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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】硬貨払出装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20220728BHJP
   G07D 1/00 20060101ALI20220728BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
G07D9/00 Z
G07D1/00 Z GBJ
E05B65/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018084110
(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公開番号】P2019191941
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】307003777
【氏名又は名称】株式会社日本コンラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100140165
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 史夫
(72)【発明者】
【氏名】林 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】小杉 真一
(72)【発明者】
【氏名】立見 裕子
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109017(JP,A)
【文献】実開昭61-112687(JP,U)
【文献】特開2007-026468(JP,A)
【文献】特開2014-021600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00-13/00
G07D 1/00- 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱機構により着脱可能に一体化された硬貨払出装置本体とベース部とを有し、
前記着脱機構は、
前記硬貨払出装置本体に上下方向に摺動可能に設けられたデタッチシャフト部材と、
前記硬貨払出装置本体の底面に設けられたラッチ受け部と、
前記ベース部に水平方向に摺動可能に設けられたスライドロックレバー部材と、
前記デタッチシャフト部材の下方向の運動を前記スライドロックレバー部材の水平方向の運動に変換するリンク機構と、を有し、
前記スライドロックレバー部材は、前記ラッチ受け部に噛み合うことのできるラッチ部を有し、前記ラッチ受け部に噛み合うようになるロック位置とその噛み合いが解除されるロック解除位置とをとることができるとともに、前記ロック位置をとるように付勢されており、
前記硬貨払出装置本体と前記ベース部とが一体化した状態で前記デタッチシャフト部材が下方向に押し下げられると、その運動が前記リンク機構を介して前記スライドロックレバー部材に伝わり、前記スライドロックレバー部材がロック解除位置をとるように移動するように構成されている
ことを特徴とする硬貨払出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の硬貨払出装置であって、
前記リンク機構は、
前記ベース部に上下方向に摺動可能に設けられたロータリープッシュ部材と、
前記ベース部にその枢軸部を中心に水平面内を回動可能に設けられたロータリーレバー部材と、を有し、
前記ロータリープッシュ部材は、前記ロータリーレバー部材の前記枢軸部の上方に、前記ロータリーレバー部材と当接するように配置されており、
前記ロータリーレバー部材は、長尺状の部材であり、その一端部付近に前記枢軸部を有し、その他端部付近に前記スライドロックレバー部材と係合する係合部を有し、
前記着脱機構は、
前記硬貨払出装置本体と前記ベース部とが一体化した状態で前記デタッチシャフト部材が下方向に押し下げられると、
前記デタッチシャフト部材の下端部が前記ロータリープッシュ部材の上面に当接して前記ロータリープッシュ部材が下方向に押し下げられ、前記ロータリープッシュ部材が押し下げられることにより、それと当接する前記ロータリーレバー部材が前記枢軸部を中心に回動し、その回動により、前記ロータリーレバー部材の前記係合部が水平面内の円弧軌道上を移動し、その前記ロータリーレバー部材の前記係合部の移動により、それと係合する前記スライドロックレバー部材が前記ロック解除位置をとるように移動するように構成されている
ことを特徴とする硬貨払出装置。
【請求項3】
請求項に記載の硬貨払出装置であって、
前記ロータリープッシュ部材は、上面を有する略円筒状の部材であり、その内壁に、前記ロータリーレバー部材に動力を伝達するための当接傾斜面が設けられた当接突起を有しており、
前記ロータリーレバー部材は、前記枢軸部が円柱突起状に形成されており、その円柱突起状に形成された前記枢軸部の側面に前記ロータリープッシュ部材から動力の伝達を受けるための当接傾斜面が設けられた当接突起を有しており、
前記ロータリープッシュ部材と前記ロータリーレバー部材とが、略円筒状の前記ロータリープッシュ部材の中心軸と略円柱突起状に形成された前記ロータリーレバー部材の前記枢軸部の中心軸とが重なるように配置されるとともに、
前記ロータリープッシュ部材の前記当接傾斜面と前記ロータリーレバー部材の前記当接傾斜面とが当接している
ことを特徴とする硬貨払出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の硬貨払出装置であって、
前記着脱機構は、
前記ベース部から取り外された前記硬貨払出装置本体が前記ベース部の上に載せられて下方に移動するにつれて、前記ラッチ受け部と前記ラッチ部との当接により、前記スライドロックレバー部材が前記ロック解除位置をとるように移動し、その後、前記ラッチ部が前記ラッチ受け部と噛み合うことができるようになると、前記スライドロックレバー部材にかけられた付勢により、前記スライドロックレバー部材が前記ロック位置をとるよう移動するように構成されている
ことを特徴とする硬貨払出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の硬貨払出装置であって、
前記硬貨払出装置本体に上方から下方にスライドさせて取り付けられるように構成された硬貨収納カセットを有する
ことを特徴とする硬貨払出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の硬貨払出装置であって、
前記硬貨収納カセットは、硬貨を金種毎に積層して収納する複数のコインチューブと、 前記複数のコインチューブに対応する複数の硬貨収容孔が設けられたペイアウトスライドとを有し、
前記硬貨払出装置本体は、前記ペイアウトスライドを引き出すことによって硬貨の払い出しを行う硬貨払出機構を有する
ことを特徴とする硬貨払出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前、レジ脇に設置される硬貨釣銭機など、通常稼働時には硬貨の払い出しのみを行う硬貨払出装置としては、硬貨の金種毎に設けられる複数の硬貨貯留ホッパーと、それらの硬貨貯留ホッパーから出力された硬貨を硬貨払出口まで搬送する硬貨搬送ベルトとを有するものが広く用いられている(特許文献1)。
【0003】
一方、通常稼働時に硬貨の払い出しのみを行う硬貨払出装置とは異なり、硬貨の受け入れ及び払い出しを同じ機会に行う自動販売機などに搭載される硬貨払出装置としては、硬貨を金種毎に積層して収納する複数のコインチューブ及びその複数のコインチューブに対応する複数の硬貨収容孔が設けられたペイアウトスライドを備えた硬貨収納カセットと、その硬貨収納カセットからペイアウトスライドを引き出すことにより硬貨を払い出す硬貨払出機構とを有するものも用いられている(特許文献2、特許文献3)。
【0004】
この種の硬貨払出装置に搭載される硬貨収納カセットは、硬貨払出装置本体から取り外し可能なカセットになっており、その最下部にペイアウトスライドが引き出し可能に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-180020号公報
【文献】特開平11-161825号公報
