(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】有機分子、特に光電子デバイスに用いる有機分子
(51)【国際特許分類】
C07D 209/86 20060101AFI20220728BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20220728BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20220728BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220728BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220728BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220728BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220728BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20220728BHJP
H01L 51/46 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
C07D209/86
C07D403/14
C09K11/06 640
C09K11/06 645
H05B33/10
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H01L29/28 100A
H01L29/28 250H
H01L29/28 310J
H01L31/04 166
H01L31/04 154C
(21)【出願番号】P 2020509507
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2018072760
(87)【国際公開番号】W WO2019038376
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-02-18
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】特許業務法人PORT
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルホナ エステバン アラマ
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/005699(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0186973(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H05B
H01L
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
IVaの構造を含む有機分子であって、
【化1】
式
IVa
式中
、
R
1は、出現ごとに互いに独立して、水素
および重水素
から成る群から選択され、
R
2は、出現ごとに互いに独立して、水素
および重水素
から成る群から選択され、
R
c
は、出現ごとに互いに独立して、
水素、
重水素、
Me、
i
Pr、
t
Bu、
Ph基(Me、
i
Pr、
t
Bu、CN、CF
3
、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい)、
ピリジニル基(Me、
i
Pr、
t
Bu、CN、CF
3
、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい)、
ピリミジニル基(Me、
i
Pr、
t
Bu、CN、CF
3
、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい)、
カルバゾリル基(Me、
i
Pr、
t
Bu、CN、CF
3
、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい)、
トリアジニル基(Me、
i
Pr、
t
Bu、CN、CF
3
、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい)、
および、N(Ph)
2
から成る群から選択される、有機分子。
【請求項2】
R
1およびR
2がHである、請求項
1に記載の有機分子。
【請求項3】
R
2-置換、シアノ-置換1-ブロモ-2-フルオロフェニルを反応物質として含む、請求項1
または2に記載の有機分子を調製するためのプロセス。
【請求項4】
光電子デバイス中における、発光体および/またはホスト材料および/または電子輸送材料および/または正孔注入材料および/または正孔ブロッキング材料としての、請求項1
または2に記載の有機分子の使用。
【請求項5】
前記光電子デバイスが、
・ 有機発光ダイオード(OLED)、
・ 発光電気化学セル、
・ OLEDセンサー、
・ 有機ダイオード、
・ 有機太陽電池、
・ 有機トランジスタ、
・ 有機電界効果トランジスタ、
・ 有機レーザー、および
・ ダウンコンバージョン素子、から成る群から選択される、請求項
4に記載の使用。
【請求項6】
(a) 発光体および/またはホストの形態である、請求項1
または2に記載の少なくとも1つの有機分子と、
(b) 請求項1
または2に記載の前記有機分子とは異なる、一つまたは複数の発光体材料および/またはホスト材料と、を含み、
(c) 一つもしくは複数の色素および/または一つもしくは複数の溶媒を含んでもよい、組成物。
【請求項7】
有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル、OLEDセンサー、有機ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機電界効果トランジスタ、有機レーザーならびにダウンコンバージョン素子から成る群から選択されるデバイスの形態である、請求項1
または2に記載の有機分子または請求項
6に記載の組成物を含む、光電子デバイス。
【請求項8】
- 基板、
- アノード、
- カソード、
- 少なくとも1つの発光層を含み、
前記アノードまたは前記カソードが前記基板上に配置され、
前記発光層が前記アノードと前記カソードとの間に配置され、請求項1
または2に記載の有機分子または請求項
6に記載の組成物を含む、請求項
7に記載の光電子デバイス。
【請求項9】
請求項1
または2に記載の有機分子または請求項
6に記載の組成物を用い、真空蒸着法または溶液からの前記有機化合物の処理を含む、光電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光有機分子に関するものであり、ならびに有機発光ダイオード(OLED:organic light-emitting diodes)および他の光電子デバイスにおける当該発光有機分子の使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明の目的は、光電子デバイスに用いるために適切な分子を提供することである。
