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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-26
(45)【発行日】2022-08-03
(54)【発明の名称】栽培支援装置、及び栽培支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20220727BHJP
【FI】
G06Q50/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021522657
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012689
(87)【国際公開番号】W WO2020241005
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2019101050
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020013568
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518189998
【氏名又は名称】株式会社アクアソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 正明
(72)【発明者】
【氏名】奥山 祐一
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-296940(JP,A)
【文献】特開2018-108041(JP,A)
【文献】特開2011-050293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0050948(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
A01G 7/00
A01G 27/00
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノバブル水を用いた作物の栽培を支援する栽培支援装置であって、
前記ナノバブル水の利用条件に関する第一情報を、前記作物の栽培者毎に取得する第一情報取得部と、
前記栽培の成果に関する第二情報を、前記栽培者毎に取得する第二情報取得部と、
前記栽培者毎の前記第一情報及び前記第二情報から、前記利用条件と前記成果との対応関係を特定する対応関係特定部と、
前記成果に対する指定を受け付ける指定受付部と、
前記作物についての前記利用条件以外の栽培条件に関する第三情報を、前記栽培者毎に取得する第三情報取得部と、
栽培期間中における前記作物の生育状態に関する第四情報を、前記栽培者毎に取得する第四情報取得部と、
前記対応関係に基づき、指定された前記成果に応じた前記利用条件を導出する条件導出部と、を有し、
前記対応関係特定部は、前記栽培者毎の前記第一情報、前記第三情報及び前記第四情報から、前記利用条件及び前記栽培条件と前記栽培期間中における前記作物の前記生育状態との一次対応関係を特定し、且つ、前記栽培者毎の前記第二情報及び前記第四情報から、前記栽培期間中における前記作物の前記生育状態と前記成果との二次対応関係を特定して、前記一次対応関係及び前記二次対応関係を含む前記対応関係を特定し、
前記指定受付部が前記成果に対する指定を受け付けた場合、前記条件導出部は、前記対応関係に基づき、前記成果の指定を行った前記栽培者の前記第三情報が示す前記栽培条件と対応し、且つ指定された前記成果に応じた前記利用条件を導出する、栽培支援装置。
【請求項2】
前記対応関係特定部は、前記栽培者毎の前記第一情報及び前記第二情報を用いた機械学習を実施することで前記対応関係を特定する、請求項1に記載の栽培支援装置。
【請求項3】
前記指定受付部は、観点が異なる複数の前記成果のそれぞれに対する指定を、それぞれの前記成果に対して設定されたウェイトと共に受け付け、
前記条件導出部は、より大きい前記ウェイトが設定された前記成果を優先するように、指定された複数の前記成果に応じた前記利用条件を導出する、請求項1又は2に記載の栽培支援装置。
【請求項4】
前記第一情報は、前記ナノバブル水の利用時期、1回の利用における前記ナノバブル水の使用量、前記ナノバブル水の利用頻度、単位容量あたりの前記ナノバブル水中に含まれる気泡の個数、前記気泡の粒径、前記気泡を構成する気体の種類、前記気泡のゼータ電位、前記ナノバブル水を生成する装置の運転条件、並びに、前記ナノバブル水の原水の状態及び特徴量のうちの少なくとも一つを示す情報である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の栽培支援装置。
【請求項5】
前記第二情報は、前記作物における収穫物の性状、前記収穫物の収穫量、前記収穫物の収穫時期、及び、前記作物における前記収穫物以外の部分の状態のうちの少なくとも一つを示す情報である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の栽培支援装置。
【請求項6】
前記第二情報は、前記作物の栽培場所にてセンサによって測定された前記作物の特徴量を示す情報、前記作物から採取した被採取部分について測定された前記被採取部分の特徴量を示す情報、前記栽培者が表した前記成果の内容を示す言語情報、及び、前記作物の画像情報のうちの少なくとも一つを含んでいる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の栽培支援装置。
【請求項7】
前記第四情報は、前記作物の栽培場所にてセンサによって測定された前記作物の特徴量を示す情報、前記作物から採取した被採取部分について測定された前記被採取部分の特徴量を示す情報、前記栽培者が表した前記作物の前記生育状態を示す言語情報、及び、前記作物の画像情報のうちの少なくとも一つを含んでいる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の栽培支援装置。
【請求項8】
前記第四情報取得部は、同一の前記栽培者が同一の前記作物を栽培している前記栽培期間中に取得時期を変えて前記第四情報を複数回取得し、
前記対応関係特定部は、前記利用条件及び前記栽培条件と、前記栽培期間中に複数回取得した前記第四情報から特定される前記作物の前記生育状態の経時変化と、の前記一次対応関係を特定し、且つ、前記経時変化と前記成果との前記二次対応関係を特定する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の栽培支援装置。
【請求項9】
対象栽培者が栽培する前記作物についての前記第四情報と、前記二次対応関係とに基づいて、前記対象栽培者が栽培する前記作物についての前記成果の内容を予測する成果予測部と、
前記成果予測部によって予測された前記成果の内容が、予め設定された基準を満たしていない場合に、前記対象栽培者に対して警告を発生する警告発生部と、を更に有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の栽培支援装置。
【請求項10】
前記指定受付部は、前記栽培者によって操作される通信端末から、前記栽培者が前記通信端末を通じて指定した前記成果を示すデータを受信することにより、前記成果の指定を受け付け、
前記条件導出部が導出した前記利用条件を、前記通信端末に対して出力する条件出力部を更に有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の栽培支援装置。
【請求項11】
前記条件出力部は、前記条件導出部が導出した前記利用条件、及び、前記条件導出部が導出した前記利用条件の下で得られる前記成果の内容を前記栽培者に対して提示するためのデータを前記通信端末に向けて送信する、請求項10に記載の栽培支援装置。
【請求項12】
前記指定受付部は、前記栽培者が指定した前記成果を表す言語情報を取得することで、前記成果に対する指定を受け付ける、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の栽培支援装置。
【請求項13】
コンピュータにより、ナノバブル水を用いた作物の栽培を支援する栽培支援方法であって、
コンピュータが、前記ナノバブル水の利用条件に関する第一情報を、前記作物の栽培者毎に取得する工程と、
コンピュータが、前記栽培の成果に関する第二情報を、前記栽培者毎に取得する工程と、
コンピュータが、前記栽培者毎の前記第一情報及び前記第二情報から、前記利用条件と前記成果との対応関係を特定する工程と、
コンピュータが、前記成果に対する指定を受け付ける工程と、
コンピュータが、前記作物についての前記利用条件以外の栽培条件に関する第三情報を、前記栽培者毎に取得する工程と、
コンピュータが、栽培期間中における前記作物の生育状態に関する第四情報を、前記栽培者毎に取得する工程と、
コンピュータが、前記対応関係に基づき、指定された前記成果に応じた前記利用条件を導出する工程と、を有し、
前記対応関係を特定する工程において、コンピュータは、前記栽培者毎の前記第一情報、前記第三情報及び前記第四情報から、前記利用条件及び前記栽培条件と前記栽培期間中における前記作物の前記生育状態との一次対応関係を特定し、且つ、前記栽培者毎の前記第二情報及び前記第四情報から、前記栽培期間中における前記作物の前記生育状態と前記成果との二次対応関係を特定して、前記一次対応関係及び前記二次対応関係を含む前記対応関係を特定し、
