(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】作業員状況収集システム、作業員状況収集装置及び作業員状況収集方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20120101AFI20220728BHJP
【FI】
G06Q10/10 320
(21)【出願番号】P 2018008059
(22)【出願日】2018-01-22
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501073013
【氏名又は名称】理研産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188662
【氏名又は名称】浅見 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100177895
【氏名又は名称】山田 一範
(72)【発明者】
【氏名】久保田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 祐三
(72)【発明者】
【氏名】渡鍋 誉
(72)【発明者】
【氏名】芳野 雅彦
【審査官】岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-145801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0372184(US,A1)
【文献】特開2014-199981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員が所持する無線信号発信装置と、作業員が運転する車両に搭載される端末装置と、前記端末装置と通信ネットワークを介して接続可能なサーバ装置とを備えた作業員状況収集システムであって、
前記端末装置は、
前記無線信号発信装置が発信する無線信号を受信した際の受信強度情報を受信した際の時刻情報と併せて取得する受信強度情報取得部と、
端末装置自身の現在位置を表す位置情報を取得した際の時刻情報と併せて取得するための位置情報取得部と、
前記受信強度情報と前記位置情報を前記サーバ装置に対して送信する送信部と
を備え、
前記サーバ装置は、
前記端末装置の送信部から送られてきた前記受信強度情報と前記位置情報を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記受信強度情報と前記位置情報を記憶させて収集ログ情報を作成する収集ログ情報作成部と、
前記収集ログ情報における前記位置情報の変化に基づいて前記端末装置を搭載する車両の位置と状況を判定する車両状況判定部と、
前記収集ログ情報における前記受信強度情報の変化に基づいて作業員の車両位置からの移動距離の判定及び作業員が車外に出てから戻るまでの外出時間の判定を行う作業員状況判定部と、
前記収集ログ情報と、前記車両状況判定部で判定した車両の状況と、前記作業員状況判定部で判定した作業員の状況とを用いて、当該作業員及び当該車両の作業員履歴情報を作成して出力する作業員履歴情報出力部と
を備える
作業員状況収集システム。
【請求項2】
前記作業員履歴情報出力部は、車両の移動経路と作業員が所定時間以上の外出時間を記録した位置を地図情報に重ねて出力する機能を備えている
請求項1記載の作業員状況収集システム。
【請求項3】
前記サーバ装置は、
作業員の複数の訪問先の候補についてそれぞれの位置情報と名称を予め登録して記憶させた訪問先候補リストに基づいて、前記車両状況判定部において車両が駐停車中と判定された際の車両位置情報と、前記作業員状況判定部において所定時間以上の外出時間を記録した際の作業員の車両からの移動距離の情報とを用いて前記訪問先候補リストの中から当該作業員の訪問先を推定する訪問先推定部を備え、
前記作業員履歴情報出力部は、前記訪問先推定部で推定した訪問先の情報も併せて出力するようにした
請求項1又は2に記載の作業員状況収集システム。
【請求項4】
前記端末装置は、
作業者を識別するための作業者IDと車両を識別する車両IDとを関連付けて登録するID登録処理部を備え、
ID登録処理部における登録処理が完了してから前記受信強度情報取得部における受信強度情報の受信と前記位置情報取得部における位置情報の取得を行うようにし、
前記サーバ装置において、
前記収集ログ情報作成部は、前記ID登録処理部において登録した作業者IDと車両IDとに関連付けて収集ログ情報を作成するようにし、
前記作業員履歴情報出力部は、前記作業者ID又は前記車両IDを指定して作業員履歴情報を作成する機能を備えている
請求項1から請求項3の何れかに記載の作業員状況収集システム。
【請求項5】
