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特許7112472計時器構成要素を製作する方法およびこの方法から得られる構成要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】計時器構成要素を製作する方法およびこの方法から得られる構成要素
(51)【国際特許分類】
   G04B 15/14 20060101AFI20220727BHJP
   C25D 1/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
G04B15/14 A
G04B15/14 B
C25D1/00 381
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020205533
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2021096249
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】19217376.3
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
(72)【発明者】
【氏名】アレクス・ガンデルマン
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ミュジー
(72)【発明者】
【氏名】クラール・ゴルフィエ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176090(JP,A)
【文献】特開2006-161138(JP,A)
【文献】特開2015-25711(JP,A)
【文献】特開2008-208431(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3266905(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04D 1/00 - 99/00
C25D 1/00 - 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの計時器構成要素を製作するための方法であって、
a)基板(1)を提供し、前記基板(1)の上に第1の導電層(2)を堆積させ、第1の感光性樹脂層(3)を適用するステップと、
b)前記第1の感光性樹脂層を形づくり、前記計時器構成要素の第1の水平面を画定するために、スタンプを使用して、前記基板まで下方に前記スタンプ(8)を押しつけて、前記第1の感光性樹脂層(3)をホットスタンピングするステップと、
c)前記計時器構成要素の少なくとも第1の水平面を画定するマスク(4)を通して前記第1の形づくられた感光性樹脂層(3)をUV照射し、前記第1の感光性樹脂層(3)のUV照射をしていない非照射領域(3b)を溶解して、前記第1の導電層(2)を所定の場所に現すステップと、
d)ステップc)から得られる構造物を覆う第2の感光性樹脂層(6)を適用し、次いで、前記計時器構成要素の第2の水平面を画定するマスク(4”)を通して前記第2の感光性樹脂層(6)をUV照射し、第1の水平面および第2の水平面を備える鋳型を形成するために、前記第2の感光性樹脂層(6)のUV照射をしていない非照射領域(6b)を溶解するステップと、
e)前記鋳型内で前記第1の導電層(2)から電鋳することにより金属層(7)を堆積させて、前記計時器構成要素を形成するステップであって、前記金属層(7)は実質的に前記第2の感光性樹脂層(6)の上面に到達するステップと、
f)前記基板、前記第1の導電層、および前記樹脂を連続的に取り除いて、前記計時器構成要素を外すステップと
を備える方法。
【請求項2】
少なくとも1つの計時器構成要素を製作するための方法であって、
a’)基板(1)を提供し、前記基板(1)の上に第1の導電層(2)を堆積させ、第1の感光性樹脂層(3)を適用するステップと、
b’)前記計時器構成要素の少なくとも第1の水平面を画定するマスク(4)を通して前記第1の感光性樹脂層(3)をUV照射し、前記第1の感光性樹脂層(3)のUV照射をしていない非照射領域(3b)を溶解して、前記第1の導電層(2)を所定の場所に現すステップと、
c’)前記ステップb’)から得られる構造物を覆う第2の感光性樹脂層(6)を適用するステップと、
d’)スタンプを使用して前記第2の感光性樹脂層(6)をホットスタンピングして、前記第2の感光性樹脂層(6)を形づくり、前記計時器構成要素の第2の水平面を画定するステップと、
