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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
F16J15/08 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018158945
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020034035
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000228383
【氏名又は名称】日本ガスケット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】平松 剛
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-332500(JP,A)
【文献】特開2001-058364(JP,A)
【文献】特開2006-161915(JP,A)
【文献】特開2005-214361(JP,A)
【文献】特開2003-269611(JP,A)
【文献】特開2006-138434(JP,A)
【文献】特開平04-031657(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016002582(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 5/00
F02F 11/00
F16B 3/00-4/00
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室孔が形成されたガスケット基板と、上記燃焼室孔を囲むシムリングとを備え、上記シムリングをガスケット基板に溶接したガスケットにおいて、
上記溶接部分の溶接ラインは、シムリングの径方向に形成されており、さらに、上記溶接ラインは、ガスケット基板に穿設したボルト孔の近傍で疎に、ボルト孔から離れた位置で密に形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
上記溶接ラインは、シムリングの幅内で連続したジグザグ状であることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
燃焼室孔が形成されたガスケット基板と、上記燃焼室孔を囲むシムリングとを備え、上記シムリングをガスケット基板に溶接したガスケットにおいて、
上記溶接部分の溶接ラインは、シムリングの径方向に形成され、上記溶接ラインは、格子状に形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
上記溶接ラインは、ガスケット基板に穿設したボルト孔の近傍で疎に、ボルト孔から離れた位置で密に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスケットに関し、より詳しくは、シムリングをガスケット基板に溶接したガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスケットとして、燃焼室孔が形成されたガスケット基板と、上記燃焼室孔を囲むシムリングとを備え、上記シムリングをガスケット基板に溶接したものが知られている(特許文献1)。
上記シムリングは、レーザ溶接や電子ビーム溶接により溶接されており、その溶接ラインはシムリングの円周方向に無端状に形成され、かつ二重線となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平3-73643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接ラインを円周方向に二重に形成することによりシムリングを強固にガスケット基板に固着することができるが、それでも近年、エンジンの高出力化に伴ってシムリングに亀裂や変形が発生する危険性が高まってきた。
すなわち、エンジンの燃焼圧力が増減するとシリンダボアの内径が拡縮するようになり、シリンダボアの内径が拡縮するとシムリングに上記溶接ラインよりも内側と外側とで逆方向の力が作用するようになる。
従来のガスケットにおける溶接ラインは円周方向に無端状に形成されているので、上記シムリングに加わる逆方向の作用力が同一箇所の溶接部に作用する危険性があり、この場合、溶接部が局部的に剥がれたり亀裂が生じてその部分から燃焼ガスが漏れる危険性があった。
本発明はそのような事情に鑑み、より強固にシムリングをガスケット基板に固着したガスケットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、燃焼室孔が形成されたガスケット基板と、上記燃焼室孔を囲むシムリングとを備え、上記シムリングをガスケット基板に溶接したガスケットにおいて、
上記溶接部分の溶接ラインは、シムリングの径方向に形成されており、さらに、上記溶接ラインは、ガスケット基板に穿設したボルト孔の近傍で疎に、ボルト孔から離れた位置で密に形成されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、上記請求項1の発明において、上記溶接ラインは、シムリングの幅内で連続したジグザグ状であることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、燃焼室孔が形成されたガスケット基板と、上記燃焼室孔を囲むシムリングとを備え、上記シムリングをガスケット基板に溶接したガスケットにおいて、
上記溶接部分の溶接ラインは、シムリングの径方向に形成され、上記溶接ラインは、格子状に形成されていることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、上記請求項3の発明において、上記溶接ラインは、ガスケット基板に穿設したボルト孔の近傍で疎に、ボルト孔から離れた位置で密に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、溶接ラインがシムリングの径方向に形成されているので、従来に比較して溶接部に剥がれや亀裂が生じるのを効果的に防止することができる。
