(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】カバー部材及びカバー部材取付構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20220728BHJP
B60J 10/76 20160101ALI20220728BHJP
【FI】
B60J5/04 Z
B60J10/76
(21)【出願番号】P 2019045869
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
(72)【発明者】
【氏名】飛沢 孝男
(72)【発明者】
【氏名】榊 和彦
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-296820(JP,A)
【文献】特開2018-62194(JP,A)
【文献】特開2009-6788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B60J 10/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側のドアインナパネルと外部側のドアアウタパネルとによってドア内空間が区画された状態で所定方向に沿って起立するドアパネルに対して取り付けられて、前記ドアインナパネルに設けられた開口部を前記車室側から塞ぐ板状のカバー部材であって、
前記カバー部材の下端縁から上方へ延びて前記ドアインナパネルの前記開口部の下側の開口縁を挿入可能なスリット部と、
前記カバー部材の下端部のうち前記スリット部の前記所定方向の一側に位置し、前記ドアインナパネルよりも前記車室側に配置される車室側領域と、
前記カバー部材の下端部のうち前記スリット部の前記所定方向の他側に位置し、前記ドア内空間に配置されるドア内領域と、を備えた
ことを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
請求項1に記載のカバー部材であって、
前記スリット部よりも上方に配置されて、前記ドア内空間側へ突出する突出部を備え、
前記突出部の前記所定方向の前記他側の端部は、前記スリット部よりも前記他側に配置され、
前記突出部の上面及び下面の少なくとも一方は、前記所定方向の前記一側から前記他側の下方へ向かって傾斜している
ことを特徴とするカバー部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカバー部材を前記ドアパネルに対して取り付けるためのカバー部材取付構造であって、
前記ドアパネルは、前記ドアインナパネルよりも前記車室側に配置されて前記ドアインナパネルに対して固定されるドアトリムを有し、
前記カバー部材は、前記ドアインナパネルと前記ドアトリムとの間に挟持されることによって、前記ドアパネルに対して取り付けられる
ことを特徴とするカバー部材取付構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のカバー部材を前記ドアパネルに対して取り付けるためのカバー部材取付構造であって、
前記ドアパネルは、ウィンドウ開口と、前記ドア内空間に配置されて前記ドアパネルに対して固定されるガラスランチャンネルと、前記ガラスランチャンネルに支持されるガラスランとを有し、
前記ドアインナパネルの前記開口部は、前記ウィンドウ開口から前記所定方向の前記一側または前記他側へ切欠状に設けられ、
前記ガラスランチャンネルは、前記開口部内の前記ウィンドウ開口側で上下方向に延びる開口部内領域を有し、
前記ガラスランは、前記ガラスランチャンネルの前記開口部内領域に対して前記車室側から被さる車室側リップ部を有し、
前記カバー部材は、前記ガラスランチャンネルの前記開口部内領域と前記ガラスランの前記車室側リップ部との間に挟持されることによって、前記ドアパネルに対して取り付けられる
