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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】煙突体
(51)【国際特許分類】
   F23J 13/04 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
F23J13/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018102251
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019207065
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390030465
【氏名又は名称】株式会社新宮商行
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】金森 正己
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 英明
(72)【発明者】
【氏名】村山 靖之
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-124827(JP,A)
【文献】特開2004-77046(JP,A)
【文献】登録実用新案第3176030(JP,U)
【文献】実開昭55-141736(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169432(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0257487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の筒部材を有し、一つの前記筒部材に設けられた雄ねじ部が、他の前記筒部材に設けられた雌ねじ部に螺合されることで連結される煙突体であって、
前記雄ねじ部が、雄筒状部と、該雄筒状部の周方向に間隔をあけて複数設けられ、かつ、前記雄筒状部の外面に形成された雄突起部と、を有し、
前記雌ねじ部が、雌筒状部と、該雌筒状部の内面に形成されて前記雄突起部に係合する少なくとも1つの雌突起部と、を有し、
前記雄突起部が、前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の螺合方向の奥側に進むにしたがって前記雄筒状部の基端に近付く第1勾配部と、該第1勾配部の螺合方向の奥側に連続されて前記第1勾配部より大きい勾配を有する第2勾配部と、を有し、
前記第1勾配部及び前記第2勾配部における前記雄筒状部の先端側の各面に摺動されて、前記雌突起部が螺合方向の奥側かつ前記第1勾配部の前記雄筒状部における基端側に案内され、螺合方向の奥側に位置する前記第1勾配部に係合することを特徴とする煙突体。
【請求項2】
前記第1勾配部は、前記雄筒状部の周方向に沿う仮想線に対する角が、3度~7度の範囲内となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の煙突体。
【請求項3】
前記第2勾配部は、前記雄筒状部の周方向に沿う仮想線に対する角が、30度~60度の範囲内となるように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の煙突体。
【請求項4】
前記雌突起部は、その一部が切り欠かれ、切り欠かれることで形成された切断端縁を有し、
前記切断端縁が前記第1勾配部の前記雄筒状部における基端側の面に当接することを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載の煙突体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、暖炉等の煙を屋外に導くためのものであり、複数のユニット(筒部材)を連続的に接続することにより、所定長さになるように複数のユニットが連結された煙突(煙突体)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の従来の煙突は、筒状の上側ユニット及び筒状の下側ユニットを有し、上側ユニットの下端部に設けられた第1接続環と、下側ユニットの上端部に設けられた第2接続環と、が接続され、上側ユニット及び下側ユニットが連結されることで構成されている。
