(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】介護用クッション
(51)【国際特許分類】
A61G 7/057 20060101AFI20220728BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61G7/057
A47C27/00 K
(21)【出願番号】P 2021173651
(22)【出願日】2021-10-25
【審査請求日】2021-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】721010386
【氏名又は名称】西堀 健太
(72)【発明者】
【氏名】西堀 健太
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05269323(US,A)
【文献】特開2014-158604(JP,A)
【文献】米国特許第08136186(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0078437(US,A1)
【文献】米国特許第09307842(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00-27/22
A47G 9/00-11/00
A61G 7/00-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人型形状の一体型の弾性体
でできた介護用のクッションであって、クッションの長手方向の一端から他端にかけて同心軸上に左右対称に要介護者の頭部を載置する頭部載置部と要介護者の背中及び臀部を保持する三角柱型背中臀部保持部と要介護者の腕部を保持する一本の腕部保持部と要介護者の脚部を保持する脚部
保持部とで構成されており、前記腕部保持部は要介護者を傾ける側の脇と胴の間に挿入して要介護者の腕を保持するよう三角柱型背中臀部保持部の頂
辺に揺動自在に取り付けられている
介護用クッションであって、前記三角柱型背中臀部保持部の頂辺には要介護者の腕を保持する断面形状が楕円形又は丸形の腕部保持部が一本取り付けられており、前記脚部保持部は、断面形状が楕円形又は丸型に形成されていて、三角柱型背中臀部保持部の底面に二本設けられている事を特徴とする介護用クッション。
【請求項2】
前記頭部載置部は枕を頭部載置部に載置した状態で要介護者の頭部を載置することができるよう薄型に形成されている請求項1に記載の介護用クッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は要介護者の体位を変換した後に姿勢を保持する事で、拘縮や褥瘡
を予防する弾性体でできた介護用クッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
体位変換の目的は本来、自然な行為として、自力で身体の格好・姿勢を変える事にある。日常生活の中で意識的に行う姿勢変更や無意識的な「身体の傾け」、あるいは関節を動かしたりする行為は、圧迫力やずれ力の除去、関節不動による苦痛改善、体温調節(むれ・暑さ対策)、内臓機能の補助などの目的で行われる。それが自力できない要介護者に被介護者が適宜体位を交換し、安楽な姿勢の保持をする必要がある。
【0003】
特許文献1のクッションは、上記問題点を解消するために提案されたものであるが、復元弾性をもつ略三角柱状のクッション本体に穴部を形成し、該穴部に復元弾性を持つクッション体を嵌脱に設けたもので要介護者の背中部及び腰部に当てがうことにより、要介護者の側臥位姿勢の圧迫を軽減することができるようにしたものであるが、要介護者の背中部及び腰部に当てがうことしかできず、要介護者の頭部、腕部、脚部の保持が考慮されておらず、点でしか支えられていない為、身体全体での圧迫の軽減ができていないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、介護用クッションを一つのクッションで要介護者の目的に合った使用勝手の良い介護用クッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の介護用クッションは、人型形状の一体型の弾性体でできた介護用のクッションであって、クッションの長手方向の一端から他端にかけて同心軸上に左右対称に要介護者の頭部を載置する頭部載置