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特許7112639遠赤外線放射基材、遠赤外線放射基材の調製方法、高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料及び高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】遠赤外線放射基材、遠赤外線放射基材の調製方法、高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料及び高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/50 20060101AFI20220728BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220728BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20220728BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220728BHJP
   B01J 27/18 20060101ALI20220728BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220728BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220728BHJP
   C09D 1/02 20060101ALI20220728BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20220728BHJP
   C23C 4/11 20160101ALI20220728BHJP
【FI】
C04B35/50
B01J37/04 102
B01J37/34
B01J37/08
B01J27/18 Z
B01J37/02 301Z
C09D7/61
C09D1/02
C04B41/87 K
C04B41/87 L
C23C4/11
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020154590
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2021095326
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】201911299731.X
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522258787
【氏名又は名称】郭嘉川
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭嘉川
(72)【発明者】
【氏名】王▲ハン▼
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110483046(CN,A)
【文献】韓国実用新案第20-2003-0025256(KR,Y1)
【文献】韓国実用新案第20-2003-0032253(KR,Y1)
【文献】特開2002-265925(JP,A)
【文献】特開2002-201458(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110066598(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110117457(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107815148(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/50
B01J 37/04
B01J 37/34
B01J 37/08
B01J 27/18
B01J 37/02
C09D 7/61
C09D 1/02
C04B 41/87
C23C 4/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠赤外線放射基材であって、LaAl1-xRuxO3/トルマリンナノ粒子を含有し、
X値が、0超、0.95以下である、
ことを特徴とする遠赤外線放射基材。
【請求項2】
前記遠赤外線放射基材の調製方法であって、ゾル‐ゲル法を採用し、以下の工程を含む:
硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを水溶液に調製した後に混合してA液に調製し、
アミノ酸及び有機酸を水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
トルマリン粉体と脱イオン水を混合撹拌し、C液に調製し、
A液とB液とC液とを攪拌混合した後、マイクロ波照射、焼成、研磨を経て、前駆体を得て、
前記前駆体を焼成温度1000-1200℃で焼成し、冷却後に研磨してLaAl1-xRuxO3/トルマリンナノ粒子を得る、
ことを特徴とする請求項1に記載の前記遠赤外線放射基材の調製方法。
【請求項3】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料であって、調整剤、接着剤及び請求項1に記載の遠赤外線放射基材を含む、
ことを特徴とする高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料。
【請求項4】
前記調整剤がシリカ微粉末である、
ことを特徴とする請求項3に記載の高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料。
【請求項5】
前記接着剤は、シリカゾルとGeO2微粉末及び/又はIn23微粉末との混合である、
ことを特徴とする請求項3に記載の高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料。
【請求項6】
前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料の熱伝導率が<0.13W/(m・K)である、
ことを特徴とする請求項5に記載の高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料。
【請求項7】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層であって、
溶射で炉内の炉壁表面に請求項3から6のいずれかに記載の前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を噴射することによって形成される、
ことを特徴とする高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層。
【請求項8】
結合強度が>31.8MPaである、
ことを特徴とする請求項7に記載の高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層。
【請求項9】
少なくとも56回の1100℃の空気による熱衝撃抵抗性を有し、
前記熱衝撃抵抗性は、以下の方法により測定される、
ことを特徴とする請求項7に記載の高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層。
(熱衝撃抵抗性の測定方法)
冷熱サイクルとして、前記コーティング層をマッフル炉内に入れて1100℃まで加熱し、30分保温した後に冷水に10分浸漬し、水中から前記コーティング層を取り出す。前記コーティング層に脱落または亀裂が生じない場合、コーティング層にある水をふき取った後、前記冷熱サイクルを繰り返し、脱落または亀裂が生じるまでに繰り返した前記冷熱サイクルの回数を、熱衝撃抵抗性とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は省エネルギー塗料の技術分野に属し、具体的には高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
