(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】熱輸送部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
F28D15/02 106G
F28D15/02 101H
F28D15/02 102A
(21)【出願番号】P 2018070549
(22)【出願日】2018-04-02
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502112854
【氏名又は名称】有限会社和氣製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和氣 庸人
(72)【発明者】
【氏名】大西 人司
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-241870(JP,A)
【文献】特開平11-083357(JP,A)
【文献】特開2006-145096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02-15/04
B21D 53/02-53/08
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱の輸送を行なう熱輸送部材の製造方法であって、
金属材料を用いて形成した一列に並ぶ複数の貫通孔を有する厚さが3mm以下の扁平な有孔扁平部材の両端面のうちの一方の端面に対しては前記複数の貫通孔の隔壁が交互に端面から第1深さと端面から前記第1深さより深い第2深さとなるように切削すると共に、前記両端面のうちの他方の端面に対しては前記複数の貫通孔の隔壁のうち前記一方の端面において前記第1深さとした隔壁については第3深さとなるように且つ前記一方の端面において前記第2深さとした隔壁については前記第3深さより浅い第4深さとなるように切削する端面切削工程と、
前記端面切削工程とは順不同に、前記金属材料により形成され少なくとも片面にロウ材が接合された薄板を用いて、前記ロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が前記第1深さに切削した隔壁の切削部に整合する樋形状の第1樋状部材を形成すると共に、前記薄板を用いて前記ロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が前記第4深さに切削した隔壁の切削部に整合する樋形状の第2樋状部材を形成する樋状部材形成工程と、
前記有孔扁平部材の前記一方の端面の前記第1深さに切削した各隔壁の切削部に前記第1樋状部材の外周面が密着するように前記第1樋状部材を前記一方の端面に組み付けると共に前記他方の端面の前記第4深さに切削した各隔壁の切削部に前記第2樋状部材の外周面が密着するように前記第2樋状部材を前記他方の端面に組み付けて組み付け体を形成する組み付け工程と、
前記組み付け体を前記ロウ材によるロウ付けが可能となる温度に調整された炉に入れてロウ付けするロウ付け工程と、
を有する熱輸送部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱輸送部材の製造方法であって、
前記端面切削工程は、前記第1深さ及び前記第4深さに切削する隔壁については前記切削部が
弧を描くように切削する工程である、
熱輸送部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の熱輸送部材の製造方法であって、
前記端面切削工程は、前記有孔扁平部材の前記一方の端面における外壁については前記第1深さとなるように切削し、前記他方の端面における外壁については前記第4深さとなるように切削する工程であり、
前記樋状部材形成工程は、前記第1樋状部材および前記第2樋状部材については長さが前記有孔扁平部材の両端面の長さと同一になるように形成する工程である、
熱輸送部材の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の熱輸送部材の製造方法であって、
前記端面切削工程は、前記第1深さと前記第4深さとが同一の深さとなるように且つ前記第2深さと前記第3深さとが同一の深さとなるように切削する工程であり、
前記樋状部材形成工程は、前記第1樋状部材と前記第2樋状部材とが同一形状となるように形成する工程である、
熱輸送部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれか1つの請求項に記載の熱輸送部材の製造方法であって、