部と要介護者の背中及び臀部を保持する三角柱型背中臀部保持部と要介護者の腕部を保持する一本の腕部保持部と要介護者の脚部を保持する脚部保持部とで構成されており、前記腕部保持部は要介護者を傾ける側の脇と胴の間に挿入して要介護者の腕を保持するよう三角柱型背中臀部保持部の頂辺に揺動自在に取り付けられている介護用クッションであって、前記三角柱型背中臀部保持部の頂辺には要介護者の腕を保持する断面形状が楕円形又は丸形の腕部保持部が一本薄肉部を介して取り付けられており、前記脚部保持部は、断面形状が楕円形又は丸型に形成されていて、薄肉部を介して三角柱型背中臀部保持部の底面に二本設けられている事を特徴とする。
また、本発明の介護用クッションにあっては、前記頭部載置部は枕を頭
部載置部に載置した状態で要介護者の頭部を載置することができるよう型
に形成されている事が望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の介護用クッションは請求項1のように人型形状の一体型の弾性クッションであり、要介護者の身体の部位の全てを面で捉え体位変換後に安楽に支える事ができるという効果がある。また、請求項2のように頭部のクッションがある事で要介護者を体位交換後にこのクッションを要介護者のどの位置に挟めばよいかの位置を概ね理解する事ができる効果がある。
また、請求項3のように背中・臀部保持部のクッションを三角柱型にする事で要介護者に一定角度の姿勢を保持する事ができる効果がある。また、請求項4のように腕部保持部には楕円形丸形のクッションを置くことで肘や肩の緊張を和らげ、拘縮や浮腫みを予防する効果がある。
また、請求項5のように要介護者の脚部を載置する楕円形丸型脚部クッションを置くことで要介護者の脚の体圧を分散し、拘縮や褥瘡を予防する効果がある。
そもそも関節拘縮、浮腫み、褥瘡の要因とは、長時間同じ姿勢で居る事でそれを防ぐ為にクッションを挟む事で身体に掛かる圧力を軽減させる事ができる。クッションを挟むポイントとしてはまず身体をねじらない次に身体とベットマットの隙間を埋める最後に身体の緊張がほぐれて一定時間安定して寝ていられる姿勢を作る、の3点が重要になる。又、褥瘡の好発部位は全体の80%が臀部であり、その内の50%が仙骨部であるというデータがある。つまり褥瘡を防ぐ為に要介護者になってもらう体位は側臥位が一番適しているという事です。
以上の理由から本発明品のクッションは介護度が重い、使用頻度が高い要介護者の方にこそより効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明介護用クッションの外観斜視図である。
【
図2】本発明介護用クッションの要部詳細図である。
【
図3】同上の介護用クッションの使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、介護用クッションを人型で一体的に形成すると共に工夫することで一つのクッションで要介護者の目的に合った使用勝手の良い介護用クッションを提供することにある。
【0010】
介護用クッションは、弾性体でできた介護用のクッションであって、クッションの長手方向の一端から他端にかけて同心軸上に左右対称に要介護者の頭部を載置する頭部載置部1と要介護者の背中及び臀部を保持する三角柱型背中臀部保持部2と要介護者の腕部を保持する一本の腕部保持部3と要介護者の脚部を保持する脚部保持部4とで構成されており、前記腕部保持部3は要介護者を傾ける側の脇と胴の間に挿入して要介護者の腕を保持するよう三角柱型背中臀部保持部2の頂辺に揺動自在に取り付けられている。
【0011】
頭部載置部1は枕を頭部載置部1に載置した状態で要介護者の頭部を載置することができるよう薄型に形成されており、
図2に示すように、三角柱型背中臀部保持部2の上面に縫い付けられている。
【0012】
三角柱型背中臀部保持部2の頂辺には要介護者の腕を保持する断面形状が楕円形又は丸形の腕部保持部3が腕部保持部3に取り付けられている。
【0013】
脚部保持部4は、断面形状が楕円形又は丸型に形成されている。要介護者の脚部を保持する脚部保持部4は二本で構成されており、要介護者の脚の状態(拘縮・褥瘡・浮腫等)に合わせて保持できるように一体的に形成している。
【0014】
図1の人型クッションを要介護者の後ろから