世界経済の急速な発展に伴い、エネルギーの消費も日増しに増大するが、地球上の炭鉱、石油、天然ガス等の再生不能エネルギーは有限である。一方、エネルギーの消費は環境の汚染をもたらし、一方、エネルギーの枯渇は世界経済の発展を深刻に制約している。中国はエネルギー消費大国であり、現在中国のエネルギー利用率は世界先進国に比べて一定の差があり、しかも中国の環境汚染が比較的深刻である。工業炉のエネルギー消費はエネルギー消費量の約25‐40%を占めているが、炉の熱効率は30%程度しかない。炉の熱効率を効果的に改善するように、赤外線放射塗料が導入されている。赤外線放射塗料は、物質の分子や原子の特性を利用した新しい材料である。このような赤外線放射塗料を発熱体と組み合わせることにより、赤外線放射加熱装置を設計、調製することができる。赤外線放射塗料を種々の加熱装置の内壁の耐火材にコーティングすると、赤外線放射特性を有する加熱設備を作ることができる。赤外線放射加熱装置が明らかな省エネルギー効果を有することは、すでに生産実践により確認されている。赤外線放射塗料は、工業炉に応用すると、省エネルギー効果が非常にいいうえ、炉壁とガスとの直接接触を遮断し、ガスによる炉壁に対する侵食を低減し、炉壁に対して良好な保護作用を奏し、炉の使用寿命を延ばし、炉のメンテナンスコストを軽減できる。また、熱伝導の面から見ると、赤外線放射塗料は伝熱壁を厚くし、かつ、コーティング層の熱伝導率が耐火煉瓦の1/10程度に相当するため、熱抵抗を増加させることによって炉の外部への伝熱量を減少させて熱効率を向上させることができ、一方、輻射伝熱の面から見ると、赤外線コーティングの表面放射率が高いため、赤外線コーティングは吸収したほとんどの熱を赤外線の形で被加熱物に放射し、熱効率を大きく向上させ、さらに、赤外線塗料は熱エネルギースペクトルも変化させた。一般的に、炉の燃焼生成物HO、CO、CO、NO、NO等のガスのスペクトルは断続的であり(被加熱物の赤外吸収スペクトルは連続している)、燃料の燃焼により発生した熱エネルギーが炉壁から反射して戻っても、スペクトルは断続的であり、ワークに吸収されにくく、ガスに吸収されて煙突から排出されやすい。高放射率赤外塗料は放射スペクトルを変化させることができ、燃料の燃焼により発生した熱を吸収して特有の赤外線の形で(スペクトルが連続している)で被加熱物に再放射することで、ガスの持ち去った熱量を低減し、エネルギーを良く利用できる。したがって、赤外線塗料は工業炉に対し、新型な省エネルギー材料として幅広い応用の将来性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許出願公開第107815148号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、1000℃で8‐14μmの波長帯での放射率≧0.960の良い遠赤外線放射性能を有する遠赤外線放射基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術プランは、以下の通りである:
【0006】
遠赤外線放射基材であって、LaAl1‐xRuナノ粒子を含有する遠赤外線放射基材であり、X値は、0‐0.95である。LaAl1‐xRuナノ粒子では、RuイオンがLaAlO結晶に取り込まれた後、Ru4+およびRu3+不純物準位が導入され、遷移活性化エネルギーの低いRu4+?Ru3+小ポーラロン吸収帯が形成され、自由キャリア濃度が増大するため、不純物準位吸収および自由キャリア吸収が増強され、Ruイオンは、単位胞の構造の変化も引き起こすため、格子振動に対応する吸収領域がブロード化して増強される。したがって、LaAl1‐xRuナノ粒子におけるRuのドープは、LaAlOセラミック材料の遠赤外線放射率を著しく向上させることができ、1000℃における8‐14μm帯の放射率は≧0.960であり、即ち高い遠赤外線放射性能を有する。また、塗料用の他の原料が全部同じ場合には、本発明の遠赤外線放射塗料から得られるコーティング層の結合強度が高く、熱衝撃抵抗性が良い。
【0007】
本発明の一実施形態では、遠赤外線放射塗料は、1000℃における8‐14μm帯の放射率は≧0.960である。
【0008】
本発明のもうひとつの目的は、前駆体収率が高く、空孔率が高く、孔径分布が均一でかつ研磨しやすく、かつ、後に生成するLaAl1-xRuxO3がポーラスな多孔を有する構造を有し、LaAl1-xRuxO3ナノ粒子を得やすく、かつ、収率が高い、前記赤外線放射基材の調製方法を提供することであり、前記赤外線放射基材の調製方法は、ゾル‐ゲル法を採用し、以下の工程を含む:
【0009】
硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを水溶液に調製した後に混合してA液に調製し、
アミノ酸及び有機酸を水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
A液とB液を攪拌混合した後、マイクロ波照射した後、乾燥し、研磨して前駆体を得て、
前駆体を焼成し、冷却後に研磨してLaAl1-xRuxO3ナノ粒子を得る。
【0010】
焼成温度は1000‐1200℃である。本発明の調製方法は、ゾル‐ゲル法によりLaAl1‐xRuナノ粒子を調製し、マイクロ波加熱によりアミノ酸および有機酸を重合し、アミノ酸およびリンゴ酸はいずれも極性分子であり、マイクロ波に対して強い吸収作用を有し、マイクロ波放射で直接重合を行うことができ、ゾル‐ゲルは、要する時間が短く、得られるゲルは空隙率が高く、孔径分布が均一であり、高い収率および結合能力を有するため、前駆体は収率と空隙率が高く、孔径分布が均一で研磨されやすく、また、後に生成するLaAl1‐xRuがポーラスな構造を有し、LaAl1‐xRuナノ粒子を得やすく、かつ、収率が高く、エネルギー消費を低減する。
【0011】
本発明の一実施形態はさらに、高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を提供し、
前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、前記基材、調整剤、接着剤を含む。本発明の高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、高い放射率と低い熱伝導率を有し、調製されるコーティング層は、良好な遠赤外線放射性能と断熱性能、優れた結合強度と熱衝撃抵抗性を有する。
【0012】
本発明の一実施形態において、調整剤はシリカ微粉末である。
シリカ微粉末を用いたのは、シリカ微粉末は、極めて小さい熱膨張係数(0.5×10‐6/K)を有するとうえ、高い赤外線放射率を有し、ムライトやコージェライト等を膨張係数調整剤として使用することによる塗料の赤外線放射率の低下を効果的に回避し、またコーティング層が乾燥した際にシリカが速やかにネットワーク構造を形成し、塗料の施工性を向上させることができるからである。
【0013】
本発明の一実施形態において、接着剤は、シリカゾルと、GeO微粉末とIn微粉末との少なくとも一つかいずれかとの混合である。
この接着剤は、強い接着力、速い表面乾燥速度を有し、かつ耐高温であり、揮発性不純物が取り込まれにくく、炉内の製品を汚染することがない。特に、GeO微粉末及び/又はIn微粉末の存在により、LaAl1‐xRuナノ粒子の遠赤外線放射性能を増強することができるうえ、コーティング層の断熱性能、結合強度及び熱衝撃抵抗性に悪影響を及ぼさない。
【0014】
本発明の一実施形態では、塗料の熱伝導率は<0.13W/(m・K)である。
従って、コーティング層は断熱保温作用を果たすことができ、熱損失を低減し、省エネルギー効果を奏することができる。
【0015】
本発明の一実施形態はさらに、良好な遠赤外線放射性能と断熱性能、優れた結合強度と熱衝撃抵抗性、および省エネルギー効果を有する、高温炉省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を提供し、
溶射によって前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に噴射し、省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。炉内の炉壁表面は、省エネ型の高温遠赤外線絶縁塗料を使用し、焼結後に0.3‐0.5mmの黒色セラミックコーティング層を形成し、当該セラミックコーティング層の熱伝導率が低く、炉壁と炉頂に対して断熱保温作用を果たし、炉の外壁温度を低下させ、放熱損失を低減し、燃料熱を有効利用して加熱炉の熱効率を向上させ、省エネルギーの目的を達成し、また、内炉壁の表面の放射率が20‐30%向上し、炉窯内炉壁の熱放射率は0.7‐0.8から0.9以上に上がり、昇温速度、降温速度及び加熱部の温度は大きく向上し、炉の生産効率を向上させ、かつ省エネルギーである。