前記成果に対する指定を受け付けた場合、前記利用条件を導出する工程において、コンピュータは、前記対応関係に基づき、前記成果の指定を行った前記栽培者の前記第三情報が示す前記栽培条件と対応し、且つ指定された前記成果に応じた前記利用条件を導出することを特徴とする栽培支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培支援装置、及び栽培支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業が注目されており、新規就農者の数が増加傾向にある。しかし、作物を栽培することは一般的に難しく、特に初心者の場合には経験等が乏しいために、良好な栽培の成果が得られ難い。また、これまでの農業では、農家の勘、経験及び直感等に頼るところが多々あり、そのことが作物栽培の実施をより一層困難にしていた。
【0003】
以上のような事情から、作物の栽培を支援する技術が開発されており、例えば、栽培の条件及び成果に関するデータを蓄積し、その蓄積されたデータを利用して、良好な成果が得られる栽培条件を栽培者(支援対象者)に提案する技術が既に存在する。
【0004】
一例を挙げて説明すると、特許文献1に記載の技術は、植物の栽培を支援する情報処理装置である。この装置によれば、複数のユーザのそれぞれが栽培する植物毎の状況を示す栽培情報を取得し、取得した栽培情報に基づいて、植物が置かれた環境毎に最適となる育成モデルを生成又は更新し、支援対象ユーザが栽培する植物の状況を示す栽培情報と、育成モデルとに基づいて、支援対象ユーザが植物を栽培する際に支援となる栽培支援情報を生成することができる(例えば、特許文献1の[請求項1]を参照)。これにより、初心者であっても上手に植物を栽培することが可能となる。
【0005】
また、特許文献2に記載の技術は、生体の育成を支援する育成支援システムである。このシステムによれば、育成の状況を表す情報を記憶手段に記憶し、育成の状況を評価し、現在の育成の状況を表す情報を取得し、評価が現在の育成の状況よりも優れている育成の状況を表す情報を、比較対象となる情報として記憶手段から抽出し、抽出された比較対象となる情報と現在の育成の状況を表す情報とを比較することにより、現在の育成を行っているユーザに向けた支援情報を作成することができる(例えば、特許文献2の[請求項1]を参照)。これにより、生体の育成に関してユーザに提供するアドバイスの質を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2017/104841号
【文献】特開2012-83986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ナノバブル水を利用することで作物の生育(成長)が促進される等、作物栽培におけるナノバブル水の効果が既に知られている。ただし、ナノバブル水の効果を好適に発揮させるための条件は、栽培する作物の種類及び環境等に応じて変化するので、一般的には、ナノバブル水を利用した栽培を実際に行って経験を積むことで明らかになる。そのため、経験に乏しい初心者にとっては、作物栽培においてナノバブル水を効果的に利用することが困難である。
【0008】
以上の事情を踏まえると、ナノバブル水の利用条件が作物栽培の成果に及ぼす影響については、データ化(見える化)し、その情報を有効に活用することが望まれる。つまり、ナノバブル水の利用条件に関する情報と、栽培成果に関する情報と、をセットにして取得し、これらの情報を活用することで、ナノバブル水を効果的に利用した作物栽培を実践することが期待され得る。
【0009】
一方、上述した特許文献には、場所及び天候を含む栽培環境に関する情報、並びに、栽培に影響を与える事象の種別(具体的には、栽培者の作業、使用する道具類、肥料及び薬品の種類等)などに関する情報を取得することは記載されているものの、ナノバブル水の利用条件に関する情報を取得することについては何らの記載なされていない。したがって、上述した特許文献に記載した技術を用いたとしても、必ずしも、ナノバブル水を効果的に利用した作物栽培を実践することができるとは限られない。
【0010】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決すること、具体的には、ナノバブル水を効果的に利用した作物栽培を行えるように栽培者を支援することが可能な栽培支援装置及び栽培支援方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の栽培支援装置は、ナノバブル水を用いた作物の栽培を支援する栽培支援装置であって、ナノバブル水の利用条件に関する第一情報を、作物の栽培者毎に取得する第一情報取得部と、栽培の成果に関する第二情報を、栽培者毎に取得する第二情報取得部と、栽培者毎の第一情報及び第二情報から、利用条件と成果との対応関係を特定する対応関係特定部と、成果に対する指定を受け付ける指定受付部と、対応関係に基づき、指定された成果に応じた利用条件を導出する条件導出部と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記のように構成された本発明の栽培支援装置によれば、栽培者がナノバブル水を利用して作物を栽培した際のナノバブル水の利用条件に関する情報、及び、その栽培成果に関する情報を取得し、これらの情報に基づき、栽培者が指定した成果に応じた利用条件を導出することができる。これにより、作物栽培において、栽培者は、経験量に拘わらず、重視する栽培成果が良好な内容となるようにナノバブル水を適切に利用することができる。
【0013】
また、本発明の栽培支援装置において、対応関係特定部は、栽培者毎の第一情報及び第二情報を用いた機械学習を実施することで上記の対応関係を特定すると、好適である。
上記の構成によれば、第一情報及び第二情報を用いた機械学習を実施することで、ナノバブル水の利用条件と栽培成果との対応関係を適切に特定することができる。
【0014】
また、本発明の栽培支援装置において、指定受付部は、観点が異なる複数の成果のそれぞれに対する指定を、それぞれの成果に対して設定されたウェイトと共に受け付け、条件導出部は、より大きいウェイトが設定された成果を優先するように、指定された複数の成果に応じた利用条件を導出すると、好適である。
上記の構成によれば、複数指定された栽培成果のそれぞれをウェイトに応じた内容とするようなナノバブル水の利用条件を導出することができる。
【0015】
また、本発明の栽培支援装置において、第一情報は、ナノバブル水の利用時期、1回の利用におけるナノバブル水の使用量、ナノバブル水の利用頻度、単位容量あたりのナノバブル水中に含まれる気泡の個数、気泡の粒径、気泡を構成する気体の種類、気泡のゼータ電位、ナノバブル水を生成する装置の運転条件、並びに、ナノバブル水の原水の状態及び特徴量のうちの少なくとも一つを示す情報であるとよい。
上述した種類の情報は、ナノバブル水の利用条件に関する第一情報として、適切な情報である。
【0016】
また、本発明の栽培支援装置において、第二情報は、作物における収穫物の性状、収穫物の収穫量、収穫物の収穫時期、及び、作物における収穫物以外の部分の状態のうちの少なくとも一つを示す情報であるとよい。
上述した種類の情報は、栽培成果に関する第二情報として、適切な情報である。
【0017】
また、本発明の栽培支援装置において、第二情報は、作物の栽培場所にてセンサによって測定された作物の特徴量を示す情報、作物から採取した被採取部分について測定された被採取部分の特徴量を示す情報、栽培者が表した成果の内容を示す言語情報、及び、作物の画像情報のうちの少なくとも一つを含んでいるとよい。
上記の構成によれば、様々な取得経路から第二情報を取得することができる。
【0018】
また、本発明の栽培支援装置において、作物についての利用条件以外の栽培条件に関する第三情報を、栽培者毎に取得する第三情報取得部を有し、対応関係特定部は、栽培者毎の第一情報、第二情報及び第三情報から、利用条件及び栽培条件と成果との対応関係を特定し、指定受付部が成果に対する指定を受け付けた場合、条件導出部は、対応関係に基づき、成果の指定を行った栽培者の第三情報が示す栽培条件と対応し、且つ指定された成果に応じた利用条件を導出すると、好適である。
上記の構成によれば、ナノバブル水の利用条件以外の栽培条件を考慮した上で、栽培者が指定した成果に応じた利用条件を導出することができる。
【0019】
また、本発明の栽培支援装置において、栽培期間中における作物の生育状態に関する第四情報を、栽培者毎に取得する第四情報取得部を更に有し、対応関係特定部は、栽培者毎の第一情報、第三情報及び第四情報から、利用条件及び栽培条件と栽培期間中における作物の生育状態との一次対応関係を特定し、且つ、栽培者毎の第二情報及び第四情報から、栽培期間中における作物の生育状態と成果との二次対応関係を特定して、一次対応関係及び二次対応関係を含む対応関係を特定すると、より好適である。