図3のように頭、背中、臀部、腕、脚と挿入、保持していく。要介護者の頭の下には枕を設けている為、頭部裁置部1は要介護者の枕の下に設け、要介護者の頭を左右どちらかに向ける。背中から臀部の部分の背中臀部保持部2は床面側の角度が30度前後、頂
辺側の角度が120度前後の二等辺三角柱形状になっている。その三角柱になっている背中臀部保持部2を要介護者の背中臀部に合わせて要介護者を側臥位にする。腕の部分の腕部保持部3は楕円形状の円錐になっており、要介護者の背後から脇の下を通し、要介護者の両手の間に挿入し要介護者が抱えるように保持する。又、腕部保持部3は背中臀部保持部2の部分の上端部から三分の一の頂
辺側の個所に一本だけ縫い付けている為、要介護者が左右に向いた際は都度腕部保持部3を挟み直すのが望ましい。
【0015】
脚の部分の脚部保持部4は腕部保持部3と同様に楕円形になって二本あり、背中臀部保持部2の底面上下に縫い付けられている為、要介護者が左右を向いた際にも脚部保持部4を左右変わりなく同様に挟む事ができる。尚、脚部保持部4を挟む際は要介護者の脚の拘縮や褥瘡、浮腫みの程度によって脚部保持部4の挟み方も変わってくる。例えば要介護者の両足が浮腫んでいる場合は二つの脚部保持部4とも要介護者の脚の下に置き、脚を持ち上げる様にして浮かせる事で浮腫みの軽減を図ることができる。
要介護者の両脚に拘縮が見られる際は一つの脚の脚部保持部4を要介護者の股の間に挿入し、もう一つの脚部保持部4を要介護者の脚の下に保持する。要介護者の脚を伸展させて拘縮を予防する。脚部保持部4は要介護者の脚の状態に合わせて挿入、保持していく。
【0016】
介護クッションは
図3の通り要介護者の後ろから身体を支える形式になっている為、要介護者の唾液や嘔吐物が直接かかる事無く比較的清潔に保つ事が出来、排泄交換時や定時の体位交換時にもさっと取り外し・取り付けができる為、被介護者の介護にかかる時間を削減する事もできる。
【0017】
クッションの中身は化学繊維(ウレタンやポリエステル)で構成されており、外カバーはポリエステル100%の一体型製法で縫い付けられており、要介護者の唾液、嘔吐物、血液、尿、便が付着した際も中身に染み込む事無く拭き取るだけで清潔に使用する事ができる。
又、特許請求の範囲内においてクッションの形や材質も変更可能であって、例えばクッションの中身を発泡ビーズやエアクッション等を採用する事ができる。また、クッション本体の形状も人型であれば部分的に大きさを変えたり、背中臀部の三角柱の角度を変えたりする事も可能である。
【0018】
背中臀部保持部2から縫製により頭部載置部1は
図2に示すように、隣り合う箇所を縫い付ける事が望ましい。腕部保持部3は
図2に示すように、背中臀部三角柱の頂
辺と隣り合う箇所を縫い付ける事が望ましい。腕部保持部3の可動範囲は
図2Bに示すように、概ね180度以上可動する事が望ましい。脚部保持部4は背中臀部保持部2の底に二本が設けられており、上の脚部保持部13と下の脚部保持部12とは隙間を介して互いに平行になるように形成される事が望ましい。脚部の可動範囲は
図2で示すように、概ね90度以上である事が望ましい。それぞれの部位の各パーツのクッションを縫い合わせて一体型の形式を作っていく。
【0019】
この発明品のサイズはSサイズ150CM、Mサイズ160CM、Lサイズ170CM、LLサイズ180CMとあり、使用の際に要介護者と同等の身長のサイズのクッションを選択する事で購入の際の目安が分かり易い。
【符号の説明】
【0020】
1 頭部載置部
2 背中臀部保持部
3 腕部保持部
4 脚部保持部
8 頭部載置部縫い付け部分(薄肉部込み)
9 腕部可動範囲
10 腕部縫い付け部(薄肉部込み)
11 脚部可動範囲
12 脚部下方縫い付け部(薄肉部込み)
13 脚部上方縫い付け部(薄肉部込み)
【要約】
【課題】
施設・在宅において要介護者が使用する介護用クッションの種類・形は様々であり効果も変わってくる。又、被介護者の能力や経験の差で使用方法の違いが出ている事が要介護者の浮腫み、褥瘡、拘縮の原因にもなっていると考えられる。そして要介護者に合わせて都度挟み変えるクッションやそれを覚えること自体が被介護者に時間と労力を使わせている。
【解決手段】
この発明品である介護用クッションは要介護者と同じ人型にする事でどの部位にクッション挟むのかが明確で分かりやすい為、被介護者の誰がいつ挟んでも要介護者の身体の姿勢を圧迫なく安楽に保持する事ができる。又、クッションの種類を覚える、色々な種類を挟み直す時間や労力も削減できる事で被介護者の役に立つ事ができる。
【選択図】
図1