e’)前記計時器構成要素の第2の水平面を画定するマスク(4”)を通して前記第2の形づくられた感光性樹脂層(6)をUV照射し、前記第2の感光性樹脂層(6)のUV照射をしていない非照射領域(6b)を溶解して、第1の水平面および第2の水平面を備える鋳型を形成するステップと、
f’)前記鋳型内で前記第1の導電層(2)から電鋳することにより金属層(7)を堆積させて、前記計時器構成要素を形成するステップであって、前記金属層(7)は、実質的に前記第2の感光性樹脂層(6)の上面に到達するステップと、
g’)前記基板、前記第1の導電層、および前記樹脂を連続的に取り除いて、前記計時器構成要素を外すステップと
を備える方法。
【請求項3】
前記ステップb)および前記ステップd’)を真空下で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップb)または前記ステップd’)の間、前記第1の感光性樹脂層を70℃~150℃の間まで加熱することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記スタンプは刻印印刷を有し、前記印刷の少なくとも一部分は、前記ステップb)で前記基板の表面に直接押しつけられるように配列されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スタンプ印刷は、前記計時器構成要素の前記少なくとも第1の水平面を画定することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップc)または前記ステップb’)の後に、前記第1の感光性樹脂層(3)のUV照射領域(3a)上に第2の導電層(5)を局所的に堆積させるステップからなるステップd'')を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
ステンシルマスク(4’)を通して前記第2の導電層(5)を堆積させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップd'')で、前記第2の導電層(5)は、前記UV照射領域の表面すべて(側壁を含む)の全面にわたって全体的に堆積させることで適用され、次いで、堆積したレジストを用いて保護された、前記第1の感光性樹脂層の上面からを除き全部取り除かれることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップd'')で、インクまたは導電性樹脂を印刷することにより第2の導電層(5)を堆積させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の導電層(2)および前記第2の導電層(5)は、Au、Ti、Pt、Ag、Cr、またはPdのタイプからなることを特徴とする請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記基板(1)はケイ素から作られること特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の導電層(2)は、50nm~500nmの間で構成される厚さを有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の導電層(5)は、50nm~500nmの間で構成される厚さを有することを特徴とする、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
計時器構成要素であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法から得られる計時器構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LIGA技術を用いて複雑な多平面金属構造物を製作するための方法に関する。本発明はまた、この方法から得られるこのタイプの金属構造物、詳細には計時器構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の定義に対応する方法は、すでに公知である。詳細には、A. B. Frazier et al.による、「Metallic Microstructures Fabricated Using Photosensitive Polyimide Electroplating Molds(感光性ポリイミド電気めっき鋳型を使用して製作した金属微小構造物)」、Journal of Microelectromechanical systems(vol.2、N deg. 2、1993年6月)と題する論文は、感光性樹脂層のフォトリソグラフィにより作られたポリイミド鋳型内で電気めっきすることにより、多平面金属構造物を製作する方法について記述している。この方法は、
