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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】磁力計を較正する方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20220727BHJP
   G01C 21/10 20060101ALI20220727BHJP
   G01V 3/08 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
G01R33/02 X
G01C21/10
G01V3/08 F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020503900
(86)(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 FR2018051914
(87)【国際公開番号】W WO2019020945
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】1757082
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518120924
【氏名又は名称】シスナヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシエール,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】シェノー,シャルル‐イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】イリオン,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】カルーソ,ダヴィド
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-285634(JP,A)
【文献】特表2013-510318(JP,A)
【文献】特表2017-538919(JP,A)
【文献】特開2013-185898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/222409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01C 21/10
G01V 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力計(2)を較正する方法であって、当該方法は、
前記磁力計(2)が、該磁力計(2)の位置及び/又は前記磁力計(2)の向きによって互いに区別される経路位置のセットを移動するステップと(S1)、
前記磁力計(2)が前記経路位置のセットを移動するときに、前記磁力計(2)によって、複数の磁場の測定値を取得時間において取得するステップと(S2)、
移動時間において前記経路位置のセットを移動する間に、前記磁力計(2)と一体化されたポイントの位置及び向きを表す軌道情報を提供するステップと(S3)、
前記取得時間及び前記移動時間から決定された複数の測定時間のそれぞれについて、前記磁場の測定値を前記軌道情報と一致させるステップと(S4)、
複数の測定時間について、少なくとも較正パラメータ、前記磁場の測定値、及び磁場の変化を前記軌道情報から得られた前記磁力計(2)の前記位置及び前記向きの変化と結び付ける関係を含むコスト関数の最小化によって、前記磁力計(2)の較正パラメータを決定するステップと(S5)であって、前記磁場の変化を前記磁力計の前記位置及び前記向きの変化と結び付ける関係は、前記磁場の特定の微分方程式を局所的に変換するものであり、
【数77】
ここで、
【数78】
は、磁場ベクトルであり、
【数79】
は、前記磁場の勾配ベクトルであり、
【数80】
は、前記磁場の時間微分のベクトルであり、
【数81】
は、前記位置の修正を表す速度ベクトルであり、Ωは、前記向きの修正を表す回転行列である、決定するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記コスト関数には、センサ測定値に関する誤差項が含まれ、前記センサ測定値だけで前記軌道情報を取得することを可能にし、前記軌道情報は、前記較正パラメータと同時に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コスト関数の最小化は、状態オブザーバで実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記コスト関数は、測定時間における前記磁場の測定の理論的推定値と、前記測定時間における前記磁場の測定値との間の比較に基づいており、前記磁場の前記理論的推定値には、前記較正パラメータが考慮に入れられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記磁場の測定の前記理論的推定値は、磁場の変化を、前記軌道情報から得られた前記磁力計の前記位置及び前記向きの変化と結び付ける関係から決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記磁場の測定の前記理論的推定値は、
前回の測定時間における前記磁場の測定値、
前記軌道情報から決定された、前記測定時間と前回の測定時間との間の磁力計(2)と一体化されたポイントの前記位置及び前記向きの変化、及び
較正パラメータから少なくとも決定される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記磁力計(2)が前記経路位置のセットを移動するときに、複数の磁場勾配の測定値を取得時間において取得するステップも含み、前記磁場の前記理論的推定値も、前記前回の測定時間における前記磁場の勾配の測定値から決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
測定時間における前記磁場の測定の前記理論的推定値は、
基準点における前記磁場の強さ、
前記基準点における前記磁場の勾配、
前記磁力計と統合された前記ポイントの位置と前記基準点の位置との間の差、及び
前記磁力計と統合された前記ポイントの向きと前記基準点における向きとの間の回転から決定され、
前記基準点における前記磁場の強さ、及び前記基準点における前記磁場の勾配は、コスト関数の最小化によって決定される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項9】
前記較正パラメータは、
前記磁場の測定に影響を与える第1の磁気バイアス、及び/又は
前記磁場の勾配の測定に影響を与える第2の磁気バイアス、及び/又は
前記磁場の測定値の振幅に影響を与えるスケールパラメータ、及び/又は
前記磁力計の空間構成パラメータを含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記一致させるステップは、各測定時間が、前記軌道情報及び前記磁場の少なくとも1つの測定値に対応するように、
前記磁場及び前記磁場の勾配の測定値のセット、及び