【0003】
この目的は、新種の有機分子を提供する本発明により達成される。
【0004】
本発明の有機分子は、純粋な有機分子である。すなわち当該有機分子は、光電子デバイスにおける用途が知られている金属錯体とは対照的に、全く金属イオンを含有しない。
【0005】
本発明によれば、有機分子は、青色、水色または緑色のスペクトル領域に発光極大を示す。有機分子は、特に420nm~520nm、好ましくは440nm~495nm、より好ましくは450nm~470nmにおいて発光極大を示す。本発明による有機分子のフォトルミネッセンス量子収率は、特に20%以上である。本発明による分子は、特に熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す。光電子デバイス、例えば、有機発光ダイオード(OLED)における本発明による分子の使用は、デバイスのより高い効率をもたらす。対応するOLEDは、公知の発光体材料および同等の色を備えたOLEDよりも高い安定性を有する。
【0006】
本発明による有機発光分子は、以下の式Iの構造を含む、またはそれから成り、
【化1】
式I
【0007】
V、WおよびYは、互いに独立して、CNおよびR2から成る群から選択される。
【0008】
Zは、出現ごとに互いに独立して、直接結合、CR3R4、C=R3R4、C=O、C=NR3、NR3、O、SiR3R4、S、S(O)およびS(O)2から成る群から選択され、
【0009】
R1は、出現ごとに互いに独立して、
水素、
重水素、
炭素数1~5のアルキル基、
随意に一つまたは複数の水素原子は重水素で置換されている、
炭素数2~8のアルケニル基、
随意に一つまたは複数の水素原子は重水素で置換されている、
炭素数2~8のアルキニル基、
随意に一つまたは複数の水素原子は重水素で置換されている、および
炭素数6~18のアリール基、
随意にMe、iPr、tBuおよびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、から成る群から選択される。
【0010】
R2は、出現ごとに互いに独立して、
水素、
重水素、
炭素数1~5のアルキル基、
随意に一つまたは複数の水素原子は重水素で置換されている、
炭素数2~8のアルケニル基、
随意に一つまたは複数の水素原子は重水素で置換されている、
炭素数2~8のアルキニル基、
随意に一つまたは複数の水素原子は重水素で置換されている、および
炭素数6~18のアリール基、
随意にMe、iPr、tBuおよびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、から成る群から選択される。
【0011】
Ra、R3およびR4は、出現ごとに互いに独立して、水素、重水素、N(R5)2、OR5、Si(R5)3、B(OR5)2、OSO2R5、CF3、CN、F、Br、I、
炭素数1~40のアルキル基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されている、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されている、
炭素数1~40のアルコキシ基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されている、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されていている、
炭素数1~40のチオアルコキシ基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されている、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されていている、
炭素数2~40のアルケニル基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されていている、
炭素数2~40のアルキニル基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されていている、
炭素数6~60のアリール基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されている、および
炭素数3~57のヘテロアリール基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されている、から成る群から選択される。
【0012】
R5は、出現ごとに互いに独立して、水素、重水素、N(R6)2、OR6、Si(R6)3、B(OR6)2、OSO2R6、CF3、CN、F、Br、I、
炭素数1~40のアルキル基、
随意に一つまたは複数の置換基R6で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R6C=CR6、C≡C、Si(R6)2、Ge(R6)2、Sn(R6)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR6、P(=O)(R6)、SO、SO2、NR6、O、SまたはCONR6で置換されている、
炭素数1~40のアルコキシ基、
随意に一つまたは複数の置換基R6で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R6C=CR6、C≡C、Si(R6)2、Ge(R6)2、Sn(R6)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR6、P(=O)(R6)、SO、SO2、NR6、O、SまたはCONR6で置換されている、
炭素数1~40のチオアルコキシ基、
随意に一つまたは複数の置換基R6で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R6C=CR6、C≡C、Si(R6)2、Ge(R6)2、Sn(R6)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR6、P(=O)(R6)、SO、SO2、NR6、O、SまたはCONR6で置換されている、
炭素数2~40のアルケニル基、
随意に一つまたは複数の置換基R6で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R6C=CR6、C≡C、Si(R6)2、Ge(R6)2、Sn(R6)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR6、P(=O)(R6)、SO、SO2、NR6、O、SまたはCONR6で置換されている、
炭素数2~40のアルキニル基、
随意に一つまたは複数の置換基R6で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R6C=CR6、C≡C、Si(R6)2、Ge(R6)2、Sn(R6)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR6、P(=O)(R6)、SO、SO2、NR6、O、SまたはCONR6で置換されている、