【0016】
本発明の一実施形態においては、コーティング層の結合強度は>31.8MPaである。
【0017】
本発明の一実施形態においては、コーティング層は、少なくとも56回の1100℃の空気による熱衝撃を受けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の遠赤外線放射基材は、従来技術と比較して、高い遠赤外線放射性能を有し、前駆体収率が高く、空隙率が高く、孔径分布が均一で研磨されやすく、かつ、後に生成するLaAl1‐xRuがポーラスな構造を有し、LaAl1‐xRuナノ粒子を得やすく、かつ、ナノ粒子の収率が高く、本発明の遠赤外線放射基材を含む塗料は、高い放射率と低い熱伝導率を有し、使用される接着剤は、LaAl1‐xRuナノ粒子の遠赤外線放射性能を上げることができ、塗料のコーティング層の断熱性能、結合強度および熱衝撃抵抗性に悪影響を及ぼさなく、本発明の塗料をコーティングされたコーティング層は、良好な遠赤外線放射性能と断熱性能、優れた結合強度と熱衝撃抵抗性、および省エネルギー効果を有する。
【0019】
本発明は上記技術的解決手段を採用して高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を提供し、従来の技術の不足を補い、設計が合理的であり、操作しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の試験例1における前駆体の内部形態構成図
図2】本発明の試験例1における前駆体の孔径分布
図3】本発明の試験例1における前駆体の収率
図4】本発明の試験例2における遠赤外放射基材のXRDパターン
図5】本発明の試験例2における遠赤外線放射基材の粒度分布
図6】本発明の試験例2における遠赤外線放射基材のXPSスペクトル
図7】本発明の試験例2における遠赤外線放射基材の放射率
図8】本発明の試験例3における省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の放射率
図9】本発明の試験例3における省エネルギー型遠赤外線放射コーティングの熱伝導率
図10】本発明の試験例3における実施例1のコーティング層の熱衝撃試験結果図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、種々の変更及び変形が可能であり、特定の実施例を例示し、以下に詳細に説明する。ただし、本発明は開示の特別な形態に限定されるのではなく、逆に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨と一致するあらゆる修正、均等及び代替を含むものである。
【0022】
これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の趣旨に基づいて、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではないことは、当業者には自明である。
【0023】
本発明の一実施形態は、LaAl1‐xRuナノ粒子を含有する遠赤外線放射基材であり、X値は、0‐0.95であり、例えば0.05、0.1、0.23、0.3、0.4、0.46、0.5、0.53、0.61、0.67、0.72、0.76、0.8、0.88、0.9、0.93等。LaAl1‐xRuナノ粒子では、RuイオンがLaAlO結晶に取り込まれた後、Ru4+およびRu3+不純物準位が導入され、遷移活性化エネルギーの低いRu4+?Ru3+小ポーラロン吸収帯が形成され、自由キャリア濃度が増大するため、不純物準位吸収および自由キャリア吸収が増強され、Ruイオンは、単位胞の構造の変化も引き起こすため、格子振動に対応する吸収領域がブロード化して増強される。したがって、LaAl1‐xRuナノ粒子におけるRuのドープは、LaAlOセラミック材料の遠赤外線放射率を著しく向上させることができ、高い遠赤外線放射性能を有する。また、塗料用の他の原料が全部同じ場合には、本発明の遠赤外線放射塗料から得られるコーティング層の結合強度が高く、熱衝撃抵抗性が良い。
【0024】
本発明の一実施形態では、遠赤外線放射塗料は、1000℃における8‐14μm帯の放射率は≧0.960である。
【0025】
本発明の一実施形態はまた、前記赤外線放射基材の調製方法も提供し、赤外線放射塗料の調製方法は、ゾル‐ゲル法を採用し、以下の工程を含む:
【0026】
硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを水溶液に調製した後に混合してA液に調製し、
【0027】
アミノ酸及び有機酸を水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0028】
A液とB液とを攪拌混合した後、マイクロ波放射、乾燥、研磨を経て、前駆体を得て、
【0029】
前駆体を焼成し、冷却後に研磨してLaAl1‐xRuナノ粒子を得る。
【0030】
本発明の一実施形態において、焼成温度は1000‐1200℃であり、例えば1050℃、1085℃、1100℃、1110℃、1125℃、1140℃、1150℃、1160℃、1175℃、1180℃、1190℃等。本発明の調製方法は、ゾル‐ゲル法によりLaAl1‐x Ruナノ粒子を調製し、マイクロ波加熱によりアミノ酸および有機酸を重合し、アミノ酸およびリンゴ酸はいずれも極性分子であり、マイクロ波に対して強い吸収作用を有し、マイクロ波放射で直接重合を行うことができ、ゾル‐ゲルは、要する時間が短く、得られるゲルは空隙率が高く、孔径分布が均一であり、高い収率および結合能力を有するため、前駆体は収率と空隙率が高く、孔径分布が均一で研磨されやすく、また、後に生成するLaAl1‐xRuがポーラスな構造を有し、LaAl1‐xRuナノ粒子を得やすく、かつ、収率が高く、エネルギー消費を低減する。
【0031】
本発明の一実施形態において、アミノ酸は、グリシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、ヒスチジンまたはアルギニンから選択される。アミノ酸は、グルタミン酸又はアスパラギン酸から選択されることがより好ましい。グルタミン酸又はアスパラギン酸は、反応系のpHを調整しなくても、安定したコロイドを得ることができる。
【0032】
本発明の一実施形態において、有機酸は、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、サリチル酸、リンゴ酸又は酒石酸から選択される。有機酸は、クエン酸、リンゴ酸または酒石酸から選択されることがより好ましい。前駆体の空隙率および孔径分布均一性をさらに向上させるために、そして金属イオンに対してより多くの結合サイトを提供し、LaAl1‐xRuナノ粒子の収率を向上させるために、有機酸はクエン酸エステル(式I)またはリンゴ酸エステル(式II)である。
式I
式II
【0033】
本発明の一実施形態において、触媒はリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸、硫酸カリウムのうちの一種又は複数種から選択される。触媒は、リン酸水素二カリウムであることがより好ましい。化学反応において、触媒の役割は、当該反応の発生に必要な活性化エネルギーを低減し、収率及び結合量を向上させることである。アミノ酸、有機酸原料と触媒のモル比は、1:0.05‐0.1であることがより好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態において、赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0035】
硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.15‐0.25mol/Lの水溶液に調製した後に混合してA液に調製する。
【0036】
アミノ酸と有機酸をモル比1:0.8‐1.2で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0037】
A液とB液を1‐1.5:1の質量比で1‐2h攪拌混合した後、マイクロ波電力800‐1500Wで3‐5minマイクロ波照射した後、100‐110℃で12‐24h焼成し、研磨して前駆体を得て、
【0038】
前駆体を1000‐1200℃の空気雰囲気中で3‐4h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl1‐xRuナノ粒子を得る。
