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特許7112506設計支援装置、設計支援方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/398 20200101AFI20220727BHJP
【FI】
G06F30/398
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020551677
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2018038851
(87)【国際公開番号】W WO2020079810
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390015587
【氏名又は名称】株式会社図研
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松沢 浩彦
(72)【発明者】
【氏名】生田 勝義
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 清久
(72)【発明者】
【氏名】古田 榮一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光浩
【審査官】田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-39365(JP,A)
【文献】特開2013-175016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路素子が配置された基板の設計データに対してデザインルールチェックを行う設計支援装置であって、
幾何学的な計算によって前記設計データに対してデザインルールチェックを行う第1DRC部と、
前記第1DRC部によってエラーであると判定された部分がセンタリングされた画像データを前記設計データから生成する生成部と、
ディープラーニングを経た人工知能によって前記画像データに対してデザインルールチェックを行う第2DRC部と、
前記第2DRC部によるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記エラーの対象となったオブジェクト以外のオブジェクトを含まないように前記画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記第2DRC部は、前記第1DRC部によるエラーの判定結果が妥当である可能性を示す第2情報を生成し、
前記表示制御部は、前記第1情報とともに前記可能性を示す第2情報を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、複数のエラー情報を含むリストを前記表示部に表示させ、各エラー情報は、前記エラーであると判定された部分を特定する特定情報、前記特定情報に対応する前記第1情報、および、前記特定情報に対応する前記第2情報を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記リストからユーザによって選択されたエラー情報を除外するエラー編集部を更に備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記複数のエラー情報を前記第2情報に基づいてグループ分けし、グループごとに前記複数のエラー情報を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の設計支援装置。
【請求項7】
前記リストからユーザによって選択されたグループに属するエラー情報を除外するエラー編集部を更に備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の設計支援装置。
【請求項8】
前記画像データを加工した加工画像データを生成し、前記加工画像データによって示される構成が前記第2DRC部によるデザインルールチェックによってエラーであると判定されるべきかどうかを示す教師情報とともに前記加工画像データを学習データとして前記第2DRC部に提供するティーチング部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項9】
前記ティーチング部は、前記画像データを回転させることによって前記加工画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の設計支援装置。
【請求項10】
前記ティーチング部は、前記画像データの特徴を示すパラメータ値を変更することによって前記加工画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の設計支援装置。
【請求項11】
前記ティーチング部は、ユーザからの指示に従って前記パラメータ値を変更する、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援装置。
【請求項12】
ユーザからの指示に従って、設定された編集ルールによる制約の下で、前記基板を編集する基板編集部を更に備え、
前記ティーチング部は、前記制約の下で、前記パラメータ値を変更する、
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の設計支援装置。
【請求項13】
前記編集ルールは、グリッド、配線方向、配線の太さ、および、端子の形状、の少なくとも1つを規定するルールを含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の設計支援装置。
