(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 43/046 20060101AFI20220728BHJP
A47J 43/044 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A47J43/046
A47J43/044
(21)【出願番号】P 2018028693
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】301000239
【氏名又は名称】テスコム電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】山本 勉
(72)【発明者】
【氏名】黄 四文
(72)【発明者】
【氏名】若女井 瑞樹
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0082996(US,A1)
【文献】特開2017-127574(JP,A)
【文献】特開2008-073309(JP,A)
【文献】特開2004-146241(JP,A)
【文献】特開2017-006550(JP,A)
【文献】特開2016-055069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/046
A47J 43/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧を計測可能な気圧計測部と、
調理対象物を加熱可能な加熱部と、
前記調理対象物が投入される容器と、
前記容器の少なくとも一部の温度を検出する温度検出部と、
前記気圧計測部が計測した前記大気圧に応じて、前記加熱部による前記調理対象物の加熱制御値を補正する加熱制御部と、
を有
し、
前記加熱制御部は、前記気圧計測部が計測した前記大気圧に応じて、空焚き温度閾値を補正するとともに、前記温度検出部による検出温度が所定時間に亘って補正後の空焚き温度閾値以上となった場合に、前記加熱部による加熱を停止する、
ことを特徴とする調理器。
【請求項2】
前記調理対象物の温度を計測する温度計測部をさらに有し、
前記加熱制御部は、補正後の加熱制御値と、前記温度計測部が計測した前記調理対象物の温度とに基づいて、前記加熱部による前記調理対象物の加熱を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記加熱制御値は、前記調理対象物である液体の沸点である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記調理対象物が投入される容器と、
前記容器内を減圧する減圧部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の調理器。
【請求項5】
前記減圧部は、減圧ポンプと、前記減圧ポンプと前記容器の間を連通状態又は大気開放状態で接続する吸気系とを有し、
前記気圧計測部は、前記吸気系に設けられ、前記吸気系が前記連通状態の場合に前記容器内の圧力を計測し、前記吸気系が前記大気開放状態の場合に前記大気圧を計測する、
ことを特徴とする請求項4に記載の調理器。
【請求項6】
前記吸気系が前記連通状態の場合に前記気圧計測部が計測した前記容器内の圧力に基づいた表示を実行する表示部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の調理器。
【請求項7】
前記加熱制御部は、前記温度検出部による検出温度が所定時間に亘って空焚き温度閾値以上となった場合に、空焚き警告を発生する、
ことを特徴とする
請求項1から請求項6のいずれかに記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、食品を加工する加工具が配置される収納空間を排気した状態で、モータにより回転される加工具で収納空間内の食品を加工する調理器が開示されている。調理器は、収納空間を開閉する閉じ部材と、閉じ部材で閉じられた収納空間が排気される際に収納空間から外への空気の流出を許すとともにこの逆の空気の流れを排気の後に止める逆止弁とを有している。
【0003】
一方、調理対象物が投入される容器にヒータ等の加熱部を設けて、該加熱部により調理対象物を加熱可能な調理器が知られている。例えば、調理対象物としての水を沸点まで上昇させて沸騰させ、又は、調理対象物としてのスープを飲み頃の温度まで加熱することができる。
【0004】