【0039】
本発明の一実施形態は、LaAl1‐xRu/トルマリンナノ粒子である赤外線放射基材を提供する。当該遠赤外線放射基材において、LaAl1‐xRuナノ粒子は、トルマリンにおけるFe2+の酸化を促進ことで、より多くのBOの電荷分布の対称性を低下させ、電気双極子モーメントを増加させ、トルマリンの遠赤外帯域における赤外線放射率を増強するだけでなく、トルマリンとともに相乗作用を発揮し、LaAl1‐xRu/トルマリンナノ複合材料が高い遠赤外線放射率を有するようにすることができる。
【0040】
上記LaAl1‐xRu/トルマリンナノ粒子の調製方法は、具体的には以下のとおりである:
【0041】
硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.15‐0.25mol/Lの水溶液に調製した後に混合してA液に調製する。
【0042】
アミノ酸と有機酸をモル比1:0.8‐1.2で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0043】
質量比1:8‐15のトルマリン粉体と脱イオン水を1‐2h混合攪拌し、C液に調製し、
【0044】
A液とB液とC液とを1‐1.5:1:1の質量比で1‐2h攪拌混合した後、マイクロ波電力800‐1500Wで3‐5minマイクロ波照射した後、100‐110℃で12‐24h焼成し、研磨して前駆体を得て、
【0045】
前駆体を1000‐1200℃の空気雰囲気中で3‐4h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl1‐xRu/トルマリンナノ粒子を得る。
【0046】
本発明の一実施形態はさらに、高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を提供し、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、前記基材、調整剤、接着剤を含む。本発明の高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、高い放射率と低い熱伝導率を有し、調製されるコーティング層は、良好な遠赤外線放射性能と断熱性能、優れた結合強度と熱衝撃抵抗性を有する。
【0047】
本発明の一実施形態において、塗料中の各成分の重量は、赤外線放射基材5‐28重量分、調整剤8‐20重量分、バインダー20‐60重量分である。
【0048】
本発明の一実施形態において、調整剤はシリカ微粉末である。シリカ微粉末を用いたのは、シリカ微粉末は、極めて小さい熱膨張係数(0.5×10‐6/K)を有するとうえ、高い赤外線放射率を有し、ムライトやコージェライト等を膨張係数調整剤として使用することによる塗料の赤外線放射率の低下を効果的に回避し、またコーティング層が乾燥した際にシリカが速やかにネットワーク構造を形成し、塗料の施工性を向上させることができるからである。
【0049】
本発明の一実施形態において、接着剤は、シリカゾルとGeO微粉末及び/又はIn微粉末との混合である。この接着剤は、強い接着力、速い表面乾燥速度を有し、かつ耐高温であり、揮発性不純物が取り込まれにくく、炉内の製品を汚染することがない。特に、GeO微粉末及び/又はIn微粉末の存在により、LaAl1‐xRuナノ粒子の遠赤外線放射性能を増強することができるうえ、コーティング層の断熱性能、結合強度及び熱衝撃抵抗性に悪影響を及ぼさない。接着剤におけるシリカゾルと微粉末との重量比は、1:0.7‐1.5であることが好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態では、塗料の熱伝導率は<0.13W/(m・K)である。従って、コーティング層は断熱保温作用を果たすことができ、熱損失を低減し、省エネルギー効果を奏することができる。
【0051】
前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料の調製方法は、赤外線放射基材と、高温熱膨張係数調整剤と、接着剤とを均一に混合し、ボールミルに入れてボールミリングし、回転速度300‐400r/minで、5‐10hボールミリングして、塗料を得る。
【0052】
本発明の一実施形態はさらに、高温炉省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を提供し、溶射によって前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に噴射し、省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。炉内の炉壁表面は、省エネ型の高温遠赤外線絶縁塗料を使用し、焼結後に0.3‐0.5mmの黒色セラミックコーティング層を形成し、当該セラミックコーティング層の熱伝導率が低く、炉壁と炉頂に対して断熱保温作用を果たし、炉の外壁温度を低下させることができ、加熱炉全体は外面温度が平均20℃以上低下し、放熱損失を低減し、燃料熱を有効利用して加熱炉の熱効率を向上させ、省エネルギーの目的を達成し、また、炉窯内炉壁の熱放射率は0.7‐0.8から0.9以上に上がり、昇温速度、降温速度及び加熱部の温度は大きく向上し、コーティング前の最大昇温速度及び降温速度は約3℃/min、コーティング後の最大昇温速度及び降温速度は≧7℃/min、また、加熱部の温度は少なくとも85℃向上し、炉の生産効率を向上させ、かつ省エネルギーである。
【0053】
本発明の一実施形態においては、コーティング層の結合強度は>31.8MPaである。
【0054】
本発明の一実施形態においては、コーティング層は、少なくとも56回の1100℃の空気による熱衝撃を受けることができる。コーティング層は、56‐72回1100℃の空気による熱衝撃を受けた後に剥がれ落ち現象が発生せず、良好な熱衝撃抵抗性を有することがより好ましい。
【0055】
以下に実施例により本発明をさらに説明する。ただし、上記した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0056】
実施例1:
【0057】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0058】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.6:0.4となるように混合してA液とし、
【0059】
2)グルタミン酸とクエン酸をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0060】
3)A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0061】
4)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.6Ru0.4ナノ粒子、すなわち赤外線放射基材を得る。
【0062】
本実施例の高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤はシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉とIn微粉との重量比が1:0.8である。
【0063】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0064】
実施例2:
【0065】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0066】
硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液とした後、La:Al:Niのモル比が1:0.5:0.5となるように混合してA液に調製し、
【0067】
グルタミン酸とリンゴ酸をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0068】
A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0069】
前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.5Ru0.5ナノ粒子、すなわち赤外線放射基材を得る。
【0070】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤はシリカゾルとIn微粉末であり、シリカゾルと微粉末の重量比は1:1.2である。