【請求項14】
回路素子が配置された基板の設計データに対してデザインルールチェックを行う設計支援装置であって、
幾何学的な計算によって前記設計データに対してデザインルールチェックを行う第1DRC部と、
前記第1DRC部によってエラーであると判定された部分を含む画像データを前記設計データから生成する生成部と、
ディープラーニングを経た人工知能によって前記画像データに対してデザインルールチェックを行う第2DRC部と、
前記第2DRC部によるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部に表示させる表示制御部と、を備え、
前記生成部は、前記エラーの対象となったオブジェクト以外のオブジェクトを含まないように前記画像データを生成する、
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項15】
前記生成部は、前記部分がセンタリングされるように前記画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項14に記載の設計支援装置。
【請求項16】
回路素子が配置された基板の設計データに対してデザインルールチェックを行うようにコンピュータによって実行される設計支援方法であって、
幾何学的な計算によって前記設計データに対してデザインルールチェックを行う第1DRC工程と、
前記第1DRC工程でエラーであると判定された部分がセンタリングされた画像データを前記設計データから生成する生成工程と、
ディープラーニングを経た人工知能によって前記画像データに対してデザインルールチェックを行う第2DRC工程と、
前記第2DRC工程におけるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部に表示させる表示制御工程と、
を含むことを特徴とする設計支援方法。
【請求項17】
回路素子が配置された基板の設計データに対してデザインルールチェックを行うようにコンピュータによって実行される設計支援方法であって、
幾何学的な計算によって前記設計データに対してデザインルールチェックを行う第1DRC工程と、
前記第1DRC工程でエラーであると判定された部分を含む画像データを前記設計データから生成する生成工程と、
ディープラーニングを経た人工知能によって前記画像データに対してデザインルールチェックを行う第2DRC工程と、
前記第2DRC工程におけるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部に表示させる表示制御工程と、含み、
前記生成工程では、前記エラーの対象となったオブジェクト以外のオブジェクトを含まないように前記画像データを生成する、
ことを特徴とする設計支援方法。
【請求項18】
コンピュータに請求項16又は17に記載の設計支援方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項19】
コンピュータに請求項16又は17に記載の設計支援方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納したコンピュータ可読メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置、設計支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路素子が配置されたプリント回路基板等の基板は、CAD(Computer Aided Design)装置を用いて設計されうる。CAD装置は、典型的にはデザインルールチェック(DRC;Design Rule Check)機能を有し、このデザインルールチェック機能によって、設計された基板がデザインルールを満たしているかどうかがチェックされる。しかし、デザインルールチェック機能は、許容可能な部分についてもエラーとして判定を行うことがある。このようなエラーは、疑似エラーと呼ばれる。DRC機能によって判定されたエラーが疑似エラーであるかどうか、即ち無視してもよいエラーであるかどうかは、設計者が個別に判断する必要がある。
【0003】
特許文献1には、疑似エラーデータをライブラリーサーバーに登録する機能を有する疑似エラー登録方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-179227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DRC機能によって提供されるエラーの個数は、例えば、数百あるいは数千といった膨大な個数となりうる。このような膨大な個数のエラーのそれぞれが疑似エラーであるかどうかを設計者が個別に判断する作業は、設計者にとって非常に煩わしい。また、この煩わしい作業の中で、本来は修正すべき真のエラーを疑似エラーであると誤って判断することによって、真のエラーを見逃してしまうという危険性がある。
【0006】
本発明は、デザインルールチェックによって判定されたエラーが真のエラーであるかどうかを確認する作業を効率化するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面は、回路素子が配置された基板の設計データに対してデザインルールチェックを行う設計支援装置に係り、前記設計支援装置は、幾何学的な計算によって前記設計データに対してデザインルールチェックを行う第1DRC部と、前記第1DRC部によってエラーであると判定された部分がセンタリングされた画像データを前記設計データから生成する生成部と、ディープラーニングを経た人工知能によって前記画像データに対してデザインルールチェックを行う第2DRC部と、前記第2DRC部によるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【0008】
