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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】半導体製造用離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20220728BHJP
   B29C 33/68 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H01L21/56 R
B29C33/68
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018124205
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020004896
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 圭介
(72)【発明者】
【氏名】岩脇 統史
(72)【発明者】
【氏名】田中 奈名恵
(72)【発明者】
【氏名】平松 聡
(72)【発明者】
【氏名】川淵 茜
【審査官】川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074201(JP,A)
【文献】特開2016-192503(JP,A)
【文献】特開2014-212239(JP,A)
【文献】特開2006-282800(JP,A)
【文献】特開平03-182539(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125796(WO,A1)
【文献】特開平03-011756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 39/26-39/36
B29C 41/38-41/44
B29C 43/36-43/42
B29C 43/50
B29C 45/26-45/44
B29C 45/64-45/68
B29C 45/73
B29C 49/48-49/56
B29C 49/70
B29C 51/30-51/40
B29C 51/44
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム、前記基材フィルム上に少なくとも片面に設けられた離型層とからなり、基材フィルムが熱寸法安定性及び耐熱性を有するポリエステルフィルムであり、離型層が、反応性官能基含有含フッ素ポリマー、変性シリコーンオイル、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート及び粒子を含むコーティング組成物層である、半導体製造用離型フィルムであって、
前記反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーに基づく重合単位と、水酸基含有ビニルモノマー及びカルボキシル基含有ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位とを含むコポリマーであり、
HDI系ポリイソシアネートは、イソシアヌレート型及びアダクト型のHDI系ポリイソシアネートを含むものであり、
変性シリコーンオイルは、少なくとも塩基を有する変性メチルポリシロキサンであり
粒子は、平均粒径が2~9μmの粒子である、
半導体製造用離型フィルム。
【請求項2】
反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーが少なくとも4フッ化エチレンモノマー含む含フッ素モノマーに基づく重合単位のコポリマーであり、
変性シリコーンオイルは、反応性官能基が側鎖タイプ、又は側鎖及び両末端又は片末端タイプからなる少なくともアミノ基を有する変性メチルポリシロキサンであり、
HDI系ポリイソシアネートが、イソシアヌレート型及びアダクト型のプレポリマタイプである、
請求項1に記載の半導体製造用離型フィルム。
【請求項3】
反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、4フッ化エチレンモノマーをモノマー基準で60~95モル%含み、反応性官能基としてカルボン酸基及び又は水酸基を含有するビニルモノマーを含む含フッ素ポリマーである、請求項1又は2に記載の半導体製造用離型フィルム。
【請求項4】
変性シリコーンオイルは、0.1~1.0質量%含有し、
HDI系ポリイソシアネートは、HDIイソシアヌレートとHDIアダクトが、9:1~5:5(イソシアヌレート型及びアダクト型のNCOモル比)の割合で含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体製造用離型フィルム。
【請求項5】
粒子は、有機粒子又は無機粒子である、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体製造用離型フィルム。
【請求項6】
粒子は、無機粒子であって、ゾルゲル型のシリカである、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体製造用離型フィルム。
【請求項7】
粒子は、コーティング組成物全質量の5~15質量%含有し、コーティング塗膜の乾燥厚さが、0.1~10μmである、請求項1~いずれか1項に記載の半導体製造用離型フィルム。
【請求項8】
コーティング組成物は、チタン系触媒を含み、有機溶媒が酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合溶媒である、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体製造用離型フィルム。
【請求項9】
基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートである、請求項1~のいずれかに1項に記載の半導体製造用離型フィルム。
【請求項10】
基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートであって、ポリマー中の残存モノマーを低減処理したものである、請求項1~のいずれか1項に記載の半導体製造用離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージなどの半導体製造用離型フィルムに関するものであり、より詳しくは、半導体チップを保護するため樹脂で封止した半導体チップのパッケージと呼ばれる成形品として封止された状態で基板上に実装された半導体装置を製造する時に使用する半導体製造用離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、粘着シートの離型フィルム(一般の粘着テープやラベルなど)、産業用基材(例えば、マーキングシート、金属箔等の離型フィルムなど)、製造工程離型フィルム(例えば、合成皮革、半導体パッケージ、プラスチックフィルム等の製造工程で使用する工程離型フィルム)などとして多用されている。
特に、製造工程における工程離型フィルムは、製造工程において原材料、製造中間体、最終製品などが製造設備との接触や剥離し難くなり無理な剥離により、製品表面が荒れたり、欠損したりして、製品の外観が悪化するため、歩留まりの低下、良好な外観を得るための後処理、後処理のための工程数の増加及びその処理時間の増加などを要し、コストアップの要因となっていることから、このような問題を回避するため導入されている。
【0003】
本発明は、工程離型フィルムとして、半導体パッケージを製造する際に用いられる半導体製造用離型フィルムに関するものである。半導体パッケージには、半導体素子とリードフレームをワイヤで接合した後、リードフレームのアウターリードを除く全体を封止樹脂で封止した、従来の1チップ毎のパッケージ成形品や、リードフレーム上の複数の半導体素子を封止樹脂で片面一括封止し、次に、個々に分離、個片化する方法により製造される、例えば、QFN(Quad Flat Non-leaded package)やSON(Small Outline Non-leaded package)などパッケージの小型化や多ピン化などの要請から多数個のパッケージを一括して成形品とするものなどがある。
いずれの半導体パッケージも半導体素子を保護する樹脂封止部を有する。樹脂封止部の形成(半導体素子の封止)には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂が用いられる。そして、いずれの半導体パッケージの製造方法として、例えば、半導体素子が実装された基板を、該半導体素子が金型のキャビティ内の所定の場所に位置するように配置し、キャビティ内に硬化性樹脂を充填して樹脂封止部を形成する、いわゆる圧縮成形法またはトランスファ成形法による封止工程を含む方法が知られている。該方法においては、通常、樹脂封止部と金型との固着を防ぐために、金型のキャビティ面に半導体製造用離型フィルムが配置される。
近年は、特に、高付加価値の商品化として半導体素子を高密度に配置した半導体装置を強く指向するようになり、多数の半導体素子を基板上に設置し、樹脂封止部を形成した多数の半導体パッケージを一括して形成することが指向されている。このような半導体パッケージの製法は、一括モールド法と呼ばれ、基板に複数の半導体素子を実装し、それらの半導体素子を硬化性樹脂で一括封止して、基板と複数の半導体素子と樹脂封止部とを有する一括封止体を得る工程と、複数の半導体素子が分離するように一括封止体の樹脂封止部および基板を切断、個片化して複数の半導体パッケージを得る工程とを経る方法である。この方法は、生産性に優れることから広く用いられている。
【0004】
半導体パッケージ化により電子部品が大型化するとともに、複数の半導体素子の間に狭い間隔が形成される。半導体素子を高密度に設置した半導体パッケージを樹脂封止する時、パッケージングのため離型フィルムは、半導体素子間の狭い間隙に入り込み、個々の半導体素子の成形品を成形することができる必要がある。そこで、離型フィルムが配列された各半導体素子間に柔軟に追従することが求められており、しかも、成形品間の間隙に入り込み、半導体素子ごとに外観がきれいに成形品に賦形できること、噛み込み等のため離型でき難くなることのないようにする必要があることから、離型フィルムの離型性の向上、素子間の間隙や金型面への追従のための薄膜化、柔軟性のニーズがある。
【0005】
