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特許7112584硬脆性難削材加工用ダイヤモンド切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】硬脆性難削材加工用ダイヤモンド切削工具
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/18 20060101AFI20220727BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20220727BHJP
   B23C 5/16 20060101ALI20220727BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
B28D1/18
B23B27/20
B23C5/16
B23C5/10 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021500422
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 CN2019094444
(87)【国際公開番号】W WO2020063006
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】201811117110.0
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811330578.8
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520186428
【氏名又は名称】匯専科技集團股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】李 偉 秋
(72)【発明者】
【氏名】顔 炳 姜
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-504868(JP,A)
【文献】特開2014-188651(JP,A)
【文献】米国特許第05685671(US,A)
【文献】特開平08-336716(JP,A)
【文献】特開2009-241190(JP,A)
【文献】特開2017-019083(JP,A)
【文献】特開2012-176453(JP,A)
【文献】特開平04-343608(JP,A)
【文献】特表2019-515801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/18
B23B 27/20
B23C 5/16
B23C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具に用いる切れ刃部であって、
前記切れ刃部の材質が、多結晶ダイヤモンドであり、
前記切れ刃部が、一体成型された切削体およびいくつかの切れ刃を含み、
前記切れ刃が、螺旋状であり、
各前記切れ刃が、前記切削体の中心軸円周方向に沿って前記切削体の外表面に設置され、互いに隣接する2つの前記切れ刃の間に、第1切屑排出溝が設置され、
前記切れ刃の第1端部が、前記切削体の前端面に設置され、且つ前記切れ刃が順番に前記切削体の前端面および前記切削体の側面に沿って延伸するため、前記切れ刃の第2端部が、前記切削体の側面に設置された、
前記切削体の上に一体成形されたワイパー刃をさらに含み、
前記ワイパー刃が、前記切れ刃の第1端部に設置され、且つ前記切れ刃と平滑に遷移する切れ刃部。
【請求項2】
前記切削体が、1つの端面を介して固定接続された切削体端部および接続部を含み、
前記切れ刃の第1端部が、前記切削体端部の前端面に設置され、且つ前記切れ刃が順番に前記切削体端部の前端面および前記切削体端部の側面に沿って延伸するため、前記切れ刃の第2端部が、前記切削体端部の側面に設置され、且つ前記切れ刃の第2端部が、前記切削体端部と前記接続部の接続部分に位置する請求項1に記載の切れ刃部。
【請求項3】
前記切削体端部が、同軸で、且つ固定接続されるとともに、階段状に形成された第1切削部および第2切削部を含み、
前記第1切削部の外径が、前記第2切削部の外径よりも小さく、前記第2切削部と前記接続部が固定接続された請求項に記載の切れ刃部。
【請求項4】
