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特許7112495動脈血の値を推定するための改良された方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】動脈血の値を推定するための改良された方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20220727BHJP
   G16H 50/50 20180101ALI20220727BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
A61B5/1455
G16H50/50
A61B5/00 G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020533153
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018084530
(87)【国際公開番号】W WO2019115605
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】17206647.4
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520205899
【氏名又は名称】オウビ・アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ゲラベルセン,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】フロウ,ビャーネ
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-534018(JP,A)
【文献】特表2005-529627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0345572(US,A1)
【文献】BIGELEISEN P. E.,MODELS OF VENOUS ADMIXTURE,ADVANCES IN PHYSIOLOGY EDUCATION,2001年,Vol.25, No.3,P.159-166
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/03,5/06-5/24
G06Q50/22
G16H10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈血の値を動脈血の値に変換するための、コンピュータに実装される方法であって:
a)動脈の酸素化の測定値であるSO2 AM またはSpO2、および/または推定値であるSO2 AE を提供するステップと、
b)静脈血から得られた血液サンプル中の血液の酸塩基状態の値VBG を測定する、および/または値VBG 推定するステップと、
c)血液の酸塩基状態および酸素化状態を、動脈血の推定値(ABG)に導くための数学的モデルを適用することによって、静脈血の値を変換するステップと、ここで、
d1)動脈の酸素化の測定値および/または推定値が、対応する静脈の酸素化の値を下回る場合、
e)次に、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて、前記動脈の酸素化の値を推定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
条件d1)が満たされる場合、次に、追加の条件、
d2)e)を開始するための追加の必要条件として、さらに、前記動脈の酸素化の測定値および/または推定値と前記対応する静脈の酸素化の値の間の数的差異が、所定の閾値(K)を下回る場合
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
条件d2)において、前記所定の閾値(K)が、a)で動脈の酸素化の値を提供するために使用された測定装置の測定の不確かさ、および/またはb)で静脈血サンプル中の血液の酸塩基状態の値を提供するために使用された測定装置の測定の不確かさ次第である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記関数が、動脈の血液ガスおよび酸塩基状態のモデルを含み、動脈の酸素化の値を予測するために調整される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記代替値が、前記静脈の酸素化の値と等しい、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記代替値が、静脈の血液ガスおよび酸塩基状態の測定ならびに/または推定における、1つもしくは複数の分析前誤差および/もしくは分析誤差、ならびに/または測定された動脈の酸素化および/もしくは推定された動脈の酸素化を補完するために適応している、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記代替値が、動脈の血液ガスおよび酸塩基状態(ABG)と静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)の間の対応する差異をもたらす、予測される最小酸素代謝を補完するために適応している、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記関数が、動脈の血液ガスおよび酸塩基状態のモデルを含み、測定された静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)ならびに/または推定された静脈の血液ガスおよび酸塩基状態を使用して動脈の酸素化の値を予測するために調整される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定された静