炭素数6~60のアリール基、
随意に一つまたは複数の置換基R6で置換されている、
炭素数3~57のヘテロアリール基、
随意に一つまたは複数の置換基R6で置換されている、から成る群から選択される。
【0013】
R6は、水素、重水素、OPh、CF3、CN、F、
炭素数1~5のアルキル基、
随意に一つまたは複数の水素原子は、互いに独立して、重水素、CN、CF3またはFで置換されている、
炭素数1~5のアルコキシ基、
随意に一つまたは複数の水素原子は、互いに独立して、重水素、CN、CF3またはFで置換されている、
炭素数1~5のチオアルコキシ基、
随意に一つまたは複数の水素原子は、互いに独立して、重水素、CN、CF3またはFで置換されている、
炭素数2~5のアルケニル基、
随意に一つまたは複数の水素原子は、互いに独立して、重水素、CN、CF3またはFで置換されている、
炭素数2~5のアルキニル基、
随意に一つまたは複数の水素原子は、互いに独立して、重水素、CN、CF3またはFで置換されている、
炭素数6~18のアリール基、
随意に一つまたは複数の炭素数1~5のアルキル置換基で置換されている、
炭素数3~17のヘテロアリール基、
随意に一つまたは複数の炭素数1~5のアルキル置換基で置換されている、
N(炭素数6~18のアリール)2、
N(炭素数3~17のヘテロアリール)2、および
N(炭素数3~17のヘテロアリール)(炭素数6~18のアリール)から成る群から選択される。
【0014】
本発明によれば、V、WおよびYから成る群から選択される厳密に一つの置換基は、CNである。
【0015】
本発明のさら成る一つの実施形態において、有機分子は、以下の式Iaの構造を含む、またはそれから成る:
【化2】
式Ia
【0016】
式中、上述の定義が適用される。
【0017】
一つの実施形態において、R1およびR2は、出現ごとに互いに独立して、水素(H)、メチル、メシチル、トリルおよびフェニルから成る群から選択される。トリルという用語は、2-トリル、3-トリル、および4-トリルを指す。
【0018】
一つの実施形態において、R1およびR2は、出現ごとに互いに独立して、水素(H)、メチル、およびフェニルから成る群から選択される。
【0019】
一つの実施形態において、R1およびR2は水素(H)である。
【0020】
一つの実施形態において、VはCNである。
【0021】
一つの実施形態において、WはCNである。
【0022】
一つの実施形態において、YはCNである。
【0023】
本発明の一つの実施形態において、有機分子は、以下の式IIaの構造を含む、またはそれから成る:
【化3】
式IIa
【0024】
式中、V、W、Y、R1、2およびRaは、上記の通りに定義され、
【0025】
本発明の一つの実施形態において、有機分子は、以下の式IIa-1の構造を含む、またはそれから成る:
【化4】
式IIa-1
【0026】
式中、R1、2およびRaは、上記の通りに定義される。
【0027】
本発明のさらなる実施形態において、Raは、出現ごとに互いに独立して、H、
Me、
iPr、
tBu、
CN、
CF3、
Ph基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
ピリジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
ピリミジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
カルバゾリル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
トリアジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
および、N(Ph)2から成る群から選択される。
【0028】
本発明のさら成る実施形態において、Raは、出現ごとに互いに独立して、H、
Me、
iPr、
tBu、
CN、
CF3、
Ph基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
ピリジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
ピリミジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、および
トリアジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、から成る群から選択される。
【0029】
本発明のさら成る実施形態において、Raは、出現ごとに互いに独立して、H、
Me、
tBu、
Ph基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
トリアジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、から成る群から選択される。
【0030】
本発明のさらなる実施形態において、Raは、出現ごとにHである。
【0031】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも一つの置換基Raは水素ではない、すなわち、置換基のRaの1つ、2つ、3つ、4つなどが有機分子において水素ではない。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの置換基Raは、例えば、式I、Ia、IIa、およびIIa-1に示すとおり、置換基Raを持つ二つの環系の一つにおいて水素ではない。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの置換基Raは、例えば、式I、Ia、IIa、およびIIa-1に示すとおり、置換基Raを持つ二つの環系の両方において水素ではない。
【0032】
Zが直接結合であり、および/またはR1がR2と等しい、いくつかの実施形態では、少なくとも一つの置換基Raは、例えば、式I、Ia、IIa、およびIIa-1に示すとおり、置換基Raを持つ二つの環系の一方または両方において水素ではない。
【0033】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IIb、式IIb-2、式IIb-3または式IIb-4の群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化5】
式IIb
【化6】
式IIb-2
【化7】
式IIb-3
【化8】
式IIb-4
【0034】
式中、
Rbは、出現ごとに互いに独立して、
重水素、
N(R5)2、
OR5、
Si(R5)3、
B(OR5)2、
OSO2R5、
CF3、
CN、
F、
Br、
I、
炭素数1~40のアルキル基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されていている、
