(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】指関節プロテーゼ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/42 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
A61F2/42
(21)【出願番号】P 2020568473
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 CN2019119617
(87)【国際公開番号】W WO2020114252
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】201811472414.9
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520476938
【氏名又は名称】北京市春立正達医療器械股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING CHUNLIZHENGDA MEDICAL INSTRUMENTS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】史 春宝
(72)【発明者】
【氏名】許 奎雪
(72)【発明者】
【氏名】盧 小強
(72)【発明者】
【氏名】董 沢宇
(72)【発明者】
【氏名】史 文超
(72)【発明者】
【氏名】解 鳳宝
(72)【発明者】
【氏名】王 振国
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-504009(JP,A)
【文献】特表2011-514193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0027710(US,A1)
【文献】米国特許第5938700(US,A)
【文献】国際公開第2012/024266(WO,A1)
【文献】特表2008-531134(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107638235(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/42
A61B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指関節プロテーゼであって、
第1の髄内釘プロテーゼと、前記第1の髄内釘プロテーゼにヒンジ接続された第2の髄内釘プロテーゼとを備え、
前記第1の髄内釘プロテーゼは、骨髄腔内に配置するように構成された第1の髄内釘と、前記第1の髄内釘に接続され骨髄腔の外部に位置する第2の髄内釘とを備え、
前記第2の髄内釘は、前記第2の髄内釘プロテーゼにヒンジ接続されており、
前記第1の髄内釘及び/又は前記第2の髄内釘及び/又は前記第2の髄内釘プロテーゼの外面には、立体多孔質構造層が形成されて
おり、
前記第1の髄内釘の外面に形成された前記立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、前記第2の髄内釘の外面に形成された前記立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径よりも大きいことを特徴とする指関節プロテーゼ。
【請求項2】
前記指関節プロテーゼは、足指関節プロテーゼであり、
前記第1の髄内釘プロテーゼは、中足骨に接続するように構成されており、
前記第2の髄内釘プロテーゼは、趾骨に接続するように構成されており、
前記第1の髄内釘は、前記中足骨の骨髄腔の内部に位置し、
前記第2の髄内釘は、前記中足骨の骨髄腔の外部に位置し、前記中足骨の端面に当接していることを特徴とする請求項1に記載の指関節プロテーゼ。
【請求項3】
前記指関節プロテーゼは、手指関節プロテーゼであり、
前記第1の髄内釘プロテーゼは、中手骨に接続するように構成されており、
前記第2の髄内釘プロテーゼは、指骨に接続するように構成されており、
前記第1の髄内釘は、前記中手骨の骨髄腔の内部に位置し、
前記第2の髄内釘は、前記中手骨の骨髄腔の外部に位置し、前記中手骨の端面に当接していることを特徴とする請求項1に記載の指関節プロテーゼ。
【請求項4】
前記立体多孔質構造層は、複数のストラットと、複数のストラットが千鳥状に接続されてなる複数の孔隙とを備え、
各孔隙は互いに連通し、各孔隙の平均直径が異なり、
各前記孔隙の平均直径は100μm~400μmの範囲であり、
前記立体多孔質構造層の孔隙率は50%~80%の範囲であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の指関節プロテーゼ。
【請求項5】
前記第1の髄内釘プロテーゼは、前記第2の髄内釘に固定接続されたヒンジジョイントをさらに備え、
前記ヒンジジョイントにおける前記第2の髄内釘プロテーゼに対向する一端は、球面として構成されており、
前記第2の髄内釘プロテーゼは、球形凹部を備え、
前記球形凹部における前記ヒンジジョイントに対向する端面は、前記球面に合わせた凹状球面として構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の指関節プロテーゼ。
【請求項6】
前記第2の髄内釘プロテーゼは、前記球形凹部に接続された針状部をさらに備え、
前記球形凹部は、前記凹状球面と前記針状部の外周壁との間に接続され外向きに突出した弧状表面をさらに備え、
前記立体多孔質構造層は、前記弧状表面に形成されていることを特徴とする請求項
5に記載の指関節プロテーゼ。
【請求項7】
前記球形凹部の弧状表面は、骨髄腔内に延びるように構成された第1の表面と、骨髄腔の外側に位置する第2の表面とを備え、
前記第1の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、前記第2の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径よりも大きいことを特徴とする請求項
