(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】車両運転支援システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/12 20200101AFI20220728BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20220728BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
B60W30/12
G01C21/34
B60W30/10
(21)【出願番号】P 2019005720
(22)【出願日】2019-01-17
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英輝
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138407(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159539(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G05D 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両運転支援システムであって、
車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、
前記走行路情報に基づいて、前記走行路において前記車両のための目標走行経路を設定し、前記目標走行経路に沿って前記車両が走行するように、前記車両を運転制御するように構成された制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記走行路情報に基づいて、前記目標走行経路を設定するための候補となる複数の走行経路候補を設定し、
前記複数の走行経路候補のそれぞれの経路上に複数のサンプリング点を設定し、
前記複数の走行経路候補のそれぞれに設定された前記複数のサンプリング点の各々について経路コストを求め、
前記経路コストに基づき、前記複数の走行経路候補の中の1つの走行経路を前記目標走行経路として選択するように構成され、
更に、前記制御装置は、
前記走行路において前記車両が走行する自車レーンのセンターラインと前記サンプリング点との距離が大きくなるほど、当該サンプリング点の前記経路コストを高くし、
前記車両と前記サンプリング点との前記走行路に沿った距離が小さくなるほど、前記センターラインと前記サンプリング点との距離に対する前記経路コストの変化率を大きくするように構成される、
ことを特徴とする車両運転支援システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記サンプリング点が前記自車レーン内にある場合には、前記サンプリング点が前記自車レーン外にある場合よりも、前記センターラインと前記サンプリング点との距離に対する前記経路コストの変化率を大きくするように構成されている、請求項1に記載の車両運転支援システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記サンプリング点が前記自車レーン内にある場合には、前記車両と前記サンプリング点との前記走行路に沿った距離が小さくなるほど、前記センターラインと前記サンプリング点との距離に対する前記経路コストの変化率を大きくし、
前記サンプリング点が前記自車レーン外にある場合には、前記車両と前記サンプリング点との前記走行路に沿った距離によらずに、前記センターラインと前記サンプリング点との距離に対する前記経路コストの変化率を同じにするように構成されている、
請求項1又は2に記載の車両運転支援システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記車両と前記サンプリング点との前記走行路に沿った距離に応じて、前記センターラインと前記サンプリング点との距離に対する前記経路コストの変化率を段階的に変化させるように構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両運転支援システム。
【請求項5】
コンピュータを備える制御装置により実行される車両運転支援方法であって、
車両の走行路に関する走行路情報に基づいて、前記走行路において前記車両のための目標走行経路を設定するための候補となる複数の走行経路候補を設定するステップと、
前記複数の走行経路候補のそれぞれの経路上に複数のサンプリング点を設定するステップと、
前記複数の走行経路候補のそれぞれに設定された前記複数のサンプリング点の各々について経路コストを求めるステップと、
前記経路コストに基づき、前記複数の走行経路候補の中の1つの走行経路を前記目標走行経路として選択するステップと、
前記目標走行経路に沿って前記車両が走行するように、前記車両を運転制御するステップと、
を有し、
更に、前記方法は、前記経路コストを求めるステップにおいて、
前記走行路において前記車両が走行する自車レーンのセンターラインと前記サンプリング点との距離が大きくなるほど、当該サンプリング点の前記経路コストを高くし、
前記車両と前記サンプリング点との前記走行路に沿った距離が小さくなるほど、前記センターラインと前記サンプリング点との距離に対する前記経路コストの変化率を大きくする、
ことを特徴とする車両運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための走行経路を設定し、この走行経路に基づき運転支援を行う車両運転支援システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の走行経路生成アルゴリズムとして、ポテンシャル法や、スプライン補間関数や、Aスター(A*)法や、ダイクストラ法や、RRTや、ステートラティス法などが用いられている。