上記のような加熱機能付きの調理器では、加熱制御値(加熱目標値)を設定して、調理対象物や容器の温度が加熱制御値に追従するように、加熱部を加熱制御することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の鋭意研究によれば、従来の調理器は、設置場所や使用場所等の外部環境により所望の加熱制御値が変動するので、加熱制御に狂いが生じる場合があった。例えば、調理対象物としての水を沸点まで上昇させて沸騰させようとしても、外部環境により沸点が変動することで吹き零れや加熱不足が発生してしまう。
【0007】
本開示はかかる点に鑑みてなされたものであり、外部環境の影響を受けることなく調理対象物を適切に加熱制御することができる調理器を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の調理器は、大気圧を計測可能な気圧計測部と、調理対象物を加熱可能な加熱部と、前記調理対象物が投入される容器と、前記容器の少なくとも一部の温度を検出する温度検出部と、前記気圧計測部が計測した前記大気圧に応じて、前記加熱部による前記調理対象物の加熱制御値を補正する加熱制御部と、を有し、前記加熱制御部は、前記気圧計測部が計測した前記大気圧に応じて、空焚き温度閾値を補正するとともに、前記温度検出部による検出温度が所定時間に亘って補正後の空焚き温度閾値以上となった場合に、前記加熱部による加熱を停止する、ことを特徴とする。
【0009】
調理器は、前記調理対象物の温度を計測する温度計測部をさらに有し、前記加熱制御部は、補正後の加熱制御値と、前記温度計測部が計測した前記調理対象物の温度とに基づいて、前記加熱部による前記調理対象物の加熱を制御することができる。
【0010】
前記加熱制御値は、前記調理対象物である液体の沸点とすることができる。
【0011】
調理器は、前記調理対象物が投入される容器と、前記容器内を減圧する減圧部とを有することができる。
【0012】
前記減圧部は、減圧ポンプと、前記減圧ポンプと前記容器の間を連通状態又は大気開放状態で接続する吸気系とを有し、前記気圧計測部は、前記吸気系に設けられ、前記吸気系が前記連通状態の場合に前記容器内の圧力を計測し、前記吸気系が前記大気開放状態の場合に前記大気圧を計測することができる。
【0013】
調理器は、前記吸気系が前記連通状態の場合に前記気圧計測部が計測した前記容器内の圧力に基づいた表示を実行する表示部をさらに有することができる。
【0016】
前記加熱制御部は、前記温度検出部による検出温度が所定時間に亘って空焚き温度閾値以上となった場合に、空焚き警告を発生することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、外部環境の影響を受けることなく調理対象物を適切に加熱制御することができる調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態のボトルを装着した調理器の外観斜視図である。
【
図2】本実施の形態のボトルを取り外した調理器の外観斜視図である。
【
図3】本実施の形態の減圧用ボトルをセットした調理器の正面模式図である。
【
図4】本実施の形態の加熱用ボトルをセットした調理器の正面模式図である。
【
図5】本実施の形態の保存用ボトルをセットした調理器の正面模式図である。
【
図7】本実施の形態の制御回路の内部構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】標高と気圧と気温と沸点と酸素濃度の対応関係の一例を示すデータである。
【
図9】本実施の形態のイルミネーションバーの表示制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施の形態の調理器について説明する。
図1は、本実施の形態のボトルを装着した調理器の外観斜視図である。
図2は、本実施の形態のボトルを取り外した調理器の外観斜視図である。なお、本実施の形態の調理器は、複数種類のボトルをセット可能な構造であるが、
図1及び
図2では減圧用ボトルを例示して説明している。また、以下の説明では、調理器としてミキサーを例示して説明するが、例えば、本開示の技術はフードプロセッサー、スライサー、酒燗器などの種々の用途に適用可能である。
【0020】
図1に示すように、調理器1は、食材(調理対象物、調理前、調理中、調理後のいずれの段階の食材をも含み得る)が投入された減圧用ボトル(容器)70内を減圧した後、加工部材74(
