードの終了時に、前記ドライバの、前記ビークルの制御の実施可能性を判断し、
前記自律運転モードの終了時に前記ドライバが前記ビークルの制御を実施不能であると判断したことに応答して、前記遠隔オペレータに前記ビークルの制御を移行する、
請求項
7から
9までのいずれか1つに記載の電子制御ユニット。
【請求項11】
前記電子制御ユニットは
、
前記自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、前記ドライバに前記ビークルの制御を実施するように警告を発する、
請求項
7から
10までのいずれか1つに記載の電子制御ユニット。
【請求項12】
前記電子制御ユニットは
、
前記自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して前記遠隔オペレータに前記ビークルの制御を実施するように警告を発し、
前記遠隔オペレータに前記警告を発した後、前記ビークルの制御を前記遠隔オペレータに移行する前に、観察期間の間待機し、
前記遠隔オペレータに前記ビークルの制御を移行する、
請求項
7から
11までのいずれか1つに記載の電子制御ユニット。
【請求項13】
ビークルを制御する方法であって、
やがて現れる運転環境が前記ビークルの自律運転モードに不適切であることから前記ビークルの自律運転モードが終了することになると判断することと、
前記ビークルの自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、第1の期間にわたり、遠隔オペレータからの受信指令に応答して、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して前記ビークルを制御することと、
1又は複数のドライバ状態センサによって出力されるドライバ状態信号に基づいてドライバが制御を実施可能になったかを判断するために、前記第1の期間の間前記ドライバを監視することと、
前記ドライバが前記ビークルの制御を実施可能になっていると判断されたことに応答して、前記ビークルの制御を前記ドライバに移行することと、
を含む、方法。
【請求項14】
更に、前記ドライバに前記ビークルの制御を実施するように警告を発することを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
更に
、
前記1又は複数のドライバ状態センサによって出力される前記ドライバ状態信号に基づいて、前記自律運転モードの終了時に、前記ドライバの、前記ビークルの制御の実施可能性を判断することと、
前記自律運転モードの終了時に前記ドライバが前記ビークルの制御を実施不能であると判断したことに応答して、前記遠隔オペレータに前記ビークルの制御を移行することと、
を含む、請求項
13又は14に記載の方法。
【請求項16】
更に、前記第1の期間の終了時に前記ドライバが実施不能であると判断されたときに、前記第1の期間が経過した後に、前記ビークルの制御を前記ビークルの自律運転モードに移行することを含む、請求項
13から
15までのいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
更に、
前記第1の期間の間、ドライバ制御挙動を同時点の遠隔オペレータ制御挙動と比較することと、
前記ドライバ制御挙動が前記同時点の前記遠隔オペレータ制御挙動と実質的に一致するときに前記ビークルの制御を前記ドライバに移行することと、
を含む、請求項
13から
16までのいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本明細書は、ビークル制御を自律運転モードから切り替える電子制御ユニット、ビークル及び方法に概ね関し、さらに詳細には、ビークルの自律運転モードが終了することになると判断したことに応答してビークル制御を自律運転モードから遠隔オペレータに切り替えるための電子制御ユニット、ビークル(車両、乗り物、輸送機関)及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ビークルが自律運転と手動運転との間で変化する典型的なハンドオーバ状況では、ドライバは、自律ビークルの制御を実施する。しかし、ビークルが自律的に操作されることができず、その上ドライバも制御を実施できない状況があり得る。この問題を解決する手段のなかには、ビークルを道路の片側に寄せ又は停止させてビークルの進行を中断する、というようなフェールセーフ操作を実行するビークルに関するものもある。
【0003】
このため、ビークルの進行を中断することのない将来のハンドオーバ状況の観点から、ビークル制御を自律運転モードから遠隔オペレータに切り替える、代替的な電子制御ユニット、ビークル及び方法に対する需要が存在する。
【発明の概要】
【0004】
概要
一実施形態では、ビークル制御を自律運転モードから切り替えるためのビークル用電子制御ユニットは、1又は複数のプロセッサと、1又は複数のプロセッサに通信可能に結合され、ネットワークを通して遠隔サーバに通信するように構成された、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアと、1又は複数のプロセッサに通信可能に結合され、論理を記憶している1又は複数のメモリモジュールと、を含んでもよい。電子制御ユニットは論理を実行して、ビークルの自律運転モードが終了することになると判断し、1又は複数のドライバ状態センサによって出力されるドライバ状態信号に基づいて、自律運転モードの終了時にドライバがビークルの即時制御を実施不能であると判断し、自律運転モードの終了時にドライバがビークルの即時制御を実施不能であると判断したことに応答して、ビークルの制御を第1の期間にわたり、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して遠隔オペレータに移行し、自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、ドライバにビークルの手動制御を実施するように警告を発し、第1の期間が経過した後に、ビークルの制御をドライバ及び自律運転モードのうちの一方に移行する。
【0005】
ビークル制御を自律運転モードから切り替えるためのビークルは、ドライバ状態信号を出力する1又は複数のドライバ状態センサと、電子制御ユニットと、を含んでもよい。電子制御ユニットは、1又は複数のプロセッサと、1又は複数のプロセッサに通信可能に結合され、ネットワークを通して遠隔サーバに通信するように構成された、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアと、1又は複数のプロセッサに通信可能に結合され、論理を記憶している1又は複数のメモリモジュールと、を含んでもよい。電子制御ユニットは、ビークルの自律運転モードが終了することになると判断し、1又は複数のドライバ状態センサによって出力されるドライバ状態信号に基づいて、自律運転モードの終了時にドライバがビークルの即時制御を実施不能であると判断し、自律運転モードの終了時にドライバがビークルの即時制御を実施不能であると判断したことに応答して、ビークルの制御を第1の期間にわたり、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して遠隔オペレータに移行し、自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、ドライバにビークルの手動制御を実施するように警告を発し、第1の期間が経過した後に、ビークルの制御をドライバ及び自律運転モードのうちの少なくとも一方に移行する、ようにしてもよい。
【0006】
ビークル制御を自律運転モードから切り替える方法は、ビークルの自律運転モードが終了することになると判断することと、1又は複数のドライバ状態センサによって出力されるドライバ状態信号に基づいて、自律運転モードの終了時にドライバがビークルの即時制御を実施不能であると判断することと、自律運転モードの終了時にドライバがビークルの即時制御を実施不能であると判断したことに応答して、ビークルの制御を第1の期間にわたり、遠隔オペレータに移行することと、自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、ドライバにビークルの手動制御を実施するように警告を発することと、第1の期間が経過した後に、ビークルの制御をドライバ及び自律運転モードのうちの一方に移行することと、を含んでもよい。
【0007】
本開示に記載される実施形態によって提供される上記及び追加の特徴は、図面と併せて以下の詳細な説明を考慮してさらに十分に理解されるであろう。
【0008】