【文献】特開2016-062323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の硬貨貯留ホッパーを有する硬貨払出装置では、硬貨貯留ホッパーの基本的な構造上、水平方向に広いスペースが必要とされるという問題がある。また、硬貨貯留ホッパーを有する硬貨払出装置は、硬貨貯留ホッパーが主に金属材料で構成されていることから、重量が大きなものとなってしまうという問題がある。さらに、硬貨貯留ホッパーへの硬貨の補充及び回収のために硬貨払出装置が設置されている場所で行う作業に、相当程度の時間を必要とするという問題がある。
【0007】
一方、硬貨の受け入れ及び払い出しを同じ機会に行う硬貨払出装置の一部において採用されている複数のコインチューブを備えた硬貨収納カセットについては、水平方向への広いスペースを必要とせず、さらに、主にプラスチック材料で構成されていることから比較的軽量であるという利点がある。しかし、この硬貨収納カセットには、ペイアウトスライドの引き出しにより、硬貨が容易に取り出されてしまうという問題がある。このペイアウトスライドの引き出しについては、主に、外部からの衝撃によるものと、いたずらなどの人の行為によるものとが問題となる。
【0008】
この硬貨収納カセットを硬貨釣銭機などの通常稼働時に硬貨の払い出しのみを行う硬貨払出装置に適用しようとすると、そのような硬貨払出装置では頻繁な硬貨収納カセットの着脱が必要とされることから、この硬貨収納カセットに係る問題がより顕在化されることになる。さらに、そのような硬貨払出装置においては、硬貨が最大限に収納されて相当程度の重量のある硬貨収納カセットを硬貨払出装置に取り付けるのが通常である。そのため、硬貨収納カセットの硬貨払出装置への取り付け時に硬貨収納カセット及び硬貨払出装置本体に生じる衝撃も問題となる。さらに、このような硬貨払出装置においては、硬貨払出機構の定期的なメンテナンスの必要性が問題となる。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決することを課題とする。具体的には、本発明は、ペイアウトスライドの引き出しを防止でき、さらには、硬貨払出装置本体への取り付け時の衝撃を効果的に吸収する硬貨収納カセットを提供することを課題とする。また、本発明は、省スペース化を実現することができ、軽量で、硬貨の補充及び回収並びにメンテナンスが容易である硬貨払出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の硬貨払出装置は、着脱機構により着脱可能に一体化された硬貨払出装置本体とベース部とを有し、前記着脱機構は、前記硬貨払出装置本体に上下方向に摺動可能に設けられたデタッチシャフト部材と、前記硬貨払出装置本体の底面に設けられたラッチ受け部と、前記ベース部に水平方向に摺動可能に設けられたスライドロックレバー部材と、前記デタッチシャフト部材の下方向の運動を前記スライドロックレバー部材の水平方向の運動に変換するリンク機構と、を有し、前記スライドロックレバー部材は、前記ラッチ受け部に噛み合うことのできるラッチ部を有し、前記ラッチ受け部に噛み合うようになるロック位置とその噛み合いが解除されるロック解除位置とをとることができるとともに、前記ロック位置をとるように付勢されており、前記硬貨払出装置本体と前記ベース部とが一体化した状態で前記デタッチシャフト部材が下方向に押し下げられると、その運動が前記リンク機構を介して前記スライドロックレバー部材に伝わり、前記スライドロックレバー部材がロック解除位置をとるように移動するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の硬貨払出装置は、前記リンク機構は、前記ベース部に上下方向に摺動可能に設けられたロータリープッシュ部材と、前記ベース部にその枢軸部を中心に水平面内を回動可能に設けられたロータリーレバー部材と、を有し、前記ロータリープッシュ部材は、前記ロータリーレバー部材の前記枢軸部の上方に、前記ロータリーレバー部材と当接するように配置されており、前記ロータリーレバー部材は、長尺状の部材であり、その一端部付近に前記枢軸部を有し、その他端部付近に前記スライドロックレバー部材と係合する係合部を有し、前記着脱機構は、前記硬貨払出装置本体と前記ベース部とが一体化した状態で前記デタッチシャフト部材が下方向に押し下げられると、前記デタッチシャフト部材の下端部が前記ロータリープッシュ部材の上面に当接して前記ロータリープッシュ部材が下方向に押し下げられ、前記ロータリープッシュ部材が押し下げられることにより、それと当接する前記ロータリーレバー部材が前記枢軸部を中心に回動し、その回動により、前記ロータリーレバー部材の前記係合部が水平面内の円弧軌道上を移動し、その前記ロータリーレバー部材の前記係合部の移動により、それと係合する前記スライドロックレバー部材が前記ロック解除位置をとるように移動するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の硬貨払出装置は、前記ロータリープッシュ部材は、上面を有する略円筒状の部材であり、その内壁に、ロータリーレバー部材に動力を伝達するための当接傾斜面が設けられた当接突起を有しており、前記ロータリーレバー部材は、前記枢軸部が円柱突起状に形成されており、その円柱突起状に形成された前記枢軸部の側面に前記ロータリープッシュ部材から動力の伝達を受けるための当接傾斜面が設けられた当接突起を有しており、前記ロータリープッシュ部材と前記ロータリーレバー部材とが、略円筒状の前記ロータリープッシュ部材の中心軸と略円柱突起状に形成された前記ロータリーレバー部材の前記枢軸部の中心軸とが重なるように配置されるとともに、前記ロータリープッシュ部材の前記当接傾斜面と前記ロータリーレバー部材の前記当接傾斜面とが当接していることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の硬貨払出装置は、前記着脱機構は、前記ベース部から取り外された前記硬貨払出装置本体が前記ベース部の上に載せられて下方に移動するにつれて、前記ラッチ受け部と前記ラッチ部との当接により、前記スライドロックレバー部材がロック解除位置をとるように移動し、その後、前記ラッチ部が前記ラッチ受け部と噛み合うことができるようになると、前記スライドロックレバー部材にかけられた付勢により、前記スライドロックレバー部材が前記ロック位置をとるよう移動するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の硬貨払出装置は、前記硬貨払出装置本体に上方から下方にスライドさせて取り付けられるように構成された硬貨収納カセットを有することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の硬貨払出装置は、前記硬貨収納カセットは、硬貨を金種毎に積層して収納する複数のコインチューブと、 前記複数のコインチューブに対応する複数の硬貨収容孔が設けられたペイアウトスライドとを有し、前記硬貨払出装置本体は、前記ペイアウトスライドを引き出すことによって硬貨の払い出しを行う硬貨払出機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の硬貨払出装置によれば、省スペース化を実現することができ、軽量で、硬貨の補充及び回収並びにメンテナンスが容易なものとすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の硬貨収納カセットが搭載された硬貨払出装置の正面上方側斜視図である。
図2】本発明の実施形態の硬貨収納カセットが搭載された硬貨払出装置の正面下方側斜視図である。
図3】本発明の実施形態の硬貨収納カセットの硬貨払出装置本体への着脱の態様を示す正面側斜視図である。
図4】本発明の実施形態の硬貨払出装置における硬貨払出装置本体のベース部からの着脱の態様を示す正面側斜視図である。
図5】本発明の実施形態の硬貨払出装置における硬貨払出装置本体のベース部からの着脱の態様を示す背面側斜視図である。
図6】本発明の実施形態の硬貨収納カセットの正面側斜視図である。
図7】本発明の実施形態の硬貨収納カセットの背面側斜視図である。
図8】本発明の実施形態の硬貨収納カセットの背面下方側斜視図である。
図9】本発明の実施形態の硬貨収納カセットの持ち手を引き上げた状態を示した正面側斜視図である。
図10】本発明の実施形態の硬貨収納カセットのコインチューブカバーを取り外した状態を示した背面側斜視図である。
図11】本発明の実施形態の硬貨収納カセットが有するペイアウトスライドの正面側斜視図である。
図12】本発明の実施形態の硬貨収納カセットのペイアウトスライドが引き出されている状態を示した背面下方側斜視図である。
図13】本発明の実施形態の硬貨収納カセットが搭載された硬貨払出装置の正面断面図である。
図14】本発明の実施形態の硬貨収納カセットが搭載された硬貨払出装置(硬貨収納カセットを引き上げた状態)の正面断面図である。
図15】ペイアウトスライドを用いた硬貨払出機構の概念斜視図である。