6に記載の指関節プロテーゼ。
【請求項8】
前記第1の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、100μm~200μmの範囲であり、
前記第2の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、200μm~400μmの範囲であることを特徴とする請求項
7に記載の指関節プロテーゼ。
【請求項9】
前記第2の髄内釘の側壁には、前記第2の髄内釘を貫通する第1の縫線穴が形成されており、
前記ヒンジジョイントにおける前記第2の髄内釘に近接する一端には、前記ヒンジジョイントを貫通する第2の縫線穴が形成されていることを特徴とする請求項
5に記載の指関節プロテーゼ。
【請求項10】
前記針状部の外面は、粗面として構成されていることを特徴とする請求項
6~
8のいずれか1項に記載の指関節プロテーゼ。
【請求項11】
前記第1の髄内釘と前記第2の髄内釘と前記
立体多孔質構造層とは一体的に成形されており、及び/又は、前記第2の髄内釘プロテーゼと前記
立体多孔質構造層とは一体的に成形されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の指関節プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、Beijing Chunlizhengda Medical Instruments Co., Ltd.により2018年12月4日に出願された、発明の名称が「指関節プロテーゼ」である中国特許出願第201811472414.9号の優先権を主張し、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、医療用プロテーゼの技術分野に関し、特に、指関節プロテーゼ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
指関節プロテーゼは、指関節置換術において患者の指関節部位を置き換えるために使用される外科用インプラントである。腫瘍や粉砕骨折などの事情で人体の指関節を修復する必要がある場合、指関節の深刻な骨欠損を引き起こしやすい。深刻な骨欠損は、指関節における骨切り位置の支持力を低下させるだけでなく、指関節における筋肉付着点の欠損や関節包の損傷などの問題を引き起こしやすい。この場合、患者の指関節を置き換えるために適切な指関節プロテーゼを選択する必要がある。
【0004】
従来の指関節プロテーゼは、主に第1の髄内釘プロテーゼ(bone nail prosthesis)と第2の髄内釘プロテーゼで構成されている。第1の髄内釘プロテーゼと第2の髄内釘プロテーゼとの間は、ヒンジで接続されることにより、指関節プロテーゼの可動機能を実現する。しかしながら、従来の指関節プロテーゼでは、第1の髄内釘プロテーゼ及び第2の髄内釘プロテーゼがそれぞれ患部における骨切り部に効果的に固定することができない一方、指関節プロテーゼの近くの筋肉の付着点及び関節包をより効果的に再構築することもできないため、移植後の指関節プロテーゼの安定性を保証できず、患者の術後のリハビリテーションに不利であり、ひいては患者に二次的損傷を与えやすくなる。
【0005】
従来技術に存在する問題点について、当業者は、これらの問題点を解決するために、移植後に、より安定した指関節プロテーゼを求めることが急務である。
【発明の概要】
【0006】
移植後の指関節プロテーゼをより安定させるために、本発明は、指関節プロテーゼ及びその製造方法を提供する。
【0007】
本発明による指関節プロテーゼは、第1の髄内釘プロテーゼと、第1の髄内釘プロテーゼにヒンジ接続された第2の髄内釘プロテーゼとを備え、第1の髄内釘プロテーゼは、骨髄腔内に配置するように構成された第1の髄内釘と、第1の髄内釘に接続され骨髄腔の外部に位置する第2の髄内釘とを備え、第2の髄内釘は、第2の髄内釘プロテーゼにヒンジ接続されており、第1の髄内釘及び/又は第2の髄内釘及び/又は第2の髄内釘プロテーゼの外面には、立体多孔質構造層が形成されている。
【0008】
さらに、指関節プロテーゼは足指関節プロテーゼであり、第1の髄内釘プロテーゼは中足骨に接続するように構成されており、第2の髄内釘プロテーゼは趾骨に接続するように構成されており、第1の髄内釘は中足骨の骨髄腔の内部に位置し、第2の髄内釘は中足骨の骨髄腔の外部に位置しかつ中足骨の端面に当接している。
【0009】
さらに、指関節プロテーゼは手指関節プロテーゼであり、第1の髄内釘プロテーゼは中手骨に接続するように構成されており、第2の髄内釘プロテーゼは指骨に接続するように構成されており、第1の髄内釘は中手骨の骨髄腔の内部に位置し、第2の髄内釘は中手骨の骨髄腔の外部に位置しかつ中手骨の端面に当接している。
【0010】
さらに、立体多孔質構造層は、複数のストラットと、複数のストラットが千鳥状に接続されてなる複数の孔隙とを備え、各孔隙は互いに連通し、各孔隙の平均直径が異なり、各孔隙の平均直径は100μm~400μmの範囲であり、立体多孔質構造層の孔隙率は50%~80%の範囲である。
【0011】
さらに、第1の髄内釘の外面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、第2の髄内釘の外面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径よりも大きい。
【0012】
さらに、第1の髄内釘プロテーゼは、第2の髄内釘に固定接続されたヒンジジョイントをさらに備え、ヒンジジョイントにおける第2の髄内釘プロテーゼに対向する一端は球面として構成されており、第2の髄内釘プロテーゼは球形凹部を備え、球形凹部におけるヒンジジョイントに対向する端面は球面に合わせた凹状球面として構成されている。
【0013】
さらに、第2の髄内釘プロテーゼは球形凹部に接続された針状部をさらに備え、球形凹部は凹状球面と針状部の外周壁との間に接続され外向きに突出した弧状表面をさらに備え、立体多孔質構造層は弧状表面に形成されている。
【0014】