また、離型フィルムは、真空吸引によって金型のキャビティ面に沿って引き延ばされ、キャビティ面に密着した状態とされる。このとき、金型に追従し、引き延ばされる途中で空気が完全に抜けない状態で離型フィルムがキャビティ面に密着し、離型フィルムとキャビティ面との間に部分的に空気溜まりが形成され、その部分で離型フィルムにシワが生じることがある。離型フィルムにシワがあると、樹脂封止部の表面に離型フィルム表面のシワの形状が転写されて外観不良となり、歩留まりが低下することから、離型フィルムに、薄膜化、フィルムカールが抑えられ、適度の滑り性、金型追従性などのフィルム特性が求められる。
【0006】
さらに、一括樹脂封止の際、追従した離型フィルムが半導体素子、金型などのエッジ等により破損したり、ピンホールが形成されたりすることもあり、樹脂が高圧で樹脂注入され、その注入時の樹脂衝撃により、樹脂漏れを生じ、外観を悪化させ、生産性の低下に繋がることから、引張強度、曲げ強度などのフィルムの強度特性及び樹脂漏れを防止する表面特性も必要とされる。さらに、半導体パッケージ自体が大きく、製品としてのパッケージの反りの発生が起き易くなることから、封止樹脂の改質が行なわれ、そのため離型フィルムと樹脂との剥離性の改善も求められる。
しかも、半導体パッケージは樹脂の成形品であり、成形の際、離型フィルムは表面の成形品の凹凸に追従し、しかも追従後、離型フィルムが熱により変形することは成形品の外観、形状を正確に転写できなくなったり、シワを生じたりするなど影響を及ぼすことから、成形品を安定して形成するため封止時の温度での熱寸法安定性も求められる。
【0007】
従来の離型フィルムとしては、厚さが薄くても、金型のキャビティ面に密着させる際にシワおよびピンホールが発生しにくく、樹脂封止部の表面にインク層を形成する場合にシンギュレーション工程で欠けや割れが生じにくく、かつインク層との密着性に優れた樹脂封止部を形成できる離型フィルムを提供するため、ETFEを用い、離型フィルムが樹脂封止部の形成時に前記硬化性樹脂と接する第1面と、前記キャビティ面と接する第2面とを有し、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方の面に凹凸が形成されており、前記凹凸が形成されている面の算術平均粗さ(Ra)が1.3~2.5μm、ピークカウント(RPc)が80~200である離型フィルムとしたものが用いられている(特許文献1、2)。
しかしながら、このような離型フィルムは、剥離性を得るためエチレン-四フッ化エチレン共重合体(ETFE)フィルムを用い、精密な凹凸の制御を必要とし、他への応用がし難く、しかも製造が複雑となり、製造コストが掛かる、大量生産に向かないなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-310336号公報
【文献】国際公開第2015-157488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、半導体チップ又は複数の半導体チップを一括成形する半導体パッケージの製造の際に用いる離型用として使用される樹脂製シート又はフィルムであって、従来の半導体製造用離型フィルムの課題を改善できる又は該離型フィルムの特性を改善した離型フィルムを提供するものである。
【0010】
本発明の離型フィルムとして、半導体パッケージ製造時、経時で求められる離型性を示すことができるものを提供することを目的とする。
好ましくは、半導体パッケージの製造に用いられるエポキシ樹脂との離型性、離型フィ
ルムの手作業による除去を効率的に行える離型性及び作業性を備える離型フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
別の目的として、半導体パッケージ成形品を製造する過程において、金型と密着でき、また、金型への賦形性、追従性が得られる離型フィルムを提供するものである。また、別の目的として、半導体パッケージ成形時に封止樹脂の樹脂漏れの発生を抑えられ、成形後、半導体パッケージを成形した後、離型シートをパッケージから簡単に剥がすことができるものを提供する。
【0012】
さらに、別の目的として、半導体パッケージを製造する際の加熱、賦形時に加えられる加熱温度に耐え、該温度に適合し得る加熱収縮性を有し、熱安定性を示すことができ、成形時シワができにくいものであり、成形時の加わる熱及び樹脂圧や冷却時の成形品のエッジにより破れや、ピンホールができにくい離型フィルムを提供するものである。
【0013】
本発明は、基材フィルムと離型層の密着接着性を向上させ、かつ封止樹脂との経時密着安定性とともに、エポキシ樹脂などの封止樹脂との離型性も良好である離型フィルムを提供するものである。
さらに、樹脂表面への印字工程でのインキの付着性、金型大面積化に伴う樹脂とフィルム間へのエア噛み込み、後工程でのダイシング時の樹脂割れ(シンギレーション時の割れ)を防ぐことができる離型フィルムを提供するものである。
【0014】
本発明は、従来の半導体製造に用いられる離型フィルムに比較し、優れた離型性及び作業性を備え、半導体パッケージの製造において優れた離型フィルムを効率的に製造でき、離型フィルムの製造コストを低減できる離型フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は、熱安定化した耐熱性の基材フィルムと、前記基材フィルム上少なくとも片面に設けられた離型層とからなるものであって、前記基材フィルムは、ポリエステル系ポリマーから選択されたものからなり、前記離型層は、反応性官能基含有含フッ素ポリマー、変性シリコーンオイル、イソシアヌレート型及びアダクト型のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート及び粒子を含む、コーティング組成物のコーティング材を用いて塗布して離型性を備えるコーティング塗膜として形成した半導体製造用離型フィルムであって、前記反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーに基づく重合単位と、水酸基含有ビニルモノマー及びカルボキシル基含有ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位とを含むコポリマーであり、HDI系ポリイソシアネートは、イソシアヌレート型及びアダクト型のHDI系ポリイソシアネートを含むものであり、変性シリコーンオイルは、少なくとも塩基を有する変性メチルポリシロキサンである、前記半導体製造用離型フィルムである。
【0016】
本発明の半導体製造用離型フィルムは、以下の半導体製造用離型フィルムを提供するものである。
[1] 基材フィルム、前記基材フィルム上に少なくとも片面に設けられた離型層とからなり、基材フィルムが熱寸法安定性及び耐熱性を有するポリエステルフィルムであり、離型層が、反応性官能基含有含フッ素ポリマー、変性シリコーンオイル、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート及び粒子を含むコーティング組成物層である、半導体製造用離型フィルムであって、前記反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーに基づく重合単位と、水酸基含有ビニルモノマー及びカルボキシル基含有ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位とを含むコポリマーであり、HDI系ポリイソシアネートは、イソシアヌレート型及びアダクト型のHDI系ポリイソシアネートを含むものであり、変性シリコーンオイルは、少なくとも塩基を有する変性メチルポリシロキサンである、半導体製造用離型フィルムである。
[2] 反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーが少なくとも4フッ化エチレンモノマーを含む含フッ素モノマーに基づく重合単位のコポリマーであり、変性シリコーンオイルは、少なくともアミノ基を有する変性メチルポリシロキサンであり、HDI系ポリイソシアネートは、プレポリマタイプであって、イソシアヌレート型及び又はウレタン変性アダクト型である、半導体製造用離型フィルムである。
[3] 反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、4フッ化エチレンモノマーをモノマー基準で60~95モル%含み、反応性官能基としてカルボン酸基及び又は水酸基を含有するビニルモノマーを含む含フッ素ポリマーである、半導体製造用離型フィルムである。
[4] 変性シリコーンオイルは、0.1~1.0質量%含有し、
HDI系ポリイソシアネートは、HDIイソシアヌレートとHDIアダクトが、9:1~5:5(イソシアヌレート型及びアダクト型のNCOモル比)の割合で含む、半導体製造用離型フィルムである。
[5] 粒子は、粒子は、平均粒径が2~9μmの粒子である、半導体製造用離型フィルムである。
[6] 粒子は、有機粒子又は無機粒子である、半導体製造用離型フィルムである。
[7] 粒子は、無機粒子であって、ゾルゲル型のシリカである、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体製造用離型フィルム。
[8] 粒子は、コーティング組成物全質量の5~15質量%含有し、コーティング塗膜の乾燥厚さが、0.1~10μmである、半導体製造用離型フィルムである。
[9] コーティング組成物は、チタン系触媒を含み、有機溶媒が酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合溶媒である、半導体製造用離型フィルムである。
[10] 基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートである、半導体製造用離型フィルムである。
[11] 基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートであって、ポリマー中の残存モノマーを低減処理したものである、半導体製造用離型フィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、半導体製造時において、経時で安定した剥離性(離型性)を備え、かつ半導体製造用に適した剥離強度を有する半導体製造用離型フィルムが得られる。しかも、コーティング樹脂組成物を調製し、コーティング条件を調整することで用途に適した機能を付与できる上、使用条件に適合する長さ、幅の離型フィルムを大量生産でき、コストパフォーマンスに優れ、歩留まり、製造効率に優れたものである。
離型層と基材フィルムとの密着性も向上したものが得られる。