軌道情報のセットのうちの少なくとも1つのセットを補間するステップから構成される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記磁力計が第1の位置セットを移動するときに、撮像装置(10)の使用により、各移動時間における前記磁力計(2)の前記位置及び前記向きを示す前記軌道情報が提供される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記撮像装置(10)は前記磁力計(2)と一体化されており、固定ターゲット(11)が前記撮像装置の視野内に配置され、前記軌道情報は、前記磁力計が前記経路位置のセットを移動するときに、前記撮像装置によって取得された画像内の前記ターゲットの位置特定から導出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記磁力計が前記経路位置のセットを移動するときに、機械式変位装置が、前記磁力計(2)を第1の位置セットのある位置から別の位置に変位させ、前記軌道情報は、前記機械式変位装置の位置測定値又は前記機械式変位装置の位置設定点から導出される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記磁力計(2)は、各移動時間において加速度及び角速度を決定するように構成された慣性センサ(24)と一体化されており、前記軌道情報は前記加速度及び前記角速度から導出される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記磁力計(2)は、磁気慣性ユニット(1)に配置される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
プロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスを含む自動データ処理ユニットであって、該処理ユニットは、
経路位置のセットを移動する磁力計(2)によって取得時間において取得された複数の磁場の測定値を受信することであって、これらの位置は、前記磁力計の空間的位置及び/又は前記磁力計の向きによって互いに区別される、受信すること、
移動時間において前記経路位置のセットの位置を移動している間に、前記磁力計(2)と一体化されたポイントの位置及び向きを表す軌道情報を受信すること、
前記取得時間及び前記移動時間から決定された複数の測定時間のそれぞれについて、前記磁場及び磁場勾配の測定値を前記軌道情報と一致させること、
複数の測定時間について、少なくとも較正パラメータ、磁場の測定値、及び磁場の変化を前記軌道情報から得られた前記磁力計の前記位置及び前記向きの変化と結び付ける関係を含むコスト関数の最小化によって、前記磁力計の較正パラメータを決定することであって、前記磁場の変化を前記磁力計の前記位置及び前記向きの変化と結び付ける関係は、前記磁場の特定の微分方程式を局所的に変換するものであり、
【数82】
ここで、
【数83】
は、磁場ベクトルであり、
【数84】
は、磁場の勾配ベクトルであり、
【数85】
は、前記磁場の時間微分のベクトルであり、
【数86】
は、前記位置の修正を表す速度ベクトルであり、Ωは、向きの修正を表す回転行列である、決定すること、を行うように構成される、
処理ユニット。
【請求項17】
プログラムコード命令がコンピュータで実行されるときに、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法のステップの実行のために前記コンピュータによって読み取り可能な不揮発性サポートに記録されたプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力計の分野に関する。より正確には、本発明は、少なくとも1つの磁力計を較正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場は、3次元空間内のベクトル場であり、つまり、
【数1】
と表記された3次元の磁場ベクトルを空間内の各位置に関連付ける。ある地点での磁場は、その大きさ(norm:ノルム)及び方向によって特徴付けられる。
【0003】
磁力計を使用すると、ある地点での磁場を測定できる。磁力計は、単軸磁力計であってもよく、ある位置の磁場の成分、すなわち、磁力計のその軸線に沿ったレベルでの磁場ベクトル
【数2】
の投影を測定することができる。磁力計は、3軸に沿って磁場を測定できる3軸磁力計であってもよく、この磁力計は、一緒に堅く接続され、且つ一般に略直交する異なる軸線に沿って向き合わせされた3つの単軸磁力計で構成され得る。
【0004】
しかしながら、磁力計による磁場の測定は完全ではないため、磁場の測定値は実際の磁場から逸脱する。例えば、hard iron effect(センサが搭載された機体から発生する磁場の影響)は、強い磁場での特定のコンポーネントの残留磁気によって形成され、測定バイアスにつながる可能性がある。スケール係数も測定値を歪める可能性がある。さらに、磁力計の物理的構成や磁力計の取付けによる影響も測定値に影響を与える可能性がある。
【0005】
こうして、例えば、3軸磁力計の測定値を以下の線形形式で表すことができる。
【数3】
ここで、
【数4】
は、磁力計による磁場の測定値であり、
【数5】
は、実際の磁場であり、Dはスケール係数と呼ばれる行列であり、
【数6】
は、測定バイアスである。こうして、スケール係数及び測定バイアスは、実際の磁場に関して磁場の測定値を汚染する(正しくないものにする)測定パラメータである。他の場所で使用する前に磁場の測定値を補正できるようにするために、これらのパラメータを推定することが賢明である。磁力計の較正は、これらのパラメータを決定し、補正された測定値が実際の磁場を最も忠実に反映するために磁力計の出力に対して行う補正(例えば、測定モデルの形式の反転による)を推定することになる。
【0006】
磁力計の正確な較正は、特に、高い精度を必要とする用途に必要である。特に、磁気慣性ユニットは、加速度計とは別に、特にナビゲーション中の速度ベクトル及び位置ベクトルの推定を行うことを可能にするために、磁場及び磁場勾配の同時推定を可能にする様々な位置に配置された、いくつかの磁力計のネットワークを含むことができる。こうして、特許文献1及び特許文献2は、いわゆる磁気慣性ナビゲーション手法を開示している。これらの測定値の精度は、磁気慣性ユニットの動きの再構成の良好なパフォーマンスに不可欠である。
【0007】
さらに、そのような磁気慣性ユニットの各磁力計のそれぞれの位置及び向きも、測定値に影響を与えるパラメータを構成し得る。較正には、これらのパラメータの決定も含まれる場合がある。
【0008】
磁力計を較正するためのいくつかの方法が提案されている。これらの方法の1つは、磁場が一定で乱れのない空間(例えば、農地等、外乱のない場所での地球の磁場である)で磁力計を旋回させることである。任意の向きに従った定磁場に置かれたアフィン応答を有する3軸磁力計は、楕円の識別可能な生の測定値の空間を見ることになる。相反変換によって、較正パラメータを実質的に直接的な方法で与える楕円のパラメータを特定することにより、この生の測定空間を球面較正測定空間に送ることができる。
【0009】
非特許文献1の記事は、それにより、一定で乱されていないと想定される地球の磁場Mを利用する磁力計を較正する方法を説明している。
【0010】
しかしながら、この方法は、均一で経時的に一定(一定の大きさ(ノルム))の磁場を有する場所を利用可能にする必要があるため、複雑である。また、外部で較正するために磁力計を移動させ、それら磁力計を個別に処理する必要がある。さらに、この方法では、磁気センサの固有パラメータ(バイアス、スケール係数)を効果的に特定できる場合に、磁力計のネットワークの幾何学的な較正パラメータ(磁力計の相対位置)を特定することはできない。
【0011】