さらに、球形凹部の弧状表面は、骨髄腔内に延びるように構成された第1の表面と、骨髄腔の外側に位置する第2の表面とを備え、ここで、第1の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、第2の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径よりも大きい。
【0015】
さらに、第1の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、100μm~200μmの範囲であり、第2の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、200μm~400μmの範囲である。
【0016】
さらに、第2の髄内釘の側壁には、第2の髄内釘を貫通する第1の縫線穴が形成されており、ヒンジジョイントにおける前記第2の髄内釘に近接する一端には、ヒンジジョイントを貫通する第2の縫線穴が形成されている。
【0017】
さらに、針状部の外面は、粗面として構成されている。
【0018】
さらに、第1の髄内釘と第2の髄内釘と多孔質立体構造層とは一体的に成形されており、及び/又は、第2の髄内釘プロテーゼと多孔質立体構造層とは一体的に成形されている。
【0019】
本発明による指関節プロテーゼの製造方法は、
第1の髄内釘及び/又は第2の髄内釘及び/又は第2の髄内釘プロテーゼの外面に立体多孔質構造層を形成するステップ(1)と、
第1の髄内釘を骨髄腔内に配置し、第2の髄内釘を骨髄腔の外部に配置し、第1の髄内釘を第2の髄内釘と接続し、第1の髄内釘プロテーゼを構成するステップ(2)と、
第1の髄内釘プロテーゼを第2の髄内釘プロテーゼとヒンジ接続し、指関節プロテーゼを構成するステップ(3)と、を含む。
【0020】
さらに、前記指関節プロテーゼは足指関節プロテーゼであり、ここで、前記第1の髄内釘プロテーゼは中足骨に接続するように構成されており、前記第2の髄内釘プロテーゼは趾骨に接続するように構成されており、前記第1の髄内釘は前記中足骨の骨髄腔の内部に位置し、前記第2の髄内釘は前記中足骨の骨髄腔の外部に位置しかつ前記中足骨の端面に当接している。
【0021】
さらに、前記指関節プロテーゼは手指関節プロテーゼであり、ここで、前記第1の髄内釘プロテーゼは中手骨に接続するように構成されており、前記第2の髄内釘プロテーゼは指骨に接続するように構成されており、前記第1の髄内釘は前記中手骨の骨髄腔の内部に位置し、前記第2の髄内釘は前記中手骨の骨髄腔の外部に位置しかつ前記中手骨の端面に当接している。
【0022】
さらに、ステップ(1)において、第1の髄内釘及び/又は第2の髄内釘及び/又は第2の髄内釘プロテーゼの外面に立体多孔質構造層を形成することは、
第1の髄内釘及び/又は第2の髄内釘及び/又は第2の髄内釘プロテーゼをマイクロCTで三次元スキャンし、スキャンされたデータをMIMICSでリモデリングし、三次元概略モデルを取得するステップと、
三次元概略モデルを、同種の組織の異なる成長要件にそれぞれ適合した領域に分割し、異なる領域が異なる孔隙率を有するように、各領域の孔隙の直径をさらに調整するステップと、
3D印刷装置で第1の髄内釘及び/又は第2の髄内釘及び/又は第2の髄内釘プロテーゼのソリッドモデルを生成し、3D印刷装置のフォーカスオフセットパラメータ(focus offset parameter)を5.8mA~6.2mAの範囲において調整することにより、生成されたソリッドモデルにおけるストラットの表面に複数の凸起を形成するステップと、を含む。
【0023】
さらに、前記第1の髄内釘の外面に形成された前記立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、前記第2の髄内釘の外面に形成された前記立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径よりも大きい。
【0024】
さらに、前記第1の髄内釘プロテーゼは前記第2の髄内釘に固定接続されたヒンジジョイントをさらに備え、前記ヒンジジョイントにおける前記第2の髄内釘プロテーゼに対向する一端は球面として構成されており、前記第2の髄内釘プロテーゼは球形凹部を備え、前記球形凹部における前記ヒンジジョイントに対向する端面は、前記球面に合わせた凹状球面として構成されている。
【0025】
さらに、前記第2の髄内釘プロテーゼは前記球形凹部に接続された針状部をさらに備え、前記球形凹部は前記凹状球面と前記針状部の外周壁との間に接続され外向きに突出した弧状表面をさらに備え、前記立体多孔質構造層は前記弧状表面に形成されている。
【0026】
さらに、前記球形凹部の弧状表面は、骨髄腔内に延びるように構成された第1の表面と、骨髄腔の外側に位置する第2の表面とを備え、ここで、前記第1の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、前記第2の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径よりも大きい。
【0027】
さらに、前記第1の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、100μm~200μmの範囲であり、前記第2の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、200μm~400μmの範囲である。
【0028】
さらに、前記第2の髄内釘の側壁には、前記第2の髄内釘を貫通する第1の縫線穴が形成されており、前記ヒンジジョイントにおける前記第2の髄内釘に近接する一端には、前記ヒンジジョイントを貫通する第2の縫線穴が形成されている。
【0029】
さらに、前記針状部の外面は、粗面として構成されている。
【0030】
さらに、前記第1の髄内釘と前記第2の髄内釘と前記多孔質立体構造層とは一体的に成形されており、及び/又は、前記第2の髄内釘プロテーゼと前記多孔質立体構造層とは一体的に成形されている。
【0031】
従来技術と比較して、本発明の指関節プロテーゼは、以下のいくつかの優位性がある。
【0032】