本発明の離型フィルムは、物性的にみても、エポキシ樹脂に対するJISの剥離試験法(JIS K 7125に準拠)による剥離強度(離型性)が、175℃、50mN/20mm、23℃、40mN/20mm、JIS K 7125に準拠により金型への追従性に関連している動摩擦係数(滑り性)は、175℃、マット面で0.17、グロス面で0.27と、従来の離型フィルムに見られない非常に良好な剥離性を示すとともに、金型への追従性が高温でも良好な滑り性を示すものが得られている。
離型フィルムとして、金型追従性を評価するため175℃での引張試験(JIS K 7127に準拠)の結果も、200%モジュラス60MPa以上、破断伸度370%と強度的に優れた特性を示すとともに、成形品が硬化して隅部ができても突き刺し強度試験(JIS Z 1707に準拠)の結果も、少なくとも突刺し強度は10N以上、平均的にも8N以上を示し、本発明の離型フィルムは破れにくく、耐破壊強度に優れた成形性を備える離型フィルムを得ることができる。
120±5℃、相対湿度75%、0.2MPaで60分間の試験による劣化の影響をみても使用後の引張強度が使用前の90%以上を維持しているという好結果が得られている。
本発明によれば、優れた物性、性能及び特性を備える半導体製造用離型フィルムであっ
て、従来の離型フィルムよりも樹脂との離型性が優れ、しかも、破れにくく、樹脂で封止する際の樹脂漏れを抑制して、バリの付着がなく、また、付着したバリが容易に除去できるものであり、従来にない半導体パッケージを製造するに適した離型フィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】半導体製造用離型フィルムの1つの実施形態を示す概略的断面図
図2】半導体製造用離型フィルムを用いるコンプレッション成形図
図3】半導体製造用離型フィルムの熱安定性を示す引張強度維持率及び破断伸度(%)の特性図
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について実施形態を示して詳しく説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
【0020】
図1は、本発明の半導体製造用離型フィルムを構成する積層フィルムの層構成について、その一例を示す概略図である。図1に示されるように、本発明において用いられる半導体製造用離型フィルムは、基材フィルム1と、離型性のコーティング組成物をコーティングして形成される塗膜層2及び/又は3を積層してなる積層フィルムである。
図2に示されるように、半導体製造時に工程離型シートとして用いられるものであって、金型表面に本発明の半導体製造用離型フィルムを配置し、半導体パッケージを構成する1つ又は複数の半導体素子を配置した半導体装置の表面との間にエポキシ樹脂を充填して半導体素子を封止し、成形品とするため用いるものである。このように配置することにより、金型面との離型、金型面のエポキシ樹脂による汚染を防止し、さらにエポキシ樹脂による封止面との離型を容易にするとともに、封止した成形品表面の汚染、整形及び成形性を向上させることができる。
【0021】
本発明は、基材フィルム、前記基材フィルム上に少なくとも片面に設けられた離型層とで構成される積層構造からなる半導体製造用離型フィルムであって、基材フィルムは熱寸法安定性及び耐熱性を有するものであり、前記基材フィルム上に設けられる離型層が、反応性官能基含有含フッ素ポリマー、変性シリコーンオイル、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート及び、粒子を含む離型性コーティング組成物のフッ素樹脂系塗料のコーティング層である、半導体製造用離型フィルムである。
【0022】
特に、半導体製造用離型フィルムとしては、基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、該基材フィルム上に形成する離型層には、コーティング組成物をコーティングにより適用し、コーティング塗膜として形成するもので、その塗膜のコーティング樹脂組成物は、半導体製造用離型フィルムに求められる耐熱、熱安定性、対エポキシ離型性、金型追従性、賦形性などの機能、物性を示し得る反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーに基づく重合単位と、水酸基含有ビニルモノマー及びカルボキシル基含有ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位とを含むコポリマーであり、HDI系ポリイソシアネートは、イソシアヌレート型及びアダクト型のHDI系ポリイソシアネートを含むものであり、変性シリコーンオイルは、少なくとも塩基を有する変性メチルポリシロキサンである離型性コーティング組成物を形成した離型フィルムである。
【0023】
以下、本発明の半導体製造用製造用離型フィルムとその構成要素、及び本発明を実施するための実施の形態について詳しく説明する。
【0024】
本発明は、構成する基材フィルムの少なくとも片面に設けられた離型層からなる半導体製造用離型フィルムの形成について以下に説明する。
本発明における離型フィルムを構成する離型層は、離型性コーティング組成物のコーティング塗膜である。
【0025】
ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であり、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点でインラインコーティングが好ましく用いられる。
離型性コーティング組成物は、その発現する特性として、離型性、コーティング材が塗布される被塗物であるフィルム又はシート状の基材との密着性を備えるもの、塗膜として引張力や屈曲力が加わったとき膜割れが生じない、又は破れやピンホールが発生し難い適度な伸び又は塗膜面粗度を有するもの、あるいは常温・高温での滑り性を有するものなどの物性や特性を少なくとも1つ備え得る塗膜を形成することができるものであってもよい。本発明の離型性コーティング組成物は、特に、エポキシ樹脂に対して離型性を有するものであって、耐熱性を備えるものが好ましい。
【0026】
本発明の離型性コーティング組成物のコーティング材は、反応性官能基含有含フッ素ポリマー、変性シリコーンオイル、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート及び、粒子を含むものである。
【0027】
(反応性官能基含有含フッ素ポリマー)
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成する反応性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、フッ素樹脂の共通した特性:耐熱性、難付着性、滑り性、耐薬品性などの特性を発現し得るフッ素樹脂及び変性フッ素樹脂であり、コーティング材として取扱うことができる特性を有するものであって、反応性官能主成分となるフッ素ポリマーを含有するコーティング組成物の離型層が形成できる離型性コーティング組成物を提供するものである官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、少なくとも4フッ化エチレンモノマー単位を含み、含フッ素モノマーに基づく重合単位のコモノマーをさらに含む又は含まない重合体であり、該含フッ素ポリマーに反応性の官能基を導入したポリマーである。
【0028】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成する含フッ素ポリマーは、少なくとも4フッ化エチレンモノマー単位を含むもので、さらに、一般式CH2=CR1COORf1(式中、R1はHまたはCH3基、-(CH2)n-CH3(n=1~6)、フッ素含有基Rf1はであり、ここで、Rf1は炭素数1~12のポリフルオロアルキル基である(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステルモノマー)で表される重合単位のモノマーを用いることができるものであって、含フッ素モノマーに基づく重合単位のコモノマーを含む又は含まないものである。
含フッ素モノマーに基づく重合単位のコモノマーとしては、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステルモノマーが選択され、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステルモノマーのアルキル基が、その炭素数は、特に限定されないが、通常1~12以下であり、常温時の粘度と塗工性との観点から、好ましくは2~8である。アルキル基は分岐していても、直鎖状でもよく、水素がフッ素に置き換わったパーフルオロアルキル基の基本となるアルキル基としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられる。
【0029】
本発明の離型フィルムの離型層を構成する反応性官能基含有フッ素ポリマーを構成するモノマー内に配合される4フッ化モノマーと(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルモノマーの含有量は80~98モル%である。
【0030】
本発明の離型層を構成する含フッ素ポリマーとしては、4フッ化モノマーを60~95モル%含むものであれば、フッ素樹脂の共通した特性:耐熱性、難付着性、滑り性、耐溶
剤性、耐薬品性を発現し得るフッ素樹脂及び又は変性フッ素樹脂コーティング系ポリマー材料として用いることができる。4フッ化モノマーが60モル%以下では、フッ素樹脂としての特性を十分に発揮できず、95モル%以上であると塗工性に問題が生じる。
【0031】
本発明の反応性官能基含フッ素ポリマーである、反応性官能基を導入したフッ素ポリマーとするため導入される反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、-COOCO-で表される基、アミノ基、モノアミン基、ジアミン基、エポキシ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基、イソシアネート基等が挙げられる。
そして、そのような反応性官能基を有するコモノマーは、含フッ素モノマーと共重合体が形成でき、変性シリコーンオイルに合わせて適宜選択される官能基を含有するモノマーであって、含フッ素モノマーと反応し、反応性官能基含有フッ素ポリマーの製造の容易さから、反応性の官能基を備えるモノマーが選択される。