本発明の第2の側面は、回路素子が配置された基板の設計データに対してデザインルールチェックを行う設計支援装置に係り、前記設計支援装置は、幾何学的な計算によって前記設計データに対してデザインルールチェックを行う第1DRC部と、前記第1DRC部によってエラーであると判定された部分を含む画像データを前記設計データから生成する生成部と、ディープラーニングを経た人工知能によって前記画像データに対してデザインルールチェックを行う第2DRC部と、前記第2DRC部によるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部に表示させる表示制御部と、を備え、前記生成部は、前記エラーの対象となったオブジェクト以外のオブジェクトを含まないように前記画像データを生成する。
【0009】
本発明の第3の側面は、回路素子が配置された基板の設計データに対してデザインルールチェックを行うようにコンピュータによって実行される設計支援方法に係り、前記設計支援方法は、幾何学的な計算によって前記設計データに対してデザインルールチェックを行う第1DRC工程と、前記第1DRC工程でエラーであると判定された部分がセンタリングされた画像データを前記設計データから生成する生成工程と、ディープラーニングを経た人工知能によって前記画像データに対してデザインルールチェックを行う第2DRC工程と、前記第2DRC工程におけるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部に表示させる表示制御工程と、を含む。
【0010】
本発明の第4の側面は、回路素子が配置された基板の設計データに対してデザインルールチェックを行うようにコンピュータによって実行される設計支援方法に係り、前記設計支援方法は、幾何学的な計算によって前記設計データに対してデザインルールチェックを行う第1DRC工程と、前記第1DRC工程でエラーであると判定された部分を含む画像データを前記設計データから生成する生成工程と、ディープラーニングを経た人工知能によって前記画像データに対してデザインルールチェックを行う第2DRC工程と、前記第2DRC工程におけるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部に表示させる表示制御工程と、含み、前記生成工程では、前記エラーの対象となったオブジェクト以外のオブジェクトを含まないように前記画像データを生成する。
【0011】
本発明の第5の側面は、コンピュータに前記第3の側面又は前記第4の側面に係る設計支援方法を実行させるためのコンピュータプログラムを対象とする。
【0012】
本発明の第6の側面は、コンピュータに前記第3の側面又は前記第4の側面に係る設計支援方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納したコンピュータ可読メモリを対象とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、デザインルールチェックによって判定されたエラーが真のエラーであるかどうかを確認する作業を効率化するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好適な実施形態の設計支援装置の構成を示す図。
図2】本発明の好適な実施形態の設計支援装置の動作(設計支援方法)を示す図。
図3】生成部による画像データの生成する方法を例示する図。
図4】生成部による画像データの生成する方法を例示する図。
図5】表示制御部が表示部の表示画面(表示スクリーン)に表示させる情報の一例を示す図。
図6】表示制御部が表示部の表示画面(表示スクリーン)に表示させる情報の他の例を示す図。
図7】ティーチング部によって学習データを生成する処理を制御するためのユーザインターフェースの一例を示す図。
図8】ティーチング部によって学習データを生成する処理を制御するためのユーザインターフェースの他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明をその好適な実施形態を通して説明する。
【0016】
図1には、本発明の好適な実施形態の設計支援装置1の構成が示されている。設計支援装置1は、回路素子が配置された基板(例えば、プリント回路基板)の設計データに対してデザインルールチェック(DRC)を行うDRC機能を有する。設計支援装置1は、回路素子が配置された基板を編集する基板編集機能を有しうる。設計支援装置1は、例えば、メモリ101、CPU102、表示部103および入力部104を備えるコンピュータ100によって構成されうる。
【0017】
メモリ101は、1又は複数のメモリデバイスで構成されうる。該複数のメモリデバイスは、1種類のメモリデバイスで構成されてもよいし、複数種類のメモリデバイスで構成されてもよい。メモリ101には、設計支援プログラム110が格納されうる。設計支援プログラム110は、コンピュータによって読み込まれ、コンピュータによって実行される形式で記述されたコンピュータプログラムである。設計支援プログラム110を格納したメモリ101は、コンピュータ可読メモリの一例である。設計支援プログラム110は、コンピュータ100から分離可能なメモリに格納されてもよい。設計支援プログラム110は、通信回線を介してコンピュータ100に提供され、メモリ101に格納されてもよい。
【0018】