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)が、静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)の測定における、1つまたは複数の分析誤差を補完するためにさらに補正される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記測定された静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)が、動脈の血液ガスおよび酸塩基状態(ABG)と静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)の間の対応する差異をもたらす、予測される最小酸素代謝を補完するためにさらに補正される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
血液の酸塩基状態および酸素化状態を、動脈血の推定値(ABG)に導くための数学的モデルを適用することによって、静脈血の値を変換するc)の過程が、静脈血の測定値(VBG)に対して、モデル化の目的のために、酸素が除去され、かつ/または二酸化炭素が添加されるという点で変更される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
生理学的に可能な値の範囲に限定されるモデル化の目的のために、酸素が除去され、かつ/または二酸化炭素が添加される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記動脈血の推定値が、生理学的に可能な値の前記範囲内で算出される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
d2)の条件において、前記所定の閾値(K)が、生理学に基づいた安全域次第である、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記数学的モデルが、組織における呼吸商(RQ)の真値が、脂質の好気性代謝では0.7、炭水化物の好気性代謝では1.0であり、0.7~1.0の間でのみ変動し得ることを適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記数学的モデルが、生理的に可能な0.7~1.0の範囲内に設定された一定の呼吸商(RQ)によって決定された比率で、Oを添加し、静脈血からCOを除去して、シミュレートされた酸素飽和度が、動脈血中で推定されたか、または測定された酸素飽和度に等しくなるか、または実質的に等しくなるまで、シミュレーションを実施することを適用する、請求項1または15に記載の方法。
【請求項17】
静脈血の値を動脈血の値に変換するためのデータ処理システムであって、
- 動脈の酸素化の測定値であるSO2 AM またはSpO2、および/または推定値であるSO2 AE を提供するための手段、
- 静脈血から得られた血液サンプル中の血液の酸塩基状態の値VBG を測定する、および/または値VBG 推定するための手段、ならびに
- 血液の酸塩基状態および酸素化状態を、動脈血の推定値(ABG)に導くための数学的モデルを適用することによって、静脈血の値を変換し、
ここで、動脈の酸素化の測定値および/または推定値が、対応する静脈の酸素化の値を下回る場合、次に、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて、前記動脈の酸素化の値を推定するための手段
を含むデータ処理システム。
【請求項18】
コンピュータシステムが、そのコンピュータシステムにダウンロードされた場合か、またはアップロードされた場合に、請求項17のシステムの作業を実行することを可能にするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈血の値を動脈血の値に変換するための、コンピュータに実装される方法、血液の値を測定し、静脈血の値を動脈血の値に変換するための、コンピュータに実装される対応するデータ処理システム、およびコンピュータシステムにおいて前記方法を実行するための、対応するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈の血液ガス分析は、主に重篤な/急性疾患の患者における換気および酸素化の妥当性と併せて、酸塩基状態を評価するために、日常的に使用される検査室検査およびポイントオブケア検査である。
【0003】
急性疾患の患者のアセスメントは、その患者の多くの生理的システム、例えば、肺系、代謝系、腎臓系、および循環系の評価を伴う複雑な過程である。この評価のために必要な情報の大半は、患者の血液の分析からのものである。血液サンプルは、動脈および静脈の両方から採取可能である。動脈血は、患者に動脈カテーテルもしくはカニューレを留置すること、または針を用いた動脈穿刺を実施することのいずれかによって、サンプリングが可能である。静脈血は、末梢のカニューレもしくは静脈穿刺(末梢静脈血)、上大静脈に留置されたカテーテル(中心静脈血)、または肺動脈に留置された肺動脈カテーテル(混合静脈血)からのサンプリングが可能である。
【0004】
集中治療室(ICU)に収容されている患者では、留置カテーテルの使用は一般的であり、動脈血の入手を容易にする。他の診療科において、動脈血は、通常、動脈穿刺を介して採取される。動脈穿刺は、静脈サンプリングよりも痛みを伴い不快であり、患者に対する副作用のリスクを伴うことが示されている。臨床スタッフにとって、動脈穿刺は、より複雑であり、使用される採取システムが、針刺し損傷に加えて血液の漏れによる汚染の潜在的リスクを示すように、リスクを伴う。
【0005】
血液から得られ、患者の状態を評価するために使用される測定値の多くは、静脈血と動脈血のサンプルで類似している。これらには、ナトリウム(Na)、カリウム(K)などの電解質、およびヘモグロビン濃度(Hb)、および異常な形態のヘモグロビンの濃度(例えば、カルボキシヘモグロビン(COHb)、メトヘモグロビン(MetHb))が含まれた。