【0003】
Aスター法やダイクストラ法では、縦横に区切られた各グリッドがノードとして設定されて、コスト(経路コスト)が最小となるようにノードを展開することで、経路探索が行われる。例えば、特許文献1には、グリッドで表された領域に含まれる始点から終点までの経路においてコストが最小の経路を選択する経路探索システムに関して、最小コストのノードを展開し、具体的には移動方向に応じて最小コストのノードからの展開方向の数を設定し、展開された最小コストのノードに対する移動方向を判定することが開示されている。
【0004】
また、ステートラティス法では、走行路に多数のグリッド点からなるグリッド領域が設定され、このグリッド点を順次に連結することにより多数の走行経路候補が設定され、そして、これら走行経路候補から1つの走行経路が選択される。例えば、特許文献2には、グリッドマップ上の複数の走行経路を設定すると共に、グリッドマップの各セルについて自車両が走行した場合の危険度を示す移動コストを設定し、この移動コストに基づいて1つの走行経路を選択する車両運転支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-128758号公報
【文献】国際公開第2013/051081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、走行経路の設定において、車両が自車レーン(走行路において自車両が走行するレーン)のセンター位置を走行するような経路を適切に設定できるとよい。これを実現するには、走行路において車両が走行する位置に応じた経路コストを規定すればよいと考えられる。しかしながら、従来の技術においては、車両が自車レーンのセンター位置を走行するように経路コストを適切に規定できるものはなかった。なお、以下では、自車レーンのセンター位置を車両に走行させることを適宜「レーンセンタリング」と呼ぶ。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車両が自車レーンのセンター位置を通過する走行経路が設定されるように経路コストを適切に規定することが可能な車両運転支援システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両運転支援システムであって、車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、走行路情報に基づいて、走行路において車両のための目標走行経路を設定し、目標走行経路に沿って車両が走行するように、車両を運転制御するように構成された制御装置と、を有し、制御装置は、走行路情報に基づいて、目標走行経路を設定するための候補となる複数の走行経路候補を設定し、複数の走行経路候補のそれぞれの経路上に複数のサンプリング点を設定し、複数の走行経路候補のそれぞれに設定された複数のサンプリング点の各々について経路コストを求め、経路コストに基づき、複数の走行経路候補の中の1つの走行経路を目標走行経路として選択するように構成され、更に、制御装置は、走行路において車両が走行する自車レーンのセンターラインとサンプリング点との距離が大きくなるほど、当該サンプリング点の経路コストを高くし、車両とサンプリング点との走行路に沿った距離が小さくなるほど、センターラインとサンプリング点との距離に対する経路コストの変化率を大きくするように構成される、ことを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明では、制御装置は、設定した走行経路候補上のサンプリング点と走行路における自車レーンのセンターラインとの距離が大きくなるほど、当該サンプリング点の経路コストを高くする。特に、制御装置は、車両とサンプリング点との距離が小さくなるほど、センターラインとサンプリング点との距離に対する経路コストの変化率(換言すると変化量、変化の傾き)を大きくする。
これにより、車両の比較的近方にある領域(近距離領域)においては、センターラインからの距離に対する経路コストの変化率が大きいので、走行経路を設定するに当たってレーンセンタリングが優先的に考慮されることとなる、つまりレーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響が大きくなる。したがって、近距離領域では、レーンセンタリングが優先されるような走行経路を適切に選択でき、レーンセンタリングの精度を向上させることができる。
一方、車両の比較的遠方にある領域(遠距離領域)においては、センターラインからの距離に対する経路コストの変化率が小さいので、走行経路を設定するに当たってレーンセンタリングが優先的に考慮されにくくなる、つまりレーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響が小さくなる。遠距離領域では、走行路情報取得装置(典型的にはカメラ)の精度が確保されにくくなるので、走行路の形状などの推定精度が低下する。したがって、そのような遠距離領域において、センターラインからの距離に対する経路コストの変化率を小さくすることで、形状などの推定精度が確保されていない走行路に対して、レーンセンタリングが優先的に行われることを適切に抑制できる。
以上より、本発明によれば、車両が自車レーンのセンター位置を通過する走行経路が設定されるように経路コストを適切に規定することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、制御装置は、サンプリング点が自車レーン内にある場合には、サンプリング点が自車レーン外にある場合よりも、センターラインとサンプリング点との距離に対する経路コストの変化率を大きくするように構成されている。