炭素数1~40のアルコキシ基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されていている、
炭素数1~40のチオアルコキシ基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されていている、
炭素数2~40のアルケニル基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されていている、
炭素数2~40のアルキニル基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されていて、
随意に一つまたは複数の非隣接のCH2基は、R5C=CR5、C≡C、Si(R5)2、Ge(R5)2、Sn(R5)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5で置換されていている、
炭素数6~60のアリール基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されている、および
炭素数3~57のヘテロアリール基、
随意に一つまたは複数の置換基R5で置換されている、から成る群から選択される。
その他の基に関しては、上述の定義が適用される。
【0035】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IIc、式IIc-2、式IIc-3または式IIc-4群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化9】
式IIc
【化10】
式Ic-2
【化11】
式IIc-3
【化12】
式IIc-4
【0036】
式中、上述の定義が適用される。
【0037】
本発明のさらなる実施形態において、Rbは、出現ごとに互いに独立して、
Me、
iPr、
tBu、
CN、
CF3、
Ph基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
ピリジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
カルバゾリル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
トリアジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
および、N(Ph)2から成る群から選択される。
【0038】
本発明のさらなる実施形態において、Rbは、出現ごとに互いに独立して、
Me、
iPr、
tBu、
CN、
CF3、
Ph基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
ピリジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
ピリミジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、および
トリアジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、から成る群から選択される。
【0039】
本発明のさらなる実施形態において、Rbは、出現ごとに互いに独立して、
Me、
tBu、
Ph基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
トリアジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、から成る群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】実施例1(PMMA中10重量%)の発光スペクトルを表す。
【
図2】実施例2(PMMA中10重量%)の発光スペクトルを表す。
【
図3】実施例3(PMMA中10重量%)の発光スペクトルを表す。
【
図4】実施例4(PMMA中10重量%)の発光スペクトルを表す。
【
図5】実施例5(PMMA中10重量%)の発光スペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下では、本発明の有機分子の例示的な実施形態を示す。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0042】
式中、W、V、Y、R1、R2、Ra、R3、R4およびR5に関しては、先述の定義が適用される。
【0043】
一実施形態においては、RaおよびR5は、出現ごとに互いに独立して、水素(H)、メチル(Me)、i-プロピル(CH(CH3)2)(iPr)、t-ブチル(tBu)、フェニル(Ph)、CN、CF3およびジフェニルアミン(NPh2)から成る群から選択される。
【0044】
本発明の一つの実施形態において、有機分子は、以下の式IIIの構造を含む、またはそれから成る:
【化24】
式III
【0045】
式中、上述の定義が適用される。
【0046】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IIIaの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化25】
式IIIa
【0047】
式中、
Rcは、出現ごとに互いに独立して、
Me、
iPr、
tBu、
Ph基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
ピリジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
ピリミジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
カルバゾリル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
トリアジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、
および、N(Ph)2から成る群から選択される。
【0048】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IIIbの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化26】
式IIIb
【0049】
式中、上述の定義が適用される。
【0050】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IIIcの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化27】
式IIIc
【0051】
式中、上述の定義が適用される。
【0052】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IIIdの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化28】
式IIId
【0053】
式中、上述の定義が適用される。
【0054】