【0006】
しかし、動脈血および静脈血の酸塩基状態は、サンプリングの部位にかかわらず、同じではない。酸塩基状態は、一般的に、血液における以下の測定値を指す:pH、酸素圧(pO2)、二酸化炭素圧(pCO2)、重炭酸塩濃度(HCO3)、基準条件より高い塩基濃度(過剰塩基(BE))、基準pCO2における重炭酸塩濃度(標準重炭酸塩SBC)、酸素圧(pO2)、およびヘモグロビンの酸素飽和度(SO2)、pO2およびSO2は血液の酸素化状態として参照されることが多い。動脈血と静脈血の間の酸塩基状態の差異は、組織における代謝による血液からの酸素除去および二酸化炭素添加によるものである。
【0007】
このため、動脈穿刺の必要性を減じるため、例えば、静脈血の値を動脈血の値に変換するための、国際特許出願第2004/010861号(OBI Medical Aps、Denmarkに対して)に開示されている方法といった数々の新たな取り組みが、数年にわたって行われてきた。他の関連する参考文献は、REES S E:「The Intelligent Ventilator(INVENT)project:The role of mathematical models in translating physiological knowledge into clinical practice」、COMPUTER METHODS AND PROGRAMS IN BIOMEDICINE、第104巻、2011年12月(2011-12)、S1~S29ページ、TOFTEGAARD M:「A mathematical model based method for converting venous values of acid-base and oxygenation status to arterial values」、博士論文、2010年1月1日(2010-01-01)、1~49ページ、および米国特許出願公開第2007/218559Al号(FRANCO WAYNE P[US])2007年9月20日(2007-09-20)であろうか。
【0008】
WO2004/010861の方法は、動脈血サンプルを採取する必要がないといった利点を有し、静脈血サンプルと比較して、動脈血サンプルを採取するときの静脈血サンプルと比較した欠点がその後排除される。この方法は、基本的に3つのステップ、すなわち、例えば、パルスオキシメトリーによって動脈の酸素化を測定する第1のステップ、好ましくは嫌気的サンプリングによって測定し、末梢静脈血(PVBG)または中心静脈血(CVBG)を含む静脈血サンプルの静脈血の酸塩基状態および酸素化状態の値を推定する第2のステップ、血液の酸塩基状態および酸素化状態を、望ましい動脈血の推定値、すなわち、動脈血の酸塩基状態の1つまたは複数の値に導くための数学的モデルを適用することによって、静脈血の値を変換する第3のステップに基づいている。WO2004/010861に概して記載されている方法は、OBI Apsから商品名v-TAC(商標)で現在市販されており、追加の情報は、ウェブページwww.obimedical.comを参照のこと。
【0009】
しかし、静脈血の値を動脈血の値に変換する改良された方法は有利であり、特に、より効率的および/または信頼性の高い方法は有利であろう。
【発明の概要】
【0010】
本発明のさらなる目的は、先行技術の代替を提供することである。
WO2004/010861の方法の何人かの患者に対する臨床的使用の間、何人かの患者および/またはいくつかの状況において、血液ガス値を動脈血化する場合に、この方法では望ましい結果が得られないことが発見された。
【0011】
他の要因のうち、血液ガス分析の間の分析前誤差および/もしくは分析誤差によって、かつ/または例えば、測定値の精度に通常限界があるパルスオキシメトリーを使用して動脈の酸素化を推定する場合、対応する静脈の酸素化の値が、測定された動脈の酸素化よりも実際に高くなる状況が生じる場合があることが、本発明者らによって発見された。
【0012】
同じ状況が、サンプリング前に不十分に機械的に動脈血化されたと思われる毛細血管の血液ガスサンプルを完全に動脈血化するために、v-TAC(商標)を含むVTAC方法を使用する場合に、さらにより頻繁に生じている。機械的に動脈血化された毛細血管サンプルは、定義に従って、動脈の値により近いであろう。このことは、v-TACによる毛細血管血の動脈血化が、データセット40中13(32.5%)で失敗している表-1の臨床例(2)によって明確に実証されている。
【0013】
このため、静脈の血液ガスが使用される場合には肺治療中の患者の約5%、および毛細血管の血液ガスが使用される場合には患者の20~50%で、臨床医が、動脈の値ではなく、代わりにエラーメッセージを受け取ることになるという点で、この問題は重大である。結果として、臨床医は、動脈穿刺または毛細血管サンプリングを実施するなど、測定をやり直さねばならなくなるであろう。この重大な問題は、本分野でこれまでに認識されておらず、そのため、本発明が、以前は知られていなかった問題に対する解決策を打ち立てるであろうことは、強調されるべきである。
【0014】
特に、静脈血の値を動脈血の値に変換するための、コンピュータに実装される方法において、さらに使用するためには低過ぎる動脈の酸素化の測定値を用いて、先行技術に関する上記の以前は知られていなかった問題を解決する、コンピュータに実装される方法を提供することが、したがって、本発明の目的とみなされてもよい。
【0015】
このため、上記の目的および複数の他の目的は、本発明の第1の態様において、静脈血の値を動脈血の値に変換するための、コンピュータに実装される方法であって:
a)動脈の酸素化の測定値および/または推定値を提供するステップと、
b)静脈血から得られた血液サンプル中の血液の酸塩基状態の値を測定するステップおよび/または推定するステップと、