このように構成された本発明によれば、サンプリング点が自車レーン内にある場合には、レーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響を適切に確保することができ、サンプリング点が自車レーン外にある場合には、レーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響を適切に抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、制御装置は、サンプリング点が自車レーン内にある場合には、車両とサンプリング点との走行路に沿った距離が小さくなるほど、センターラインとサンプリング点との距離に対する経路コストの変化率を大きくし、サンプリング点が自車レーン外にある場合には、車両とサンプリング点との走行路に沿った距離によらずに、センターラインとサンプリング点との距離に対する経路コストの変化率を同じにするように構成されている。
このように構成された本発明によっても、サンプリング点が自車レーン外にある場合に、レーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響を適切に抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、制御装置は、車両とサンプリング点との走行路に沿った距離に応じて、センターラインとサンプリング点との距離に対する経路コストの変化率を段階的に変化させるように構成されている。
このように構成された本発明によれば、制御装置は、車両とサンプリング点との距離に応じて経路コストの変化率を段階的に変化させるので、経路コストの変化率を幾つか記憶しておけばよい。よって、車両とサンプリング点との距離に応じて適用すべき経路コストの変化率を計算により求める必要がないので、計算負荷を軽減することができる。
【0013】
他の観点では、上記の目的を達成するために、本発明は、コンピュータを備える制御装置により実行される車両運転支援方法であって、車両の走行路に関する走行路情報に基づいて、走行路において車両のための目標走行経路を設定するための候補となる複数の走行経路候補を設定するステップと、複数の走行経路候補のそれぞれの経路上に複数のサンプリング点を設定するステップと、複数の走行経路候補のそれぞれに設定された複数のサンプリング点の各々について経路コストを求めるステップと、経路コストに基づき、複数の走行経路候補の中の1つの走行経路を目標走行経路として選択するステップと、目標走行経路に沿って車両が走行するように、車両を運転制御するステップと、を有し、更に、方法は、経路コストを求めるステップにおいて、走行路において車両が走行する自車レーンのセンターラインとサンプリング点との距離が大きくなるほど、当該サンプリング点の経路コストを高くし、車両とサンプリング点との走行路に沿った距離が小さくなるほど、センターラインとサンプリング点との距離に対する経路コストの変化率を大きくする、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によっても、車両が自車レーンのセンター位置を通過する走行経路が設定されるように経路コストを適切に規定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両運転支援システム及び方法によれば、車両が自車レーンのセンター位置を通過する走行経路が設定されるように経路コストを適切に規定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による車両運転支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態による運転支援の基本概念についての説明図である。
【
図3】本発明の実施形態による経路コストを規定する上での前提についての説明図である。
【
図4】本発明の実施形態による経路コストを規定するマップである。
【
図5】本発明の実施形態による運転支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両運転支援システム及び方法について説明する。
【0017】
[システム構成]
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態による車両運転支援システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両運転支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【0018】
車両運転支援システム100は、車両1のための目標走行経路を設定して、車両1をこの目標走行経路に沿って走行させるように運転支援制御(自動運転制御)を行うように構成されている。
図1に示すように、車両運転支援システム100は、車両制御装置又はコントローラとしてのECU(Electronic Control Unit)10と、複数のセンサ類と、複数の制御システムと、を有する。
【0019】
具体的には、複数のセンサ類には、カメラ21、レーダ22や、車両1の挙動や乗員による運転操作を検出するための車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25、操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28が含まれている。さらに、複数のセンサ類には、車両1の位置を検出するための測位システム29、ナビゲーションシステム30が含まれている。複数の制御システムには、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32、ステアリング制御システム33が含まれている。
【0020】
また、他のセンサ類として、車両1に対する周辺構造物の距離及び位置を測定する周辺ソナー、車両1の4箇所の角部における周辺構造物の接近を測定するコーナーレーダや、車両1の車室内を撮影するインナーカメラが含まれていてもよい。
【0021】
