(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】花粉症を予防及び/又は改善するための組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20220728BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220728BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220728BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220728BHJP
A23G 3/48 20060101ALI20220728BHJP
A23C 9/152 20060101ALI20220728BHJP
A61K 36/70 20060101ALI20220728BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220728BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L2/00 F
A23L2/38 J
A23L33/105
A23G3/48
A23C9/152
A61K36/70
A61P37/02
A61P37/08
(21)【出願番号】P 2018100694
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500380572
【氏名又は名称】池田製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 康一朗
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-178683(JP,A)
【文献】松原一美ら,蕎麦摂食の免疫機能に及ぼす影響について,京都教育大学環境教育研究年報,2011年,第19号,113-123
【文献】Food & Function,2015年,6,2664-2670
【文献】永井由美子ら,市販そば乾麺中のルチン含量について,明和学園短期大学紀要 2012,2013年03月31日,第22集,69-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K 36/70
A61P 37/02
A61P 37/08
A23L 7/10
A23L 2/52
A23G 3/48
A23C 9/152
A23L 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉症を予防及び/又は改善するため、
かつ体内のIL-10産生能を促進させる組成物であって、そば
(韃靼そばを除く)の表層粉を
有効成分として含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
そば(韃靼そばを除く)の表層粉を10μg/mL以上含む、請求項1に記載する組成物。
【請求項3】
食品組成物である請求項1
又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
食品組成物が、即席食品類、飲料類、小麦粉製品、菓子類、乳製品又は農産加工品である請求項
3記載の組成物。
【請求項5】
健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能性食品、機能性表示食品又は病者用食品である請求項
3記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉症を予防及び/又は改善するための組成物に関するものであり、詳細には、そばの表層粉を含むことを特徴とする組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スギ花粉などによる季節性アレルギー性鼻炎に代表される花粉症の患者数の増加が顕著であり、スギ花粉症では、今後さらに原因となるスギ花粉が増加すると予測する報告もあり、患者の増加が懸念されている。
【0003】
花粉症に対して用いられる主な薬物としては、抗ヒスタミン剤が挙げられるが、抗ヒスタミン剤は副作用として眠気や口渇が出ることがあり、日常生活に支障が生じる場合があった。
【0004】
一方、薬剤ではなく、食経験が豊富で安全が確認されている食品、あるいはその原料から、花粉症を予防及び/又は改善し得る素材の探索が盛んに行われており、例えば、ヨーグルトや乳酸菌飲料は、花粉症に効果があると報告されており、また、納豆菌及びバチルス属菌体の胞子組成物を用いた花粉症抑制剤も報告されている(特許文献1参照)。
【0005】