反応性が良好な入手が容易な点から水酸基、カルボキシル基、-COOCO-で表される基、アミノ基、エポキシ基、アミノ基を備えるモノマーが好ましい。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、性能を損なわない範囲内で、水酸基含有ビニルエーテル類、水酸基含有アリルエーテル類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。水酸基含有ビニルエーテルとしては、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、水酸基含有アリルエーテルとしては、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル、また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられ、重合反応性、官能基の硬化性が優れ、いずれも用いることができる。水酸基含有ビニルモノマー単位は、含フッ素共重合体を用いて形成した塗膜の加工性、耐衝撃性、耐汚染性を改善する作用を有する。
【0033】
水酸基含有ビニルモノマー単位の下限は8モル%、好ましくは10モル%、上限は30モル%、好ましくは20モル%である。8モル%より少なくなると、この共重合体を使用して得られる塗膜が求める物性及び又は特性のものより劣るものになる。
【0034】
カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステル等の不飽和カルボン酸類等が挙げられる。不飽和カルボン酸類の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル等が挙げられる。それらのなかでも単独重合性の低い、単独重合体ができにくいものを選択することができ、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、いずれも用いることができる。カルボキシル基含有モノマーを用いると含フッ素ポリマーの分散性、硬化反応性などを改善し、得られる塗膜と基材との密着性を改善できる。
【0035】
カルボキシル基含有モノマー単位の割合の下限は0.1モル%、好ましくは0.4モル%であり、上限は2.0モル%、好ましくは1.5モル%である。2.0モル%を超えると塗膜の形成のポットライフ特性の面で好ましくない。
反応性官能基含有含フッ素ポリマーとするため用いる水酸基含有及び/又はカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量は、0.2~20モル%であり、好ましくは、0.2~10モル%である。
【0036】
アミノ系基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタアクリルアミド、CH2=CH-O-(CH2)x-NH2(x=0~10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH2=CH-O-CO(CH2)x-NH2(x=1~10)で示されるアミン類;その他アミノメチルスチレン、ビニルアミン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0037】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成する反応性官能基含有フッ素ポリマーは、反応性官能基含有含フッ素ポリマーの入手が容易な点やその反応性が良好な点から、特に、水酸基含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位をコモノマーとして好ましく選択することができる。特に、好ましくは、官能基として、水酸基を有するフッ素ポリマーが好適に用いられる。
【0038】
反応性官能基含有含フッ素ポリマーに用いるモノマーには、本発明の反応性官能基含有含フッ素ポリマーとして、求められるフッ素ポリマーの特性を阻害しない範囲で混合モノマーに対して、さらにモノマーを添加することができる。
【0039】
本発明の上記反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、上記したモノマーを公知のラジカル重合、イオン重合等の重合法によって製造することができるが、方法により製造することができる。平均重合度、分散度の制御、重合操作の観点からラジカル重合を用いて得ることが好ましい。
【0040】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成するコーティング組成物中の反応性官能基含有含フッ素ポリマーの含有量は、組成物中の不揮発分の総量100質量%に対し、20~90質量%であることが好ましい。
【0041】
(変性シリコーンオイル)
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成する変性シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサンの特長を活かしながら、メチル基の一部を各種有機基の置換基を導入したものである。変性シリコーンオイルは、一般的に消泡性、はっ水性、熱酸化安定性、化学的安定性、生理的不活性などジメチルシリコーンオイルの持つ特性に加え、有機物との相溶性や化学反応性、水との溶解性、乳化性やはっ水性、ペインタブル性、帯電防止性、柔軟性あるいは潤滑性を付与するため目的に適合する置換基を選択し、導入されている。
【0042】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成する変性シリコーンオイルの構造は、有機基の位置により、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したもの(側鎖型)、ポリシロキサンの片末端に有機基を導入したもの(片末端型)、ポリシロキサンの両末端に有機基を導入したもの(両末端型)及びポリシロキサンの側鎖と両末端の両方に有機基を導入したもの(側鎖両末端複合型)があり、いずれでもよく、反応性シリコーンオイルの使用目的に応じて適宜1種又はそれ以上の構造のものを使用することもできる。
【化1】
【0043】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層では、変性シリコーンオイルとして、反応性シリコーンオイルが用いられる。シリコーンオイルに少なくとも反応性を付与する有機基として、例えば、アミノ変性(はっ水性、反応性、吸着性、潤滑性、離型性、可撓性)、エポキシ変性(反応性、吸着性、離型性、可撓性)、カルボキシ変性(反応性、潤滑性、離型性、可撓性)、カルビノール変性(反応性、離型性、酸素透過性)、メタクリル変性(反応性、吸着性、酸素透過性)、メルカプト変性(反応性、吸着性)、フェノール変性及び異種官能基変性(反応性、相溶性)が挙げられ、これらの中から選択される1種又はそれ以上の官能基で置換したものを選択できる。
反応性官能基含有フッ素ポリマーに導入する官能基と反応し得る官能基、特に、カルボン酸基、水酸基、又はアミノ基、エポキシ基を有する変性メチルポリシロキサン(側鎖型)が好ましく用いることができる。具体的には、モノアミン変性シリコーンオイル、ジアミン変性シリコーンオイル、アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーン等を使用できる。
【化2】
【0044】
(硬化剤としてのポリイソシアネート)
本発明の離型層を形成する離型性コーティング組成物としては、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤を含むことにより、本発明の離型性コーティング組成物を用いて半導体製造用離型フィルムに適合した離型性塗膜を形成することができる。
上記硬化剤は、反応性官能基含有含フッ素ポリマーの反応性官能基と反応して架橋するものであって、反応性官能基含有含フッ素ポリマーの反応性官能基に応じて選択される。例えば、水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対してはカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が通常採用できる。
【0045】
本発明の離型層を形成する離型性コーティング組成物の硬化剤成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネートが好適に選択され、HDI系ポリイソシアネートに基づくブロックイソシアネートを用いることにより、本発明のコーティング組成物が充分なポットライフ(可使時間)、PETとの密着性を有するものとなる。
上記ブロックイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するもので、イソシアヌレートの三量化反応、五量化反応、七量化反応により得られるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートからなる、イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、ヘキサメチレンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができるビウレットを挙げることができる。
【0046】
ブロック化剤としては、活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。上記活性水素を有する化合物としては、例えば、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、ブロックイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物をブロック化剤で反応させて得られるものが好ましい。
【0047】
ブロックイソシアネートを得るためのポリイソシアネート化合物(II)が、ヘキサメ
チレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1-トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール-3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合することにより、上記アダクトが得られる。