設計支援プログラム110は、例えば、第1DRC部111、生成部112、第2DRC部113、表示制御部114、エラー編集部115、ティーチング部116および基板編集部117をそれぞれ構成するサブプログラムを含みうる。設計支援装置1は、第1DRC部111、生成部112、第2DRC部113、表示制御部114、エラー編集部115、ティーチング部116および基板編集部117を備える装置として理解されうる。一例において、エラー編集部115、ティーチング部116および基板編集部117は、任意的な構成要素である。メモリ101は、第1DRC部111および第2DRC部113から提供されるエラーデータ120、および、基板編集部117から提供される設計データ130を格納しうる。
【0019】
設計支援プログラム110によって実行される動作は、設計支援方法として理解され、該設計支援方法は、例えば、第1DRC部111、生成部112、第2DRC部113および表示制御部114にそれぞれ対応する第1DRC工程、生成工程、第2DRC工程および表示制御工程を含みうる。あるいは、該設計支援方法は、第1DRC部111、生成部112、第2DRC部113、表示制御部114、エラー編集部115、ティーチング部116および基板編集部117にそれぞれ対応する第1DRC工程、生成工程、第2DRC工程、表示制御工程、エラー編集工程、ティーチング工程および基板編集工程を含みうる。
【0020】
CPU102は、設計支援プログラム110に従って動作し、コンピュータ100を設計支援装置1として動作させる。表示部103は、設計支援プログラム110の実行によって生成される設計データ130を視覚化したデータを表示(ユーザ(設計者)に提供)するユーザインターフェースを構成する。入力部104は、ユーザ(設計者)からの指示を取り込むユーザインターフェースを構成する。入力部104は、例えば、キーボードおよびポインティングデバイス(例えば、マウス)を含みうる。
【0021】
第1DRC部111は、幾何学的な計算によって基板の設計データ130に対してデザインルールチェック(DRC)を行う。幾何学的な計算は、例えば、2つのオブジェクト(例えば、ラインと端子、または、ラインとライン)間の距離の計算、オブジェクトの寸法(例えば、太さ、長さ)の計算等を含みうる。生成部112は、例えば、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分がセンタリングされた画像データを設計データ130から生成しうる。あるいは、生成部112は、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分を含む画像データを設計データ130から生成しうる。
【0022】
第2DRC部113は、ディープラーニングを経た人工知能によって、生成部112によって生成された画像データに対してデザインルールチェックを行って、そのデザインルールチェックの結果を示す第1情報を出力しうる。表示制御部114は、第2DRC部113によるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部103(の表示画面)に表示させうる。
【0023】
エラー編集部115は、複数のエラー情報を含むリストから設計者(ユーザ)によって選択されたエラー情報を除外しうる。ティーチング部116は、生成部112が生成した画像データを加工した加工画像データを生成しうる。そして、ティーチング部116は、該加工画像データによって示される構成が第2DRC部113によるデザインルールチェックによってエラーであると判定されるべきかどうかを示す教師情報と該加工画像データとを、学習データとして、第2DRC部113に提供しうる。基板編集部117は、入力部104を操作するユーザ(設計者)からの指示にしたがって基板の設計データを編集しうる。
【0024】
図2には、設計支援装置1の動作(設計支援方法)が例示的に示されている。第1DRC部111は、基板の設計データ130を取り込んで、幾何学的な計算によって設計データ130に対してデザインルールチェックを行って、そのデザインルールチェックの結果を第1DRCデータ202として出力しうる。第1DRCデータ202は、例えば、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分の位置を示す情報を含みうる。第1DRCデータ202は、エラーデータ120の一部を構成しうる。
【0025】
生成部112は、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分を含む画像データを設計データ130から生成しうる。一例において、生成部112は、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分がセンタリングされた画像データを設計データ130から生成しうる。第2DRC部113は、ディープラーニングを経た人工知能によって、生成部112によって生成された画像データ203に対してデザインルールチェックを行って、そのデザインルールチェックの結果を示す第1情報を含む第2DRCデータ204を出力しうる。第2DRC部113は、第1情報に加えて、第1DRC部111によるエラーの判定結果が妥当である可能性を示す第2情報を出力してもよく、この場合、第2DRCデータ204は、第1情報および第2情報を含みうる。
【0026】