【0071】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0072】
実施例3:
【0073】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0074】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.4:0.6となるように混合してA液とし、
【0075】
2)グルタミン酸と酒石酸をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0076】
3)A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0077】
4)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.4Ru0.6ナノ粒子、すなわち赤外放射バインダーを得る。
【0078】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤はシリカゾル、GeO微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2である。
【0079】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0080】
実施例4:
【0081】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0082】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.3:0.7となるように混合してA液に調製し、
【0083】
2)アスパラギン酸とクエン酸をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0084】
3)A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0085】
4)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.3Ru0.7ナノ粒子、すなわち赤外線放射接着剤を得る。
【0086】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0087】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0088】
実施例5:
【0089】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0090】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.2:0.8となるように混合してA液に調製し、
【0091】
2)アスパラギン酸とリンゴ酸をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0092】
3)A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0093】
4)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.2Ru0.8ナノ粒子、すなわち赤外線放射接着剤を得た。
【0094】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0095】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成した。
【0096】
実施例6:
【0097】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0098】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.1:0.9となるように混合してA液に調製し、
【0099】
2)アスパラギン酸と酒石酸をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0100】
3)A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0101】
4)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.1Ru0.9ナノ粒子、すなわち赤外放射接着剤を得る。
【0102】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0103】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0104】
実施例7:
【0105】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0106】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.6:0.4となるように混合してA液に調製し、
【0107】
2)グルタミン酸とクエン酸リン酸エステル(式I)をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0108】
3)A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0109】
4)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.6Ru0.4ナノ粒子、すなわち赤外放射接着剤を得る。
【0110】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0111】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0112】
実施例8:
【0113】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0114】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.7:0.3となるように混合してA液に調製し、
【0115】
2)グルタミン酸とリンゴ酸リン酸エステル(式II)をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0116】
3)A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0117】
4)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.7Ru0.3ナノ粒子、すなわち赤外放射接着剤を得る。
【0118】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0119】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0120】
実施例9:
【0121】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0122】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.8:0.2となるように混合してA液に調製し、
【0123】
2)アスパラギン酸とクエン酸リン酸エステル(式I)をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0124】
3)A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0125】
4)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.8Ru0.2ナノ粒子、すなわち赤外線放射接着剤を得る。
【0126】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn2O3微粉末との重量比が1:0. 8である。
【0127】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0128】
実施例10:
【0129】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0130】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.9:0.1となるように混合してA液に調製し、