-犠牲金属層、およびその後の電気めっきステップ用の接着層を作成するステップと、
-感光性ポリイミド層を広げるステップと、
-形成すべき構造物の一方の水平面の輪郭に対応するマスクを通して感光性ポリイミド層にUV放射を照射するステップと、
-ポリイミド鋳型を得るように、非照射部分を溶解することにより感光性ポリイミド層を現像するステップと、
-電気めっきによりポリイミド鋳型の最上部までポリイミド鋳型にニッケルを満たし、実質的に平坦な上面を得るステップと、
-真空蒸着により上面全体の全面にわたってクロムの薄層を堆積させるステップと、
-クロム層の上に新しい感光性樹脂層を堆積させるステップと、
-得るべき構造物の次の水平面の輪郭に対応する新しいマスクを通して新しい感光性樹脂層を照射するステップと、
-新しい鋳型を得るように、感光性ポリイミド層を現像するステップと、
-ガルバーニ電気成長により新しい鋳型の最上部まで新しい鋳型にニッケルを満たすステップと、
-犠牲層および基板から多平面構造物およびポリイミド鋳型を分離するステップと、
-ポリイミド鋳型から多平面構造物を分離するステップと
を含む。
【0003】
たった今記述した方法は、原理的には3つ以上の水平面を有する金属構造物を得るために反復して実装することができることは明らかである。
【0004】
特許文書の国際公開第2010/020515(A1)号は、鋳型内で部分の金属を電気めっきするステップの前に、得るべき最終部分に対応する完全なフォトレジスト鋳型を製造することにより、いくつかの水平面を伴う部分の製作について開示している。この方法により、互いの内部に水平面の突出部が包含される多平面部分だけを作ることができる。
【0005】
さらにまた、滑らかな垂直側壁だけを備える基板内に形成された、少なくとも2つの水平面を備えるフォトレジスト鋳型は、欧州特許出願公開第2405301(A1)号明細書から公知である。
【0006】
これらの方法は、基本幾何形状が円筒形である部分の製作だけを可能にし、ベベルまたは面取りした面などの複雑な幾何形状を有する部分を製作することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2010/020515(A1)号
【文献】欧州特許出願公開第2405301(A1)号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】A. B. Frazier et al.、「Metallic Microstructures Fabricated Using Photosensitive Polyimide Electroplating Molds(感光性ポリイミド電気めっき鋳型を使用して製作した金属微小構造物)」、Journal of Microelectromechanical systems、vol.2、N deg. 2、1993年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
LIGA技術とホット・スタンピング・ステップを組み合わせることにより、多平面金属計時器構成要素の製作を可能にする方法を提供することにより、上述の欠点に加えて他の欠点も克服することが本発明の目的であり、そこでは、多平面構成要素の場合、信頼できる電気めっきを可能にするために、水平面ごとに樹脂層を導電層に関連づける。
【0010】
LIGA技術を使用して通常は実現可能ではない複雑な幾何形状を有する計時器部分の製作を可能にすることもまた本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、
a)基板を提供し、基板の上に第1の導電層を堆積させ、第1の感光性樹脂層を適用するステップと、
b)スタンプを使用して、第1の感光性樹脂層をホットスタンピングし、基板まで下方にスタンプを押しつけて、前記第1の感光性樹脂層を形成し、計時器構成要素の第1の層を画定するステップと、
c)計時器構成要素の第1の水平面を画定するマスクを通して第1の形づくられた感光性樹脂層を照射し、第1の感光性樹脂層の非照射領域を溶解して、第1の導電層を所定の場所に現すステップと、
e)ステップc)から得られる構造物を覆う第2の感光性樹脂層を適用し、次いで、計時器構成要素の第2の水平面を画定するマスクを通して第2の樹脂層を照射し、第1の水平面および第2の水平面を備える鋳型を形成するために、第2の感光性樹脂層の非照射領域を溶解するステップと、