【0048】
HDIイソシアヌレートとHDIアダクト(ウレタン変性)のプレポリマ混合組成のものが好ましく用いられる。HDIイソシアヌレートとHDIアダクトの混合比は、9:1~5:5(イソシアヌレート型及びアダクト型のNCOモル比)の割合で含むものである。好ましくは、イソシアヌレート型の割合がこれ以上少なくなると基材フィルムとの密着性が弱くなり、伸びも低下し形状追従性が悪く、アダクト型の割合が多くなると成形時にエポキシ樹脂との離型性が低下し、速乾性、ブロッキング性も悪化する。
硬化剤の含有量は、反応性官能基含有含フッ素ポリマー中の反応性官能基1当量に対して、0.1~5当量であることが好ましく、0.5~1.5当量であることがより好ましい。
【0049】
(その他の成分)
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成するコーティング組成物は、添加剤として反応促進剤を配合することができる。反応促進剤として、例えば、有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネート化合物、アミン系化合物、オクチル酸鉛などがあげられる。具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズフタレート、ジブチルスズメトキシドなどの有機スズ化合物、有機酸性リン酸エステル、本発明では、特に、チタン系化合物が好ましく用いられ、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、チタンジイソプロポキシビスエチルアセトアセテート好ましく用いられる。
反応促進剤は1種又は2種以上を併用してもよい。反応促進剤の配合割合は反応性官能基含有含フッ素ポリマー100重量部に対して1.0×10-3~6.0×10-2重量部程度が好ましく、1.0×10-2~5.0×10-2重量部程度がより好ましい。添加量が多いと、硬化反応が促進され速すぎてハンドリング性が悪い。少ないと、硬化反応が遅く、ブロッキング性が悪化する。
【0050】
(粒子)
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成する組成物には、塗膜表面の離型性を与えるために粒子を添加することもできる。粒子としては、有機粒子及び又は無機粒子等を用いることができる。
有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオルエチレン、ジビニルベンゼン樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン、メラミン樹脂等のような樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素等の金属塩、カオリン、クレー、タルク、亜鉛華、鉛白、ジークライト、石英、ケイソウ土、パーライト、ベントナイト等のような
無機粒子が使用できる。これらの粒子は、いずれか1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、より好ましい表面粗さ、滑り性、耐ブロッキング性が得られるという観点から、無機粒子が好ましい。とりわけ、酸化チタン粒子、シリカ粒子が好ましい。また、塗膜中にボイドが形成され難いという点、また、適した表面態様が得やすいという点から、ゾルゲルタイプシリカが好ましく用いることができる。
粒子の形状としては、特に限定されず、球形、塊状不定形等が用いられる。例えば、半導体チップを樹脂で封止するとき離型性コーティング組成物を離型層として用いた場合、離型性及び樹脂漏れを抑止する効果が高いため、球形のものが好ましい。
【0051】
粒子の平均粒径は、0.5μm~10μmが好ましい。粒子の平均粒径が0.5μm以上であれば、表面に必要な大きさの凹凸が形成され、表面に付着し難くなり、表面付着物を容易に取り除くことができ、また、基板又は基体との離型性が得られやすい。平均粒子径が10μm以下であれば、封止の際、金型によって押圧された粒子が塗膜表面に、基板との密着性を阻害するような凸部を生じさせにくく、バリ発生を抑制できる。
粒子の平均粒子径は、コールターカウンター、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置、遠心沈降式粒度分布測定装置等で測定することができるが、ここでは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定し、平均粒子径を求めた。
粒子としては、比表面積が低い程,表面に凹凸が形成され易いが,比表面積が低すぎると分散性が悪くなるため、例えば、ゾルゲルタイプシリカであれば、粒径9μm,比表面積300m2/gのものが好ましい。
その添加量は、全質量の3~85質量%であることが好ましく、5~70質量%であることがより好ましい。
ゾルゲルタイプシリカの添加など最適固形分濃度(N.V.30~40%)の範囲とすることにより表面に凹凸を形成し、ブロッキングを防止でき、離型性などコーティング材として優れたものが得られる。
【0052】
(その他の添加材)
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成するコーティング組成物は、その他の添加材として、必要に応じて可塑剤、分散剤、若しくは分散安定剤、増粘剤、消泡剤、滑り性付与剤、密着向上剤、剥離力コントロール剤、顔料、レベリング剤、通常の防腐剤;pH調整剤など公知のものを加えることができる。
例えば、作業性や加工性の点から、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルカルビトールフタレート、メチルセロソルブなどの可塑剤や造膜助剤、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどの分散剤若しくは分散安定剤、ノニオン系界面活性剤などの湿潤剤、保護コロイド用の水溶性高分子化合物などの増粘剤、シリコーン油、鉱油などの消泡剤、炭酸カルシウム、クレー、シリカなどの通常の充填剤などを配合してもよい。
【0053】
(コーティング塗工液)
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を形成するコーティング組成物の塗膜を形成するためコーティング組成物を、例えば、有機溶媒に溶解した溶液型、水性溶媒に分散した水分散型、非水分散型ディスパージョン、粉体化した粉体型さらにこれらに硬化剤を配合した硬化型組成物などの態様で利用することができる。しかし、取扱性、作業性に優れた溶液型がより好ましい。有機溶媒溶液とする場合は、含フッ素共重合体の濃度を5~95質量%、好ましくは10~70質量%とすればよい。
【0054】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成するコーティング組成物は使用に際し、有機溶剤を含有する塗工液の形態で用いることが好ましく、該有機溶剤は、処理浴安定性、各種基材に対する塗工性の向上、塗工量及び粘度の調整を目的として配合される成
分であり、本発明の含フッ素ポリマーは使用する溶媒の種類や条件の制限が少なく、コーティング組成物の成分を均一に溶解できる任意量の有機溶剤が使用でき、組成物を溶媒により希釈し、塗膜形成効率、取扱性、乾燥速度などを調整することができる。
【0055】
(有機溶媒)
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層に用いるコーティング組成物の塗膜形成のため用いる共重合体に好適に使用できる有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、tert-ブタノール、iso-プロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;ジメチルスルホキシドなど、またはこれらの混合物などがあげられる。特に、酢酸エチル及び又は酢酸ブチル/MEKの組合せがコーティング組成物の速乾性、ブロッキング性、粘度などコーティング材料として作業性、取扱性の面で好ましいものが得られる。
【0056】
また、水分散型の組成物とする場合は、水または水と親水性溶媒との混合溶媒に、必要ならば乳化剤を用いて分散させ、濃度10~80重量%とするのが好ましい。親水性溶媒としては、たとえばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-アミルアルコール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノールなどのアルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、セロソルブアセテート、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブアセテート、酢酸カルビトールなどのエステル類などがあげられる。
【0057】
本発明の離型フィルムに用いるコーティング組成物塗工液の固形分濃度は、特に限定されず、使用方法に応じて適宜調整することができる。本発明のコーティング組成物の全質量に対する固形分濃度は、10~70質量%であり、好ましくは、20~60質量%である。特に好ましくは、25~45質量%である。
【0058】
(塗工液の調製)
本発明の離型フィルムに用いるコーティング組成物塗工液は、上記したように必要に応じて他の成分を、有機溶媒に混合、溶解または分散することにより調製することができる。
コーティング組成物塗工液は、容器内でハイスピードミキサ、ホモミキサ、ペイントシェーカーなどのミキサや混合溶解機など公知の装置を使用して上記したような水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基含有モノマーと含フッ素モノマーの含フッ素共重合ポリマー、アミノ基などの官能基を有するメチルポリシロキサンなどの変性シリコーンオイル、ゾルゲル系シリカを、含フッ素ポリマーに好適な有機溶剤又は混合溶剤に添加し、混合分散液とし、イソシアヌレート型とアダクト型HDI系ポリイソシアネート、チタン系触媒を加え、攪拌し、均一に分散することによりコーティング組成物塗工液を調製する。ここでは、混合、分散のためエッジタービン型の高速ディゾルバーを用いたが、特に限定されるものではない。
【0059】
(基材フィルム)