前記第1切削部の前端面とその側面の間、前記第1切削部と前記第2切削部の間、前記第2切削部の前端面とその側面の間が、いずれも円弧遷移接続を採用する請求項に記載の切れ刃部。
【請求項5】
前記切削体の前端面の中心部分に、冷却溝が設置され、
前記切れ刃の第1端部が、前記冷却溝の外辺縁に設置された請求項1に記載の切れ刃部。
【請求項6】
前記切れ刃の螺旋方向が、左旋または右旋であり、
前記切れ刃の螺旋角が、15°~60°である請求項1に記載の切れ刃部。
【請求項7】
前記切削体の外径が、0.5mm~135mmであり、
前記切れ刃の刃数が、前記切れ刃の刃幅によって決定され、
前記切れ刃の刃幅が、0.01mm~0.2mmであり、
前記切れ刃の刃長が、0.1mm~15mmである請求項1に記載の切れ刃部。
【請求項8】
前記第1切屑排出溝の溝深さが、0.05mm~0.3mmである請求項に記載の切れ刃部。
【請求項9】
前記ワイパー刃の刃長が、0.01mm~3mmである請求項に記載の切れ刃部。
【請求項10】
前記切削体の上に、いくつかの前記切れ刃方向とは反対の螺旋形の第2切屑排出溝が設置され、
前記第2切屑排出溝が、前記切削体の前端面からその側面に延伸し、
各前記第2切屑排出溝が、前記切削体の中心軸円周方向に沿って設置され、
前記第2切屑排出溝が、各前記切れ刃をいくつかの段に分割する請求項1に記載の切れ刃部。
【請求項11】
前記第2切屑排出溝の螺旋角が、20°~40°である請求項10に記載の切れ刃部。
【請求項12】
互いに隣接する2つの前記第2切屑排出溝の間の間隔が、0.25mm~0.75mmであり、
前記第2切屑排出溝の溝深さが、0.05mm~0.15mmである請求項10に記載の切れ刃部。
【請求項13】
基部をさらに含み、
前記基部が、前記切削体の後端面に固定接続され、
前記基部の材質が、炭化タングステン基超硬合金である請求項1~12のいずれか1項に記載の切れ刃部。
【請求項14】
工具シャンクおよび前記工具シャンク前端に取り付けられた請求項1~13のいずれか1項に記載の前記切れ刃部を含み、
前記工具シャンクが、前記切削体の後端面に接続された切削工具。
【請求項15】
前記工具シャンクの材質が、炭化タングステン基超硬合金であり、
前記切れ刃部が、さらに、基部を含み、
前記基部が、前記切削体の後端面に固定接続され、
前記基部の材質が、炭化タングステン基超硬合金であり、
前記工具シャンクが、前記基部の後端面に真空溶接された請求項14に記載の切削工具。
【請求項16】
請求項14または15に記載の切削工具を含む超音波工具アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密加工工具の技術分野に関するものであり、特に、硬脆性難削材加工用ダイヤモンド切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ガラス、セラミック、またはサファイア等の硬脆性材料の加工分野では、ガラス、セラミック、またはサファイア等を加工しなければならない。それに応じて、異なる種類の切削工具を使用する必要がある。
【0003】
伝統的な切削工具は、一般的に、高速度鋼または超硬合金材料を用いて製造される。PCD(Polycrystalline diamond, 多結晶ダイヤモンド)は、一種の人工ダイヤモンドであり、硬度が高く、圧縮強度が高く、熱伝導率と耐摩耗性に優れるといった特性を有するため、加工業に望まれている。PCD材料の普及に伴い、PCD切削工具が登場し、伝統的な切削工具の限界を突破した。
【0004】
現有のPCD切削工具は、PCDを薄片にカットした後、超硬合金の切削体に溶接して切削ブレードを作るが、切削体の外径および溶接技術が制限されることにより、スナップイン式PCD切削工具は、通常、せいぜい極少数のPCD薄片(例えば、3枚の切削工具または4枚の切削工具等)しか溶接することができず、多数のブレードの切削工具を製造することができないため、切削工具の切削効果が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、現有技術および構造の不足を克服することであり、切削工具、その切れ刃部、および前記切削工具を含む超音波工具アセンブリを提供し、スナップイン式PCD切削工具に対して、同じ外径の多結晶ダイヤモンド切削体の上にさらに多くの切れ刃を設置することができ、切削刃の形式および構造の設計がより多様化されることにより、切削効果を上げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を実現するため、本発明の第1方面は、切削工具に用いる切れ刃部を提供し、前記切れ刃部の材質は、多結晶ダイヤモンドであり、前記切れ刃部は、一体成型された切削体およびいくつかの切れ刃を含み、前記切れ刃は、螺旋状であり、各前記切れ刃は、前記切削体の中心軸円周方向に沿って前記切削体の外表面に設置され、互いに隣接する2つの前記切れ刃の間に、第1切屑排出溝が設置される。