前記無線信号発信装置はビーコン発信機であり、
前記受信強度情報取得部は、前記ビーコン発信機からの信号の受信強度情報を取得するようにした
請求項1から請求項4の何れかに記載の作業員状況収集システム。
【請求項6】
作業員が運転する車両に搭載される端末装置からの情報に基づいて作業員の状況を収集するための作業員状況収集装置であって、
前記端末装置が作業員の所持する無線信号発信装置からの無線信号を受信した際の受信強度情報と、前記端末装置の現在位置を表す位置情報とを、それぞれを取得した時刻情報と併せて、前記端末装置から受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記受信強度情報と前記位置情報を記憶させて収集ログ情報を作成する収集ログ情報作成部と、
前記収集ログ情報における前記位置情報の変化に基づいて前記端末装置を搭載する車両の位置と状況を判定する車両状況判定部と、
前記収集ログ情報における前記受信強度情報の変化に基づいて作業員の車両位置からの移動距離の判定及び作業員が車外に出てから戻るまでの外出時間の判定を行う作業員状況判定部と、
前記収集ログ情報と、前記車両状況判定部で判定した車両の状況と、前記作業員状況判定部で判定した作業員の状況とを用いて、当該作業員及び当該車両の作業員履歴情報を作成して出力する作業員履歴情報出力部と
を備える作業員状況収集装置。
【請求項7】
作業員が運転する車両に搭載される端末装置からの情報に基づいて作業員の状況を収集する
処理をサーバ装置に実行させるための作業員状況収集方法であって、
前記端末装置が作業員の所持する無線信号発信装置からの無線信号を受信した際の受信強度情報と、前記端末装置の現在位置を表す位置情報とを、それぞれを取得した時刻情報と併せて、前記端末装置から受信する受信処理と、
前記受信処理で受信した前記受信強度情報と前記位置情報を記憶させて収集ログ情報を作成する収集ログ情報作成処理と、
前記収集ログ情報における前記位置情報の変化に基づいて前記端末装置を搭載する車両の位置と状況を判定する車両状況判定処理と、
前記収集ログ情報における前記受信強度情報の変化に基づいて作業員の車両位置からの移動距離の判定及び作業員が車外に出てから戻るまでの外出時間の判定を行う作業員状況判定処理と、
前記収集ログ情報と、前記車両状況判定
処理で判定した車両の状況と、前記作業員状況判定
処理で判定した作業員の状況とを用いて、当該作業員及び当該車両の作業員履歴情報を作成して出力する作業員履歴情報出力処理と
を含む作業員状況収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従業員の状況を詳細に把握するための作業員状況収集システム、作業員状況収集装置及び作業員状況収集方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、企業等において作業員、従業員、営業担当者等(以下、これらを代表して作業員という。)の状況を正確に把握したいというニーズがある。特に、社内に滞在する作業員の状況把握に比較して、社外へ外出している作業員の状況把握の方が難しいという問題がある。外出を要する業務としては、製品を納入した顧客先でのメンテナンス業務、顧客企業への定期訪問、新規顧客開拓のための営業訪問など、様々な業務が存在する。従来は、個々の作業員から提出される日報等によって状況を把握していた。
【0003】
ここで、作業員の状況管理を効率化して作業員の業務を支援するものとして、例えば、特許文献1が挙げられる。この特許文献1には、担当営業自身が自らの営業活動をチェックすると共に、担当営業からの日報データをインターネット等の通信網を介して管理部門に集約し、かつ集約した日報データに基づいて営業状況を把握し、あるいは担当営業に対して必要な指示を適時的確に転送することにより、担当営業の活動を支援し、顧客の信頼を確保して企業の効率的な運営を可能とした営業活動支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような営業活動支援システムを利用することで、日報の蓄積による履歴管理機能や予定表に基づくリマインダー機能などについては実現することが可能となるが、日報で把握可能な作業員の状況には限界があった。