ことを特徴とするカバー部材取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カバー部材及びカバー部材取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ドア構造が記載されている。車両用ドアを構成する金属製のドアパネルには、上部に窓用開口が設けられている。ドアパネルは、ドアインナパネルとドアアウタパネルとで構成され、窓用開口の上縁部及び両側縁部でドアサッシュによって両者が結合されている。ドアサッシュの内側には、ドアガラスの昇降を案内するガラスランが装着されている。窓用開口の一方の側縁部の下方位置には、その側縁部を切り欠くようにしてドアアウタパネル及びドアサッシュに切欠き部が形成されている。この切欠き部を利用して、両側縁部が平行なドアガラスをドアサッシュ及びガラスランの内側に嵌入させることができるようになっている。ドアに対してドアガラスを組み付けた後に、ドアアウタパネルの外面側に対して切欠き部を塞ぐためのブラケット部材を取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドアパネルに対するドアガラスの取付性を向上させるための切欠部(切欠き状の開口部)を、ドアインナパネルのウィンドウ開口の周辺に設ける場合がある。この場合、上記特許文献1に記載の車両用ドア構造のように、開口部をブラケット部材(カバー部材)で塞いだとしても、ドアパネル内(ドアインナパネルとドアアウタパネルとの間の空間)に浸入した水が、開口部とカバー部材との間から車室側へ浸入してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、ドアインナパネルの開口部から車室側への水の浸入を抑えることが可能なカバー部材及びカバー部材取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、車室側のドアインナパネルと外部側のドアアウタパネルとによってドア内空間が区画された状態で所定方向に沿って起立するドアパネルに対して取り付けられて、ドアインナパネルに設けられた開口部を車室側から塞ぐ板状のカバー部材であって、スリット部と車室側領域とドア内領域とを備える。スリット部は、カバー部材の下端縁から上方へ延びてドアインナパネルの開口部の下側の開口縁を挿入可能である。車室側領域は、カバー部材の下端部のうちスリット部の上記所定方向の一側に位置し、ドアインナパネルよりも車室側に配置される。ドア内領域は、カバー部材の下端部のうちスリット部の上記所定方向の他側に位置し、ドア内空間に配置される。
【0007】
上記構成では、カバー部材の下端部のうちスリット部の上記所定方向の他側に位置する領域(ドア内領域)がドア内空間に配置されるので、ドア内空間でカバー部材を伝って流下する水のうちカバー部材の上記所定方向の他側の領域を流下する水は、カバー部材の下端からドア内空間の下方へ流下し、車室側へ浸入しない。このため、ドアインナパネルの開口部から車室側への水の浸入を抑えることができる。
【0008】
また、カバー部材の下端縁から上方へ延びるスリット部に、ドアインナパネルの開口部の下側の開口縁を挿入可能であるので、カバー部材によってドアインナパネルの開口部を塞ぐ際に、カバー部材のスリット部にドアインナパネルの開口部の下側の開口縁を挿入することによって、ドアインナパネルの開口部に対する下方へのカバー部材の位置決めを容易に行うことができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のカバー部材であって、突出部を備える。突出部は、スリット部よりも上方に配置されて、ドア内空間側へ突出する。突出部の上記所定方向の上記他側の端部は、スリット部よりも上記他側に配置される。突出部の上面及び下面の少なくとも一方は、上記所定方向の上記一側から上記他側の下方へ向かって傾斜している。
【0010】
上記構成では、スリット部よりも上方でドア内空間側へ突出する突出部の所定方向の他側の端部が、スリット部よりも上記他側に配置され、突出部の上面及び下面の少なくとも一方が、上記所定方向の一側から他側の下方へ向かって傾斜している。すなわち、突出部の上面及び下面の少なくとも一方は、上方からカバー部材のドア内領域側へ向かって傾斜している。このため、突出部の上面がカバー部材のドア内領域側へ向かって傾斜している場合には、ドアパネル内を流下する水を突出部の上面に沿って上記一側からカバー部材のドア内領域側へ案内することができ、また、突出部の下面がカバー部材のドア内領域側へ向かって傾斜している場合には、ドアパネル内で突出部の上記一側の側面に沿って流下する水が下面に到達した後、水を突出部の下面に沿ってカバー部材のドア内領域側へ案内することができる。このように、ドアパネル内を流下する水を、カバー部材の上記一側から上記他側のドア内領域側へ案内することができるので、ドアインナパネルの開口部から車室側へのドアパネル内を流下する水の浸入を好適に抑えることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様または上記第2の態様のカバー部材をドアパネルに対して取り付けるためのカバー部材取付構造であって、ドアパネルは、ドアトリムを有する。ドアトリムは、ドアインナパネルよりも車室側に配置されてドアインナパネルに対して固定される。カバー部材は、ドアインナパネルとドアトリムとの間に挟持されることによって、ドアパネルに対して取り付けられる。