前記切れ刃の第1端部は、前記切削体の前端面に設置され、且つ前記切れ刃が順番に前記切削体の前端面および前記切削体の側面に沿って延伸するため、前記切れ刃の第2端部は、前記切削体の側面に設置される。
【0007】
好ましい方案として、前記切れ刃部は、さらに、前記切削体の上に一体成形されたワイパー刃を含み、前記ワイパー刃は、前記切れ刃の第1端部に設置され、且つ前記切れ刃と平滑に遷移する。
【0008】
好ましい方案として、前記切削体は、1つの端面を介して固定接続された切削体端部および接続部を含み、前記切れ刃の第1端部は、前記切削体端部の前端面に設置され、且つ前記切れ刃が順番に前記切削体端部の前端面および前記切削体端部の側面に沿って延伸するため、前記切れ刃の第2端部は、前記切削体端部の側面に設置され、且つ前記切れ刃の第2端部は、前記切削体端部と前記接続部の接続部分に位置する。
【0009】
好ましい方案として、前記切削体端部は、同軸で、且つ固定接続されるとともに、階段状に形成された第1切削部および第2切削部を含み、前記第1切削部の外径は、前記第2切削部の外径よりも小さく、前記第2切削部と前記接続部は、固定接続される。
【0010】
好ましい方案として、前記第1切削部の前端面とその側面の間、前記第1切削部と前記第2切削部の間、前記第2切削部の前端面とその側面の間は、いずれも円弧遷移接続を採用する。
【0011】
好ましい方案として、前記切削体の前端面の中心部分に、冷却溝が設置され、前記切れ刃の第1端部は、前記冷却溝の外辺縁に設置される。
【0012】
好ましい方案として、前記切れ刃の螺旋方向は、左旋であっても、右旋であってもよく、前記切れ刃の螺旋角は、15~60°である。
【0013】
好ましい方案として、前記切削体の外径は、0.5mm~135mmであり、前記切れ刃の刃数は、前記切れ刃の刃幅によって決定され、前記切れ刃の刃幅は、0.01mm~0.2mmであり、前記切れ刃の刃長は、0.1mm~15mmである。
【0014】
好ましい方案として、前記第1切屑排出溝の溝深さは、0.05mm~0.3mmである。
【0015】
好ましい方案として、前記ワイパー刃の刃長は、0.01mm~3mmである。
【0016】
好ましい方案として、前記切削体の上に、いくつかの前記切れ刃方向とは反対の螺旋形の第2切屑排出溝が設置され、前記第2切屑排出溝は、前記切削体の前端面からその側面に延伸し、各前記第2切屑排出溝は、前記切削体の中心軸円周方向に沿って設置される。前記第2切屑排出溝は、各前記切れ刃をいくつかの段に分割する。
【0017】
好ましい方案として、前記第2切屑排出溝の螺旋角は、20°~40°である。
【0018】
好ましい方案として、互いに隣接する2つの前記第2切屑排出溝の間の間隔は、0.25mm~0.75mmであり、前記第2切屑排出溝の溝深さは、0.05mm~0.15mmである。
【0019】
好ましい方案として、前記切れ刃部は、さらに、基部を含み、前記基部は、前記切削体の後端面に固定接続され、前記基部の材質は、炭化タングステン基超硬合金である。
【0020】
同様の目的で、本発明の第2方面は、工具シャンクおよび前記工具シャンク前端に取り付けられた上記に記載の前記切れ刃部を含む切削工具を提供し、前記工具シャンクは、前記切削体の後端面に接続される。
【0021】
好ましい方案として、前記工具シャンクの材質は、炭化タングステン基超硬合金であり、前記切れ刃部は、さらに、基部を含み、前記基部は、前記切削体の後端面に固定接続され、前記基部の材質は、炭化タングステン基超硬合金であり、前記工具シャンクは、前記基部の後端面に真空溶接される。
【0022】