別の方法は、例えば電流制御ヘルムホルツコイルにより生成された磁場が均一で一定のノルムになるように、印可された磁場を較正するために磁力計を配置することである。磁場の振幅及び向きが分かっているため、磁力計の出力を印加された磁場と比較することにより、磁力計の誤差モデルをパラメータ化するだけで十分である。しかしながら、この方法では、外乱のない印加磁場を利用可能にするために、費用がかかり、重く、嵩張る複雑なインフラストラクチャの代わりに、その配置を行う必要がある。さらに、生成された磁場の知見の精度も問題になり、その較正も必要になる。
【0012】
それにより、特許文献3は、磁場マッピングの範囲内で磁力計を較正する方法を開示しており、磁場発生器によって印可される磁場の対象ボリューム内の複数の異なる位置及び向きについて、磁場の値を磁力計の位置及び向きと結びつけるモデルを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】仏国特許第2914739号
【文献】欧州特許出願公開第2541199号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/222409号明細書
【非特許文献】
【0014】
【文献】Zhi-Quiang Zhang “Two step calibration methods for miniatureinertial and magnetic sensor units,” IEEE Transactions on Industrial Electronics,vol. 62, no.6, 1st June 2015, pages 3714-3723
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、これらの欠点を少なくとも部分的に克服することであり、優先的に、実施するのに簡素で正確な磁力計又は磁力計のネットワークを較正する方法を特に提案することを目的とする。この方法は、磁場の変化を磁力計の動きと結び付ける関係を利用することで可能になる。
【0016】
この目的のために、磁力計を較正する方法が提案される。この方法は、
磁力計が、磁力計の位置及び/又は磁力計の向きによって互いに区別される経路位置のセットを移動するステップと、
磁力計が経路位置のセットを移動するときに、磁力計によって、複数の磁場の測定値を取得時間(acquisition times)において取得するステップと、
移動時間(travel times)において経路位置のセットを移動する間に、磁力計と一体化されたポイントの位置及び向きを表す軌道情報を提供するステップと、
取得時間及び移動時間から決定された複数の測定時間(determination times)のそれぞれについて、磁場の測定値を軌道情報と一致させるステップと、
複数の測定時間について、少なくとも較正パラメータ、磁場の測定値、及び磁場の変化を軌道情報から得られた磁力計の位置及び向きの変化と結び付ける関係を含むコスト関数の最小化によって、磁力計の較正パラメータを決定するステップであって、磁場の変化を磁力計の位置及び向きの変化と結び付ける関係は、磁場の特定の微分方程式を部分的に変換するものであり、
【数7】
ここで、
【数8】
は、磁場ベクトルであり、
【数9】
は、磁場の勾配ベクトルであり、
【数10】
は、磁場の時間微分のベクトルであり、
【数11】
は、位置の修正を表す速度ベクトルであり、Ωは、向きの修正を表す回転行列である、決定するステップと、を含む。
【0017】
こうして、この方法は、磁力計の動きに関する情報から、磁力計の較正パラメータを推定することを提案し、これにより、磁場、及び潜在的に磁場勾配を正確に測定することが可能になる。
【0018】
この方法は、単独で、又は技術的に可能な任意の組合せで、以下の特徴によって有利に完成される。
コスト関数には、軌道情報から得られた磁力計の位置及び向きの変化に関する誤差項が含まれる。
コスト関数には、センサ測定値に関する誤差項が含まれ、センサ測定値だけで軌道情報を取得することを可能にし、軌道情報は較正パラメータと同時に決定される。
コスト関数の最小化は、状態オブザーバで実行される。
コスト関数は、測定時間における磁場の測定の理論的推定値と、測定時間における磁場の測定値との間の比較に基づいており、磁場の理論的推定値には、較正パラメータが考慮に入れられる。
磁場の測定の理論的推定値は、磁場の変化を軌道情報から得られた磁力計の位置及び向きの変化と結び付ける関係から決定される。
磁場の測定の理論的推定値は、
前回の測定時間における磁場の測定値、
軌道情報から決定された、測定時間と前回の測定時間との間の磁力計と一体化されたポイントの位置及び向きの変化、及び
較正パラメータから少なくとも決定される。
この方法は、磁力計が経路位置のセットを移動するときに、複数の磁場勾配の測定値を取得時間において取得するステップも含み、磁場の理論的推定値も、前回の測定時間における磁場勾配の測定値から決定される。
測定時間における磁場の測定の理論的推定値は、
基準点における磁場の強さ、
基準点における磁場勾配、
磁力計と一体化されたポイントの位置と基準点の位置との間の差、及び
磁力計と一体化されたポイントの向きと基準点の向きとの間の回転から決定され、
基準点における磁場の強さ、及び基準点における磁場勾配は、コスト関数の最小化によって決定される。
較正パラメータは、
磁場の測定に影響を与える第1の磁気バイアス、及び/又は
磁場勾配の測定に影響を与える第2の磁気バイアス、及び/又は
磁場の測定値の振幅に影響を与えるスケールパラメータ、及び/又は
磁力計の空間構成パラメータを含む。
一致させるステップは、各測定時間が、軌道情報及び磁場の少なくとも1つの測定値に対応するように、
磁場及び磁場勾配の測定値のセット、及び
軌道情報のセットのうちの少なくとも1つのセットを補間するステップから構成される。
磁力計が第1の位置セットを移動するときに、撮像装置の使用により、各移動時間における磁力計の位置及び向きを正確に示す軌道情報が提供される。
撮像装置は磁力計と一体化されており、固定ターゲットが撮像装置の視野内に配置され、軌道情報は、磁力計が経路位置のセットを移動するときに、撮像装置によって取得された画像内のターゲットの位置特定から導出される。
磁力計が経路位置のセットを移動するときに、機械式変位装置が、磁力計を第1の位置セットのある位置から別の位置に変位させ、軌道情報は、機械式変位装置の位置測定値又は機械式変位装置の位置設定点から導出される。
磁力計は、各移動時間において加速度及び角速度を決定するように構成された慣性センサと一体化されており、軌道情報は、加速度及び角速度から導出される。
磁力計は、磁気慣性ユニットに配置される。
【0019】
本発明は、プロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスを含む自動データ処理ユニットにも関する。この処理ユニットは、本発明による方法、特に、
経路位置のセットを移動する磁力計によって取得時間において取得された複数の磁場の測定値を受信することであって、これらの位置は、磁力計の空間的位置及び/又は磁力計の向きによって互いに区別される、受信すること、
移動時間において経路位置のセットの位置を移動している間に、磁力計と一体化されたポイントの位置及び向きを表す軌道情報を受信すること、
取得時間及び移動時間から決定された複数の測定時間のそれぞれについて、磁場及び磁場勾配の測定値を軌道情報と一致させること、及び
複数の測定時間について、少なくとも較正パラメータ、磁場の測定値、及び磁場の変化を軌道情報から得られた磁力計の位置及び向きの変化と結び付ける関係を含むコスト関数の最小化によって、磁力計の較正パラメータを決定することであって、磁場の変化を磁力計の位置及び向きの変化と結び付ける関係は、磁場の特定の微分方程式を局所的に変換するものであり、