前記樋状部材形成工程は、前記複数の貫通孔のうちの端部または端部近傍に位置する貫通孔に整合する供給口を有するように前記第1樋状部材および/または前記第2樋状部材を形成する工程である、
熱輸送部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2記載の熱輸送部材の製造方法であって、
前記端面切削工程は、前記有孔扁平部材の前記一方の端面における外壁については前記第1深さより浅い深さとなるように切削し、前記他方の端面における外壁については前記第4深さとなるように切削する工程であり、
前記樋状部材形成工程は、前記第1樋状部材については長さが前記有孔扁平部材の前記一方の端面の両外壁の内側の長さと同一になるように且つ両端部に前記一方の端面の両端部の貫通孔に整合する2つの連絡孔を有するように形成し、前記第2樋状部材については長さが前記有孔扁平部材の前記他方の端面の長さと同一になるように形成し、さらに、前記薄板を用いて前記ロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が前記一方の端面の外壁の切削部に整合する樋形状で長さが前記一方の端面の長さと同一の第3樋状部材を形成する工程であり、
前記組み付け工程は、前記有孔扁平部材の前記一方の端面の前記外壁の切削部に前記第3樋状部材の外周面が密着するように前記第3樋状部材を前記一方の端面に組み付けて前記組み付け体を形成する工程である、
熱輸送部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱輸送部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、多孔扁平管の両端面のうちの一方の端面については貫通細孔群の隔壁を一条おきに所定の深さだけ切除し、他方の端面については一方の端面に対して相互に一条ずつずらせて所定の深さだけ切削し、両端面をその最深部から1~3mmの長さは圧潰せず残置して扁平管の両端部を圧潰し、圧潰端縁部を溶接封止することにより、プレート型の蛇行細管ヒートパイプを製造するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術では、多孔扁平管の貫通細孔群の隔壁を一条おきに所定の深さだけ切除した両端面の両端部を圧潰するから、貫通細孔数が多く端面の長さが長いときには十分な圧潰の精度を確保する必要がある。また、多孔扁平管の両端面の圧潰の他に溶接封止の工程も必要となる。さらに、作動液体を注入するための加工なども必要となる。
【0005】
本発明の熱輸送部材の製造方法は、より簡易に熱輸送部材を製造する方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱輸送部材の製造方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の熱輸送部材の製造方法は、
熱の輸送を行なう熱輸送部材の製造方法であって、
金属材料を用いて一列に並ぶ複数の貫通孔を有する厚さが3mm以下の扁平な有孔扁平部材の両端面のうちの一方の端面に対しては前記複数の貫通孔の隔壁が交互に端面から第1深さと端面から前記第1深さより深い第2深さとなるように切削すると共に、前記両端面のうちの他方の端面に対しては前記複数の貫通孔の隔壁のうち前記一方の端面において前記第1深さとした隔壁については第3深さとなるように且つ前記一方の端面において前記第2深さとした隔壁については前記第3深さより浅い第4深さとなるように切削する端面切削工程と、
前記端面切削工程とは順不同に、前記金属材料により形成され少なくとも片面にロウ材が接合された薄板を用いて、前記ロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が前記第1深さに切削した隔壁の切削部に整合する樋形状の第1樋状部材を形成すると共に、前記薄板を用いて前記ロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が前記第4深さに切削した隔壁の切削部に整合する樋形状の第2樋状部材を形成する樋状部材形成工程と、
前記有孔扁平部材の前記一方の端面の前記第1深さに切削した各隔壁の切削部に前記第1樋状部材の外周面が密着するように前記第1樋状部材を前記一方の端面に組み付けると共に前記他方の端面の前記第4深さに切削した各隔壁の切削部に前記第2樋状部材の外周面が密着するように前記第2樋状部材を前記他方の端面に組み付けて組み付け体を形成する組み付け工程と、
前記組み付け体を前記ロウ材によるロウ付けが可能となる温度に調整された炉に入れてロウ付けするロウ付け工程と、
を有することを要旨とする。
【0008】