図3参照)によって食材を所定粒度まで細かく加工するように構成されている。減圧用ボトル70の載置台は調理器本体10になっており、調理器本体10のケース内には加工用のモータ41や制御回路53(
図3参照)が収容されている。調理器本体10のケース正面は前方に山型に突出しており、ケース正面の斜面に操作パネル11が設けられている。操作パネル11には、動作モードやエラー等の表示ランプやモード変更やマニュアル操作で使用される各種スイッチが設けられている。
【0021】
調理器本体10の隣には半円筒状のサイドポール20が立設されており、サイドポール20のケース内には減圧用の真空ポンプ(減圧部、減圧ポンプ)42(
図3参照)、配管、配線等が収容されている。サイドポール20の正面にはイルミネーションバー(表示部)21が設けられており、イルミネーションバー21によって減圧用ボトル70の減圧状態が段階的に表示される。サイドポール20の上部には、減圧用ボトル70のボトルキャップ72に連結するアーム30が上下方向に揺動可能に支持されている。アーム30の先端側にはボトルキャップ72の上面に気密に当接する上面視円形状の当接ヘッド31が形成されている。
【0022】
調理器本体10に減圧用ボトル70がセットされると、ボトルベース73に設けられた加工部材74が調理器本体10のモータ41に連結される。詳細は図示しないが、加工部材74の回転軸に設けたカップリングとモータ41の出力軸に設けたカップリングが噛み合って機械的に連結される。減圧用ボトル70のボトルキャップ72にアーム30が接続されると、アーム30及びサイドポール20のケース内の吸気路(減圧部、吸気系)49を通じて減圧用ボトル70が真空ポンプ42に接続される。このように、調理器1には、モータ41、加工部材74、動力伝達機構によって加工機構が構成される。また真空ポンプ42と吸気路49によって、減圧用ボトル70を減圧する「減圧部」が構成されている。
【0023】
図2に示すように、調理器1はアーム30を真上に持ち上げることで、調理器本体10に対して減圧用ボトル70を着脱可能にしている。半円筒状のサイドポール20の調理器本体10側の側面22には、アーム30の外形に沿って窪んだ凹部23が形成されている。このため、アーム30が真下に降ろされると、凹部23にアーム30全体が完全に収容されて、ボトル交換時にアーム30が邪魔になることがない。凹部23の下部24はアーム30を収容した状態で隙間を残すように円弧状に切り欠かれており、隙間に指を掛けてアーム30を凹部23から引き上げることが可能になっている。
【0024】
アーム30の当接ヘッド31には環状パッド32が設けられており、アーム30が水平に倒されることで、環状パッド32がボトルキャップ72の上部に気密に当接される。環状パッド32の内側には吸気路の入口が開口しており、ボトルキャップ72の上面には減圧用ボトル70の排気路の出口が形成されている。環状パッド32によってボトルキャップ72の排気路とアーム30の吸気路が気密に連通して、減圧用ボトル70内からサイドポール20内の真空ポンプ42に空気が引き込まれる。アーム30の延在方向の途中には、アーム30を水平に倒したときにボトルキャップ72の周壁75から逃げるスリット33が形成されている。
【0025】
調理器本体10の上面には、減圧用ボトル70のボトルベース73の底面開口を内側から位置決めする矩形環状の環状凸部12が突設されている。環状凸部12はボトルベース73の開口縁に沿って形成され、環状凸部12の四隅の円弧状部分を高くしてボトルベース73をガイドさせ易くしている。環状凸部12の一辺が切り欠かれており、この切り欠き部分には加熱用ボトル80(
図4参照)に電力を供給するソケット13が設けられている。環状凸部12の内側にはカップリング用の開口14が形成されており、ボトルベース73が環状凸部12に位置決めされることで加工部材74にモータ41の出力軸が連結される。
【0026】
この調理器1は、減圧用ボトル(容器)70の他に加熱用ボトル(容器)80(
図4参照)、保存用ボトル(容器)90(
図5参照)でも使用される。加熱用ボトル80の使用時にはサイドポール20の凹部23にアーム30が収容され、加熱用ボトル80を減圧せずに食材を加熱しながら加工される。保存用ボトル90の使用時にはサイドポール20の凹部23からアーム30が引き出され、保存用ボトル90内を減圧して加工済みの食材の鮮度が長く維持される。このように、調理器1のボトルを交換することによって様々な用途に使用することが可能になっている。
【0027】