1)第1の髄内釘11及び/又は第2の髄内釘12及び/又は第2の髄内釘プロテーゼ2の外面に立体多孔質構造層5を形成することにより、第1の髄内釘プロテーゼ及び/又は第2の髄内釘プロテーゼの外面がより良好な骨の内殖能力及び骨クローリング能力を得る。その結果、指関節プロテーゼの固定をより安定させる。
【0033】
2)立体多孔質構造層を設けることにより、指関節プロテーゼの重量を効果的に低減することができ、軟組織及び筋肉の付着点の再構築に寄与するため、手術後に患者の回復時間を効果的に短縮し、患者の回復効果を大幅に向上することができる。
【0034】
3)本発明の指関節プロテーゼの第1の髄内釘プロテーゼ及び第2の髄内釘プロテーゼをカスタマイズして製造することにより、患者の骨髄腔の内径及び湾曲曲率にさらに適応させ、指関節プロテーゼの安定性をさらに強化するだけでなく、指関節の長さの回復にも寄与するため、患者の患部における指関節の長さが健康な指関節の長さと一致することを確保する。
【0035】
4)第1の縫線穴及び第2の縫線穴を設けることにより、損傷した関節包の修復又は再構築に寄与し、手術後の患者の回復に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術的解決策をより明確に説明するために、具体的な実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。すべての図面では、同様の要素又は部品は通常、同様の参照記号で表記される。図面では、各要素または部品は必ずしも実際の縮尺で描かれているわけではない。
【
図1】
図1は、本発明による指関節プロテーゼの構造概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された指関節プロテーゼと中足骨及び趾骨との接続の概略図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された第1の髄内釘プロテーゼの構造概略図である。
【
図4】
図4は、
図3に示されたヒンジジョイントの構造概略図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された第2の髄内釘プロテーゼの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明の技術的解決策に係る実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明の技術的解決策をより明確に説明するための例示に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0038】
図1は、本発明による指関節プロテーゼ100の構造を示す。
図1に示すように、当該指関節プロテーゼ100は、第1の髄内釘プロテーゼ1と、第1の髄内釘プロテーゼ1とヒンジ接続された第2の髄内釘プロテーゼ2とを備える。第1の髄内釘プロテーゼ1は、骨髄腔に配置するように構成された第1の髄内釘11と、第1の髄内釘11に接続され骨髄腔の外部に位置する第2の髄内釘12とを備える。第2の髄内釘12は、第2の髄内釘プロテーゼ2にヒンジ接続されている。ここで、第1の髄内釘11及び/又は第2の髄内釘12及び/又は第2の髄内釘プロテーゼ2の外面には、立体多孔質構造層5が形成されている。なお、本発明の指関節プロテーゼ100は、足指関節プロテーゼであっても手指関節プロテーゼであってもよい。以下、足指関節プロテーゼを例として、本発明の指関節プロテーゼ100の構造及び使用方法について具体的に説明する。
【0039】
図1及び
図2を参照すると、当該指関節プロテーゼ100は、足指関節プロテーゼである。第1の髄内釘プロテーゼ1は中足骨3に接続するように構成されており、第2の髄内釘プロテーゼ2は、趾骨4に接続するように構成されている。第1の髄内釘11は中足骨3の骨髄腔の内部に位置し、第2の髄内釘12は中足骨3の骨髄腔の外部に位置しかつ中足骨4の端面に当接している。
【0040】
なお、指関節プロテーゼ100が手指関節プロテーゼである場合、第1の髄内釘プロテーゼ1は中手骨に接続するように構成されており、第2の髄内釘プロテーゼ2は指骨に接続するように構成されている。第1の髄内釘11は中手骨の骨髄腔の内部に位置し、第2の髄内釘12は中手骨の骨髄腔の外部に位置しかつ中手骨の端面に当接している。
【0041】
図2に示すように、本発明の足指関節プロテーゼは、足指関節の置換に適用される場合、患者の中足骨3及び趾骨4に対して骨切り処理を行う必要があり、骨切り処理後の中足骨3及び趾骨4に多くの骨欠損が存在する。本発明では、第1の髄内釘プロテーゼ1が第1の髄内釘11と第2の髄内釘12との2つの部分を備えるように構成されるため、第1の髄内釘11が中足骨3の骨髄腔31内まで延伸可能であり、このように、その後、骨髄腔31内における骨組織と迅速に融合され得る。一方、中足骨3の外部に位置する第2の髄内釘12は、中足骨3の骨欠損を効果的に補うことができ、つまり、第2の髄内釘12の長さにより中足骨3に欠損した骨2の長さを補うことができる。同時に、第2の髄内釘12を中足骨3の端面に当接させることで、第1の髄内釘プロテーゼ1と中足骨3との固定安定性を効果的に確保することができる。第2の髄内釘プロテーゼ2の一端を趾骨4に接続し、他端を第1の髄内釘プロテーゼ1にヒンジ接続することで、第2の髄内釘プロテーゼ2と中足骨3の接続を実現すると同時に、中足骨3に対する趾骨4の摺動を実現するため、指関節100の可動機能を実現する。
【0042】
第1の髄内釘11及び/又は第2の髄内釘12及び/又は第2の髄内釘プロテーゼ2の外面に立体多孔質構造層5が形成されることで、第1の髄内釘プロテーゼ1及び/又は第2の髄内釘プロテーゼ2の外面は、多孔質構造になる。このように、第1の髄内釘11が骨髄腔31の内壁とのより大きな接触面積を有し、つまり、第1の髄内釘11の外面がより良好な骨の内殖能力を得る。その結果、骨髄腔31内の骨組織が多孔質構造内に迅速に成長することができるため、中足骨3内における指関節プロテーゼ100の安定した固定に寄与する。第2の髄内釘12の外面に多孔質構造が形成されることで、第2の髄内釘12の外面がより良い骨クローリング能力(bone crawling ability)を得る。その結果、骨髄腔31内の骨組織が第2の髄内釘12の外面に沿ってその多孔質構造内に迅速に成長することができるため、第1の髄内釘プロテーゼ1と中足骨3の固定をより安定させる。また、第2の髄内釘プロテーゼ2の外面に多孔質構造が形成されることで、同様に、第2の髄内釘プロテーゼ2が趾骨4とのより大きな接触面積を有し、骨髄腔41内の骨組織が多孔質構造内に迅速に成長することができるため、第2の髄内釘プロテーゼ2の外面がより良い骨の内殖能力及び骨クローリング能力を得る。その結果、第2の髄内釘プロテーゼ2と趾骨4との固定をより安定させる。