【0012】
上記構成では、カバー部材がドアインナパネルとドアトリムとの間に挟持されるので、カバー部材を、車室側への水の浸入を防止するシール部材として機能させることができる。
【0013】
また、カバー部材は、ドアインナパネルとドアトリムとの間に挟持されることによって、ドアパネルに対して取り付けられる。このため、カバー部材をドアインナパネルの開口部の周縁部に対して他の部材(例えば、ブチルテープまたはボルト等)で取り付ける場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様または上記第2の態様のカバー部材をドアパネルに対して取り付けるためのカバー部材取付構造であって、ドアパネルは、ウィンドウ開口と、ドア内空間に配置されてドアパネルに対して固定されるガラスランチャンネルと、ガラスランチャンネルに支持されるガラスランとを有する。ドアインナパネルの開口部は、ウィンドウ開口から上記所定方向の上記一側または上記他側へ切欠状に設けられる。ガラスランチャンネルは、開口部内のウィンドウ開口側で上下方向に延びる開口部内領域を有する。ガラスランは、ガラスランチャンネルの開口部内領域に対して車室側から被さる車室側リップ部を有する。カバー部材は、ガラスランチャンネルの開口部内領域とガラスランの車室側リップ部との間に挟持されることによって、ドアパネルに対して取り付けられる。
【0015】
上記構成では、カバー部材がガラスランチャンネルの開口部内領域とガラスランの車室側リップ部との間に挟持されるので、カバー部材を、車室側への水の浸入を防止するシール部材として機能させることができる。
【0016】
また、カバー部材は、ガラスランチャンネルの開口部内領域とガラスランの車室側リップ部との間に挟持されることによって、ドアパネルに対して取り付けられる。このため、例えば、カバー部材をガラスランチャンネルに対してブチルテープ等で貼り付ける場合よりも、ドアインナパネルと交叉する方向への取り付け部分の厚さを抑えることができる。また、カバー部材をドアインナパネルの開口部の周縁部に対して他の部材(例えば、ブチルテープまたはボルト等)で取り付ける場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、ドアインナパネルの開口部から車室側への水の浸入を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカバー部材取付構造を適用した車両のサイドドアの側面図であって、(a)は車幅方向外側から視た状態を、(b)は車幅方向内側から視た状態をそれぞれ示す。
【
図2】
図1(b)のドアトリムを取り外した状態のサイドドアの側面図である。
【
図3】
図2のドアインナパネルの開口部の拡大図であって、(a)はカバー部材及びガラスランを取り外した状態を、(b)はカバー部材及びガラスランを取り付けた状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0020】
図1(a)、
図1(b)、及び
図2に示すように、本実施形態に係るカバー部材取付構造は、車両1の車室2(
図5参照)を外部へ開閉可能なサイドドア(ドアパネル)3に対して適用される。サイドドア3は、車室2の側方を閉止した閉止状態で、車幅方向と交叉して前後方向(所定方向)に沿って起立する。なお、以下の説明において、サイドドア3の前後方向および左右方向は、閉止状態のサイドドア3の方向を示す。
【0021】
サイドドア3は、車幅方向と交叉する車室2側(本実施形態では、車幅方向内側)のドアインナパネル4と、車幅方向と交叉する外部側(本実施形態では、車幅方向外側)のドアアウタパネル5とによって閉断面状に形成される。ドアインナパネル4の外周縁部とドアアウタパネル5の外周縁部とが互いに固定された状態で、ドアインナパネル4とドアアウタパネル5との間には、ドア内空間9(
図5参照)が区画される。ドアインナパネル4の車幅方向内側(車室2側)には、化粧部材であるドアトリム6が取り付けられる。サイドドア3の上部には、ウィンドウ開口7が形成される。ウィンドウ開口7は、ドア内空間9内のガラス昇降機構(図示省略)に昇降可能に支持されるウィンドウガラス8によって開閉可能である。ウィンドウ開口7の周縁部には、昇降するウィンドウガラス8を案内するガラスラン12が設けられ、ウィンドウ開口7の周縁部のドア内空間9内には、ガラスラン12を支持するガラスランチャンネル13(