以下、
図3から
図6を参照して、本実施の形態の調理器の詳細構成について説明する。
図3は、本実施の形態の減圧用ボトルをセットした調理器の正面模式図である。
図4は、本実施の形態の加熱用ボトルをセットした調理器の正面模式図である。
図5は、本実施の形態の保存用ボトルをセットした調理器の正面模式図である。
図6は、本実施の形態の操作パネルの正面図である。なお、
図3から
図6は一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0028】
図3に示すように、調理器1には、ボトルの種類を判別するために第1の検出部43、第2の検出部44、第3の検出部45が設置されている。第1の検出部43は、例えばホール素子で構成されており、防水性を考慮して調理器本体10の上面付近でケースの内側に設置されている。第2の検出部44は、例えば機械式スイッチで構成されており、アーム30のスリット33に設置されている。第3の検出部45は、例えばホール素子で構成されており、アーム30をサイドポール20の凹部23(
図2参照)に収容したときに、加熱用ボトル80のボトルキャップ82に対向する位置に設置されている(
図4参照)。
【0029】
第1の検出部43-第3の検出部45の検出結果は判別回路(不図示)に出力され、これら検出結果の組み合わせによって判別回路でボトルの種類が判別される。このように、第1の検出部43-第3の検出部45の検出結果及び判別回路によって、ボトルの種類を判別する判別部が構成されている。調理器1では、ボトルの種類を判別することによって、ボトルの種類に応じて機能を制限することが可能になっている。ボトルの種類に応じて加熱処理や減圧処理が禁止されて、例えば、非加熱用の減圧用ボトル70に対して加熱調理が誤って実施されることが防止される。
【0030】
アーム30の当接ヘッド31内には、異物検出用の静電容量センサ47が設置されており、静電容量の変化から当接ヘッド31内の水、食材等の異物が検出される。静電容量センサ47で異常が検出されると真空ポンプ42の駆動が停止される。サイドポール20内の吸気路49の途中にはボトル内の圧力を検出する圧力センサ(気圧計測部)51が設置されており、圧力の変化から吸気路49内の水、食材等の異物が検出される。圧力センサ51で異常が検出されると真空ポンプ42の駆動が停止される。また、吸気路49の途中には大気開放弁52が設置されており、大気開放弁52の開放によって吸気路49が大気圧に戻される。
【0031】
吸気路49は、真空ポンプ42と減圧用ボトル70との間を、連通状態(真空ポンプ42による減圧状態)又は大気開放弁52による大気開放状態で接続する。吸気路49に設けられた圧力センサ(気圧計測部)51は、吸気路49が連通状態(真空ポンプ42による減圧状態)の場合に減圧用ボトル70内の圧力を計測し、吸気路49が大気開放弁52による大気開放状態の場合に大気圧(調理器1の設置場所や使用場所の気圧)を計測する。このように、吸気路49に設けた単一の圧力センサ51によって減圧用ボトル70内の圧力と大気圧を計測可能とすることで、調理器1の構造の簡単化及び省スペース化並びに低コスト化を図ることができる。
【0032】
上記したように、調理器本体10のケース内には加工部材74を回転駆動させるモータ41が設置されており、モータ41には過電流を検出する電流検出回路(不図示)が接続されている。電流検出回路でモータ41の過電流が検出されるとモータ41の駆動が停止される。
【0033】
減圧用ボトル70は、トライタン(登録商標)製のボトル本体71の上部にボトルキャップ72が装着され、ボトル本体71の底部にボトルベース73が装着されている。ボトルキャップ72には排気路が形成されており、排気路の途中にはボトル内へ逆流を防止する逆止弁が設けられている。ボトルキャップ72の外縁には周壁75が形成されており、周壁75がアーム30のスリット33に入り込むことで第2の検出部44が押し込まれる。ボトルベース73には加工部材74が回転可能に支持されると共に、第1の検出部43の検出対象となるマグネット76が設けられている。
【0034】
減圧用ボトル70の使用時には、調理器本体10上に減圧用ボトル70が設置されて、アーム30の当接ヘッド31がボトルキャップ72に当接される。これにより、ボトルベース73のマグネット76が調理器本体10の第1の検出部43に対向し、ボトルキャップ72の周壁75がアーム30のスリット33内に入り込む。第1の検出部43によってボトルベース73のマグネット76が検出されると共に、第2の検出部44によってボトルキャップ72の周壁75が検出される。第1、第2の検出部43、44がONになり、第3の検出部45がOFFになることで減圧用ボトル70が検出される。