【数12】
ここで、
【数13】
は、磁場ベクトルであり、
【数14】
は、磁場の勾配ベクトルであり、
【数15】
は、磁場の時間微分のベクトルであり、
【数16】
は、位置の修正を表す速度ベクトルであり、Ωは、向きの修正を表す回転行列である、決定すること、を実施するように構成される。
【0020】
本発明は、プログラムコード命令がコンピュータ上で実行されるときに、本発明による方法のステップの実行のためにコンピュータによって読み取り可能な不揮発性サポートに記録されたプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、非限定的な例として与えられ、添付の概略図を参照して説明される、本発明による実施形態及び代替物に関する以下の説明のおかげでよりよく理解されるであろう。
図1】較正すべき磁力計を含む機器の例を示す図である。
図2】本発明の可能な実施形態による較正方法を実施するための可能な構成を示す図である。
図3】本発明の可能な実施形態による較正方法のステップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
姿勢(position)とは、位置(location)及び向きの組合せを意味するものと解釈され、これにより、物体の空間構成を完全に記述することができる。3次元の空間のベクトル記述では、位置は、3つの成分を有するベクトル(基準フレーム内の空間座標)によって規定され、向きは、3つの成分を有するベクトル(基準フレームに関する回転角度)によって規定される。
【0023】
「軌道情報」とは、磁力計が経路位置のセットを移動するときの、磁力計と一体化されたポイントの位置を経時的に表すデータを意味すると解釈される。磁力計と一体化されたポイントの位置は、特に磁力計に堅く取り付けられた固体の位置であり得る。これらのデータは、各移動経路位置に対応する移動時間に従って時系列に並べられ得る。これらのデータは、例えば、特に速度又は加速度、角速度又は角加速度等、位置及び向き、又はそれらの時間に関する導関数であってもよい。
【0024】
少なくとも1つのプロセッサ及びメモリを含む、例えばコンピュータ等の自動データ処理ユニットは、方法を実施するように構成される。自動データ処理ユニットは、磁力計から来る磁場の少なくとも測定値を受信するようにも構成される。好ましくは、自動データ処理ユニットは、磁場勾配の測定値を受信するようにも構成される。
【0025】
本明細書において、較正すべき磁力計は、その3軸に沿って磁場を測定できる3軸磁力計である。磁力計は、例えば磁気慣性ユニットの場合等、同じセンサに一体的に接続された磁力計のネットワークの一部を形成し得る。その場合に、磁力計のネットワークにより、センサの基準フレーム内の磁場の勾配を測定することも可能になる。
【0026】
例示として、図1は、磁気慣性ユニット1を備えた磁力計2のネットワークの例を示している。磁力計2は、ここでは、互いに略直行する軸線に沿って向き合わせされた3つの単軸磁力計で構成される3軸磁力計である。磁気慣性ユニット1は、少なくとも8つの単軸磁力計を含み、典型的に、図1に示されるように3つの3軸磁力計2に編成された9つの単軸磁力計を含む。磁力計2は磁気慣性ユニット1と一体化される。つまり、磁力計2は、地上基準フレームと略等しい動きを有する。磁気慣性ユニット1は、一般に3軸に配置された3つの加速度計及び3つのジャイロメータ等の、加速度計及びジャイロメータ24等の慣性センサも含む。磁気慣性ユニット1は、処理手段21(典型的にはプロセッサ)、データ記憶手段22、及び外部装置と通信する手段25も含む。
【0027】
較正方法の範囲内で、磁力計2は、磁力計2の位置及び/又は磁力計2の向きによって互いに区別される経路位置のセットを移動する(ステップS1)。従来技術の方法と異なり、磁力計2の移動が起こる磁場の均一性又は恒常性の制約はない。こうして、印可された磁場又は外乱のない磁場を利用する必要はない。好ましくは、経路位置のセットは、先験的に規定されておらず、磁力計2のその移動中の変位から生じる。経路位置は、磁力計2がその移動中に取る単なる位置である。
【0028】
この経路を移動するには、オペレータが磁力計2を手動で操作するだけである。磁力計2をある経路位置から別の経路位置に変位させる機械式変位装置を設けることも可能である。例えば、この機械式変位装置は、ロボット化されたアーム、コンベヤーベルト、又は磁力計2の位置及び向きを変えることができる他の装置であってもよい。
【0029】
磁力計2は、その移動中に、複数の磁場の測定値を取得時間において取得する(ステップS2)。こうして、各取得時間について、磁力計2は、磁力計2の位置及びその向きに依存する磁場の測定値
【数17】
を取得する。磁場の特定の非定常性を補償するために、磁力計の測定値をフィルタリングすることが可能である。例えば、電気設備の電流は磁場を乱す可能性がある。50Hz又は60Hzでのフィルタリング(例えば、ノッチフィルタリング)により、これらの外乱を制限することができる。同様に、位置(location)又は姿勢(position)測定システムによって生成される磁場は、既知の場合に、磁力計の測定値から除外され得る。
【0030】
移動時間での移動中に、磁力計2と一体化されたポイントの位置及び向きを表す軌道情報が供給される(ステップS3)。この軌道情報は、必ずしも、例えば、典型的には地上基準フレームである磁場の基準フレームに対する磁力計2の絶対的な位置又は絶対的な向きを反映する必要はない。実際に、提案する方法は、磁力計2の軌道の任意の点での磁場の知見ではなく、磁力計2の位置及び向きの変化に伴う磁場の変化を活用する。こうして、移動中に磁力計2と一体化されたポイントの位置及び向きを知ることで足りる。
【0031】
磁力計2自体ではなく、磁力計と一体化されたポイントを使用すると、多くの利点がある。第1に、磁力計自体よりも磁力計2と一体化されたポイントの位置及び向きを正確に示す(pinpoint)方が容易な場合が多い。例えば、ターゲット及び撮像装置が使用される場合に、磁力計2と一体化されるターゲット又は撮像装置があり、その位置及び向きが決定される。次に、典型的に磁気慣性ユニット1の場合のように、いくつかの磁力計2が互いに統合されたネットワークに編成されると、ネットワークの全ての磁力計2の較正を同じ軌道情報を用いて実行できるようになる。単純性と無視できない時間の節約とは別に、これは磁力計2の較正を互いに調和させることも可能にする。
【0032】
この軌道情報は様々な方法で取得できる。軌道情報は、磁力計2が経路位置を移動するときに、各移動時間における磁力計の位置及び向きを正確に示す撮像装置の使用によって提供され得る。
【0033】
例えば、撮像装置を磁力計2と堅く固定し、磁力計2及び撮像装置によって形成されたアセンブリの変位中に撮像装置によって取得された画像の処理から軌道情報を決定することが可能である。例えば、撮像装置の立体視覚、追加の深度カメラ、又は慣性センサを活用して、同時の位置特定(localisation)及びマッピング(頭字語SLAMで知られる)を実装することができる。特に、磁力計2を組み込んだ磁気慣性ユニット1に撮像装置を取り付けた場合に、トリプレット撮像装置/加速度計/ジャイロメータを使用し、SLAM又はビジョン/慣性オドメトリ(走行距離計による測定)技術を使用して、軌道情報を決定することが可能である。
【0034】