上記の構成では、ナノバブル水の利用条件及び栽培条件と栽培期間中における作物の生育状態との一次対応関係、及び、栽培期間における作物の生育状態と栽培成果との二次対応関係を、それぞれ特定する。これにより、栽培成果への各影響因子と栽培成果との対応関係を、より細やかに特定することができるので、当該対応関係に基づいて導出されるナノバブル水の利用条件についても、より妥当な条件が導出されるようになる。
【0020】
また、本発明の栽培支援装置において、第四情報は、作物の栽培場所にてセンサによって測定された作物の特徴量を示す情報、作物から採取した被採取部分について測定された被採取部分の特徴量を示す情報、栽培者が表した作物の生育状態を示す言語情報、及び、作物の画像情報のうちの少なくとも一つを含んでいるとよい。
上記の構成によれば、様々な取得経路から第四情報を取得することができる。
【0021】
また、本発明の栽培支援装置において、第四情報取得部は、同一の栽培者が同一の作物を栽培している栽培期間中に取得時期を変えて第四情報を複数回取得し、対応関係特定部は、利用条件及び栽培条件と、栽培期間中に複数回取得した第四情報から特定される作物の生育状態の経時変化と、の一次対応関係を特定し、且つ、経時変化と成果との二次対応関係を特定すると、好適である。
上記の構成では、栽培期間中における作物の生育状態の経時変化と、その作物の最終的な栽培成果との対応関係を特定することができる。
【0022】
また、本発明の栽培支援装置において、対象栽培者が栽培する作物についての第四情報と、二次対応関係とに基づいて、対象栽培者が栽培する作物についての成果を予測する成果予測部と、成果予測部によって予測された成果の内容が、予め設定された基準を満たしていない場合に、対象栽培者に対して警告を発生する警告発生部と、を更に有すると、好適である。
上記の構成によれば、栽培成果について現状のままでは好ましい内容とならないことを予測し、その予測結果に応じて栽培者に注意を促すことができるので、栽培者が作物栽培をより適切に行えるように支援することが可能となる。
【0023】
また、本発明の栽培支援装置において、指定受付部は、栽培者によって操作される通信端末から、栽培者が通信端末を通じて指定した成果を示すデータを受信することにより、成果の指定を受け付け、条件導出部が導出した利用条件を、通信端末に対して出力する条件出力部を更に有すると、好適である。
上記の構成によれば、栽培者は、自分の通信端末にて栽培成果を指定し、且つ、指定した成果に応じたナノバブル水の利用条件を、自分の通信端末にて確認することができる。
【0024】
また、本発明の栽培支援装置において、条件出力部は、条件導出部が導出した利用条件、及び、条件導出部が導出した利用条件の下で得られる成果の内容を栽培者に対して提示するためのデータを通信端末に向けて送信すると、より好適である。
上記の構成によれば、栽培者は、指定した成果に応じたナノバブル水の利用条件と共に、その利用条件の下で得られる成果の内容を確認することができ、作物栽培をより適切に(栽培成果の内容を期待しながら)行うことができる。
【0025】
また、本発明の栽培支援装置において、指定受付部は、栽培者が指定した成果を示す言語情報を取得することで、成果に対する指定を受け付けると、好適である。
上記の構成によれば、栽培の成果に対する指定を、その成果を示す言語情報の取得によって受け付けることができる。
【0026】
また、前述の課題を解決するために、本発明の栽培支援方法は、コンピュータにより、ナノバブル水を用いた作物の栽培を支援する栽培支援方法であって、コンピュータが、ナノバブル水の利用条件に関する第一情報を、作物の栽培者毎に取得する工程と、コンピュータが、栽培の成果に関する第二情報を、栽培者毎に取得する工程と、コンピュータが、栽培者毎の第一情報及び第二情報から、利用条件と成果との対応関係を特定する工程と、コンピュータが、成果に対する指定を受け付ける工程と、コンピュータが、対応関係に基づき、指定された成果に応じた利用条件を導出する工程と、を有することを特徴とする。
上記の方法によれば、ナノバブル水を効果的に利用した作物栽培を行えるように栽培者を支援することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ナノバブル水を効果的に利用した作物栽培を行えるように栽培者を支援することが可能な栽培支援装置及び栽培支援方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ナノバブル水生成装置の概念図である。
図2】栽培支援システムの構成を示す図である。
図3】栽培支援装置の構成を機能面から示した図である。
図4】栽培支援フローの流れを示す図である(その1)。
図5】栽培支援フローの流れを示す図である(その2)。
図6】複数指定された栽培成果のそれぞれのウェイトを考慮して最適な条件調整値を導出する手順を説明するために参照されるグラフを示す図である。
図7】成果指定画面の一例を示す図である。
図8】プラン提示画面の一例を示す図である。
図9】変形例に係る栽培支援装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について、添付の図面に示す好適な実施形態(以下、本実施形態という。)を挙げて説明する。
なお、本実施形態は、本発明について分かり易く説明するために挙げた具体的な一つの実施形態ではあるが、本発明は、本実施態様に限定されるものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、後述する画面例(具体的には、図7及び図8に示す画面)は、あくまでも一例に過ぎず、画面のデザイン、構成及び表示内容等については、ユーザの好み及び画面仕様等に応じて自由に設計及び変更することが可能である。
【0030】
また、本明細書において、「装置」とは、装置の構成部品が筐体内に収容された状態で一つのユニットとして取り扱うことが可能なものを含むが、それ以外にも、装置の構成部品が分離して個々に独立した状態で存在していながらも特定の目的を達成するために協働するものとしてまとめられるものも含み得る。
【0031】
また、「作物」は、栽培される一つの個体としてもよく、同じ場所で同時期に栽培される同一品種である複数の個体としてもよいが、本明細書では、特に断る場合を除き、後者を意味することとする。
【0032】
<<ナノバブル水を利用した作物栽培について>>
本実施形態に係る栽培支援装置を説明するにあたり、ナノバブル水を利用した作物栽培について説明する。本実施形態に係る栽培支援装置の支援対象である栽培者は、ナノバブル水を利用して作物を栽培する。
【0033】
ナノバブル水とは、直径が1μm未満の気泡を含む水であって、より正確には、ナノバブルを混入させた水である。「ナノバブルを混入させた水」とは、例えば、後述するナノバブル水生成装置100によって人為的にナノバブルが混入された水であり、元々の性質等に起因して不可避的にナノバブルを含んでいる水は、「ナノバブルを混入させた水」から除外される。ナノバブル水の生成に用いられる水(原水)は、特に限定されず、例えば、雨水、水道水、井水、地表水、農業用水、及び蒸留水等を使用することができる。
そして、ナノバブル水は、植物の成長を促進したり、植物における病虫害の発生を抑制したりする等、作物栽培において好適な効果をもたらすことが知られており、そのような効果を得る目的で利用される。
【0034】
ナノバブル水の生成方法としては、例えば、スタティックミキサー法、ベンチュリ法、キャビテーション法、蒸気凝集法、超音波法、旋回流法、加圧溶解法、及び微細孔法等が挙げられる。これらの生成方法のうち、いずれの方法を用いてもよいが、本実施形態において、栽培者Uは、加圧溶解法によって原水中にナノバブルを生成するナノバブル水生成装置100を利用する。
【0035】
図1は、ナノバブル水生成装置100の概念図である。ナノバブル水生成装置100は、図1に示すように、水を吐出する液体吐出機110と、液体吐出機110から吐出された水に気体を加圧して混入させる気体混入機120と、気体を混入させた水を内部に通すことにより水中に微細気泡を生成する微細気泡生成器130と、を有する。
【0036】
液体吐出機110は、例えばポンプであり、原水を取り込んで吐出する。気体混入機120は、圧縮ガスが封入された容器121と、略筒状の気体混入機本体122とを有する。液体吐出機110から吐出された水は、気体混入機本体122内に流入し、気体混入機本体122内には、容器121内の圧縮ガスがさらに導入される。これにより、気体混入機本体122内で気体混入水が生成されることになる。
なお、圧縮ガスの種類は、特に限定されないが、水中に長時間残存させる観点から、水素以外の気体が好ましく、具体的には、例えば、空気、酸素、窒素、フッ素、二酸化炭素及びオゾン等が挙げられる。
【0037】
微細気泡生成器130は、内部を通過する気体混入水中にナノバブルを発生させるものであり、具体的には、特開2018-15715号公報に記載された構造を採用したナノバブル生成ノズルである。このノズル内で生成されたナノバブル水は、ノズル先端から噴出した後、ナノバブル水生成装置100から流出し、不図示の流路内を通じて所定の利用先に向けて送水される。
【0038】