図3(a)参照)が設けられる。
【0022】
図3(a)に示すように、ドアインナパネル4のうちウィンドウ開口7の後方には、ウィンドウ開口7の後縁16から後方へ切り欠かれた切欠部(開口部)14が形成される。この切欠部14は、ウィンドウガラス8をウィンドウ開口7の下縁15側から下方のドア内空間9(
図5参照)へ挿入する際の作業性を向上させるために設けられる。切欠部14は、ウィンドウ開口7の下縁15に沿って後方へ延びる開口下縁(下側の開口縁)14aと、開口下縁14aよりも上方でウィンドウ開口7の後縁16から後方へ延びる開口上縁14bと、開口下縁14aの後端と開口上縁14bの後端との間で上下方向に延びる開口後縁14cとを有する。切欠部14内のウィンドウ開口7側(本実施形態では、前側)には、前方へ開口する断面U状(
図5参照)のガラスランチャンネル13のうちの上下方向の一部の領域20(以下、「開口部内領域20」という。)が上下方向に延びる。ドアインナパネル4のうち切欠部14の開口上縁14bの上方の領域には、ガラスランチャンネル13を車幅方向内側から押さえつけた状態で支持する第1ブラケット17が固定される。切欠部14内の上下方向の略中央部には、ドアトリム6を固定するための第2ブラケット18が配置される。第2ブラケット18には、ドアトリム6側のクリップ(図示省略)を取り付け可能なクリップ取付部28が設けられる。切欠部14を塞ぐための後述するカバー部材10をドアインナパネル4に対して取り付ける前の状態(
図3(a)に図示された状態)では、ドアインナパネル4の切欠部14は、車幅方向内側へ開口している。
図2及び
図3(b)に示すように、ドアインナパネル4の切欠部14は、カバー部材10によって車幅方向内側から塞がれる。
【0023】
図3(b)及び
図4に示すように、カバー部材10は、柔軟性を有する多孔質の材料(例えば、非連続気泡のスポンジ材など)によって略板状に形成される。カバー部材10は、後述するように、ドアトリム6を取り付ける前のサイドドア3の所定の取付位置に配置され、ドアトリム6及びガラスラン12等によって支持(挟持)されてサイドドア3に対して取り付けられる。カバー部材10をサイドドア3に対して取り付けたカバー取付状態で、カバー部材10は、ドアインナパネル4の切欠部14を塞ぎ、ドア内空間9から車室2側への水の浸入や埃の侵入を防止し、また、ドア内空間9内から車室2側への騒音の伝達を抑制する。
【0024】
図3(a)、
図3(b)、及び
図4に示すように、カバー部材10は、カバー下端部19aとカバー上端部19bとカバー後端部19cとカバー前端部19dとを有する。カバー上端部19bは、カバー取付状態で切欠部14の開口上縁14bよりも上方へ延びてドアインナパネル4の車幅方向内側面4aに接触する。カバー後端部19cは、カバー取付状態で切欠部14の開口後縁14cよりも後方へ延びてドアインナパネル4の車幅方向内側面4aに接触する。カバー前端部19dは、カバー取付状態でガラスランチャンネル13の後面32(
図5参照)よりも前方へ延びてガラスランチャンネル13の車幅方向内側面22に接触する。カバー下端部19aは、カバー取付状態でドアインナパネル4の切欠部14の開口下縁14aよりも下方へ延びる。カバー下端部19aには、カバー部材10の下端縁23から上方へ延びるスリット部24が形成される。すなわち、カバー下端部19aは、スリット部24よりも後方(一側)のスリット後方領域(車室側領域)25と、スリット部24よりも前方(他側)のスリット前方領域(ドア内領域)26とを有する。本実施形態では、スリット前方領域26の前後方向の長さL1は、スリット後方領域25の前後方向の長さL2よりも長く設定される(L1>L2)。カバー部材10をドアインナパネル4に対して取り付ける際には、ドアインナパネル4の開口下縁14aをカバー下端部19aのスリット部24に対して下方から挿入し、スリット部24の上端24aに当接させる。ドアインナパネル4の開口下縁14aをカバー下端部19aのスリット部24に挿入した状態で、カバー下端部19aのスリット後方領域25は、ドアインナパネル4の車幅方向内側(車室2側)に配置され、カバー下端部19aのスリット前方領域26は、ドアインナパネル4の車幅方向外側のドア内空間9に配置される。
【0025】
図4~