また、車両を利用して外出している作業員の状況を把握することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、従業員の状況を詳細に把握するとともに把握した状況を履歴情報として蓄積可能な作業員状況収集システム、作業員状況収集装置及び作業員状況収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業員状況収集システムは、作業員が所持する無線信号発信装置と、作業員が運転する車両に搭載される端末装置と、前記端末装置と通信ネットワークを介して接続可能なサーバ装置とを備えた作業員状況収集システムであって、前記端末装置は、前記無線信号発信装置が発信する無線信号を受信した際の受信強度情報を受信した際の時刻情報と併せて取得する受信強度情報取得部と、端末装置自身の現在位置を表す位置情報を取得した際の時刻情報と併せて取得するための位置情報取得部と、前記受信強度情報と前記位置情報を前記サーバ装置に対して送信する送信部とを備え、前記サーバ装置は、前記端末装置の送信部から送られてきた前記受信強度情報と前記位置情報を受信する受信部と、前記受信部で受信した前記受信強度情報と前記位置情報を記憶させて収集ログ情報を作成する収集ログ情報作成部と、前記収集ログ情報における前記位置情報の変化に基づいて前記端末装置を搭載する車両の位置と状況を判定する車両状況判定部と、前記収集ログ情報における前記受信強度情報の変化に基づいて作業員の車両位置からの移動距離の判定及び作業員が車外に出てから戻るまでの外出時間の判定を行う作業員状況判定部と、前記収集ログ情報と、前記車両状況判定部で判定した車両の状況と、前記作業員状況判定部で判定した作業員の状況とを用いて、当該作業員及び当該車両の作業員履歴情報を作成して出力する作業員履歴情報出力部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る作業員状況収集システムは、前記作業員履歴情報出力部は、車両の移動経路と作業員が所定時間以上の外出時間を記録した位置を地図情報に重ねて出力する機能を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る作業員状況収集システムは、前記サーバ装置は、作業員の複数の訪問先の候補についてそれぞれの位置情報と名称を予め登録して記憶させた訪問先候補リストに基づいて、前記車両状況判定部において車両が駐停車中と判定された際の車両位置情報と、前記作業員状況判定部において所定時間以上の外出時間を記録した際の作業員の車両からの移動距離の情報とを用いて前記訪問先候補リストの中から当該作業員の訪問先を推定する訪問先推定部を備え、前記作業員履歴情報出力部は、前記訪問先推定部で推定した訪問先の情報も併せて出力するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る作業員状況収集システムは、前記端末装置は、作業者を識別するための作業者IDと車両を識別する車両IDとを関連付けて登録するID登録処理部を備え、ID登録処理部における登録処理が完了してから前記受信強度情報取得部における受信強度情報の受信と前記位置情報取得部における位置情報の取得を行うようにし、前記サーバ装置において、前記収集ログ情報作成部は、前記ID登録処理部において登録した作業者IDと車両IDとに関連付けて収集ログ情報を作成するようにし、前記作業員履歴情報出力部は、前記作業者ID又は前記車両IDを指定して作業員履歴情報を作成する機能を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る作業員状況収集システムは、前記無線信号発信装置はビーコン発信機であり、前記受信強度情報取得部は、前記ビーコン発信機からの信号の受信強度情報を取得するようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る作業員状況収集装置は、作業員が運転する車両に搭載される端末装置からの情報に基づいて作業員の状況を収集するための作業員状況収集装置であって、前記端末装置が作業員の所持する無線信号発信装置からの無線信号を受信した際の受信強度情報と、前記端末装置の現在位置を表す位置情報とを、それぞれを取得した時刻情報と併せて、前記端末装置から受信する受信部と、前記受信部で受信した前記受信強度情報と前記位置情報を記憶させて収集ログ情報を作成する収集ログ情報作成部と、前記収集ログ情報における前記位置情報の変化に基づいて前記端末装置を搭載する車両の位置と状況を判定する車両状況判定部と、前記収集ログ情報における前記受信強度情報の変化に基づいて作業員の車両位置からの移動距離の判定及び作業員が車外に出てから戻るまでの外出時間の判定を行う作業員状況判定部と、前記収集ログ情報と、前記車両状況判定部で判定した車両の状況と、前記作業員状況判定部で判定した作業員の状況とを用いて、当該作業員及び当該車両の作業員履歴情報を作成して出力する作業員履歴情報出力部とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る作業員状況収集方法は、作業員が運転する車両に搭載される端末装置からの情報に基づいて作業員の状況を収