ECU10は、複数のセンサ類から受け取った信号に基づいて種々の演算を実行し、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32、ステアリング制御システム33に対して、それぞれエンジンシステム、ブレーキシステム、ステアリングシステムを適宜に作動させるための制御信号を送信する。ECU10は、1つ以上のプロセッサ(典型的にはCPU)と、各種プログラムを記憶するメモリ(ROM、RAMなど)と、入出力装置などを備えたコンピュータにより構成される。なお、ECU10は、本発明における「制御装置」の一例に相当する。
【0022】
カメラ21は、車両1の周囲を撮影し、画像データを出力する。ECU10は、カメラ21から受信した画像データに基づいて、対象物(例えば、先行車両、駐車車両、歩行者、走行路、区画線(車線境界線、白線、黄線)、交通信号、交通標識、停止線、交差点、障害物等)を特定する。なお、ECU10は、交通インフラや車々間通信等により、外部から対象物の情報を取得してもよい。これにより、対象物の種類、相対位置、移動方向等が特定される。
【0023】
レーダ22は、対象物(特に、先行車両、駐車車両、歩行者、走行路5上の落下物等)の位置及び速度を測定する。レーダ22として、例えばミリ波レーダを用いることができる。レーダ22は、車両1の進行方向に電波を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両1と対象物との間の距離(例えば、車間距離)や、車両1に対する対象物の相対速度を測定する。なお、本実施形態において、レーダ22に代えて、レーザレーダや超音波センサ等を用いて対象物との距離や相対速度を測定してもよい。また、複数のセンサ類を用いて、位置及び速度測定装置を構成してもよい。
【0024】
なお、カメラ21及びレーダ22は、本発明における「走行路情報取得装置」の一例に相当する。
【0025】
車速センサ23は、車両1の絶対速度を検出する。加速度センサ24は、車両1の加速度を検出する。この加速度は、前後方向の加速度と、横方向の加速度(つまり横加速度)とを含む。なお、本明細書においては、加速度には、速度が増加する方向の速度の変化率だけでなく、速度が減少する方向の速度の変化率(つまり減速度)も含むものとする。
【0026】
ヨーレートセンサ25は、車両1のヨーレートを検出する。操舵角センサ26は、車両1のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出する。ECU10は、車速センサ23が検出した絶対速度、及び、操舵角センサ26が検出した操舵角に基づいて所定の演算を実行することにより、車両1のヨー角(つまり、後述するx軸に対して車両1の前後方向が成す角度)を取得することができる。アクセルセンサ27は、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。ブレーキセンサ28は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する。
【0027】
測位システム29は、GPSシステム及び/又はジャイロシステムであり、車両1の位置(現在車両位置情報)を検出する。ナビゲーションシステム30は、内部に地図情報を格納しており、ECU10に地図情報を提供することができる。ECU10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、車両1の周囲(特に、進行方向)に存在する道路、交差点、交通信号、建造物等を特定する。地図情報は、ECU10内に格納されていてもよい。なお、ナビゲーションシステム30も、本発明における「走行路情報取得装置」の一例に相当する。
【0028】
エンジン制御システム31は、車両1のエンジンを制御する。エンジン制御システム31は、エンジン出力(駆動力)を調整可能な構成部であり、例えば、点火プラグや、燃料噴射弁や、スロットルバルブや、吸排気弁の開閉時期を変化させる可変動弁機構などを含む。ECU10は、車両1を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン制御システム31に対して、エンジン出力を変更するために制御信号を送信する。
【0029】
ブレーキ制御システム32は、車両1のブレーキ装置を制御する。ブレーキ制御システム32は、ブレーキ装置の制動力を調整可能な構成部であり、例えば液圧ポンプやバルブユニットなどを含む。ECU10は、車両1を減速させる必要がある場合に、ブレーキ制御システム32に対して、制動力を発生させるために制御信号を送信する。
【0030】
ステアリング制御システム33は、車両1のステアリング装置を制御する。ステアリング制御システム33は、車両1の操舵角を調整可能な構成部であり、例えば電動パワーステアリングシステムの電動モータなどを含む。ECU10は、車両1の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング制御システム33に対して、操舵方向を変更するために制御信号を送信する。
【0031】
[運転支援の基本概念]
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態において上述したECU10によって実行される運転支援の基本概念について説明する。
図2は、車両1が走行路5上を走行している様子を示している。
【0032】
まず、ECU10は、走行路情報に基づいて、走行路5上の位置を特定するための演算を行う。走行路情報は、車両1が走行している走行路5に関する情報であり、カメラ21、レーダ22、ナビゲーションシステム30等により取得される。走行路情報は、例えば、走行路の形状(直線、カーブ、カーブ曲率)、走行路幅、車線数、車線幅等に関する情報を含んでいる。
【0033】
次いで、ECU10は、走行路情報に基づく演算により、車両1の進行方向前方に存在する走行路5上に、仮想の複数のグリッド点Gn(n=1,2,・・・N)を設定する。走行路5が延びる方向をx方向と定義し、走行路5の幅方向をy方向と定義した場合に、グリッド点Gnは、x方向及びy方向に沿って格子状に配列されている。なお、xy座標の原点は、車両1の位置に対応する点に設定される。