本発明の一つの実施形態において、有機分子は、以下の式IVの構造を含む、またはそれから成る:
【化29】
式IV
【0055】
式中、上述の定義が適用される。
【0056】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IVaの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化30】
式IVa
【0057】
式中、上述の定義が適用される。
【0058】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IVbの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化31】
式IVb
【0059】
式中、上述の定義が適用される。
【0060】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IVcの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化32】
式IVc
【0061】
式中、上述の定義が適用される。
【0062】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IVdの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化33】
式IVd
【0063】
式中、上述の定義が適用される。
【0064】
本発明の一つの実施形態において、有機分子は、以下の式IVの構造を含む、またはそれから成る:
【化34】
式IV
【0065】
式中、上述の定義が適用される。
【0066】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IVaの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化35】
式IVa
【0067】
式中、上述の定義が適用される。
【0068】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IVbの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化36】
式IVb
【0069】
式中、上述の定義が適用される。
【0070】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IVcの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化37】
式IVc
【0071】
式中、上述の定義が適用される。
【0072】
本発明のさらなる実施形態において、有機分子は、以下の式IVdの群から選択される構造を含む、またはそれから成る:
【化38】
式IVd
【0073】
式中、上述の定義が適用される。
【0074】
本発明のさらなる実施形態において、Rcは、出現ごとに互いに独立して、
Me、
iPr、
tBu、
Ph基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、および
トリアジニル基、随意にMe、iPr、tBu、CN、CF3、およびPhから成る群から互いに独立して選択される1つまたは複数の置換基で置換されている、から成る群から選択される。
【0075】
本明細書で使用されているような、「アリール基」および「芳香族」という用語は、任意の単環式、二環式または多環式の芳香族部分として最も広範な意味で理解することができる。したがって、アリール基は6個~60個の芳香環原子を含み、ヘテロアリール基は5個~60個の芳香環原子を含み、その中の少なくとも一個はヘテロ原子である。それにもかかわらず、本明細書にわたって、芳香環原子の数は、特定の置換基の定義において下付き文字として与えられていてもよい。特に、ヘテロ芳香環は、1個~3個のヘテロ原子を含む。「ヘテロアリール基」および「ヘテロ芳香族」という用語もまた、任意の少なくとも一つのヘテロ原子を含む単環式、二環式または多環式ヘテロ芳香族部分として、最も広範な意味で理解することができる。ヘテロ原子は、出現ごとに同じでも異なってもよく、個々にN、OおよびSから成る群から選択されうる。したがって、「アリレン」という用語は、他の分子構造との二つの結合部位を保持し、それによってリンカー構造として機能する二価の置換基を指す。例示的な実施形態の中の基がここで与えられている定義と異なって定義される場合、例えば、芳香環原子の数またはヘテロ原子の数が与えられている定義と異なる場合には、例示的な実施形態での定義が適用されるものとする。本発明によれば、縮合(環化)した芳香族またはヘテロ芳香族多環式は、縮合反応を経て多環を形成する、ニつ以上の単一の芳香族またはヘテロ芳香族環で構築され、これらは縮合反応を介して多環式を形成した。
【0076】
特に、本明細書にわたって用いる場合、アリール基またはヘテロアリール基という用語は、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンズアントラセン、ベンズフェナントレン、テトラセン、ペンタセン、ベンズピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6‐キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ‐7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジノイミダゾール、キノキサリノイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、1,3,5-トリアジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、カルボリン、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,2,3,4-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールまたは先述した基の組み合わせから誘導される芳香族またはヘテロ芳香族基の任意の位置を介して結合することができる基を含む。
【0077】
本明細書で使用されているような環式基という用語は、任意の単環式、二環式または多環式の部分として最も広範な意味で理解することができる。
【0078】
本出願全体を通して使用される場合、置換基としてのビフェニルという用語は、オルト-ビフェニル、メタ-ビフェニル、またはパラ-ビフェニルとして最も広義の意味で理解されることができ、この場合においてオルト、メタ、およびパラは、別の化学部分との結合部位に関して定義される。
【0079】