集するための作業員状況収集方法であって、前記端末装置が作業員の所持する無線信号発信装置からの無線信号を受信した際の受信強度情報と、前記端末装置の現在位置を表す位置情報とを、それぞれを取得した時刻情報と併せて、前記端末装置から受信する受信処理と、前記受信処理で受信した前記受信強度情報と前記位置情報を記憶させて収集ログ情報を作成する収集ログ情報作成処理と、前記収集ログ情報における前記位置情報の変化に基づいて前記端末装置を搭載する車両の位置と状況を判定する車両状況判定処理と、前記収集ログ情報における前記受信強度情報の変化に基づいて作業員の車両位置からの移動距離の判定及び作業員が車外に出てから戻るまでの外出時間の判定を行う作業員状況判定処理と、前記収集ログ情報と、前記車両状況判定部で判定した車両の状況と、前記作業員状況判定部で判定した作業員の状況とを用いて、当該作業員及び当該車両の作業員履歴情報を作成して出力する作業員履歴情報出力処理とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両に搭載した端末装置によって車両の位置情報を取得し、また、作業員が所持する無線信号発信装置からの無線信号の受信強度情報を取得して、作業員の運転する車両の移動経路と作業員が車両から離れて外出する場合の外出時間と車両からの移動距離を把握可能としたので、車両を用いて外出する作業員の詳細な作業履歴情報を得ることが可能となる。また、車両の駐停車位置の情報と車両からの移動距離の情報に基づいて作業員の訪問先を推定して作業履歴情報に含めることができるので、作業員からの日報等の報告がない段階においても訪問先を推定することが可能となる。また、得られた作業履歴情報を地図情報に重ねて表示する機能を備えさせることで、作業員の移動経路や訪問先の情報が視覚的に分かり易く表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る作業員状況収集システムの構成の一例を表したブロック図である。
【
図2】受信強度情報と作業員状況の判定の一例を表した説明図である。
【
図3】本発明に係る作業員状況収集システムを用いて作業員履歴情報を参照する際の処理の流れの一例を表したフローチャート図である。
【
図4】作業員状況収集システムを利用する社内端末装置50などの端末のディスプレイに対して表示する参照条件の指定画面の一例を表した説明図である。
【
図5】参照条件に基づいて抽出された車両ID及び作業員IDの収集ログ情報に基づいて作成された作業員履歴情報を社内端末装置50などの端末のディスプレイに対して表示する際の表示画面の一例を表した画面図である。
【
図6】
図5の地図表示のうちB地点を含む範囲を拡大した状態の表示画面の一例を表した画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、第1の実施の形態に係る作業員状況収集システムの例について説明する。
図1は、本発明に係る作業員状況収集システムの構成の一例を表したブロック図である。この
図1に示すように、作業員状況収集システムは、作業員が所持する無線信号発信装置10と、作業員が運転する車両に搭載される端末装置20と、前記端末装置20と通信ネットワーク40を介して接続可能なサーバ装置30とを少なくとも備えている。また、サーバ装置30に対しては、通信ネットワーク40を介して接続可能な他の端末、例えば、社内に設置される社内端末装置50からアクセス可能に構成する。
【0017】
無線信号発信装置10は、外出する作業員に所持させるものであって、作業員が運転する車両に搭載される端末装置20において受信するための無線信号を発信する機能を有する。無線信号発信装置10は、端末装置20において発信する無線信号発信装置10を識別可能なID情報を付して送信する機能を有していれば様々なものが採用可能であるが、例えば、ビーコン発信機が採用され得る。
【0018】
端末装置20は、作業員が運転する車両に搭載されるものであり、
図1に示すように、ID登録処理部21と、受信強度情報取得部22と、位置情報取得部23と、送信部24とを備えている。また、図示を省略したが、各種情報を記憶させるための記憶部を備えている。なお、端末装置20は、これらの構成を備えていれば車両に固定的に設置する専用装置、例えば、カーナビゲーション装置などであってもよいし、スマートフォンのような携帯端末装置であってもよい。携帯端末装置を採用する場合には、作業員が車外へ出て外出する時にも車両内に置いたままとする必要がある。
【0019】