【0004】
第1接続環の周壁内面には、その上面が水平面に対して傾斜している第1突起が形成されている。第2接続環の周壁外面には、その下面が水平面に対して第1突起の上面と同一の角度で接触するように傾斜した第2突起が形成されている。
【0005】
このような第1接続環と第2接続環を接続する際は、第1接続環の内周を第2接続環の外周に嵌合させた後、上側ユニットを締める方向に回転させることにより、第1突起の上面に第2突起の下面を摺動させ、第1接続環及び第2接続環を互いに引き寄せて、第1突起及び第2突起を係合させる。こうして、第1接続環と第2接続環を接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-228165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の煙突は、第1接続環の内周を第2接続環の外周に嵌合させた後、上側ユニットを締める方向に回転させることにより、第1突起の上面に第2突起の下面を摺動させ、第1接続環及び第2接続環を互いに引き寄せて、第1突起及び第2突起を係合させるように締め付けるものであるが、煙突を構成する上側ユニット及び下側ユニットは、重量があり、サイズが大きく持ち難いため、上側ユニット及び下側ユニットのうち一方を他方に対して回転させ難く、組立て作業効率が悪かった。
【0008】
本発明の目的は、組立て作業効率の向上を図った煙突体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の筒部材を有し、一つの前記筒部材に設けられた雄ねじ部が、他の前記筒部材に設けられた雌ねじ部に螺合されることで連結される煙突体であって、前記雄ねじ部が、雄筒状部と、該雄筒状部の周方向に間隔をあけて複数設けられ、かつ、前記雄筒状部の外面に形成された雄突起部と、を有し、前記雌ねじ部が、雌筒状部と、該雌筒状部の内面に形成されて前記雄突起部に係合する少なくとも1つの雌突起部と、を有し、前記雄突起部が、前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部の螺合方向の奥側に進むにしたがって前記雄筒状部の基端に近付く第1勾配部と、該第1勾配部の螺合方向の奥側に連続されて前記第1勾配部より大きい勾配を有する第2勾配部と、を有し、前記第1勾配部及び前記第2勾配部における前記雄筒状部の先端側の各面に摺動されて、前記雌突起部が螺合方向の奥側かつ前記第1勾配部の前記雄筒状部における基端側に案内され、螺合方向の奥側に位置する前記第1勾配部に係合することを特徴とする。
【0010】
以上のような本発明によれば、雄ねじ部が、雄筒状部と、該雄筒状部の周方向に間隔をあけて複数設けられ、かつ、雄筒状部の外面に形成された雄突起部と、を有し、雌ねじ部が、雌筒状部と、該雌筒状部の内面に形成されて雄突起部に係合する少なくとも1つの雌突起部と、を有し、雄突起部が、雄ねじ部及び雌ねじ部の螺合方向の奥側に進むにしたがって雄筒状部の基端に近付く第1勾配部と、該第1勾配部の螺合方向の奥側に連続されて第1勾配部より大きい勾配を有する第2勾配部と、を有し、第1勾配部及び第2勾配部における雄筒状部の先端側の各面に摺動されて、雌突起部が螺合方向の奥側に案内され、螺合方向の奥側に位置する第1勾配部の雄筒状部の基端側の面に係合する。即ち、雄ねじ部を雌ねじ部に近付けて内挿した状態で、雌ねじ部が雄ねじ部に対して螺合されることで、雌突起部が雄突起部の第1勾配部における雄筒状部の先端側の面(上面)に摺接されて螺合方向の奥側に案内される。さらに螺合方向の奥側に移動されるに伴って、雌突起部は、第1勾配部の上面に連続される第2勾配部の上面に移動し、さらに、螺合方向の奥側に摺接案内されて、螺合方向の奥側に位置する第1勾配部の雄筒状部の基端側の面に係合するが、第1勾配部より大きい勾配を有する第2勾配部が設けられていることにより、落下エネルギーの一部を螺合方向に転換することがでるから、螺合方向の奥側に向かう移動速度(回転速度)を速くすることができる。ここで、従来技術は、第2勾配部を有していないので、雌突起部が第1勾配部の螺合方向の奥側に移動した際に、真下に落下する。このため、螺合方向の奥側に向かう移動速度(回転速度)を速くすることができないが、本発明によれば、第1勾配部より大きい勾配を有する第2勾配部が設けられていることにより、螺合方向の奥側に向かう移動速度(回転速度)を速くすることができる。これにより、雌突起部が、螺合方向の奥側に位置する第1勾配部の雄筒状部の基端側の面に係合する際の移動(締付け)が促進される。