【0043】
また、立体多孔質構造層5を設けることにより、指関節プロテーゼ100の重量を効果的に低減することができ、軟組織及び筋肉の付着点の再構築に寄与するため、手術後に患者の回復時間を効果的に短縮し、患者の回復効果を大幅に向上することができる。
【0044】
また、第1の髄内釘プロテーゼ1及び第2の髄内釘プロテーゼ2をカスタマイズして製造することにより、第1の髄内釘プロテーゼ1及び第2の髄内釘プロテーゼ2は、患者の中足骨3及び趾骨4の骨髄腔の内径及び湾曲曲率にさらに適応するようになるため、第1の髄内釘プロテーゼ1と中足骨3との間、及び第2の髄内釘プロテーゼ2と趾骨4との間のマッチングの安定性をさらに強化する。さらに、カスタマイズして製造された第1の髄内釘プロテーゼ1及び第2の髄内釘プロテーゼ2は、足指関節の長さの回復に寄与するため、患者の患部における足指関節の長さが健康な足指関節の長さと一致することを確保する。
【0045】
本発明によれば、立体多孔質構造層5は、複数のストラット(strut)と、複数のストラットが千鳥状に接続されてなる複数の孔隙とを備えても良い。各孔隙は、互いに連通し、各孔隙の平均直径が異なる。ここで、各孔隙の平均直径は100μm~400μmの範囲であり、立体多孔質構造層5の孔隙率は50%~80%の範囲である。ストラットが千鳥状に接続されてなる各孔隙を互いに連通させ、かつ各孔隙の平均直径が異なるように構成するとともに、立体多孔質構造層5の孔隙の平均直径及び孔隙率範囲を設定することで、立体多孔質構造層5は、人体の骨小柱(bone trabecular)構造とより類似している構造を有し、高い孔隙率及び連通性を有するため、良好な骨の内殖を誘導することができ、人体の骨質を立体多孔質構造層5の孔隙内に迅速かつ自然に成長させることができる。このように、骨芽細胞の接着、増殖、分化の能力を向上させ、中足骨3及び趾骨4内への骨組織の成長及びクローリングを効果的に促進し、さらに、手術後の指関節プロテーゼ100と人体骨組織との迅速な融合及び固定に寄与するため、手術後の患者の回復効果を効果的に向上することができる。
【0046】
好ましくは、立体多孔質構造層5の外部から内部への方向における孔隙の密度を徐々に増加させることで、人体の骨の内殖中に、骨組織がよりスムーズに立体多孔質構造層5の外部から立体多孔質構造層5の内部に成長することができ、立体多孔質構造層5と人体骨組織との融合及び固定効果を向上することができる。
【0047】
さらに好ましくは、各ストラットの外周壁には、ストラットの外周壁の粗さを増大させその外周壁の摩擦力を増大させるように構成された複数の凸部(図示せず)が形成されてもよい。このように、骨の内殖中に、骨組織とストラットとの固定がより強固で安定している。好ましくは、当該凸部は、円形の凸点であっても錐状の凸点であってもよい。なお、当該凸部の形状は、当該凸部がストラットの外表面積を効果的に増加させその外周壁の摩擦力を増大させる目的を達成できる限り、上記の形状に限定されず、ここで詳細な説明を省略する。さらに、当該凸部は、断面の最大輪郭形状の幅が5~50μmの範囲であり、最大高さが10~50μmの範囲である。
【0048】
さらに好ましくは、凸部は、ストラットの外面に沿って、均一に分布してもよく、離散的に分布してもよい。さらに好ましくは、立体多孔質構造層5では、骨の内殖をより強固にするために、孔隙率の比較的大きい領域のストラットにおける凸部の数は、孔隙率の比較的小さい領域のストラットにおける凸部の数よりも大きくなってもよい。さらに好ましくは、立体多孔質構造層5の外縁のストラットにおける凸部の密度は、立体多孔質構造層5の内部のストラットにおける凸部の密度よりも大きい。
【0049】
好ましい実施形態では、第1の髄内釘11及び第2の髄内釘12の外面には、それぞれ、立体多孔質構造層5が形成されている。好ましくは、第1の髄内釘11及び第2の髄内釘12の外面に形成された立体多孔質構造層5は、同じ厚さを有してもよい。好ましくは、立体多孔質構造層5の厚さは、1mm~2mmの範囲であり、より好ましくは1.5mmである。このように設定することにより、一方で、第1の髄内釘プロテーゼ1が骨の内殖及び骨クローリングをより効果的に助ける外面を有し、他方で、第1の髄内釘プロテーゼ1がより良好な応力耐荷重、伝導及び分散能力を有するため、指関節プロテーゼ100がより安定した使用効果を得る。
【0050】
当然、第1の髄内釘11及び第2の髄内釘12の外面に形成された立体多孔質構造層5の厚さは異なってもよく、第1の髄内釘プロテーゼ1が適用される患者によって特別に設計することができる。例えば、患者の骨の内殖能力が低い場合、第1の髄内釘プロテーゼ1の強度を保証するために、第1の髄内釘11の外面における立体多孔質構造層5の厚さは、第2の髄内釘12の外面における立体多孔質構造層5の厚さよりも大きくなるよう設定されてもよい。患者自身の骨クローリング能力が低い場合、第1の髄内釘プロテーゼ1の固定安定性を保証するために、第2の髄内釘12の外面における立体多孔質構造層5の厚さは、第1の髄内釘11の外面における立体多孔質構造層5の厚さよりも大きくなるように設定されてもよい。
【0051】