また、位置が既知のターゲット又は基準点を使用することもできる。例えば、撮像装置は、磁力計2及び撮像装置の視野内に配置された固定ターゲットと一体化してもよい。次に、軌道情報は、磁力計2が経路位置のセットを移動するときに、撮像装置によって取得された画像内のターゲットの位置特定(pinpoint)から取得される。最後に、撮像装置は環境に固定され、光学ターゲットはシステム(例えば、モーションキャプチャルーム)に固定され得る。
【0035】
これにより、図2は、磁力計2がある経路位置から別の経路位置に移動するときに、ターゲットを使用した構成の例を示している。ここで、撮像装置10は、磁力計2を組み込んだ慣性ユニット1と一体化されたカメラである。ターゲット11は、外部基準フレーム(典型的には地上基準フレーム)に固定され、且つ撮像装置10の視野12内に配置される。この例では、ターゲット11は、いくつかの規則的に分配されたブロック13を含み、各ブロックが識別可能であるように、各ブロックが別個のパターンを有する。必要に応じて、異なる空間構成下でターゲット11を示す一連の画像を取得するために、異なる位置で異なる向きに従ってターゲットを撮像装置の前に配置することにより、撮像装置10を事前に較正してもよい。画像の処理は、それら画像のそれぞれにおいて、ターゲット11の特定の点の投影の位置を検出する。この検出された位置は、次に、(例えば、非線形最適化方法により)撮像装置10の固有パラメータ(焦点距離及び歪みパラメータ、並びに撮像装置の光学系の投影/逆投影関数の表現に必要な光学中心の位置等)を決定するために使用される。この例のターゲット11は平らなターゲットであり、ターゲットは、紙に簡単に印刷できるため、製造が容易である。ターゲット11を3次元で使用することもでき、ターゲットを3次元で作成するのはより困難であるが、較正をより容易且つ正確にする。
【0036】
ターゲット11は固定されており、オペレータは、撮像装置10の視野12内にターゲット11を維持するように注意しながら、撮像装置10及び磁力計1によって形成されたアセンブリを変位させる。変位運動は、ランダムに又は事前に確立された経路に従って行われ得る。撮像装置10は、この変位中に画像を取得する。次に、ターゲット11の位置が各画像内で検出される。固定ターゲット11に対する撮像装置10の相対位置は、画像毎にコンピュータによるビジョンアルゴリズムによって計算され、撮像装置10の撮影時間に対応する移動時間においてターゲット11に取り付けられた基準フレーム内の撮像装置10の位置を決定することができる。撮像装置10は磁力計2と一体化されており、それにより、経路に沿って移動している間の磁力計2と一体化されたポイントの位置及び向きを表す軌道情報が得られる。
【0037】
固定撮像装置10及び磁力計2と統合されたターゲット11を使用することも可能であることは明らかである。自由度をより大きくするために、いくつかのターゲット11を使用することも可能である。画像内の磁力計の位置及び向きの特定が磁力計2を統合するアセンブリの画像から直接的に行われ得る場合に、それは、ターゲット11なしで行うことも可能である。いくつかの光学ターゲットが磁力計2と統合して配置されている場合に、モーションキャプチャ構成を提供することも可能である。
【0038】
他の方法でも、この軌道情報を取得できる。例えば、機械式変位装置が磁力計2をある経路位置から別の経路位置に変位させる既に述べたケースにおいて、軌道情報は、機械式変位装置の位置測定値又は位置設定点から導出してもよい。ロボット化されたアームの使用により、特に、ロボット化されたアームの端部の空間内の位置及び向きに関するデータを直接的に取得することが可能になり、その端部は、そのアームが担持する磁力計2と一体化されたポイントである。
【0039】
さらに、例えば、複数のステーションから送信された波を受信する磁力計2と統合された受信機を含むオプションの無線ナビゲーションシステムを活用することも可能である。次に、受信機の位置が三角測量法によって決定され、各送信ステーションに対する相対的な位置がマージされる。こうして、移動中の磁力計2と一体化されたポイントの位置及び向きを表す軌道情報を提供することを可能にする任意の方法を採用することができる。いくつかの方法を組み合わせることもできる。
【0040】
磁気慣性ユニット1に組み込まれた磁力計2の場合に、加速度計及びジャイロメータの測定値を軌道情報と比較して、加速度計及びジャイロメータ24を較正し、特に較正によりバイアスを除去することも可能である。さらに、加速度計及びジャイロメータ24のこれらの測定値から軌道情報を取得することも可能である。次に、以下に説明するコスト関数に異なるバイアスを組み込むことにより、磁力計2、加速度計、及びジャイロメータ24を同時に較正することさえ可能である。
【0041】
較正方法は、移動時間における軌道情報と同期した、取得時間において取得された磁場の測定値の活用に基づく。しかし、これらの2つのタイプのデータは異なる起源からのものであり、取得時間は一般に移動時間に対応していない。こうして、磁場の測定値と軌道情報とを一致させる(matching up)こと(ステップS4)が必要である。この一致させることは、複数の測定時間のそれぞれについて、磁場の測定値と、この測定時間における磁力計2と一体化されたポイントの位置及び向きを表す軌道情報を利用可能にするために、磁場の測定値と軌道情報とを関連付けて同期させることを目的としている。
【0042】
このため、一致させることには、
磁場及び磁場勾配の測定値のセット
軌道情報のセット、のうちの少なくとも1つのセット又はサブセットの補間が含まれ得る。
【0043】
例えば、軌道情報が一般に磁場の測定値よりも低い周波数を有しているため、軌道情報のみを補間することが必要な場合がある。実際に、磁力計2は、200Hzの周波数で磁場の測定値を容易に取得できるが、特に撮像装置10が使用される場合に、軌道情報は、より断片化される可能性がある。ただし、逆の場合もある。取得時間が移動時間に対応する場合に、一致させることは、磁場の測定値を軌道情報と同時に関連付けることに限定され、それが測定時間になることに留意されたい。
【0044】
セットを補間するには、一時的なスプラインを使用することが好ましいが、例えば磁力計2が移動した軌道の離散表示等、他のアプローチを採用することもできる。スプライン表示は、特に軌道の連続性を強制することを可能にする。補間に使用されるスプラインは、少なくとも2回導出可能であることが好ましい。例えば、磁力計と一体化されたポイントの位置及び向きを補間することができる。スプライン表現は、基準の勾配の最小化に基づく方法を使用して、関連する様々なパラメータ、特に時間同期パラメータを最適化することも可能にする。
【0045】
例えば、磁気慣性ユニット1の場合のように、慣性センサが磁力計2と一体化される場合に、スプラインを導出することにより、これらのセンサの加速度又は回転測定値を較正することができる。実際に、各時間ステップにおける方向スプラインの導関数は、ジャイロメータの偏りのない調和した測定と一貫性がなければならない。同様に、各時間ステップにおける位置スプラインの2次導関数は、重力の推定値と同様に、加速度計の偏りのない調和した測定値と一貫性がなければならない。
【0046】
スプラインの係数、慣性バイアス、慣性センサの非同期化、基準フレーム内でのターゲットの重力方向、撮像装置10と加速度計のパーカッションポイントの位置の違い等の様々なパラメータは、ジャイロ誤差項、加速度誤差項を含む多基準コスト関数を最小化するように最適化され得る。これらの誤差項は、例えば最小二乗として表される。撮像装置10及びターゲット11を使用する場合に、ターゲットの特定のポイントの理論的投影と撮像装置10によって取得された画像内のそれら位置との比較に基づく再投影基準をコスト関数で考慮することもできる。