【0035】
動作が開始されると、真空ポンプ42によって減圧用ボトル70が減圧される。このとき、減圧用ボトル70の減圧状態はサイドポール20のイルミネーションバー21に表示されている。真空ポンプ42が停止して減圧用ボトル70の減圧が完了すると、モータ41が駆動して加工部材74が回転して食材が加工される。
【0036】
図4に示すように、加熱用ボトル80は、ガラス製のボトル本体81の上部にボトルキャップ82が装着され、ボトル本体81の底部にボトルベース83が装着されている。ボトルキャップ82の外周縁には第3の検出部45の検出対象となるマグネット85が設けられている。ボトルベース83には加工部材84が回転可能に支持されると共に、第1の検出部43の検出対象となるマグネット86が設けられている。また、加熱用ボトル80の底部は熱伝導性材料で形成されている。ボトルベース83の内側には、加熱用ボトル80内で食材を加熱可能なヒータ(加熱部)87と、温度センサ(温度計測部、温度検出部)88とが設けられている。温度センサ88は、加熱用ボトル80の内部又は加熱用ボトル80の少なくとも一部の温度を検出することにより、加熱用ボトル80内の食材の温度を間接的に計測する。なお、加熱用ボトル80内の食材の温度を直接的に計測するように、温度センサ88を構成してもよい。明細書の以下では、温度センサ88による検出温度を「加熱用ボトル80の内部温度」又は「加熱用ボトル80内の食材温度」と呼ぶことがある。
【0037】
加熱用ボトル80の使用時には、アーム30がサイドポール20の凹部23(
図2参照)に収容された状態で、調理器本体10上に加熱用ボトル80が設置される。これにより、ボトルベース83のマグネット86が調理器本体10の第1の検出部43に対向し、ボトルキャップ82の外周のマグネット85がアーム30の第3の検出部45に対向する。第1の検出部43によってボトルベース83のマグネット86が検出されると共に、第3の検出部45によってボトルキャップ82のマグネット85が検出される。第1、第3の検出部43、45がONになり、第2の検出部44がOFFになることで加熱用ボトル80が検出される。
【0038】
動作が開始されると、ヒータ87によって加熱用ボトル80内が加熱される。このとき、ヒータ87のプラグが調理器本体10上のソケット13(
図2参照)に差し込まれ、調理器本体10からヒータ87に通電される。また、加熱用ボトル80の加熱状態は、減圧状態と同様にサイドポール20のイルミネーションバー21に表示されている。ヒータ87によって加熱されながら、モータ41が駆動して加工部材84によって食材が加工される。温度センサ88によって加熱用ボトル80内の温度が検出され、加熱用ボトル80内の温度に基づいてヒータ87の加熱が制御されて、加熱用ボトル80内が所定温度に維持されている。
【0039】
図5に示すように、保存用ボトル90は、樹脂製のボトル本体91の上部にボトルキャップ92が装着されている。また、保存用ボトル90の底部には底上げ用のアタッチメント93が着脱可能に取り付けられている。保存用ボトル90の使用時には、調理器本体10上にアタッチメント93を介して保存用ボトル90が設置されて、アーム30の当接ヘッド31がボトルキャップ92に当接される。保存用ボトル90には、マグネットも周壁も設けられていないため、保存用ボトル90がセットされた場合には、第1の検出部43-第3の検出部45の全てがOFFになっている。保存用ボトル90では加工や加熱は行われず、減圧動作が実施される。
【0040】
図6に示すように、操作パネル11には、動作モードランプ61a-61g、エラーランプ62a-62d、時間調整ランプ63、スピード調整ランプ64が設けられている。動作モードランプ61a-61gは図示左から豆乳モード、スープモード、ペーストモード、ナッツモード、スムージーモード、フローズンモード、マニュアルモードを示している。エラーランプ62a-62dは図示左から取付エラー、圧力エラー、食材いれ過ぎエラー、温度エラーを示している。時間調整ランプ63は時間調整モード、スピード調整ランプ64はスピード調整モードを示している。
【0041】