上記の様に、花粉症を予防及び/又は改善し得る食品、あるいはその原料に対する要求が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、食経験が豊富な食品を含む組成物であって、花粉症を予防及び/又は改善し得る新たな組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、食経験が豊富なそばの表層粉が、花粉症を予防及び/又は改善し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、
[1]花粉症を予防及び/又は改善するための組成物であって、そばの表層粉を含むことを特徴とする組成物、
[2]食品組成物である前記[1]記載の組成物、
[3]食品組成物が、即席食品類、飲料類、小麦粉製品、菓子類、乳製品又は農産加工品である前記[2]記載の組成物、
[4]健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能性食品、機能性表示食品又は病者用食品である前記[2]記載の組成物
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、食経験が豊富な食品を含む組成物であって、花粉症を予防及び/又は改善し得る新たな組成物を提供することができる。
本発明に使用されるそばの表層粉は、NO、IL-10及びINF-γの産生量を増加させることができ、そのため、本発明の組成物は、マクロファージの活性化作用を有し、抗アレルギー作用を有し、且つ、Th2系の活性化だけでなく、Th1系の活性化作用も有し得るものであるため、花粉症の予防及び/又は改善において有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各サンプル(酢酸菌糖脂質、4F粉A、4F粉A+及び4F粉B)におけるNO産生量(実数表記)を示すグラフである。
【
図2】各サンプル(酢酸菌糖脂質、4F粉A、4F粉A+及び4F粉B)におけるIL-10産生量(対数表記)を示すグラフである。
【
図3】各サンプル(酢酸菌糖脂質、4F粉A、4F粉A+及び4F粉B)におけるIL-10産生量(実数表記)を示すグラフである。
【
図4】各サンプル(酢酸菌糖脂質、4F粉A、4F粉A+及び4F粉B)におけるINF-γ産生量(対数表記)を示すグラフである。
【
図5】各サンプル(酢酸菌糖脂質、4F粉A、4F粉A+及び4F粉B)におけるINF-γ産生量(実数表記)を示すグラフである。
【
図6】スギ花粉で感作したマウス(花粉症マウス)の鼻かきの回数に対するそばの表層粉投与(表層粉投与群)及び酢酸菌糖脂質投与(酢酸菌糖脂質投与群)の効果を示すグラフである(1回目の鼻症状評価)。
【
図7】スギ花粉で感作したマウス(花粉症マウス)の鼻かき+こすりつけの回数に対するそばの表層粉投与(表層粉投与群)及び酢酸菌糖脂質投与(酢酸菌糖脂質投与群)の効果を示すグラフである(1回目の鼻症状評価)。
【
図8】スギ花粉で感作したマウス(花粉症マウス)のスギ花粉溶液注入後0~40分間における鼻かきの回数に対するそばの表層粉投与(表層粉投与群)及び酢酸菌糖脂質投与(酢酸菌糖脂質投与群)の効果を示すグラフである(2回目の鼻症状評価)。
【
図9】スギ花粉で感作したマウス(花粉症マウス)のスギ花粉溶液注入後10~40分間における鼻かきの回数に対するそばの表層粉投与(表層粉投与群)及び酢酸菌糖脂質投与(酢酸菌糖脂質投与群)の効果を示すグラフである(2回目の鼻症状評価)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明は、花粉症を予防及び/又は改善するための組成物であって、そばの表層粉を含むことを特徴とする組成物に関する。
【0013】
本発明の組成物は、そばの表層粉を含むことを特徴とする。
そばの実は外側から中心に向かって、黒皮、甘皮、表層粉、中層粉、内層粉となっており、そして、本発明においては、表層粉が使用される。表層粉は、3番粉とも呼ばれるものであり、粘り香り繊維があるとされる部位である。
本発明の組成物において、そばの表層粉は、活性成分に相当する。
(本明細書中、そばの表層粉は、4F粉とも記載される。)
【0014】
本発明の組成物は、食品組成物とするのが好ましい。
食品組成物としては、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、固体成形物など、経口摂取可能な形態であればよく特に限定されない。具体的には、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類;飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、パン粉などの小麦粉製品;菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料;油脂類;乳製品;卵加工品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品などの水産加工品;畜肉ハム・ソーセージなどの畜産加工品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアルなどの農産加工品;冷凍食品などが挙げら