【0034】
ECU10がグリッド点Gnを設定する範囲は、走行路5に沿って、距離Lだけ車両1の前方に亘っている。距離Lは、演算実行時の車両1の速度に基づいて計算される。本実施形態では、距離Lは、演算実行時の速度(V)で所定の固定時間t(例えば3秒)に走行すると予想される距離である(L=V×t)。しかしながら、距離Lは、所定の固定距離(例えば100m)であってもよいし、速度(及び加速度)の関数であってもよい。また、グリッド点Gnが設定される範囲の幅Wは、走行路5の幅と略等しい値に設定される。このような複数のグリッド点Gnの設定により、走行路5上の位置を特定することが可能になる。
【0035】
なお、
図2に示される走行路5は直線区間であるため、グリッド点G
nは矩形状に配置されている。しかしながら、グリッド点G
nは走行路が延びる方向に沿って配置されるため、走行路がカーブ区間を含んでいる場合は、グリッド点G
nはカーブ区間の湾曲に沿って配置される。
【0036】
次いで、ECU10は、走行路情報に基づいて、走行経路候補RC(つまり、実際に車両1を走行させる目標走行経路となり得る候補)を設定するための演算を実行する。具体的には、ECU10は、ステートラティス法を用いた経路探索により、複数の走行経路候補RCを設定する。ステートラティス法によれば、車両1の位置から、車両1の進行方向に存在するグリッド点G
nに向かって枝分かれするように、複数の走行経路候補RCが設定される。
図2は、ECU10が設定する複数の走行経路候補RCの一部である走行経路候補RC
a,RC
b,RC
cを示している。
【0037】
なお、ECU10は、走行路情報に加えて、障害物情報に基づいて、走行経路候補RCを設定してもよい。この障害物情報は、車両1の進行方向の走行路5上の障害物(例えば、先行車両、駐車車両、歩行者、落下物等)の有無や、その移動方向、移動速度等に関する情報であり、カメラ21及びレーダ22により取得される。
【0038】
次いで、ECU10は、
図2に示されるように、各走行経路候補RCに沿って複数のサンプリング点SPを設定して、各サンプリング点SPにおける経路コストを計算する。このサンプリング点SPは、経路コストが計算される、各走行経路候補RCの経路上の離散点(位置)である。具体的には、ECU10は、複数の走行経路候補RCのそれぞれについて、複数のサンプリング点SPの各々の経路コストを計算する。
【0039】
次いで、ECU10は、このように計算された複数の走行経路候補RCのそれぞれの経路コストに基づき、複数の走行経路候補RCの中から経路コストが最小である1つの経路を選択し、この経路を目標走行経路として設定する。そして、ECU10は、設定した目標走行経路に沿って車両1が走行するように、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32及びステアリング制御システム33のうちの少なくとも1以上に対して制御信号を送信する。
【0040】
[経路コストの計算]
次に、本発明の実施形態による経路コストについて説明する。基本的には、経路コストには、速度や、前後加速度や、横加速度や、経路変化率や、障害物などの複数の要因に応じて規定されるコストが含まれる。本実施形態は、そのような複数の経路コストの一つとして、走行路5中の自車レーン(走行路5において自車両1が走行するレーン)のセンター位置を車両1に走行させるべく、走行路5における位置(具体的には走行経路候補RC上のサンプリング点SPの位置)に応じて経路コストを規定することに特徴を有する。以下では、この経路コストについて具体的に説明する。
【0041】
図3及び
図4を参照して、本発明の実施形態による経路コストについて具体的に説明する。まず、
図3は、本発明の実施形態による経路コストを規定する上での前提についての説明図である。
図3は、
図2と同様に、車両1が走行路5上を走行している様子を示している。
【0042】
図3において、符号「5a」は、走行路5において車両(自車両)1が走行する自車レーンを示し、符号「C1」は、自車レーン5aのセンター位置に対応するセンターラインを示し、符号「W1」は、自車レーン5aの幅を示している。このような自車レーン5aの幅W1を用いると、センターラインC1から自車レーン5aの幅方向端部までの距離は「W1/2」となる。なお、走行路5が一車線(片側一車線)の場合には、走行路5と自車レーン5aとが一致し、また、上述した幅Wと幅W1とが一致することとなる。
【0043】
また、
図3において、符号「L1」は、車両1の比較的近方にある領域(近距離領域)を規定する、走行路5に沿った車両1からの距離を示し、符号「L3」は、車両1の比較的遠方にある領域(遠距離領域)を規定する、走行路5に沿った車両1からの距離を示し、符号「L2」は、このような近距離領域と遠距離領域との間にある領域(中距離領域)を規定する、走行路5に沿った車両1からの距離を示している。車両1からの距離がL1未満の領域が近距離領域となり、車両1からの距離がL1以上でL2未満の領域が中距離領域となり、車両1からの距離がL2以上でL3未満の領域が遠距離領域となる(車両1からの距離がL3以上の領域も遠距離領域に含めてよい)。
【0044】
具体的には、このような近距離領域、中距離領域及び遠距離領域は、走行路情報取得装置の精度(典型的にはカメラ21の精度)に応じて規定される。すなわち、近距離領域は走行路情報取得装置の精度が十分に確保される領域であり、中距離領域は走行路情報取得装置の精度が低下し始める領域であり、遠距離領域は走行路情報取得装置の精度が確保されにくくなる領域である。例えば、距離L1、L2、L3は、カメラ21の精度に基づき(1つの例では、車両1から50m先ではカメラ21の精度が10%程度低下する)、それぞれ10m、30m、50mに設定される。
【0045】
次に、