同様に、本発明の第3方面は、さらに、上記に記載の前記切削工具を含む超音波工具アセンブリを提出する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、切削工具、切削工具の切れ刃部、および切削工具を含む超音波工具アセンブリを提供し、現有技術に対して、以下の有益な効果を有する。
【0024】
多結晶ダイヤモンド材料を用いて切れ刃部を製造することにより、切れ刃の硬度および強度を有効に上げ、加工精度および加工効率を上げることができる。また、切れ刃部の切れ刃を一体成形により切削体の表面に設置することにより、スナップイン式PCD切削工具に対して、同じ外径の多結晶ダイヤモンド切削体の上にさらに多くの切れ刃を成形することができ、切れ刃の形式および構造の設計がさらに多様化される。また、いくつかの切れ刃を切削体の中心軸円周方向に沿って分布させることにより、複数の切れ刃が比較的大きな切削力を共同で耐えられるようになり、強度が保証される。また、切れ刃を螺旋状にすることにより、各切れ刃の削力を弱めることができ、比較的高い切削速度および比較的大きな供給量に適応させて、加工効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0026】
図1】本発明の実施形態における切れ刃部の構造概略図である。
図2図1のAの部分の局部拡大図である。
図3図1のBの部分の局部拡大図である。
図4】本発明の実施形態における切れ刃部の切削体端部の構造概略図である。
図5】本発明の実施形態における切れ刃部の切れ刃およびワイパー刃の側面の輪郭概略図である。
図6】本発明の実施形態における切削工具の構造概略図である。
図7】本発明の実施形態における別の視角から見た切削工具の構造概略図である。
図8図7の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面と実施形態を組み合わせて、本発明の具体的な実施方式についてさらに詳しく説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0028】
本発明の説明において、理解すべきこととして、「上」、「下」、「左」、「右」、「頂」、「底」等の用語が示す方位または位置関係は、添付図面に基づく方位または位置関係であり、単に本発明を説明しやすくし、簡単にするためのものであって、ここで示す装置または部品が必ずしも特定の方位を有し、特定の方位で構造・操作されることを示す、または示唆するものではないため、本発明を限定するものと理解すべきではない。理解すべきこととして、本発明において、「第1」、「第2」等の用語を使用して各情報を説明しているが、これらの情報は、これらの用語に限定されるべきではなく、これらの用語は、単に同じ種類の情報を互いに区別するために用いるだけのものである。例えば、本発明の範囲から逸脱しない状況において、「第1」情報を「第2」情報と称してもよく、同様に、「第2」情報を「第1」情報と称してもよい。
【0029】
また、説明すべきこととして、本発明の説明において、「前端」および「後端」の用語は、切削工具の使用過程において、加工部品の一端に近い部分が「前端」を指し、加工部品の一端から離れた部分が「後端」を指す。
【0030】
図1図5を参照すると、本発明の好ましい実施形態の第1方面は、切削工具に用いる切れ刃部1を提出し、前記切れ刃部1の材質は、多結晶ダイヤモンドであり、前記切れ刃部1は、一体成形された切削体11およびいくつかの切れ刃12を含み、前記切れ刃12は、螺旋状であり、各前記切れ刃12は、前記切削体11の中心軸円周方向に沿って前記切削体11の外表面に設置され、互いに隣接する2つの前記切れ刃12の間に、第1切屑排出溝13が設置される。前記切れ刃12の第1端部は、前記切削体11の前端面に設置され、且つ前記切れ刃12が順番に前記切削体11の前端面および前記切削体11の側面に沿って延伸するため、前記切れ刃12の第2端部は、前記切削体の側面に設置される。
【0031】
加工過程において、切れ刃部1が各切れ刃12の回転に連動して回転し、加工部品に対して材料の切除を行って、切削過程において発生した切屑を第1切屑排出溝13から排出することにより、切屑が加工過程において不利な影響を与えないようにすることができる。
【0032】