れる。
【0015】
また、本発明の組成物としては、所謂、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメントを包含し、疾病リスク低減表示を付した食品などの保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能性食品、機能性表示食品)、病者用食品も包含される。また、サプリメントとしては、表層粉に賦形剤、結合剤等を加え練り合わせた後に打錠することにより製造された錠剤の形態などが挙げられる。
【0016】
本発明の組成物には、そばの表層粉の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常食品に用いられる材料、添加物(例えば、賦形剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、香料など)を必要に応じて適宜配合することができる。
【0017】
これら通常食品に用いられる材料、添加物の含有量は、特に限定されず、食品形態などに応じて適宜設定することができる。
【0018】
本発明の組成物中、そばの表層粉の配合量は、その目的や形態等により異なる。
【0019】
本発明の組成物によるそばの表層粉の摂取量は、食品の形態、摂取するヒトの年齢、体重、性別、摂取の目的などを考慮して、個々の場合に応じて適宜設定される。例えば、好ましくは200mg/kg以上、より好ましくは400mg/kg以上、さらに好ましくは600mg/kg以上、特に好ましくは1000mg/kg以上である。これを1日1回または数回に分けて摂取する。
【0020】
本発明の組成物は、原則的に、そばアレルギーを有する対象者への使用が禁止される。
【実施例】
【0021】
試験例1:NO産生能、IL-10産生能及びINF-γ産生能評価
そばの表層粉におけるマクロファージ活性化能を評価するために、NO産生能を評価し、抗アレルギー作用の指標として、IL-10産生能を評価し、Th1/Th2バランスへの影響を評価するために、INF-γ産生能の評価を行った。
【0022】
1.サンプル
(1)4F粉A:そばの表層粉、中国産100%、60g
(2)4F粉A+:(1)をオートクレーブ加熱したもの
(3)4F粉B:そばの表層粉、中国産100%を約100℃にて2分間加熱したもの、50g
【0023】
2.試験溶液の調製
蒸留水で各サンプル100mg/mLを調製した。
(2)4F+については、加熱による抽出作業の前に、90℃、20分間のオートクレーブ滅菌を実施した。サンプル(2)の滅菌終了後、全サンプル、(1)~(3)を90℃、20分間加熱を行い、試験溶液を作製した。
酢酸菌糖脂質を陽性対照物質とした。用量は、終濃度1μg/mL、0.1μg/mL、0.01μg/mL、0.001μg/mL及び0.0001μg/mLとした。希釈操作は全てクリーンベンチ内にて実施した。酢酸菌糖脂質は注射用水に2.5mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを使用した。使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、992μLの培養液に8μL加え、よく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製し、希釈系列の作製に用いた。
【0024】
3.使用細胞
NO産生能評価には、マウスマクロファージRAW264.7細胞株(ATCCより購入したもの)を用いた。IL-10産生能及びINF-γ産生能評価には、C57BL/6マウスより脾臓細胞を回収し培養したものを用いた。
【0025】
4.試験操作条件
試験操作は全てクリーンベンチ内で行った。
T25培養フラスコ4枚にて前培養した細胞をピペッティングにより壁から剥がし、得られた細胞の懸濁液を50mLコニカルチューブに移した。チューブを室温で遠心分離し(1000rpm、5分間)、上清をデカンテーションで捨て、細胞を回収した。タッピングにより細胞をほぐした後、培養液5mLを加え、ピペッティングによって細胞を均一に懸濁した後、11μLを別のチューブに移し0.5%トリパンブルー11μLを添加した後、血液計算板に液を移して細胞数と生存率を測定した。生存率が、90%以上であったので、残液を試験に用いた。