図面に示された実施形態は、本質的に、説明のための例示的なものであり、特許請求の範囲によって規定される主題を限定することを意図するものではない。例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、類似の構造が類似の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと、理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に図示され記載される1又は複数の実施形態による、ビークル、及び、ビークル制御を自律運転モードから切り替える電子制御ユニットの概略図。
【0010】
【
図2】本開示に図示され記載される1又は複数の実施形態による、
図1のビークル及び電子制御ユニットの頂面図。
【0011】
【
図3】本開示に図示され記載される1又は複数の実施形態による、
図1のビークルの乗客室を示す図。
【0012】
【
図4A】本開示に図示され記載される1又は複数の実施形態による、ビークル制御を自律運転モードから切り替える方法を示す図。
【0013】
【
図4B】本開示に図示され記載される1又は複数の実施形態による、
図4Aの方法の代替ステップ及び/又は追加ステップを示す図。
【0014】
【
図4C】本開示に図示され記載される1又は複数の実施形態による、
図4Aの方法の代替ステップ及び/又は追加ステップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本開示に開示される実施形態には、ビークル制御を自律運転モードから切り替えるための電子制御ユニット、ビークル及び方法が含まれる。本開示に記載される実施形態は、さまざまな情報(例えば、ビークルセンサからの情報及び/又はネットワークを介した情報)を用いて、ビークルの自律運転モードが終了することになると判断してもよい。例として、特定の状況では自律運転モードが不適切であるおそれがある場合がありうる。そのような状況には、やがて現れる交通状態、やがて現れる悪天候、やがて現れる工事区域、やがて現れる自律運転が禁止されているエリアなど、が含まれうる。自律運転モードが終了すると予測されると、自律ビークルは、ビークルの制御を自律運転モードからドライバに移行することを試みる場合がある。電子制御ユニット、ビークル及び方法は、さまざまなドライバ状態センサに基づいて、ドライバがビークルの即時制御を実施できない又は引き継ぎできないと判断するおそれがある。そのような例では、電子制御ユニット、ビークル又は方法は、代わりに、ドライバがビークルの制御を実施可能になるまでの期間又はビークルの自律運転モードが復帰可能になるまでの期間、ビークルを制御可能な遠隔オペレータにビークルの制御を移行してもよい。このように、ビークルの制御を、進行を中断させることなく、自律運転モードと、遠隔オペレータと、ビークルドライバとの間で途切れなく移行可能である。ビークル制御を自律運転モードから切り替えるための種々の電子制御ユニット、ビークル及び方法を、対応する図面を具体的に参照して、本開示においてさらに詳細に説明する。
【0016】
本開示で用いられる場合、用語「自律運転モード」は、ビークルがドライバの制御なしに目的地まで進行しうる完全自律運転モードのことであることもあれば、ビークルが特定の運転操作(例えば、自律的駐車など)のみを自律的に実施する部分的自律運転モードであることもある。
【0017】
本開示で用いられる場合、用語「ハンドオーバ状況」は、自律運転が終了することになってビークルの制御がビークルドライバ又は遠隔オペレータに移行されることになるとビークルが判断する状況のことである。そのような状況には、自律運転が適切でないと判断される状況(例えば、交通渋滞、工事区域、悪天候、自律ビークルが制限される運転区域など)が含まれる。
【0018】
ここで
図1を参照すると、ビークル制御を自律運転モードから切り替えることができるビークル100が概略的に図示される。ビークル100は、例えば、地上ビークル、水上ビークル、及び/又は、空中ビークルのような、任意の乗客用ビークルであってもよい。ビークル100は、通信経路104と、電子制御ユニット102と、スピーカ107と、ディスプレイ108と、ビークルインターフェース109と、1又は複数の運転状態センサ120と、1又は複数のドライバ状態センサ130と、1又は複数のビークルシステム140とを含んでもよい。電子制御ユニット102は、1又は複数のプロセッサ105と、1又は複数のメモリモジュール106と、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110とを含んでもよい。電子制御ユニット102は、遠隔サーバ200及び/又は他のビークル300と通信するネットワーク117と通信して、やがて現れるハンドオーバ状況に関する情報を受け取るように構成されてもよい。
【0019】
さらに
図1を参照すると、通信経路104は、ビークル100内に配置される種々のモジュール同士間にデータの相互接続をもたらす。具体的には、モジュールそれぞれは、データを送信しかつ/又は受信しうるノードとして動作することができる。いくつかの実施形態では、通信経路104は、ビークル100の全体にわたってプロセッサ、メモリ、センサ及びアクチュエータへの電気的データ信号の送信を可能にする導電性材料を含む。別の実施形態では、通信経路104は、例えば、LINバス、CANバス、VANバスなどのようなバスであり得る。さらに別の実施形態では、通信経路104は、無線及び/又は光導波路であってもよい。通信可能に結合された構成要素には、例えば、導電媒体を介した電気信号、空気を介した電磁信号、光導波路を介した光信号、などのようなデータ信号同士を交換することができる構成要素が含まれてもよい。
【0020】
このため、通信経路104は、例えば、導電線、導電トレース、光導波路など、信号を送信できる任意の媒体から形成されてもよい。また、通信経路104は、信号を送信可能な媒体の組み合わせから形成されてもよい。いくつかの実施形態では、通信経路104は、協働して電気的データ信号をプロセッサ、メモリ、センサ、入力装置、出力装置及び通信装置のような構成要素に送信可能にする導電トレース、導電線、コネクタ及びバスの組み合わせを備える。また、用語「信号」は、媒体を通って進行可能な、DC、AC、正弦波、三角波、矩形波、振動、などのような波形(例えば、電気波形、光波形、磁器波形、機械的波形、又は電磁波形)を意味する。
【0021】
さらに
図1を参照すると、電子制御ユニット102は任意の計算装置であり得る。例として、電子制御ユニット102は、ビークル設置型、ハンドヘルド型、デスクトップ型、又は他の形式の、任意の形態の単独の計算装置であってよく、又は、多数の計算装置を備えてもよい。電子制御ユニット102は、ビークル100の通信経路により1又は複数のメモリモジュール106と通信可能に結合された電子制御ユニットの操作を制御するための1又は複数のプロセッサ105を含む。1又は複数のプロセッサ105は、非一時的コンピュータ可読媒体に記憶された機械可読指示を実行することができる任意の装置を含んでもよい。このため、1又は複数のプロセッサ105のそれぞれは、コントローラ、集積回路、マイクロチップ、コンピュータ、及び/又は、任意の他の計算装置を含んでもよい。
【0022】
電子制御ユニット102は、通信経路104により1又は複数のプロセッサ105に通信可能に結合された1又は複数のメモリモジュール106をさらに含む。1又は複数のメモリモジュール106は、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリとして構成されてもよく、そのため、ランダム・アクセス・メモリ(SRAM、DRAM、及び/もしくは、他の種類のRAMを含む)、フラッシュメモリ、セキュア・デジタル(SD)メモリ、レジスタ、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、並びに/又は、他の種類の非一時的コンピュータ可読媒体を含んでもよい。特定の実施形態によっては、このような非一時的コンピュータ可読媒体は、電子制御ユニット102の内部及び/又は電子制御ユニット102の外部に存在してもよい。1又は複数のメモリモジュール106は、以下に詳細に記載するように、1又は複数の論理を記憶するように構成されてもよい。本開示に記載される実施形態は、分散された計算装置を利用して、本開示に記載される論理の任意の部分を実行してもよい。
【0023】
本開示の実施形態には、プロセッサが直接実行する機械語、アセンブリ言語、オブジェクト指向プログラミング(OOP)、スクリプト言語、マイクロコードなどのような任意の世代の任意のプログラミング言語(例えば、1GL、2GL、3GL、4GL、及び/又は、5GL)であって、機械可読指示にコンパイルされ又は組み込まれて機械可読媒体に記憶されうるプログラミング言語で書かれた、機械可読指示を含む論理及び/又はアルゴリズムが含まれる。同じように、論理及び/又はアルゴリズムは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)構成又は特定用途向け集積回路(ASIC)及びそれらの均等物を介して実行される論理のような、ハードウェア記述言語(HDL)で書かれてもよい。このため、論理は、事前にプログラムされたハードウェア要素として、及び/又は、ハードウェアコンポーネントとソフトウェアコンポーネントとの組み合わせとして、任意の従来のコンピュータプログラミング言語で実行されてもよい。1又は複数のメモリモジュール106に記憶される論理には、例えば、以下に記載するように、電子制御ユニット102がビークル100の遠隔操作を実施できるようにする論理が含まれてもよい。