c)血液の酸塩基状態および酸素化状態を、動脈血の推定値に導くための数学的モデルを適用することによって、静脈血の値を変換するステップと、ここで、
d1)動脈の酸素化の測定値および/または推定値が、対応する静脈の酸素化の値を下回る場合、
e)次に、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて、前記動脈の酸素化の値を推定するステップ
を含む方法によって達成されるよう意図されている。
【0016】
本発明は、特に、ただし限定的にではなく、より高い割合の臨床サンプルについての動脈血化された血液ガスおよび酸塩基の値を得ること、および静脈血または毛細血管血がすでに動脈血に近い場合の(設定に応じた)ほぼ全ての状況を解決することが可能となり、臨床使用において、回答が確実に得られるように、静脈血の値を動脈血の値に変換するための、コンピュータに実装される方法を提供する上で有利である。
【0017】
本発明の文脈において、「変換すること」という用語は、広義に、すなわち、-以下に限定されないが-例えば、コンピュータに実装されるデータ処理システムを使用して、ある数字を別の数字に転換すること、または算出することを含むと理解されるものであると、理解されるものである。
【0018】
本発明の文脈において、動脈血および静脈血は、密接に相互に接続されており、動脈血は肺で酸素化され、毛細血管に運ばれ、そこで動脈血の酸素が代謝に使用され、続いて肺に戻されることは、生理学に精通している者によって、理解されるものである。文脈によっては、したがって、動脈血から毛細血管血へ、さらに毛細血管血から静脈血への漸次的な遷移があってもよい。
【0019】
本発明の文脈において、血液の酸塩基状態および酸素化の値を、動脈血の推定値に導くか、または変換するための数学的モデルは、以下の条件(C1、C2、および/またはC3)またはモデル仮定のうちの1つまたは複数に基づいてもよい:
-C1 呼吸商(RQ=VCO/VORQ)は、好ましくは、方程式:
RQ=Fe’CO -FiCO または RQ=FeCO -FiCO
FiO-Fe’O FiO-FeO
を使用して、吸気酸素(FiO)および吸気二酸化炭素(FiCO)濃度ならびに呼気終末酸素(Fe’O)および呼気終末二酸化炭素(Fe’CO)濃度または呼気の酸素(FeO)および二酸化炭素(FeCO)を合わせた濃度のいずれかの測定を介し、口から取り込まれた吸気ガスおよび呼気ガスの測定によって概算されることがある、
-C2 上記の仮定C1によるRQの概算は、大幅に変動し得る値をもたらすことが多い場合がある。しかし、組織におけるRQの真値は、脂質の好気性代謝では0.7、炭水化物の好気性代謝では1.0であり、0.7~1.0の間でのみ変動し得る、
かつ/または
-C3 血液の酸塩基状態および酸素化状態の数学的モデルは、上記の条件C2から生理的に可能な0.7~1.0の範囲内に設定された一定の呼吸商(RQ)によって決定された比率で、Oを添加し、静脈血からCOを除去する、シミュレーションを実施するために使用され得る。次に、このシミュレーションは、シミュレートされた酸素飽和度が、条件C2において推定されたか、または測定された酸素飽和度、すなわち、動脈血における酸素飽和度に等しくなるまで、実施される場合がある。
【0020】
特に、条件C2およびC3は、有利な結果をもたらすことが、本発明者らによってことが発見された。
特定のモデルに関するさらなる詳細については、その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO2004/010861(OBI Medical Aps、Denmarkに対して)、およびこれもその全体が参照により本明細書に組み込まれているComputer methods and programs in biomedicine 81(2006)の18~25ページにある、Reesらによる関連する科学論文「A method for calculation of arterial acid-base and blood gas status from measurements in the peripheral venous blood」も参照するが、特定のモデル、他のモデルまたはその変形のより詳細については、当業者が容易に理解するであろうと思われるとおり、本発明の文脈および原理内に適用されてもよい。
【0021】
本発明の文脈において、血液サンプルから血液の値を提供すること、測定すること、および/または推定することは、患者からの血液サンプルの採取または抜き取りといった特定のステップを必ずしも含まず、このため、測定結果は、血液の測定または抜き取りを行った他の団体(entity)または個人、例えば、看護師から、得られるか、転送されるか、伝達されるかなどである場合があると理解されるものである。
【0022】
本発明の文脈において、本発明の結果を受け取った際は、すなわち、静脈血の値を動脈血の値に変換することによって、得られた動脈血の値は、続いて、臨床医または医学的に訓練された者によって、判定過程で使用される場合があると理解されるものである。判定過程は、例えば、コンピュータに実装される判定支援システム(DSS)の一部として、自動化されている場合があることが見込まれる。このため、特定の環境の下にある特定の患者における動脈血の値が、生理的に許容されるレベルまたは正常レベルを外れている場合、次の臨床行為または治療が開始されるか、または推奨される。例えば、酸素化についての動脈血の値が低過ぎる場合、例えば、低酸素血は、貧血、COPD、喘息、もしくは心疾患などの呼吸および/または循環に関連する疾患または疾病の徴候である場合がある。
【0023】
一実施形態において、動脈の酸素化の測定値は、パルスオキシメトリー(Sp02)または動脈の酸素化を非侵襲的または侵襲的に測定するための他の手段によって提供される場合がある。
【0024】
一実施形態において、条件d1)が満たされる場合、次に、その方法は追加の条件