以上のようにナノバブル水生成装置100では、液体吐出機110と微細気泡生成器130の間において、気体混入機120が、加圧された状態で微細気泡生成器130に向かって流れる水(原水)に、圧縮ガスを混入させる。これにより、液体吐出機110の吸込み側(サクション側)で気体を水に混入させるときに生じるキャビテーション等の不具合を回避することができる。また、圧縮ガス(すなわち、加圧されたガス)が水に混入されるので、ガス混入箇所での水の圧力に抗してガスを水に混入させることができる。このため、ガス混入箇所において特に負圧を発生させなくとも、ガスを適切に水に混入させることが可能となる。
【0039】
なお、ナノバブル水の流路については、ナノバブル水の利用先にのみ向かって延びた経路(すなわち、1パスの流路)であってもよく、あるいは、二経路に分岐して一方の経路が液体吐出機110への返送ライン(すなわち、循環用の流路)をなしてもよい。また、水源から流れてくる水(原水)の流路に液体吐出機110が直接繋ぎ込まれてもよく、あるいは、原水の流路と液体吐出機110との間に貯水槽又は貯水池が配置されてもよい。
【0040】
ナノバブル水の利用態様については、特に限定されないが、例えば、ナノバブル水を散水(養液土耕栽培では、灌水)する態様が挙げられる。この場合、作物の全体又は一部にナノバブル水を散布してもよく、又は、作物が植えられた土壌にナノバブル水を散布してもよい。ナノバブル水の別の施用態様としては、ナノバブル水を用いて生成された培養液を供給する態様、ナノバブル水を用いて発酵させた肥料を土壌に撒く態様、ナノバブル水によって希釈された液肥を作物に掛けたり塗布したりする態様、及び、ナノバブル水によって希釈された農薬を散布する態様等が挙げられる。
【0041】
<<栽培支援システムの概要>>
次に、本実施形態に係る栽培支援装置を含む栽培支援システム(以下、栽培支援システムS)について、図2を参照しながら説明する。図2は、栽培支援システムSの構成を示す図である。
【0042】
栽培支援システムSは、ナノバブル水を利用して作物を栽培する栽培者Uを支援するためのシステムである。栽培者Uは、基本的には一個人を単位としているが、複数人からなるグループ及び団体を栽培者Uとしてもよく、あるいは、集落又は自治体を栽培者Uに含めてもよい。また、支援対象とする栽培者Uについては制限を設けてもよく、例えば、前述のナノバブル水生成装置100を利用している栽培者Uに制限してもよい。若しくは、支援対象とする栽培者Uについては制限を設けなくてもよい。
【0043】
栽培支援システムSは、図2に示すように、栽培支援装置(以下、栽培支援装置10という。)と、栽培者Uの通信端末50とによって構成されている。栽培支援装置10は、栽培支援サービスを提供するサービス提供会社が運用するサーバコンピュータ(コンピュータの一例)であり、インターネット又はモバイル通信ネットワークを通じて、栽培者Uの通信端末50と通信可能である。通信端末50は、栽培者Uが栽培支援サービスを利用する際に操作する機器であり、例えば、パソコン、タブレット型端末、スマートフォン、携帯電話、並びに、その他の通信機能を有する機器によって構成されている。
【0044】
栽培支援装置10は、栽培者の過去及び現在の栽培情報を栽培者毎に取得し、取得した栽培情報を栽培者の識別情報(例えば、ユーザID)と紐付けて記憶し、さらにデータベース化して蓄積する。なお、多種の作物を栽培する栽培者については、それぞれの栽培情報を種類別に取得し、種類の識別情報(例えば、分類コード)と紐付けて記憶して蓄積する。ここで、「種類」とは、大分類としての品名(種類名)、及び、小分類としての品種を含む概念である。
【0045】
本実施形態において、栽培情報は、ナノバブル水の利用条件に関する第一情報、栽培成果に関する第二情報、ナノバブル水の利用条件以外の栽培条件に関する第三情報、及び、栽培期間中の作物の生育状態を示す第四情報を含んでいる。
【0046】
第一情報は、例えば、ナノバブル水の利用時期、1回の利用におけるナノバブル水の使用量、ナノバブル水の利用頻度、単位容量あたりのナノバブル水中に含まれる気泡の個数、気泡の粒径(厳密には、最頻粒子径)、気泡を構成する気体の種類、気泡のゼータ電位、及び、ナノバブル水生成装置100の運転条件(例えば、気体混入機120によって水に混入させる圧縮ガスの圧力、及び、ナノバブル水の供給圧力等)、並びに、ナノバブル水の原水に関する状態及び特徴量(例えば、原水の水温、pH値、溶存酸素濃度、電気伝導度、生物化学的酸素要求量、化学的酸素要求量、浮遊物質量、酸化還元電位、全窒素量、全リン量、亜鉛量)のうちの少なくとも一つを示す情報である。
なお、ナノバブル水の利用条件に関する情報であれば、上記の項目以外の情報(例えば、ナノバブル水の温度、及び、ナノバブル水を用いて液肥又は農薬を希釈する場合の希釈率等)が第一情報に含まれてもよい。
【0047】
第二情報は、例えば、作物における収穫物の性状、収穫物の収穫量、収穫物の収穫時期、及び作物における収穫物以外の部分の状態のうちの少なくとも一つを示す情報である。
ここで、性状とは、収穫物の品質、大きさ、サイズ(長さ)、重さ(重量)、硬度、及び病虫害の有無等である。また、品質とは、形状、色、艶及び傷の有無等といった外見から評価される品質と、糖度(熟度)及び酸度等といった含有成分から評価される品質と、食感及び美味しさといった人の感性に基づいて評価される品質とが含まれる。
また、収穫物以外の部分の状態としては、例えば、茎の丈(高さ)、枯れ具合及び病虫害の有無等;葉の枚数、形状、サイズ、枯れ具合、含水量、及び病虫害の有無等;幹の高さ、太さ、分枝数、枯れ具合及び病虫害の有無;根の活着具合、及び根腐れの度合い等が挙げられる。
なお、栽培成果に関する情報であれば、上記の項目以外の情報(例えば、栽培に使用する肥料又は農薬の削減量等)が第二情報に含まれてもよい。
【0048】
第三情報は、例えば、ナノバブル水以外に作物の栽培に影響を与える栽培条件について、栽培期間中における具体的な内容又は数値等を表している。第三情報としては、例えば、作物の栽培地域、栽培地域の気候、降水量及び日射量、気温、成長点温度、湿度、飽差、栽培時期、栽培方式、栽培中に使用する肥料及び農薬の種類、肥料及び農薬の使用頻度、栽培面積、単位面積当たりに作付けされた個体数(密集度)、土壌又は培地の状態(具体的には、地中温度、含水量、pH、電気伝導度、窒素量、硝酸態窒素量、アンモニア態窒素量、リン酸量、加里量、石灰量、苦土量、石灰/苦土比、及び苦土/加里比等)、水耕栽培の場合には使用水の状態(具体的には、水温、pH、電気伝導度及び溶存酸素量等)、養液栽培の場合には養液及び廃液の状態(具体的には、液温、pH、電気伝導度及び溶存酸素量等)、及び、ハウス栽培の場合にはハウス内環境(具体的には、温度、湿度及び二酸化炭素濃度等)等が挙げられる。
なお、作物栽培に影響を与える栽培条件に関する情報であれば、上記の項目以外の情報(例えば、栽培者の熟練度等)が第三情報に含まれてもよい。
【0049】
第四情報は、栽培途中における作物の生育状態を示す数値、言語(テキスト)、若しくは画像情報である。第四情報が示す生育状態としては、例えば、栽培期間中の作物各部の形状、外観、サイズ、艶の有無及び着色度合い(色付き)、病虫害の有無及びその度合い、枯れ具合、根腐れの度合い、根の活着の度合い、開花の有無及び開花数、葉の枚数、草丈、茎又は幹の高さ、結実の有無及び結実数、作物における所定部分(例えば、葉)の含水量及び成分含有量、蒸散量、光合成量、及び気象環境への対応等が挙げられる。
なお、栽培途中の作物の生育状態を示す情報であれば、上記の項目以外の生育状態(例えば、肥料及び農薬の効き具合をはじめ、肥培管理の状況等)を示す第四情報を取得してもよい。
【0050】
本実施形態では、栽培情報として、上述した4種類の情報を取得するが、少なくとも第一情報及び第二情報を取得すればよく、残りの情報を取得しなくてもよい。また、上述した4種類以外の情報、例えば、基本的な農業の知識(農業用語の解説を含む)に関する情報、及び、機器トラブル等の異常発生履歴に関する情報を別途取得してもよい。
【0051】
栽培支援装置10は、蓄積された栽培情報を用いた機械学習を実施して、栽培実施条件と栽培成果との対応関係を表す数理モデル(以下、栽培支援モデル)を構築する。ここで、栽培実施条件は、ナノバブル水の利用条件と、それ以外の栽培条件(以下、単に栽培条件という。)と、を含む。ナノブル水の利用条件としては、前述したように、ナノバブル水の利用時期、1回の利用におけるナノバブル水の使用量、ナノバブル水の利用頻度、単位容量あたりのナノバブル水中に含まれる気泡の個数、気泡の粒径、気泡を構成する気体の種類、気泡のゼータ電位、ナノバブル水生成装置100の運転条件、ナノバブル水の水温、及び、ナノバブル水を用いて液肥又は農薬を希釈する場合の希釈率等が挙げられる。
【0052】
また、栽培支援装置10は、栽培支援モデルにより、ある栽培実施条件の下で得られる栽培成果の内容を予測したり、ある栽培成果を最良な内容とするようなナノバブル水の利用条件を導出したりすることができる。「栽培成果の内容」とは、作物栽培の最終的な結果として得られる状態及びステータス、数値、栽培者Uの感想、並びに収穫物の需要者(消費者及び取引業者等)の評価等である。
【0053】
栽培者Uは、自己の通信端末50を通じて、栽培支援装置10に搭載された上述の機能を利用することができる。具体的に説明すると、ある栽培者Uが、作物Aを栽培するにあたり、その栽培において重視する成果(例えば、収穫量)を指定すると、その指定結果を示すデータが、ある栽培者Uの通信端末50から栽培支援装置10へ送信される。栽培支援装置10は、上記のデータを受信すると、栽培支援モデルを適用して、ある栽培者Uによって指定された成果を最良な内容とする(例えば、収穫量を最大にする)ようなナノバブル水の利用条件を導出する。この際に導出されるナノバブル水の利用条件は、ある栽培者Uが栽培する作物Aの種類、及び、栽培時に採用する栽培条件と対応するものである。