図16】ペイアウトスライドを用いた硬貨払出機構の周辺の要部断面図である。
図17】ペイアウトスライドを用いた硬貨払出機構の周辺の要部断面図であって、硬貨の払い出し動作時(硬貨が払い出されない)の状態を示したものである。
図18】ペイアウトスライドを用いた硬貨払出機構の周辺の要部断面図であって、硬貨の払い出し動作時(硬貨が払い出される)の状態を示したものである。
図19】本発明の実施形態のペイアウトスライドのロック機構の要部正面図である。
図20】本発明の実施形態のペイアウトスライドのロック機構の硬貨収納カセットが硬貨払出装置本体に取り付けられる過程における要部の正面図である。
図21】本発明の実施形態のペイアウトスライドのロック機構の硬貨収納カセットが硬貨払出装置本体に取り付けられる過程における要部の正面図である。
図22】本発明の実施形態のペイアウトスライドのロック機構の硬貨収納カセットが硬貨払出装置本体に取り付けられる過程における要部の正面図である。
図23】本発明の実施形態のペイアウトスライドのロック機構の硬貨収納カセットが硬貨払出装置本体に取り付けられる過程における要部の正面図である。
図24】本発明の実施形態のペイアウトスライドのロック機構のいたずら防止のための仕組みが働いている状態における要部の正面図である。
図25】本発明の実施形態のペイアウトスライドのロック機構のいたずら防止のための仕組みが働いている状態における要部の水平断面図である。
図26】本発明の実施形態のペイアウトスライドのロック機構のいたずら防止のための仕組みが働いている状態における硬貨収納カセット本体の要部の背面図である。
図27】本発明の実施形態の硬貨払出装置のベース部の正面上方側斜視図である。
図28】本発明の実施形態の硬貨払出装置本体のベース部から取り外された状態における正面下方側斜視図である。
図29】本発明の実施形態の硬貨払出装置本体のベース部から取り外された状態における背面下方側斜視図である。
図30】本発明の実施形態の硬貨払出装置のベース部の着脱機構の要部の正面上方側斜視図である。
図31】本発明の実施形態の硬貨払出装置のベース部の着脱機構を構成する部材の分解斜視図である。
図32】本発明の実施形態のロータリープッシュ部材の下方側斜視図である。
図33】本発明の実施形態のロータリーレバー部材の上方側斜視図である。
図34】本発明の実施形態の硬貨払出装置のベース部の着脱機構の動きを示すベース部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の硬貨収納カセット及び硬貨払出装置を図面に基づいて説明する。なお、この説明においては、硬貨払出装置において硬貨収納カセットが搭載される側を正面側としている。
【0019】
図1は、この実施形態の硬貨収納カセット3が搭載された硬貨払出装置1の正面上方側の斜視図であり、図2は、その正面下方側の斜視図である。この硬貨払出装置1は、硬貨払出装置本体2と硬貨収納カセット3とベース部4とからなり、ベース部4の下面に硬貨払出口5を有している。このベース部4は、通常、ボルトなどの固定具を用いて硬貨払出装置1の設置面に固定される。
【0020】
図3は、この実施形態の硬貨収納カセット3の硬貨払出装置本体2への着脱の態様を示す正面側斜視図である。図3に示されているように、この硬貨収納カセット3は、硬貨払出装置本体2に、上方から下方にスライドさせて、取り付けられるように構成されている。つまり、この硬貨払出装置1においては、硬貨収納カセット3の着脱を硬貨払出装置1の真上のスペースのみを使用して行うことが可能となっている。この実施形態においては、硬貨収納カセット3を硬貨払出装置本体2に上方から下方にスライドさせて取り付けられるようにするために、硬貨収納カセット3の両側面に、上下方向に延びる係合溝31dが設けられ、硬貨払出装置本体2に、その係合溝31dに係合する複数の突起2aが設けられている。
【0021】
図4は、この実施形態の硬貨払出装置1における硬貨払出装置本体2のベース部4からの着脱の態様を示す正面側の斜視図であり、図5は、その背面側の斜視図である。この実施形態の硬貨払出装置1は、メンテナンスを容易にするために、設置面に固定されたベース部4への硬貨払出装置本体2の着脱を可能にするベース部の着脱機構8を有している。硬貨払出装置本体2のベース部4からの取り外しは、硬貨払出装置本体2に設けられたデタッチボタン部81aを押し下げて硬貨払出装置本体2とベース部4とのロックを解除しながら、硬貨払出装置本体2に設けられた持ち手2dをつかんで硬貨払出装置本体2を持ち上げることにより行われる。硬貨払出装置本体2のベース部4への取り付けは、ベース部4の上に硬貨払出装置本体2を載せて下方向に力を加えることにより行われる。この硬貨払出装置本体2のベース部4の着脱も、硬貨収納カセット3の着脱と同様に、硬貨払出装置1の真上のスペースのみを使用して行うことが可能となっている。
【0022】
図6は、この実施形態の硬貨収納カセット3の正面上方側の斜視図であり、図7は、その背面上方側の斜視図であり、図8は、その背面下方側の斜視図である。この硬貨収納カセット3は、持ち手36、複数のコインチューブ33、底板34、ペイアウトスライド35及び後述のペイアウトスライドのロック機構7を有している。なお、ペイアウトスライドのロック機構7は、外部から視認することができないようになっている。
【0023】
図9は、この実施形態の硬貨収納カセット3の持ち手36を引き上げた状態を示した正面側の斜視図である。この硬貨収納カセット3は、収納及び引き上げが可能な持ち手36を有している。この持ち手36により、硬貨収納カセット3の硬貨払出装置本体2への着脱や、硬貨収納カセット3の持ち運びが容易となる。
【0024】
硬貨収納カセット3の複数のコインチューブ33は、硬貨をそれぞれ金種毎に積層して収納するものである。このコインチューブ33への硬貨の出し入れは、硬貨収納カセット3からコインチューブカバー32を取り外すことによって行われる。
【0025】
図10は、この実施形態の硬貨収納カセットのコインチューブカバー32を取り外した状態を示した背面側の斜視図である。コインチューブカバー32は底部係合突起32aと側部係合突起32bと固定部32cとを有している。このコインチューブカバー32の硬貨収納カセット本体31への取り付けは、その底部係合突起32aを硬貨収納カセット本体31に設けられた係合穴31aに挿入して係合させ、その側部係合突起32bを硬貨収納カセット本体31に設けられた係合溝31bに係合させた後、その固定部32cを硬貨収納カセット本体31に設けられた固定部31cに固定させることにより行われる。コインチューブカバー32の硬貨収納カセット3からの取り外しは、その逆のプロセスにより行われる。この実施形態のコインチューブカバー32及び硬貨収納カセット本体31の固定部32c,31cは、錠前として構成されており、専用の鍵を用いて固定及びその解除が行われるようになっている。
【0026】
図11は、この実施形態の硬貨収納カセット3が有するペイアウトスライド35の正面上方側の斜視図である。このペイアウトスライド35は、複数のコインチューブ33のそれぞれに対応して設けられた複数の硬貨収容孔35aを有している。このペイアウトスライド33の複数の硬貨収容孔35aは、それぞれ対応するコインチューブ33に収納された硬貨のうちの最下層の1枚を収容する。このペイアウトスライド35は、硬貨収納カセット3が硬貨払出装置1に取り付けられているときに後述の硬貨払出機構6を構成する部材であるペイアウトリンク61のピン61b(図15参照)が係合する係合孔35cを有している。
【0027】
図12は、この実施形態の硬貨収納カセット3のペイアウトスライド35が引き出されている状態を示した背面下方側の斜視図である。このペイアウトスライド35は、硬貨払出装置1における硬貨の払い出しの際に、係合するペイアウトリンク61の動きに合わせて、引き出されることになる。このペイアウトスライド35は、付勢ばねなどの付勢手段によって、その引き出しに逆らう方向に付勢されている。なお、図12においては、説明の便宜のためにペイアウトスライド35が引き出された状態の硬貨収納カセット3を示しているが、実際は、後述のペイアウトスライドのロック機構7により、硬貨収納カセット3が硬貨払出装置1に取り付けられているとき以外には、ペイアウトスライド35を引き出すことはできない。
【0028】
図13は、この実施形態の硬貨収納カセット3が搭載された硬貨払出装置1の正面断面図であり、図14は、その硬貨収納カセット3を引き上げた状態における正面断面図である。この硬貨収納カセット3の内部には、ペイアウトスライドのロック機構7が設けられている。このペイアウトスライドのロック機構7は、セキュリティ上の観点から、不透明の外壁材などにより、外部から視認することができないようになっている。硬貨払出装置本体2の硬貨収納カセット3が取り付けられる床面上には、ペイアウトスライド35のロックの解除に用いられる複数の棒状のロック解除部材2bが設けられている。また、硬貨収納カセット3の底板34には、この複数のロック解除部材2bを硬貨収納カセット3の内部に挿入させるための複数のロック解除部材挿入孔34aが設けられている(図8参照)。