好ましくは、第1の髄内釘11の外面に形成された立体多孔質構造層5における各孔隙の平均直径は、第2の髄内釘12の外面に形成された立体多孔質構造層5における各孔隙の平均直径よりも大きくなってもよい。さらに、好ましくは、第1の髄内釘11の外面に形成された多孔質立体構造層5における各孔隙の平均直径が200μm~400μmの範囲であり、この場合、当該領域の孔隙率が50%~60%の範囲に制御することができ、より好ましくは、各孔隙の平均直径が300μm~400μmの範囲であり、孔隙率が50%~55%の範囲に制御することができる。好ましくは、第2の髄内釘12の外面に形成された多孔質立体構造層5における各孔隙の平均直径が100μm~200μmの範囲であり、この場合、孔隙率が70%~80%の範囲に制御することができ、より好ましくは、各孔隙の平均直径が100μm~150μmの範囲であり、孔隙率が75%~80%の範囲に制御することができる。
【0052】
以上の設定により、第1の髄内釘11の外面に形成された多孔質立体構造層5の直径が200μm~400μmの範囲である場合、骨の内殖をより良好に促進することができるため、指関節プロテーゼ100の置換の初期段階でより安定した固定効果を得ることができる。一方、第2の髄内釘12の外面に形成された多孔質立体構造層5の直径が100μm~200μmの範囲である場合、骨クローリングの成長速度が最も速いため、指関節プロテーゼ100の置換の中期及び後期段階で骨組織の成長を速め、さらに、患者のより迅速なリハビリテーションを促進することができる。
【0053】
図3に示すように、第2の髄内釘12と第1の髄内釘11との接続部には、中足骨3の端面に当接するためのプラットフォーム13が形成されてもよい。当該プラットフォーム13は、中足骨3からの作用力に耐えるためのものであり、プラットフォームの形で第2の髄内釘12のより良い機械的支持機能を実現し、第1の髄内釘プロテーゼ1の全体的な機械的支持能力の改善に寄与する。好ましくは、第2の髄内釘12は、断面円弧状の柱状として構成されてもよい。このように、指関節プロテーゼ100は、使用中により安定であり、中足骨3に対する支持効果がより安定である。
【0054】
別の好ましい実施形態では、第1の髄内釘11、第2の髄内釘12、及び第2の髄内釘プロテーゼ2の外面には、それぞれ、立体多孔質構造層5が形成されている。第2の髄内釘プロテーゼ2の外面に形成された立体多孔質構造層5の厚さは、上記の第1の髄内釘11及び第2の髄内釘12の外面における立体多孔質構造層5の厚と、同一であっても異なってもよく、第2の髄内釘プロテーゼ2が適用される患者によって特別に設計することができる。以下、当該部分の構造について詳細に説明する。
【0055】
本発明によれば、
図3に示すように、第1の髄内釘プロテーゼ1は、第2の髄内釘12に固定接続されたヒンジジョイント14をさらに備えてもよい。ヒンジジョイント14における第2の髄内釘プロテーゼ2に対向する一端は、球面141として構成されている。
図5に示すように、第2の髄内釘プロテーゼ2は、球形凹部21を備える。球形凹部21におけるヒンジジョイント14に対向する端面には、球面141に合わせた凹状球面211が構成されている。ヒンジジョイント14の球面141と第2の髄内釘プロテーゼ2の凹状球面211のマッチングにより、ヒンジジョイント14と第2の髄内釘プロテーゼ2とは、球面によるヒンジ接続モードが形成されている。このような接続モードにより、第2の髄内釘プロテーゼ2がヒンジジョイント14の中心線に対して揺動可能になるだけでなく、第2の髄内釘プロテーゼ2がヒンジジョイント14に対して回動可能になるため、中足骨3と趾骨4の間の相対運動が自在となる。好ましくは、第2の髄内釘12とヒンジジョイント14の固定接続モードは、ねじ接続であってもよい。このように、第2の髄内釘12とヒンジジョイント14の固定が安定し、容易に脱着可能である。例えば、
図3及び
図4に示すように、第2の髄内釘12におけるヒンジジョイント14と接触している端面には、スタッド121が設けられてもよく、ヒンジジョイント14における第2の髄内釘12と接触している端面には、スタッド121とねじ接続されたねじ穴142が形成されてもよい。
【0056】
本発明によれば、
図5に示すように、第2の髄内釘プロテーゼ2は、球形凹部21に接続され趾骨4の骨髄腔41内に移植するための針状部22をさらに備えてもよい。球形凹部21は、凹状球面と針状部22の外周壁との間に接続され外向きに突出した弧状表面23をさらに備える。弧状表面23は、趾骨4の端面に当接し、弧状表面23に立体多孔質構造層5が形成されている。このような構成により、
図2を参照すると、針状部22が趾骨4の骨髄腔41内に延伸可能であり、このように、その後、骨髄腔41内における骨組織と迅速に融合され得る。一方、趾骨4の外部に位置する弧状表面23は、その表面と趾骨4の端面との接触面積を効果的に増加することができるため、第2の髄内釘プロテーゼ2と趾骨4の固定安定性を効果的に確保することができる。また、弧状表面23の外向きに突出するラジアンを調整することにより、第2の髄内釘プロテーゼ2と趾骨4を合わせた高さを調整することができ、趾骨4に欠損した骨の長さを効果的に補う。さらに、弧状表面23に立体多孔質構造層5を形成することにより、第2の髄内釘プロテーゼ2の外面が多孔質構造となる。このように、多孔質構造により、弧状表面23がより良好な骨の内殖能力及び骨クローリング能力を得る。その結果、骨髄腔41内の骨組織が弧状表面23に沿ってその多孔質構造内に迅速に成長することができるため、第2の髄内釘プロテーゼ2と趾骨4の固定をより安定させる。
【0057】
図2に示す好ましい実施形態では、球形凹部の弧状表面23は、趾骨4の骨髄腔41内に延びる第1の表面231と、趾骨4の骨髄腔41の外側に位置する第2の表面232とを備えてもよい。ここで、第1の表面231に形成された立体多孔質構造層5における各孔隙の平均直径は、第2の表面232に形成された立体多孔質構造層5における各孔隙の平均直径よりも大きい。さらに、好ましくは、第1の表面231に形成された立体多孔質構造層5における各孔隙の平均直径が200μm~400μmの範囲であり、この場合、当該領域の孔隙率が50%~60%の範囲に制御することができ、より好ましくは、各孔隙の平均直径が300μm~400μmの範囲であり、孔隙率が50%~55%の範囲に制御することができる。好ましくは、第2の表面232に形成された立体多孔質構造層5における各孔隙の平均直径が100μm~200μmの範囲であり、この場合、孔隙率が70%~80%の範囲に制御することができ、より好ましくは、各孔隙の平均直径が100μm~150μmの範囲であり、孔隙率が75%~80%の範囲に制御することができる。