【0047】
一致させることのおかげで、複数の測定時間を規定することができ、各測定時間が、磁場の測定値と、この軌道時間における磁力計と一体化されたポイントの位置及び向きを表す軌道情報とを利用できる。こうして、取得時間及び移動時間から測定時間が決定される。これは、磁場の測定値及び軌道情報の可用性、又は潜在的にそれらの補間を決定するのはこれらの時間だからである。同様に、この測定が利用可能な場合に、各測定時間に磁場勾配測定を利用することもできる。
【0048】
好ましくは、測定時間は、磁場が2つの連続する測定時間の間に磁力計2が占有する位置同士の間で大きく変動することを回避するために、互いに十分に近くに選択される。特に、磁場勾配が使用される場合に、2つの連続する測定時間の間に磁力計が占有する位置同士の間で磁場勾配を局所的に均一とみなすことができるように、測定時間は互いに十分に近いことが好ましい。例えば、測定時間は、1秒以下、好ましくは10ミリ秒以下、さらに好ましくは5ミリ秒以下の持続時間だけ間隔が空けられる。同様に、磁力計2は、磁力計の動きを正しく考慮することができるのに十分な周波数で測定値を取得することが好ましい。好ましくは、磁力計2は、例えば200Hz等の、100Hzより高い周波数で測定値を取得する。ただし、これら2つの設定は必ずしも有用ではない。特に、この方法が積分定式を使用する場合に、つまり、以下で説明するように磁場の変化を磁力計の位置及び向きの変化と結び付ける関係として、磁場のモデルを一意に使用する場合に、移動時間、取得時間、又は測定時間は、任意の大きさに設定できる。
【0049】
磁力計2の較正パラメータを決定するために(ステップS5)、この方法は、複数の測定時間について、少なくとも較正パラメータ、磁場の測定値、及び磁場の変化を軌道情報から得られた磁力計2の位置及び向きの変化に結び付ける関係を含むコスト関数の最小化を含む。
【0050】
好ましくは、コスト関数は、測定時間における磁場の理論的推定値とその測定時間における磁場の測定値との間の比較に基づくものであり、磁場の理論的推定値は較正パラメータを考慮に入れる。典型的には、磁場の理論的推定値は、磁場の変化を軌道情報から得られた磁力計2の位置及び向きの変化と結び付ける関係から決定される。
【0051】
磁場の理論的推定値は、
前回の測定時間における磁場の測定値、
軌道情報から決定された、測定時間と前回の測定時間との間の磁力計2と一体化されたポイントの位置及び向きの変化、及び
較正パラメータから少なくとも決定され得る。
【0052】
好ましくは、磁場の理論的推定値は、前回の測定時間における磁場勾配の測定値からも決定される。
【0053】
一例として、磁場の変化を軌道情報から得られた磁力計2の位置及び向きの変化と結び付ける関係は、磁場の特定の微分方程式の局所的な変換であり得る。
【数18】
ここで、
【数19】
は、磁場ベクトルであり、
【数20】
は、磁場の勾配ベクトルであり、
【数21】
は、磁場の時間微分のベクトルであり、
【数22】
は、位置の修正を表す速度ベクトルであり、Ωは、回転速度の修正、従って向きの修正を表す回転行列である。以降、ベクトルの上部にある矢印の表記は省略されるが、磁場、測定値、位置、向き、バイアスがベクトルであることは明らかである。例えば、式(1)の導関数
【数23】
の形式を使用して、磁場の変化を磁力計の位置及び向きの変化と結びつける他の関係を使用することは、明らかに可能であり、ここで、∇Bは、磁場のn次導関数であり、f及びgは、仏国特許出願公開第1756675号明細書で開示されるような所定の関数である。
【0054】
具体的には、磁場の特定の微分方程式は、2つの測定時間t及びtk+1の間で次のように積分される。
【数24】
ここで、B(tk+1)は、測定時間tk+1における磁場であり、以降Bk+1と表記され、B(t)は、前回の測定時間tにおける磁場であり、以降Bと表記され、∇B(t)は、前回の測定時間tにおける磁場勾配であり、以降∇Bと表記され、
【数25】

は、測定時間tk+1における磁力計2の向きを表し、以降
【数26】
と表記され、
【数27】
は、前回の測定時間tにおける磁力計2の向きを表し、以降
【数28】
と表記され、
【数29】
は、測定時間tにおける磁力計2の位置を表し、以降
【数30】
と表記され、
【数31】
は、前回の測定時間tにおける磁力計2の位置を表し、以後
【数32】
と表記される。表記を簡略化すると、式(2)は次のようになる。
【数33】
【0055】
位置
【数34】
及び向き
【数35】
は、以前に提供された軌道情報から導出される。それら位置及び向きは、この軌道情報に直接対応する場合があるが、代わりに、軌道情報からの計算、例えば、それら位置等を積分又は導出することによって取得することもできる。また、位置又は位置特定は、較正パラメータと同時に計算することも可能である。これにより、同じコスト関数において、磁気較正に関連する誤差項を、指定された測定センサの他の測定値に関する誤差項と組み合わせることができ、これにより、単独で、軌道情報(例えば、撮像装置又は他の基準の視覚的なターゲット又はランドマーク)を決定することができる。この場合に、位置の推定値は、中間出力ではなく、最適化アルゴリズムの内部変数であり、「位置特定の計算」と「磁気較正」の区別はなく、このアルゴリズムは、単一の固有のコスト関数の最小化によって2つの問題を解く。これは、特に、軌道情報が最小化されたコスト関数から導出され得る場合、例えば、(ターゲットの前、SLAM、又はモーションキャプチャルーム内の)1つ/いくつかの撮像装置の物理点の再投影のエラーの場合である。この可能性は、全ての実施形態、及び全ての軌道情報に適用され、特に、位置及び向きを除いて、その導関数に適用される。
【0056】
さらに、式(3)を位置及び向きの修正の関数として書き換えることもできる。前回の測定時間tにおける向きに対する測定時間tk+1における向き、つまり、前回の測定時間tと測定時間tk+1との間の向きの変化を
【数36】
と表記すること、及び前回の測定時間tにおける磁力計の位置によって規定された基準フレーム内の測定時間tk+1における磁力計の位置を
【数37】
と表記することにより、以下が得られる。
【数38】
【0057】
この基本的な関係は、磁力計が正しく較正されていれば、磁力計2の測定値によって局所的に検証する必要がある。こうして、較正すべき様々なパラメータの存在は、磁場の測定値と、この関係に基づく磁場の理論的推定値との間に偏差を生じさせる結果となる。この関係の適用中に現れる偏差を最小限に抑えることにより、較正パラメータの値を決定することができる。そのために、最小化するコスト関数が構築される。複数の測定時間について、磁力計2による磁場の測定値の汚染を較正するためのパラメータを組み込むことにより、式(3)又は式(4)によって定式化された関係を表す。
【0058】
例えば、簡潔にするために、hard iron effectによって生じる磁気バイアスの補償に焦点を当てる場合に、測定時間tにおける磁場の測定値及び磁場勾配は、以下のように記述され得る。
=Bm-B (5)
∇B=∇Bm-v2g(H) (6)
ここで、Bmは、測定時間tの磁場の測定値であり、Bは、磁場の測定値に影響を与える磁気バイアスであり、∇Bmは、測定時間tについて測定された磁場勾配であり、v2g(H)は、磁場勾配の測定値に影響を与える磁気バイアスである。こうして、磁気バイアスは、3次元のベクトルBと5次元のベクトルHによってパラメータ化され、v2gは、以下のようなベクトルから勾配への変換関数である。
【数39】
【0059】