【0029】
このペイアウトスライドのロック機構7は、硬貨収納カセット3が硬貨払出装置1から取り外されているときは、ペイアウトスライド35の摺動をロックして、ペイアウトスライド35の引き出しが不可能な状態にし、硬貨収納カセット3が硬貨払出装置1に取り付けられているときは、ペイアウトスライド35の摺動のロックを解除して、ペイアウトスライド35の自在な引き出しが可能な状態にするものである。さらに、このペイアウトスライドのロック機構7は、硬貨収納カセット3を硬貨払出装置本体2に取り付ける際に生じる衝撃を効果的に吸収する機能をも有している。
【0030】
以下、この実施形態の硬貨収納カセット3が取り付けられる硬貨払出装置本体2の硬貨払出機構6、硬貨収納カセット3のペイアウトスライドのロック機構7及び硬貨払出装置1のベース部4の着脱機構8のそれぞれについて、順次、詳細に説明する。
【0031】
第一に、この実施形態の硬貨収納カセット3が取り付けられる硬貨払出装置本体2の硬貨払出機構6について説明する。
【0032】
図15は、ペイアウトスライドを用いた硬貨払出機構の概念斜視図であり、図16図17及び図18は、ペイアウトスライドを用いた硬貨払出機構の周辺の要部断面図である。図15及び図16は、硬貨の払い出し動作前の状態(以下、「待機状態」という。)を示し、図17及び図18は、硬貨の払い出し動作時の状態(以下、「払出動作状態」という。)を示している。これらの図15から図18においては、ペイアウトスライドのロック機構7の図示は省略されている。
【0033】
図15ないし図18に示す硬貨払出機構6は、図示しないモータ等の駆動手段と、ペイアウトカム62と、ペイアウトリンク61と、ペイアウトスライド35と、チェンジスライド63と、チェンジレバー64と、チェンジレバー用ソレノイド65とを有している。
【0034】
ペイアウトカム62は、その下面にペイアウトリンク61の溝61aに係合するピン62aを有し、駆動手段の駆動力により一払出動作ごとに一方向(矢印A方向)へ一回転する。ペイアウトリンク61は、ペイアウトカム62のピン62aと係合する溝61aとペイアウトスライド35の係合孔35cと着脱可能に係合するピン61bとを有し、ペイアウトカム62が一回転すると図の初期位置から矢印Bの方向へ往復移動する。ペイアウトスライド35は、ペイアウトリンク61ピン61bと着脱可能に係合する係合孔35cを有し、ペイアウトリンク61の往復運動に連動して矢印B方向へ往復移動する。
【0035】
ここで、ペイアウトスライド35の係合孔35cとペイアウトリンク61のピン61bとの係合が着脱可能となっているのは、ペイアウトスライド35が硬貨払出装置本体2に着脱可能な硬貨収納カセット3に備えられているためである。硬貨収納カセット3を硬貨払出装置本体2に取り付ける際には、硬貨収納カセット3のペイアウトスライド35の係合孔35cと硬貨払出装置本体2のペイアウトリンク61のピン61bとを係合させる。逆に、硬貨収納カセット3が硬貨払出装置本体2から取り外される際には、ペイアウトスライド35の係合孔35cとペイアウトリンク61のピン61bとの係合が解かれることになる。
【0036】
また、ペイアウトスライド35には、硬貨収納カセット3の複数のコインチューブ33に対応して、複数のコインチューブ33の各最下面に収容された硬貨を一枚だけ収容する複数の硬貨収容孔35aが形成されている。また、この硬貨収容孔35aの下方には硬貨収納カセット3の底板34が配設されており図15及び図16に示す待機状態において、この硬貨収容孔35aに収容された硬貨を支持している。
【0037】
一方、ペイアウトリンク61には、先端がペイアウトスライド35の各硬貨収容孔35aの下方に望み、それぞれの硬貨収容孔35aに一枚ずつ収容された硬貨の払出しと非払出しとを切り替えるためのチェンジスライド63が、それぞれの硬貨収容孔35aに対応して出没自在に嵌挿している。このチェンジスライド63は、ペイアウトリンク61に連動して移動するものであるが、後述のチェンジレバー64によりチェンジスライド63の移動が規制されるとペイアウトリンク61と連動しなくなる。
【0038】
それぞれのチェンジスライド63の後部には、駆動手段により上下に移動するチェンジレバー64が配設されている。このチェンジレバー64は、チェンジレバー用ソレノイド65のプランジャ先端に取り付けられており、このチェンジレバー用ソレノイド65によりチェンジレバー64の駆動手段が構成されている。チェンジレバー用ソレノイド65のプランジャは、復帰ばねによって突出方向に付勢されており、チェンジレバー用ソレノイド65への通電により、突出方向とは反対の方向へ吸引され、チェンジレバー用ソレノイド65への通電を停止すると、復帰ばねによる付勢により元の位置に戻ることになる。
【0039】
そのため、チェンジレバー用ソレノイド65のプランジャ先端に取り付けられているチェンジレバー64は、チェンジレバー用ソレノイド65への通電を停止している時は、復帰ばねの付勢力によって下方の位置をとり続け、チェンジスライド63の後端と係合してチェンジスライド63の移動を規制することになり、チェンジレバー用ソレノイド65への通電を行っている時は、上に移動して、チェンジスライド63の後端との係合が解除され、チェンジスライド63の移動を規制しないことになる。
【0040】
このチェンジスライド63、チェンジレバー64及びチェンジレバー用ソレノイド65からなる機構は、それぞれの硬貨収容孔35aに一対一に対応して設けられており、それぞれ個別に動作する。
【0041】
チェンジスライド63は、対応するチェンジレバー64と係合した状態においては、図17に示すように、ペイアウトリンク61及びペイアウトスライド35の往復移動に連動せずに待機状態の位置を維持し、払出動作状態において、対応する硬貨収容孔35aの下方を閉鎖する。他方、チェンジスライド63は、対応するチェンジレバー64との係合が解除された状態においては、図18に示すように、ペイアウトリンク61及びペイアウトスライド35の往復移動に連動して往復移動し、払出動作状態において、対応する硬貨収容孔35aの下方を解放する。
【0042】
ここで、例として、硬貨払出装置1が一つの硬貨収容孔35aに対応するコインチューブ33からのみ硬貨を払い出す場合について説明する。
【0043】
まず、払い出される硬貨の硬貨収容孔35aに対応するチェンジレバー用ソレノイド65のみに通電を行ってそのチェンジレバー64を上に移動させる。これにより、そのチェンジレバー64とチェンジスライド63との係合が解除され、ペイアウトスライド35の往復移動に連動して払い出される硬貨の硬貨収容孔に対応するチェンジスライド63が往復移動することが可能となる。他方、払い出されない硬貨の硬貨収容孔35aに対応するチェンジレバー用ソレノイド65へは通電が行われないため、そのチェンジレバー64とチェンジスライド63との係合は解除されず、払い出されない硬貨の硬貨収容孔35aに対応するチェンジスライド63の移動は規制される。
【0044】
次に、図示しないモータ等の駆動手段の駆動によりペイアウトカム62が矢印A方向に沿って一回転して、ペイアウトリンク61及びペイアウトスライド35は矢印B方向に沿って往復運動する。すると、ペイアウトスライド35のそれぞれの硬貨収容孔35aに収容された硬貨も、ペイアウトスライド35とともにスライドして、待機状態において硬貨収容孔35aに収容された硬貨を支持する底板34から外れた位置へ移動する。
【0045】
このとき、払い出される硬貨の硬貨収容孔35aに対応するチェンジスライド63はペイアウトリンク61及びペイアウトスライド35の移動に連動して後方へスライド移動しているため、その硬貨収容孔35aの下方が解放され、その硬貨収容孔35aに収容された硬貨が落下して払い出される。
【0046】
他方、払い出されない硬貨の硬貨収容孔35aに対応するチェンジスライド63はチェンジレバー64によりその移動が規制されているため、ペイアウトリンク61及びペイアウトスライド35が移動しても、待機状態の位置を維持する。そのため、ペイアウトリンク61及びペイアウトスライド35が移動したときに硬貨収容孔35aの下方にチェンジスライド63の先端が出没することになり、それにより硬貨収容孔35aに収容された硬貨が支持され、その硬貨は払い出されない。
【0047】