この本発明の熱輸送部材の製造方法では、金属材料を用いて一列に並ぶ複数の貫通孔を有する厚さが3mm以下の扁平な有孔扁平部材の両端面のうちの一方の端面に対しては複数の貫通孔の隔壁が交互に端面から第1深さと端面から第1深さより深い第2深さとなるように切削する。有孔扁平部材の両端面のうちの他方の端面に対しては複数の貫通孔の隔壁のうち一方の端面において第1深さとした隔壁については第3深さとなるように且つ一方の端面において第2深さとした隔壁については第3深さより浅い第4深さとなるように切削する。一方、こうした有孔扁平部材の両端面の切削とは順不同に、金属材料により形成され少なくとも片面にロウ材が接合された薄板を用いて、ロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が第1深さに切削した隔壁の切削部に整合する樋形状の第1樋状部材を形成すると共に、薄板を用いてロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が第4深さに切削した隔壁の切削部に整合する樋形状の第2樋状部材を形成する。次に、有孔扁平部材の一方の端面の第1深さに切削した各隔壁の切削部に第1樋状部材の外周面が密着するように第1樋状部材を一方の端面に組み付けると共に他方の端面の第4深さに切削した各隔壁の切削部に第2樋状部材の外周面が密着するように第2樋状部材を他方の端面に組み付けて組み付け体を形成する。そして、組み付け体をロウ材によるロウ付けが可能となる温度に調整された炉に入れてロウ付けする。有孔扁平部材の複数の貫通孔は、第2深さに切削した隔壁の切削部と第3深さに切削した隔壁の切削部とが折り返し部となる1つの密閉されたつづら折り状の流路を形成する。この流路に作動液体を注入して封止すれば、プレート型の蛇行細管ヒートパイプとなる。本発明の熱輸送部材の製造方法では、ロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が第1深さに切削した隔壁の切削部に整合する第1樋状部材を有孔扁平部材の一方の端面に組み付けると共にロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が第4深さに切削した隔壁の切削部に整合する第2樋状部材を有孔扁平部材の他方の端面に組み付けて炉に入れるだけでよいから、圧潰と溶接封止とが必要な場合に比して、より簡易に熱輸送部材を製造することができる。
【0009】
本発明の熱輸送部材の製造方法において、前記端面切削工程は、前記第1深さ及び前記第4深さに切削する隔壁については前記切削部が孤を描くように切削する工程であるものとしてもよい。第1樋状部材は第1深さに切削した隔壁の切削部に整合する樋形状に形成され、第2樋状部材は第4深さに切削した隔壁の切削部に整合する樋形状に形成されるから、その断面が孤を描くように形成されることになる。このように、切削部を孤を描くように切削することにより、「コ」字状に切削する場合に比して、切削部と第1樋状部材や第2樋状部材の外周側との接触面積を大きくすると共にその密着性も良好にすることができる。この結果、切削部と第1樋状部材や第2樋状部材とのロウ付けによる接合強度を大きくすることができる。
【0010】
本発明の熱輸送部材の製造方法において、前記端面切削工程は、前記有孔扁平部材の前記一方の端面における外壁については前記第1深さとなるように切削し、前記他方の端面における外壁については前記第4深さとなるように切削する工程であり、前記樋状部材形成工程は、前記第1樋状部材および前記第2樋状部材については長さが前記有孔扁平部材の両端面の長さと同一になるように形成する工程であるものとしてもよい。こうすれば有孔扁平部材の両端面における外壁と第1樋状部材や第2樋状部材との接触部が大きくなるから、外壁と第1樋状部材や第2樋状部材とのロウ付けによる接合強度を大きくすることができる。この場合、前記端面切削工程は、前記第1深さと前記第4深さとが同一の深さとなるように且つ前記第2深さと前記第3深さとが同一の深さとなるように切削する工程であり、前記樋状部材形成工程は、前記第1樋状部材と前記第2樋状部材とが同一形状となるように形成する工程であるものとしてもよい。こうすれば、有孔扁平部材の一方の端面の切削加工と他方の端面の切削加工を同一のものとすることができるから、熱輸送部材の製造を容易なものにすることができる。また、第1樋状部材と第2樋状部材を同一形状にすることができるから、部品種類を少なくすることができ、熱輸送部材の製造を容易なものにすることができる。
【0011】