図6に示すように、カバー部材10のうち、カバー下端部19a、カバー上端部19b、カバー後端部19c、及びカバー前端部19dに囲まれる領域27には、クリップ挿通孔29と、クリップ挿通孔29よりも上方に配置されて車幅方向外側へ突出する上側突出部(突出部)30と、クリップ挿通孔29よりも下方に配置されて車幅方向外側へ突出する下側突出部(突出部)31とが形成される。クリップ挿通孔29は、カバー取付状態で第2ブラケット18のクリップ取付部28に対応する位置に配置されてドアトリム6側のクリップ(図示省略)の挿通を許容する。上側突出部30は、車幅方向内側へ開放する矩形箱状の箱状部30aと、箱状部30aから上方へ延びる線状の線状部30bとを有する。箱状部30aの前面(他側の端部)33は、カバー取付状態でガラスランチャンネル13の開口部内領域20の後面32の後方近傍に配置されて後面32に対向し、ガラスランチャンネル13の延設方向に沿って上下方向に延びる。箱状部30aの後面47は、カバー取付状態でドアインナパネル4の切欠部14の開口後縁14cの前方近傍に配置され、開口後縁14cの延設方向に沿って上下方向に延びる。線状部30bは、箱状部30aの後上端から上方へ延びる第1線状部34と、第1線状部34の上端から前方へ延びる第2線状部35とを有する。第1線状部34は、ドアインナパネル4の切欠部14の開口後縁14cの前方近傍で上下方向に沿って延び、第1線状部34の上端は、切欠部14の開口上縁14bの下方近傍に配置される。第2線状部35は、切欠部14の開口上縁14bの下方近傍に配置され、開口上縁14bの延設方向に沿って前後に延びる。下側突出部31は、車幅方向内側へ開放する断面略菱形の箱状に形成される。下側突出部31の前面(他側の端部)36は、カバー取付状態でガラスランチャンネル13の開口部内領域20の後面32の後方近傍に配置されて後面32に対向し、ガラスランチャンネル13の延設方向に沿って上下方向に延びる。下側突出部31の後面37は、カバー取付状態でドアインナパネル4の切欠部14の開口後縁14cの前方近傍に配置され、開口後縁14cの延設方向に沿って上下方向に延びる。上側突出部30の箱状部30aの前面33及び下側突出部31の前面36は、スリット部24よりも前方に配置される。下側突出部31の上面38及び下面39は、後上方から前下方へ向かって直線状に延び、前後の水平方向に対して傾斜している。
【0026】
ガラスラン12は、ウィンドウガラス8の後端部が進入するガラス進入凹部40と、ガラス進入凹部40の車幅方向外側の前端部から車幅方向外側の後方へ延びてドアアウタパネル5の前端縁部に対して車幅方向外側から被さる外部側リップ部41と、ガラス進入凹部40の車幅方向内側の前端部から車幅方向内側の後方へ延びてガラスランチャンネル13の前端側の車幅方向内側面22に対して車幅方向内側から被さる車室側リップ部42とを有する。なお、ガラス進入凹部40内には、ウィンドウガラス8に対して車幅方向両側から接触する左右1対のシールリップ部43,44が設けられる。
【0027】
カバー部材10及びドアトリム6を取り付ける前のサイドドア3では、ドアインナパネル4とドアアウタパネル5とが互いに接合され、ドア内空間9内にウィンドウガラス8が配置され、ウィンドウ開口7の周縁部にガラスランチャンネル13及びガラスラン12が設けられ、ドアインナパネル4の切欠部14が車幅方向内側へ開口している。
【0028】
カバー部材10をサイドドア3に対して取り付ける際には、先ず、カバー部材10のスリット後方領域25がドアインナパネル4の車幅方向内側に配置され、スリット前方領域26がドアインナパネル4の車幅方向外側のドア内空間9に配置されるように、カバー部材10のスリット部24に対して下方からドアインナパネル4の開口下縁14aを挿入し、開口下縁14aをスリット部24の上端24aに当接させる。次に、カバー部材10の上側突出部30及び下側突出部31を、ドアインナパネル4の切欠部14とガラスランチャンネル13の開口部内領域20の後面32との間に車幅方向内側から挿入する。この状態がカバー部材10を上記所定の取付位置に配置した状態であり、係る状態では、上側突出部30の箱状部30aの前面33及び下側突出部31の前面36が、ガラスランチャンネル13の開口部内領域20の後面32の後方近傍に配置され、箱状部30aの後面47及び下側突出部31の後面37が、切欠部14の開口後縁14cの前方近傍に配置され、上側突出部30の第1線状部34が、切欠部14の開口後縁14cの前方近傍に配置され、上側突出部30の第2線状部35が、切欠部14の開口上縁14bの下方近傍に配置される。次に、カバー部材10のカバー前端部19dの上下方向の略全域を、ガラスランチャンネル13の車幅方向内側面22とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持する。この時点で、カバー部材10は、少なくともガラスランチャンネル13とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持されることによって、サイドドア3に対して取り付けられる。最後に、ドアトリム6側のクリップ(図示省略)をカバー部材10のクリップ挿通孔29に対して車幅方向内側から挿入して、第2ブラケット18のクリップ取付部28に係止する。ドアトリム6をサイドドア3に対して取り付けた状態で、カバー部材10のカバー後端部19cの少なくとも一部の領域(例えば、