ID登録処理部21は、車両を運転する作業員を識別するための作業員IDと、車両を識別するための車両IDを関連付けて登録する機能を有する。このID登録処理部21において作業員IDと車両IDを関連付けて登録してから作業員は車両の運転を開始するようにする。このID登録処理部21における登録は、通信ネットワークを介してサーバ装置30に送信される。なお、このID登録処理部21は、端末装置20が備える構成として説明しているが、サーバ装置30に備える構成であってもよい。サーバ装置30に備えたID登録処理部21から端末装置20に対してID登録処理のためのグラフィカルユーザインターフェースとしての登録画面を表示させて登録処理を行うようにしてもよい。
【0020】
受信強度情報取得部22は、無線信号発信装置10から発信された無線信号を端末装置20が備える受信手段(図示省略)において受信した際の電波受信強度を表す受信強度情報を取得する機能を有する。受信強度情報の取得は、連続的に行う構成であってもよいし、所定の時間間隔毎に取得を行う構成であってもよい。
【0021】
位置情報取得部23は、車両の位置情報を表す端末装置20の位置情報を取得する機能を有する。端末装置20の位置情報の取得可能であればどのような手段であってもよいが、例えば、GPSを用いた位置情報の取得、ジャイロセンサ、加速度センサ、地磁気センサなど各種センサを用いた自律航法(DR:Dead Reckoning)による位置情報の取得、車両位置を特定するために予め定めた位置に配置されたビーコン発信機、マーカー等を用いた位置情報の取得、又は、これらの組み合わせによる位置情報の取得などが考えられる。位置情報の取得は、連続的に又は所定の時間間隔毎に行われるように予め設定する。位置情報の取得の際には取得した時刻の情報が関連付けられる。以下の説明においては、GPSを用いた位置情報の取得機能を備えている場合を例として説明を行う。
【0022】
送信部24は、端末装置20で取得した各種情報をサーバ装置30に送信する機能を有する。送信する情報としては、ID登録処理部21で登録した作業員IDと車両IDの関連付けの情報や、受信強度情報取得部22で取得した受信強度情報や、位置情報取得部23で取得した端末装置20の位置情報が挙げられる。これらの情報の送信は、それらの情報を取得する度にその都度送信する構成であってもよいし、取得した情報を所定量又は所定期間だけ蓄積してから送信する構成であってもよい。各情報を送信する際には、それらの送信する情報と作業員ID及び/又は車両IDとを関連付けて送信する。
【0023】
サーバ装置30は、
図1に示すように、受信部31と、収集ログ情報作成部32と、車両状況判別部33と、作業員状況判別部34と、訪問先推定部35と、作業員履歴情報出力部36とを備えている。また、図示を省略したが、各種情報を記憶させるための記憶部を備えている。
【0024】
受信部31は、端末装置20の送信部23から送信される受信強度情報及び位置情報を含む各種情報を受信する機能を有する。
【0025】
収集ログ情報作成部32は、受信部31で受信した受信強度情報と位置情報を記憶させて収集ログ情報を作成する機能を有する。収集ログ情報は、作業員ID及び/又は車両IDと関連付けて作成される。また、ID登録処理部21において作業員IDと車両IDの関連付けを登録した際に、その登録毎のセッションIDを設定するようにし、収集ログ情報をセッションIDと関連付けて作成するようにする。ここで、セッションIDとは、所定の区切りを1セッションとした場合におけるセッションごとに割り当てられるID情報をいう。所定の区切りは、例えば、作業員が車両に乗ってID登録処理部21による登録を行って運転を開始して会社などの所属先から外出してから運転を終了して所属先に戻るまでが該当する。或いは、同じ作業員が同じ車両を運転する状況が継続する場合には、その間は同じセッションIDを割り振るようにしてもよい。同じ日付のうちは一人の作業員が同じ車両を運転することが決まっている状況などにおいては、1日に1つのセッションIDを作業員ID及び/又は車両IDと関連付けるようにしてもよい。
【0026】
車両状況判別部33は、収集ログ情報における位置情報の変化に基づいて端末装置20を搭載する車両の位置と状況を判定する機能を有する。収集ログ情報における位置情報は連続的に又は所定の時間間隔毎に取得がなされており、また、位置情報には取得時の時刻情報が関連付けられているため、これらを繋ぎ合わせると、車両の移動経路の情報が得られる。また、位置情報には取得時の時刻情報が関連付けられていることから、過去の時刻における車両の位置を抽出することが可能となる。また、車両の位置情報の変化を分析することで、車両が移動中であるのか駐停車中であるのかを判別することが可能となる。これらの車両状況をこの車両状況判別部33において判別する。車両が移動中であるのか駐停車中であるのかの判別については、位置情報が動かないことをもって即座に駐停車中であると判断するものであってもよいが、渋滞中の場合などの位置情報は動いていないが移動中である状況を抽出できるように、直近の車両速度の履歴などから渋滞を推測するようにしてもよいし、駐停車時間が所定時間以上経過した場合のみ駐停車中と判断するようにしてもよい。なお、車両速度の情報は、位置情報の変化量から車両状況判別部33において推測するものであってもよいし、車両の速度情報を端末装置20で取得可能な構成として端末装置20から速度情報を取得するものであってもよい。