工程離型フィルムに用いる基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリエチレンナフタレ-ト等のポリエステル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリ-ルフタレ-ト系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエ-テルスルホン系樹脂、セルロ-ス系樹脂等の各種の樹脂のフィルムないしシ-ト(単に、フィルムという)を使用目的、使用条件に応じて変更し使用することができる。
【0060】
本発明の半導体製造用離型フィルムに用いられる基材フィルムは、環境(温度、湿度)の変化により、基材にシワが発生し、半導体製造用離型フィルムから半導体パッケージ(装置)が剥離する、いわゆる浮き剥がれトラブルが発生することがある。また、圧縮時に離型フィルムを噛み込み、離型フィルムを剥離することが困難になったり、離型フィルムの破れを生じたりする。このため、本発明では半導体製造用離型フィルムに適合する基材フィルムは、寸法安定性の良い基材フィルムが好適に用いられる。
寸法安定性を付与するため各種の樹脂のフィルムを製造し、更に、必要に応じて、例えば、ロール又はテンタ-方式の延伸機により、あるいは、チューブラー方式等を利用して延伸温度70~120℃、延伸倍率2.5~7倍で1軸ないし2軸方向に延伸する。延伸には、逐次延伸又は同時延伸を採用することもできる。そして、引き続き、170℃~270℃の温度で緊張下又は適度な弛緩下で熱処理(アーニリング処理)して延伸配向フィルムとした、本発明の半導体製造条件に適合した各種の樹脂フィルムを使用することができる。
【0061】
本発明の半導体製造用離型フィルムに用いられる基材フィルムは、既に記載したとおり、優れた半導体パッケージを製造するため、従来の離型フィルムにおける課題を解決するものであって、安定した離型性を示し、後処理を要することのない離型フィルムを構成できるものであることが求められる。
半導体パッケージを成形したときに、金型追従性を有するものであること、成形時に離型フィルムの噛み込みのない成形ができること、厳しい製造条件下でも使用に耐える離型フィルムであること、コーティング材と基材フィルムとの間の密着性が強固でコーティング材が剥がれないことなどが求められている。そのような離型フィルムを提供するため、コーティング材料に求められる物性を補完しつつ上記性質を備えるように適合化処理されるために必要となる基材フィルムが求められ、選択される。
【0062】
本発明の半導体製造用の離型フィルムにおいては、特に、エポキシ樹脂との易剥離性、基材フィルムとの密着性及び金型追従性を備え得る離型フィルムの基材フィルムとしてポリエステル系樹脂のフィルムを使用することが本発明の離型層を形成する離型性コーティング組成物と組み合わせた半導体製造用離型フィルムとして好ましいものである。
【0063】
本発明の半導体製造用離型フィルムに用いられる基材フィルムには、特に、適合化処理されたポリエステル系フィルムが好ましく用いられ、ポリエステル樹脂としては、公知のポリエステル系樹脂より任意に選択できるが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましく、オートクレーブ成形時の耐熱性、熱安定性、寸法安定性などを考慮すれば、1種の芳香族ジカルボン酸と1種の脂肪族グリコールとからなるポリエステルであってもよく、1種以上の他の成分を共重合させた共重合ポリエステルであってもよい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。一方、共重合ポリエステルの成分として用いるジカルボン酸としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタ
ル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。またp-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸も用いることができる。更にその他の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよい。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが例示される。これらのポリエステル系合成樹脂を公知の方法により成膜したフィルムを用いることができる。
【0064】
本発明の基材フィルムは、単層フィルムでも、同種又は互いに異なる2種以上のフィルムを公知の方法により積層した多層構造フィルムのいずれでもよいが、コストの観点からは単層フィルムが好ましい。基材フィルムの厚みには特に制限はなく、目的に応じて選択すればよいが、得られた半導体製造用離型フィルムのコストや使用時の作業性の観点から、フィルムないしシ-トの膜厚としては、6~100μm程度、より好ましくは、9~50μm程度が好ましい。フィルムが厚すぎるとコストが上昇し、薄すぎると取り扱い性が低下し、フィルム表面に付着した異物の影響を受けやすく、しわになり易くなることから、いずれも好ましくない。
【0065】
本発明における離型フィルムを構成するため適合するポリエステル系フィルムにおいては、フィルム加工中の熱履歴等により、フィルム中に含有しているオリゴマーがフィルムの表面に析出・結晶化する量を低減するために、低オリゴマー化したポリエステル系フィルムを用いることが特に好ましい。ポリエステル系フィルム中のオリゴマー量を低減する方法としては、例えば、固相重合法等を用いることができる。また、低オリゴマー化したポリエステルフィルムとして、単層又は多層構造フィルムの最外層に低オリゴマー化したポリエステルフィルムを積層したフィルムであってもよい。
【0066】
本発明においては、基材フィルム上に離型層を設ける前に、基材フィルム表面にプレコーティング、アンカーコート又は物理的、化学的表面処理などの前処理をすることを必要としないものである。しかし、一般に、製造効率、コストの低減を考慮しない限りにおいて、基材フィルムと経時で密着性が安定し、密着強度が向上し、離型層が剥離し難くなるように、離型層における密着強度を補強するため及び又は離型層の平坦性を向上させるために、離型層を塗工する前に、前処理を行い、基材フィルムと離型層の密着強度や表面粗さを改善させても良い。
【0067】
(半導体製造用離型フィルム)
次に、本発明の半導体製造用離型フィルムの優れた特徴である、前記した基材フィルムに離型層を形成する少なくとも片面に設けられるコーティング組成物塗布層を設けることについて説明する。
本発明において離型フィルムを構成するコーティング組成物のコーティング塗工液については前記したとおりである。前記コーティング塗工液を用い前記した基材フィルム(ポリエステル系)に塗布層を設ける場合、本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成するコーティング組成物を直接又は適当な有機溶剤で希釈した後、塗工液をフィルム上に塗布することで塗膜形成積層フィルムを製造するのが好ましく。塗膜層を形成する方法としては、公知の任意の塗布方法が適用でき、例えばグラビアロールコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法、ドクターブレード法、さらに薄膜の塗工には高精度のオフセットコーター、多段ロールコーター等を単独または組み合わせて適用することができる。容器内の酢酸ブチル溶剤で希釈したコーティング組成物塗工液を基材フ
ィルムに適用する方法として、ポリエステル系フィルムを製膜中または形成したフィルム上に塗布することで離型層として形成できる。
【0068】
本発明の離型フィルムの離型層を構成するコーティング組成物の基材への塗工量は、塗布すべき基材の材質によっても異なるが、固形分の量として0.1~5.0g/m2の範囲が好ましい。少ない場合は、基材フィルムの被覆性が低下し、離型層としての離型性が十分に得られない恐れがある。上限を超える場合、乾燥ムラが発生しやすく、離型層の表面強度が低下し、半導体製造過程で転着し、離型層の一部が取られ易くなるため好ましくない。また、外観の悪化、フィルムのブロッキング性、ライン速度の低下による製造効率の低下を生じ易い。
【実施例
【0069】
次に、実施例、参考例を挙げて本発明の離型フィルム及び離型フィルムを用いた半導体パッケージの製造における作用効果を明らかにするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
(コーティング組成物塗膜の評価)
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を構成する離型性コーティング組成物の塗膜の性状及びその塗膜の物性を測定し、半導体パッケージの製造用の離型層に適合するコーティング組成物を評価するため、以下のように、表1~4に示すような離型層を形成する塗膜を構成するコーティング組成物を調製した。そして、コーティング組成物の塗膜を有する離型フィルムを製造し、実施例のコーティング組成物の塗膜を有する離型フィルムの試験片を切り出し、該試験片を用いて測定、評価した。
【0071】
(実施例)
容器内に、酢酸ブチル6.2質量部と、フッ素樹脂モノマー単位として4フッ化エチレンモノマー76モル%、ビニルモノマー単位としてヒドロキシエチルアリルエーテル24モル%の水酸基を反応性官能基として含有するフッ素ポリマー(ダイキン工業社製、ゼッフルGK570)100質量部と、コーティング組成物は、いずれも、ゾルゲル型シリカ(平均粒径9μm、富士シリシア化学社製,サイリシア380)11.5質量部を加え撹拌し、均一に混合分散を行った。
次いで、この混合分散液にアミノ変性メチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、KF865)0.3質量部を添加し、さらに1時間撹拌を行なったのち,イソシアヌレート型HDI系ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製,スミジュールN3300)10質量部とアダクト型HDI系ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、デュラネートAE700-100)7.8質量部とチタンジイソプロポキシビスエチルアセトアセテートチタン系触媒を0.03質量部加え、有機溶媒として酢酸ブチルで希釈したものを加え、30分撹拌し、得られた配合混合液をフィルター(目の開き10μm)で濾過して離型性コーティング組成物を得た。
【0072】
(離型フィルムのコーティング組成物塗膜の形成方法)