図4は、本発明の実施形態による経路コストを規定するマップである。
図4は、横軸に、センターラインC1からの距離、具体的には走行経路候補RC上のサンプリング点SPとセンターラインC1との距離を示し、縦軸に、このセンターラインC1からの距離に応じた経路コスト(各サンプリング点SPに対して設定すべき経路コスト)を示している。また、実線で示すグラフG1は、近距離領域において適用されるマップを示し、破線で示すグラフG2は、中距離領域において適用されるマップを示し、一点鎖線で示すグラフG3は、遠距離領域において適用されるマップを示している。ECU10は、
図4に示すようなマップを参照して、経路コストを求めるべきサンプリング点SPについて、当該サンプリング点SPとセンターラインC1との距離に応じた経路コストを決定する。
【0046】
本実施形態では、基本的には、グラフG1~G3に示すように、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離が小さくなるほど、当該サンプリング点SPの経路コストを低くし、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離が大きくなるほど、当該サンプリング点SPの経路コストを高くする。こうすることで、車両1が自車レーン5aのセンター位置を走行するような走行経路、つまりレーンセンタリングを実現するような走行経路を適切に設定できるようにしている。
【0047】
具体的には、本実施形態では、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離が、センターラインC1から自車レーン5aの幅方向端部までの距離「W1/2」未満である場合には、近距離領域と中距離領域と遠距離領域とで、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離に対する経路コストの変化率(変化量、傾きの大きさ)を変える。すなわち、サンプリング点SPが自車レーン5a内にある場合には、近距離領域では中距離領域及び遠距離領域よりも経路コストの変化率を大きくし(グラフG1の傾きをグラフG2、G3の傾きよりも大きくする)、遠距離領域では近距離領域及び中距離領域よりも経路コストの変化率を小さくする(グラフG3の傾きをグラフG1、G2の傾きよりも小さくする)。言い換えると、サンプリング点SPが車両1に近付くほど、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率を大きくし、サンプリング点SPが車両1から離れるほど、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率を小さくする。
【0048】
こうすることで、近距離領域においては、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率が大きいので、走行経路を設定するに当たってレーンセンタリングが優先的に考慮されることとなる、つまりレーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響が大きくなる。その結果、近距離領域では、レーンセンタリングが優先されるような走行経路を適切に選択でき、レーンセンタリングの精度が向上する。
【0049】
一方、遠距離領域においては、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率が小さいので、走行経路を設定するに当たってレーンセンタリングが優先的に考慮されにくくなる、つまりレーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響が小さくなる。遠距離領域では、上述したようにカメラ21などの精度が確保されにくくなるので、走行路5の形状などの推定精度が低下する。したがって、そのような遠距離領域において、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率を小さくすることで、形状などの推定精度が確保されていない走行路5に対して、レーンセンタリングが優先的に行われることを抑制する。
【0050】
また、本実施形態では、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離が「W1/2」未満である場合には、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離が「W1/2」以上である場合よりも、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離に対する経路コストの変化率を大きくする。すなわち、サンプリング点SPが自車レーン5a内にある場合には、サンプリング点SPが自車レーン5a外にある場合よりも、経路コストの変化率を大きくする。こうすることで、サンプリング点SPが自車レーン5a内にある場合には、レーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響を大きくし、サンプリング点SPが自車レーン5a外にある場合には、レーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響を小さくする。
【0051】
加えて、本実施形態では、サンプリング点SPが自車レーン5a外にある場合には、サンプリング点SPが自車レーン5a内にある場合と異なり、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率を近距離領域と中距離領域と遠距離領域とで同じにする(グラフG1、G2、G3の傾きを同じにする)。これによっても、サンプリング点SPが自車レーン5a外にある場合に、レーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響を小さくする。
【0052】
[運転支援処理]
次に、