表示制御部114は、エラーデータ120を表示部103に表示させる。ここで、表示制御部114は、エラーデータ120をスクロール可能に表示部103に表示させうる。表示制御部114は、例えば、複数のエラー情報を含むリストの形式でエラーデータ120を表示部103に表示させうる。各エラー情報は、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分を特定する特定情報を含みうる。あるいは、各エラー情報は、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分を特定する特定情報、および、第2DRC部113によるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を含みうる。あるいは、各エラー情報は、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分を特定する特定情報、第2DRC部113によるデザインルールチェックの結果を示す第1情報を表示部103、および、第1DRC部111によるエラーの判定結果が妥当である可能性を示す第2情報を含みうる。
【0027】
エラー編集部115は、複数のエラー情報を含むリストからユーザ(設計者)によって選択されたエラー情報を除外しうる。ここで、リストから除外されるエラー情報は、ユーザ(設計者)によって疑似エラーであると判定されたエラー情報であろう。
【0028】
図3および図4には、生成部112による画像データ203の生成方法が例示されている。ここでは、端子(パッド)311とそれに接続された配線パターン312との間隔が第1DRC部111によって実行されるデザインルールチェックにおいて、ザインルールによって規定された最小間隔を満たさない例に基づいて画像データ203の生成方法を例示的に説明する。まず、工程S31において、生成部112は、設計データ130から、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分(端子311とそれに接続された配線パターン312との間のエラー箇所を含む部分)を含む部分設計データ301を切り出しうる。
【0029】
次に、工程S32において、生成部112は、予め定められたセンタリング基準を中心として部分設計データ301をセンタリングし、画像データ302を生成しうる。この例では、端子とそれに接続された配線パターンとの間隔に関してエラーがある場合において、センタリング基準は、その端子の中心とされる。生成部112は、センタリングの際に、端子311等のオブジェクトが所定のサイズとなるように、部分設計データ301を変倍してもよい。この例では、端子311が所定のサイズとなるように、部分設計データ301が拡大されている。なお、本発明の1つの実施形式は、センタリングを含みうるが、他の実施形式は、センタリングを含まない。
【0030】
次に、工程S33において、生成部112は、エラーを構成しているオブジェクトと同層のオブジェクト以外のオブジェクトを削除し、画像データ303を生成しうる。次に、工程S34において、生成部112は、残っているオブジェクトのうちエラーを構成しているオブジェクト以外のオブジェクトを削除し、画像データ304を生成しうる。次に、工程S35において、生成部112は、第1DRC部111によるデザインルールチェックにおいて考慮しない部分がある場合に、その部分を除去し、画像データ305を生成しうる。この例では、配線パターン312が端子311の側から3つの直線要素を有し、端子311の側から数えて3つ目以降の直線要素は、第1DRC部111によるデザインルールチェックにおいて考慮されない。よって、3つ目以降の直線要素が除去されうる。次に、工程S36において、生成部112は、画像データ305を二値化し、画像データ203を生成しうる。画像データ203は、典型的にはビットマップデータ(ラスターデータ)でありうる。以上のようにして、生成部112は、エラーの対象となったオブジェクト以外のオブジェクトを含まないように画像データ203を生成しうる。
【0031】
図3または図4を参照しながら例示的に説明したように、第2DRC部113によるデザインルールチェックの結果(第1情報)を表示部103に表示することによって、ユーザである設計者は、その結果に基づいて、第1DRC部111によるデザインルールチェックの妥当性を判断することができる。これにより、第1DRC部111によるデザインルールチェックによって判定されたエラーが真のエラーであるかどうかを確認する作業を効率化することができる。
【0032】
図5には、表示制御部114が表示部103の表示画面(表示スクリーン)1031に表示させる情報の一例が示されている。表示制御部114が表示部103の表示画面(表示スクリーン)1031に表示させる情報は、複数のエラー情報を含むリスト500でありうる。リスト500を構成する複数のエラー情報の各々は、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分の情報である。各エラー情報は、第1DRC部111によってエラーであると判定された部分を特定する特定情報を含みうる。該特定情報は、例えば、個々のエラーを識別するための識別子(ID)501、および、エラーである判定された部分を示す画像データ502の少なくとも一方を含みうる。画像データ502は、前述の画像データ203に対応し、生成部112によって生成されうる。
【0033】