【0131】
2)アスパラギン酸とリンゴ酸リン酸エステル(式II)をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0132】
3)A液とB液を1.25:1の質量比で1.5h攪拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨し、前駆体を得て、
【0133】
4)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.9Ru0.1ナノ粒子、すなわち赤外線放射接着剤を得る。
【0134】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0135】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0136】
実施例11:
【0137】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0138】
硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.6:0.4となるように混合してA液に調製し、
【0139】
グルタミン酸とクエン酸をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0140】
質量比1:10のトルマリン粉体と脱イオン水とを1h混合攪拌し、C液に調製し、
【0141】
A液とB液とC液とを質量比1.25:1:1で1.5h撹拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨して前駆体を得て、
【0142】
前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.6Ru0.4ナノ粒子、すなわち赤外線放射接着剤を得る。
【0143】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0144】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0145】
実施例12:
【0146】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0147】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.7:0.3となるように混合してA液に調製し、
【0148】
2)グルタミン酸とリンゴ酸をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0149】
3)質量比1:10のトルマリン粉体と脱イオン水とを1h混合攪拌し、C液に調製し、
【0150】
4)A液とB液とC液とを質量比1.25:1:1で1.5h撹拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨して前駆体を得て、
【0151】
5)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.7Ru0.3ナノ粒子、すなわち赤外線放射接着剤を得る。
【0152】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0153】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0154】
実施例13:
【0155】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0156】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.6:0.4となるように混合してA液に調製し、
【0157】
2)グルタミン酸とクエン酸リン酸エステル(式I)をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0158】
3)質量比1:10のトルマリン粉体と脱イオン水とを1h混合攪拌し、C液に調製し、
【0159】
4)A液とB液とC液とを質量比1.25:1:1で1.5h撹拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨して前駆体を得て、
【0160】
5)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.6Ru0.4ナノ粒子、すなわち赤外線放射接着剤を得る。
【0161】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0162】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0163】
実施例14:
【0164】
赤外線放射基材の調製方法は、以下の工程を含む:
【0165】
1)硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.8:0.2となるように混合してA液に調製し、
【0166】
2)アスパラギン酸とクエン酸リン酸エステル(式I)をモル比1:1で水に溶解し、触媒を加えてB液に調製し、
【0167】
3)質量比1:10のトルマリン粉体と脱イオン水とを1h混合攪拌し、C液に調製し、
【0168】
4)A液とB液とC液とを質量比1.25:1:1で1.5h撹拌混合した後、マイクロ波電力1000Wで4minマイクロ波放射した後、100℃で15h焼成し、研磨して前駆体を得て、
【0169】
5)前駆体を1100℃の空気雰囲気中で3.5h焼成し、炉内で自然冷却し、冷却後に研磨してLaAl0.8Ru0.2ナノ粒子、すなわち赤外線放射接着剤を得る。
【0170】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料は、赤外線放射基材14重量分、シリカ微粉末16重量分、接着剤30重量分を含み、接着剤がシリカゾル、GeO微粉末、In微粉末の混合であり、シリカゾルと微粉末の重量比が1:1.2であり、GeO微粉末とIn微粉末との重量比が1:0.8である。
【0171】
高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層は、前記高温炉用省エネルギー型遠赤外線放射塗料を炉内の炉壁表面に溶射で噴射した後、昇温速度10℃/minで50℃まで昇温して2h予備乾燥し、さらに昇温速度5℃/minで100℃まで昇温して2h保温し、最後に昇温速度3℃/minで300℃まで昇温し、1h保温し、厚さ0.3‐0.5mmの省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層を形成する。
【0172】
比較例1:
【0173】
実施例1と異なるところは、グルタミン酸をエチレングリコールに変えた点である。
【0174】
比較例2:
【0175】
実施例1と異なる点は、硝酸ルテニウムを硝酸ニッケルに変えた点である。
【0176】
比較例3:
【0177】
実施例11との違いは、赤外線放射基材が電気石のみである点である。
【0178】
比較例4:
【0179】
実施例1との違いは、省エネルギー型遠赤外線放射塗料用接着剤がシリカゾルである点である。
【0180】
試験例1:
【0181】
1.[前駆体の形態構成]
【0182】
乾燥後の前駆体断面を金めっきし、前駆体内部のネットワーク構造を走査型電子顕微鏡で観察し、前駆体の空隙率、平均孔径サイズ及び孔径分布を水銀ポロシメーターで分析する。
【0183】
前駆体の内部形態構造図は図1の通りであり、図1からわかるように、実施例1と実施例7で得られた前駆体の孔径が小さく、孔径分布が均一であるのに対し、比較例1と比較例2は前駆体の孔径が大きく、孔径分布が不均一であり、また、実施例7は実施例1と比較して、前駆体の孔径分布がより均一であり、したがって、本発明の調製方法で得られた前駆体は、孔径が小さく、孔径分布が均一であり、クエン酸エステル調製により前駆体の孔径分布均一性をより一層向上させることができる。
【0184】