【0024】
電子制御ユニット102は、1又は複数のビークルシステム140と直接的又は間接的に通信して、種々のビークル機能を制御することができる。ビークルシステム140は、ドライバが電子制御ユニット102と通信して電子制御ユニット102と情報を送受信できるようにすることが可能な、1又は複数のビークルインターフェース109を含むことができる。ビークルインターフェース109は、例えば、1もしくは複数の対話型ディスプレイ、オーディオシステム、音声認識システム、ボタン及び/もしくはダイアル、触覚フィードバックシステム、又は、情報を入出力するために用いられる任意の他の類似システムを含むことができる。他のビークルシステム140は、推進システム、ステアリングシステム、安定制御システム、ナビゲーションシステム、エネルギシステム、及び(ビークルのクライメート機能又はエンターテインメント機能などのような)種々のビークル機能を制御可能な任意の他のシステムを含むことができる。いくつかの実施形態では、他のビークルシステム140の動作に影響を及ぼす指令を電子制御ユニット102に出すために、ドライバはビークルインターフェース109を用いることができる。
【0025】
推進システムは、エンジン、モータ、トランスミッション、及び/又は、ビークル100を駆動するのに用いられる他のビークル制御を制御することができる。ナビゲーションシステムは、ビークル100のルート又は方向を確立するのに用いられることができ、地図を含むことができ、かつ/又は、最適のルートを決定するための外部ソースもしくは遠隔ソースに接続することができる。安定制御システムは、ビークル100の車輪の1又は複数に対してブレーキ又はモータを作動させて、例えば、ビークルの適切なヨーを含むビークル100の安定性を維持することができる。エネルギシステムは、ビークル100のエネルギの使用及び保存を制御することができる。このエネルギ源は、ガソリン、天然ガス、ディーゼル油、バッテリ、燃料電池などの形態であってよい。ビークルシステム140は、特定のビークルシステム140が制御する機能を実行するのに用いられ得る種々のアクチュエータと通信することができる。例えば、推進システムは、アクチュエータに、アクセルペダルの位置に基づいてスロットルプレートの位置を移動させることができる。このように、種々のビークルシステム140は、ビークル100のエンジン、モータ、バッテリシステム、加速器、ブレーキ、ステアリング、トランスミッション、又は他のシステムの操作を制御することができ又は同操作に影響を及ぼすことができる。
【0026】
さらに
図1を参照すると、電子制御ユニット102は、電子制御ユニット102をネットワーク117に通信可能に結合するためのネットワーク・インターフェース・ハードウェア110をさらに含んでもよい。ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110は、通信経路104に通信可能に結合され得るものであり、ネットワーク117を介してデータを送信することができかつ/又は受信することができる任意の装置であり得る。このため、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110は、任意の有線又は無線の通信を送信しかつ/又は受信するための通信トランシーバを含むことができる。例えば、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110は、アンテナ、モデム、LANポート、Wi-Fiカード、WiMaxカード、モバイル通信ハードウェア、近距離無線通信ハードウェア、衛星通信ハードウェア、並びに/又は、他のネットワーク及び/もしくは装置と通信するための任意の有線又は無線のハードウェアを備えてもよい。一実施形態では、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110は、Bluetooth(登録商標)無線通信プロトコルに従って動作するように構成されるハードウェアを含む。別の実施形態では、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110は、Bluetooth(登録商標)通信を1又は複数の遠隔装置と送信しかつ同遠隔装置から受信するためのBluetooth(登録商標)送信/受信モジュールを含んでもよい。
【0027】
電子制御ユニット102は、電子制御ユニット102をビークルビークル間通信(車車間通信)により他のビークル300に通信可能に結合するために、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を介しネットワーク117と通信してもよい。例として、ビークル100及び他のビークル300は、交通状態、道路状態、近づいてくる障害物などに関する情報を送信しかつ受信してもよい。いくつかの実施形態では、ネットワーク117は、電子制御ユニット102と1又は複数の遠隔装置とを通信可能に結合するためにBluetooth(登録商標)技術を利用するパーソナル・エリア・ネットワークである。さらに別の実施形態では、ネットワーク117は、1又は複数のコンピュータネットワーク(例えば、パーソナル・エリア・ネットワーク、ローカルエリア・ネットワーク又は広域ネットワーク)、セルラネットワーク、衛星ネットワーク、及び/又は、全地球測位システムと、その組み合わせとを含んでもよい。このため、電子制御ユニット102は、電線、広域ネットワーク、ローカルエリア・ネットワーク、パーソナル・エリア・ネットワーク、セルラネットワーク、衛星ネットワークなどを介して、ネットワーク117に通信可能に結合され得る。適切なローカルエリア・ネットワークには、有線のEthernet(登録商標)、及び/又は、例えばワイヤレス・フィデリティ(Wi-Fi)のような無線技術が含まれてもよい。適切なパーソナル・エリア・ネットワークには、例えば、IrDA、Bluetooth(登録商標)、無線USB、Z-Wave、ZigBee、及び/又は、他の近距離無線通信プロトコルのような無線技術が含まれてもよい。適切なパーソナル・エリア・ネットワークには同じように、例えば、USB及びFireWireのような有線のコンピュータ・バスが含まれてもよい。適切なセルラネットワークには、LTE、WiMAX、UMTS、CDMA及びGSM(登録商標)のような技術が含まれるが、このような技術に限定されない。
【0028】
電子制御ユニット102は、ビークル100を遠隔サーバ200に通信可能に結合するために、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を介しネットワーク117と通信してもよい。遠隔サーバ200は、ネットワーク117を介してリソースをビークル100に配信するための、プロセッサ、メモリ、及び、チップセットを概ね含んでもよい。本開示でさらに詳細に記載するように、遠隔オペレータが遠隔サーバ200を通しビークル100に関する情報を受信してもよく、ネットワーク117を通し電子制御ユニット102に制御入力を返送してビークル100の種々のビークルシステム140(例えば、ステアリングシステム、推進システム、安定制御システム、ナビゲーションシステム及びエネルギシステム)を制御するようにしてもよい。ビークル100の自律運転モードが終了することになると判断されたときに、このようにして、ビークル100の制御を、遠隔オペレータに移行してもよい。
【0029】
本開示に記載される実施形態では、1又は複数のメモリモジュール106、1又は複数のプロセッサ105及びネットワーク・インターフェース・ハードウェア110は、電子制御ユニット102と一体である。しかし、電子制御ユニット102、1又は複数のメモリモジュール106、1又は複数のプロセッサ105及びネットワーク・インターフェース・ハードウェア110は、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、互いに通信可能に結合された個別の構成要素であってもよいことに留意されたい。
【0030】
さらに