【0058】
以上の設定により、第1の表面231に形成された多孔質立体構造層5の直径が200μm~400μmの範囲である場合、骨の内殖をより良好に促進することができるため、指関節プロテーゼ100の置換の初期段階でより安定した固定効果を得ることができる。一方、第2の表面232に形成された多孔質立体構造層5の直径が100μm~200μmの範囲である場合、骨クローリングの成長速度が最も速いため、指関節プロテーゼ100の置換の中期及び後期段階で骨組織の成長を速め、さらに、患者のより迅速なリハビリテーションを促進することができる。
【0059】
好ましい実施形態では、第1の表面231と第2の表面232に形成された立体多孔質構造層5の厚さは同一であってもよい。好ましくは、立体多孔質構造層5の厚さは1mm~2mmの範囲であり、より好ましくは1.5mmである。このように設定することにより、一方で、第2の髄内釘プロテーゼ2が骨の内殖及び骨クローリングをより効果的に助ける外面を有し、他方で、第2の髄内釘プロテーゼ2がより良好な応力耐荷重、伝導及び分散能力を有するため、指関節プロテーゼ100がより安定した使用効果を得る。
【0060】
当然、第1の表面231及び第2の表面232に形成された立体多孔質構造層5の厚さは異なってもよく、第2の髄内釘プロテーゼ2が適用される患者によって特別に設計することができる。例えば、患者の骨の内殖能力が低い場合、第2の髄内釘プロテーゼ2の強度を保証するために、第1の表面231における立体多孔質構造層5の厚さは、第2の表面232における立体多孔質構造層5の厚さよりも大きくなるよう設定されてもよい。患者自身の骨クローリング能力が低い場合、第2の髄内釘プロテーゼ1の固定安定性を保証するために、第2の表面232における立体多孔質構造層5の厚さは、第1の表面231における立体多孔質構造層5の厚さよりも大きくなるように設定されてもよい。
【0061】
図5に示す実施形態では、弧状表面23は、凹状球面211と針状部22の中部の外周壁との間に接続されてもよい。このような構成により、弧状表面23に形成された立体多孔質構造層5は、趾骨4のより良好な骨の内殖及びより迅速な骨クローリングを達成できるという前提で、立体多孔質構造層5の材料を節約し、材料の無駄を回避することができる。当然、弧状表面23は、凹状球面211と針状部22の中上部の外周壁との間に接続されてもよく、凹状球面211と針状部22の中下部の外周壁との間に接続されてもよい。その具体的な構成は、患者の個人差によって、患者のニーズに応じて適当に設定することができる。
【0062】
好ましくは、針状部22の外面は、粗面として構成されてもよい。すなわち、弧状表面23の外部に位置する針状部22の外面は、粗面として構成され得る。針状部22は、趾骨4の骨髄腔41において骨セメントによって固定することができる。このような構成により、針状部22の外面は、より大きな接触面積を有し、骨セメントによって針状部22と趾骨4の骨髄腔41とをより強固に固定するのに役立つ。
【0063】
図3及び
図5に示すように、好ましくは、第1の髄内釘11と第2の髄内釘12と多孔質立体構造層5とは、一体的に成形されてもよく、及び/又は、第2の髄内釘プロテーゼ2と多孔質立体構造層5とは、一体的に成形されてもよい。ここで、立体多孔質構造層5は、チタン合金、純チタン、又はタンタル金属などであり得る金属粉末で作られてもよい。好ましくは、立体多孔質構造層5は、チタン合金材料で作られ、より好ましくはTi6Al4Vで作られる。第1の髄内釘11、第2の髄内釘12、及び第2の髄内釘プロテーゼ2は、チタン合金材料で作られてもよい。一体成形の加工方法により、第1の髄内釘プロテーゼ1及び第2の髄内釘プロテーゼ2の加工を容易にするだけでなく、第1の髄内釘プロテーゼ1及び第2の髄内釘プロテーゼ2の各部材間の相互作用力を低減するため、第1の髄内釘プロテーゼ1及び第2の髄内釘プロテーゼ2は、より安定した全体構造及びより良好な機械的強度を有する。
【0064】
本発明によれば、
図3に示すように、第2の髄内釘12の側壁には、第2の髄内釘12を貫通する第1の縫線穴122が形成されており、ヒンジジョイント14における第2の髄内釘12に近接する一端には、ヒンジジョイント14を貫通する第2の縫線穴143が形成されている。腫瘍や粉砕骨折などで人体の足指関節を修復する必要がある場合、足指関節に深刻な骨欠損を引き起こしやすく、深刻な骨欠損が足指関節における関節包に損傷を与えやすい。上記の構成により、軟組織を第1の縫線穴122と第2の縫線穴143の間に縫合することで、損傷した関節包を修復又は再構築することができるため、手術後の患者の回復に寄与する。
【0065】
好ましくは、第2の髄内釘12に形成された第1の縫線穴122は複数であってもよく、ヒンジジョイント14に形成された第2の縫線穴143は複数であってもよい。より好ましくは、
図3に示すように、第2の髄内釘12に形成された第1の縫線穴122の数は、ヒンジジョイント14に形成された第2の縫線穴143の数に等しくてもよく、また、各第1の縫線穴122及び各第2の縫線穴143は、それぞれ、足指関節100の外側に近接している。好ましくは、各第1の縫線穴122及び各第2の縫線穴143は、それぞれ、同一垂直線に配列されており、このように、第1の縫線穴122及び第2の縫線穴143を通過して縫合された関節包は、人体の関節包とより類似し、その結果、移植後の指関節プロテーゼ100の運動機能をさらに向上することができる。
【0066】
さらに好ましくは、第1の縫線穴122及び第2の縫線穴143の直径は2.5mm~4mmの範囲であってもよい。さらに、第1の縫線穴122及び第2の縫線穴143は、具体的に、対応する穴の軸方向に沿って湾曲した貫通穴であり、当該湾曲したラジアンを有する貫通穴の軸方向長さは、2.5mm~40mmの範囲であってもよい。具体的な長さの値は、手術の操作及び軟組織のより良い縫合を容易にするように、縫合中に使用された湾曲した縫合針の直径及び縫合針の曲率に従って決定することができる。