d2)実施される臨床検査において有用であることが認められているe)を開始するための追加の必要条件として、さらに、前記動脈の酸素化の測定値および/または推定値と前記対応する静脈の酸素化の値の間の数的差異が、所定の閾値(K)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10パーセントを下回る場合、を含むことがある。さらに、条件d2)において、前記所定の閾値(K)は、a)で動脈の酸素化の値を提供するために使用された測定装置、例えば、パルスオキシメトリーの測定の不確かさ、および/またはb)で静脈血サンプル中の血液の酸塩基状態の値を提供するために使用された測定装置、例えば、血液ガス分析装置の測定の不確かさ次第であってよい。
【0025】
有益には、前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記関数は、動脈の血液ガスおよび酸塩基状態のモデルを含む場合があり、動脈の酸素化の値を予測するために調整される。
【0026】
有利には、前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記代替値は、実施形態として、前記静脈の酸素化の値と等しい場合がある。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記代替値は、例えば、血液ガスの測定手段もしくは装置による静脈の血液ガスおよび酸塩基状態の測定ならびに/または推定における、1つもしくは複数の分析前誤差および/もしくは分析誤差、ならびに/または例えば、パルスオキシメトリーによって測定された動脈の酸素化および/もしくは推定された動脈の酸素化を補完するために適応している場合がある。
【0028】
他の実施形態では、前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記代替値は、代謝が推定されることがある場合、動脈の血液ガスおよび酸塩基状態(ABG)と静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)の間の対応する差異をもたらす、予測される最小酸素代謝を補完するために適応している場合がある。
【0029】
有益な実施形態では、前記動脈の酸素化の値を、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて推定するe)の過程において、前記関数は、生理学的モデル、特に、VTACの一部を構成しているモデルおよび/またはVTACと連携しているモデルなど、動脈の血液ガスおよび酸塩基状態のモデルを含む場合があり、測定された静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)ならびに/または推定された静脈の血液ガスおよび酸塩基状態を用いて、動脈の酸素化の値を予測するために調整される。さらに、前記測定された静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)は、静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)の測定における、1つまたは複数の分析誤差を補完するためにさらに補正される場合がある。さらにまたはあるいは、前記測定された静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)は、より良い結果を得るための、動脈の血液ガスおよび酸塩基状態(ABG)と静脈の血液ガスおよび酸塩基状態(VBG)の間の対応する差異をもたらす、予測される最小酸素代謝を補完するためにさらに補正される場合がある。
【0030】
有利な実施形態では、血液の酸塩基状態および酸素化状態を、動脈血の推定値(ABG)に導くための数学的モデルを適用することによって、静脈血の値を変換するc)の過程は、静脈血の測定値(VBG)に関して、より良い結果を得るためのモデル化の目的のために、酸素が除去され、かつ/または二酸化炭素が添加されるという点で変更される場合がある。特に、生理学的に可能な値の範囲に限定されるモデル化の目的のために、酸素が除去される場合があり、かつ/または二酸化炭素が添加される場合がある。加えて、前記動脈血の推定値は、生理学的に可能な値の前記範囲内で算出される場合がある。
【0031】
いくつかの実施形態では、d2)の条件において、前記所定の閾値(K)は、本発明の一般的な教示が理解されれば、当業者が認めるであろうとおりの生理学に基づいた安全域次第であってよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記数学的モデルは、組織における呼吸商(RQ)の真値が、脂質の好気性代謝では0.7、炭水化物の好気性代謝では1.0であり、0.7~1.0の間でのみ変動し得ることを適用することがある。さらにまたはあるいは、他の実施形態では、前記数学的モデルは、生理的に可能な0.7~1.0の範囲内に設定された一定の呼吸商(RQ)によって決定された比率で、酸素O2を添加し、静脈血から二酸化炭素CO2を除去して、シミュレートされた酸素飽和度が、動脈血中で推定されたか、または測定された酸素飽和度に等しくなるか、または実質的に等しくなるまで、シミュレーションを実施することを適用することがある。
【0033】
【表1】
【0034】
このため、概して、下付き文字「A」は動脈を意味し、下付き文字「V」は静脈を意味し、下付き文字「M」は測定されたを意味し、下付き文字「E」は推定されたを意味し、下付き文字「P」は断定されたを意味するなどである。図および/または説明のうちのいくつかにおいて、「SO2V」など、下付き文字が、実用的な理由から下付き文字として記載されていない場合があるが、専門的な意味が何であるかは、当業者によって理解されるであろう。
【0035】
第2の態様において、本発明は、静脈血の値を動脈血の値に変換するための、好ましくはコンピュータに実装されるデータ処理システムであって、