上述した技術方案に基づき、本実施形態において、切削工具に用いる切れ刃部1を提供し、切れ刃部1は、多結晶ダイヤモンドで製造され、且つ切削体11と切れ刃12が一体成形を採用することにより、現有のスナップイン式PCD切削工具に対して、同じ外径の切削体11の上にさらに多くの切れ刃12を成形することができ、切れ刃12の形式および構造の設計がさらに多様化される。同時に、PCD薄片を切削体の上に溶接して強度不足の問題を回避することができるため、多結晶ダイヤモンド材料の特性を十分に利用して、切れ刃部1の切削強度を上げることができ、それにより、切削精度および切削作業効率を有効に向上させるとともに、切削工具の使用寿命を延長することができる。本実施形態は、輪郭形状が螺旋形状の切れ刃12を設計することにより、より高い切削速度および供給量に適応させることができ、それにより、加工効率をさらに上げることができる。
【0033】
例を挙げて説明すると、本実施形態において、切削体11と切れ刃12の一体成形方法は、主に2種類あり、第1の種類は、例えば、鋳造、付加製造等の累積材料成形であり、もう1つの種類は、例えば、フライス削り、放電切断、レーザー切断、化学腐食等の切削体11の素材において材料を除去した後に切れ刃12を加工して形成する方法である。
【0034】
選択可能な実施方式として、前記切れ刃部1は、具体的に、加工対象に対してフライス削りを行って必要な輪郭を成形するために使用することができるフライスであり、具体的に、加工対象は、主に、ガラス製品、セラミック製品、またはサファイア製品等である。
【0035】
具体的に、図3を参照すると、切れ刃部1は、さらに、前記切削体11の上に一体成形されたワイパー刃17を含み、前記ワイパー刃17は、前記切れ刃12の第1端部に設置され、且つ前記切れ刃12と平滑に遷移し、ワイパー刃17を切れ刃部1の前端面に設置することにより、加工部品上の加工傷を除去して、表面の平滑度を上げることができ、好ましくは、ワイパー刃17と切れ刃12が接触し、且つワイパー刃17を水平に設置する。再度図5を参照すると、ワイパー刃17の一端に逃がしを設け、且つ図中のαの角度を鈍角にすることにより、応力が集中するのを防止し、ワイパー刃17の他端と切れ刃12を接触させて設置することができる。
【0036】
具体的な実施形態において、前記切削体11は、1つの端面を介して固定接続された切削体端部111および接続部112を含み、前記切れ刃12の第1端部は、前記切削体端部111の前端面に設置され、且つ前記切れ刃12が順番に前記切削体端部111の前端面および前記切削体端部111の側面に沿って延伸するため、前記切れ刃12の第2端部は、前記切削体端部111の側面に設置され、且つ前記切れ刃12の第2端部は、前記切削体端部111と前記接続部112の接続部分に位置する。切れ刃12が切削体端部111の外表面を覆うだけで、切削要求を満たし、且つ切れ刃12の加工を簡易化することができる。
【0037】
さらに、再度図1および図4を参照するとわかるように、前記切削体端部111は、同軸で、且つ固定接続されるとともに、階段状に形成された第1切削部1111および第2切削部1112を含み、前記第1切削部1111の外径は、前記第2切削部1112の外径よりも小さく、前記第2切削部1112と前記接続部112は、固定接続され、前記切れ刃12の第1端部は、前記切削体端部111の前端面に設置され、且つ前記切れ刃12は、順番に、前記第1切削部1111の前端面、前記第1切削部1111の側面、前記第2切削部1112の前端面の突出部分、および前記第2切削部1112の側面に沿って延伸するため、前記切れ刃12の第2端部は、前記第2切削部1112の側面に設置される。切れ刃12の輪郭線をさらに複雑にすることにより、加工精度の要求に対するさらに厳しい状況を満足させ、切削能力を高めることができる。
【0038】
加工過程中に加工部品がかけるのを防ぐため、前記第1切削部1111の前端面と側面の間、前記第1切削部1111と前記第2切削部1112の間、前記第2切削部1112の前端面と側面の間は、いずれも円弧遷移接続を採用する。具体的に図3を参照するとわかるように、切削体11の縦断面の図において、側面の輪郭線が複数段の円弧と直線で接続された曲線状を含むことにより、切削体11の表面に成形された切れ刃12が複数段の円弧と直線で接続されたスプライン曲線になり、切れ刃12の形状をさらに複雑にし、加工材料の脆い部品に適用することができる。
【0039】