【0011】
また、第1勾配部は、雄筒状部の周方向に沿う仮想線に対する角が、3度~7度の範囲内となるように形成されていることが好ましい。即ち、第1勾配部は、雄筒状部の周方向に沿う仮想線に対する角度が小さくなるほど、係合した際に緩み難くなるが、雄突起部と雌突起部の高さ方向(筒部材の軸方向)の形成位置の正確性が求められる。つまり、第1勾配部は、雄筒状部の周方向に沿う仮想線に対する角が1度または2度であった場合には、雄突起部及び雌突起部の高さ位置が少しでもずれると突起部同士が衝突し、逆に離れすぎると係合せずに空回りする可能性がある。このため、雄筒状部の周方向に沿う仮想線に対する角は3度以上であり、より好ましくは、4度~5度の範囲内となるように形成されているのがよい。これによれば、雄突起部及び雌突起部の係合が緩み難いものとされる。
【0012】
また、雌突起部は、その一部が切り欠かれ、切り欠かれることで形成された切断端縁を有し、切断端縁が第1勾配部の雄筒状部における基端側の面に当接することが好ましい。これによれば、切断端縁が第1勾配部の雄筒状部における基端側の面に当接することで、摩擦により雄突起部及び雌突起部の係合がより一層、緩み難いものとされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の煙突体によれば、組立て作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態の煙突体を含んだ暖房システムを示す図であり、(A)は、斜視図であり、(B)は、背面図であり、(C)は、側面図であり、(D)は、正面図である。
図2】前記煙突体が壁部に取り付けられた状態を示す斜視図である。
図3】前記煙突体の分解斜視図である。
図4】前記煙突体を構成する取付け部材の分解斜視図である。
図5】前記煙突体を構成する筒部材の一部を切り欠いた側面図である。
図6図5に示された筒部材の要部を拡大して示す図である。
図7】前記煙突体を構成する雄ねじ部及び雌ねじ部の一部断面を示す斜視図である。
図8】前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部が螺合された状態を示す断面図である。
図9】前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部が螺合された状態の一部断面を示す斜視図である。
図10】前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部が螺合されて、2個の筒部材が連結した状態を示す斜視図である。
図11図10に示された2個の筒部材が取付け部材を介して壁部に取り付けられた状態を示す図である。
図12図11に示された2個の筒部材にロッキングバンドが取り付けられた状態を示す図である。
図13】前記煙突体の変形例を示す正面図である。
図14】前記煙突体の他の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係る煙突体を有する暖房システムについて図1図12を参照して説明する。この暖房システムは、家屋内における暖房のために用いられるものである。暖房システムは、図1図2に示すように、燃料を燃焼させるための燃焼室10と、燃料の燃焼に必要な空気を燃焼室10の内部に取り込む不図示の給気口と、燃焼室10において生じた煙やガスを家屋外に排出するために煙を通過させる直線状の煙突体1と、家屋内外を仕切る壁部Wに煙突体1を挿入支持して取り付ける取付け部材9と、を有して構成されている。なお、本実施形態の煙突体1は、直線状に設けられているが、燃焼室10の設置場所に応じて適宜屈曲されていてもよい。
【0016】