表1は、水銀ポロシメーターを用いて前駆体の空隙率、平均孔径を測定したものであり、表1からわかるように、実施例1及び実施例7で得られた前駆体は、空隙率が比較例1及び比較例2で得られた前駆体の空隙率より大きく、平均孔径が比較例1及び比較例2で得られた前駆体の平均孔径より小さく(この結果が図1の結果と一致する)、したがって、本発明の調製方法で得られた前駆体は、空隙率が高く、孔径が小さく、また、実施例7は、実施例1に比べて前駆体の空隙率が高く、平均孔径が小さいため、調製過程でクエン酸エステルを利用することは、前駆体の空隙率をより一層向上させ、平均孔径を小さくすることのできること。
【0185】
図2は、水銀ポロシメーターで前駆体の孔径分布を測定したものであり、図2からわかるように、実施例1で得られた前駆体は15μm程度に一つの顕著な分布ピークが現れ、且つ分布ピーク強度が最も強く、したがって、実施例1で得られた前駆体の内部に孔径15μmのメソ孔が多く存在し、また、実施例7では前駆体が8μm程度に一つの顕著な分布ピークが現れ、且つ分布ピーク強度が最も強いため、実施例1で得られた前駆体の内部に孔径8μmのメソ孔が多く存在し、また、実施例1と実施例7で得られた前駆体の孔径の集中は比較例1と比較例2より優れており、実施例7で得られた前駆体の孔径の集中は実施例1より優れていることがわかる。従って、本発明の調製方法は、前駆体の孔径分布の均一性を向上させることができ、且つ、クエン酸エステルが前駆体の孔径分布の均一性をより一層向上させることができる。
【0186】
2.前駆体の収率
【0187】
前駆体の収率は図3に示したように、実施例1‐10で得られた前駆体の収率が比較例1で得られた前駆体の収率より高く、比較例2、7‐10で得られた前駆体の収率が実施例1‐6で得られた前駆体の収率よりやや高く、したがって、本発明の調製方法は、前駆体の収率を向上させることができ、クエン酸エステル又はリンゴ酸エステルの使用も前駆体の収率を向上させることができる。
【0188】
3.ゲルの結合能力
【0189】
前駆体を調製する過程において、A液とC液を加えずに得られた前駆体であるキセロゲルを、20mLの異なるグループ用のA液(硝酸ランタン、硝酸アルミニウム、硝酸ルテニウムを0.2mol/Lの水溶液に調製した後、La:Al:Niのモル比が1:0.6:0.4となるように混合してA液に調製し)に入れ、25℃で12h浸漬する。吸着終了後にヒドロゲルを取り出し、その質量を測定し、誘導結合プラズマ質量分析法を用いて溶液中の金属イオン濃度を測定し、下記式に従ってゲル平衡吸着量qe(mg/g)を算出する:
【0190】
【0191】
式中、
mはキセロゲル質量であり、単位がgであり、
【0192】
Vは溶液体積であり、単位がmlであり、
【0193】
は初期溶液金属イオン濃度であり、単位がmg/Lであり、
【0194】
は平衡時溶液金属イオン濃度であり、単位がmg/Lである。
【0195】
計算により、実施例1で得られたキセロゲルの吸着量は832.38mg/gであり、実施例7で得られたキセロゲルの吸着量は89.15mg/gであり、対して比較例1で得られたキセロゲルの吸着量は357.21mg/gであり、したがって、本発明の調製方法を用いたら、ゲルが高い収率と結合能力を有し、さらに前駆体収率が高く、以上の結果と一致しており、また、本発明は、クエン酸エステルを利用してLaAl1‐xRuナノ粒子を調製し、より多くの結合サイトを金属イオンに提供することによって、LaAl1‐xRuナノ粒子の収率を向上させることができ、以上の結果と一致している。
【0196】
試験例2:
【0197】
1.遠赤外線放射基材のXRD分析
【0198】
X線粉末回折装置を用いて遠赤外線放射基材試料の相構造を分析する。CuKα線源を用い、走査速度は6(°)/minであり、ステップサイズは0.02°であり、走査角度は10°‐90°である。実施例1、実施例7、比較例1、比較例2で得られた遠赤外線放射基材のXRDパターンは図4のように、比較例2の調製方法ではニッケルイオン含有アルミン酸ランタン純相が得られたが、実施例1、実施例7、比較例1の調製方法はいずれもピーク位置が高角度方向に移動し、ルテニウムイオン含有アルミン酸ランタン純相が得られ、比較例2のピークが低く、次に低いのが実施例1であり、実施例7のピークが最も高い。
【0199】
2.遠赤外線放射基材の粒度試験
【0200】
遠赤外線放射基材の粒度分布をレーザー粒度分布測定機で分析したところ、図5に示すとおりであった。実施例1、実施例7および比較例2で得られた遠赤外線放射基材の粒度分布は集中しており、実施例1で得られた遠赤外線放射基材の粒度は、主に50nmから230nmの間に分布し、出現頻度が最も高い粒径は173nmであり、実施例7で得られた遠赤外線放射基材の粒度は、主に76nmから183nmの間に分布し、出現頻度が最も高い粒径は100nmであり、比較例2で得られた遠赤外線放射基材の粒度は、主に87nmから451nmの間に分布し、出現頻度が最も高い粒径は235nmであり、実施例1および実施例7から明らかなように、実施例7で得られた遠赤外線放射基材のサイズはより細かく、粒度分布がより均一であった。比較例1で得られた遠赤外線放射基材は、粒度分布範囲が広く、主に73nmから1752nmの間に分布しており、出現頻度が最も高い粒径は1055nmであり、粒度分析結果から明らかなように、本発明で調製した遠赤外線放射基材は、粒子のサイズが細かく、粒度分布が均一であった。
【0201】
3.遠赤外線放射基材のXPS分析
【0202】
遠赤外線放射基材におけるLaAl1‐xInがトルマリンの赤外線放射性能への影響を鋭意検討するために、トルマリン中の鉄、セリウム等の元素の原子価状態及びその含有量を測定し、試験装置はX線光電子分光装置である。まず、実施例11及び比較例3の遠赤外線放射基材サンプルに対してそれぞれエッチング試験を行い、トルマリン深層におけるFe2+の変化を検知した。図6はアルゴンイオンエッチング10min後、実施例11及び比較例3は遠赤外線放射基材サンプルのXPSスペクトルであり、XPSのプローブ深さは約10nmであった。図6から明らかなように、比較例3の遠赤外線放射基材サンプルは、このプローブ深さにおいてFe2+ピークが顕著であり、実施例11の遠赤外線放射基材サンプル中のFe2+ピークが著しく低下し、対してFe3+ピークが著しく増強され、従って、トルマリンにおけるFe2+がLaAl1‐xInによって酸化されると、トルマリンの遠赤外波長帯での赤外線放射率をさらに強くすることができる。
【0203】
4.遠赤外線放射基材の赤外線放射性能分析
【0204】
材料の赤外線放射性能を知るするために、材料の赤外線放射率を測定し、IR‐デュアルバンド放射率測定器を用いて粉末の放射率を測定した。IR‐デュアルバンド放射率測定器は主に標準黒体放射機及び灰色体吸収機から構成される。吸収した放射エネルギーを標準黒体と対比して試験対象の放射率を得て、ここで遠赤外試験帯域は8‐14μmであった。図7は、サンプル1000℃における8‐14μm遠赤外波長帯の法線放射率であり、本発明の実施例1‐14で得られた遠赤外線放射基材は1000℃における8‐14μm帯の放射率が0.960より大きいことは、実施例1‐14で得られた遠赤外線放射基材が複雑な結晶構造及び元素原子価を有し、結晶格子の振動エネルギー準位と回転エネルギー準位との間の遷移がより発生しやすく、エネルギー準位の間で遷移に必要なエネルギーが赤外短波帯域内のエネルギーに合うため、赤外線放射塗料の遠赤外波長帯放射率を大きく向上させ、本発明の実施例1‐6で得られた遠赤外線放射基材は1000℃における8‐14μm帯の放射率が比較例1及び比較例2より大きく、すなわち本発明の遠赤外線放射基材が高い遠赤外線放射性能を有することを示しており、実施例11‐14で得られた遠赤外線放射基材は1000℃における8‐14μm帯の放射率は実施例1‐10及び比較例3より優れており、すなわち遠赤外線放射基材におけるLaAl1‐xRuナノ粒子はトルマリンとともに相乗効果を発揮することができ、LaAl1‐xIn/トルマリンナノ複合材料が高い遠赤外線放射率を有することを示している。
【0205】
試験例3:
【0206】
1.省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の赤外線放射性能
【0207】
省エネルギー型の遠赤外線放射コーティング層が1000℃における8‐14μm帯の赤外線放射性能を知るために、放射率試験を行ったところ、結果は図8のように、表から明らかなように、実施例1-14のコーティング層は赤外線放射性能が良好であり、放射率が≧0.970であり、対して比較例1‐3のコーティング層は赤外線放射性能が劣っていた。比較例1と比較例1-2を比べると、本発明の省エネルギー型遠赤外線放射塗料が高い遠赤外線放射性能を有することはわかり、比較例11と比較例3を比べると、本発明の省エネルギー型遠赤外線放射塗料が良好な遠赤外線放射性能を有することはわかり、実施例1と比較例4を比べると、接着剤中のGeO微粉末およびIn微粉末の存在が、LaAl1‐xRuナノ粒子の遠赤外線放射性能を上げることができることはわかる。