式(3)において、式(5)及び式(6)で表される磁場B及び磁場勾配∇Bの式を置き換えることにより、上記の関係を利用して得られた磁場の理論的推定値と少なくとも1つの磁場の測定値との間の比較に基づいて、最小化する基準を得ることができる。
【数40】
【0060】
コスト関数は、複数の測定時間tに対してこの基準のノルムρを追加することで構築することができる。
【数41】
【0061】
使用されるノルムρは、例えば、ノルムL2(成分のモジュールの平方根)、又はよりロバストなノルムL1(成分のモジュールの合計)、又は代わりにM推定器(例えば、Huber、Cauchy、Tukey等)で使用される他のロバストなノルムであり得る。合計には、磁場の全ての測定サンプルが含まれているとは限らない。サンプルを選択するステップが上流で行われる場合がある。
【0062】
次に、コスト関数は、較正パラメータを取得するために、バイアスB及びH(又はv2g(H))に関して、任意のアルゴリズム手法、例えば、ニュートン、ガウス・ニュートン、レーベンバーグ・マルカート型等の反復アルゴリズムによって最小化することができる。ノルムが適用される基準(8)がバイアスパラメータで線形であるため、最小化の解は非常に効率的である。ただし、ロバストなノルムを使用するには、収束するまでに数回の反復が必要である。こうして、ガウス・ニュートン型アルゴリズムを有利に使用することができる。勾配降下型のコスト関数の最適化に基づく方法とは別に、例えば状態オブザーバ型のツール(カルマンフィルタ、拡張カルマンフィルタ、Luenbergerオブザーバ等)を使用する等、他のアプローチを使用してコスト関数を最小化することができる。これにより、例えば、誤差の共分散行列が最小化するコスト関数を表す予測(8)から拡張カルマンフィルタを構築することができる。
【0063】
上記の例は、較正する唯一のパラメータが一定の磁気バイアスである場合に単純化される。同じアプローチを使用して、測定値のスケール係数等の他の較正パラメータ、又は磁力計の空間構成パラメータ(例えば軌道情報が提供される磁力計と一体化されたポイントに対する磁力計の向き位置等)を決定することもできる。こうして、この方法により、磁力計のネットワークの幾何学的形状を推定することができる。また、コスト関数の最小化を使用して、磁力計2が経路位置を移動するときに、磁力計2が移動する磁場のパラメトリックモデルのパラメータを決定することもできる。
【0064】
上記のように、この方法は、特にそれら磁力計2が磁気慣性ユニット1に組み込まれている場合に、いくつかの磁力計2を同時に較正するために有利に使用することができる。以下の例では、いくつかの磁力計2がネットワークを形成し、パラメータの較正は、磁場の測定値に影響を与える1つ又は複数の磁気測定バイアスだけでなく、スケール係数も補償することを目的とする。ネットワークの磁力計2iの測定は、以下の方程式に従って線形に記述されると仮定する。
【数42】
ここで、Bは実際の磁場であり、Bmiは、磁力計iの磁場の測定値である(対角又はフルマトリックス及びバイアスbであり得るスケール係数Dで汚染されている)。ただし、他の磁気測定パラメータも同様に使用できることに留意されたい。
【0065】
ネットワークの基準磁力計2(インデックス0)の周りの磁場の1次ローカルモデリングを使用して、式(1)で表される関係に戻ると、近接するボリューム内に位置付けされた磁力計セットの位置dxにある磁力計2iは、磁力計2iによる磁場Bmiの測定値を与える。
【数43】
ここで、Bは、基準磁力計2の位置の磁場であり、∇Bは、基準磁力計2の位置の磁場勾配である。
【0066】
式(11)は、列Vec(∇B)毎にベクトル化された勾配行列を含める間に、書き直すことができる。
【数44】
ここで、
は行列のクロネッカー積を表す。
n個の3軸磁力計2のセットでは、測定値及び磁力バイアスを連結できる。
【数45】
次に、以下のように表記することが可能である。
【数46】
【0067】
magのサイズは(n,12)に等しくなる。行列Cmagのランクに従って、磁場及び磁場勾配にあいまいさがある場合とない場合がある。その結果、
【数47】
と測定値Bとの間の関係は可逆的である場合とそうでない場合とがある。行列のランクがその行番号よりも小さい場合に、マクスウェル方程式にリンクされた制約(勾配はゼロトレースで対称である)を考慮することにより、1次磁場モデルのパラメータの数を減らすことができる。
【0068】
これらの2つの場合に、線形関係
【数48】
を表記し、この関係は、
【数49】
を検証する。
【0069】
磁場が全体的に静止していると仮定することにより、磁力計2の軌道全体に、磁場の変化を磁力計2の位置及び向きの変化と結び付ける関係を記述することができる。
【数50】
ここで、ωは、磁力計の回転速度であり、vは、変位の速度(位置の変化)である。こうして、式(1)で定式化された関係の再定式化が必要である。
【0070】
2つの測定時間の間の基準磁力計2の磁場の測定値の変化は、軌道情報から得られた位置の差に関連している。軌道情報のおかげで、磁力計2の位置及び向きの変化を利用できる。実際に、ネットワークの磁力計は互いに統合しており、軌道情報は、これらの磁力計2と一体化されたポイントの位置及び向きを表している。好ましくは、基準磁力計2の位置及び向きは、軌道情報から決定される。
【0071】
前回の測定時間tにおける基準磁力計2の向き及び測定時間tk+1における同じ基準磁力計2の向きからの回転行列(既知)
【数51】
と、前回の測定時間tにおける同じ基準磁力計2によって形成された基準フレーム内の測定時間tk+1における基準磁力計2の位置(既知)
【数52】
に注目すると、測定時間tk+1における磁場の理論的推定値が、前回の測定時間tにおける磁場及び磁場勾配から記述される。
【数53】
【0072】
理論的な推定値は、基準磁力計2の測定値(較正するべきパラメータによって汚染された)の空間内に記載される。予測測定値
【数54】
は、次に、バイアス
【数55】
及びスケール係数
【数56】
の推定値、並びに入力
【数57】
の関数として表すことができ、ここで、
【数58】
は、前回の測定時間tにおける基準磁力計2による磁場の測定値である。
【0073】
実際に、前回の測定時間tにおける磁場の測定値により、前回の測定時間tにおける基準磁力計2の位置周辺の磁場の局所的モデルを生成することができる。
【数59】
【0074】
この局所的モデリングにより、基準磁力計2による磁場の測定の理論的推定値を定式化することができる。磁場の理論的推定値から磁場の測定の理論的推定値への移行は、較正パラメータの推定値、この場合は磁気バイアス
【数60】
の推定値、及びスケール係数
【数61】
の推定値を適用することによって行われる。
【数62】
【0075】
式(19)を式(20)に導入することにより、測定時間tk+1における測定値の推定値を、前回の測定時間tにおける測定値及び各磁力計2のモデルのパラメータに結び付ける関係が得られる。
【数63】
【0076】
この関係により、次の予測を構築することができる。
【数64】
【0077】
次に、以下の方法で測定空間の残差からコスト関数を構築することができる。
【数65】
ここで、前述したように、ρは、ノルムL2、ノルムL1、又は別のノルムであり得るノルムであり、
【数66】