表1~4に示す調製した反応性官能基含有フッ素ポリマー含有コーティング組成物を酢酸エチルとMEKの混合溶媒により粘度10cpsになるまで希釈し、キスリバース若しくはダイレクトグラビアリバース方式のコーティング装置を用い、ラインスピード10~20m/min、硬化(乾燥)温度120~160℃、10~60秒の塗工条件で本発明の離型フィルムに適合するポリエチレンテレフタレートフィルム基材(帝人社製、テトロンG))厚さ38μmを用い、該基材フィルム上に少なくとも片面に乾燥塗膜の厚みが5μmになるように塗布し、加熱乾燥した。ここでは、ポリエチレンテレフタレートフィルムとして、低分子オリゴマーをできるだけ除き、さらに熱安定性を付与するためアーニリング処理したものを用いた。
その後、40℃、48時間エージング処理し、塗膜を完全に硬化させた。
本発明の少なくとも片面にコーティング組成物塗膜積層ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型フィルム(図1)から、長さ200mm×幅15mmの短冊状試験片を切り出し、試験片とした。
そして、各実施例の離型フィルムについてコーティング組成物の塗膜の性状及びその塗膜の物性等を、下記各測定方法を採用し、上記試験片を測定し、その測定結果を表1~4にまとめて示すとともに、離型フィルムの離型層としてのコーティング組成物の塗膜の適合性を評価した。
【0073】
本発明の離型層としては、コーティング組成物の塗膜の対エポキシ離型性、PETとの密着性、伸び、滑り性、速乾性及びブロッキング性などに関し、それぞれに適した測定方法により反応性官能基含有フッ素樹脂、変性シリコーンオイル含有量(Si含有量)、ゾル・ゲル型シリカの大きさ、濃度、触媒含有量、ポリイソシアヌレート、HDI系イソシアネートの種類及び各成分割合の影響について評価した。
離型層としてのコーティング組成物塗膜を形成した離型フィルムについて、試験片に対し下記測定及び評価を行った。
本発明の半導体製造用離型フィルムに用いる離型性コーティング組成物の塗膜からなる離型層は、表1~表4に示したコーティング組成物が利用できる。
【0074】
[対エポキシ離型性評価]
ホットプレートの上にポリエチレンテレフタレート(PET)単体フィルムを載せ,その上に下記黒エポキシ樹脂0.5gを塗布し、そのエポキシ樹脂塗布面上に、離型性コーティング組成物をポリエステルフィルム上に塗布した上記幅30mm×長さ150mmの試験片を離型性コーティング組成物の塗膜面を合わせ、加熱温度175℃で黒エポキシ樹脂を硬化させる。硬化後,剥離力測定には、引張剥離試験機を使用し,試験片とエポキシ樹脂の剥離力を測定する。
黒エポキシ樹脂組成物として、エポキシ樹脂(サンユレック(株)製「EF-200」)にフィラー径20μm/55μmのフィラー、ここでは、球状シリカを83質量%添加したものを用いてゲル化処理してなるエポキシ樹脂組成物を用いた。
剥離速度100mm/min,剥離時温度23℃,175℃の条件下、JIS K 7125、JIS Z0237に準拠して剥離を行った。下記判定基準により剥離力の評価を行った。
剥離力:3:100 MN/20mm未満
2:100~200 MN/20mm
1:200 MN/20mm以上
【0075】
[PETとの密着性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に設けられた離型性コーティング組成物の塗膜の密着性の評価手法としては、JIS K 5400」の試験方法により行った。
試験片上の塗膜に対して、カッターナイフを用いて塗膜を貫通してポリエチレンテレフタレートフィルム基材(素地)に到達するまでの切り込みを11×11の賽の目状に入れ、塗膜の切れ目における傷の広がりの大小から、塗膜のもろさや基材への付着性の良否を評価するもので、特に、JIS Z 1552」で規定された手法によってカットした塗膜面にセロハン粘着テープをはりつけ,塗膜にテープを付着させた後,テープの端を持って塗膜面に直角に保ち,瞬間的にひきはがすセロハンテープ剥離試験が施され、はがした時の状態を観察し密着性の良否を数値化して、下記判定基準により密着性の評価を行った。
3:剥離無し
2:5%未満の剥離
1:5%以上の剥離
【0076】
[伸び(膜割れ防止)評価][熱安定性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に剥離性コーティング組成物の塗膜層を形成して積層フィルムとし、JIS K 7127に準拠した方法で引張り破断伸びを測定した。測定は、幅15mm×長さ200mmの試験片を,温度180に保持した空気循環式恒温槽中に垂直につるし,30分、1時間、4時間、16時間加熱した後取り出す。 室温に30分間放置してから,引張試験機(エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機 RTG-1210)を使用して測定速度300mm/min, 測定温度23℃、175℃で引張り,塗膜の割れが発生する伸度を測定し,各時間5本の平均値を求める。
熱安定性評価に関しては、前記方法に従い180℃で1000(min)にわたり、引張強度の変化及び破断伸度の変化を測定し、引張強度保持率(%)及び破断伸度の変化(%)により半導体製造用離型フィルムを評価した。
なお、フィルム成形時のMD方向(流れ方向)及びTD方向(流れに直交する方向)の各方向について、実際にフィルムに形成する塗膜の厚み5μmで行い、雰囲気温度(測定温度)は23℃とした。下記判定基準により膜割れの評価を行った。
3:200%以上まで膜割れしなかった
2:100~200%で膜割れが生じた
1:100%以下で膜割れが生じた
【0077】
[突き刺し強度評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に離型性コーティング組成物の塗膜を設けた積層フィルムに関して、破れ・ピンホールの形成のし易さをJIS K 1707に準拠した突き刺し試験により測定した。
測定は、幅50mm×縦50mmの試験片を突き刺し試験機(島津社製VE20D型ストログラフロードセル容量 1kN)に固定し、JIS Z 1707に準拠し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を50mm/minの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定する。試験片の突き刺し強度の測定値は、試験片の数5片の平均値から求めた。
【0078】
[滑り性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に離型性コーティング組成物の塗膜層を形成して積層フィルムとし、50×50mmサイズにカットし、試験片とし、ホットプレート上にステンレス板を載せ、さらに試験片の塗膜面(離型性面)を下に向けて載せ、その上に100gのステンレス製分銅を載せ、剥離試験機を使用して、JIS K 7125に準拠して剥離速度100mm/min、温度23℃、175℃で試験片の塗膜面とステンレスとの滑り性を測定し、動摩擦係数を求め、評価した。下記判定基準により滑り性の評価を行った。
3:0.3未満
2:0.3~1.2以上
1:1以上
【0079】
[速乾性・耐ブロッキング性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に乾燥膜厚が5μmとなるようにコーティング組成物を塗布して塗膜層を形成した積層フィルムとし、乾燥温度150℃、20秒で溶剤を乾燥除去し、ロール状に巻いて40℃、48時間静置保持した。塗膜の粘着性、付着性をブロッキングの有無により定性的に評価した。下記判定基準により速乾性・耐ブロッキング性の評価を行った。
3:150℃×60秒以内でブロッキング未発生
2:150℃×60秒~120秒でブロッキング未発生
1:150℃×120秒でブロッキング
【0080】
[加熱収縮性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に離型性コーティング組成物の塗膜層を形成して積層フィルムとし、離型性幅20mm×長さ150mmの試験片を縦横方向5か所ずつ採り、それぞれの試験片の長さ方向の中央部に100mm間隔の標線を付け、離型フィルムの加熱収縮性をJIS K 1715に準拠して測定した。
JIS Z 1715に準拠して該試験片を、温度180℃に保持した空気循環式恒温槽中に試験片を垂直につるし,5分間加熱した後、取り出し、室温に30分間放置してから標線間距離を測定した。測定値は、5片の加熱収縮率の平均値とした。加熱収縮率は、次式により求めた。
【化3】
【0081】
[金型追従性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に離型性コーティング組成物の塗膜層を形成して積層フィルムとし、幅15mm×長さ200mmの試験片を切り出し、試験片を恒温槽付き引張試験機(島津オートグラフAG-IS MS(床置)形)を使用してJIS K 7127に準拠し、測定速度300mm/min,測定温度175℃時の伸度200%の弾性率(モジュラス)及び破断伸度(%)を測定した。さらに、追従性、噛み込み耐性を5段階で評価した。弾性率(モジュラス)、破断伸度(%)の測定値は、試験片の数は10片とし,その平均値から求めた。
【0082】
[フィルムカール性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に離型性コーティング組成物の塗膜層を形成して積層フィルムとし、幅100mm×長さ100mmに試験片を切り出し,金属板の上に試験片をのせる。金属板を測定温度23℃と175℃にし、30秒静止し、試験片が金属板から浮き上がった部分の最大高さ(カールした高さ)を測定した。フィルムカール性の測定値は、試験片の数は5片とし,その平均値から求めた。
【0083】
[金型汚染・ガスバリア性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に離型性コーティング組成物の塗膜層を形成して積層フィルムとし、JIS K 7126-1(差圧法)に準拠して測定温度として23℃と175℃で酸素及びチッ素のガス透過度を測定した。
【0084】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を形成するコーティング組成物は、表1に示す実施例1-1~1-5及び参考例1-1~1-3の成分組成からなる組成物であり、上記実施例の調製方法と同様の方法により調製したものであって、反応性官能基含有フッ素ポリマーと硬化剤として添加するHDIイソシアヌレートとHDIアダクトの成分比及び濃度(質量%)を、それぞれ、表1のような成分組成のものに変更する以外は、実施例と同様にしてコーティング組成物を調製したものである。