本発明の熱輸送部材の製造方法において、前記樋状部材形成工程は、前記複数の貫通孔のうちの端部または端部近傍に位置する貫通孔に整合する供給口を有するように前記第1樋状部材および/または前記第2樋状部材を形成する工程であるものとしてもよい。こうすれば、供給口から作動液体を注入して封止するのを簡易なものとすることができる。この場合、前記組み付け工程は、前記供給口にパイプを嵌挿して前記組み付け体を形成する工程であるものとしてもよい。こうすれば、パイプから容易に作動液体を注入し、パイプを圧潰などによりより容易に封止することができる。
【0012】
本発明の熱輸送部材の製造方法において、前記端面切削工程は、前記有孔扁平部材の前記一方の端面における外壁については前記第1深さより浅い深さとなるように切削し、前記他方の端面における外壁については前記第4深さとなるように切削する工程であり、前記樋状部材形成工程は、前記第1樋状部材については長さが前記有孔扁平部材の前記一方の端面の両外壁の内側の長さと同一になるように且つ両端部に前記一方の端面の両端部の貫通孔に整合する2つの連絡孔を有するように形成し、前記第2樋状部材については長さが前記有孔扁平部材の前記他方の端面の長さと同一になるように形成し、さらに、前記薄板を用いて前記ロウ材が接合された面を外周面とし且つ外周面が前記一方の端面の外壁の切削部に整合する樋形状で長さが前記一方の端面の長さと同一の第3樋状部材を形成する工程であり、前記組み付け工程は、前記有孔扁平部材の前記一方の端面の前記外壁の切削部に前記第3樋状部材の外周面が密着するように前記第3樋状部材を前記一方の端面に組み付けて組み付け体を形成する工程であるものとしてもよい。この場合、有孔扁平部材の一方の端面には、内側に第1樋状部材が組み付けられ、その外側に第3樋状部材が組み付けられる。このため、第1樋状部材と第3樋状部材との間に流路が形成される。そして、第1樋状部材の両端部の2つの連絡孔により、第1樋状部材と第3樋状部材との間の流路は有孔扁平部材の複数の貫通孔のうちの両端部に位置する貫通孔と連通する。上述したように、有孔扁平部材の複数の貫通孔は、第2深さに切削した隔壁の切削部と第3深さに切削した隔壁の切削部とが折り返し部となる1つのつづら折り状の流路を形成するから、この流路に作動液体を注入して封止すれば、ループ流路付きのプレート型の蛇行細管ヒートパイプとなる。
【0013】
この第3樋状部材を用いる態様の本発明の熱輸送部材の製造方法において、前記樋状部材形成工程は、前記複数の貫通孔のうちの端部または端部近傍に位置する貫通孔に整合する供給口を有するように前記第2樋状部材および/または前記第3樋状部材を形成する工程であるものとしてもよい。こうすれば、供給口から作動液体を注入して封止するのを簡易なものとすることができる。この場合、前記組み付け工程は、前記供給口にパイプを嵌挿して前記組み付け体を形成する工程であるものとしてもよい。こうすれば、パイプから容易に作動液体を注入し、パイプを圧潰などによりより容易に封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態としての熱輸送部材の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図2】有孔扁平部材22の一例の構成の概略を示す構成図である。
【
図3】
図2の有孔扁平部材22のA-A面における断面を示す断面図である。
【
図4】
図2の有孔扁平部材22のB-B面における断面を示す断面図である。
【
図5】両端面の切削が完了した有孔扁平部材22の
図2におけるA-A面を示す断面図である。
【
図6】第1樋状部材30aの外観の一例を示す外観図である。
【
図7】
図6中の第1樋状部材30aを上方からみた平面図である。
【
図8】組み付け体の扁平面を上方から見た外観の一例を示す外観図である。
【
図9】
図8の組み付け体を左側から見た側面図である。
【
図10】熱輸送部材20の外観の一例を示す外観図である。
【
図11】
図10における熱輸送部材20のC-C面の断面の一例を示す断面図である。
【
図12】
図10における熱輸送部材20のD-D面の断面の一例を示す断面図である。
【
図13】熱輸送部材120の
図10におけるC-C断面と同様の断面の一例を示す断面図である。
【
図14】第1樋状部材130aを上方からみた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態としての熱輸送部材の製造方法の一例を示す工程図である。実施形態の熱輸送部材の製造方法では、まず、有孔扁平部材22の両端面を切削する工程を実行する(工程S100)。
図2は、有孔扁平部材22の一例の構成の概略を示す構成図である。
図3は、
図2の有孔扁平部材22のA-A面における断面を示す断面図であり、
図4は、
図2の有孔扁平部材22のB-B面における断面を示す断面図である。