また、操作パネル11には、セグメントディスプレイ65、ダイヤルスイッチ66、プッシュスイッチ67a-67cが設けられている。セグメントディスプレイ65には、真空調理の加工時間がカウントダウン表示される。ダイヤルスイッチ66は動作モードの切り替えの他、動作時間の調整、スピードの調整に使用される。操作パネル11でダイヤルスイッチ66を回すことで、動作モードランプ61a-61gが順番に点灯されて動作モードが選択される。プッシュスイッチ67a-67cは図示左からフラッシュスイッチ、スタートスイッチ、リリーススイッチを示している。フラッシュスイッチは押圧中だけ攪拌動作を実施し、スタートスイッチは押圧によって各種動作を開始し、リリーススイッチは真空リリースを実施する。
【0042】
調理器1は、調理器本体10の内部に位置して調理器1の全体を統括制御する制御回路53を有している。制御回路53は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等で構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。また、メモリには、調理器1の制御プログラムの他、動作モードに応じた動作プログラム、各種パラメータ等が記憶されている。また、調理器1には、タブレット端末と無線通信可能なようにアンテナ及び送受信回路が設けられている。
【0043】
図7は、制御回路53の内部構成を示す機能ブロック図である。制御回路53は、加熱制御部53Xと表示制御部53Yを有している。
【0044】
加熱制御部53Xは、圧力センサ51が計測した大気圧に応じて、ヒータ87による調理対象物の加熱制御値を補正する。例えば、加熱制御部53Xは、圧力センサ51が計測した大気圧に応じて、調理対象物である水(液体)の沸点を補正する。
【0045】
図8は、標高(m)と気圧(hPa)と気温(℃)と沸点(℃)と酸素濃度(%)の対応関係の一例を示すデータである。加熱制御部53Xは、
図8に示すデータを保持又は参照可能に構成されている。
図8に示すように、標高が高く(低く)なるに連れて、気圧と気温と沸点と酸素濃度が低く(高く)なる傾向がある。特に、気圧と水の沸点の関係に着目すると、気圧が1002~1013hPaでは水の沸点が100℃であり、気圧が968~990hPaでは水の沸点が99℃であり、気圧が935~957hPaでは水の沸点が98℃であり、気圧が903~924hPaでは水の沸点が97℃であり、気圧が871~892hPaでは水の沸点が96℃であり、気圧が851~861hPaでは水の沸点が95℃である。すなわち、調理対象物である水の沸点は、調理器1の設置場所や使用場所等の外部環境の影響を受けて変動し得る。
【0046】
加熱制御部53Xは、例えば、気圧が1002~1013hPaのときの水の沸点である100℃を基準沸点(基準加熱制御値)として保持するとともに、圧力センサ51が計測した大気圧に応じて、基準沸点を補正する。例えば、圧力センサ51が計測した大気圧が968~990hPaの場合は“-1℃”の補正値により基準沸点を99℃に補正し、圧力センサ51が計測した大気圧が935~957hPaの場合は“-2℃”の補正値により基準沸点を98℃に補正し、圧力センサ51が計測した大気圧が903~924hPaの場合は“-3℃”の補正値により基準沸点を97℃に補正し、圧力センサ51が計測した大気圧が871~892hPaの場合は“-4℃”の補正値により基準沸点を96℃に補正し、圧力センサ51が計測した大気圧が851~861hPaの場合は“-5℃”の補正値により基準沸点を95℃に補正する。
【0047】
加熱制御部53Xによる沸点(加熱制御値)の補正処理は、例えば、調理器1の電源をOFFからONに切り換えたタイミング、調理器1の電源ON状態において所定時間間隔で訪れるタイミング、調理器1に加熱用ボトル80が設置されたこと(第1、第3の検出部43、45がONになり第2の検出部44がOFFになったこと)を判別したタイミングで実行することができる。
【0048】
加熱制御部53Xは、補正後の沸点(加熱制御値)と、温度センサ88が計測した加熱用ボトル80内の水(液体)の温度とに基づいて、ヒータ87による水の加熱を制御する。すなわち、加熱制御部53Xは、加熱用ボトル80内の水の温度が補正後の沸点になるように、ヒータ87に電力を供給するソケット13への通電量を制御する。これにより、比較的標高が低く気圧が高い場所では、比較的高めの最適沸点(例えば基準沸点である100℃)まで水を加熱して沸騰させる一方、比較的標高が高く気圧が低い場所では、比較的低めの最適沸点(例えば補正後の沸点である95~99℃)まで水を加熱して沸騰させることができ、吹き零れや加熱不足の発生を防止することができる。