図1を参照すると、ビークル100は、例えば、地図、ナビゲーション、娯楽、情報又はその組み合わせのような視覚出力を提供するためのディスプレイ108を含んでもよい。ディスプレイ108は通信経路104に結合される。このため、通信経路104は、ディスプレイ108をビークル100の他のモジュールに通信可能に結合する。ディスプレイ108は、例えば、ブラウン管、発光ダイオード、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどのような光出力を送信することができる任意の媒体を含んでもよい。さらにまた、ディスプレイ108は、光情報の提供のほか、ディスプレイ108の表面上の触覚入力又は同ディスプレイに隣接する触覚入力の存在及び位置を検出するタッチスクリーンであってもよい。このため、各ディスプレイ108は、ディスプレイ108が提供する光出力上に直接入力される機械的入力を受け取ってもよい。さらに、ディスプレイ108が、1又は複数のプロセッサ105と1又は複数のメモリモジュール106とのうち少なくとも一方を含むことができることに留意されたい。いくつかの実施形態では、ビークル100は多数のディスプレイを含んでもよい。ディスプレイ108は、ビークル100のダッシュボードに結合されてもよい。しかし、他の実施形態では、ディスプレイ108は、ビークル100の他の場所に位置決めされてもよい。さらに別の実施形態では、ディスプレイ108は、ヘッドアップディスプレイであってもよい。
【0031】
ビークルインターフェース109は、ディスプレイ108と組み合わされている状態で概略的に図示されている。しかし、ビークルインターフェース109は、さまざまなビークル100の構成要素に通信可能に結合されたさまざまなユーザ入力構成要素を含んでもよく、ディスプレイ108に結合されるものに限定されない、ことに留意されたい。
【0032】
スピーカ107は、通信経路104に結合され、電子制御ユニット102に通信可能に結合される。スピーカ107は、電気信号を可聴の機械的振動に変換することができる任意の装置である。スピーカは、ビークル100の自律運転モードが終了することになるという可聴警告をドライバに出力してもよい。これにより、現在のビークル状況に順応し、ビークル100の制御の実施に備えるようにドライバに警告してもよい。
【0033】
本開示に示されるように、ビークル100は1又は複数の運転状態センサ120を含む。1又は複数の運転状態センサは、電子制御ユニット102が1又は複数の運転状態センサ120と直接的又は間接的に通信できるように、通信経路104を通して電子制御ユニットに通信可能に結合されてもよい。1又は複数の運転状態センサ120は、運転状態信号を電子制御ユニット102に出力することができる任意のセンサであってもよい。運転状態信号は、ビークル100の現在の運転状態とビークル100の今後の運転状態との両方に関する情報を示すものでもよい。例えば、1又は複数の運転状態センサ120から受け取る情報によって、電子制御ユニット102がやがて現れる運転状態を予測できるようにされてもよく、これによって、電子制御ユニット102が、ビークル100の自律運転モードが終了することになると予測できるようにされてもよい。
【0034】
1又は複数の運転状態センサ120は、方向、速度、加速、ヨーなど、ビークル100の動きを測定するのに用いられ得る。1又は複数の運転状態センサ120から受け取るデータに基づいて、電子制御ユニット102は、自律運転モード時にビークルシステム140を制御してビークル100を自律的に運転するようにすることができる。例示的なセンサ120は、加速度計、ジャイロスコープ、及び/又は、磁力計を含むことができ、これらのうちの1又は複数を慣性計測装置(IMU)と組み合わせることができる。1又は複数の運転状態センサ120は、ビークル100の位置を決定するのに衛星利用測位システム(GPS)を用いることができる位置センサを含んでもよい。いくつかの実施形態では、GPSを通してリアルタイムの交通及びルート情報を受け取ってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、1又は複数の運転状態センサ120は、電荷結合素子(CCD)、相補型MOS(CMOS)、又は類似の撮像素子を用いて画像データを取得するカメラのような光センサを含んでもよく、単一のスペクトル画像又は複数のスペクトル画像を取得するように構成され得る。いくつかの実施形態では、1又は複数の運転状態センサ120は、ビークル100の近傍で(他のビークルのような)対象物の識別を支援することができる(それぞれが無線検知又は光検知を用いる)レーダセンサ及び/又はライダ(lidar)センサを含んでもよい。1又は複数の運転状態センサ120として含まれるものの他のものは、天候の変化(例えば、温度計もしくは気圧計)又は高度の変化(例えば、高度計)を検出可能であってもよく、ビークルシステム140の現状(例えば、燃料レベル又はエネルギレベル、エンジン温度、酸素レベル、タイヤ圧など)を監視するために内部センサを含むことができる。1又は複数の運転状態センサ120が検出できる他の情報のうち、1又は複数の運転状態センサ120は、ビークル速度、ビークル方向、ビークル加速度、ビークル回転、ビークル位置、環境気象条件、交通状態及び道路状態を検出してもよい。
【0036】
このほか、
図2を参照すると、
図2は、電子制御ユニット102と直接的又は間接的に通信するビークル100の図形表示である。1又は複数の運転状態センサ120を、ビークル100上の種々の位置に配置することができる。1又は複数の運転状態センサは、電子制御ユニットがビークル100の位置及び方向と例えば推測航法システムでのステアリング角とを推測するのに使用するための、速度、加速度、ホイール回転数、ヨー及び周囲環境内の対象物との間の距離の変化を取得するように構成され得る。1又は複数の運転状態センサ120はこのほか、ビークルのx軸、y軸及びz軸の位置、速度、加速度、回転角及び回転角速度の変化を示すデータと、ビークル100のナビゲーションルートに近い対象物の類似データと、を取得することができる。1又は複数の運転状態センサ120が推測航法システムのためのデータを取得するならば、ホイール回転数、進行距離、ステアリング角、及びステアリング角の変化速度に関するデータを取得することができる。
【0037】
これまでに示されたように、1又は複数の運転状態センサ120は、ビークル100を取り囲むエリアの対象物からの戻りレーザに関するデータを取得することができるライダセンサであって、信号がライダセンサに戻るのに要する時間を測定することにより測距距離が算出されるライダセンサを含んでもよい。戻りレーザには、ライダセンサ、又は、ビークル100上もしくはビークル100に近接して配置される別の光源が発するレーザ光などの光の源が光を当てた対象物が反射する後方散乱光が含まれ得る。光が対象物で反射されると、ライダセンサは、例えば、対象物の分析及び分類に用いられる対象物上の各点の強度値及び反射率を取得することができる。
【0038】
このほか、例えば、交通信号灯、道路上のマーク又は交通標識の画像を取得することによって交通信号及び交通パターンを検出するのに、1又は複数の運転状態センサ120を用いることができる。例えば、光センサが、電子制御ユニット102による処理のための画像を取得することができる。一例として、光センサを用いて道路上の車線区分線を読み取るようにすることによって、電子制御ユニット102は、その道路の適切な進行車線(即ち、2組の車線区分線の間の空間)がどこなのかを決定することができる。別の例として、文字列認識処理を用いて、1又は複数の光センサは、各道路の法定速度制限を記す交通標識を読み取ることができる。以下に記載するように、ビークルを自律モードで動作させるときに電子制御ユニット102はこの情報を用いることができる。さらに、光センサを、運転環境の単一又は複数のスペクトル画像データを取得するように構成することができる。
【0039】
本開示でこれまでに示したように、1又は複数の運転状態センサ120は、複数の衛星からの信号に基づいてグローバル座標上のビークル100の位置を取得することができる1又は複数の位置センサを含むことができる。3次元三角測量及び時間推定を用いてビークル100の位置及び速度を推定するのに複数の衛星を用いることができる。さらに、ビークル100の現在及び今後の状態を決定し又はビークル100のその環境に対する位置もしくは今後の位置を決定するのに利用可能な任意の他のデータ及び/又は信号を、1又は複数の運転状態センサ120によって取得することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、運転状態信号はこのほか、例えば、遠隔サーバ200又は他のビークル300からネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して受け取られる通信によって提供されてもよい。例えば、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を通して受け取られる通信には、今後の運転状態(例えば、やがて現れる交通状態、悪天候、工事区域、自律運転が禁止されているエリアなど)に関する情報が含まれてもよい。
【0041】