図5は、工程S100による両端面の切削が完了した有孔扁平部材22のA-A面における断面を示す断面図である。
【0016】
有孔扁平部材22は、アルミニウムやステンレスなどの金属材料を用いて、例えば押出成形により、
図2ないし
図4に示すように、一列に並ぶ複数の貫通孔24を有する厚さが3mm以下の扁平な有孔扁平部材として形成されている。本実施形態では、複数の貫通孔24をその断面が1辺1.5mm以下の正方形状となるよう形成したが、長方形状や円形状、楕円形状などとしてもよい。また、本実施形態では、有孔扁平部材22の厚さは3mm以下、好ましくは2mm以下とした。
【0017】
有孔扁平部材22の両端面の切削は、
図5に示すように、
図5中左側の端面(一方の端面)では、上から1つ置きの複数の隔壁26aについては第1深さL1となるように切削し、複数の隔壁26aの間の複数の隔壁26bについては第1深さL1より深い第2深さL2となるように切削する。即ち、第1深さL1だけ切削された隔壁26aと第2深さL2だけ切削された隔壁26bとが交互に配置されるように切削するのである。また、
図5中左側の端面(一方の端面)の外壁については、複数の隔壁26aと同様に第1深さL1となるように切削する。
図5中右側の端面(他方の端面)では、
図5中左側の端面(一方の端面)で第1深さL1となるように切削した隔壁26aについては第3深さL3となるように切削し、
図5中左側の端面(一方の端面)で第2深さL2となるように切削した隔壁26bについては第4深さL4となるように切削する。即ち、他方の端面では、第3深さL3だけ切削された隔壁26aと第4深さL4だけ切削された隔壁26bとが交互に配置されるように切削するのである。また、
図5中右の端面(他方の端面)の外壁については、複数の隔壁26bと同様に第4深さL4となるように切削する。なお、実施形態では、各隔壁26a,26bおよび外壁については、切削部が円弧を描くように、全体として「U」字形状になるように切削する。こうした切削により、図示するように、一方の端面が第1深さL1だけ切削され他方の端面が第3深さL3だけ切削された隔壁26aと、一方の端面が第2深さL2だけ切削され他方の端面が第4深さL4だけ切削された隔壁26bとが交互に配置されるようになる。ここで、第1深さL1と第4深さL4とを同一の深さとし、第2深さL2と第3深ささL3とを同一の深さとすれば、隔壁26aは一方の端面が第1深さL1だけ切削され他方の端面が第2深さL2だけ切削されたものとなり、隔壁26bは一方の端面が第2深さL2だけ切削され他方の端面が第1深さL1だけ切削されたものとなる。
【0018】
実施形態の熱輸送部材の製造方法では、有孔扁平部材22の両端面を切削する工程とは順不同に、第1樋状部材30aおよび第2樋状部材30bを形成する工程を実行する(工程S110)。
図6は、第1樋状部材30aの外観の一例を示す外観図であり、
図7は、
図6中の第1樋状部材30aを上方からみた平面図である。この工程では、第1樋状部材30aとしては、有孔扁平部材22を形成した金属材料(例えばアルミニウムやステンレスなど)と同一の金属材料の一面にこの金属材料より融点が低いロウ材を接合して圧延したクラッド薄板材を用いて、外周面(
図6中下面)がロウ材が接合された面となるように、且つ、外周面が有孔扁平部材22の一方の端面に形成した第1深さL1の隔壁26aの切削部の円弧に整合する樋形状(断面が「U」字形状)となるように、長さが有孔扁平部材22の一方の端面の長さとなるように形成する。また、第1樋状部材30aには、有孔扁平部材22の一方の端面に組み付けたときに有孔扁平部材22の複数の貫通孔24のうち端から2番目の貫通孔24に整合する位置に貫通孔32a(
図7参照)を形成する。一方、第2樋状部材30bとしては、クラッド薄板材を用いて、外周面(
図6中下面)がロウ材が接合された面となるように、且つ、外周面が有孔扁平部材22の一方の端面に形成した第4深さL4の隔壁26bの切削部の円弧に整合する樋形状(断面が「U」字形状)となるように、長さが有孔扁平部材22の他方の端面の長さと同一になるように形成する。また、第2樋状部材30bには、有孔扁平部材22の他方の端部に組み付けたときに有孔扁平部材22の複数の貫通孔24のうち端から2番目の貫通孔24に整合する位置に貫通孔32b(
図7参照)を形成する。ここで、第1深さL1と第4深さL4とを同一の深さとし、第2深さL2と第3深さL3とを同一の深さとすれば、第1樋状部材30aと第2樋状部材30bとは同一形状となる。なお、クラッド薄板材としては、金属材料としてアルミニウムを用いる場合、アルミニウムの板材の一方の面にアルミシリコン合金などのロウ材を接合したものを用いることができ、金属材料としてステンレスを用いる場合、ステンレスの板材の一方の面に銅やニッケルなどのロウ材を接合したり、ステンレスに板材の一方の面にメッキを施してこれをロウ材とするものとしてもよい。