f)鋳型内で第1の導電層から電鋳することにより金属層を堆積させて、計時器構成要素を形成するステップであって、金属層は、実質的に第2の感光性樹脂層の上面に到達するステップと、
g)基板、第1の導電層、および樹脂を連続的に取り除いて、計時器構成要素を外すステップと
を備える、計時器構成要素を製作するための方法に関する。
【0012】
したがって、この方法は、多平面部分の製作を可能にする。
【0013】
以下は、本発明の他の有利な変形形態による。
-ステップb)を真空下で行う。
-ステップb)の間、第1の感光性樹脂層を70℃~150℃の間まで加熱する。
-スタンプは浮き彫り印刷を有し、印刷の少なくとも一部分は、ステップb)で基板の表面に直接押しつけられるように配列される。
-前記スタンプ印刷は、計時器構成要素の前記少なくとも第1の水平面を画定する。
-方法は、ステップc)の後に任意選択のステップd)を含み、ステップd)は、第1の感光性樹脂層の照射領域上に第2の導電層を局所的に堆積させるステップからなる。
-ステンシルマスクを通して第2の導電層を堆積させる。
-第2の導電層は、露光表面すべて(側壁を含む)の全面にわたって全体的に堆積させることで適用され、次いで、トランスファ・プレス・ステップにより堆積したレジストを用いて保護されていた第1の感光性樹脂層の上面からを除き、完全に取り除かれる。
-導電性樹脂またはインクを印刷することにより第2の導電層を堆積させる。
-前記第1の導電層および前記第2の導電層は、Au、Ti、Pt、Ag、Cr、もしくはPdのタイプ、またはこれらの材料の少なくとも2つの積層からなる。
-基板はケイ素から作られる。
-第1の導電層は、50nm~500nmの間で構成される厚さを有する。
-第2の導電層は、50nm~500nmの間で構成される厚さを有する。
【0014】
最後に、本発明は、たとえばアンクルフォークまたはがんぎ車などの、本発明による方法から得られる計時器構成要素に関する。
【0015】
本発明の方法には、計時器用構成要素を製作するための特に有利な用途があることは明らかである。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、本発明による方法の代表的実施形態についての、以下の詳細な記述からより明確に明らかになり、この例は、添付図面と併せて、限定しない例示として純粋に示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】計時器構成要素を製造するための、本発明の一実施形態の方法ステップを例示する。
図2】計時器構成要素を製造するための、本発明の一実施形態の方法ステップを例示する。
図3】計時器構成要素を製造するための、本発明の一実施形態の方法ステップを例示する。
図4】計時器構成要素を製造するための、本発明の一実施形態の方法ステップを例示する。
図5】計時器構成要素を製造するための、本発明の一実施形態の方法ステップを例示する。
図6】計時器構成要素を製造するための、本発明の一実施形態の方法ステップを例示する。
図7】計時器構成要素を製造するための、本発明の一実施形態の方法ステップを例示する。
図8】計時器構成要素を製造するための、本発明の一実施形態の方法ステップを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による方法のステップa)で使用する基板1は、たとえばケイ素基板により形成される。方法の第1のステップa)では、たとえば物理蒸着(physical vapour deposition、PVD)により第1の導電層2,すなわち、ガルバーニ電気金属堆積を開始できる層を堆積させる。典型的には、第1の導電層2は、Au、Ti、Pt、Ag、Cr、もしくはPdのタイプからなる(図1)、またはこれらの材料の少なくとも2つの積層からなり、50nm~500nmの間で構成される厚さを有する。たとえば、第1の導電層2は、金または銅の層で覆われた、クロムまたはチタニウムの副層から形成することができる。
【0019】
本方法で使用する感光性樹脂3は、好ましくはUV放射の作用を受けて重合するように工夫された、SU-8樹脂などの八官能基(octofunctional)エポキシ系ネガ型樹脂である。
【0020】
本発明の特定の実施形態によれば、感光性樹脂は、乾燥膜の形をとり、次いで、基板1に積層することにより適用される。
【0021】
代わりに、感光性樹脂は、UV放射の作用を受けて分解されるように工夫されたポジ型フォトレジストとすることができる。本発明は、数少ない特定のタイプの感光性樹脂に限定されないことを理解されよう。当業者は、UVフォトリソグラフィに適した公知の樹脂すべての中から自分の必要性に適した感光性樹脂を選ぶ方法を知っている。