煙突体1は、図3図10に示すように、複数(図示例では2個)の筒部材2A、2Bと、2個の筒部材2A、2Bの連結部20(図10に示す)に巻かれるロッキングバンド3と、を有して構成されている。本実施形態では、図3に示すように、2個の筒部材2A、2Bは、略同一構造乃至略同一機能を有して構成されている。2個の筒部材2A、2Bのうち、上方に位置する一方を「上側筒部材2A」と記し、下方に位置する他方を「下側筒部材2B」と記す場合がある。下側筒部材2Bの上端部には、雄ねじ部4が設けられ、上側筒部材2Aの下端部には、雄ねじ部4を螺合させる雌ねじ部6が設けられている。なお、本実施形態において、「螺合」とは、雄ねじ部4の(後述する)雄突起部5と雌ねじ部6の(後述する)雌突起部7が係合することと同義であり、雄突起部5に雌突起部7が弾性的に当接した状態のことである。また、雌ねじ部6は雄ねじ部4に対して、上から見て時計回りに回転されることで螺合される。また、上から見て時計回りの方向を「螺合方向R」と記す場合がある。雄ねじ部4に雌ねじ部6が螺合されることで2個の筒部材2A、2Bが連結されて連結部20が形成される。即ち、上側筒部材2A及び下側筒部材2Bは連結部20で連結される。また、本実施形態では、鉛直方向を矢印Yで示し、上方を矢印Y1で示し、下方を矢印Y2で示す。
【0017】
各筒部材2A、2Bは、図5図6に示すように、筒部本体21と、筒部本体21の上端部に設けられた雄突起部5を有する雄ねじ部4と、筒部本体21の下端部に設けられた雌突起部7を有する雌ねじ部6と、を有して構成されている。
【0018】
筒部本体21は、図7に示すように、円筒状の外側筒部22と、外側筒部22に内挿される円筒状の内側筒部23と、外側筒部22と内側筒部23との間に設けられる不図示の断熱材と、を有して構成されている。内側筒部23は、第1内側筒部24と、上側筒部材2Aの第1内側筒部24を内挿可能な第2内側筒部25と、を有して構成されている。外側筒部22、第1内側筒部24、及び第2内側筒部25は、同軸に形成されている。第2内側筒部25は、第1内側筒部24の上端部に連続して設けられている。第2内側筒部25の内径寸法は、第1内側筒部24の内径寸法より、第1内側筒部24の板厚寸法分だけ大きくなるように形成されている。外側筒部22の上端(上端部22A)は、第1内側筒部24と第2内側筒部25の境界部より僅かに下方に位置している。また、外側筒部22の下端(下端部22B)は、第1内側筒部24の下端より僅かに下方に位置している。
【0019】
雄ねじ部4は、図7に示すように、外側筒部22と内側筒部23との径方向の間に位置し、雄ねじ部4の上端部である上側重なり部41が、第2内側筒部25の上端部25Aの外面に重なって溶接(固定)され、雄ねじ部4の下端部である下側重なり部42が、外側筒部22の上端部22Aの内面に重なって溶接(固定)されている。筒部本体21から上方に突出して設けられている。雄ねじ部4は、板金にプレス加工が施されることで形成されている。
【0020】
また、雄ねじ部4は、図6図7に示すように、円筒状の雄側カプラー部40(雄筒状部)と、円筒状の上側重なり部41と、雄側カプラー部40と上側重なり部41との間に位置する円環状の第1延在部41Aと、雄側カプラー部40の下端に連続されて当該下端との境界部が径方向の外側に折れ曲がって延在する第2延在部43と、第2延在部43に連続されて、第2延在部43との境界部が径方向の内側にU字状に折れ曲がって形成された第3延在部44と、第3延在部44に連続された円筒状の第4円筒部45と、第4円筒部45の下端との境界部が径方向の外側に折れ曲がって延在する第5延在部46と、第5延在部46に連続された円筒状の下側重なり部42と、を一体に有して構成されている。雄側カプラー部40は、外側筒部22及び内側筒部23と同軸に設けられている。さらに、雄ねじ部4には、雄側カプラー部40の外周面(外面)に、周方向に間隔をあけて複数の雄突起部5が形成されている。
【0021】
第4円筒部45は、雄側カプラー部40と下側重なり部42との径方向の間に位置している。以下では、第2延在部43と第2延在部43に連続される第3延在部44の一部を「突条部47」と記す場合がある。突条部47は、雄ねじ部4の全周に連続形成されている。また、第4円筒部45、第4円筒部45の上方に連続される第3延在部44の一部及び、第4円筒部45の下方に連続される第5延在部46の一部を「溝部48」と記す場合がある。溝部48は、雄ねじ部4の全周に延在形成されている。
【0022】
各雄突起部5は、図6に示すように、螺合方向Rの奥側に進むにしたがって筒部本体21の下端(雄側カプラー部40の基端)に近づく第1勾配部51と、第1勾配部51の螺合方向Rの奥側に連続されて第1勾配部51より大きい下り勾配を有する第2勾配部52と、を有して構成されている。