【0054】
そして、栽培支援装置10は、導出したナノバブル水の利用条件、及び、その利用条件を採用した場合に得られると予想される栽培成果の内容をデータ化し、ある栽培者Uに対して出力する。ある栽培者Uは、栽培支援装置10から出力されたデータを通信端末50にて展開することで、栽培支援装置10が導出したナノバブル水の利用条件を、その条件下で得られると予想される栽培成果の内容と共に確認することができる。
【0055】
また、本実施形態において、栽培支援装置10は、ある栽培者Uが栽培途中の時点での栽培実施条件をそのまま採用して栽培を継続した場合の栽培成果の内容を、栽培支援モデルによって予測することができる。さらに、予測した内容が予め設定された基準を満たしていない場合(例えば、ある栽培者Uが指定した栽培成果の内容が望ましい内容ではない場合)、栽培支援装置10は、その旨を報知すべく、ある栽培者Uの通信端末50を介して警告動作を実施する。これにより、ある栽培者Uに対して、栽培実施条件の見直し等を促すことができる。
なお、警告動作とは、通信端末50にて警告画面を表示したり、通信端末50においてアラーム音又は振動を発生させたり、あるいは、通信端末50に搭載された発光ランプを発光させたりする動作である。
【0056】
<<栽培支援装置の構成>>
次に、栽培支援装置10の構成について説明する。
栽培支援装置10は、前述したように、サーバコンピュータによって構成されている。栽培支援装置10を構成するサーバコンピュータの台数は、1台であってもよく、あるいは複数台であってもよい。栽培支援装置10を構成するサーバコンピュータは、一般的なサーバコンピュータと同様のハードウェア構成であり、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ハードディスクドライブ等のストレージ、通信用インタフェース、マウス及びキーボード等の入力デバイス、並びにディスプレイ及びプリンタ等の出力デバイスを有する。また、栽培支援装置10を構成するサーバコンピュータには、栽培支援装置10としての機能を発揮させるためのコンピュータプログラムが格納されている。
【0057】
本実施形態において、栽培支援装置10を構成するサーバコンピュータは、いわゆる人工知能(AI:Augmented Intelligence)であり、自然言語を理解して学習し人間の意思決定を支援する「コグニティブ・コンピューティング・システム」を構成するものであり、IBM社のWatson(商標)をベースとしたIoT(Internet of Things)プラットフォームがその代表例として挙げられる。
【0058】
栽培支援装置10は、ネットワークを介して各栽培者Uの通信端末50と通信する。通信端末50には、栽培支援サービスを利用するためのアプリケーションプログラムがインストールされており、当該アプリケーションプログラムを起動させると、所定のGUI(Graphical User Interface)を端末画面に描画する。栽培者Uの意思は、上記GUIを通じて入力され、その入力データが通信端末50から栽培支援装置10に向けて送信される。また、栽培支援装置10は、通信端末50との通信により、栽培者U毎の栽培情報を取得することができる。
【0059】
なお、栽培支援装置10は、通信端末50以外の機器、例えば、栽培者Uが栽培場所(例えば、圃場又はビニールハウス内)に設置したセンサ及びカメラ、栽培者Uが使用するナノバブル水生成装置100に内蔵されたデータ通信機器、気象庁等の官庁が管理するデータ提供用のサーバコンピュータ、栽培者Uが利用するWebコンテンツの提供元が管理するWebサーバ等から栽培情報を取得することが可能である。
【0060】
また、栽培支援装置10は、これまでに取得してきた栽培者毎の栽培情報のデータベース11を有する(図2参照)。本実施形態では、データベース11が栽培支援装置10に内蔵されたストレージに記憶されているが、これに限定されず、例えば、栽培支援装置10に外付けされたストレージ、あるいは、栽培支援装置10とネットワークを介して接続されたデータベースサーバに記憶されてもよい。
【0061】
栽培支援装置10の構成を機能面から改めて説明すると、栽培支援装置10は、図3に示すように、第一情報取得部21、第二情報取得部22、第三情報取得部23、第四情報取得部24、情報記憶部25、対応関係特定部26、指定受付部27、条件導出部28、条件出力部29、成果予測部30、及び警告発生部31を有する。これらの機能部は、前述した栽培支援装置10を構成するサーバコンピュータのハードウェア機器と、そのサーバコンピュータに格納されたソフトウェア(コンピュータプログラム)とが協働することで実現される。
なお、図3は、栽培支援装置10の構成を機能面から示した図である。
【0062】
第一情報取得部21は、栽培情報のうち、ナノバブル水の利用条件に関する第一情報を栽培者毎に取得し、複数種類の作物を栽培する栽培者Uについては種類別に第一情報を取得する。本実施形態では、ナノバブル水の利用に際して栽培者Uが設定した条件を示す情報(A1)、ナノバブル水の利用中に測定機器等によって測定されたナノバブル水の特徴量(具体的には気泡の粒子径、個数及びゼータ電位等)を示す情報(A2)、並びに、ナノバブル水生成装置100に登録された運転管理値を示す情報(A3)のうち、少なくとも一つが第一情報として取得される。
上記の情報(A1)は、例えば、ナノバブル水の利用時期、使用量及び使用頻度等に関する情報であり、栽培者Uに対して聞き取り等を行って知り得た情報を栽培支援装置10の入力デバイスを通じて入力したり、または、栽培者Uが通信端末50を通じて入力した情報をデータ化して栽培支援装置10に送信したりすることで取得可能である。あるいは、栽培者Uがナノバブル水の利用条件について話しているときの音声に対して公知の音声認識技術を適用して得た言語情報をデータ化し、テキストデータとして取得してもよい。さらには、栽培者Uが所定のWebサイト(例えば、SNS等の投稿サイト)に書き込んだナノバブル水の利用条件に関する文書を上記のWebサイトから抽出してデータ化することで取得してもよい。
上記の情報(A2)は、例えば、ナノバブル水中に含まれる気泡の数、粒子径及びゼータ電位に関する情報であり、栽培者Uが測定結果の情報を通信端末50に入力してデータ化して栽培支援装置10に送信したり、または、通信機能を有する測定機器から栽培支援装置10へ測定結果を直接送ったりすることで取得可能である。なお、ナノバブル水に含まれる気泡の粒子径(最頻粒子径)及び個数を測定する機器としては、公知の測定機器、例えばナノ粒子解析システム ナノサイトシリーズ(NanoSight社製)が利用可能である。また、気泡のゼータ電位を測定する機器としては、公知の測定機器、例えばZetaView(MicrotracBEL社)が利用可能である。
上記の情報(A3)は、例えば、ナノバブル水生成装置100の運転条件に関する情報であり、ナノバブル水生成装置100に搭載された通信機器が運転管理値を示すデータを栽培支援装置10に送信したり、装置の製造メーカに問い合わせて上記の運転管理値を示す情報を入手したりすることで取得可能である。
なお、上述の情報(A1)~(A3)については、良好な成果が得られたときの条件を示す情報だけに限らず、栽培に失敗したときの条件に関する情報でもあってもよい。
【0063】
第二情報取得部22は、栽培情報のうち、栽培の成果に関する第二情報を栽培者毎に取得し、複数種類の作物を栽培する栽培者Uについては種類別に第二情報を取得する。第二情報は、栽培終了後(具体的には、収穫物の収穫後)に栽培者から提供され、本実施形態では、作物の栽培場所にてセンサによって測定された作物の特徴量を示す情報(B1)、作物から採取した被採取部分について測定された被採取部分の特徴量を示す情報(B2)、栽培者Uが表した栽培成果の内容を示す言語情報(B3)、及び、作物の画像情報(B4)のうち、少なくとも一つが第二情報として取得される。
上記の情報(B1)は、栽培終了後の時点でセンサが作物の特徴量(具体的には、色、サイズ及び個数等)を自動的に測定したときの測定結果を示し、センサ自体が通信機能を有している場合にはセンサから栽培支援装置10へ測定結果を送ったり、栽培者Uが測定結果の情報を通信端末50に入力してデータ化して栽培支援装置10に送信したりすることで取得可能である。
上記の情報(B2)は、栽培終了後の時点で作物の一部を被採取部分として採取して特徴量(具体的には、糖度、含水率及び病虫害の発生度合い等)を手動で測定したときの測定結果を示し、栽培者Uが測定結果の情報を通信端末50に入力してデータ化して栽培支援装置10に送信したり、または、通信機能を有する測定機器から栽培支援装置10へ測定結果を直接送ったりすることで取得可能である。