【0019】
次に、有孔扁平部材22の一方の端面(
図5中左側の端面)には第1樋状部材30aをその外周面が第1深さL1だけ切削した隔壁26aの切削部に接触するように組み付け、他方の端面(
図5中右側の端面)には第2樋状部材30bをその外周面が第4深さL4だけ切削した隔壁26bの切削部に接触するように組み付ける。そして、有孔扁平部材22を形成した金属材料(例えばアルミニウムやステンレスなど)と同一の金属材料により外径が第1樋状部材30aや第2樋状部材30bの貫通孔32a,32bの径と同径となるように形成されたパイプ34を第1樋状部材30aの貫通孔32aおよび第2樋状部材30bの貫通孔32bに組み付けて組み付け体とする(工程S120)。組み付け体の扁平面を上方から見た外観を
図8に示し、
図8の組み付け体を左側から見た外観を
図9に示す。
【0020】
続いて、有孔扁平部材22を形成した金属材料(例えばアルミニウムやステンレスなど)は溶融しないが第1樋状部材30aおよび第2樋状部材30bを形成したクラッド薄板材のロウ材が溶融する温度に調整された炉に組み付け体を入れてロウ付けする(工程S130)。こうしたロウ付けにより、第1樋状部材30aの外周面と有孔扁平部材22の一方の端面の複数の隔壁26aの第1深さL1だけ切削した切削部との接触面が接合され、第2樋状部材30bの外周面と有孔扁平部材22の他方の端面の複数の隔壁26bの第4深さL4だけ切削した切削部との接触面が接合される。また、第1樋状部材30aや第2樋状部材30bの貫通孔32a,32bとパイプ34とが接合される。そして、一方のパイプ34から作動液体を注入し、双方のパイプ34を圧潰などを用いて封止して(工程S140)、熱輸送部材20を完成する。
図10は、熱輸送部材20の外観の一例を示す外観図である。
図11は、
図10における熱輸送部材20のC-C面の断面の一例を示す断面図であり、
図12は、
図10における熱輸送部材20のD-D面の断面の一例を示す断面図である。
【0021】
完成した熱輸送部材20では、複数の貫通孔24は、
図11に示すように、図中左側では複数の隔壁26bの第2深さL2だけ切削した切削部が折り返し部となり、図中右側では複数の隔壁26aの第3深さL3だけ切削した切削部が折り返し部となって1つの密閉されたつづら折り状の流路を形成し、プレート型の蛇行細管ヒートパイプとして機能する。
【0022】
以上説明した実施形態の熱輸送部材の製造方法では、一方の端面が第1深さL1だけ切削され他方の端面が第3深さL3だけ切削された隔壁26aと、一方の端面が第2深さL2だけ切削され他方の端面が第4深さL4だけ切削された隔壁26bとが交互に配置されるように有孔扁平部材22の両端面を切削する。一方、クラッド薄板材を用いて、外周面がロウ材が接合された面となるように、且つ、外周面が有孔扁平部材22の一方の端面に第1深さL1だけ切削した各隔壁26aの切削部の円弧に整合するように第1樋状部材30aを形成し、クラッド薄板材を用いて、外周面がロウ材が接合された面となるように、且つ、外周面が有孔扁平部材22の他方の端面に第4深さL4だけ切削した各隔壁26bの切削部の円弧に整合するように第2樋状部材30bを形成する。そして、有孔扁平部材22の一方の端面に第1樋状部材30aをその外周面が第1深さL1だけ切削した隔壁26aの切削部に接触するように組み付け、他方の端面に第2樋状部材30bをその外周面が第4深さL4だけ切削した隔壁26bの切削部に接触するように組み付けて組み付け体とし、ロウ材を溶融する温度に調整された炉に組み付け体を入れてロウ付けする。このように、切削工程を施した有孔扁平部材22に外周面がロウ材を有する面となると共に第1深さL1に切削した隔壁26aの切削部に整合する第1樋状部材30aと第4深さL4に切削した隔壁26bの切削部に整合する第2樋状部材30bとを組み付けて炉に入れるだけでよいから、圧潰と溶接封止とが必要な場合に比して、より簡易に熱輸送部材20を製造することができる。しかも、第1樋状部材30aや第2樋状部材30bに形成した貫通孔32a,32bにパイプ34を組み付けて組み付け体とすると共に炉に入れてロウ付けし、パイプ34から作動液体を注入して封止するから、作動流体を容易に注入して封止することができる。
【0023】