【0022】
任意の適切な手段により、遠心コーティングにより、スピンコータを用いて、または所望の厚さまで噴霧することにより、基板1上に第1の感光性樹脂層3を堆積させる。典型的には、樹脂の厚さは、10μm~1000μmの間で、好ましくは30μm~300μmの間で構成される。所望の厚さおよび使用する堆積技法に応じて、樹脂3を1つまたは2つのステップで堆積させる。
【0023】
次いで典型的には、溶剤を取り除くために(プリ・ベーク・ステップ)、堆積した厚さに応じた継続期間、90℃~120℃の間まで第1の感光性樹脂層3加熱する。この加熱処理により、樹脂を乾燥させ、硬化させる。
【0024】
図2に例示する次のステップb)は、第1の感光性樹脂層3を形づくり、計時器構成要素の第1の水平面を画定するために、第1の感光性樹脂層3をホットスタンピングするステップまたは刻印づけするステップからなる。最初に、樹脂が粘性になる70℃~150℃の間で構成される温度まで樹脂を加熱して、樹脂の上で押しつけるスタンプ8を用いて平坦にすることにより樹脂を形づくることができるようにする。第1の感光性樹脂層3を押しつけるときに気泡の形成を回避するために、このステップを真空下で行うことができる。本発明によれば、樹脂を完全に平坦にするまで基板1まで下方にスタンプ8を押しつけて、その結果、スタンプの部分が基板に対して押しつけられた第1の導電層の上方に樹脂の残存層だけを維持する。
【0025】
有利にはスタンプ8は、高さに変動があってよい刻印印刷を有し、それにより、計時器構成要素の少なくとも第1の水平面を画定し、したがって、前記少なくとも1つの第1の水平面は、従来のLIGA処理を介して得ることのできない複雑な3次元幾何形状を有する。
【0026】
また、得るべき完全な幾何形状の計時器構成要素を製造するために、スタンプを用いて2つ以上の水平面を形成することを想定することができる。
【0027】
図3に例示する次のステップc)は、形成すべき計時器構成要素の第1の水平面を、したがって、光重合領域3aおよび非光重合領域3bを画定するマスク4を通してUV放射により第1の感光性樹脂層3を照射するステップからなる。
【0028】
このステップは、スタンプにより押しつけられた後に残っている残存樹脂膜が第1の導電層を現すように消滅することを確実にし、LIGA処理で通常行われるように樹脂を構造化することができるようにする。
【0029】
UV照射により誘発される光重合を完了するために、第1の感光性樹脂層3のポスト・ベーク・ステップが必要とされることがある。このポスト・ベーク・ステップを、好ましくは90℃~95℃の間で行う。光重合領域3aは、大部分の溶剤の影響を受けなくなる。しかしながら、その後、溶剤により非光重合領域を溶解することができる。
【0030】
次に、第1の感光性樹脂層3の非光重合領域3bを溶解して、図4のように、所定の場所に基板1の第1の導電層2を現す。この動作は、PGMEA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)などの適切な溶剤を使用して非光重合領域3bを溶解することにより行われる。その結果、スタンピングおよびフォトリソグラフィの組合せ動作により形成された、計時器構成要素の第1の水平面を画定する、光重合感光性樹脂3aから作られた鋳型を得る。
【0031】
図5に例示する任意選択のステップd)では、先行するステップで光重合した領域3aの上に第2の導電層5を堆積させる。この第2の導電層5は、第1の導電層2と同じ特性を有してよく、すなわちAu、Ti、Pt、Ag、Cr、もしくはPdのタイプ、またはこれらの材料の少なくとも2つの積層からなり、50nm~500nmの間で構成される厚さを有する。
【0032】
本発明の第1の変形形態によれば、光学的配列により位置決めされるステンシルマスクを使用する。この設備は、基板上の光重合領域3aの幾何形状とマスクの良好な整列を確実にし、その結果、光重合領域3aの上面の上だけに堆積を確実にすることを可能にし、マスクが基板1にできるだけ近く保持されるので、光重合樹脂3aが側壁上に堆積するのを回避する。
【0033】
本発明の第2の変形形態によれば、第2の導電層は、露光表面すべて(側壁を含む)の全面にわたって全体的に堆積させることで適用され、次いで、トランスファ・プレス・ステップにより堆積したレジストを用いて保護された、第1の感光性樹脂層の上面からを除き全部取り除かれる。
【0034】
当業者はまた、第2の導電層5を堆積させるために、3D印刷の実装を考慮することができる。