【0023】
第1勾配部51は、図6に示すように、雄側カプラー部40の外周面と略平行な第1頂面51Aと、雄側カプラー部40の外周面と第1頂面51Aの上端縁とに連続された第1上側傾斜面51Bと、雄側カプラー部40の外周面と第1頂面51Aの下端縁とに連続された第1下側傾斜面51Cと、を有して構成されている。
【0024】
雄側カプラー部40と第1下側傾斜面51Cとの境界線L1は直線状に形成され、境界線L1と雄側カプラー部40の周方向に沿う仮想線L0との成す角θ1が、本実施形態では4度となるように形成されている。仮想線L0は、雄側カプラー部40の軸に直交して設けられている。本実施形態では、境界線L1と仮想線L0との成す角θ1が、本実施形態では4度となるように形成されているが、境界線L1と仮想線L0との成す角が4度~5度の範囲内となるように形成されていてもよく、境界線L1と仮想線L0との成す角が3度~7度の範囲内となるように形成されていてもよい。また、図8にも示すように、第1下側傾斜面51Cの雄側カプラー部40の外周面に対する傾斜は、第1上側傾斜面51Bの雄側カプラー部40の外周面に対する傾斜より大きくなるように形成されている。
【0025】
第2勾配部52は、図6に示すように、第1頂面51Aに連続される第2頂面52Aと、第1上側傾斜面51Bに連続される第2上側傾斜面52Bと、第1下側傾斜面51Cに連続される第2下側傾斜面52Cと、を有して構成されている。雄側カプラー部40と第2上側傾斜面52Bとの境界線L2は直線状に形成され、境界線L2と雄側カプラー部40の周方向に沿う仮想線L0との成す角θ2が、本実施形態では45度となるように形成されている。
【0026】
本実施形態では、境界線L2と仮想線L0との成す角θ2が、本実施形態では45度となるように形成されているが、境界線L2と仮想線L0との成す角が40度~50度の範囲内となるように形成されていてもよく、境界線L2と仮想線L0との成す角が30度~60度の範囲内となるように形成されていてもよい。また、第2勾配部を構成する境界線L2のうち、少なくとも一部が、角θ1より大きくなるように形成されていればよい。また、第2上側傾斜面52Bの雄側カプラー部40の外周面に対する傾斜は、第2下側傾斜面52Cの雄側カプラー部40の外周面に対する傾斜より大きくなるように形成されている。
【0027】
雌ねじ部6は、図6図7に示すように、円筒状の雌側カプラー部60(雌筒状部)と、雌側カプラー部60の上端に連続されて当該上端との境界部が内側に折れ曲がった円環状の雌側第1円環部61と、雌側第1円環部61との境界部が斜め上方に向かって折れ曲がって先端が内側筒部23の外周面に向けて延在する雌側第1延在部62と、を有している。さらに雌ねじ部6は、図6に示すように、雌側カプラー部60の下端に連続されて雌側カプラー部60との境界部が径方向の外側にU字状に折れ曲がって形成された断面円弧状の第1環状リブ63と、第1環状リブ63の下端に連続されるとともに、軸と平行に延在された円筒状の第1下端延在部64と、を有している。
【0028】
雌側カプラー部60には、図6に示すように、複数の雌突起部7が設けられている。また、雌側カプラー部60の下端部であって、雌突起部7と第1環状リブ63との間には、軸と平行に延在された円筒状の雌側円筒部65が設けられている。即ち、雌側円筒部65は、雌側カプラー部60の一部である。第1下端延在部64及び雌側円筒部65は、径寸法が略同じになるように形成された円筒状に形成され、雌突起部7は、第1下端延在部64及び雌側円筒部65より径方向の内側に突出して設けられ、第1環状リブ63は、第1下端延在部64及び雌側円筒部65より径方向の外側に突出して設けられている。
【0029】
各雌突起部7は、図6に示すように、雌側カプラー部60の上下の中間部に、周方向に等間隔をあけて設けられている。各雌突起部7は、雌側カプラー部60の径方向の内側に膨出して設けられている。また、雌突起部7は、上面が切り欠かれることで形成された切断端縁70を有している。即ち、各雌突起部7は、雌側カプラー部60の内周面から、中心軸に向かうように折れ曲がって斜め上方に向けて延在され、その先端に切断端縁70が位置して形成されている。切断端縁70は、螺合方向Rの奥側の前端が後端より上方に位置するような直線状に設けられている。切断端縁70は、雄ねじ部4と雌ねじ部6が螺合した際に、雄ねじ部4の第1勾配部51の第1下側傾斜面51Cに当接可能な位置に設けられている。