【0067】
最後に、上記の技術的解決策は、指関節プロテーゼ100が患者の手指関節の置換に使用される場合にも適用可能であることに留意されたい。すなわち、指関節プロテーゼ100が手指関節プロテーゼである場合、上記の技術的解決策に係る中足骨及び趾骨の代わりに、当該指関節プロテーゼ100の第1の髄内釘プロテーゼ1を中手骨との接続に使用し、第2の髄内釘プロテーゼ2を指骨との接続に使用すればよい。ここで、詳しい説明を省略する。
【0068】
本発明による指関節プロテーゼの製造方法は、
第1の髄内釘及び/又は第2の髄内釘及び/又は第2の髄内釘プロテーゼの外面に立体多孔質構造層を形成するステップ(1)と、
第1の髄内釘を骨髄腔内に配置し、第2の髄内釘を骨髄腔の外部に配置し、第1の髄内釘を第2の髄内釘と接続し、第1の髄内釘プロテーゼを構成するステップ(2)と、
第1の髄内釘プロテーゼを第2の髄内釘プロテーゼとヒンジ接続し、指関節プロテーゼを構成するステップ(3)と、を含む。
【0069】
さらに、前記指関節プロテーゼは足指関節プロテーゼであり、ここで、前記第1の髄内釘プロテーゼは中足骨に接続するように構成されており、前記第2の髄内釘プロテーゼは趾骨に接続するように構成されており、前記第1の髄内釘は前記中足骨の骨髄腔の内部に位置し、前記第2の髄内釘は前記中足骨の骨髄腔の外部に位置しかつ前記中足骨の端面に当接している。
【0070】
さらに、前記指関節プロテーゼは手指関節プロテーゼであり、ここで、前記第1の髄内釘プロテーゼは中手骨に接続するように構成されており、前記第2の髄内釘プロテーゼは指骨に接続するように構成されており、前記第1の髄内釘は前記中手骨の骨髄腔の内部に位置し、前記第2の髄内釘は前記中手骨の骨髄腔の外部に位置しかつ前記中手骨の端面に当接している。
【0071】
さらに、ステップ(1)において、第1の髄内釘及び/又は第2の髄内釘及び/又は第2の髄内釘プロテーゼの外面に立体多孔質構造層を形成することは、具体的に、
第1の髄内釘及び/又は第2の髄内釘及び/又は第2の髄内釘プロテーゼをマイクロCTで三次元スキャンし、スキャンされたデータをMIMICSでリモデリングし、三次元概略モデルを取得するステップと、
三次元概略モデルを、同種の組織の異なる成長要件にそれぞれ適合した領域に分割し、異なる領域が異なる孔隙率を有するように、各領域の孔隙の直径をさらに調整するテップと、
3D印刷装置で第1の髄内釘及び/又は第2の髄内釘及び/又は第2の髄内釘プロテーゼのソリッドモデルを生成し、3D印刷装置のフォーカスオフセットパラメータを5.8mA~6.2mAの範囲において調整することにより、生成されたソリッドモデルにおけるストラットの表面に複数の凸起を形成するステップと、を含む。
【0072】
さらに、前記第1の髄内釘の外面に形成された前記立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、前記第2の髄内釘の外面に形成された前記立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径よりも大きい。
【0073】
さらに、前記第1の髄内釘プロテーゼは前記第2の髄内釘に固定接続されたヒンジジョイントをさらに備え、前記ヒンジジョイントにおける前記第2の髄内釘プロテーゼに対向する一端は球面として構成されており、前記第2の髄内釘プロテーゼは球形凹部を備え、前記球形凹部における前記ヒンジジョイントに対向する端面は、前記球面に合わせた凹状球面として構成されている。
【0074】
さらに、前記第2の髄内釘プロテーゼは前記球形凹部に接続された針状部をさらに備え、前記球形凹部は前記凹状球面と前記針状部の外周壁との間に接続され外向きに突出した弧状表面をさらに備え、前記立体多孔質構造層は前記弧状表面に形成されている。
【0075】
さらに、前記球形凹部の弧状表面は、骨髄腔内に延びるように構成された第1の表面と、骨髄腔の外側に位置する第2の表面とを備え、ここで、前記第1の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、前記第2の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径よりも大きい。
【0076】
さらに、前記第1の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、100μm~200μmの範囲であり、前記第2の表面に形成された立体多孔質構造層における各孔隙の平均直径は、200μm~400μmの範囲である。
【0077】
さらに、前記第2の髄内釘の側壁には、前記第2の髄内釘を貫通する第1の縫線穴が形成されており、前記ヒンジジョイントにおける前記第2の髄内釘に近接する一端には、前記ヒンジジョイントを貫通する第2の縫線穴が形成されている。
【0078】
さらに、前記針状部の外面は、粗面として構成されている。
【0079】
さらに、前記第1の髄内釘と前記第2の髄内釘と前記多孔質立体構造層とは一体的に成形されており、及び/又は、前記第2の髄内釘プロテーゼと前記多孔質立体構造層とは一体的に成形されている。
【0080】
上記の各実施形態は、本発明の技術的解決策を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定されるものではない。上記の各実施形態を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者は、上記の各実施形態に記載された技術的解決策について修正、その技術的特征の一部又はすべての均等交換を行うことができると理解されるべきである。これらの修正又は交換は、対応する技術的解決策の本質を本出願の各実施形態の技術的解決策の範囲から逸脱させるものではなく、本発明の特許請求の範囲及び明細書の範囲に含まれるものとする。特に、構造的な矛盾がない限り、各実施形態で言及された各技術的特徴は、任意の方法で組み合わせることができる。本発明は、本明細書に開示される特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての技術的解決策を包含する。