図5で断面が図示される領域)は、ドアトリム6に設けられるカバー押圧部6aによってドアインナパネル4側(車幅方向外側)へ向かって押圧されて、ドアインナパネル4の車幅方向内側面4aとドアトリム6のカバー押圧部6aとに挟持される。すなわち、本実施形態では、カバー部材10は、ガラスランチャンネル13とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持され、且つドアインナパネル4とドアトリム6との間に挟持されることによって、サイドドア3に対して取り付けられる。なお、ドアトリム6のカバー押圧部6aは、ドアインナパネル4の車幅方向内側面4aの車幅方向内側でドアインナパネル4の車幅方向内側面4aに対向する。
【0029】
上記のように構成されたカバー部材10では、カバー部材10のスリット前方領域26がドアインナパネル4の車幅方向外側のドア内空間9に配置されるので、ドア内空間9に水が浸入した際に、カバー部材10のドア内空間9の面45を伝って流下する水のうちスリット部24よりも前方を流下する水は、スリット前方領域26に到達してスリット前方領域26の下端縁23からドア内空間9の下方へ流下する。このため、水が車室2側へ浸入しないので、ドアインナパネル4の切欠部14から車室2側への水の浸入を抑えることができる。
【0030】
また、下側突出部31の前面36がスリット部24よりも前方に配置され、下側突出部31の上面38が後上方から前下方へ向かって傾斜している。このため、ドア内空間9を流下してカバー部材10の下側突出部31の上面38に到達した水を、下側突出部31の上面38に沿って前方のスリット前方領域26側へ案内することができるので、ドアインナパネル4の切欠部14から車室2側への水の浸入を好適に抑えることができる。
【0031】
また、下側突出部31の前面36がスリット部24よりも前方に配置され、下側突出部31の下面39が後上方から前下方へ向かって傾斜している。このため、ドア内空間9でカバー部材10の下側突出部31の後面37に沿って流下してカバー部材10の下面39に到達した水を、下側突出部31の下面39に沿って前方のスリット前方領域26側へ案内することができるので、ドアインナパネル4の切欠部14から車室2側への水の浸入を好適に抑えることができる。
【0032】
また、カバー部材10のカバー前端部19dが、ガラスランチャンネル13の車幅方向内側面22とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持されるので、カバー部材10を、車室2側への水の浸入を防止するシール部材として機能させることができる。
【0033】
また、カバー部材10のカバー後端部19cの一部の領域(例えば、
図5で断面が図示される領域)が、ドアトリム6とドアインナパネル4とに挟持されるので、カバー部材10のカバー後端部19cのうちドアトリム6とドアインナパネル4とに挟持される上記領域を、車室2側への水の浸入を防止するシール部材として機能させることができる。
【0034】
また、カバー部材10を、柔軟性を有する多孔質の材料によって形成しているので、車室2側への水の浸入を防止するシール部材として効果的に機能させることができる。
【0035】
従って、本実施形態によれば、ドアインナパネル4の切欠部14から車室2側への水の浸入を抑えることができる。
【0036】
また、カバー部材10をサイドドア3に対して取り付ける際に、カバー部材10のスリット部24に対して下方からドアインナパネル4の開口下縁14aを挿入し、開口下縁14aをスリット部24の上端24aに当接させるので、ドアインナパネル4の切欠部14に対する下方へのカバー部材10の位置決めを容易に行うことができる。
【0037】