【0030】
さらに雌ねじ部6は、図7に示すように、外側筒部22の下端部22Bと雌側カプラー部60との径方向の間に位置する雌側カプラー補強部8を有している。雌側カプラー補強部8は、その上端部であって、外側筒部22の下端部22Bに重なって溶接(固定)される雌側重なり部81と、この雌側重なり部81の下端との境界部が折れ曲がって径方向の内側に延在される雌側第2延在部82と、雌側第2延在部82との境界部が折れ曲がって筒状に下方に延在される雌側第2円筒部83と、雌側第2円筒部83の下端に連続されて雌側第2円筒部83との境界部が径方向の外側にU字状に折れ曲がって形成された断面円弧状の第2環状リブ84と、第2環状リブ84の下端に連続されるとともに、軸と平行に延在された円筒状の第2下端延在部85と、を有して構成されている。雌側第2円筒部83、第2環状リブ84及び第2下端延在部85は、雌側円筒部65、第1環状リブ63及び、第1下端延在部64に重なって溶接(固定)されている。
【0031】
以下では、雌側円筒部65及び雌側第2円筒部83を「雌側凹み部11」と記す場合がある。雌側凹み部11は、雌ねじ部6の全周に延在形成されている。また、第1環状リブ63及び第2環状リブ84を「雌側突条部12」と記す場合がある。雌側突条部12は、雌ねじ部6の全周に連続形成されている。また第1下端延在部64及び第2下端延在部85を「雌側下端部13」と記す場合がある。
【0032】
このような雄ねじ部4及び雌ねじ部6が螺合される際、図7図8に示すように、雌突起部7が、第1勾配部51の第1上側傾斜面51Bに当接する。さらに雌ねじ部6が螺合方向Rの奥側に移動されるに伴って、雌突起部7が、第1上側傾斜面51Bに沿って摺接案内されて、第2上側傾斜面52Bに移動して、雌突起部7の切断端縁70が螺合方向Rの奥側の第1勾配部51の第1下側傾斜面51Cに当接する。この状態で、さらに雌ねじ部6が螺合方向Rの奥側に移動されることで、雌ねじ部6の雌側下端部13が雄ねじ部4の第2延在部43を押圧し、雌突起部7、雌ねじ部6の雌側突条部12及び雌側下端部13が、雄突起部5と第2延在部43との間に押圧状態で挟持される。こうして、雌突起部7及び雄突起部5が係合される。
【0033】
ロッキングバンド3は、図3に示すように、上側筒部材2A及び下側筒部材2Bの連結部20に巻かれる環状部本体30と、環状部本体30の一端に設けられたリング31を有するレバー32と、環状部本体30の他端に設けられてリング31が引っ掛かるフック33と、を有して構成されている。レバー32は、リング31がフック33に引っ掛けて、回動することで、リング31を引き寄せて、上側筒部材2A及び下側筒部材2Bの連結部20を締め付ける。環状部本体30は、円筒状のバンド本体34と、バンド本体34の上下の端部から径方向内側に折れ曲がった一対の曲げ部35A、35Bと、を有してコ字状に形成されている。ロッキングバンド3が取り付けられた状態で、図8図9に示すように、一対の曲げ部35A、35Bのうち上方の曲げ部35Aは、雌ねじ部6の雌側凹み部11に当接され、一対の曲げ部35A、35Bのうち下方の曲げ部35Bは、雄ねじ部4の第4円筒部45に当接されている。
【0034】
取付け部材9は、図4に示すように、第1円弧部90と、第2円弧部91と、第1円弧部90及び第2円弧部91を壁部Wに固定する固定支持具92と、を備えて構成されている。第1円弧部90は、筒状部の外周面に巻かれる第1円弧部本体93と、第1円弧部本体93の両端で折り返された一対の第1固定片94、94と、を備えている。第2円弧部91は、筒部材2A、2Bの外周面に巻かれる第2円弧部本体95と、第2円弧部本体95の両端で折り返された一対の第2固定片96、96と、を備えている。固定支持具92は、壁部Wに重ねられる支持板部97と、支持板部97の両端が折れ曲がって形成された一対の対向板部98、98と、一対の対向板部98、98の支持板部97から離れた端部に形成された一対の固定片99、99と、を備えている。このような取付け部材9は、第1固定片94、第2固定片96、固定片99のうち一方を重ねて、ボルトB及びナットNを用いて締結し、第1固定片94、第2固定片96、固定片99のうち他方を重ねて、ボルトB及びナットNを用いて締結し、壁部Wに支持板部97を重ねてビス固定する。