好ましくは、本実施形態において、前記切削体11の前端面の中心部分に、冷却溝14が設置され、前記切れ刃12の第1端部は、前記冷却溝14の外辺縁に設置される。冷却溝14は、切れ刃12を冷却して、切れ刃12の熱損傷を有効に減らすことができ、且つ冷却溝14を切削体11の前端面の中心部分に設置することにより、冷却溝14の冷却をさらに均一にして、理想的な冷却効果を得ることができる。
【0040】
さらに、本実施形態における切れ刃12の螺旋方向は、左旋であっても、右旋であってもよい。
【0041】
好ましくは、本実施形態において、前記切れ刃12の螺旋角は、15°~60°であり、螺旋角を適切に増やすことにより、工具の加工過程における切削力を減らし、工具の対衝撃性を強め、切れ刃振れを防止することができるとともに、さらに優れた表面加工品質を保証し、切削工具の使用寿命を延ばすことができる。上述した螺旋角度に基づき、切れ刃12の強度、鋭利程度、切削力の大きさ、および切屑の排出速度をいずれも十分理想的にすることができる。
【0042】
さらに、好ましい実施形態として、前記切削切れ刃部1の切削体11の外径は、0.5mm~135mmであり、前記切れ刃12の個数は、前記切れ刃12の刃幅により決定され、切削体11の外径が確定された後、切れ刃12の刃幅が小さくなれば小さくなるほど、切れ刃12の個数が大きくなる。前記切れ刃12の刃幅は、0.01mm~0.2mmであり、前記切れ刃12の刃長は、0.1mm~15mmであり、以上の切削体11の外径および切れ刃2の刃幅の限定に基づき、切れ刃部1の上に3~150個の、さらには、より多くの切れ刃12を設置してもよい。具体的に、本実施形態において、切れ刃12の刃幅は、前記切れ刃12の両側面の間の距離を指し、例えば、図2に示したaが切れ刃の刃幅であり、切れ刃12の刃長は、前記切れ刃12の前記切削体11の側面にある一端から前記切削体11の前端面の間の距離を指し、例えば、図4および図5に示したLが切れ刃12の刃長である。切れ刃12の個数を適切に増やすことにより、切削力を各切れ刃12に均一に分配することができるため、切削工具は、さらに大きな切削力に耐えることができ、さらに高い切削速度および供給量に適応させることができるとともに、刃幅を縮小して加工精度を上げることができ、刃長により切れ刃12の有効作用範囲を決定し、上記の適合する切れ刃12の個数、刃幅、および刃長を利用することにより、切削工具は、理想的な加工精度を有すると同時に、加工効率を保証することができる。
【0043】
さらに、切れ刃12の表面粗さの範囲は、0.2~0.4μmであり、その値が小さくなれば小さくなるほど、滑らかであることを示し、上述した表面粗さでは、切れ刃12の刃口が滑らかで鋭利になり、切削される加工対象の表面精度が保証される。
【0044】
具体的に、第1切屑排出溝13の深さは、相対する切れ刃12の刃幅および刃長と適合しなければならず、上述した切れ刃12の刃幅および刃長に基づき、前記第1切屑排出溝13の溝深さを、好ましくは、0.05mm~0.3mmにすることにより、加工精度および加工効果をさらに向上させて、加工効率を上げ、同時に、切削工具の使用寿命を延ばすこともできる。
【0045】
具体的な実施形態において、上述したワイパー刃17の刃長は、0.01mm~3mmであり、図3および図5を参照すると、ワイパー刃17の刃長は、ワイパー刃17の切削体11の径方向に沿った投影長さbを指す。
【0046】
切屑排出効率を上げて、切削工具の加工効率を上げるために、前記切削体11の上に、いくつかの前記切れ刃12の方向とは反対の螺旋形の第2切屑排出溝15を設置し、前記第2切屑排出溝15は、前記切削体11の前端面からその側面に延伸し、各前記第2切屑排出溝15は、前記切削体11の中心軸円周方向に沿って設置される。前記第2切屑排出溝15は、具体的に、図2を参照するとわかるように、各前記切れ刃12をいくつかの段に分割する。
【0047】
具体的には、第2切屑排出溝15の関連パラメータは、上述した切れ刃12のパラメータと一致し、本実施形態における第2切屑排出溝15の具体的なパラメータは、好ましくは、第2切屑排出溝15の螺旋角が20°~40°であり、互いに隣接する2つの前記第2切屑排出溝15の間の間隔が0.25mm~0.75mmであり、前記第2切屑排出溝15の溝深さが切れ刃の刃幅よりも小さいか、それに等しく、具体的には、0.05mm~0.15mmである。
【0048】