- 動脈の酸素化の測定値および/または推定値を提供するための手段、
- 静脈血から得られた血液サンプル中の血液の酸塩基状態の値を測定するための手段および/または推定するための手段、ならびに
- 血液の酸塩基状態および酸素化状態を、動脈血の推定値に導くための数学的モデルを適用することによって、静脈血の値を変換し、
ここで、動脈の酸素化の測定値および/または推定値が、対応する静脈の酸素化の値を下回る場合、次に、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて、前記動脈の酸素化の値を推定するための手段
を含むデータ処理システムに関する。
【0036】
第3の態様において、本発明は、それに関連したデータ記憶手段を有する、少なくとも1台のコンピュータを含むコンピュータシステムが、本発明の第2の態様に記載のシステムを制御することを可能にするために適応している、コンピュータプログラム製品に関する。
【0037】
本発明のこの態様は、特に、ただし限定的にではなく、コンピュータシステムが、そのコンピュータシステムにダウンロードされた場合か、またはアップロードされた場合に、本発明の第2の態様のシステムの作業を実行することを可能にするコンピュータプログラム製品によって、本発明が成し遂げられる場合があるという点で有利である。このようなコンピュータプログラム製品は、任意の種類のコンピュータ読み取り可能媒体で、またはネットワークを介して提供される場合がある。
【0038】
本発明の個々の態様は、他の態様のいずれかと各々組み合わせてもよい。本発明のこれらの態様および他の態様は、説明されている実施形態を参照すると共に、以下の説明から明白であると思われる。
【0039】
本発明に記載の方法は、添付の図に関して、以下でより詳細に説明されるであろう。これらの図は、本発明を実行する1つの方法を示し、添付の請求項のセットの範囲内に含まれる他の実施可能な実施形態に限定されるとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】対象における血流の図式的概観を示す図である。
図2】3つの状況における酸素解離曲線(ODC)のグラフを示す図である。
図3】3つの状況における酸素解離曲線(ODC)のグラフを示す図である。
図4】3つの状況における酸素解離曲線(ODC)のグラフを示す図である。
図5】本発明に記載のコンピュータに実装される方法の作業の概要/詳細を表す図式的システムチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、対象または患者における血流の図式的概観であり、WO2004/010861(OBI Medical Aps、Denmarkに対して)に開示されているように、vTAC(商標)方法を使用して、嫌気的にサンプリングされた静脈血サンプルから、動脈血の酸塩基状態の値の予測を実施するための、コンピュータに実装される方法を図式的に示している。
【0042】
動脈の血液ガス値は、例として、以下の4つのステップに示されるとおり推定されるか、または予測される。
ステップ1:嫌気的静脈血サンプルを抜き取り、標準的な血液ガス分析技術を使用して分析し、静脈血の酸塩基状態の全体像を得る(SBC、pH、pCO2v、BE、pO2v、およびSO2v)。
【0043】
ステップ2:動脈の酸素飽和度を、恐らくパルスオキシメトリーによって、非侵襲的に推定するか、または測定する。
ステップ3:動脈から静脈へと組織を通過している血液サンプルにおいて、好気性代謝によって添加されたCO2(すなわち、CO2産生(VCO2)の割合)および除去されたO2(すなわち、O2利用(VO2)の割合)の量の比率を、呼吸商(RQ=VCO/VO)と定義する。RQは、方程式:
RQ=Fe’CO -FiCO または RQ=FeCO -FiCO
FiO-Fe’O FiO-FeO
を使用して、吸気酸素(FiO)および吸気二酸化炭素(FiCO)濃度ならびに呼気終末酸素(Fe’O)および呼気終末二酸化炭素(Fe’CO)濃度または呼気の酸素(FeO)および二酸化炭素(FeCO)を合わせた濃度のいずれかの測定を介し、口から取り込まれた吸気ガスおよび呼気ガスの測定によって概算されることが多い。
【0044】
この方法によるRQの概算は、大幅に変動し得る値をもたらすことが多い。しかし、組織におけるRQの真値は、脂質の好気性代謝では0.7、炭水化物の好気性代謝では1.0であり、0.7~1.0の間でのみ変動し得る。このステップにおいて、血液の酸塩基状態および酸素化状態の数学的モデルは、生理的に可能な0.7~1.0の範囲内に設定された一定の呼吸商によって決定された比率で、Oを添加し、静脈血からCOを除去する、シミュレーションを実施するために使用される。このシミュレーションは、シミュレートされた酸素飽和度が、ステップ2において推定されたか、または測定された酸素飽和度、すなわち、動脈血における酸素飽和度に等しくなるまで、実施される。
【0045】
ステップ4:次に、血液の酸塩基状態および酸素化状態のモデルを使用して、動脈血の酸塩基状態および酸素化状態の全体像を算出する(SBCap、pHap、pCO2ap、BEap、pO2ap、およびSO2ap)。これは、固定したRQにおける静脈血からのCO2およびO2のシミュレートされた除去によって、シミュレートされた動脈の酸素化が、測定された動脈の酸素化と一致する場合、動脈の酸塩基の他の変数のシミュレートされた値も、測定された値と確実に一致するはずであるため、可能である。
【0046】
静脈の動脈への変換方法を試験する目的のため、この方法から得られた動脈の酸塩基状態の予測値(SBCap、pHap、pCO2ap、BEap、pO2ap、およびSO2ap)を、測定されたそれらの値(SBC、pH、pCO2a、BE、pO2a、およびSO2a)と比較することができる。
【0047】