すなわち、従来のように溶接ラインが円周方向に形成されている場合には、溶接ラインよりも内側と外側との逆方向の作用力が同一の溶接部に作用する危険性があるが、溶接ラインをシムリングの径方向に形成した場合には、当該溶接ラインの一端部に一方向の作用力が、他端部に逆方向の作用力が作用するようになり、同一の溶接部に逆方向の作用力が同時に作用することが無くなる。その結果、溶接部が局部的に剥がれたり亀裂が生じたりするのを効果的に防止することが可能となる。
上記溶接ラインの具体的形状としては、シムリングの幅内で連続したジグザグ状に形成されていてもよく(請求項2の発明)、あるいは格子状に形成されていてもよい(請求項3の発明)。
請求項4の発明によれば、上記溶接ラインは、ガスケット基板に穿設したボルト孔の近傍で疎に、ボルト孔から離れた位置で密に形成されているので、シリンダボアの変形を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施例を示す要部の断面図。
図2図1のA方向矢視図。
図3】本発明の第2実施例を示す図2と同様な平面図。
図4】本発明の第3実施例を示す図2と同様な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1において、本実施例のガスケット1は3枚のガスケット基板2、3、4を積層して構成されており、中央のガスケット基板2は比較的厚い金属板から製造され、該中央のガスケット基板2の上下に積層されたガスケット基板3、4は比較的薄い金属板から製造されている。そして各ガスケット基板2~4のそれぞれには、図示しないシリンダボアの位置に合わせて単数又は複数の燃焼室孔5を穿設してある。
【0009】
中央のガスケット基板2には、燃焼室孔5を囲むリング状の段差部2aを形成してあり、この段差部2aにリング状の金属製シムリング6を載置して、後述するように該シムリング6をレーザ溶接や電子ビーム溶接によってガスケット基板3に溶接固定してある。
上記段差部2aの高低差は、シムリング6の厚さの約半分に設定してある。また上下2枚のガスケット基板3、4には、上記シムリング6および段差部2aの外側位置にこれらを囲むハーフビード3a、4aを形成してある。
【0010】
上述したように上記シムリング6はレーザ溶接や電子ビーム溶接によってガスケット基板3に溶接固定してあるが、その溶接ライン6aは、図2に示すように、シムリング6の円周方向に連続させてジグザグ状となるように形成してある。より具体的には、上記溶接ライン6aは、シムリング6の径方向(幅方向)の内側で、径方向にジグザグ状に、溶接ライン6aが途切れることが無いように連続させて無端状に形成してある。
【0011】
以上の構成によれば、上記溶接ライン6aはシムリング6の径方向にジグザグ状に形成されているので、従来に比較して溶接ライン6aの溶接部に剥がれや亀裂が生じるのを効果的に防止することができる。
すなわち前述したように、シリンダボア内における燃焼圧力が増減してシリンダボアの内径が拡縮すると、溶接ライン6aを挟んで、シムリング6にその内周側と外周側とで逆方向の作用力Fが作用するようになる。この逆方向の作用力Fは溶接ライン6aの溶接部分に作用することになるが、本実施例では溶接ライン6aはシムリング6の径方向にジグザグ状に形成されているので、内周側の作用力Fは溶接ライン6aのうち、シムリング6の内周側となる内周側の溶接部で受け止められるようになり、他方、外周側の作用力Fはシムリング6の外周側となる外周側の溶接部で受け止められるようになる。
その結果、従来のように溶接ラインが円周方向に形成されている場合のように、上記逆方向の作用力Fが同一箇所の溶接部に作用する危険性がないので、上記溶接ライン6aの溶接部が局部的に剥がれたり亀裂が生じたりするのを防止することができる。
【0012】
図3は本発明の第2実施例を示すもので、上記第1実施例においては溶接ライン6aのジグザグが円周方向で等ピッチとなるように形成してあるが、第2実施例では溶接ライン6bのジグザグが円周方向で異なるピッチとなるように形成してある。
すなわち上記各ガスケット基板2~4には図示しないシリンダブロックとシリンダヘッドを締結する締結ボルトを挿通させるためのボルト孔7を穿設してあり、該ボルト孔7は燃焼室孔5の周囲4箇所に形成してある。そして上記溶接ライン6bのジグザグは、ボルト孔7の近傍で疎に(ジグザグの円周方向のピッチが大きく)、ボルト孔7から離れた位置で密に(ジグザグの円周方向のピッチが小さく)なるように形成してある。
【0013】
上記第2実施例によれば、第1実施例に比較してシリンダボアの変形を低減することができる。
すなわちシリンダボアの内径の拡縮量は、ボルト孔7の近傍で相対的に小さく、ボルト孔7から離れた位置で相対的に大きくなるが、本実施例では上記溶接ライン6bのジグザグはボルト孔7の近傍で疎に、つまり上記作用力Fが相対的に小さくなる位置で疎に、ボルト孔7から離れた位置で、つまり上記作用力Fが相対的に大きくなる位置で密に形成してあるので、それによってシリンダボアの変形を低減することができ、さらにシムリング6の円周方向全域で効果的に溶接部の破損を防止することができる。
そして本実施例のように溶接ライン6bを疎密に形成することにより、溶接ライン6b全体を密に形成する場合に比較して、溶接時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0014】
図4は本発明の第3実施例を示すもので、本実施例では溶接ライン6cを格子状に形成したものである。
このような構成においても、上記逆方向の作用力Fを、溶接ライン6cの内周側と外周側とで異なる位置で受け止めることができるので、溶接ライン6cの溶接部が局部的に剥がれたり亀裂が生じたりするのを防止することが可能となる。
【0015】
なお、図示しないが、上記第3実施例においても、溶接ライン6cをボルト孔7の近傍で疎に、ボルト孔7から離れた位置で密に形成することが可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 ガスケット 2~4 ガスケット基板
5 燃焼室孔 6 シムリング
6a~6c 溶接ライン 7 ボルト孔
図1
図2
図3
図4