【0027】
作業員状況判別部34は、収集ログ情報における受信強度情報の変化に基づいて作業員の車両位置からの移動距離の判定及び作業員が車外に出てから戻るまでの外出時間の判定を行う機能を有する。作業員が所持する無線信号発信装置10からの無線信号を端末装置20が受信した際の受信強度情報は、作業員と車両の距離が離れるにつれて受信強度が弱まるという傾向があるため、受信強度と車両からの距離の関係性を予め登録しておくことで、受信強度情報から作業員と車両の距離を推測することが可能となる。
【0028】
図2は、受信強度情報と作業員状況の判定の一例を表した説明図である。この
図2において、縦軸は、受信強度情報から推定したビーコン発信機などの無線信号発信装置10と端末装置20との間の距離、すなわち作業員と車両の距離を表しており、横軸は、経過時間を表している。作業員状況判別部34における判定は、作業員と車両の距離が1つ目の閾値以内の場合は作業員が車両内に滞在中であると判定し、作業員と車両の距離が1つ目の閾値以上離れた場合は作業員が車両の外に出たと判定し、作業員と車両の距離が1つ目の閾値を超えて更に2つ目の閾値以上離れた場合は訪問先において作業中であると判定する、といった判定が考えられる。すなわち、外出時間を判定するための第1の閾値と、外出時間のうち訪問先での作業時間を判定するための第2の閾値を設定することが考えられる。これらの閾値を用いることにより、作業員と車両の距離が第1の閾値以上離れている期間を外出時間として判定し、作業員と車両の距離が第2の閾値以上離れている期間を訪問先での作業時間として判定することが可能となる。なお、訪問先の最寄りの駐車場が遠いなどの訪問先毎の環境、事情等に合わせて個別に第2の閾値を設定するようにしてもよい。また、作業員と車両の距離が変化してそれぞれの閾値を跨いでいる期間が短い場合には、その短期間の状況変化については判定結果に反映させないで無視するようにしてもよい。また、外出時間だけを判定して作業時間については判定の必要がない場合には、第1の閾値のみを用いて判定するようにしてもよい。
【0029】
訪問先推定部35は、訪問先候補リストの中から当該作業員の訪問先を推定する機能を有する。具体的には、作業員の複数の訪問先の候補についてそれぞれの位置情報と名称を予め登録して記憶させた訪問先候補リストに基づいて、車両状況判定部33において車両が駐停車中と判定された際の車両位置情報と、作業員状況判定部34において所定時間以上の外出時間を記録した際の作業員の車両からの移動距離の情報とを用いて訪問先候補リストの中から当該作業員の訪問先を推定する。駐停車中と判定された際の車両位置を中心として作業員の車両からの移動距離を半径とする円を想定し、当該円の内側に登録された訪問先候補が存在する場合には、その訪問先候補を訪問先の推定結果として出力する。訪問先として推定する対象は距離条件等から1つに絞り込むものであってもよいし、複数の候補をそのまま推定結果として出力するものであってもよい。同一のビルの中に訪問先候補が2以上存在する場合もあり得るため、必ずしも訪問先の推定結果を1つに絞り込む必要はない。
【0030】
作業員履歴情報出力部36は、収集ログ情報と、車両状況判定部33で判定した車両の状況と、作業員状況判定部34で判定した作業員の状況と、訪問先推定部35で推定した訪問先の情報とを用いて、当該作業員に関連した作業員履歴情報を作成して出力する機能を有する。ここで、作業員履歴情報とは、作業員が車両の運転を開始した際の履歴を記録した情報であり、車両の移動経路、車両の移動状態及び駐停車状態の判別結果、作業員が車両から離れる場合の移動距離、作業員が車両から離れている外出時間、作業員が訪問していると推定される訪問先の情報などのうち、少なくとも1以上の情報を含んだものをいう。車両状況判定部33において車両の移動経路及び駐停車位置の状況が判定され、作業員状況判定部34において作業員が外出する際の車両からの移動距離と外出時間が判定され、訪問先推定部35において駐停車時の車両位置情報と車両からの移動距離の情報に基づいて訪問先の情報が推定されるので、これらを作業員履歴情報として出力する。この作業員履歴情報出力部36における作業員履歴情報の出力は、セッション終了ごとに自動的に行って作業員履歴情報としてサーバ装置30に格納するようにしてもよいし、通信ネットワーク40を介して要求された場合に作業員履歴情報を作成して要求先に対して出力するものであってもよい。