この方法に含まれる基本的仮定は、静脈血サンプルが採取された組織全体にわたって、嫌気性代謝がほとんど生じないか、または全く生じないことである。嫌気性代謝が生じている場合、これは次の2つの影響を及ぼす結果になると考えられ、動脈血と静脈血における塩基過剰が異なり、この過程によって産生された強酸(H)が、以下の可逆反応で、血液中の重炭酸塩(HCO3)と結合してCOを形成するであろう。
+HCO3←→CO+H
この反応によるCO産生の増加は、VOの増加を伴わずに、見かけのVCOが増加することを意味するであろうし、これは、一定のRQを使用した静脈の値から動脈の値への変換が正確ではないであろうことを意味する。嫌気性代謝の程度は、患者の循環状態および代謝状態次第である。
【0048】
正常に十分灌流されている末梢の四肢では、嫌気性代謝が生じる可能性は低い。四肢の潅流の質は、触診により判定される明確に識別可能な動脈拍動の存在、正常な毛細血管の反応、ならびに四肢の正常な色および温度によって、臨床的に評価され得る。中心静脈血または混合静脈血は、複数の部位から得た血液の混合物であり、このため、嫌気性代謝を伴う身体の領域から得た血液を含む場合がある。そのため、サンプル部位の選択は重要である。
【0049】
その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO2004/010861(OBI Medical Aps、Denmarkに対して)、およびこれもその全体が参照により本明細書に組み込まれているComputer methods and programs in biomedicine 81(2006)の18~25ページにある、Reesらによる関連する科学論文「A method for calculation of arterial acid-base and blood gas status from measurements in the peripheral venous blood」も参照する。
【0050】
図2~4は、3つの状況における酸素解離曲線(ODC)のグラフを示す。
血液ガス値を動脈血化するためにVTACを使用する場合、前記方法は、SO2AEの入力を必要とする場合がある。酸素が、組織の通過中に血液に添加される可能性がないため、一対のサンプルにおける静脈または毛細血管のSO2は、定義に従って、対応する動脈のSO2より高い可能性はない。図2~4は、図2、3、および4にそれぞれ表示された3つ(3)のVBGサンプルとABGを記録した1つ(1)のABG(しかし、3つ全てのグラフに表示される)を合わせた対のODCの曲線を示す。
【0051】
図2は、静脈血または毛細血管血と動脈血の酸素飽和度の間に大きな差異がある例を示す。
図3は、静脈血または毛細血管血と動脈血の酸素飽和度の間に、極わずかな差異がある例または差異がない例を示す。
【0052】
図4は、動脈血が静脈血/毛細血管血よりも飽和されていない(これは、物理的に妥当とは言えず、測定誤差または公差の結果である)例を示す。
しかし、現実世界の設定において、さらに血液ガス分析の分析前誤差および分析誤差のため、ならびに/または、例えば、測定の精度が通常±4%(2xSD)以内であるパルスオキシメトリーを使用して、SO2AEを推定する場合、図4におけるような状況が生じ、SO2VMがSO2AEより高くなるであろう。同じ状況は、不完全に機械的に動脈血化された毛細血管血サンプルを動脈血化するため、VTAC方法を使用する場合に、さらにより頻繁に生じるであろう。
【0053】
SO2AEが血液ガス測定から得た酸素飽和度SO2VMを下回る、このような場合、既知の機序を使用するVTACでは、血液ガス値を動脈血化することができず、このため、臨床医は回答を得られず、動脈または毛細血管の通常の血液ガス測定などの代替方法を使用して、測定をやり直す必要があるであろう。
【0054】
本発明に記載のこの方法は、この問題を解決し、データが臨床的に関連する結果をもたらす状況で、臨床医が回答を確実に得られるようにする。
静脈血または毛細血管血の動脈血化のために、v-TAC(商標)方法を使用して臨床試験からのデータおよび顧客からの顧客データを検討した場合、この問題の大きさが明らかになる。
【0055】
【表2】
【0056】
上記の表1からのデータに基づいて、臨床医が、動脈の値ではなく、代わりにエラーメッセージを受け取ることになるという点で、肺治療使用中の患者の最大10%および毛細血管の血液ガスが使用される場合には20~50%の間の患者が影響を受けるであろうことが推定される。
【0057】
本発明を使用する利点
この方法を用いた、特定のv-TAC(商標)ソフトウェアなどのVTACの解決策によって、より高い割合の臨床サンプルについての動脈血化された血液ガスおよび酸塩基の値を得ること、および静脈血または毛細血管血がすでに動脈血に近い場合の(設定に応じた)ほぼ全ての状況を解決することが可能となり、回答が確実に得られるであろう。規定が次の場合(例としてのみ、SO2VMとSO2AEの間の最大許容可能差異として、4%のカットオフ値を使用し、このSO2AEはパルスオキシメトリーを使用して推定される)、以下に示されるとおり、上記の項で言及されている患者群における回答率(yield)が高まるであろう:
SO2VM≧SO2AEの場合であって、
1)SO2VM-SpO2>4%の場合->結果を示さない
2)SO2VM-SpO2≦4%の場合->動脈血化のためにSO2VMをSO2AEとして使用
【0058】
【表3】
【0059】
上記の表2に表示された様々な結果の分析は、記載された設定を用いた方法によって、前記数理的動脈血化の回答率が著しく高まるであろうことを示している。患者395名中、動脈血化が成功しないのは、前記方法を用いない場合では患者29名であるが、本発明に記載の方法を用いた場合では患者2名のみである。表2は、様々な患者群の5つの異なる臨床試験からの結果を示していることに留意すること。
【0060】