また、カバー部材10を上記所定の取付位置に配置した状態で、上側突出部30の箱状部30a及び下側突出部31の前面33,36が、ガラスランチャンネル13の開口部内領域20の後面32の後方近傍に配置されるので、ドアインナパネル4の切欠部14に対する前方へのカバー部材10の位置決めを容易に行うことができる。
【0038】
また、上側突出部30の後面47及び下側突出部31の後面37が、切欠部14の開口後縁14cの前方近傍に配置されるので、ドアインナパネル4の切欠部14に対する後方へのカバー部材10の位置決めを容易に行うことができる。
【0039】
また、上側突出部30の第2線状部35が、切欠部14の開口上縁14bの下方近傍に配置されるので、ドアインナパネル4の切欠部14に対する上方へのカバー部材10の位置決めを容易に行うことができる。
【0040】
また、カバー部材10は、ドアインナパネル4とドアトリム6との間に挟持されることによって、サイドドア3に対して取り付けられる。このため、カバー部材10をドアインナパネル4の切欠部14の周縁部に対して他の部材(例えば、ブチルテープまたはボルト等)で取り付ける場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0041】
また、カバー部材10は、ガラスランチャンネル13とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持されることによって、サイドドア3に対して取り付けられる。ガラスラン12の車室側リップ部42は、ブチルテープに比べて車幅方向の厚さが比較的薄いので、例えば、カバー部材10をガラスランチャンネル13に対してブチルテープ等で貼り付ける場合よりも、ガラスランチャンネル13に対するカバー部材10のカバー前端部19dの取り付け部分の車幅方向の厚さを抑えることができる。また、カバー部材10をガラスランチャンネル13に対して他の部材(例えば、ブチルテープまたはボルト等)で取り付ける場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、カバー部材10のカバー後端部19cの上下方向の一部の領域(例えば、
図5で断面が図示される領域)を、ドアインナパネル4の車幅方向内側面4aとドアトリム6との間に挟持したが、カバー後端部19cの上下方向の略全域を、ドアインナパネル4の車幅方向内側面4aとドアトリム6との間に挟持してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、カバー部材10のカバー前端部19dの上下方向の略全域を、ガラスランチャンネル13の車幅方向内側面22とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持したが、カバー前端部19dの上下方向の一部の領域を、ガラスランチャンネル13の車幅方向内側面22とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、カバー部材10を、ガラスランチャンネル13とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持し、且つドアインナパネル4とドアトリム6との間に挟持することによって、サイドドア3に対して取り付けたが、これに限定されるものではない。例えば、カバー部材10を、ガラスランチャンネル13とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持することなく、ドアインナパネル4とドアトリム6との間に挟持することによって、サイドドア3に対して取り付けてもよいし、または、ドアインナパネル4とドアトリム6との間に挟持することなく、ガラスランチャンネル13とガラスラン12の車室側リップ部42との間に挟持することによって、サイドドア3に対して取り付けてもよい。或いは、カバー部材10を、上記構造とは異なる他の構造(例えば、ビス止め、クリップ止め、または接着等)でサイドドア3に対して取り付けてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、カバー部材10をサイドドア3に対して取り付ける際に、先ず、カバー部材10のスリット部24に対して下方からドアインナパネル4の開口下縁14aを挿入し、次に、カバー部材10の上側突出部30及び下側突出部31を、ドアインナパネル4の切欠部14からドア内空間9へ挿入したが、これに限定されるものではない。