例えば、作業員の作業員ID、乗っていた車両の車両ID、セッションID、日時指定などを行うことによって、社内に設置される社内端末装置50からサーバ装置30に対して特定の作業員の作業員履歴情報を参照したいという要求がなされた場合には、その指定内容に該当する作業員履歴情報を社内端末装置50に対して送信する。また、作業員履歴情報の出力形式は、時系列に発生した状況をテキスト情報として出力するものであってもよいし、車両の移動経路、車両の駐停車位置、作業員が所定時間以上の外出時間を記録した位置、推定される訪問先の情報などを地図情報に重ねて出力するものであってもよい。
【0031】
次に、本発明に係る作業員状況収集システムを用いて作業員履歴情報を参照する際の処理の流れについて説明する。
図3は、本発明に係る作業員状況収集システムを用いて作業員履歴情報を参照する際の処理の流れの一例を表したフローチャート図である。作業員状況収集システムにおけるサーバ装置30には、過去(直前を含む)における作業員又は車両ごとの収集ログ情報が蓄積されており、この作業員状況収集システムを利用する者がサーバ装置30に対して要求を行う場合の流れについて説明する。一例として、社内端末装置50からサーバ装置30に対して要求がなされる場合を例として説明を行う。
【0032】
作業員履歴情報の参照処理は、例えば、サーバ装置30から社内端末装置50の表示画面に対して参照条件を入力するための入力フォームを表示させることで開始される。先ず、サーバ装置30は、確認したい状況を抽出するための条件の入力を受付ける(ステップS101)。社内端末装置50の操作者が表示画面に表示された入力フォームに対して作業員ID、車両ID、セッションID、日時などの参照条件を入力したものをサーバ装置30において受信する。サーバ装置30は、入力された参照条件に合致する車両ID及び従業員IDの収集ログ情報を抽出する(ステップS102)。
【0033】
次に、サーバ装置30は、抽出した収集ログ情報に基づいて、車両移動経路の情報、作業員の車外への外出時間の情報、推定される訪問先の情報などを含む作業履歴情報を作成する(ステップS103)。そして、サーバ装置30は、作成した作業履歴情報を社内端末装置50に対して出力して(ステップS104)、処理を終了する。このときの社内端末装置50に対する出力は、社内端末装置50の表示画面に対する表示も含む。
【0034】
図4は、作業員状況収集システムを利用する社内端末装置50などの端末のディスプレイに対して表示する参照条件の指定画面の一例を表した画面図である。参照条件の指定の際には、日時指定、セッションID指定、車両ID指定、作業員ID指定などの方法があり、
図4においては、これら条件の指定の方法をタブを選択して切替可能としている。
図4においては、一例として、日時指定を行う場合を示しており、ログ収集日とログ収集時間帯を指定可能とし、車両名(又は車両ID)が分かっている場合には車両名を入力可能としている。これらの条件を指定して該当する収集ログ情報が存在する場合には、その収集ログ情報が抽出される。また、収集時間帯の指定方法として、「直近10分」「直近30分」「直近60分」のボタンを画面上に配置して、これらのボタンが選択された場合には、その条件の時間指定が入力フォームに自動で入力されるようにしてもよい。なお、参照条件に合致する車両ID及び作業員IDが1つである場合にはそれに対応した収集ログ情報が抽出されるが、合致する車両ID及び作業員IDが2つ以上存在する場合には、複数の候補を社内端末装置50などの端末の表示画面に対して表示して、社内端末装置50の操作者に参照したい1つの車両ID及び作業員IDを指定させるようにしてもよい。
【0035】
図5は、参照条件に基づいて抽出された車両ID及び作業員IDの収集ログ情報に基づいて作成された作業員履歴情報を社内端末装置50などの端末のディスプレイに対して表示する際の表示画面の一例を表した画面図である。
図4の表示画面における「表示」のボタンが押された場合に、抽出した収集ログ情報を用いて作業員履歴情報を作成する。そして、作成した作業員履歴情報の出力の一手段として、
図5に示すように、地図情報の上に、該当する作業員及び車両の移動経路、訪問先情報等を重ねて表示する。
図5において、Aは作業員の所属する企業の所在地であり、Bは作業員が訪問した訪問先の所在地であるものとする。
【0036】
図6は、
図5の地図表示のうちB地点を含む範囲を拡大した状態の表示画面の一例を表した画面図である。この
図6のように、拡大表示を行った際に、車両が所定時間以上駐停車した位置には円形の表示(