本開示に示されるように、ビークル100は、手動運転モード又は自律運転モードで動作するオプションを含み得る。ビークル100が手動運転モードで動作しているときに、ドライバは、種々のビークルシステム140のうちの少なくともいくつかを手動で制御してビークル100を運転する。一方、自律運転モードでは、種々のビークルシステム140の少なくともいくつかを制御して、ドライバの介入なしにビークル100を運転するのに、電子制御ユニット102が用いられる。いくつかのビークルに、ビークル100の操作をドライバと電子制御ユニット102との間でシェアする「部分自律運転モード」を装着してもよい。例えば、ドライバは、ステアリングのようなビークル100の操作の特定の態様を制御することができるのに対し、電子制御ユニット102は、制動及び加速のようなビークル100の他の態様を制御することができる。これまでに挙げた運転モードに加えて、ビークル100は、以下でさらに詳細に記載するように、遠隔操作モードにて動作することができる。
【0042】
これまでに示したように、正常な動作状況下では、1又は複数の運転状態センサ120は、ビークル100を自律運転モードで運転するのに十分な情報を電子制御ユニット102に提供すると考えられる。しかし、ビークル100は、例えば、工事区域、道路中央の障害物、交通渋滞、悪天候、自律ビークル制限運転区域など、自律動作が不適な運転環境に、時々、否応なく、遭遇するおそれがある。さらに、視覚的に明瞭な線のない交差点、道が曲がりくねっている山岳領域、又は込み入った都市環境のような特定の道路パターンが自律運転モードにとって非常に困難なものであると考えられるおそれがある。電子制御ユニット102は、1又は複数の運転状態センサ120から受け取る運転状態信号に基づいて、ビークル100がそのような運転環境内にあり又は今後のある時点でそのような運転環境に至ることになることを検出することができる。いくつかの実施形態では、そのような領域の位置を、電子制御ユニット102がアクセス可能な(例えば、1もしくは複数のメモリモジュール106に局所的に記憶され、又は、遠隔ソースからアクセス可能な)地図データに、困難な環境として記憶することができる。さらに、1又は複数の運転状態センサ120が検出した時点の環境情報(例えば、道路、交通信号、交通パターンなど)が、局所的に又は遠隔に記憶される地図又はデータベースから読み出された時点の環境に関する期待データと異なるならば、自律運転モードに不適切な運転環境の存在を判断することができる。このほか、取得データと期待データとの間のわずかな差異を許容するように閾値を規定することができ、環境の変化をそのような閾値に対して測定することができる。自律モードが賢明ではないこのような運転環境はいずれも、この開示の目的にとって「自律運転に不適切な運転環境」であると考えることができる。この開示の目的にとって「自律運転に不適切な運転環境」は、自律動作に適さず自律運転モードが終了することになると電子制御ユニット102が判断する、任意の運転環境又は状況を意味する。
【0043】
ビークル100が自律運転モードで動作しているとき、電子制御ユニット102は、1又は複数の運転状態センサ120によって出力される運転状態信号又はネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を通した通信から受け取る運転状態信号を分析することができ、運転状態信号に基づいて、関連する指令をビークルシステム140に発信することができる。例えば、電子制御ユニット102は、1又は複数の運転状態センサ120によって検出される交通標識の文字列に基づいてビークル100が進行している道路の最高速度制限を判断することができる。代替的には、電子制御ユニット102は、最高速度制限を判断するために、1又は複数の運転状態センサ120から受け取る位置情報と、局所的に(例えばメモリ106に)記憶され又は遠隔ソースから読み出される地図データとを用いることができる。電子制御ユニット102が道路の最高速度制限を判断すると、電子制御ユニット102は、ビークルシステム140が最高速度制限を超過してビークル100を動作させるのを防止することができる。別の例としては、車線区分線を検出することによって、電子制御ユニット102は、ビークルシステム140がビークル100を適切な車線内で動作させるのを確保することができる。
【0044】
本開示にこれまで示したように、電子制御ユニット102は、1又は複数の運転状態センサ120から受け取った情報に基づいて、自律運転モードに不適切な運転環境がやがて現れることから今後のある時点でビークル100の自律運転モードが終了することになる、と判断することが可能であってもよい。例えば、1又は複数の運転状態センサ120が1又は複数の位置センサを含む場合、電子制御ユニットは、ビークル100が自律ビークル運転制限区域内に入ることになると判断してもよい。そのような区域では、ビークル100を自律運転モードで運転することが禁止されるおそれがある。そのような場合、電子制御ユニット102は、ビークル100の自律運転モードが終了しなければならず、ビークル100の制御をドライバ又は遠隔オペレータの一方に移行しなければならない、と判断するであろう。同じように、電子制御ユニット102は、例えば、ビークル100が自律ビークル運転区域を出るときに、1又は複数の運転状態センサ120から受け取る情報又はネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を通して受け取る通信に基づいて、ビークル100の自律運転モードを復帰させてもよいと判断することが可能であってもよい。場合が該当する。
【0045】
これまでに示したように、いくつかの実施形態では、1又は複数の運転状態センサ120から受け取る情報に代わって又は同情報に加えて、電子制御ユニット102は、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を介した他のビークル300又は遠隔サーバ200から、ビークル100の自律運転モードが今後のある時点で終了することを示す通信を受け取ってもよい。例えば、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を介して受け取る通信が、途中でやがて現れる事象であって、自律ビークル運転制限区域、交通、悪天候などを含むがこれに限定されるわけではない事象を示してもよい。いくつかの実施形態では、1又は複数の運転状態センサ120から受け取る情報は、遠隔サーバ200に通信されてもよい。この遠隔サーバは、途中でやがて現れる予測事象であって、自律運転モードで動作するビークル100の能力に影響を及ぼすおそれのある事象を返し、その結果、自律運転モードが終了することになる。
【0046】
電子制御ユニット102は、いくつかの実施形態では、ナビゲーション情報に基づいて、ビークル100の自律運転モードが終了することになると判断してもよい。本開示に示されるように、いくつかの実施形態では、1又は複数の運転状態センサ120は、GPSを用いてビークル100の位置を決定する1又は複数の位置センサを含んでもよい。そのため、ビークル100は、時には、計画されたルート、さもなければ認識されたルート上を走行してもよい。電子制御ユニット102に記憶されたナビゲーションデータに基づいて、電子制御ユニット102は、ビークル100の自律運転モードが終了することになるとこのナビゲーションデータに基づき判断することが可能であってもよい。例えば、ビークル100が計画されたルートに沿って走行する場合、電子制御ユニット102は、ビークル100が幹線道路から自律運転制限区域に入るオフランプに存在したときにビークル100の自律運転モードが終了することになると認識してもよい。
【0047】
ビークル100の自律運転モードが終了することになると判断された場合、ビークル100の制御を、ドライバが実施可能であればドライバの1人に、ドライバが実施不能であれば遠隔オペレータに、移行してもよい。遠隔操作モードでは、ビークル100を遠隔オペレータによって遠隔で操作可能である。一実施例では、ドライバ(即ち、ビークル100内に物理的に存在する乗員)は、自律運転モードが終了したときにビークル100の即時制御を実施できないと判断されるおそれがある。例えば、本開示でさらに詳細に説明するように、ドライバは、ドライバが眠っている又は注意散漫であると、実施不能であると判断されるおそれがある。そのような場合には、電子制御ユニット102は、ビークル100の制御を、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を介して遠隔オペレータに自動的に移行することになる。ドライバがビークルの制御をその後に実施可能になったと判断されると、ビークルの制御を遠隔オペレータからドライバに自動的に移行してもよい。さらに別の実施形態では、ドライバが依然として実施不能であるが、ビークル100が自律運転に不適な運転環境をもはや走行しないのであれば、ビークルの制御を自律運転モードに戻すことができる。
【0048】
再び