成形しやすいよう、前記切れ刃部1は、さらに、基部16を含み、前記基部16は、前記切削体11の後端面に固定接続され、前記基部16の材質は、炭化タングステン基超硬合金である。例を挙げて説明すると、切れ刃部1の具体的な成形過程は、まず、炭化タングステン基超硬合金の基部16をベースとして、天然またはダイヤモンド粉末と結合剤を高温(1000℃~2000℃)、高圧(5~10万個大気圧)で基部16の上に焼結して切削体11を形成してから、材料を除去して加工し、切削体11の外表面に切れ刃12を成形する。
【0049】
本実施形態の第2方面は、さらに、切削工具を提供し、具体的に図5図7を参照すると、工具シャンク2および前記工具シャンク2の前端に取り付けられた上記に記載の前記切れ刃部1を含み、前記工具シャンク2は、前記切削体11の後端面に接続される。上述した前記切れ刃部1を含むことにより、一体型PCD切削工具として、上述した切れ刃部1の全ての有益効果を有するため、ここでは繰り返し説明しない。
【0050】
好ましくは、前記工具シャンク2の材質は、炭化タングステン基超硬合金であり、前記切れ刃部1は、さらに、基部16を含み、前記基部16の材質は、炭化タングステン基超硬合金であり、前記基部16は、前記切削体11の後端面に固定接続される。前記工具シャンク2は、前記基部16の後端面と真空溶接される。したがって、切れ刃部1の基部16と工具シャンク2は、同じ炭化タングステン基超硬合金を用いて製造されるため、同じ材料特性を有し、基部16と工具シャンク2の溶接時の変形量を近づけることにより、溶接構造安定性をさらに理想的にし、溶接強度を保証することができる。
【0051】
例を挙げて説明すると、基部16と工具シャンク2は、銀ろう溶接層を介して溶接して形成される。銀ろう溶接層は、銀ろう溶接材料により硬化して形成され、銀ろう溶接材料を溶接過程において溶融して、基部16と工具シャンク2の接続を実現し、硬化後に両者を固定する。具体的には、銀ろう溶接材料は、銀を基部材料としてその他の合金と結合して形成される。本実施形態において、銀ろう溶接層の設置により、工具シャンク2と基部16は、さらに優れた溶接固定効果を有することができる。
【0052】
例を挙げて説明すると、上述した基部16と工具シャンク2において採用する炭化タングステン基超硬合金は、いずれも硬質相である炭化タングステンと金属粘着相で構成された焼結材料である。さらに、焼結材料中のコバルトの質量百分率は、12%を超えない。
【0053】
具体的な実施形態において、当該切削工具の輪郭度は、0.01mmよりも小さい。ここで、輪郭度とは、測定された実際の輪郭の理想の輪郭に対する変動状況を指し、基準があっても、基準がなくてもよい。切削工具の輪郭度を限定することにより、当該切削工具は、さらに優れた加工精度および加工効果を有することができる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態の第3方面は、さらに、上述した前記切削工具を含む超音波工具アセンブリを提出し、上述した切削工具を含むことにより、上述した切削工具の全ての有益効果を有するため、ここでは繰り返し説明しない。
【0055】
〔実施形態1〕
具体的な実施形態は、切削工具を提供し、前記切れ刃部1は、60個の前記切れ刃12を含む。
【0056】
上述した切れ刃12の数量制限の下で、上記切削工具を用いてガラスを加工し、現有のスナップイン式PCD切削工具(3個の切れ刃を含む)およびダイヤモンド研削ヘッド(600#)の使用パラメータおよび使用寿命と比較して、下記の表に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
上述した切れ刃12の数量制限の下で、上記切削工具を用いてセラミック加工品を加工し、現有のスナップイン式PCD切削工具(3個の切れ刃を含む)およびダイヤモンド研削ヘッド(600#)の使用パラメータおよび使用寿命と比較して、下記の表に示した。
【0059】
【表2】
【0060】
上述した切れ刃12の数量制限の下で、上記切削工具を用いてサファイアを端面仕上げ加工し、現有のスナップイン式PCD切削工具(3個の切れ刃を含む)およびダイヤモンド研削ヘッド(600#)の使用パラメータおよび使用寿命と比較して、下記の表に示した。
【0061】
【表3】
【0062】
上記3つの表からわかるように、本実施形態の切削工具は、上述した切れ刃12の限定条件に基づくと、本実施形態の切削工具は、ガラス、セラミック、およびサファイア部品を加工した時、現有のスナップイン式PCD切削工具および常用されるダイヤモンド研削ヘッドに対して、加工効果がさらに優れており、加工効率がさらに高く、使用寿命がさらに長い。