図5は、本発明の実施形態による運転支援処理のフローチャートである。この処理は、ECU10によって所定の周期(例えば、0.05~0.2秒毎)で繰り返し実行される。
【0053】
まず、ステップS1において、ECU10は、カメラ21、レーダ22、及びナビゲーションシステム30から走行路情報を取得する。
【0054】
次いで、ステップS2において、ECU10は、走行路情報に基づいて、走行路5の形状(例えば、走行路5が延びる方向、走行路5の幅等)を特定するとともに、走行路5上に複数のグリッド点Gn(n=1,2,・・・N)を設定する。例えば、ECU10は、x方向に10m毎に、またy方向に0.875m毎に、グリッド点Gnを設定する。
【0055】
次いで、ステップS3において、ECU10は、走行路情報に基づいて、ステートラティス法を用いた経路探索により、複数の走行経路候補RCを設定する。具体的には、ECU10は、車両1の位置から進行方向に存在するグリッド点Gnに向かって枝分かれするように、複数の走行経路候補RCを設定する。なお、ECU10は、走行路情報に加えて、障害物情報に基づいて、走行経路候補RCを設定してもよい。
【0056】
次いで、ステップS4において、ECU10は、各走行経路候補RCに沿って複数のサンプリング点SPを設定する。例えば、ECU10は、各走行経路候補RCのそれぞれの経路上に、x方向に等間隔(1つの例では0.2m毎)にサンプリング点SPを設定する。
【0057】
次いで、ステップS5において、ECU10は、複数の走行経路候補RCのそれぞれの経路コストを計算する。具体的には、ECU10は、複数の走行経路候補RCのそれぞれについて、複数のサンプリング点SPの各々の経路コストを計算する。そして、ECU10は、一つの走行経路候補RCにおける複数のサンプリング点SPについて計算された複数の経路コストから、当該走行経路候補RCに適用する経路コストを計算する。例えば、ECU10は、複数のサンプリング点SPにおける複数の経路コストの平均値を、一つの走行経路候補RCの経路コストとする。このようにして、ECU10は、複数の走行経路候補RCの全てについて経路コストを計算する。
【0058】
より具体的には、ECU10は、各サンプリング点SPの経路コストを求めるに当たって、上述したセンターラインC1からの距離に応じて規定される経路コストに加えて、速度に応じて規定される経路コストや、前後加速度に応じて規定される経路コストや、横加速度に応じて規定される経路コストや、経路変化率に応じて規定される経路コストや、障害物に応じて規定される経路コストなどの、複数の経路コストを求める。そして、ECU10は、こうして得られた複数の経路コストを例えば重み付け加算することで、各サンプリング点SPについて最終的に適用する経路コストを求める。
【0059】
特に、本実施形態においては、ECU10は、センターラインC1からの距離に応じて規定される経路コストを求める場合には、
図4に示したマップを参照して経路コストを求める。詳しくは、ECU10は、経路コストを求める対象となっているサンプリング点SPについて、当該サンプリング点SPが属する領域(近距離領域、中距離領域及び遠距離領域のいずれか)に基づき、センターラインC1と当該サンプリング点SPとの距離に応じた経路コストを求める。つまり、ECU10は、サンプリング点SPが属する領域に応じたグラフ(
図4のグラフG1、G2、G3のいずれか)を用いて、センターラインC1からの距離に応じた経路コストを求める。
この場合、ECU10は、サンプリング点SPのx座標に基づき、サンプリング点SPが属する領域を判断する。具体的には、ECU10は、x座標が距離L1未満である場合にはサンプリング点SPが属する領域を近距離領域と判断し、x座標がL1以上でL2未満である場合にはサンプリング点SPが属する領域を中距離領域と判断し、x座標がL2以上でL3未満である場合にはサンプリング点SPが属する領域を遠距離領域と判断する。また、ECU10は、サンプリング点SPのy座標に基づき、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離を求める。具体的には、走行路5の幅方向における車両1の位置、つまりy軸の位置によって、y座標が規定されるので、ECU10は、このy軸とセンターラインC1との距離をサンプリング点SPのy座標に対して加算又は減算することで、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離を求める。なお、ECU10は、走行路情報に含まれるカメラ21の画像データに基づき、自車レーン5aのセンターラインC1の位置を求める。具体的には、ECU10は、画像データに含まれる区画線(車線境界線、白線、黄線)などに基づき自車レーン5aを特定し、この特定した自車レーン5aにおける幅方向のセンター位置からセンターラインC1の位置を求める。
【0060】
次いで、ステップS6において、ECU10は、目標走行経路を設定する。具体的には、ECU10は、上記のように計算された複数の走行経路候補RCのそれぞれの経路コストに基づき、複数の走行経路候補RCの中から経路コストが最小である1つの経路を選択し、この経路を目標走行経路として設定する。
【0061】
次いで、ステップS7において、ECU10は、目標走行経路に沿って車両1が走行するように、車両1の速度制御及び/又は操舵制御を含む運転制御(車両挙動制御)を実行する。具体的には、ECU10は、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32及びステアリング制御システム33のうちの少なくとも1以上に制御信号を送信して、エンジン制御、制動制御及び操舵制御の少なくとも1以上を実行する。
【0062】
[作用及び効果]
次に、本発明の実施形態による作用及び効果について説明する。
【0063】