そして、離型層を形成するコーティング組成物に添加されるHDI系ポリイソシアネートの成分濃度が、本発明の離型層であるコーティング組成物の塗膜に対してどのような影響を及ぼしているか確認するため上記実施例と同様、離型フィルムを製造し、上記評価方法により測定、評価した。
それぞれの離型層を形成するコーティング組成物の成分、配合割合の影響及び評価は、表1に示したとおりである。参考例1-1~1-3には、本発明の離型層を形成するコーティング組成物として実施例として問題ない機能、性能を有しているが、多面的に評価したとき好ましくない面が発現されるものについて評価基準から外れたものとして参考例として挙げたものであり、本発明の範囲内での相対的な比較対象を例示したものである。
【0085】
【表1】
【0086】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を形成する実施例2-1~2-5のコーティング組成物は、添加する変性シリコーンオイルの濃度(質量%)を、それぞれ、表2のような組成のものに変更する以外は、実施例と同様にして離型層を形成するコーティング組成物を調製した。
そして、離型層を形成するコーティング組成物に添加される変性シリコーンオイルとして、好ましいアミノ変性メチルポリシロキサン(側鎖型)を用いたもので、その成分濃度が、本発明の離型層を形成するコーティング組成物の塗膜に対してどのような影響を及ぼしているか確認するため上記実施例と同様、離型フィルムを製造し、上記評価方法により測定、評価した。
それぞれの離型層を形成するコーティング組成物の成分、配合割合の影響及び評価は、表2に示したとおりである。参考例2-1及び2-2は、本発明の離型フィルムの離型層を形成するコーティング組成物の実施例としても問題ない機能、性能を有しているが、多面的に評価したとき好ましくない面が発現されるものについて評価基準から外れたものとして参考例として挙げたものであり、本発明の範囲内での相対的な比較対象を例示したものである。
【0087】
【表2】
【0088】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を形成する実施例3-1~3-7のコーティング組成物は、添加するシリカ粒子の粒径サイズとその濃度(質量%)を、それぞれ、表3のような組成のものに変更する以外は、実施例と同様にしてコーティング組成物を調製した。
コーティング組成物に添加されるシリカ粒子の大きさ及び成分濃度が、本発明の離型層を形成するコーティング組成物の塗膜に対してどのような影響を及ぼしているか確認するため上記実施例と同様、上記評価方法により測定、評価した。それぞれの離型フィルムの離型層を形成するコーティング組成物での影響及び評価は、表3に示したとおりである。
参考例3-1~3-4は、離型性フィルムとして使用される本発明の離型フィルムの離型層を形成するコーティング組成物の実施例としても問題ない機能、性能を有しているが、多面的に評価したとき好ましくない面が発現されるものについて評価基準から外れたものとして参考例として挙げたものであり、本発明の範囲内での相対的な比較対象を例示したものである。
【0089】
【表3】
【0090】
本発明の半導体製造用離型フィルムの離型層を形成する実施例4-1~4-4のコーティング組成物は、添加する触媒の濃度(質量%)を、それぞれ、表4のような組成のものに変更する以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。コーティング組成物に添加される触媒としてチタンジイソプロポキシビスエチルアセトアセテートを好ましく用いたもので、その濃度が、本発明のコーティング組成物の塗膜形成に対してどのような影響を及ぼしているか確認するため上記実施例と同様、上記評価方法により測定、評価した。それぞれの離型フィルムの離型層を形成するコーティング組成物での影響及び評価は、表4に示したとおりである。
参考例4-1~4-3は、本発明の離型フィルムの離型層を形成するコーティング組成物としての実施例としても問題ない機能、性能を有しているが、多面的に評価したとき好ましくない面が発現されるものについて評価基準から外れたものとして参考例として挙げたものであり、本発明の範囲内での相対的な比較対象を例示したものである。
【0091】
【表4】
【0092】
本発明の半導体製造用離型フィルムに採用した実施例のコーティング組成物の離型層は、表1~4に示したとおり半導体製造用離型フィルムの離型層の機能に基本的に適合し得る性質及び物性を備えるものであることが確認された。
【0093】
本発明では、そこで、前記実施例において調製したコーティング組成物である実施例1-3の離型性コーティング組成物の塗工液をポリエチレンテレフタレート表面に前記離型層の形成方法に従って塗布し、硬化して半導体製造用離型フィルムを作製した。
その半導体製造用離型フィルムを、図2に示すような半導体パッケージの製造方法において離型フィルムとして用いられる。その際、離型層をエポキシ樹脂材料側にして金型内に配置し、金型内にエポキシ樹脂を充填し、半導体パッケージを配置した金型と合わせ、圧縮するようにして実際に半導体パッケージを製造する。
このような半導体パッケージの製造に用いた時、前記表1~4に示したコーティング組成物塗膜が示す性質及び物性の他に、半導体パッケージ製造において特有の測定及び評価項目について、さらに測定及び評価した。その結果を表5に示す。
【0094】
本発明は、離型層に用いた実施例1-3のコーティング組成物の塗膜離型層は、表1に示したとおり、離型フィルムとして求められる基本的な性質、物性及び性能を有するものであり、従来の離型フィルムに比較しても遜色のない優れた物性、特性を有するものであり、そして、表5に示すように、実際に半導体パッケージを製造するために必要とされる性能、物性及び特性についてもさらに測定、評価したところ、以下に示すとおり、半導体製造用離型フィルムとして有効に機能し、適合するものであると評価できるものであった。
【0095】
本発明の離型フィルムは、対エポキシ離型性評価に関し、エポキシ樹脂との離型力(剥離強度)は、半導体パッケージの製造温度に近い温度においても安定した剥離強度を示したのに対し、従来のETFEあるいはポリエステルフィルムの離型力は、本発明のものより3から4倍以上力を必要とし、あるいは剥がせず、離型フィルム自体が破壊してしまうような遙かに大きい剥離強度を必要とするものであった。
本発明の離型フィルムは、成形時の金型追従性、滑り性についてみると、本発明の離型フィルムは、動摩擦係数が広範な温度範囲(23~175℃)で、従来の離型フィルムよりも1/2~1/6程度と小さく、金型との滑りを生じ易く、しかも200%モジュラスは高価なフッ素樹脂には及ばないものの60MPaと比較的小さく、それでいて破断伸度が370%と適度な伸びを有するもので、金型に充填したフィルムが真空引き等により金型にフィットすることができるものであった。これに対し、従来の離型フィルムは、小さい力で伸び易く、追従し易いものの、熱的に安定性が低く、成形性、賦形性の形状維持し難いものである。
【0096】
【表5】
【0097】
本発明の離型フィルムは、フィルムカール性については、本発明の離型フィルムは、常温では、殆どカールせず、成形温度でも3mm程度の反りが見られた。これに対し、従来の離型フィルムは、常温では本発明と同じように反りは見られないが、成形温度近傍では5倍以上の反りが見られ、半導体製造時の温度では、金型からの剥がれを生じ易く、シワや気泡を生じ易く、外観が悪くなるものと見られる。また熱安定性については、図3に示すように引張特性が成形温度近傍でも引張強度の保持率、破断伸度保持率ともに高いレベルで維持し、熱的に安定であることを示している。
本発明の離型フィルムは、突き刺し強度の測定に見られるように、従来の離型フィルムよりも強靱で破れにくく、破れやピンホールが生じにくい、半導体製造に適合した強度が得られる。
さらに、ガスバリア性について見ると、成形温度近傍での酸素及び窒素に対するガス透過度は、23℃で、50cc/m2・24hr・atm[O2]、10cc/m2・24hr・atm[N2]と非常に小さく、従来の離型フィルムに比べ、ETFEで170cc/m2・24hr・atm[O2]、520cc/m2・24hr・atm[N2]であり、PET基材フィルム単体で2500cc/m2・24hr・atm[O2]、440cc/m2・24hr・atm[N2]であり、175℃で酸素透過度は、従来の離型フィルムに比べ、1/10程度と離型フィルム中の揮発成分等の透過を抑えることができ、金型の汚染を防ぐことができ、工程管理の保守点検の負担を少なくできるものである。
【0098】
本発明の半導体製造用離型フィルムは、離型層を構成するコーティング組成物の成分組
成を調製することで、離型性の面から対エポキシ離型性としての剥離強度が経時で変化し難い、PETとの密着性に優れた半導体製造用離型フィルムを製造できる。半導体製造用離型フィルムとしては、剥離強度の測定方法による剥離強度が200mN/20mm以下に調製することが好ましく、特に、100mN/20mm以下に調製することが好ましい。剥離強度が200mN/20mm以上になると、半導体パッケージを製造した後、半導体パッケージに離型層の一部が取られ、半導体パッケージの樹脂封止成形品に混入し、半導体パッケージ製品として好ましくない。
離型フィルムの伸びは、膜割れ防止の観点及び金型追従性の観点から、100%以上に調製することが好ましく、200%以上であるような離型フィルムとすることがより好ましい。さらに、本発明の離型フィルムは、金型追従性との関係から、滑り性を有するもので、摩擦係数が1.2未満、より好ましくは、0.3未満となるように調製することが好ましい。
離型フィルムの伸びが100%以下であると半導体パッケージに追従できず、半導体製造用離型フィルムが浮き剥がれトラブルが発生し、半導体パッケージを賦形することができず好ましくない。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の半導体製造用離型フィルムは、優れた柔軟性、熱的安定性、離型性能及びその他物性を有するものであり、半導体製造用として適合する機能を有するもので、有用である。種々のシート製造用や製造工程において使用する汎用の工程シートの離型フィルムとしても使用することができる。
図1
図2
図3