SO2AEがSO2VMより大幅に低いことは、公差のためである可能性が低いものの、分析前誤差または分析誤差のためである可能性はより高く、その場合、これらは破棄されるであろう(測定されたSpO2が、SO2VMを4%より下回るため、2つのサンプルが処理されていない肺治療の(3)の実施例を参照)。
【0061】
図5は、本発明に記載の方法の作業の概要/詳細を表す図式的システムチャートである。
一実施形態に記載の本発明は、SpO2の許容基準を、「SpO2>SO2V」から「SpO2>SO2V-K」に変えることによって(Kは4(4)%に設定された変更可能な一定のデフォルト値である)、実行され得る。
【0062】
4(4%)がこの実施形態で選択されたのは、前記問題を解決すると考えられ、また4%は、パルスオキシメトリーにおいて通常適用される2xSDであり、このため、SpO2測定における差異を補完するために有用であるからである。
【0063】
上記基準に従って、SO2より低い状況では、VBGまたはCBG(またはサンプルが動脈血の場合、ABG)測定から得たSpO2が、SpO2レベルとしてv-TACTによって使用されるであろう。
【0064】
ほとんどの場合、これは、VBG/CBG/ABG測定値が、v-TACによって報告される値に直接変換されるが、v-TACソフトウェアを介してこの値を得ることによって、DPGの許容範囲などの信憑性チェックが実施され、pO2レベルは10kPaで切られるであろうことを意味するであろう。
【0065】
SpO2がSO2Vよりわずかに低いといった分類に該当する全ての測定値は:
通知:SpO2がSO2Vをx%下回る;変換のためSO2VをSpO2として使用
式中、x=SpO2-SO2V
といった通知と共に報告されるであろう。
【0066】
SpO2がSO2Vより4%を超えて低い全ての測定値は:といったエラーメッセージの引き金となるであろう。
エラー:SpO2がSO2Vをx%下回る;変換不可
式中、x=SpO2-SO2V
リスク
この新規の許容基準によって発生する潜在的リスクは、一定期間にわたり集中的に検討されてきたが、以下のことによる変更の結果として認められる重大なリスクはなかった:
- SpO2の許容範囲が75~100%に留まる(図5の定数C)。
- SpO2がパルスオキシメーターによって推定されたものよりわずかに低い場合、または操作者によって間違って入力された場合、変換のために使用される値はこのSO2である。
- SpO2がパルスオキシメトリーによって推定されたものより著しく低い場合、または操作者によって間違って入力された場合、v-TACはエラーメッセージを報告する。
【0067】
要約すると、本発明は、静脈血サンプルにおける血液の酸塩基状態の測定値、例えば、VBG、VBGに基づいて、動脈の酸素化の測定値および/または推定値、例えば、SO2AM、SO2AE、SpO2を提供するための方法に関する。静脈血の値の変換は、血液の酸塩基状態および酸素化状態を、動脈血の推定値または予測値、例えば、ABGに導くための数学的モデルを適用することによって行われる。さらに、動脈の酸素化の測定値および/または推定値が、対応する静脈の酸素化の値を下回る場合、次に、動脈の酸素化の値の推定は、対応する静脈の酸素化の値の関数である代替値を用いて行われる。この利点は、静脈血の値を動脈血の値に変換することが、以前は不可能であったより高い割合の臨床サンプルについての動脈血化された血液ガスおよび酸塩基の値を得ることによって可能となるであろうという点である。
【0068】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの任意の組合せによって実装可能である。本発明またはその特徴のいくつかは、1つまたは複数のデータ処理装置および/またはデジタル信号処理装置を稼働する、すなわち1台または複数のコンピュータでデータを処理するソフトウェアとして実装されることも可能である。
【0069】
本発明の実施形態における個々の要素は、単一のユニット、複数のユニット、または個別の機能ユニットの一部としてなどの任意の適当な方法で、物理的、機能的、かつ論理的に実行され得る。本発明は、単一のユニットで実行されるか、または異なるユニットと処理装置に物理的かつ機能的に分配され得る。
【0070】
本発明は、特定の実施形態に関連して説明されているが、提示された実施例に何らかの形で限定されると解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の請求項のセットを考慮して解釈されるべきである。特許請求の範囲の文脈において、「含んでいる」または「含む」という用語は、他の可能性のある要素またはステップを除外しない。同様に、「a」または「an」などの指示の言及は、複数を除外していると解釈されるべきではない。図に示された要素に関して、特許請求の範囲における参照符号の使用も、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。このため、以下の特許請求の範囲において、いくつかの参照符号、例えば:
- 動脈の酸素化の測定値および/もしくは推定値としてのSO2AM、SO2AE、および/もしくはSpO2
- 静脈血サンプルにおける血液の酸塩基状態の測定値および/もしくは推定値としてのVBG、VBG、ならびに/または
- 動脈血の推定値としてのABG
は括弧内に記載されており、この分野の当業者は、これらの測定値および/または推定値の特定の略記が、本発明の文脈および原理内のいくつかの特定の値(そのうちのいくつかは、図にも示されている)を例示しているに過ぎないが、他の特定の値は、代替または追加として適用され、本発明によって達成される技術的な目標および目的のために使用され得ることを容易に理解するであろう。
【0071】
さらに、異なる請求項で言及されている個々の特徴は、有利に組み合わせられる可能性があろうが、異なる請求項でこれらの特徴を言及することは、特徴の組合せが可能ではなく、有利ではないことを除外するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5