【0208】
2.省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の断熱性能
【0209】
2.1遠赤外線省エネルギー型放射コーティングの熱伝導率
【0210】
熱伝導率は、塗料の断熱性能を知るための最も重要な指標であり、一次元定常熱伝導の基本原理に基づいて、定常時に単位時間に一次元温度場における熱流が縦方向で試料の熱面を通って冷面に流れた後に中心熱量計を流れる水流によって吸収される熱量を測定する。この熱量は、試料の熱伝導率、冷熱面温度差、中心熱量計吸収面面積に比例し、試料の厚さに反比例する。本試験例は、熱伝導率測定装置を用いて省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の熱伝導率を測定した結果、図9に示すように、実施例1‐14は省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の熱伝導率が<0.13W/(m・K)であり、良好な断熱保温作用を有し、かつ接着剤中のGeO微粉末及び/又はIn微粉末が塗料のコーティング層の断熱性能に悪影響を与えない。
【0211】
2.2省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の断熱性能
【0212】
高温ガス熱衝撃シミュレータを採用して遮熱コーティングの断熱性能をテストする。試験時に試料を治具に固定し、コーティング表面をスプレーガンの口に正対させた後、プロパンを燃料として酸素と混合して試料表面を加熱し、試料のコーティング表面と基材の裏面温度を測定し、温度の経時変化曲線を記録し、コーティング表面は赤外線で測温され、基材の裏面は熱電対を用いて測温された。スプレーガンの電力をプログラムで自動制御し、一定の電力でコーティングの表面温度を1000℃に上昇させたあとにスプレーガンの電力を調整して2min保温し、そしてスプレーガンをオフにし、圧縮空気により試料を室温まで冷却した。実施例1のコーティング層の熱衝撃試験結果は、図10に示すように、コーティング層の断熱性能を定量化できるように、赤外測温開始点750℃を起点として、コーティング層の表面が最高温度に達する時間ttopと、その時の基材の裏面の温度Ttopと、コーティング層中の温度分布が準定常状態に達したときの基材の裏面の最高温度Tmaxを選択した。コーティング層の表面が最高温度に達するまでに要する時間が短ければ短いほど、基材の温度が低く、コーティング層の遮熱効果が高く、なぜなら、コーティング層の断熱性能が強いと、コーティング層の表面に熱が多量に堆積するため、表面温度が急速に上昇し、やがてコーティング層の表面が設定された温度に達し、このとき基材の表面温度が低ければ低いほど、コーティング層中の温度勾配が大きく、断熱性能も強い。図10のコーティング表面温度曲線からわかるように、設定された1000℃に到達した後、酸素‐プロパンスプレーガンはパルス作動状態にあるため、コーティング表面温度は1000℃付近で上下に変動し、変動範囲は約25℃であったが、基材の背面温度はほとんど変わらず、保温時間内に、基材の温度が最高点に達したところで、温度の揺らぎは2‐3℃のみであった。すなわち、コーティング層中の温度分布がほぼ動的平衡状態となり、測定されたデータがコーティング層の遮熱能力を反映することができる。また、図から明らかなように、実施例1のコーティングの表面温度が最高点1085℃に到達するまでの時間は34sであり、このとき基材の温度は744℃であり、コーティング層の温度がほぼ1000℃前後に安定している場合、基材の最高温度は771℃であった。また、各実施例および比較例のコーティング層の断熱性能試験結果は、表2に示すように、実施例1-14の省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の裏面の最高温度Tmaxが低く、断熱性能がよく、かつ接着剤中にGeO微粉末および/またはIn微粉末が塗料のコーティング層の断熱性能に悪影響を与えない。

【0213】
3.省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の結合強度
【0214】
コーティングの結合強度はコーティングの性質を反映するための重要な指標である。その大きさはコーティングと基材との機械的嵌合力の大きさ、粒子間の結合力及びコーティング内部の孔と応力放出状況に関連する。本試験例は、油圧式万能試験機を用いてコーティング層の結合強度試験を行い、コーティング層の結合強度は表3に示すように。表3からわかるように、実施例1‐14は、省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の結合強度が>31.8Mpaであり、コーティング層が一定の強度の結合力を有し、コーティング層の使用要求を満たすことができ、かつ、接着剤中にGeO微粉末および/またはIn微粉末が塗料のコーティング層の結合強度に悪影響を及ぼさない。
【0215】
4.省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の熱衝撃抵抗性の測定
【0216】
熱衝撃抵抗性測定方法は、コーティング後のサンプルをマッフル炉内に入れて1100℃まで加熱し、30min保温した後に冷水に10min浸漬し、水中から高放射率コーティング層のコーティングされた基材を取り出し、コーティング層に脱落現象が生じないと、コーティング層にある水を拭き取ったた後、コーティング層に脱落や亀裂等の現象が発生するまで上記過程を繰り返し、試験の回数を記録し、試験の回数から赤外線放射コーティング層の熱衝撃抵抗性の良否がわかる。冷熱サイクルの回数が多いほど、コーティング層の熱衝撃抵抗性が良い。表3は、各実施例および比較例の省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の熱衝撃抵抗性を示しており、表3からわかるように、実施例1‐14の省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の熱衝撃抵抗性は、少なくとも56回の1100℃の空気による熱衝撃を受けることができ、かつ、接着剤中のGeO微粉末および/またはIn微粉末は、塗料のコーティング層の熱衝撃抵抗性に悪影響を及ぼさない。
【0217】
5.省エネルギー型遠赤外線放射コーティング層の粗さ試験
【0218】
コーティング層の粗さはコーティング層の赤外線放射性能に直接影響を与えることができ、なぜなら、コーティング層の正常構造を維持する場合、コーティングの表面粗さが大きいほど比表面積が大きく、対してコーティング層の赤外線放射面積も大きい。表面粗さ計を用いてコーティング層の粗さの測定を行い、テストプラットフォームで複数回の結果を測定して平均値をとり、実施例1‐14のコーティング層の算術平均粗さRaの測定結果は表3に示すように、実施例1‐14のコーティング層のRaは=9.534‐9.887であり、コーティング層はある程度の粗さを有し、このような粗い表面はコーティング層の赤外線放射性能に有利することがわかる。
【0219】
試験例4:
【0220】
省エネルギー型遠赤外線放射塗料の使用効果分析
【0221】
熱処理ワークの燃料消費量の大きさは熱処理炉が省エネルギーであるかを判断する最も重要な指標であり、熱処理ワークの材質及び熱処理プロセス曲線が全く同じであることを前提にし、高温炉に実施例1の省エネルギー型遠赤外線放射塗料をコーティングした前後の、熱処理過程で消費されるガス量を比べ、具体的なテストデータは表4の通りであり、高温遠赤外線放射塗料をコーティングした後はコーティング前の一トン当たりのワークより、毎時ガス量14.0Nmを節約し、高い省エネ効果を有することが分かる。
【0222】
上記実施例における従来技術は当業者に知られている従来技術であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0223】
当業者は、本発明の範囲内で作業方式によって様々な変更を行える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10