以上のように、この実施形態の硬貨払出装置本体2の硬貨払出機構6は、硬貨収納カセット3に設けられたペイアウトスライド35を引き出すことによって、硬貨収納カセット3のコインチューブ33に積層して収納された硬貨を払い出すように構成されている。
【0048】
第二に、この実施形態の硬貨収納カセット3のペイアウトスライドのロック機構7について説明する。
【0049】
図19は、この実施形態のペイアウトスライドのロック機構7の要部の正面図である。
【0050】
この実施形態の硬貨収納カセット3のペイアウトスライドのロック機構7は、ペイアウトスライド35に設けられたロック孔35bと、硬貨収納カセット3の内部に設けられたロック部材71、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73とを有している。この実施形態においては、ペイアウトスライドのロック機構7は、左右対称の形態を有しており、中央の第2移動規制部材73の両側のそれぞれに、その第2移動規制部材73に近い方から順に、第1移動規制部材72とロック部材71とが配置されている。
【0051】
ロック部材71は、枢着部71aと、ロック突起71bと、後述の第1移動規制部材72の係合突起72bが係合する係合孔71cと、ロック解除部材当接部71dと、を有する板状の部材である。このロック部材71は、硬貨収納カセット3の内側に枢着部71aを中心として回動可能に枢着されている。ロック部材71の係合孔71cは、略Y字型の形状をしており、第1移動規制部材72の係合突起72bが当接する第1当接部71c-1及び第2当接部71c-2と、第1移動規制部材72の係合突起72bが退避する退避部71c-3と、を有している。
【0052】
第1移動規制部材72は、枢着部72aと、ロック部材71の係合孔71cに係合する係合突起72bと、第2移動規制部材当接部72cと、ロック解除部材当接部72dと、後述の硬貨収納カセット本体2に設けられたスナップ受け部31eにスナップするスナップ部72fと、を有する板状の部材である。この第1移動規制部材72は、硬貨収納カセット3の内側に枢着部72aを中心として回動可能に枢着されている。
【0053】
第2移動規制部材73は、第1移動部材当接部73bとロック解除部材当接部73dとを有する板状の部材である。この第2移動規制部材73は、硬貨収納カセット3の内側に上下に摺動可能に取り付けられている。
【0054】
このペイアウトスライドのロック機構7は、ロック部材71に設けられたロック突起71bをペイアウトスライド35のロック孔35bに突入させてペイアウトスライド35の摺動を規制することにより、ペイアウトスライド35をロックする。このペイアウトスライド35がロックされた状態において、第1移動規制部材72は、その係合突起72bがロック部材71の係合孔71cの第1当接部71c-1に当接することにより、ロック部材71の回動を規制しており、これにより、ロック部材71を単体で動かすことができないようになっている。さらに、第2移動規制部材73は、その第1移動規制部材当接部73bが第1移動規制部材72の第2移動規制部材当接部72cに当接することにより、第1移動規制部材72の回動を規制しており、これにより、第1移動規制部材72を単体で動かすことができないようになっている。
【0055】
そのため、このペイアウトスライドのロック機構7において、ペイアウトスライド35のロックを解除する場合には、最初に、第2移動規制部材73を第1移動規制部材72の回動を規制しない状態になるように上方に摺動させ、次に、第1移動規制部材72をロック部材71の回動を規制しない状態になるように上方に回動させ、最後に、ロック部材71をロック突起71bがペイアウトスライド35のロック孔35bから退避するように上方に回動させる必要がある。
【0056】
この第2移動規制部材73の上方への移動並びに第1移動規制部材72及びロック部材71の上方への回動は、硬貨収納カセット3が硬貨払出装置本体2に取り付けられる際に下方へ移動するにともなって、これらの部材73,72,71のロック解除部材当接部71d,72d,73dが硬貨払出装置本体2に設けられた棒状のロック解除部材2bによって押し上げられることによってなされる。このロック解除部材2bは、ロック部材71、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73のそれぞれに対応して設けられており、本実施形態においては、5本のロック解除部材2bが設けられている。
【0057】
このペイアウトスライドのロック機構7のロック部材71、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73は、それぞれ、付勢ばね71e,72e,73eによって、ロック解除部材2bによる押し上げに対抗する方向に付勢がなされている。これにより、硬貨収納カセット3が硬貨払出装置本体2から取り外されているときにおいて、ペイアウトスライド35がロックされた状態を維持することができ、また、硬貨払出装置本体2に取り付けられている硬貨収納カセット3を取り外すときにおいても、取り付けるときと逆方向の動きをして、ペイアウトスライド35がロックされた状態に復帰することができる。
【0058】
さらに、ロック部材71、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73のそれぞれが付勢ばね71e,72e,73eによってロック解除部材2bによる押し上げに対抗する方向に付勢がなされていることから、硬貨収納カセット3を硬貨払出装置本体2に取り付ける際に、硬貨収納カセット3に対してそれぞれの付勢ばね71e,72e,73eにより生じる抵抗が段階的に加わっていくことになる。これにより、硬貨収納カセット3の硬貨払出装置本体2に取り付ける際に生じる衝撃を効果的に吸収することが可能となっている。
【0059】
図20から図23は、それぞれ、この実施形態のペイアウトスライドのロック機構7の硬貨収納カセット3が硬貨払出装置本体2に取り付けられる過程における要部の正面図である。図20から図23は、この順番に、硬貨収納カセット3が硬貨払出装置本体2に取り付けられる過程を示している。
【0060】
この硬貨収納カセット3が硬貨払出装置本体2に取り付けられる過程においては、ロック解除部材2bによるロック部材71、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73の押し上げが、それぞれ、適切なタイミングでなされる必要がある。このタイミングは、ロック部材71、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73それぞれのロック解除部材当接部71d,72d,73dの高さと各ロック解除部材2bの先端部の高さとを適切に設定することにより調整することが可能である。この実施形態においては、ロック解除部材2bの先端部の高さを揃える一方で、ロック部材71、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73それぞれのロック解除部材当接部71d,72d,73dの高さを異なるものとすることで、それぞれの部材71,72,73の摺動又は回動のタイミングを調整している。
【0061】
図20は、ロック解除部材2bが、第2移動規制部材73のロック解除部材当接部73dに当接し、第2移動規制部材73の押し上げを開始した時点を示している。この時点においては、第2移動規制部材73の第1移動規制部材当接部73bが第1移動規制部材72の第2移動規制部材当接部72cに当接しており、第2移動規制部材73は、第1移動規制部材72の回動を規制している状態にある。
【0062】
図21は、ロック解除部材2bが、第1移動規制部材72のロック解除部材当接部72dに当接し、第1移動規制部材72の押し上げを開始した時点を示している。この時点においては、第2移動規制部材73の第1移動規制部材当接部73bが第1移動規制部材72の第2移動規制部材当接部72cに当接しておらず、第2移動規制部材73は、第1移動規制部材72の回動の規制を解除している状態にある。一方、この時点において、第1移動規制部材72の係合突起72bがロック部材71の係合孔71cの第1当接部71c-1に当接しており、第1移動規制部材72は、ロック部材71の回動を規制している状態にある。
【0063】
図22は、ロック解除部材2bが、ロック部材71のロック解除部材当接部71dに当接し、ロック部材71の押し上げを開始した時点を示している。この時点においては、第1移動規制部材72のロック部材係合突起72bがロック部材71の係合孔71cの第1当接部71c-1に当接しておらず、第1移動規制部材72は、ロック部材71の回動の規制を解除している状態にある。
【0064】