各エラー情報は、ディープラーニングを経た人工知能によってデザインルールチェックを行う第2DRC部113による判定結果を示す第1情報(AI判定結果)503を含みうる。第1情報503は、エラーがあることを示す「ERROR]またはエラーがないことを示す「OK」でありうる。各エラー情報は、第1DRC部111によるエラーの判定結果が妥当である可能性を示す第2情報(エラー確率)504を含みうる。第2情報504は、第2DRC部113が実行するデザインルールチェックにおいて、第1情報503とともに第2DRC部113によって提供されうる。各エラー情報は、第2DRC部113によるエラーの判定結果の信頼性を示す第3情報(信頼性)505を含みうる。一例において、第2情報(エラー確率)504が判定基準値(例えば、0.5)を上回る場合は、第1情報(AI判定結果)503はERRORとされ、第2情報(エラー確率)504が判定基準値(例えば、0.5)を下回る場合は、第1情報(AI判定結果)503はOKとされうる。また、一例において、第2情報(エラー確率)504が所定範囲(例えば、0.4~0.6)に属する場合には、第3情報505は、信頼性が低く、この場合には、警告(「Warining」)が表示され、第2情報(エラー確率)504が所定範囲(例えば、0.4~0.6)外である場合には、第3情報505は、信頼性が高い。
【0034】
エラー編集部115は、設計者(ユーザ)によって選択されたエラー情報をリスト500から除外しうる。エラー編集部115は、例えば、入力部104の操作によって、リスト500を構成する複数のエラー情報から少なくとも1つのエラー情報が選択され、削除することが指定された場合に、選択された当該少なくとも1つのエラー情報をリスト500から削除しうる。エラー情報の選択は、例えば、入力部104を構成するマウス等によってリスト500中の識別子501又は行が選択することによってなされうる。
【0035】
図6には、表示制御部114が表示部103の表示画面(表示スクリーン)1031に表示させる情報の他の例が示されている。図6の例において、識別子(ID)501、画像データ502、第1情報(AI判定結果)503、第2情報(エラー確率)504、第3情報(信頼性)505は、図5の例と同様である。図6の例では、表示制御部114は、リスト500(エラーデータ120)を構成する複数のエラー情報を第2情報(エラー確率)504に基づいてグループ分けし、複数のエラー情報をグループごとに表示部103の表示画面1031に表示させうる。各エラー情報は、グループ分けされたグループを示す第4情報(グループ情報)506を含みうる。図6には、グループG1、G2、G3が例示されている。また、グループを示す第4情報は、図6における太線によって例示されるように、グラフィカルな情報であってもよい。
【0036】
エラー編集部115は、リスト500(エラーデータ120)からユーザ(設計者)によって選択されたグループに属するエラー情報を除外するように構成されうる。エラー編集部115は、例えば、入力部104の操作によって、リスト500を構成する複数のグループから少なくとも1つのグループが選択され、削除することが指定された場合に、選択された当該グループ(に属するエラー情報)をリスト500から削除しうる。このような処理は、リスト500から疑似エラーを除去する作業を効率化するために有利である。
【0037】
例えば、入力部104を構成するマウス等によってリスト500中のグループが選択されると、その選択されたグループの扱いを設計者に選択されるメニュー510が表示されうる。そして、ボタン511がクリックされると、エラー編集部115は、選択されたグループ(に属するエラー情報)をエラーとして確定する。これは、当該選択されたグループ(に属するエラー情報)が疑似エラーではなく、真のエラーであるとユーザ(設計者)によって判断され、そのように扱われることを意味する。一方、ボタン512がクリックされると、エラー編集部115は、選択されたグループ(に属するエラー情報)をリスト500から削除する。これは、当該選択されたグループ(に属するエラー情報)が疑似エラーであるとユーザ(設計者)によって判断され、そのように扱われることを意味する。
【0038】
図7には、ティーチング部116によって学習データを生成する処理を制御するためのユーザインターフェースの一例が示されている。ユーザインターフェース710は、例えば、図5又は図6に示されたようなリスト500において、いずれかの画像データ502が選択され、設計者による不図示のメニューの操作等によって、学習データ生成コマンドが発行されることに応じて起動されうる。図7において、画像データ711は、ユーザ(設計者)によって選択されたエラー情報に含まれる画像データであり、オリジナルの学習データである。図7の例では、画像データ711を含むエラー情報は、第2DRC部113による判定結果がOKである例(即ち、第1DRC部111はエラーであると判定したが、第2DRC部113はエラーではない(即ち、疑似エラーである)と判定した例)である。
【0039】
ボタン712がクリックされると、ティーチング部116は、生成オプションメニュー713を表示画面1031に表示する。生成オプションメニュー713は、例えば、オリジナルの学習データである画像データ711の加工方法をユーザ(設計者)に指定させる加工方法メニューを含みうる。図7の例では、加工方法メニューは、オリジナルの学習データである画像データ711を90°右回転させて派生の学習データ(派生データ)を生成することの指示、オリジナルの学習データである画像データ711を180°右回転させて派生の学習データ(派生データ)を生成することの指示、オリジナルの学習データである画像データ711を270°右回転させて派生の学習データ(派生データ)を生成することの指示を含む。チェックボックスをチェックすることは、当該指示をアクティブにすることを意味する。
【0040】
生成オプションメニュー713は、例えば、派生の学習データ(派生データ)についての教師情報として、オリジナルの学習データである画像データ711についての第2DRC部113による判定結果(第1情報)を維持するかどうかを選択するための機能を有していてもよい。この機能は、図7に例示されるように、チェックボックスを含みうる。チェックボックスをチェックすることは、オリジナルの学習データである画像データ711についての第2DRC部113による判定結果(第1情報)を派生の学習データについても維持すること意味する。