【0063】
〔実施形態2〕
具体的な実施形態2は、切削工具を提供し、前記切れ刃部1は、70個の前記切れ刃12を含み、切れ刃12の螺旋角は、58°であり、切れ刃12の刃幅は、0.10mmであり、切れ刃12の刃長は、2mmであり、切れ刃12の表面粗さは、0.3μmである。第1切屑排出溝13の溝深さは、0.10mmである。第2切屑排出溝15の螺旋角は、26°であり、第2切屑排出溝15の溝深さは、0.10mmであり、互いに隣接する2つの第2切屑排出溝15の間の間隔は、0.55mmである。
【0064】
本実施形態の切削工具は、上述したパラメータの限定条件に基づくと、本実施形態の切削工具は、加工精度および加工効果がいずれも比較的優れた効果を達成することができ、加工効率がさらに高く、使用寿命が伝統的な硬質合金切削工具および現有のスナップイン式PCD切削工具よりもさらに長い。
【0065】
〔実施形態3〕
本具体的な実施形態は、80個の切れ刃12を含む切削工具を提供し、切れ刃12の螺旋角は、52°であり、切れ刃12の刃幅は、0.06mmであり、切れ刃12の刃長は、1.6mmであり、切れ刃12の表面粗さは、0.2μmである。第1切屑排出溝13の溝深さは、0.08mmである。第2切屑排出溝15の螺旋角は、22°であり、第2切屑排出溝15の溝深さは、0.08mmであり、互いに隣接する2つの第2切屑排出溝15の間の間隔は、0.40mmである。
【0066】
本発明の実施形態における切削工具は、上述したパラメータの限定条件に基づくと、切削工具の加工効果が比較的優れており、加工精度がさらに高く、加工効率がさらに高く、使用寿命が伝統的な硬質合金切削工具および現有のスナップイン式PCD切削工具よりもさらに長い。
【0067】
〔実施形態4〕
本実施形態は、64個の切れ刃12を含む切削工具を提供し、切れ刃12の螺旋角は、66°であり、切れ刃12の刃幅は、0.14mmであり、切れ刃12の刃長は、2.8mmであり、切れ刃12の表面粗さは、0.36μmである。第1切屑排出溝13の溝深さは、0.12mmである。第2切屑排出溝15の螺旋角は、38°であり、第2切屑排出溝15の溝深さは、0.12mmであり、互いに隣接する2つの第2切屑排出溝15の間の間隔は、0.65mmである。
【0068】
本発明の実施形態における切削工具は、上述したパラメータの限定条件に基づくと、切削工具の加工効果が比較的優れており、加工精度がさらに高く、加工効率がさらに高く、使用寿命が伝統的な硬質合金切削工具および現有のスナップイン式PCD切削工具よりもさらに長い。
【0069】
以上のように、本発明の実施形態は、切削工具、切れ刃1、および切削工具を含む超音波工具アセンブリを提供し、切削工具の切れ刃部1の材質は、多結晶ダイヤモンドであり、且ついくつかの切れ刃12を一体成型により切削体11の外表面に設置して、切れ刃部1を形成することにより、現有のスナップイン式PCD切削工具に対して、同じ外径の切削体11の上にさらに多くの切れ刃12を設置することができ、切れ刃12の形式および構造の設計がさらに多様化され、設置した複数の多結晶ダイヤモンド切れ刃12により、切削工具の切削強度および硬度を向上させることができ、それにより、切削工具の加工精度を上げ、使用寿命を延ばすことができる。また、切れ刃部1の表面に、その中心軸円周方向に沿っていくつかの螺旋状の切れ刃12を設置することにより、さらに高い回転速度および切り込み量に適応させることができ、それにより、加工効率を上げることができる。
【0070】
以上、上記は単なる本発明の好ましい実施形態であり、本技術分野における普通の技術者であれば、本発明の技術原理から離脱しないことを前提として、いくつかの修正および置き換えをさらに行うことができ、これらの修正および置き換えも本発明の保護範囲とみなされるべきであることを指摘しなければならない。
【符号の説明】
【0071】
1:切れ刃部
2:工具シャンク
11:切削体
12:切れ刃
13:第1切屑排出溝
14:冷却溝
15:第2切屑排出溝
16:基部
17:ワイパー刃
111:切削体端部
112:接続部
1111:第1切削部
1112:第2切削部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8