図6におけるハッチング部分)を行って、操作者が駐停車箇所を認識し易いようにしてもよい。その際、駐停車時間に比例して円の半径が大きくなるようにしてもよい。また、円を表示した駐停車箇所に訪問先候補リストに含まれる訪問先候補が存在する場合には訪問先として表示するようにする。例えば、
図6のように、「[駐停車時間]15分」、「[訪問先]甲株式会社」、「[作業時間]3001 理研一郎 13分」というような表示を行って、訪問先の情報と作業時間の情報と作業員の情報を併せて表示するようにしてもよい。また、所定時間以上の駐停車を行った位置に円形の表示を行い、その円形の表示を行った箇所に訪問先が存在する場合には、円形の表示の近傍に訪問先が存在することを示すアイコン、例えばビルのアイコンを表示するようにしてもよい。これにより、ビルのアイコンが表示された箇所は訪問先の存在する箇所であるのに対して、円形の表示のみの箇所は、例えば、ガソリンの給油で駐停車した箇所や、コンビニエンスストアに立ち寄るために駐停車した箇所や、昼食のために駐停車した箇所などを表すものとして、操作者が区別して認識することが可能となる。
【0037】
以上のように、本発明に係る作業員状況収集システムによれば、車両に搭載した端末装置20が備える位置情報取得部23によって車両の位置情報を取得し、また、作業員が所持する無線信号発信装置10からの無線信号の受信強度情報を取得して、作業員の運転する車両の移動経路と作業員が車両から離れて外出する場合の外出時間と車両からの移動距離を把握可能としたので、車両を用いて外出する作業員の詳細な作業履歴情報を得ることが可能となる。また、車両の駐停車位置の情報と車両からの移動距離の情報に基づいて作業員の訪問先を推定して作業履歴情報に含めることができるので、作業員からの日報等の報告がない段階においても訪問先を推定することが可能となる。また、得られた作業履歴情報を地図情報に重ねて表示する機能を備えさせることで、作業員の移動経路や訪問先の情報が視覚的に分かり易く表示できる。
【0038】
第1の実施の形態においては、作業員状況収集システムにおける端末装置20からサーバ装置30に各種情報を送信して収集ログ情報をサーバ装置30に記憶させ、作業員履歴情報の作成もサーバ装置30で行う構成としているが、必ずしもサーバ装置30を用いた構成である必要はなく、例えば、端末装置20から社内端末装置50に直接各種情報を送信して収集ログ情報を社内端末装置50に記憶させ、作業員履歴情報の作成も社内端末装置50で行う構成としてもよい。すなわち、第1の実施の形態におけるサーバ装置30が備える構成を社内端末装置50に備えさせるようにする。この場合には、外出中には社内端末装置50との通信は行わずに、取得した位置情報や受信強度情報を端末装置20に記憶させておき、外出を終えて所属先に戻った時に社内端末装置50に接続して位置情報や受信強度情報を送信するようにしてもよい。
【0039】
第1の実施の形態においては、作業員が無線信号発信装置10を所持して車両から離れるようにし、車両内に端末装置20を置いておく構成として説明を行ったが、作業員が端末装置20を所持して車両から離れるようにし、車両内に無線信号発信装置10を置いておく構成としてもよい。このように、車両内への設置と作業員の所持の関係性を逆にしても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
第1の実施の形態においては、作業員履歴情報を自動的に作成するものであり、作業員は何ら作業を要求されないものとして説明したが、第1の実施の形態の構成に加えて、作業員自身にその日の作業履歴を記録した日報を作成させて作業員状況収集システムにおいて管理するようにしてもよい。このとき、作業員状況収集システムにおいて作成した作業員履歴情報と、作業員が入力して作成した日報とを照合する機能を備えさせ、作業員履歴情報と日報とが相違する場合を抽出可能な構成とすることも可能である。
【0041】
第1の実施の形態においてサーバ装置30の備える機能として説明したものは、必ずしも全ての機能をサーバ装置30において実行する必要はなく、一部又は全部の機能を端末装置20若しくは社内端末装置50において実行するものであってもよい。すなわち、端末装置20、サーバ装置30、社内端末装置50の各種機能のうち、他の装置に実行させることが可能な機能については、適宜機能を他の装置と入れ替えて本発明に係る作業員状況収集システムを実現可能であるものとする。
【符号の説明】
【0042】
10 無線信号発信装置
20 端末装置
21 ID登録処理部
22 受信強度情報取得部
23 位置情報取得部
24 送信部
30 サーバ装置
31 受信部
32 収集ログ情報作成部
33 車両状況判定部
34 作業員状況判定部
35 訪問先推定部
36 作業員履歴情報出力部
40 通信ネットワーク
50 社内端末装置