【0035】
次に、煙突体1を壁部Wに固定する際の手順について、図7図9図12を参照して説明する。予め、取付け部材9を組み立てて、支持板部97を壁部Wに重ねてビス固定しておく。
【0036】
まず、図7に示すように、上側筒部材2Aの雌ねじ部6を下側筒部材2Bの雄ねじ部4に近付ける。雌突起部7が、雄突起部5の第1勾配部51の第1上側傾斜面51Bに当接する。雌ねじ部6を螺合方向Rの奥側に移動する。これに伴って、雌突起部7は、雄突起部5の第1上側傾斜面51Bに摺接案内され、第2上側傾斜面52Bに移動し、さらに螺合方向Rの奥側に摺接案内されて、これを通過して、螺合方向Rの奥側に位置する雄突起部5に到達する。即ち、雌突起部7の切断端縁70が、雄突起部5の第1下側傾斜面51Cに接触する。この際、雌ねじ部6の雌側下端部13が、雄ねじ部4の第2延在部43に接触する。この状態で、さらに雌ねじ部6が螺合方向Rの奥側に移動されることで、図9に示すように、雌ねじ部6の雌側下端部13が雄ねじ部4の第2延在部43を押圧し、雌突起部7、雌ねじ部6の雌側突条部12及び雌側下端部13が、雄突起部5と第2延在部43との間に押圧状態で挟持される。こうして、雌突起部7が雄突起部5に係合する。これにより、上側筒部材2A及び下側筒部材2Bが連結されて、連結部20が構成される。
【0037】
続いて、図11に示すように、連結された上側筒部材2Aと下側筒部材2Bを取付け部材9に挿入する。この際、上側筒部材2Aと下側筒部材2Bとの連結部20が、筒部本体21の外周面より径方向の内側に凹んで設けられているから、連結部20を跨ぐ取付け部材9の移動がスムーズに行われ、上側筒部材2A及び下側筒部材2Bが取付け部材9に位置決めされる。最後に、図12に示すように、ロッキングバンド3の環状部本体30を、バンド本体34が雌ねじ部6の雌側突条部12及び雄ねじ部4の突条部47を覆う格好で連結部20に近付ける。上方の曲げ部35Aが雌ねじ部6の雌側凹み部11に当接し、下方の曲げ部35Bが雄ねじ部4の溝部48に当接する。最後に、リング31をフック33に引っ掛けて、レバー32を回動させることで、環状部本体30で連結部20を締め付ける。こうして、煙突体1が完成する。
【0038】
上述した実施形態によれば、雄ねじ部4を雌ねじ部6に近付けて内挿した状態で、雌ねじ部6が雄ねじ部4に対して螺合方向Rの奥側に移動されることで、雌突起部7が雄突起部5の第1勾配部51における雄側カプラー部40(雄筒状部)の先端側の面(第1上側傾斜面51B)に摺接されて螺合方向Rの奥側に案内される。さらに螺合方向Rの奥側に移動されるに伴って、雌突起部7は、第1勾配部51の第1上側傾斜面51Bに連続される第2勾配部52の第2上側傾斜面52Bに移動して、螺合方向Rの奥側に位置する第1勾配部51の第1下側傾斜面51C(基端側の面)に係合するが、第1勾配部51より大きい勾配を有する第2勾配部52が設けられていることにより、落下エネルギーの一部を螺合方向Rへ転換することがでるから、螺合方向Rの奥側に向かう移動速度(回転速度)を速くすることができる。これにより、雌突起部7が、螺合方向Rの奥側に位置する第1勾配部51の雄側カプラー部40の第1下側傾斜面51Cに係合する際の移動(締付け)が促進される。
【0039】
雌突起部7は、螺合方向Rの奥側に向かう回転速度を増しながら第2勾配部52を通過した後、雌ねじ部6の雌側下端部13が雄ねじ部4の第2延在部43を押圧し、雌突起部7、雌ねじ部6の雌側突条部12及び雌側下端部13が、雄突起部5と第2延在部43との間に押圧状態で挟持されることで、第1勾配部51の雄側カプラー部40の第1下側傾斜面51Cに係合する。即ち、第1勾配部51より大きい勾配を有する第2勾配部52が設けられていることにより、雌突起部7が、螺合方向Rの奥側に位置する第1勾配部51の雄側カプラー部40の第1下側傾斜面51Cに係合する際の移動(締付け)が促進されることにより、組立て作業効率の向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態では、雄側カプラー部40と第1下側傾斜面51Cとの境界線L1は直線状に形成され、境界線L1と雄側カプラー部40の周方向に沿う仮想線L0との成す角θ1が4度となるように形成されている。ここで、第1勾配部51は、境界線L1と雄側カプラー部40の周方向に沿う仮想線L0との成す角θ1が小さくなるほど、雄突起部5と雌突起部7が係合した際に緩み難くなるが、製造上の困難さも伴うため、3度~7度の範囲内となるように形成されていることが好ましい。より好ましくは、4度~5度の範囲内となるように形成されているのがよい。これによれば、雄突起部5及び雌突起部7の係合を緩み難いものとすることができる。