上記の言語情報(B3)は、栽培者Uが栽培成果に関する感想等を示す情報であり、栽培者Uの会話の音声に対して公知の音声認識技術を適用して得た言語情報をデータ化し、テキストデータとして取得してもよい。また、栽培者Uが文書(テキスト)を通信端末50に入力してデータ化して栽培支援装置10に送信することで取得してもよい。さらに、栽培成果に関する感想を各栽培者Uにレポートとして記入させ、そのレポートの内容を栽培支援装置10の入力デバイスを通じて入力したり、または、レポートをスキャナ等で読み取り、例えばOCR(Optical Character Recognition)技術によりテキストデータに変換したりすることで取得してもよい。さらには、栽培者Uが所定のWebサイト(例えば、SNS等の投稿サイト)に書き込んだ栽培成果に関する文書を上記のWebサイトから抽出してデータ化することで取得してもよい。なお、言語情報(B3)については、良好な成果に関するポジティブな情報(すなわち、成功例)だけに限らず、栽培に失敗したときの成果に関するネガティブな情報(すなわち、失敗例)でもあってもよい。
上記の画像情報(B4)は、作物の収穫物又は収穫物以外の部分の画像、病虫害又は整理障害を受けた作物については、その度合いを示す画像であり、カメラで撮影した画像のデータを栽培支援装置10に送信することで取得可能である。
ちなみに、本実施形態において、第二情報は、栽培終了時点または収穫時点における成果に関する情報であるが、これに限定されるものではなく、栽培中の成果に関する情報であってもよく、例えば、収穫直前時点での作物の育成状態に関する情報(具体的には、後述する第四情報に相当する情報)が第二情報に含まれてもよい。
【0064】
第三情報取得部23は、栽培情報のうち、栽培条件に関する第三情報を栽培者毎に取得し、複数種類の作物を栽培する栽培者Uについては種類別に第三情報を取得する。本実施形態では、栽培環境を特定するための情報(C1)、作物の栽培場所にてセンサによって測定された条件値を示す情報(C2)、及び、栽培者Uが設定した栽培条件を示す情報(C3)のうち、少なくとも一つが第三情報として取得される。
上記の情報(C1)は、例えば、栽培場所の位置及び気候、天候、降水量及び日射量等等に関する情報であり、栽培者Uの通信端末50から送られてくる情報(例えば、位置情報又は時刻情報等)を受信したり、官庁が管理するデータ提供用のサーバコンピュータ又は公共データベースにアクセスすることで取得可能である。
上記の情報(C2)は、栽培期間中にセンサが栽培場所にて測定対象(具体的には、気温、湿度、二酸化炭素濃度、pH、電気伝導度、溶存酸素量など)を自動的に測定したときの測定結果を示し、センサ自体が通信機能を有している場合にはセンサから栽培支援装置10へ測定結果を送ったり、栽培者Uが測定結果の情報を通信端末50に入力してデータ化して栽培支援装置10に送信したりすることで取得可能である。
上記の情報(C3)は、例えば、栽培時期、栽培方法、栽培中に使用する肥料及び農薬の種類とこれらの使用頻度、並びに栽培面積等に関する情報であり、栽培者Uに対して聞き取り等を行って知り得た情報を栽培支援装置10の入力デバイスを通じて入力したり、または、栽培者Uが通信端末50を通じて入力した情報をデータ化して栽培支援装置10に送信したりすることで取得可能である。あるいは、栽培者Uが栽培条件について話しているときの音声に対して公知の音声認識技術を適用して得た言語情報をデータ化し、テキストデータとして取得してもよい。
なお、上記の情報(C1)~(C3)については、良好な成果が得られたときの条件を示す情報だけに限らず、栽培に失敗したときの条件に関する情報でもあってもよい。
【0065】
第四情報取得部24は、栽培情報のうち、栽培期間中における作物の生育状態に関する第四情報を栽培者毎に取得し、複数種類の作物を栽培する栽培者Uについては種類別に第四情報を取得する。本実施形態では、作物の栽培場所にてセンサによって測定された作物の特徴量を示す情報(D1)、作物から採取した被採取部分について測定された被採取部分の特徴量を示す情報(D2)、栽培者が表した作物の生育状態を示す言語情報(D3)、及び、作物の画像情報(D4)のうちの少なくとも一つを含んでいる。
上記の情報(D1)~(D4)のそれぞれの内容及び取得方法については、栽培期間の途中で取得する点を除き、前述した第二情報に該当する情報(B1)~(B4)と共通するので、説明を省略する。
また、本実施形態において、第四情報取得部24は、同一の栽培者Uが同一の作物を栽培している栽培期間中に取得時期を変えて第四情報を複数回取得する。つまり、各栽培者Uにおける1回の作物栽培において、栽培途中の作物の生育状態を示す第四情報が時系列の情報として複数回取得される。同一の栽培期間中に取得した複数の第四情報からは、その作物の生育状態の経時変化を特定することが可能である。なお、第四情報の取得頻度(取得周期)については、特に限定されず、任意に設定することができる。
【0066】
情報記憶部25は、第一情報取得部21、第二情報取得部22、第三情報取得部23及び第四情報取得部24が栽培者毎に取得した各種情報(栽培情報)を、栽培者Uの識別情報及び作物種類の識別情報と紐付けて記憶してデータベース11を構築する。
【0067】
対応関係特定部26は、情報記憶部25に記憶された栽培者毎の栽培情報(すなわち、第一情報~第四情報)を用いて、栽培実施条件と栽培成果との対応関係を特定し、より具体的には、当該対応関係を示す栽培支援モデルを構築する。対応関係の特定方法(換言すると、栽培支援モデルの構築手順)については、後の項で説明する。
なお、本実施形態では、第一情報~第四情報を用いて栽培実施条件と栽培成果との対応関係を特定するが、対応関係を特定する上では少なくとも第一情報及び第二情報を用いればよい。例えば、栽培者毎の第一情報及び第二情報のみを用いてもよく、その場合、対応関係特定部26は、ナノバブル水の利用条件と栽培成果との対応関係を特定することになる。
【0068】
指定受付部27は、栽培の成果に対する栽培者Uの指定を受け付ける。栽培の成果に対する指定は、栽培者Uが作物の栽培において重視する成果を決めて指定する行為であり、栽培支援サービスを利用する上で必要となる。また、本実施形態では、観点が異なる複数の成果(例えば、収穫物の糖度及び収穫量)を指定することができ、その場合、指定受付部27は、複数の成果のそれぞれに対する指定と、それぞれの成果に対して設定されたウェイトと共に受け付ける。ここで、ウェイトとは、そのウェイトに対応する成果について栽培者Uが重視する度合い(すなわち、優先度)を表す数値であり、本実施形態では、成果毎のウェイトの合計値が100となるように設定される。
【0069】
条件導出部28は、指定受付部27が受け付けた成果の指定と、対応関係特定部26によって特定された対応関係(換言すると、栽培支援モデル)に基づき、最適化されたナノバブル水の利用条件を導出する。ここで、「最適化されたナノバブル水の利用条件」とは、成果の指定を行った栽培者Uが採用する栽培条件と対応し、且つ、指定された成果に応じた利用条件である。より具体的に説明すると、条件導出部28は、成果の指定を行った栽培者Uが採用する栽培条件において、指定された成果を最良の内容とするためのナノバブル水の利用条件、あるいは、指定した成果の内容が基準(例えば、品質に対して設定された基準)を満たすためのナノバブル水の利用条件を導出する。
【0070】
また、指定受付部27が複数の成果の指定を受け付けた場合、条件導出部28は、より大きいウェイトが設定された成果を優先するように、指定された複数の成果に応じたナノバブル水の利用条件を導出する。ここで、「より大きいウェイトが設定された成果を優先する」とは、例えば、より大きいウェイトが設定された成果の内容を、より小さいウェイトが設定された成果よりも重視して好適化することである。
【0071】
条件出力部29は、条件導出部28が導出したナノバブル水の利用条件を、成果を指定した栽培者Uの通信端末50に出力する。本実施形態において、条件出力部29は、条件導出部28が導出したナノバブル水の利用条件と、その利用条件の下で得られる(厳密には、得られると予想される)成果の内容とを栽培者Uに対して提示するためのデータを生成し、そのデータを通信端末50に向けて送信する。
【0072】
成果予測部30は、ある栽培者U(以下、対象栽培者という。)が栽培する作物についての栽培の成果を、その作物の現状の生育状態から予測する。なお、栽培成果の予測には、対象栽培者が栽培を開始してからの作物の生育状態を示す情報(すなわち、第四情報)と、前述の栽培支援モデル(厳密には、後述する二次モデル)が用いられる。
【0073】
警告発生部31は、成果予測部30によって予測された栽培成果の内容が、予め設定された基準を満たしていない場合に、対象栽培者に対して警告を発生し、具体的には、対象栽培者の通信端末50にアラーム音の鳴動、振動の発生、発光ランプの発光又は警告画面の表示等を実施させるためのデータ(以下、警告発生データ)を生成し、そのデータを対象栽培者の通信端末50に向けて送信する。
なお、「予め設定された基準」とは、栽培成果について満たすべきものとして設定された内容であり、例えば、収穫物の糖度又は酸度等の上下限値、収穫量の下限値、並びに、商品として出荷可能な標準的な収穫物の形状及びサイズ等が該当する。また、果実に対して設定される等級の該当条件を上記の基準として採用してもよい。
【0074】
<<栽培支援装置の動作例>>
次に、栽培支援装置10の動作例として、栽培支援装置10を構成するサーバコンピュータが行う処理のフロー(以下、栽培支援フローという。)について説明する。栽培支援フローでは、本発明の栽培支援方法を採用しており、以下に説明する各工程(S001~S005、S011~S014)は、本発明の栽培支援方法の構成要素に相当する。