図23は、硬貨収納カセット3が硬貨払出装置本体2に完全に取り付けられた時点を示している。この時点においては、ロック部材71のロック突起71aがペイアウトスライド35のロック孔35bから退避しており、ロック部材71は、ペイアウトスライド35のロックを解除している状態にある。また、この時点において、第1移動規制部材72の係合突起72bは、ロック部材71の係合孔71cの退避部71c-3に退避している。
【0065】
さらに、この実施形態のペイアウトスライドのロック機構7は、いたずら防止のための仕組みを有している。
【0066】
図24は、この実施形態のペイアウトスライドのロック機構7のいたずら防止のための仕組みが働いている状態における要部の正面図である。このいたずら防止のための仕組みは、硬貨収納カセット3の底板34のロック解除部材挿入孔34aから棒状の部材を挿入することにより、第2移動規制部材73を上方に移動させた後、第1移動規制部材72を上方に回動させたときに、その第1移動規制部材72を上方に回動させすぎると、第1移動規制部材72のスナップ部72fが硬貨収納カセット本体31に設けられたスナップ受け部31eにスナップしてしまうというものである。図24は、第1移動規制部材72のスナップ部72fが硬貨収納カセット本体31に設けられたスナップ受け部31eにスナップしている状態を示している。
【0067】
図25は、図24のA-A面における水平断面図である。第1移動規制部材72のスナップ部72fは、その進行方向に切り取った断面の形状が鉤状の部分を有する矢印型となるように形成されている。硬貨収納カセット本体31のスナップ受け部31eは、スナップ部72fの進行方向に進むにつれて盛り上がるような傾斜面と端壁とを有する突起として形成されている。第1移動規制部材72が上方に回動さられる際、そのスナップ部72fは、スナップ受け部31eの傾斜面に対向する領域を、その傾斜面によって正面側に押された状態で進行する。その後、スナップ部72fがスナップ受け部31eの傾斜面を乗り越えると、スナップ部は、正面側に押された状態が解かれ、その鉤状の部分がスナップ部72fの端壁と噛み合った状態となる。このように、第1移動規制部材72のスナップ部72fは、硬貨収納カセット本体31のスナップ受け部31eにスナップする。
【0068】
この第1移動規制部材72のスナップ部72fが硬貨収納カセット本体31のスナップ受け部31eにスナップしている状態においては、その第1移動規制部材72の係合突起72bがロック部材71の係合孔71cの第2当接部71c-2に当接し、ロック部材71の回動を規制している。そのため、ロック部材71を単体で動かすことができないようになっている。
【0069】
図26は、このいたずら防止のための仕組みが働いている状態における硬貨収納カセット本体31の要部の背面図である。スナップ部71fのスナップ受け部31eへのスナップを解除するためには、硬貨収納カセット3からコインチューブカバー32を取り外して、コインチューブ33の内壁のスナップ部72fに対応する部分に設けられたスナップ解除孔31fから、ピン状の物体を用いて第1移動規制部材71のスナップ部71fを押し出す必要がある。
【0070】
このいたずら防止のための仕組みにより、いたずらなどにより第1移動規制部材72が上方に回動させられたときに、第1移動規制部材72がロック部材71の回動の規制を解除している状態になった後、さらに所定の距離を押し上げられると、スナップ部72fがスナップ受け部31eにスナップするとともに、ロック部材71がペイアウトスライド35をロックした状態となる。そして、前述の方法によるスナップの解除が行われるまでの間、その状態が固定されることになる。
【0071】
以上のように、この実施形態の硬貨収納カセット3のペイアウトスライドのロック機構7は、主に、次の(1)から(6)の特徴を有するように構成されている。(1)ペイアウトスライドのロック機構7は、ロック部材71と第1移動規制部材72と第2移動規制部材73とを有している。(2)ロック部材71は、ペイアウトスライド35が引き出されないようにペイアウトスライド35をロックするロック位置と、そのロックが解除されているロック解除位置とをとることができ、第1移動規制部材72は、ロック部材71が移動しないようにロック部材71の移動を規制する移動規制位置と、その規制が解除されている移動規制解除位置とをとることができ、第2移動規制部材73は、第1移動規制部材72が移動しないように第1移動規制部材72の移動を規制する移動規制位置と、その規制が解除されている移動規制解除位置とをとることができる。(3)硬貨収納カセット3が硬貨払出装置本体2に取り付けられていないときは、ロック部材71がロック位置をとるとともに、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73がそれぞれ移動規制位置をとる。(4)硬貨収納カセット3が硬貨払出装置本体2に取り付けられるときは、ロック部材71、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73のそれぞれがそれらに対応して硬貨払出装置本体2に設けられた棒状のロック解除部材2bによって押し上げられることにより、先に第2移動規制部材73が移動規制解除位置をとるように移動し、次に第1移動規制部材72が移動規制解除位置をとるように移動し、その後にロック部材71がロック解除位置をとるように移動する。(5)ロック部材71、第1移動規制部材72及び第2移動規制部材73は、前記ロック解除部材2bによる押し上げに対抗するように付勢されている。(6)第1移動規制部材72は、硬貨収納カセット本体31に設けられたスナップ受け部31eにスナップすることのできるスナップ部72fを有し、移動規制解除位置からさらに所定の距離を押し上げられると、スナップ部72eがスナップ受け部31eにスナップするとともに、ロック部材71がロック位置から移動しないようにロック部材71の移動を規制する状態となる。
【0072】
この実施形態におけるペイアウトスライドのロック機構7は、中央の第2移動規制部材73の両側のそれぞれに、その第2移動規制部材73に近い方から順に、第1移動規制部材72とロック部材71とが配置されたものであるが、本発明のペイアウトスライドのロック機構は、この形態に限定されず、第2移動規制部材73の片側のみに第1移動規制部材72とロック部材71とが配置されたものであってもよい。しかし、この実施形態のように左右対称の形態をとることにより、ペイアウトスライドをその両端部付近でしっかりと固定でき、また、機構全体の動作の安定性を向上させることができる。
【0073】
この実施形態におけるペイアウトスライドのロック機構7は、第1移動規制部材72の移動を規制する第2移動規制部材73を有するものであるが、本発明のペイアウトスライドのロック機構は、第2移動規制部材73を有しないものとすることができる。しかし、この実施形態のように第2移動規制部材73を有するものとすることにより、ペイアウトスライド35の引き出しをより効果的に防止することができ、さらに、硬貨収納カセット3の硬貨払出装置本体2への取り付け時の衝撃吸収性を向上させることができる。
【0074】
この実施形態におけるペイアウトスライドのロック機構7は、ロック部材71に設けられたロック突起71bをペイアウトスライド35のロック孔35bに突入させてペイアウトスライド35の摺動を規制することにより、ペイアウトスライド35をロックするものであるが、本発明のペイアウトスライドのロック機構におけるペイアウトスライドのロックは、この構成に限定されず、ロック部材71がロック位置をとる際にロック部材71がペイアウトスライド35の摺動を妨げている状態となる適宜の構成を採用することができる。しかし、この実施形態のような構成とすることにより、ペイアウトスライド35及びロック部材71をよりシンプルな構造とすることができる。
【0075】
第三に、この実施形態の硬貨払出装置1のベース部4の着脱機構8について説明する。
【0076】
図27は、この実施形態の硬貨払出装置1のベース部4の正面上方側の斜視図であり、図28は、この実施形態の硬貨払出装置本体2のベース部4から取り外された状態における正面下方側の斜視図であり、図29は、この実施形態の硬貨払出装置本体2のベース部4から取り外された状態における背面下方側の斜視図であり、図30は、この実施形態の硬貨払出装置1におけるベース部4の着脱機構8の要部の正面上方側の斜視図である。
【0077】