図1を参照すると、ビークル100は1又は複数のドライバ状態センサ130を含む。1又は複数のドライバ状態センサ130は、電子制御ユニット102が1又は複数のドライバ状態センサ130と直接的又は間接的に通信できるように、通信経路104を介して電子制御ユニットに通信可能に結合されてもよい。1又は複数のドライバ状態センサ130は、ビークル100の自律運転モードが終了する場合にドライバがビークル100の制御を実施可能であることを示すドライバ状態信号を出力するように構成される任意のセンサであってもよい。例えば、1又は複数のドライバ状態センサは、例えば、心拍数モニタ、呼吸モニタ、血圧モニタなどのような生物学的センサを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1又は複数のドライバ状態センサ130は、ドライバが無能力状態にあり又は医学的な緊急事態に陥っていると電子制御ユニット102が判断できるようにしうる情報を提供してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、1又は複数のドライバ状態センサ130は、ドライバの目又は頭部の位置を決定してドライバの認知度/実施可能性を判断するために1又は複数のカメラを含んでもよい。例えば、ドライバの目が閉じておりかつ/又はドライバの頭部が背けられているならば、電子制御ユニット102は、自律運転モードの終了時点でドライバがビークル100の即時制御を実施できないと判断してもよい。いくつかの実施形態では、1又は複数のドライバ状態センサ130はシート位置センサを含んでもよい。例えば、ドライバのシートが運転に概ね関連しない位置にリクライニング(例えば、大部分/完全にリクライニング)されているならば、電子制御ユニットは、ドライバが自律運転モードの終了時にビークルの即時制御を実施できないと判断してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、1又は複数のドライバ状態センサ130は、例えば、ビークルのステアリングホイール、シフトレバー及びペダルのようなビークル100の種々の運転装置に結合されてもよい。1又は複数のドライバ状態センサ130は、ドライバによって操作される種々の運転装置の位置に関する情報を出力してもよい。本開示にさらに詳細に説明されるように、ビークル100の制御が遠隔オペレータからドライバに移行される状態では、遠隔オペレータの制御入力を、1又は複数のドライバ状態センサ130によって測定されたドライバの動きと比較して、ドライバがビークル100の制御を実施可能であるかを判断してもよい。そのため、ビークル100の制御が遠隔オペレータからドライバに移行可能になる前に、ドライバが遠隔オペレータの制御入力に適合しなければならない閾値を設定してもよい。
【0051】
図3を参照すると、ビークルのドライバシート145内に位置決めされたドライバ150とともに、ビークル100の乗客室101が図示される。図示されるように、1又は複数のドライバ状態センサ130は、乗客室101全体のさまざまな位置に設置されてもよい。例えば、1又は複数のドライバ状態センサ130が種々の生物学的センサを含むときには、センサを、ドライバシート145上もしくは同シートの内部、又は、ドライバ150が接触することが多い場所(例えば、ステアリングホイール132)に配置してもよい。同じように、1又は複数のドライバ状態センサ130がシート位置センサを含む場合、シート位置センサを、ドライバシート145上又は同シートの内部に配置してもよい。1又は複数のドライバ状態センサ130が1又は複数のカメラを含む場合、1又は複数のカメラを、乗客室101全体のさまざまな位置に位置決めしてドライバ150の画像データを収集するようにしてもよい。そのような位置には、ステアリングホイール132、ダッシュボード、ドア、内部ビークルピラーなどが含まれてもよい。さらに、本開示に示されるように、1又は複数のドライバ状態センサ130は、ビークル100の種々の運転装置(例えば、ステアリングホイール132、シフトレバー及びペダル)に結合されて、運転装置へのドライバ150の入力を示す情報を出力してもよい。
【0052】
図4Aは、ビークル制御を自律運転モードから移行させる方法の一実施例を図示する。この実施では、電子制御ユニット102は、1又は複数の運転状態センサ120の少なくとも1つによって出力される運転状態信号と、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を介して受け取られる通信とに基づいて、ビークル100の自律運転モードが終了することになるかどうかを判断する(ブロック12)。例えば、電子制御ユニット102は、ビークルが自律運転に不適切な運転区域(例えば、自律ビークル運転制限区域、やがて現れる交通状態、やがて現れる悪天候、計画されたルート中の自律運転が許可されていないやがて現れる区間など)に入ることになることを運転状態信号が示す場合に、自律運転モードが終了することになると予測してもよい。
【0053】
自律運転モードが終了することになると判断すると(ブロック12)、電子制御ユニット102は、1又は複数のドライバ状態センサ130によって出力されるドライバ状態信号に基づいて、自律運転モードの終了時点でドライバ150がビークル100の即時制御を実施できないと判断(ブロック14)してもよい。例えば、ドライバ150が注意散漫である、眠っている、さもなければ実施不能である、ことをドライバ状態信号が示す場合、電子制御ユニット102は、自律運転モードの終了時点でドライバ150がビークル100の即時制御を実施できないと判断してもよい。
【0054】
ドライバが自律運転モードの終了時点でビークル100の即時制御を実施できる状態にないと判断すると(ブロック14)、電子制御ユニット102は、ビークル100の制御を第1の期間にわたり、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を介して遠隔オペレータに移行してもよい(ブロック16)。本開示でこれまでに示したように、遠隔オペレータは、ドライバ150がビークル100の制御を実施可能になるか、又は、自律運転モードが復帰可能になるまで、種々のビークルシステム140を制御してビークル100のナビゲーションを制御してもよい。例えば、遠隔オペレータは、メッセージ又は指令を遠隔サーバ200から電子制御ユニット102のネットワーク・インターフェース・ハードウェア110に送信することによって、ビークル100の動作を制御してもよい。これらのメッセージ又は指令は次いで種々のビークルシステム140を制御するのに用いられる。それ故に、第1の期間は、1又は複数のドライバ状態センサ130によって出力されるドライバ状態信号に基づいて電子制御ユニット102により判断されるものとして、ドライバ150が実施可能になるのに十分な任意の時間か、又は、ビークル100の自律運転モードが復帰するのに十分な任意の時間であってもよい。例えば、第1の期間は、約5分未満(例えば、1分)であってもよい。しかし、第1の期間が5分を越えることがあることが考えられる。電子制御ユニット102は、第1の期間の間にドライバ150を連続的又は周期的に監視して、ドライバ150が実施可能な状態になったかどうかを1又は複数のドライバ状態センサ120によって出力されるドライバ状態信号に基づいて判断してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、遠隔操作中にビークル100を制御するのに、1又は複数の運転状態センサ120によって出力される運転状態信号を、遠隔オペレータによって用いることができる。しかし、他の実施形態では、別のデータ又は追加のデータを収集することができる。例えば、運転状態センサ120には必要でない又は使用されないが、遠隔オペレータには有用であろう、周囲環境の画像データを取得することができるカメラがあってもよい。
【0056】
図4Bを参照すると、いくつかの実施形態では、電子制御ユニット102は、自律運転モードが終了することになること、及び、ドライバが自律運転モードの終了時にビークルの即時制御を実施不能であることを判断したことに応答して、ネットワーク・インターフェース・ハードウェア110を介して、遠隔オペレータにビークル100の制御を実施するように警告を発生してもよい(ブロック16a)。次いで、電子制御ユニット102は、遠隔オペレータへ警告を発した後で、ビークル100の制御を遠隔オペレータに移行する前の、観察期間の間待機してもよい(ブロック16b)。そのような観察期間は、遠隔オペレータがビークル100の制御を実施する前に、遠隔オペレータがビークル100の動作状態及び環境を熟知するのを可能にするものであってよい。観察期間は、遠隔オペレータがビークルの動作状態に精通するようになるのに十分な任意の期間を含むことができる。例えば、観察期間は、約15秒から約1分までの任意の期間(例えば、30秒)であり得る。本開示に示されるように、遠隔オペレータは、1もしくは複数の運転状態センサ又は他のセンサによって提供される情報を通してビークル100の環境及び動作状態を観察してもよい。
【0057】
再び