【0075】
栽培支援フローは、図4に図示した条件提示フロー、及び、図5に図示の成果予測フローからなる。条件提示フローは、通常、対象栽培者が作物栽培を開始する前段階で実施される。これに対して、成果予測フローは、通常、対象栽培者が作物栽培を行っている期間(すなわち、栽培期間中)に実施される。
【0076】
条件提示フローの流れについて説明すると、先ず、栽培支援装置10を構成するサーバコンピュータ(以下、単にコンピュータという。)が、栽培者毎の栽培情報を取得して記憶し、栽培情報のデータベースを構築する(S001)。すなわち、ステップS001では、コンピュータが第一情報~第四情報を、それぞれ、上述した要領で栽培者毎に取得して、栽培者の識別情報及び作物種類の識別情報と紐付けて記憶する。また、第四情報については、同一の栽培者が同一の作物を栽培している栽培期間中に取得時期を変えて複数回取得する。
【0077】
なお、ステップS001にて栽培情報(特に、栽培者Uから供給してもらう情報)を取得する際、情報元の栽培者Uについては特に制限を設けず、作物栽培の経験がある者及び熟練者は勿論のこと、作物栽培の初心者を含んでもよい。また、情報提供のイニシアティブとして、栽培情報を提供した栽培者Uに対して報奨金を支給すれば、より有益で、且つより信憑性が高い栽培情報が得られる。
また、栽培情報を提供する栽培者Uの数、すなわちサンプル数Nについては特に限定されず、Nが1以上であればよいが、当然のことながら、Nが多い方がより望ましい。
また、栽培情報の蓄積量を確保する観点から、例えば、ステップS001を数ヶ月又は数年に亘って実施し、その上で以降のステップを実施してもよい。
【0078】
次に、コンピュータは、蓄積された栽培者毎の栽培情報を用いて、栽培実施条件と栽培成果との対応関係を特定する(S002)。ステップS002では、コンピュータが、対応関係を特定するために、栽培者毎の栽培情報を用いた機械学習を実施し、対応関係を示す数理モデルとしての栽培支援モデルを構築する。
【0079】
上記の機械学習について詳しく説明すると、コンピュータは、機械学習を二段階に分けて実施し、前半の機械学習(以下、一次学習という。)では、栽培者毎の第一情報、第三情報及び第四情報から、栽培実施条件(すなわち、ナノバブル水の利用条件及び栽培条件)と栽培期間中における作物の生育状態との一次対応関係を特定する。より詳しく説明すると、本実施形態では、一人の栽培者Uにつき栽培期間中に複数回取得した第四情報(以下、一群の第四情報という。)を用いて一次学習を実施する。これにより、一群の第四情報から特定される作物の生育状態の経時変化と栽培実施条件との一次対応関係を表す数理モデル(以下、一次モデルという。)が構築される。
なお、一次学習に際して、第一情報、第三情報及び第四情報は、公知の手法、具体的にはone-hot表現、word2vec、LDA(Latent Dirichlet Allocation)等によってベクトル化/テンソル化しておくことが望ましい。
【0080】
また、後半の機械学習(以下、二次学習という。)では、栽培者毎の第二情報及び第四情報から、栽培期間中における作物の生育状態と栽培成果との二次対応関係を特定する。より詳しく説明すると、本実施形態では、一群の第四情報を用いて二次学習を実施する。これにより、一群の第四情報から特定される作物の生育状態の経時変化と栽培成果との二次対応関係を表す数理モデル(以下、二次モデルという。)が構築される。
なお、二次学習に際して、第二情報についても、上記で例示した手法等によってベクトル化/テンソル化しておくことが望ましい。
【0081】
上記二段階の機械学習を実施した後には、それぞれの学習によって構築した一次モデル及び二次モデルを統合して栽培支援モデルを構築する。換言すると、栽培実施条件と栽培成果との対応関係は、一次対応関係と二次対応関係とを含む形で特定される。
なお、栽培情報を新たに取得して栽培情報の蓄積量が増えた場合には、機械学習を再度実施することにより、一次モデル及び二次モデルを構築し直して栽培支援モデルを更新するのが望ましい。
【0082】
ちなみに、機械学習の手法については限定されるものではなく、例えば、ニューラルネットワーク、厳密には深層学習(ディープラーニング)を適用してもよく、その他にもランダムフォレスト、サポートベクターマシン、バギング及びブースティング等が適用可能である。また、対応関係を特定するための手法については、機械学習に限定されず、例えば、一般的な線形回帰分析、あるいはデータマイニングを用いてもよい。
【0083】
次に、コンピュータは、栽培成果に対する対象栽培者の指定を受け付ける(S003)。具体的に説明すると、対象栽培者は、自分の通信端末50にて栽培支援サービス用のアプリを起動することで端末画面に描画されるGUI(具体的には、図7に示す成果指定画面)を通じて、作物栽培において重視する栽培成果を指定する。このとき、対象栽培者は、重視する栽培成果を表す文書(テキスト)をタッチパネルにて入力し、あるいは、重視する栽培成果を表す語句を音声入力する。
【0084】
栽培成果の入力は、例えば収穫量、出荷量、収穫物の品質、収穫時期、農薬等の使用量、病虫害被害の度合い、収穫の安定性、収穫後の鮮度保持、及び収益性(詳しくは、付加価値性及び商品価値)等に関して、栽培者Uが自由に文書を入力する形式で行ってもよく、あるいは、予め設定された選択肢の中から選ぶ形式で行ってもよい。なお、栽培成果として上述の項目に関する文書を入力する場合の一例としては、下記の内容が挙げられる。
[収穫量]:数量(個数)を多く取りたい、重量を多くしたい
[出荷量]:単純に収穫量を増やしたい、不良で廃棄するのを減らしたい
[品質]:糖度を上げたい、色・形が良いものを作りたい、持ちが良い作物を作りたい
[収穫時期]:収穫時期を延ばしたい、早期多収、収穫サイクルの調整、作業の効率化
[農薬等の使用量]:コストダウン、安心安全をPR、省力・軽労化
[病虫害被害の度合い]:廃棄品の低減、省力・軽労化
[収穫の安定性]:顧客満足・信頼性UP、産地ブランド化、生産性向上
[鮮度保持]:収穫後に長持ちさせたい
[付加価値性/商品価値]:差別化したい、高く売りたい
【0085】
対象栽培者の通信端末50は、入力された栽培成果を示すデータを生成し、そのデータをコンピュータに向けて送信し、コンピュータは、通信端末50から上記のデータを受信する。コンピュータが通信端末50から受信するデータは、その通信端末50を利用する栽培者U(すなわち、対象栽培者)が指定した栽培成果を表す言語情報を示しているので、コンピュータは、上記のデータを受信して(換言すると、上記の言語情報を取得することで)、栽培成果に対する指定を受け付ける。
【0086】
本実施形態において、対象栽培者は、図7に示すように、観点が異なる複数の栽培成果を指定することができ、その場合には、同図に示すように、それぞれの成果に対してウェイトを設定する。通信端末50は、指定された複数の成果、及び、それぞれの成果に対して設定されたウェイトを示すデータを生成して、そのデータをコンピュータに向けて送信する。コンピュータは、通信端末50から上記のデータを受信することで、複数の成果のそれぞれに対する指定を、各成果に対して設定されたウェイトと共に受け付ける。
【0087】
なお、指定することができる栽培成果の数については、1以上の任意の数に決めることができるが、以下では、説明を分かり易くするために、図7に示すケースのように2つの栽培成果を指定した場合を例に挙げて説明することとする。
【0088】
コンピュータは、栽培成果に対する指定を受け付けると、指定された成果に応じて最適化されたナノバブル水の利用条件を導出する(S004)。ステップS004において、コンピュータは、栽培成果の指定を行った栽培者(すなわち、対象栽培者)の識別情報と紐付けられた第三情報をデータベースから読み出し、読み出した第三情報が示す栽培条件と、指定された栽培成果とを、それぞれパラメータとして栽培支援モデルに入力する。その結果、ナノバブル水の利用条件として、対象栽培者が採用する栽培条件と対応し、且つ、対象栽培者によって指定された栽培成果に応じた利用条件が導出される。
【0089】
また、複数の栽培成果が指定された場合、コンピュータは、より大きいウェイトが設定された成果を優先するように、指定された複数の成果に応じた利用条件を導出する。例えば、複数の栽培成果として「収穫物の糖度」及び「収穫量」が指定され、「収穫物の糖度」のウェイトが「収穫量」のウェイトよりも高く設定されている場合には、「収穫量」よりも「収穫物の糖度」をより重視しつつ、それぞれのウェイトに応じた収穫量及び糖度が得られるような利用条件を導出する。
複数の栽培成果の各々に対してウェイトを設定した場合の利用条件の導出方法は、特に限定されるものではないが、上記導出方法の一例を以下に概説する。
【0090】
例えば、複数の栽培成果として「糖度」及び「収穫量」が指定され、それぞれのウェイトwa、wbが設定された場合を想定する。また、以下では、「糖度」及び「収穫量」の双方に影響を及ぼすナノバブル水の利用条件の値(例えば、ナノバブル水の使用量、使用期間、ナノバブル水中の気泡数等)を、便宜上、「条件調整値」と呼ぶこととする。
【0091】