【0035】
そのような解決手段により、選択的でより正確な、第2の導電層5の堆積を達成することが可能になり、したがって、光重合樹脂3aの側壁上に堆積させることはまったくない。
【0036】
図6に例示する次のステップe)は、先行するステップから得られる構造物を覆う第2の感光性樹脂層6を堆積させるステップからなる。このステップでは同じ樹脂を使用し、厚さは、ステップa)で堆積した厚さよりも厚い。一般的に言って、厚さは、得ることが望ましい計時器構成要素の幾何形状の関数として変動する。
【0037】
次のステップは、計時器構成要素の第2の水平面を画定するマスク4”を通して第2の感光性樹脂層6を照射するステップ、および第2の感光性樹脂層6の非照射領域6bを溶解するステップからなる。このステップの終わりに(図6)、所定の場所に第1の導電層2および第2の導電層5を現す、第1の水平面および第2の水平面を備える鋳型を得る。
【0038】
図7に例示する次のステップf)は、鋳型内で、電鋳または電気めっきにより、第1の導電層2から金属層7を,および場合によっては第2の導電層5を堆積させて、好ましくは鋳型の高さよりも低い高さに到達するブロックを形成するステップからなり、それにより、その後のどんな機械加工の間でもより良好な機械的強度が提供される。この文脈では、「金属」は、当然のことながら金属合金を含む。典型的には、金属は、ニッケル、銅、金、または銀、および合金として銅-金、ニッケル-コバルト、ニッケル-鉄、ニッケル-リン、またはニッケル-タングステンを含むグループの中から選択される。一般的に言って、多層金属構造物は、全部同じ合金または金属から作られる。しかしながら、異なるタイプの少なくとも2つの層を備える金属構造物を得るために、電気めっきステップの間に金属または合金を変更することもまた可能である。
【0039】
電鋳条件、詳細には、溶液の組成、システムの幾何形状、電圧および電流密度は、電鋳分野で周知の技術によれば、電着させるべき金属および合金ごとに選択される。
【0040】
金属層7を機械的処理により機械加工して、製造すべき計時器構成要素の厚さにより事前に規定される厚さを得ることができる。この動作を行わなければならない面に応じて、ウエハ上にある間に仕上げ削りを行うことができる。
【0041】
ステップg)は、当業者におなじみの動作である、連続したウェットエッチングまたはドライエッチングのステップで、基板、導電層、または樹脂層を取り除くことにより、計時器構成要素を外すステップからなる。たとえば、ウェットエッチングを用いて第1の導電層2および基板1を取り除き、それにより、損傷することなく計時器構成要素を基板1から外すことができるようになる。詳細には、水酸化カリウム溶液(potassium hydroxide solution、KOH)を用いて、ケイ素基板をエッチングすることができる。
【0042】
この第1のシーケンスの終わりに、第1の感光性樹脂層および第2の感光性樹脂層の中に保持された構成要素を得て、第2の導電層5もまた、依然として所定の場所に存在する。
【0043】
第2のシーケンスは、O2プラズマエッチングを用いて、中間金属層のウェットエッチングにより分離した、樹脂の第1の感光性樹脂層3および第2の感光性樹脂層6を取り除くステップからなる。
【0044】
このステップの終わりに、機械加工動作を遂行するために、または美的仕上げのために、得られた構成要素を洗浄して、場合によっては工作機械上で再加工することができる。この段階で、部分は、ただちに使用することができる、またはさまざまな装飾的および/もしくは実用的な処置、典型的には物理的堆積または化学的堆積を受けることができる。
【0045】
本発明の方法は、ばね、アンクルフォーク、輪、アップリケなどのような計時器用構成要素の製作で特に有利な用途がある。この方法の結果として、より多様な形状の、従来のフォトリソグラフィ動作を介して得られる幾何形状よりも複雑な幾何形状を有する構成要素を作ることが可能である。そのような方法はまた、幾何形状に関して良好な信頼性を有する堅牢な構成要素を得ることを可能にする。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
2 第1の導電層
3 第1の感光性樹脂層
3a 照射領域、光重合領域、光重合樹脂、光重合感光性樹脂
3b 非照射領域、非光重合領域
4 マスク
4” マスク
5 第2の導電層
6 第2の感光性樹脂層
6b 非照射領域
7 金属層
8 スタンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8