本実施形態では、カメラ21などから取得された走行路情報に基づき複数の走行経路候補RCを設定し、この複数の走行経路候補RC上に複数のサンプリング点SPを設定し、この複数のサンプリング点SPについて経路コストを求め、この経路コストに基づき複数の走行経路候補RCから目標走行経路を設定する車両運転支援システム100において、ECU10は、自車レーン5aのセンターラインC1とサンプリング点SPとの距離が大きくなるほど、当該サンプリング点SPの経路コストを高くする。特に、ECU10は、車両1とサンプリング点SPとの距離が小さくなるほど、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離に対する経路コストの変化率を大きくする。
【0064】
これにより、車両1からの近距離領域においては、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率が大きいので、走行経路を設定するに当たってレーンセンタリングが優先的に考慮されることとなる、つまりレーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響が大きくなる。したがって、近距離領域では、レーンセンタリングが優先されるような走行経路を適切に選択でき、レーンセンタリングの精度を向上させることができる。
【0065】
一方、車両1からの遠距離領域においては、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率が小さいので、走行経路を設定するに当たってレーンセンタリングが優先的に考慮されにくくなる、つまりレーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響が小さくなる。遠距離領域では、カメラ21などの精度が確保されにくくなるので、走行路5の形状などの推定精度が低下する。したがって、そのような遠距離領域において、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率を小さくすることで、形状などの推定精度が確保されていない走行路5に対して、レーンセンタリングが優先的に行われることを適切に抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、ECU10は、サンプリング点SPが自車レーン5a内にある場合には、サンプリング点SPが自車レーン5a外にある場合よりも、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離に対する経路コストの変化率を大きくする。これにより、サンプリング点SPが自車レーン5a内にある場合には、レーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響を適切に大きくすることができ、サンプリング点SPが自車レーン5a外にある場合には、レーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響を適切に小さくすることができる。
【0067】
また、本実施形態では、ECU10は、サンプリング点SPが自車レーン5a外にある場合には、サンプリング点SPが自車レーン5a内にある場合と異なり、車両1とサンプリング点SPとの距離によらずに、センターラインC1からの距離に対する経路コストの変化率を同じにする。これによっても、サンプリング点SPが自車レーン5a外にある場合に、レーンセンタリングに関する経路コストが経路選択に与える影響を適切に小さくすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、ECU10は、車両1とサンプリング点SPとの距離に応じて、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離に対する経路コストの変化率を段階的に変化させる。これにより、車両1とサンプリング点SPとの距離に応じた経路コストの変化率を幾つか記憶しておくことにより、車両1とサンプリング点SPとの距離に応じて適用すべき経路コストの変化率を計算により求める必要がない。よって、経路コストを求めるための計算負荷を軽減することができる。
【0069】
[変形例]
上述した実施形態では、車両1とサンプリング点SPとの距離に応じて、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離に対する経路コストの変化率を段階的に変化させていたが、他の例では、車両1とサンプリング点SPとの距離に応じて、センターラインC1とサンプリング点SPとの距離に対する経路コストの変化率を連続的に変化させてもよい。こうすることで、車両1とサンプリング点SPとの距離が正確に加味された経路コストの変化率を適用することができる。
【0070】
また、上述した実施形態では、車両1が自車レーン5aのセンター位置を通過する走行経路が設定されるように経路コストを規定したが、他の例では、車両1が自車レーン5aのセンター位置からずれた位置を通過する走行経路が設定されるように経路コストを規定してもよい。例えば、車両1がコーナーを走行するときに、所謂アウトインアウトの走行経路を通過するように経路コストを規定してもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、エンジンを駆動源とする車両1に本発明を適用する例を示したが(
図1参照)、本発明は、電気モータを駆動源とする車両(電気自動車やハイブリッド車)にも適用可能である。加えて、上述した実施形態では、ブレーキ装置(ブレーキ制御システム32)により制動力を車両1に付与していたが、他の例では、電気モータの回生により制動力を車両に付与してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 車両
5 走行路
5a 自車レーン
10 ECU
21 カメラ
22 レーダ
30 ナビゲーションシステム
100 車両運転支援システム
C1 センターライン
Gn グリッド点
RC 経路候補
SP サンプリング点