測定した細胞数に基づいて、残液に培養液を加えて希釈し4×105cells/mLになるよう細胞数を調製した。この細胞懸濁液を100μLづつ96well平底プレート3枚の各ウェルに加えた。インキュベーターに移して、細胞がウェルの底に接着して伸展するまで2時間前培養を行った。
被験液は、終濃度の2倍濃度のものを調製し、予め細胞(4×105cells/mL)100μLを播種してあるウェルに100μLづつ加えた。酢酸菌糖脂質群も同様に試験を行った。
各検体を添加後、24時間培養し、培養上清150μLを回収した。回収した培養上清を50μLづつ別の96ウェル平底プレートに移し、各測定に用いた。
【0026】
6.操作及び結果
1)NO産生能評価
各ウェルに蒸留水を指定の容量(1000、950、900、800、600、200μL)加え、検量線用の200μMの亜硝酸ナトリウム水溶液を指定の容量(0、50、100、200、400、800μL)加え、検量線用スタンダード亜硝酸ナトリウム溶液を調製した(亜硝酸ナトリウムの濃度:0、10、20、40、80、160μM)。
検量線用スタンダード亜硝酸ナトリウム溶液を各50μLづつ対応するウェルに加えた。
3%スルファニルアミド7.5%リン酸水溶液と、0.15%ナフチルエチレンジアミン液を1:2の比率で混合してGriess試薬を調製した。
調製したGriess試薬を各ウェル当たり50μLづつ加え、10分間室温でインキュベートした後、主波長550nm、副波長668nmで、プレートリーダー(Bio-rad model 680)により吸光度を測定して、NO産生能を評価した。
各サンプルにおけるNO産生量を、
図1(実数表記)に示した。
尚、
図1中のバーは、n=4での平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す(*:p<0.05、**:p<0.01)。
NO産生量は、4F粉A、4F粉A+及び4F粉Bの何れにおいても、1000μg/mL及び10000μL/mLでプラスの値になっており、陰性対照群であるmedium(媒体)のみの群よりも有意に増加していた(p<0.05)(
図1参照)。
何れのサンプルでも同じ1000μg/mL及び10000μL/mLで値が増えていたこと、またそれぞれの値は17~18μMとほぼ同じであったことから、そばの表層粉への加熱滅菌処理による自然免疫賦活作用の低下は観られなかった。
以上のことから、そばの表層粉にはマクロファージ活性化能があることが認められた。
【0027】
2)IL-10産生能評価
IL-10のELISAを、キット(Mouse IL-10 ELISA、BioLegend)に記載の方法に従って実施した。
各サンプルにおけるIL-10産生量を、
図2(対数表記)及び
図3(実数表記)に示した。
尚、図中のバーは、n=3での平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す(*:p<0.05、**:p<0.01)。
4F粉A、4F粉A+及び4F粉Bは、何れも濃度依存的にIL-10産生量を増加した(
図2、3参照)。この結果から、そばの表層粉には、抗アレルギー作用があることが示された。また、NO産生能評価において観察されたように、IL-10産生能評価においても、加熱滅菌処理による影響は観られなかった。
【0028】
3)INF-γ産生能評価
INF-γのELISAを、キット(Mouse INF-γ ELISA MAX Standard、BioLegend)に記載の方法に従って実施した。
各サンプルにおけるINF-γ産生量を、
図4(対数表記)及び
図5(実数表記)に示した。
尚、図中のバーは、n=3での平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す(*:p<0.05、**:p<0.01)。
4F粉A、4F粉A+及び4F粉Bは、何れも1000μg/mL以上の濃度で、INF-γ産生量を増加した(
図4、5参照)。この結果から、そばの表層粉は、Th2系を活性化するだけでなく、Th1系も活性化することが示唆された。
【0029】
試験例2:花粉症マウス試験
1.動物
1)動物種:マウス BALB/cマウス 雌性 5週齢(購入時)、10匹/群
供給源:日本クレア株式会社
馴化:動物搬入後、一週間の予備飼育を行った。
食餌:餌(CE-2固形飼料)及び水は自由摂取とした。
2)飼育条件
温度:24±2℃
湿度:50.0~70.0%
照明時間:12時間/日(8時から20時までの人工照明)
ケージ:アイソラック内で、プラスチックケージを用いて飼育した。
2.試薬
・PBS(-)、カタログNo.D5652-10×1L、シグマ
・Inject(登録商標)Alum Adjuvant、カタログNo.77161、THERMO SCIENTIFIC
・花粉粗抽出物、ビオスタ