は、磁力計による磁場の測定値(スケール係数及びバイアスによって汚染された)を表す。合計には、全ての磁場測定値のサンプルが含まれない場合があり、サンプルを選択するステップは、上流で行うことができる。コスト関数は、較正パラメータを取得するために、ニュートン、ガウス・ニュートン、レーベンバーグ・マルカート型等の反復アルゴリズムのようなアルゴリズム手法により、推定値(ここでは曲折アクセント付き)に関して最小化することができる。前述したように、勾配降下型のコスト関数の最適化に基づく方法とは別に、例えば状態オブザーバ型ツール(カルマンフィルタ、拡張カルマンフィルタ、Luenbergerオブザーバ又は他のもの)等を使用する等、他のアプローチを使用してコスト関数を最小化することができる。これにより、例えば、誤差の共分散行列が最小化するコスト関数を表す予測(22)から拡張カルマンフィルタを構築することが可能である。
【0078】
式(23)で定式化されるコスト関数の最小値は一意ではない場合があることに留意されたい。最小値は、縮退した状況に対応する。例えば、特定の場合に、それら磁気バイアスを推定することだけが求められている(例えば、単位(ユニット)に対するスケール係数を仮定することによって)場合でも、磁気バイアスの特定の線形結合が観測できないことが示される場合がある。この場合に、変数に次の変更を加えることにより、観測可能な部分空間に対して式(23)で定式化されたコスト関数の磁気測定バイアスの影響を容易に再パラメータ化できる。
【数67】
ここで、表記[X]i:jは、インデックスがiとjとの間に含まれるXの行によって形成される部分行列に対応する。これは、コスト関数(24)を(9)で定式化されたコスト関数にすることに帰着する。また、スケール係数の少なくとも1つを修正するか、代わりに全てのスケール係数が全くゼロである縮退状況を拒否するために平均的なグローバルスケール係数を修正する必要もあり得る。正則化等、非ユニシティ(non-unicity)の問題に対する他の解により、最小の非ユニシティがアルゴリズムの収束に影響を与えないようにすることができる。これらの正則化手法は、コスト関数を変化させない方向に沿って推定値の修正を制限することにより、最小化手法のレベルで機能する。これらのコメントは、コスト関数の様々な定式化に適用される。
【0079】
上記の例は、3軸磁力計2のネットワークの場合の非限定的な例として与えられている。単軸磁力計2のネットワークを検討することも想定できる。次に、(10)によって表される測定モデルは、軸線のそれぞれについて以下のようになる。
【数68】
ここで、Bは実際の磁場であり、Bmiは、磁場の測定値であり、fは、センサの感度に関連する次元ベクトル3であり、bは、このセンサのバイアスである。この場合に、3軸磁力計2のネットワークの場合に示されるのと同じ理由で、新しいパラメータにさらに依存する同様のコスト関数を推定することができる。
【数69】
【0080】
上記の例は、磁場1の特定の微分方程式(オプションで(11)のような局所的な1次近似を使用する)によって確立された関係を利用する。しかしながら、磁力計2の移動が行われる磁場が静止している場合、すなわち磁場が時間に依存しないが空間に依存する場合に、より簡素なアプローチを採用することが可能である。
【0081】
磁気慣性ユニット1の場合のように、アフィン応答がセンサカードに固定配置されたn個の単軸磁力計2があると仮定する。これらの磁力計2の測定値は次のようにモデル化できる。
【数70】
ここで、aは、センサフレームで表される磁場Bに対するその線形応答に関連する単軸磁力計2iの3つの較正パラメータを表し、bは、単軸磁力計2iのバイアスを表すスカラーである。各磁力計2がセンサカード上の異なる位置に配置されており、xがセンサカードに対する固定基準フレーム内の位置を表すベクトルを表記している場合に、測定時間tにおける第1の近似として以下のように記述することができる。
【数71】
ここで、Bは、位置及び時間の関数としてセンサ基準フレーム内の磁場を表す。センサカードが静止している(時間に依存せず、空間に依存する)磁場内を移動して経路位置のセットを移動する場合に、磁力計2の基準フレーム内に確認される磁場Bは空間内のセンサカードの位置及び向きのみに依存する。これらの位置及び向きは、提供された軌道情報を通じて、測定時間毎に磁力計2から導出された磁場の測定と同時にわかるため、パラメータa、x、及びbは、磁場ユニットに対応するパラメータaについて最も近いグローバルスケール係数で、システムが不均一な定常磁場に置かれた瞬間から、つまり空間に依存する瞬間から観測可能である。しかしながら、磁場ユニットの測定システムの標準化に対応するパラメータaのグローバルスケール係数は、磁気慣性ユニット1の磁気タキメーター又は進行方向(heading)の計算等、特定の用途に不要であり得る。
【0082】
最小化するための可能なコスト関数は、一般式となり得る。
【数72】
ここで、m(t)は、磁力計2iから導出された測定時間tにおける測定値を表し、パラメータa、x、b、及び位置基準の安定磁場Bの記述、及びρは前述したようなノルムである。
【0083】
例として、磁場勾配が空間的に一定であるとみなされる場合に、磁場はアフィンモデルによって記述され得る。外部基準フレーム内の位置を記述する空間変数uに注意することにより、磁場を次のように記述することができる。
【数73】
ここで、B(0)は、基準位置での磁場を表す定ベクトルであり、∇B(0)は、基準位置での磁場勾配を表すトレースがゼロの対称行列である。
【0084】
時刻tにおける外部基準フレーム内のセンサフレームの原点の位置O(t)、
時刻tにおける外部基準フレームに対するセンサカードの向きを表す回転行列R(t)、
((u)の関数である)外部基準フレームの磁場B(u)に注目して、以下のように記述することが可能である。
【数74】
式(30)と式(31)を組み合わせると、次のようになる。
【数75】
【0085】
この式(32)は、式(29)の例として与えられたコスト関数Eに導入することができる。例えば、ρがノルムL2の二乗の場合に、次のようになる。
【数76】
コスト関数を最小化することにより、スケール係数及び方向係数aとバイアスbとを決定するだけでなく、3つの独立したパラメータB(0)と∇B(0)の5つの独立したパラメータを磁場の記述によって特定することもできる。こうして、磁場のモデルのパラメータがコスト関数を介して決定されるため、磁場の定常性以外の情報は必要ない。
【0086】
この方法は、磁場の変化を磁力計の位置及び向きの変化と結び付ける関係として、他の磁場モデルを使用して同様に適用してもよい。こうして、例えばこの磁場のヘッセ行列又は高次導関数を推定することにより、高次への発展を伴う磁場モデルを使用することが可能である。
【0087】
磁力計2を較正するためのパラメータが決定されると、磁力計を較正するために較正パラメータから生じる補正を磁力計2の測定値に適用することで十分である(ステップS6)。例えば、磁気バイアスbを補償するには、較正中に決定されたバイアスbの値を測定値から減算するだけで十分である。
【0088】
本較正方法は、使用中に磁力計を再較正するために、使用前の磁力計の標準化中だけでなく、磁力計の使用中にも実施できることに留意されたい。実際に、利用可能な軌道情報があれば十分である。これは、特に磁気慣性ユニットの場合である。
【0089】
本発明は、プログラムコード命令がコンピュータ上で実行されるとき、本発明による方法のステップの実行のためにコンピュータによって読み取り可能な不揮発性サポートに記録されたプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品にも関する。
【0090】
本発明は、添付の図面に記載され、表された実施形態に限定されない。特に、様々な技術的特徴の構成又は技術的同等物の置換の観点から、本発明の保護領域を超えることなく、変更が可能である。
図1
図2
図3