指定された各栽培成果のウェイトを考慮して最適な条件調整値を導出する際には、条件調整値と複数の栽培成果の各々(具体的には、「糖度」及び「収穫量)との対応関係を参照する。
なお、本来、条件調整値と栽培成果との対応関係は、前述の栽培支援モデルによって表されるものであるが、以下では、説明を分かり易くする理由から、上記の対応関係が仮に図6に示すような予測曲線CV1、CV2で近似されることを前提として説明することとする。
ちなみに、栽培成果を示す数値が取り得る範囲は、栽培成果の内容に応じて変わり得るため、予測曲線CV1、CV2における栽培成果の予測値は、正規化されていることとし、例えば、最大値を100としたときの比率として表されることとする。
【0092】
図6では、予測曲線CV1、CV2の形状が釣鐘状曲線となっているが、これに限定されず、それ以外の形状でもよく、例えば、放物線、指数関数型の曲線、ロジスティック曲線及びゴンペルツ曲線のようなS字形曲線、若しくはその他の形状の曲線でもよい。
【0093】
予測曲線CV1、CV2を参照し、条件調整値をパラメータとして、栽培成果についてのスコアXを算出する。スコアXは、条件調整値がPjであるときの各予測曲線CV1、CV2における栽培成果の予測値をQ1、Q2としたとき、下記の式にて算出される。
スコアX=Q1×wa+Q2×wb
【0094】
そして、条件調整値Pjを変えながらスコアXを計算することで、スコアXが最大となるときの条件調整値Pjを特定する。このようにして特定された条件調整値Pjが、指定された各栽培成果のウェイトを考慮して導出される条件調整値の最適解である。
【0095】
条件提示フローの説明に戻ると、ステップS004の後、コンピュータは、導出したナノバブル水の利用条件と、その利用条件の下で得られると予想される栽培成果の内容と、を対象栽培者に提示するためのデータ(以下、プランデータ)を作成し、当該プランデータを対象栽培者の通信端末50に向けて送信する(S005)。通信端末50がプランデータを受信して展開すると、端末画面に描画されたGUI(具体的には、図8に示すプラン提示画面)に、コンピュータが導出したナノバブル水の利用条件が、同利用条件の下での栽培成果の予測内容と共に表示される。対象栽培者は、端末画面に表示された利用条件及び栽培成果を確認し、その利用条件を作物栽培において採用するか否かを検討する。
【0096】
なお、コンピュータは、ステップS004において、ナノバブル水の利用条件として、複数の候補条件を導出してもよい。複数の候補条件は、それぞれの条件の下で得られる栽培成果の内容は相違するものの、コンピュータが最適化されたナノバブル水の利用条件として導出する複数の解である。そして、複数の候補条件を導出した場合には、コンピュータは、ステップS005において、候補条件毎のプランデータを生成して対象栽培者の通信端末50に向けて送信する。この場合、対象栽培者は、複数の候補条件の各々を、それぞれの条件の下での栽培成果の予測内容と共に確認することができる。つまり、対象栽培者にとって、栽培時に採用するナノバブル水の利用条件についての選択の幅が広がることになる。
【0097】
以上までの一連のステップが終了すると、栽培支援フローのうち、条件提示フローが終了する。その後、対象栽培者が作物栽培を開始すると、その栽培期間中、適宜な実施タイミングにて成果予測フローが実施される。
【0098】
成果予測フローでは、先ず、コンピュータが、対象栽培者が栽培する作物の栽培開始時から現時点までの育成状態の経時変化を示す一群の第四情報を、データベースから読み出す(S011)。次に、コンピュータは、読み出した一群の第四情報と、条件提示フローにて構築した二次モデル(つまり、ステップS002で特定した作物の生育状態の経時変化と栽培成果との二次対応関係)とに基づいて、対象栽培者が栽培する作物についての栽培成果の内容を予測する(S012)。そして、コンピュータは、予測した栽培成果の内容が基準を満たしているかどうかを判定する(S013)。予測した栽培成果の内容が基準を満たしているとコンピュータが判定すると、その時点で成果予測フローは終了する。
【0099】
他方、予測した栽培成果の内容が基準を満たしていないと判定した場合、コンピュータは、対象栽培者に対して警告を発生し、具体的には、警告発生データを生成して対象栽培者の通信端末50に向けて送信する(S014)。警告発生データを受信した対象栽培者の通信端末50側では、アラーム音の鳴動、振動の発生、発光ランプの発光又は警告画面の表示等が実施される。これにより、対象栽培者の注意を喚起し、対象栽培者に対して、ナノバブル水の利用条件の見直しを促すことができる。なお、警告を発生する際に併せて、栽培成果の内容を予測内容よりも良くするためのナノバブル水の利用条件を、推奨条件として対象栽培者の通信端末50に表示すると、より望ましい。
上記の警告がなされると、その時点で成果予測フローが終了し、以後、対象栽培者が作物を栽培する期間中、略一定の時間間隔にて成果予測フローが繰り返し実施される。
【0100】
<<本実施形態の有効性について>>
本実施形態では、上述してきたように、栽培情報(つまり、栽培実施条件及び栽培成果に関する情報)を栽培者毎に取得して記憶し、データベースとして蓄積する。蓄積された栽培情報は、ビッグデータとして活用され、具体的には、蓄積された栽培情報を用いた機械学習を通じて、栽培実施条件と栽培成果との対応関係を特定することができる。これにより、ナノバブル水を用いた作物栽培において、栽培者が重視する栽培成果の内容を好適化するためのナノバブル水の利用条件を求めることができる。
【0101】
すなわち、本実施形態によれば、ナノバブル水を用いた作物栽培(農業)において、通常は暗黙知(ノウハウ)とされる栽培者の勘及び直感を情報化(見える化)し、栽培者の間での情報共有を図ることができる。また、機械学習等によって情報を解析することで、ナノバブル水の利用に関する栽培者の意思決定過程がアルゴリズム化することができ、これにより、栽培者(特に、栽培経験が乏しい栽培者)に対して効果的にナノバブル水を利用できる条件を的確に提示することが可能となる。
【0102】
また、栽培者から取得する栽培情報、すなわちビッグデータには、栽培成果又は作物の育成状態についての栽培者の感想を表す言語情報(具体的には、会話音声、レポートの文書及びWebサイトでの書き込み等)が含まれる。このような言語情報は、栽培実施条件と栽培成果との対応関係を特定する上で有益且つ重要な情報である。この結果、栽培者に対して、より的確なナノバブル水の利用条件を提示することができる。
【0103】
<<その他の実施形態>>
以上までに、本発明の栽培支援装置及び栽培支援方法について、具体的な一実施形態を挙げて説明してきたが、上記の実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の実施形態も考えられる。
【0104】
上記の実施形態では、栽培支援装置10がサーバコンピュータによって構成されていることとしたが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、栽培者Uが所有するパソコンによって栽培支援装置10Xが構成されてもよい。すなわち、栽培者Uが所有するパソコンのCPUが、記憶媒体Dに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、栽培支援装置10Xとしての機能を発揮させる形態であってもよい。その場合、栽培者毎の栽培情報については、記憶媒体D又はネットワーク上のデータベースサーバに蓄積され、栽培者Uのコンピュータがそこから読み出して機械学習に用いればよい。
なお、図9は、変形例に係る栽培支援装置10Xを示す図である。
【0105】
また、上記の実施形態では、栽培支援装置10が栽培成果に対する指定を受け付けるために、栽培者Uの通信端末50から送られてくる栽培者Uの指定結果を示すデータを、受信することとした。また、上記の実施形態では、栽培支援装置10が導出したナノバブル水の利用条件を栽培者Uに対して提示するために、データ(プランデータ)を通信端末50に向けて送信し、端末画面に、データが示すナノバブル水の利用条件を表示させることとした。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、栽培者Uが指定した栽培成果を例えば面会時の会話、電話、Fax、若しくは手紙等の書面によって確認し、その栽培成果を栽培支援装置10の操作者が入力デバイスを通じて入力することで、栽培成果に対する指定を受け付けてもよい。また、栽培支援装置10が導出したナノバブル水の利用条件についても、例えば面会時の会話、電話、Fax、若しくは手紙等の書面によって栽培者Uに提示してもよい。
【符号の説明】
【0106】
10,10X 栽培支援装置
11 データベース
21 第一情報取得部
22 第二情報取得部
23 第三情報取得部
24 第四情報取得部
25 情報記憶部
26 対応関係特定部
27 指定受付部
28 条件導出部
29 条件出力部
30 成果予測部
31 警告発生部
50 通信端末
100 ナノバブル水生成装置
110 液体吐出機
120 気体混入機
121 容器
122 気体混入機本体
130 微細気泡生成器
D 記憶媒体
S 栽培支援システム
U 栽培者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9