このベース部4と硬貨払出装置本体2とは、ベース部4に備えられたスライドロックレバー部材84の4つの鉤型突起状のラッチ部84aと硬貨払出装置本体2の底面部に設けられた4つの鉤型溝状のラッチ受け部2cとが噛み合うことにより着脱可能に一体化される。ベース部4のスライドロックレバー部材84は、ベース部4に正面からみて左右方向に摺動可能に取り付けられており、そのラッチ部84aとラッチ受け部2cとを噛み合わせる位置(以下「ロック位置」という。)と、そのラッチ部84aとラッチ受け部2cとのかみ合わせが解除される位置(以下「ロック解除位置」という。)と、をとることができる。そして、このスライドロックレバー部材84は、付勢ばね84cによって、ロック位置をとる方向(正面から見て左方向。以下「ロック方向」という。)に付勢されている。
【0078】
硬貨払出装置本体2のベース部4からの取り外しは、硬貨払出装置本体2に設けられたデタッチシャフト部材81のデタッチボタン部81aを手動で押し下げることにより行う。このデタッチシャフト部材81のデタッチボタン部81aを手動で押し下げることにより、その運動が後述のベース部4のロータリープッシュ部材82とロータリーレバー部材83とを介してスライドロックレバー部材84に伝わり、スライドロックレバー部材84は、ロック解除位置をとる方向(正面から見て右方向。以下「ロック解除方向」という。)へ移動することになる。これにより、ベース部4のスライドロックレバー部材84のラッチ部84aと硬貨払出装置本体2のラッチ受け部2cとの噛み合わせが解除され、硬貨払出装置本体2をベース部4から取り外すことができるようになる。
【0079】
硬貨払出装置本体2のベース部4への取り付けは、硬貨払出装置本体2をベース部4の上部に載せることにより行う。ベース部4のスライドロックレバー部材84のラッチ部84aの上面には、ロック解除方向に進むに従って上がる(正面から見て右上がりの)傾斜面が設けられている。これにより、硬貨払出装置本体2がベース部4の上面に載せられて、そのラッチ受け部2cの溝の入口の角がスライドロックレバー部材84のラッチ部84aの傾斜面に当接して下方に移動すると、スライドロックレバー部材84に対するロック解除方向への外力が生じることになる。そして、この外力によって、スライドロックレバー部材84は、付勢ばね84cの付勢に対抗してロック解除方向に移動する。その後、硬貨払出装置本体2がさらに下方に移動すると、スライドロックレバー部材84のラッチ部84aが硬貨払出装置本体2のラッチ受け部2cと噛み合うことができるようになり、スライドロックレバー部材84は、付勢ばね84cの付勢により、ロック方向に移動してロック位置をとるようになる。これにより、スライドロックレバー部材84のラッチ部84aと硬貨払出装置本体2のラッチ受け部2cとが噛み合い、硬貨払出装置本体2とベース部4とが一体化される。
【0080】
図31は、この実施形態の硬貨払出装置1のベース部4の着脱機構8を構成する部材の分解斜視図である。この実施形態の硬貨払出装置1のベース部4の着脱機構8は、デタッチシャフト部材81とロータリープッシュ部材82とロータリーレバー部材83とスライドロックレバー部材84とを有している。そして、ロータリープッシュ部材82とロータリーレバー部材83とは、デタッチシャフト部材81の下方向への運動をスライドロックレバー部材84のロック解除方向(正面から見て右方向)への運動に変換するリンク機構を構成している。
【0081】
デタッチシャフト部材81は、デタッチボタン部81aとシャフト部81bとを有している。このデタッチシャフト部材81は、硬貨払出装置本体2に上下方向へ摺動可能に取り付けられおり、そのデタッチボタン部81aとシャフト部81bの下端部とが硬貨払出装置本体2の外部に露出している。このデタッチシャフト部材81は、付勢ばね81cにより、上方に付勢されている。そして、デタッチボタン部81aを手動で下方へ押し下げることにより、シャフト部81bの下端部が下方へ飛び出すように移動する。また、下方へ押し下げたデタッチボタン部81aから手を離すと、付勢ばね81cの付勢により、デタッチシャフト部材81は上方に移動して元の状態に戻ることになる。
【0082】
ロータリープッシュ部材82は、上面を有する略円筒状の部材である。このロータリープッシュ部材82は、その側面にベース部4本体と係合するための係合突起82aを有している。このロータリープッシュ部材82は、その係合突起82aがベース部4本体の係合溝4a(図27参照)に係合することにより、ベース部4本体に上下方向へ摺動可能に取り付けられている。また、このロータリープッシュ部材82は、後述のロータリーレバー部材83の円柱状枢軸部83aの上に、略円筒状の前記ロータリープッシュ部材の中心軸と略円柱状枢軸部の中心軸とが重なるように、配置されており、ロータリーレバー部材83の円柱状枢軸部83aの上端部付近はロータリープッシュ部材82の円筒内に進入した状態となっている。
【0083】
図32は、この実施形態におけるロータリープッシュ部材82の下方側の斜視図である。このロータリーブッシュ部材82の内壁には、ロータリーレバー部材83に動力を伝達するための略三角柱状の当接突起82bが設けられている。この当接突起82bの円筒の中心軸から見て左側の側面は、円筒の中心軸から見て左上がりの当接傾斜面82cとなっている。そして、ロータリープッシュ部材82は、この当接突起82bの当接傾斜面82cの下端部付近が後述のロータリーレバー部材83の円柱状枢軸部83aの当接突起83bの当接傾斜面83cの上端部付近と当接するように配置されている。
【0084】
ロータリーレバー部材83は、長尺状の部材であり、その一端部付近に円柱状枢軸部83aを有し、その他端部付近にスライドロックレバー部材84の係合孔84bと係合するための円柱状の係合突起83dを有している。このロータリーレバー部材83は、ベース部4本体に円柱状枢軸部83aを中心として水平面内を回動可能に取り付けられている。また、このロータリーレバー部材83の円柱状枢軸部83aの上にロータリープッシュ部材82が、略円筒状の前記ロータリープッシュ部材82の中心軸と略円柱状枢軸部83aの中心軸とが重なるように、配置されており、ロータリーレバー部材83の円柱状枢軸部83aの上端部付近はロータリープッシュ部材82の円筒内に進入した状態となっている。
【0085】
図33は、この実施形態におけるロータリーレバー部材83の上方側の斜視図である。このロータリーレバー部材83の円柱状枢軸部83aの側面には、ロータリープッシュ部材82からの動力の伝達を受けるための略三角柱状の当接突起83bが設けられている。この当接突起83bの円柱状枢軸部83aの中心軸から見て右側の側面は、円柱状枢軸部83aの中心軸から見て左上がりの当接傾斜面83cとなっている。この当接傾斜面83cの傾きは、ロータリープッシュ部材82の当接突起82bの当接傾斜面83cと当接できるようにするために、ロータリープッシュ部材82の当接突起82bの当接傾斜面82cと同じになるように設定されている。そして、ロータリーレバー部材83は、この当接突起83bの当接傾斜面83cの上端部付近が、前述のロータリープッシュ部材82の当接突起82bの当接傾斜面82cの下端部付近と当接するように配置されている。
【0086】
スライドロックレバー部材84は、長尺状の部材であり、ロータリーレバー部材83の係合突起83dと係合するための係合孔84bと硬貨払出装置本体2を固定するための4つの鉤型突起状のラッチ部84aとを有している。このスライドロックレバー部材84は、ベース部4本体に設けられた凹部4b(図27参照)に正面から見て左右方向へ摺動可能に取り付けられている。また、このスライドロックレバー部材84は、付勢ばね84cによって、ロック方向(正面から見て左側)に付勢されている。
【0087】
このスライドロックレバー部材84は、その端部付近に設けられた係合孔84bにおいて、ロータリーレバー部材83の係合突起83dと係合している。この係合孔84bは、スライドロックレバー部材84の摺動する方向に直角の方向(正面から見て前後方向)に伸びた長尺状であり、係合しているロータリーレバー部材83の係合突起83dがその長手方向に沿って移動することができるようになっている。
【0088】
図34は、この実施形態の硬貨払出装置1のベース部4の着脱機構8の動きを示すベース部4の上面図である。硬貨払出装置本体2がベース部4に固定された初期状態においては、スライドロックレバー部材84はロック位置をとっている。
【0089】
この初期状態からデタッチシャフト部材81が押し下げられると、ロータリープッシュ部材82の上面がデタッチシャフト部材81のシャフト部81bの下端部により押し下げられて、ロータリープッシュ部材82が下方へ移動する。
【0090】