また、実施形態の熱輸送部材の製造方法では、第1深さL1と第4深さL4とを同一の深さとし、第2深さL2と第3深ささL3とを同一の深さとすれば、有孔扁平部材22の両端面の加工を同様なものとすることができるから、有孔扁平部材22の両端面の加工を異なるものとする場合に比して、熱輸送部材の製造を容易なものとすることができる。また、第1樋状部材30aと第2樋状部材30bとを同一形状とすることができるから、熱輸送部材の部品種類を少なくすることができ、熱輸送部材の製造を容易なものとすることができる。
【0024】
実施形態の熱輸送部材の製造方法では、有孔扁平部材22の両端面に第1樋状部材30aと第2樋状部材30bとを組み付けてから第1樋状部材30aと第2樋状部材30bの貫通孔32a,32bにパイプ34を組み付けて組み付け体としたが、第1樋状部材30aや第2樋状部材30bの貫通孔32a,32bにパイプ34を組み付けてから第1樋状部材30aおよび第2樋状部材30bを有孔扁平部材22の端面に組み付けるものとしてもよい。
【0025】
実施形態の熱輸送部材の製造方法では、第1樋状部材30aや第2樋状部材30bの貫通孔32a,32bを、有孔扁平部材22の端面に組み付けたときに有孔扁平部材22の複数の貫通孔24のうち端から2番目の貫通孔24に整合する位置となるように形成したが、有孔扁平部材22の複数の貫通孔24のうちの最も端の貫通孔24や端から3番目の貫通孔24に整合するように形成するものとしてもよい。
【0026】
実施形態の熱輸送部材の製造方法では、有孔扁平部材22の両端面に第1樋状部材30aと第2樋状部材30bとを組み付けてから第1樋状部材30aと第2樋状部材30bの貫通孔32a,32bにパイプ34を組み付けて組み付け体としたが、パイプ34は組み付けないものとしてもよい。この場合、ロウ付けした後に貫通孔32a,32bの一方から作動液体を注入し、貫通孔32a,32bを閉じて封止すればよい。また、有孔扁平部材22の両端面の貫通孔32a,32bの形成されていない第1樋状部材30aおよび第2樋状部材30bを組み付けて組み付け体としてもよい。この場合、ロウ付けした後に第1樋状部材30aや第2樋状部材30b或いは有孔扁平部材22に貫通孔を形成し、形成した貫通孔から作動液体を注入して封止すればよい。
【0027】
実施形態の熱輸送部材の製造方法では、有孔扁平部材22の隔壁26a,26bの各切削部については円弧を描くように切削したが、各切削部で円弧ではなく滑らかな孤を描くように切削するものとしてもよい。また、第1深さL1や第4深さL4の切削部だけが円弧または滑らかな孤を描くように切削し、第2深さL2や第3深さL3の切削部では弧を描かないように切削するものとしてもよい。さらに、第1深さL1や第4深さL4の切削部でも弧を描かないように切削するものとしても構わない。例えば、各切削部を三角形状や「コ」字形状に切削するものとしてもよい。
【0028】
実施形態の熱輸送部材の製造方法では、プレート型の蛇行細管ヒートパイプとなる熱輸送部材20を製造するものとしたが、ループ流路付きのプレート型の蛇行細管ヒートパイプとなる熱輸送部材120を製造するものとしてもよい。
図13は、熱輸送部材120の
図10におけるC-C断面と同様の断面の一例を示す断面図である。
図14は、
図7と同様に第1樋状部材130aを上方から見た平面図である。
【0029】
工程S100の有孔扁平部材122の両端面の切削では、
図2に示す有孔扁平部材22と同一の有孔扁平部材122に対して、
図13に示すように、
図13中左側の端面(一方の端面)では、上から1つ置きの複数の隔壁126aについては熱輸送部材20の製造の際のの深さより深い第1深さL1となるように切削し、複数の隔壁126aの間の複数の隔壁126bについては第1深さL1より深い第2深さL2となるように切削する。
図13中左側の端面(一方の端面)の外壁については、第1深さL1より浅くなるように切削する。
図13中右側の端面(他方の端面)では、
図13中左側の端面(一方の端面)で第1深さL1となるように切削した隔壁126aについては第3深さL3となるように切削し、
図5中左側の端面(一方の端面)で第2深さL2となるように切削した隔壁26bについては第4深さL4となるように切削する。
図13中右の端面(他方の端面)の外壁については、複数の隔壁126bと同様に第4深さL4となるように切削する。この場合も、各隔壁126a,126bおよび外壁については、切削部が円弧を描くように、全体として「U」字形状になるように切削する。
【0030】
工程S110の対状部材の形成では、第1樋状部材130aと第2樋状部材130bと第3樋状部材130cとの3つの樋状部材を形成する。第1樋状部材130aは、長さは異なるが第1樋状部材30aと同様に、クラッド薄板材を用いて、外周面がロウ材が接合された面となるように、且つ、外周面が有孔扁平部材122の一方の端面に形成した第1深さL1の隔壁126aの切削部の円弧に整合する樋形状(断面が「U」字形状)となるように、長さが有孔扁平部材122の一方の端面の外壁の内側までの長さとなるように形成する。また、