図4Aを参照すると、電子制御ユニットは、自律運転モードが終了することになるという判断に応答して、ビークル100の手動制御を実施するようにドライバ150に警告を発してもよい(ブロック18)。例えば、警告は、任意の手段を通してドライバ150に発信されてもよい。例えば、警告をディスプレイ108に表示して、ドライバ150にビークル100の制御を実施するように警告してもよい。いくつかの実施形態では、聴覚警告をビークル100のスピーカ107を通し発して、ドライバ150にビークル100の制御を実施するように警告してもよい。そのような警告は、ビークル100の制御が遠隔オペレータに移行される前に又は移行された後に発せられうる。次に、ビークル100の制御は、必要に応じて、ドライバに移されてもよく、又は、自律運転モードに戻されてもよい(ブロック20)。いくつかの実施形態では、第1の期間が経過した後に、ドライバ150がビークル100の制御を実施可能であると判断されたときにのみ、制御がドライバ150に移行される。これに代えて、第1の期間が経過した後に、ドライバが未だ制御を実施不能だが、運転環境が現時点で自律運転モードに適切であると判断されたときには、制御が自律運転モードに移行されてもよい。
【0058】
図4Bを参照すると、いくつかの例では、ビークル100の制御を遠隔オペレータからドライバ150に移行する前に、電子制御ユニット102は、ドライバ150が現時点でビークル100の制御を実施可能か判断してもよい。いくつかの実施形態では、電子制御ユニット102は、1又は複数のドライバ状態センサ130の出力(例えば、ドライバが道路に目を向けている、又は、ビークル100の制御の実施可能性を示すために、ビークルインターフェース109を介してビークル100に何らかの入力が適用される)に基づいて、ドライバ150が現時点で制御を実施可能であると判断することになる。いくつかの実施形態では、ドライバ150がビークル100の制御を実施可能であると判断された後に、電子制御ユニット102は、制御がドライバ150に移行される前にドライバ150がビークル100の動作状態及び環境を熟知するのを可能にする第2の観察期間の間、待機してもよい。遠隔オペレータは認識しているがドライバ150が認識していないおそれがあるので、第2の観察期間は遠隔オペレータのための観察期間よりも長くてもよいと考えられる。それ故に、第2の観察期間は、約30秒から約1.5分又はそれよりも長時間までの間の任意の期間(例えば、1分)であってもよい。さらに別の実施形態では、電子制御ユニット102は、ドライバ150にビークル100の手動制御を実施するように警告した後、ドライバの制御挙動を同時点の遠隔オペレータの制御挙動と比較し(ブロック20a)、ドライバの制御挙動が同時点の遠隔オペレータの制御挙動と実質的に一致するときに、ビークル100の制御をドライバに移行する(ブロック20b)。例えば、遠隔オペレータにより遠隔サーバ200から送信される指令をドライバ150による操作入力と同時に比較してもよい。例えば、遠隔オペレータからのステアリングホイール位置、制動、加速などの指令を、ドライバ150によるステアリングホイール位置、制動、加速などの操作入力と比較してもよい。ドライバの制御挙動が遠隔オペレータからの同時指令と実質的に一致するときには、ビークル100の制御をドライバ150に移行してもよい。また、ドライバの制御挙動と遠隔オペレータの制御挙動との間のわずかな差異を許容するために閾値(例えば、約95%のような約90%と約100%との間の値)を規定することができる。
【0059】
本開示に開示されるように、ビークル制御を自律運転モードから切り替えるための電子制御ユニット、ビークル及び方法の実施形態は、ビークルの自律運転モードが終了することになると判断するために、さまざまな情報(例えば、ビークルセンサからの情報及び/又はネットワークを介した情報)を使用する。自律運転モードが終了すると予測されたときに、自律走行ビークルは、ビークルの制御を自律運転モードからドライバに移行しようと試みてもよい。さまざまなドライバ状態センサに基づいて、電子制御ユニット、ビークル又は方法は、ドライバがビークルの即時制御を実施できないと判断してもよい。そのような例では、電子制御ユニット、ビークル及び方法は、その代わりに、ドライバがビークルの制御を実施可能になるか又はビークルの自律運転モードが復帰可能になるまでの期間にわたりビークルを制御可能な遠隔オペレータにビークルの制御を移行してもよい。このように、進行を妨げることなく、ビークルの制御を自律運転モードと、遠隔オペレータと、ビークルドライバとの間で途切れなく移行することができる。さらに、ドライバが制御を実施可能になるまでビークルの制御を遠隔オペレータに自動的に移行することにより、制御の突然の移行ではなく、ドライバがビークルの制御をゆっくりと始めることが可能となる。
【0060】
なお、用語「実質的」及び「約」は、任意の定量比較、値、測定、他の表現に起因し得る不確実性の固有の程度を表すのに本開示において利用されることがある。このような用語はこのほか、定量的表現が、問題となっている主題の基本的機能に変化をもたらすことなく、記載された基準から変化しうる程度を表すために本開示で用いられる。
【0061】
本開示では特定の実施形態を図示し説明してきたが、特許請求の範囲の主題の主旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな他の変更および修正をなしうることを理解されたい。さらに、特許請求の範囲の主題の種々の態様が本開示に記載されているが、そのような態様を組み合わせて利用する必要はない。このため、添付の特許請求の範囲は、特許請求の範囲の主題の範囲内にあるそのようなあらゆる変更および修正を含むことが意図される。
【0062】
[例1]
ビークル制御を自律運転モードから切り替えるためのビークル用電子制御ユニットであって、前記電子制御ユニットは、
1又は複数のプロセッサと、
前記1又は複数のプロセッサに通信可能に結合され、ネットワークを通して遠隔サーバに通信するように構成された、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアと、
前記1又は複数のプロセッサに通信可能に結合された1又は複数のメモリモジュールであって、前記1又は複数のメモリモジュールは論理を記憶しており、前記論理は前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、
前記ビークルの前記自律運転モードが終了することになると判断することと、
1又は複数のドライバ状態センサによって出力されるドライバ状態信号に基づいて、前記自律運転モードの終了時にドライバが前記ビークルの即時制御を実施不能であると判断することと、
前記自律運転モードの終了時に前記ドライバが前記ビークルの即時制御を実施不能であると判断したことに応答して、前記ビークルの制御を第1の期間にわたり、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して遠隔オペレータに移行することと、
前記自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、前記ドライバに前記ビークルの手動制御を実施するように警告を発することと、
前記第1の期間が経過した後に、前記ビークルの制御を前記ドライバ及び前記自律運転モードのうちの一方に移行することと、
を前記電子制御ユニットに行わせる、1又は複数のメモリモジュールと、
を具備する、電子制御ユニット。
[例2]
前記1又は複数のメモリモジュールに記憶されている前記論理は、前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、前記1又は複数のドライバ状態センサによって出力される前記ドライバ状態信号に基づいて前記ドライバが制御を実施可能になったかを判断するために、前記第1の時間の間前記ドライバを監視することを、前記電子制御ユニットに更に行わせる、例1に記載の電子制御ユニット。
[例3]
前記第1の期間が経過した後、前記ドライバが制御を実施可能であると判断されたときにのみ、制御が前記ドライバに移行される、例2に記載の電子制御ユニット。
[例4]
前記第1の期間が経過した後、前記ドライバが制御を実施不能であると判断されたときに、制御が前記自律運転モードに移行される、例2に記載の電子制御ユニット。
[例5]
前記電子制御ユニットは、1又は複数の運転状態センサによって出力される運転状態信号と、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して受け取る通信とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記ビークルの前記自律運転モードが終了することになると判断し、
前記1又は複数の運転状態センサのうちの1つによって出力される前記運転状態信号と、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して受け取る前記通信とが、やがて現れる交通状態、やがて現れる悪天候、やがて現れる工事区域及びやがて現れる自律運転制限区域のうちの少なくとも1つを含む、