【0041】
ティーチング部116は、以上のような設定にしたがってオリジナルの学習データから複数の派生の学習データ(加工画像データ)を生成し、教師情報とともに、学習データとして、第2DRC部113に提供する。第2DRC部113は、このようにしてティーチング部116から提供された学習データに基づいてディープラーニングによる学習を行う。
【0042】
図8には、ティーチング部116によって学習データを生成する処理を制御するためのユーザインターフェースの一例が示されている。ユーザインターフェース720は、例えば、図5又は図6に示されたようなリスト500において、いずれかの画像データ502が選択され、設計者による不図示のメニューの操作等によって、学習データ生成コマンドが発行されることに応じて起動されうる。図8において、学習データ730は、設計者によって選択されたエラー情報に含まれる画像データに対応するオリジナルの学習データである。図8の例では、オリジナルの学習データ730は、3つの要素731、732、733を含み、ティーチング部116は、要素731、732、733のそれぞれのパラメータを設定することによって複数の派生の学習データを生成しうる。なお、図8には示されていないが、教師情報は、例えば、オリジナルの学習データ730における第2DRC部113による判定結果に従って決定されてもよいし、任意に定められてもよい。
【0043】
要素731は、端子(パッド)であり、「形状」のパタメータ、「範囲」のパラメータ、「ピッチ」のパラメータを設定可能である。「形状」のパラメータとしては、例えば、矩形、円または長円を設定可能である。「範囲」のパラメータは、端子の大きさを指定する。「範囲」のパラメータとしては、例えば、最小値および最大値を設定可能である。「範囲」のパラメータは、X方向およびY方向の双方に対して設定されてもよい。「ピッチ」のパラメータは、最小値および最大値で指定される範囲における端子の大きさの変化幅である。ティーチング部116は、設定された形状を有する要素731を最小値および最大値で指定される範囲を設定されたピッチで変化させながら複数の要素731の生成しうる。
【0044】
要素732は、要素731としての端子に接続される配線パターンの一部分を構成し、端子に直接接続される要素である。要素732は、「引出位置」のパラメータ、「太さの範囲」のパタメータ、「太さのピッチ」のパラメータ、「長さの範囲」のパラメータ、「長さのピッチ」のパラメータを設定可能である。「引出位置」のパラメータは、例えば、端子としての要素731からの引出位置を定めるパラメータであり、例えば、要素731の中心を通る直線に対するオフセット値でありうる。「太さの範囲」のパラメータとしては、例えば、最小値および最大値を設定可能である。「太さのピッチ」のパラメータは、最小値および最大値で指定される太さの範囲における太さの変化幅である。「長さの範囲」のパラメータとしては、例えば、最小値および最大値を設定可能である。「長さのピッチ」のパラメータは、最小値および最大値で指定される長さの範囲における長さの変化幅である。
【0045】
要素733は、要素731としての端子に接続される配線パターンの他の一部分を構成し、端子に要素732を介して接続される要素である。要素733は、「引出角度」のパラメータ、「太さの範囲」のパタメータ、「太さのピッチ」のパラメータ、「長さの範囲」のパラメータ、「長さのピッチ」のパラメータを設定可能である。「引出角度」のパラメータは、例えば、要素732からの引出角度を定めるパラメータである。「太さの範囲」のパラメータとしては、例えば、最小値および最大値を設定可能である。「太さのピッチ」のパラメータは、最小値および最大値で指定される太さの範囲における太さの変化幅である。「長さの範囲」のパラメータとしては、例えば、最小値および最大値を設定可能である。「長さのピッチ」のパラメータは、最小値および最大値で指定される長さの範囲における長さの変化幅である。
【0046】
ここで、基板編集部117は、ユーザからの指示に従って、設定された編集ルールによる制約の下で、基板を編集しうる。ティーチング部は、当該制約の下で、パラメータ値を変更するように構成されうる。当該編集ルールは、例えば、グリッド、配線方向(配線パターンが延びる方向)、配線の太さ(最小太さ、最大太さ)、および、端子の形状、の少なくとも1つを規定するルールを含みうる。グリッドは、編集のための最小単位を提供し、例えば、上記の各種のピッチは、設定されたグリッドに従って(例えば、グリッドと同じ値に)自動で設定されうる。このようにして、設定された編出ルールにしたがってパラメータ値を変更しながら学習データを生成することにより、無駄な学習データの生成を減らし、第2DRC部113に効率的に学習を行わせるために有利である。
【0047】
ティーチング部116は、以上のような設定にしたがってオリジナルの学習データから複数の派生の学習データ(加工画像データ)を生成し、教師情報とともに、学習データとして、第2DRC部113に提供する。第2DRC部113は、このようにしてティーチング部116から提供された学習データに基づいてディープラーニングによる学習を行う。
【0048】
ティーチング部116によってオリジナルのデータから複数の学習データを生成し、第2DRC部113に提供することによって、第2DRC部113にディープラーニングによる学習を行わせるために要する学習データの準備作業を効率化することができる。
図1
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図8