【0041】
また、雌突起部7は、その一部が切り欠かれ、切り欠かれることで形成された切断端縁70を有し、切断端縁70が第1勾配部51に当接することで、雌突起部7が第1勾配部51に係合する。これによれば、切断端縁70が第1勾配部51に当接することで、摩擦により雄突起部5及び雌突起部7の係合を、より一層、緩み難いものとすることができる。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形例も本発明に含まれる。
【0043】
即ち、雌突起部7は、その一部が切り欠かれ、切り欠かれることで形成された切断端縁70を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。切断端縁70を有する雌突起部7に比して、雄突起部及び雌突起部の係合が多少緩み易くなるものの雌突起部は、切断端縁70を有していなくてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、雌側カプラー補強部8は、外側筒部22の下端部22Bに重なって溶接(固定)されている。即ち、雌側カプラー補強部8は、外側筒部22とは別体に構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。雌側カプラー補強部及び外側筒部は一体に構成されていてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、第2勾配部52における雄側カプラー部40と第2上側傾斜面52Bとの境界線L2は直線状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。図13に示すように、雄突起部5´の第2勾配部52´における雄側カプラー部40と第2上側傾斜面52B´との境界線L12は凹のR形状を有する曲線から構成されていてもよい。この場合には、境界線L12の上端L12aと下端L12aとを結ぶ線分の仮想線L0に対する角が45度と成るように形成されていればよい。これによれば、上述した実施形態と略同様の効果が奏される。
【0046】
また、前記実施形態では、雄突起部5において、第2勾配部52は、仮想線L0に対して角θ2となるように連続する1つの直線状の境界線L2を有して構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。図14に示すように、雄突起部15において、第2勾配部152の第2上側傾斜面152Bは、仮想線L0に対して角θ3となる直線状の境界線L3と、仮想線L0に対して角θ4となる直線状の境界線L4と、を有して構成されていてもよい。角θ3は、本実施形態では、60度と成るように形成され、角θ4は、本実施形態では、40度と成るように形成されていてもよい。また、第2勾配部152を構成する境界線L3、L4のうち、少なくとも一部が、角θ1より大きい角となるように形成されていればよい。これによれば、上述した実施形態と略同様の効果が奏される。
【0047】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び、目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 煙突体
2A、2B 筒部材
4 雄ねじ部
5 雄突起部
40 雄側カプラー部(雄筒状部)
51 第1勾配部
51B 第1上側傾斜面(第1勾配部の先端側の面)
51C 第1下側傾斜面(第1勾配部の基端側の面)
52B 第2上側傾斜面(第2勾配部の先端側の面)
52 第2勾配部
6 雌ねじ部
7 雌突起部
60 雌側カプラー部(雌筒状部)
70 切断端縁
図1
図2
図3
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図5
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