例1に記載の電子制御ユニット。
[例6]
前記ビークルの制御が前記遠隔オペレータに移行されることにより、前記遠隔オペレータが、ステアリングシステム、推進システム、安定制御システム、ナビゲーションシステム及びエネルギシステムのうちの少なくとも1つを含む1又は複数のビークルシステムを制御するのが許容される、例1に記載の電子制御ユニット。
[例7]
前記1又は複数のメモリモジュールに記憶されている前記論理は、前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、
前記自律運転モードが終了することになること、及び、前記自律運転モードの終了時に前記ドライバが前記ビークルの即時制御を実施不能であることを判断したことに応答して、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して前記遠隔オペレータに前記ビークルの制御を実施するように警告を発することと、
前記遠隔オペレータに前記警告を発した後、前記ビークルの制御を前記遠隔オペレータに移行する前に、観察期間の間待機することと、
を、前記電子制御ユニットに更に行わせる、例1に記載の電子制御ユニット。
[例8]
前記1又は複数のメモリモジュールに記憶されている前記論理は、前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、
前記自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して前記ドライバに前記ビークルを手動で制御するように警告した後、前記ドライバの制御挙動を同時点の前記遠隔オペレータの制御挙動と比較することと、
前記ドライバの制御挙動が前記同時点の前記遠隔オペレータの制御挙動と実質的に一致するときに前記ビークルの制御を前記ドライバに移行することと、
を、前記電子制御ユニットに更に行わせる、例1に記載の電子制御ユニット。
[例9]
ビークル制御を自律運転モードから切り替えるためのビークルであって、前記ビークルは、
ドライバ状態信号を出力する1又は複数のドライバ状態センサと、
電子制御ユニットであって、
1又は複数のプロセッサと、
前記1又は複数のプロセッサに通信可能に結合され、ネットワークを通して遠隔サーバに通信するように構成された、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアと、
前記1又は複数のプロセッサに通信可能に結合された1又は複数のメモリモジュールであって、前記1又は複数のメモリモジュールは論理を記憶しており、前記論理は前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、
前記ビークルの前記自律運転モードが終了することになると判断することと、
1又は複数のドライバ状態センサによって出力されるドライバ状態信号に基づいて、前記自律運転モードの終了時にドライバが前記ビークルの即時制御を実施不能であると判断することと、
前記自律運転モードの終了時に前記ドライバが前記ビークルの即時制御を実施不能であると判断したことに応答して、前記ビークルの制御を第1の期間にわたり、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して遠隔オペレータに移行することと、
前記自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、前記ドライバに前記ビークルの手動制御を実施するように警告を発することと、
前記第1の期間が経過した後に、前記ビークルの制御を前記ドライバ及び前記自律運転モードのうちの少なくとも一方に移行することと、
を前記電子制御ユニットに行わせる、1又は複数のメモリモジュールと、
を具備する、ビークル。
[例10]
前記1又は複数のメモリモジュールに記憶されている前記論理は、前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、前記1又は複数のドライバ状態センサによって出力される前記ドライバ状態信号に基づいて前記ドライバが制御を実施可能になったかを判断するために、前記第1の時間の間前記ドライバを監視することを、前記電子制御ユニットに更に行わせる、例9に記載のビークル。
[例11]
前記第1の期間が経過した後、前記ドライバが制御を実施可能であると判断されたときにのみ、制御が前記ドライバに移行される、例10に記載のビークル。
[例12]
前記第1の期間が経過した後、前記ドライバが制御を実施不能であると判断されたときに、制御が前記自律運転モードに移行される、例10に記載のビークル。
[例13]
前記ビークルは、運転状態信号を出力する1又は複数の運転状態センサを更に具備し、
前記電子制御ユニットは、1又は複数の運転状態センサによって出力される運転状態信号と、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して受け取る通信とのうちの少なくとも一方に基づいて、前記ビークルの前記自律運転モードが終了することになると判断し、
前記1又は複数の運転状態センサのうちの1つによって出力される前記運転状態信号と、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して受け取る前記通信とが、やがて現れる交通状態、やがて現れる悪天候、やがて現れる工事区域及びやがて現れる自律運転制限区域のうちの少なくとも1つを含む、
例9に記載のビークル。
[例14]
前記1又は複数のメモリモジュールに記憶されている前記論理は、前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、
前記自律運転モードが終了することになること、及び、前記自律運転モードの終了時に前記ドライバが前記ビークルの即時制御を実施不能であることを判断したことに応答して、前記ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して前記遠隔オペレータに前記ビークルの制御を実施するように警告を発することと、
前記遠隔オペレータに前記警告を発した後、前記ビークルの制御を前記遠隔オペレータに移行する前に、観察期間の間待機することと、
を、前記電子制御ユニットに更に行わせる、例9に記載のビークル。
[例15]
前記1又は複数のメモリモジュールに記憶されている前記論理は、前記1又は複数のプロセッサによって実行されると、
前記自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して前記ドライバに前記ビークルを手動で制御するように警告した後、前記ドライバの制御挙動を同時点の前記遠隔オペレータの制御挙動と比較することと、
前記ドライバの制御挙動が前記同時点の前記遠隔オペレータの制御挙動と実質的に一致するときに前記ビークルの制御を前記ドライバに移行することと、
を、前記電子制御ユニットに更に行わせる、例9に記載のビークル。
[例16]
ビークルのビークル制御を自律運転モードから切り替える方法であって、前記方法は、
前記ビークルの前記自律運転モードが終了することになると判断することと、
1又は複数のドライバ状態センサによって出力されるドライバ状態信号に基づいて、前記自律運転モードの終了時にドライバが前記ビークルの即時制御を実施不能であると判断することと、
前記自律運転モードの終了時に前記ドライバが前記ビークルの即時制御を実施不能であると判断したことに応答して、前記ビークルの制御を第1の期間にわたり、遠隔オペレータに移行することと、
前記自律運転モードが終了することになると判断したことに応答して、前記ドライバに前記ビークルの手動制御を実施するように警告を発することと、
前記第1の期間が経過した後に、前記ビークルの制御を前記ドライバ及び前記自律運転モードのうちの一方に移行することと、
を含む、方法。
[例17]
前記1又は複数のドライバ状態センサによって出力される前記ドライバ状態信号に基づいて前記ドライバが制御を実施可能になったかを判断することを更に含む、例16に記載の方法。
[例18]
前記ビークルの前記自律運転モードが終了することになると判断することが、前記1又は複数の運転状態センサのうちの少なくとも1つによって出力される運転状態信号と、ネットワーク・インターフェース・ハードウェアを通して受け取る通信とに基づく、例17に記載の方法。
[例19]
前記第1の期間が経過した後、前記ドライバが制御を実施可能であると判断されたときにのみ、制御が前記ドライバに移行され、
前記第1の期間が経過した後、前記ドライバが制御を実施不能であると判断されたときに、制御が前記自律運転モードに移行される、
例17に記載の方法。
[例20]
前記遠隔オペレータに前記警告を発した後、前記ビークルの制御を前記遠隔オペレータに移行する前に、観察期間の間待機することを更に含む、例17に記載の方法。