図14に示すように、第1樋状部材130aの両端部には、有孔扁平部材22の一方の端面に組み付けたときに有孔扁平部材22の複数の貫通孔24のうち最端の貫通孔24に連通する連絡孔131を形成する。第2樋状部材130bは、第2樋状部材30bと同様に、クラッド薄板材を用いて、外周面がロウ材が接合された面となるように、且つ、外周面が有孔扁平部材122の一方の端面に形成した第4深さL4の隔壁126bの切削部の円弧に整合する樋形状(断面が「U」字形状)となるように、長さが有孔扁平部材122の他方の端面の長さ(外壁の外側までの長さ)と同一になるように形成する。また、第2樋状部材130bには、有孔扁平部材122の他方の端部に組み付けたときに有孔扁平部材122の複数の貫通孔124のうち端から2番目の貫通孔124に整合する位置に貫通孔132bを形成する。第3樋状部材130cは、第1樋状部材30aと同様に、クラッド薄板材を用いて、外周面がロウ材が接合された面となるように、且つ、外周面が有孔扁平部材122の一方の端面の外壁に形成した切削部の円弧に整合する樋形状(断面が「U」字形状)となるように、長さが有孔扁平部材122の一方の端面の外壁の外側までの長さとなるように形成する。また、第3樋状部材130cには、有孔扁平部材122の一方の端部に組み付けたときに有孔扁平部材122の複数の貫通孔124のうち端から2番目の貫通孔124に整合する位置に貫通孔132cを形成する。ここで、有孔扁平部材122の一方の端面の外壁の切削部と他方の端部の第4深さに切削する各隔壁126bの切削部とを同一深さで同一形状とすれば、第2樋状部材130bと第3樋状部材130cは同一形状となる。
【0031】
工程S120の組み付けでは、有孔扁平部材122の一方の端面(
図13中左側の端面)には、第1樋状部材130aをその外周面が第1深さL1だけ切削した各隔壁126aの切削部に接触するように外壁の内側に組み付け、その外側に第3樋状部材130cをその外周面が外壁の切削部に接触するように組み付ける。また、他方の端面(
図13中右側の端面)には第2樋状部材130bをその外周面が第4深さL4だけ切削した隔壁126bの切削部に接触するように組み付ける。そして、第2樋状部材130bと第3樋状部材130cの貫通孔132b,132cにパイプ134を組み付けて組み付け体とする。
【0032】
そして、有孔扁平部材122を形成した金属材料は溶融しないがクラッド薄板材のロウ材は溶融する温度に調整された炉に組み付け体を入れてロウ付けする(工程S130)。こうしたロウ付けにより、第1樋状部材130aの外周面と有孔扁平部材122の一方の端面の複数の隔壁126aの第1深さL1だけ切削した切削部との接触面が接合され、第2樋状部材130bの外周面と有孔扁平部材122の他方の端面の複数の隔壁126bの第4深さL4だけ切削した切削部との接触面が接合され、第3樋状部材130cの外周面と有孔扁平部材122の一方の端面の外壁の切削部との接触面とが接合される。また、第2樋状部材130bや第3樋状部材130cの貫通孔132b,132cとパイプ134とが接合される。そして、一方のパイプ134から作動液体を注入し、双方のパイプ134を圧潰などを用いて封止して(工程S140)、熱輸送部材120を完成する。
【0033】
熱輸送部材120は、
図13に示すように、第1樋状部材130aと第3樋状部材130cとの間に流路が形成され、この流路は、第1樋状部材130aの両端部の2つの連絡孔131により、有孔扁平部材122の複数の貫通孔124のうちの両端部に位置する貫通孔124と連通する。複数の貫通孔124は、
図13に示すように、図中左側では複数の隔壁126bの第2深さL2だけ切削した切削部が折り返し部となり、図中右側では複数の隔壁126aの第3深さL3だけ切削した切削部が折り返し部となってつづら折り状の流路を形成する。このため、熱輸送部材120は、ループ流路付きのプレート型の蛇行細管ヒートパイプとなる。
【0034】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、熱輸送部材の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
20,120 熱輸送部材、22,122 有孔扁平部材、24,124 貫通孔、26,26a,26b,126a,126b 隔壁、30a,130a 第1樋状部材、30b,130b 第2樋状部材、130c 第3樋状部材、32a,32b,132b,132c 貫通孔、34,134 パイプ、131 連絡孔。