・RNAlater(登録商標)Stabilization Solution、カタログNo.AM7024、Ambion(登録商標)
3.装置及び器具
・クリーンベンチ MCV91
・ボルテックスミキサー Vortex-genie2
・冷蔵庫、National NR-C374M-H
・冷凍庫、NIHON FREEZER GSS-3156HC
・マイクロピペット(P-1000、P-200、P-20)、Gilson
・冷却マイクロ遠心機 KUBOTA 5220
・37℃恒温槽 SANYO
【0030】
4.試薬調製
1)PBS(-)溶液
)PBS(-)10×conc.1容量に大塚蒸留水を9容量、無菌的に加えて調製し
た。
2)スギ花粉懸濁液
スギ花粉粗抽出物にPBSを無菌的に加え、0.2μg/mLのスギ花粉溶液を作製した。腹腔内投与用液は等量のアラムアジュバント(Inject(登録商標)Alum Adjuvant)を加え、ボルテックスで混合した。20分間振とう機で攪拌した後、試験に供試した。鼻腔内投与溶液は、等量のPBSを加え、ボルテックスで混合した。1.7mLチューブに500μLづつ分注し、使用するまで-20℃で保存した。
3)酢酸菌糖脂質懸濁液
酢酸菌糖脂質の1日摂取量が、1μg/kg/日になるように、経口投与用の懸濁液を調製した。今回試験に供試した素材の酢酸菌糖脂質配合量は、48.5μg/gであるため、素材としての摂取量は、20.7mg/kg/日となる。20.7mg/mLの懸濁液を調製し、経口投与に用いた。82.8mgの酢酸菌糖脂質を量りとり、大塚蒸留水で40mLに調製した(2.07mg/mL)。ボルテックス、ソニケーション後、2mLチューブに分注した。使用するまで-20℃で保存した。
4)そばの表層粉懸濁液
そばの表層粉(4F粉)の1日摂取量が0.2g/kg/日になるように、経口投与用の懸濁液を調製した。20mg/mLの懸濁液を調製し、経口投与に用いた。0.8gのそばの表層粉を量りとり、大塚蒸留水で40mLに調製した(0.2mg/mL)。ボルテックス、ソニケーション後、2mLチューブに分注した。使用するまで-20℃で保存した。
【0031】
5.操作及び結果
BALB/c系雌系マウスに、被験物質として、表層粉0.2g/kg/日(表層粉投与群)、酢酸菌糖脂質(陽性対照:自然免疫応用技術研(株))1μg/kg/日(酢酸菌糖脂質投与群)及び蒸留水(対照群)を2週間連日経口投与した。
30μg/マウスのスギ花粉懸濁液を、0日目(感作開始日)、3日目及び7日目の計3回腹腔内に投与し、感作開始日から14日~28日目の間、連続して0.5μg/マウスのスギ花粉懸濁液をマウスの鼻腔内に注入した。
感作開始日から35日目に、マウスの鼻腔内にスギ花粉懸濁液を注入し、30分間鼻症状を評価した。
評価方法は、投与後30分間の鼻を前足でこする行為(鼻かき)の回数及び鼻を腹部や背部にこすりつける行為(こすりつけ)の回数を目視により計測して比較した。
鼻かきの結果を
図6に示し、鼻かき+こすりつけの結果を
図7に示した。
尚、図中のグラフは平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す(*:5%有意)。
図中、花粉無感作群は、被験物質として蒸留水を投与し、スギ花粉懸濁液による感作を行わなかった群を意味する。
図6及び
図7において、対象群における鼻かきの回数及び鼻かき+こすりつけの回数が、花粉無感作群よりも有意に増加していることから花粉症の成立が確認された。
表層粉投与群及び酢酸菌糖脂質投与群は、対象群に比べて鼻かきの回数及び鼻かき+こすりつけの回数が減少する傾向が認められたものの、有意ではなかった。
上記の鼻症状の評価後から1週間の間、連続してマウスの鼻腔内にスギ花粉懸濁液を注入し、マウスの鼻腔内にスギ花粉懸濁液を注入し、40分間鼻症状(鼻かき)を評価した。
0~40分間の鼻かきの結果を
図8に示し、10~40分間の鼻かきの結果を
図9に示した。
尚、図中のグラフは平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す(**:1%水準、*:5%水準)。
図8において、表層粉投与群及び酢酸菌糖脂質投与群は、対象群に比べて鼻かきの回数を有意に減少した(p<0.05)。同様に鼻かき+こすりつけの回数も、表層粉投与群及び酢酸菌糖脂質投与群において有意に少なかった(p<0.05:図示しない。)。
開始直後から10分間は、鼻かき回数にばらつきが生じやすかったため、
図9では、この期間を除く10~40分間で解析を行った。傾向は
図8(0~40分間)と同じであったが、酢酸菌糖脂質投与群と対象群とは、1%水準で有意差が認められ(p<0.01)、表層粉投与群と対象群とは、5%水準で有意差が認められた(p<0.05)。
以上より、そばの表層粉の継続的な摂取により、スギ花粉症の予防及び/又は改善効果が期待できると考えられる。