【0049】
加熱制御部53Xは、加熱用ボトル80内に調理対象物が存在しないのにヒータ87によって加熱用ボトル80を加熱してしまう「空焚き」を防止する空焚き防止制御を実行する。加熱制御部53Xは、温度センサ88による検出温度が所定時間に亘って空焚き温度閾値以上となった場合に、空焚きが起こっている又は起こるおそれがあるとして、ヒータ87による加熱(ソケット13への通電)を停止する。一例として、加熱制御部53Xは、温度センサ88による検出温度が30秒以上に亘って130℃以上となった場合に、空焚きが起こっている又は起こるおそれがあるとして、ヒータ87による加熱(ソケット13への通電)を停止することができる。
【0050】
加熱制御部53Xは、圧力センサ51が計測した大気圧に応じて、上述した空焚き温度閾値を補正する。例えば、加熱制御部53Xは、基準となる空焚き温度閾値を保持した上で、圧力センサ51が計測した大気圧が低いほど空焚き温度閾値を低めに補正し、圧力センサ51が計測した大気圧が高いほど空焚き温度閾値を高めに補正することができる。
【0051】
加熱制御部53Xは、上記の空焚き防止制御によりヒータ87による加熱(ソケット13への通電)を停止するとともに、イルミネーションバー21や操作パネル11への警告表示を行い、且つ/又は、図示を省略したスピーカーによる音声警告を実行する。
【0052】
表示制御部53Yは、調理器1に減圧用ボトル70が設置されている場合にイルミネーションバー21の表示を制御する。表示制御部53Yは、吸気路49の連通状態(真空ポンプ42による減圧状態)で圧力センサ51が計測した減圧用ボトル70内の圧力に基づいた表示をイルミネーションバー21に実行させる。
【0053】
図9A~
図9Dは、本実施の形態のイルミネーションバー21の表示制御の一例を示す図である。
図9A~
図9Dに示すように、イルミネーションバー21は、下方から上方に向かって隣接配置された第1の点灯領域21Aと、第2の点灯領域21Bと、第3の点灯領域21Cと、第4の点灯領域21Dとを有している。真空ポンプ42による減圧前の段階では、減圧用ボトル70内の圧力が大気圧又はこれと同等の値であり、第1の点灯領域21A~第4の点灯領域21Dは点灯していない。真空ポンプ42による減圧を開始すると、減圧用ボトル70内の圧力が徐々に小さくなり、第1の点灯領域21A~第4の点灯領域21Dが下から上に向かって順に点灯する(
図9A~
図9D)。
図9Dの点灯状態になると、減圧用ボトル70の減圧(真空引き)が完了して、図示を省略したスピーカーによる減圧完了報告を実行してもよい。
【0054】
このように、本実施の形態では、加熱制御部53Xが、圧力センサ51が計測した大気圧に応じて、ヒータ87による調理対象物の加熱制御値(例えば沸点)を補正する。従って、外部環境の影響を受けることなく調理対象物を適切に加熱制御することが可能になる。例えば、外気圧の差異にかかわらず、調理対象物である水(液体)を加熱するヒータ87の加熱制御を安定させることができる。別言すると、設置場所や使用場所等の標高にかかわらず、高地でも低地でも好適に使用可能な調理器1を提供することができる。
【0055】
また、本開示の技術は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0056】
上記した実施の形態では、加熱制御部53Xが補正する加熱制御値が調理対象物である水(液体)の沸点である場合を例示して説明した。しかし、加熱制御部53Xが補正する加熱制御値は、沸点以外にも、例えば、調理対象物であるスープの飲み頃の温度(一例として60~65℃前後)とすることができる。
【0057】
上記した実施の形態では、吸気路49のうちサイドポール20の内部に位置する箇所に圧力センサ51を設けた場合を例示して説明したが、吸気路49のうちアーム30の内部に位置する箇所に圧力センサ51を設けることも可能である。すなわち、圧力センサ51を配置する部位には自由度があり、種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 調理器
21 イルミネーションバー(表示部)
42 真空ポンプ(減圧部、減圧ポンプ)
49 吸気路(減圧部、吸気系)
51 圧力センサ(気圧計測部)
53 制御回路
53X 加熱制御部
53Y 表示制御部
70 減圧用ボトル(容器)
80 加熱用ボトル(容器)
87 ヒータ(加熱部)
88 温度センサ(温度計測部、温度検出部)
90 保存用ボトル(容器)