ロータリープッシュ部材82が下方へ移動すると、ロータリーレバー部材83の円柱状枢軸部83aに設けられた当接突起83bの当接傾斜面83cがロータリープッシュ部材82の内壁に設けられた当接突起82bの当接傾斜面82cによって押し付けられることになる。これにより、ロータリ-レバー部材83の当接突起83bの当接傾斜面83c(円柱状枢軸部83aの中心軸から見て左上がり)には、ロータリープッシュ部材82の内壁の当接突起82bと当接する部分において、円柱状枢軸部83aの中心軸から見て左方向への外力が加えられることになる。その結果、ロータリーレバー部材83は、その円柱状枢軸部83aを中心として上から見て反時計回りに回動し、それにともなって、ロータリーレバー部材83の係合突起83dが。水平面内の円弧軌道上を、正面から見て右後方向に移動することになる。
【0091】
ロータリーレバー部材83の係合突起83dが正面から見て右後方向に移動すると、このロータリーレバー部材83の係合突起83dによってスライドロックレバー部材84の係合孔84bの内壁面が正面から見て右側に押されることになる。その結果、スライドロックレバー部材84は、ロック解除方向(正面から見て右側)へ移動し、ロック解除位置をとることになる。
【0092】
このように、スライドロックレバー部材84は、硬貨払出装置本体2がベース部4に載せられた状態においてデタッチシャフト部材81が押し下げられている間は、ロック解除位置をとるようになっている。そして、このデタッチシャフト部材81の押し下げが解除されるか、または、硬貨払出装置本体2がベース部4から離されると、スライドロックレバー部材84に外力が働くことがなくなることから、スライドロックレバー部材84は、付勢ばねの付勢力により、ロック方向への移動し、ロック位置をとることになる。
【0093】
以上のように、この実施形態の硬貨払出装置1のベース部の着脱機構8は、主に、次の(1)から(5)の特徴を有するように構成されている。(1)着脱機構8は、硬貨払出装置本体2に上下方向に摺動可能に設けられたデタッチシャフト部材81と、硬貨払出装置本体2の底面に設けられたラッチ受け部2cと、ベース部4に上下方向に摺動可能に設けられたロータリープッシュ部材82と、ベース部4にその枢軸部83aを中心に水平面内を回動可能に設けられたロータリーレバー部材83と、ベース部4に水平方向に摺動可能に設けられたスライドロックレバー部材84とを有する。(2)スライドロックレバー部材84は、ラッチ受け部2cに噛み合うことのできるラッチ部84aを有し、ラッチ受け部2cに噛み合うようになるロック位置とその噛み合いが解除されるロック解除位置とをとることができるとともに、ロック位置をとるように付勢されている。(3)ロータリープッシュ部材82は、ロータリーレバー部材83の枢軸部83aの上方に、ロータリーレバー部材83と当接するように配置されており、ロータリーレバー部材83は、その一端部付近に枢軸部83aを有し、その他端部付近にスライドロックレバー部材84と係合する係合部83dを有する。(4)着脱機構8は、硬貨払出装置本体2とベース部4とが一体化した状態でデタッチシャフト部材81が下方向に押し下げられると、デタッチシャフト部材81の下端部がロータリープッシュ部材82の上面に当接してロータリープッシュ部材81が下方向に押し下げられ、ロータリープッシュ部材81が押し下げられることにより、それと当接するロータリーレバー部材83がその枢軸部83aを中心に回動し、その回動により、ロータリーレバー部材83の係合部83dが水平面内の円弧軌道上を移動し、そのロータリーレバー部材83の係合部83dの移動により、それと係合するスライドロックレバー部材84がロック解除位置をとるように移動するように構成されている。(5)着脱機構8は、ベース部4から取り外された硬貨払出装置本体2がベース部4の上に載せられると、硬貨払出装置本体2が下方に移動するにつれて、硬貨払出装置本体2のラッチ受け部2cとスライドロックレバー部材84のラッチ部84aとの当接により、スライドロックレバー部材84がロック解除位置をとるように移動し、その後、スライドロックレバー部材84のラッチ部84aが硬貨払出装置本体2のラッチ受け部2cと噛み合うことができるようになると、前記スライドロックレバー部材にかけられた付勢により、スライドロックレバー部材84がロック位置をとるよう移動するように構成されている。
【0094】
この実施形態の硬貨払出装置1のベース部4の着脱機構8においては、デタッチシャフト部材81の下方向の運動を、ロータリープッシュ部材82とロータリーレバー部材83とを有するリンク機構を用いることにより、水平面内の円運動を介して、スライドロックレバー部材84の右方向の運動に変換しているが、本発明のベース部着脱機構におけるリンク機構は、そのような態様に限定されず、デタッチシャフト部材81の下方向の運動をスライドロックレバー部材84の右方向の運動に変換する適宜の機構を採用することができる。しかし、この実施形態におけるリンク機構のように、下方向の運動を水平面内の円運動にする変換は、水平面内における偏りのない対称的な変換となっており、これにより、バランスが良く信頼性のある機構を実現することが可能となる。
【0095】
この実施形態のベース部の着脱機構8においては、ロータリープッシュ部材82の当接突起82bとロータリ-レバー部材83の当接突起83bとの両方が当接傾斜面82c,83cを有しており、その当接傾斜面82c,83cどうしが当接するように構成されている。しかし、動力を伝達するためには、両方の当接突起82b,83bが当接傾斜面を有している必要はなく、いずれかの当接突起82b,83bが当接傾斜面を有し、他方の当接突起83b,82bの一部がその当接傾斜面に当接するように構成されていればよい。ただし、この実施形態のように両方の当接突起82b,83bの当接傾斜面82c,83cどうしが当接するように構成することにより、当接傾斜面82c,83cの広い範囲に亘って力が分散して加わることになるので、ベース部着脱機構8のより滑らかな動きが実現できる。
【0096】
上述の実施形態の硬貨収納カセット3によれば、ペイアウトスライド35の引き出しを防止でき、さらには、硬貨払出装置本体2への取り付け時の衝撃を効果的に吸収することが可能である。また、上述の実施形態の硬貨払出装置1によれば、省スペース化を実現することができ、軽量で、硬貨の補充及び回収並びにメンテナンスが容易なものとすることが可能である。
【0097】
以上、本発明の実施形態の1つについて説明したが、本発明の硬貨収納カセット及び硬貨払出装置はこの実施形態に限定されるものではない。本発明の硬貨収納カセット及び硬貨払出装置は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
1 硬貨払出装置
2 硬貨払出装置本体
2a 硬貨収納カセットへの係合突起
2b ロック解除部材
2c ラッチ受け部
2d 持ち手部
3 硬貨収納カセット
31 硬貨収納カセット本体
31a コインチューブカバー底部への係合穴
31b コインチューブカバー側部への係合溝
31c コインチューブカバーへの固定部
31d 硬貨払出装置本体への係合溝
31e スナップ受け部
31f スナップ解除孔
32 コインチューブカバー
32a 底部係合突起
32b 側部係合突起
32c 固定部
33 コインチューブ
34 底板
34a ロック解除部材挿入孔
35 ペイアウトスライド
35a 硬貨収容孔
35b ロック孔
35c ペイアウトリンクへの係合孔
36 持ち手
4 ベース部
5 硬貨払出口
6 硬貨払出機構
61 ペイアウトリンク
61a ペイアウトカムのピンが係合する溝
61b ペイアウトスライドが係合するピン
62 ペイアウトカム
62a ペイアウトリンクの溝に係合するピン
63 チェンジスライド
64 チェンジレバー
65 チェンジレバー用ソレノイド
7 ペイアウトスライドのロック機構
71 ロック部材
71a 枢着部
71b ロック突起
71c 第1移動規制部材への係合孔
71c-1 第1当接部
71c-2 第2当接部
71c-3 退避部
71d ロック解除部材当接部
71e 付勢ばね
72 第1移動規制部材
72a 枢着部
72b ロック部材への係合突起
72c 第2移動規制部材当接部
72d ロック解除部材当接部
72e 付勢ばね
72f スナップ部
73 第2移動規制部材
73b 第1移動規制部材当接部
73d ロック解除部材当接部
73e 付勢ばね
8 ベース部の着脱機構
81 デタッチシャフト部材
81a デタッチボタン部
81b シャフト部
81c 付勢ばね
82 ロータリープッシュ部材
82a ベース本体への係合突起
82b ロータリーレバー部材への当接突起
82c 当接傾斜面
83 ロータリーレバー部材
83a 円柱状枢軸部
83b ロータリープッシュ部材への当接突起
83c 当接傾斜面
83d スライドロック部材への係合突起
84 スライドロックレバー部材
84a ラッチ部
84b ロータリーレバー部材への係合孔
84c 付勢ばね
図1
図2
図3
図4
図5
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