例えば、先ず、カバー部材10の上側突出部30及び下側突出部31を、ドアインナパネル4の切欠部14からドア内空間9へ挿入し、次に、カバー部材10のスリット部24に対して下方からドアインナパネル4の開口下縁14aを挿入してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、カバー部材10の下側突出部31の上面38及び下面39の双方を後上方から前下方へ向かって傾斜させたが、これに限定されるものではなく、上面38及び下面39のいずれか一方を後上方から前下方へ向かって傾斜させてもよいし、或いは、上面38及び下面39の双方を前後方向に傾斜させなくてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、カバー部材10の下側突出部31を車幅方向内側へ開放する断面略菱形の箱状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、車幅方向外側へ突出し、後上方から前下方へ向かって傾斜した状態で直線状に延びる線状のリブ(突出部)であってもよい。
【0048】
また、本実施形態では、カバー部材10の上側突出部30に、箱状部30aと線状部30bとを設けたが、いずれか一方のみを設けてもよい。また、上側突出部30の箱状部30aの上面及び下面の少なくとも一方を後上方から前下方へ向かって傾斜させてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、カバー部材10のスリット後方領域(車室側領域)25をドアインナパネル4の車幅方向内側に配置し、スリット前方領域(ドア内領域)26をドアインナパネル4の車幅方向外側のドア内空間9に配置したが、スリット後方領域25をドアインナパネル4の車幅方向外側のドア内空間9に配置し、スリット前方領域26をドアインナパネル4の車幅方向内側に配置してもよい。この場合、カバー部材10の下側突出部31の上面38及び下面39の少なくとも一方を前上方から後下方へ向かって傾斜させてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、カバー部材10にクリップ挿通孔29を設けたが、クリップ挿通孔29を設けなくてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、カバー部材10に上側突出部30及び下側突出部31を設けたが、上側突出部30及び下側突出部31を設けなくてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、カバー部材10を、柔軟性を有する多孔質の材料で形成したが、これに限定されるものではなく、他の材料(例えば、樹脂パネル等)で形成してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、ドアインナパネル4のウィンドウ開口7の後方の切欠部(開口部)14を、カバー部材10で塞いだが、これに限定されるものではない。例えば、ウィンドウ開口7の前方に切欠部(開口部)を設けた場合には、係る切欠部をカバー部材10で塞いでもよいし、或いは、ドアインナパネル4のウィンドウ開口7から離間した位置に開口部を設けた場合には、係る開口部をカバー部材10で塞いでもよい。これらの場合、開口部を塞ぐカバー部材10は、少なくともカバー下端部19aにスリット部24を有し、スリット後方領域25及びスリット前方領域26のいずれか一方を車室2側に配置し、他方をドア内空間9側に配置していればよい。
【0054】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、本開示に係るカバー部材10及びカバー部材取付構造を、車両1のサイドドア(ドアパネル)3に対して適用したが、車幅方向(所定方向)に沿って延びて車両1の車室2を後方へ開放可能なバックドア(ドアパネル)に対して適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示に係るカバー部材及びカバー部材取付構造は、車両のドアパネルに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1:車両
2:車室
3:サイドドア(ドアパネル)
4:ドアインナパネル
5:ドアアウタパネル
6:ドアトリム
7:ウィンドウ開口
9:ドア内空間
10:カバー部材
12:ガラスラン
13:ガラスランチャンネル
14:切欠部(開口部)
20:開口部内領域
23:カバー部材の下端縁
24:スリット部
25:スリット後方領域(車室側領域)
26:スリット前方領域(ドア内領域)
30:上側突出部(突出部)
31:下側突出部(突出部)
38:下側突出部の上面
39:下側突出部の下面
42:車室側リップ部