本明細書で使用されているようなアルキル基という用語は、任意の直鎖、分枝、または環式のアルキル置換基として最も広範な意味で理解することができる。特に、アルキルという用語は、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、i-プロピル(iPr)、シクロプロピル、n-ブチル(nBu)、i-ブチル(iBu)、s-ブチル(sBu)、t-ブチル(tBu)、シクロブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチル、2-ペンチル、ネオ-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、t-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、ネオ-ヘキシル、シクロヘキシル、1-メチルシクロペンチル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2,2,2]オクチル、2-ビシクロ[2,2,2]-オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、アダマンチル、2,2,2-トリフルオレチル、1,1-ジメチル-n-ヘキサ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘプタ-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクタ-1-イル、1,1-ジメチル-n-デカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ドデカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-テトラデカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘキサデカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクタデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘプタ-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクタ-1-イル、1,1-ジエチル-n-デカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ドデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-テトラデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクタデカ-1-イル、1-(n-プロピル)-シクロヘキサ-1-イル、1-(n-ブチル)-シクロヘキサ-1-イル、1-(n-ヘキシル)-シクロヘキサ-1-イル、1-(n-オクチル)-シクロヘキサ-1-イルおよび1-(n-デシル)-シクロヘキサ-1-イルである置換基を含む。
【0080】
本明細書で使用されているようなアルケニルという用語は、直鎖、分枝、および環式のアルケニル置換基を含む。アルケニル基という用語は、例示的に、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルである置換基を含む。
【0081】
本明細書で使用されているようなアルキニルという用語は、直鎖、分枝、および環式のアルキニル置換基を含む。アルキニル基という用語は、例示的に、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルを含む。
【0082】
本明細書で使用されているようなアルコキシという用語は、直鎖、分枝、および環式のアルコキシ置換基を含む。アルコキシ基という用語は、例示的に、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシおよび2-メチルブトキシを含む。
【0083】
本明細書で使用されているようなチオアルコキシという用語は、直鎖、分枝、および環式のチオアルコキシ置換基を含み、この場合、例示的なアルコキシ基のOはSで置き換えられている。
【0084】
本明細書で使用されているような「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、好ましくはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であるものとして、最も広範な意味で理解することができる。
【0085】
本明細書において水素(H)に言及するときはいつでも、そのそれぞれにおいて重水素で置換することも可能である。
【0086】
分子の断片が置換基である、またはさもなければ別の部分に付加されていると記載されている場合、その名称は、それが断片であるかのように(例えば、ナフチル、ジベンゾフリル)またはそれが全分子であるかのように(例えば、ナフタレン、ジベンゾフラン)書かれていてもよいことを理解されたい。本明細書で使用される場合、置換基または付加された断片を命名するこれらの異なる方式は等しいものとみなされる。
【0087】
一実施形態においては、本発明による有機分子は、10重量%の有機分子を有するポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)のフィルム内で、室温で、150μ秒以下、100μ秒以下、特に50μ秒以下、より好ましくは10μ秒以下、または7μ秒以下の励起状態寿命を有する。
【0088】
一実施形態においては、本発明による有機分子は、あるΔEST値を示す熱活性化遅延蛍光(TADF)発光体を表し、このΔEST値は、5000cm-1未満、好ましくは3000cm-1未満、より好ましくは1500cm-1未満、さらにより好ましくは1000cm-1未満またはさらには500cm-1未満の、第一励起一重項状態 (S1)と、第一励起三重項状態(T1)との間のエネルギー差異に相当する。
【0089】
本発明のさらなる実施形態においては、本発明による有機分子は、可視領域または近紫外領域、すなわち380~800nmの波長領域に発光ピークを有し、その半値全幅が、10重量%の有機分子を含むポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)の膜の状態で、室温で、0.50eV未満、好ましくは0.48eV未満、より好ましくは0.45eV未満、さらにより好ましくは0.43eV未満、またはなおさらに0.40eV未満である。
【0090】
本発明のさらなる実施形態においては、本発明による有機分子は、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)(単位:%)を発光のCIEy色座標で割ることにより算出される、150を超える、特に200を超える、好ましくは250を超える、より好ましくは300を超える、またはさらに500を超える「ブルーマテリアルインデックス」(BMI)を有する。
【0091】
軌道および励起状態エネルギーは、実験法により、または量子化学的手法、特に密度汎関数理論の計算を利用した計算により求めることができる。最高被占分子軌道EHOMOのエネルギーは、サイクリックボルタンメトリー測定から当業者に公知の方法により、0.1eVの精度で求められる。最低被占分子軌道のエネルギーELOMOは、吸収スペクトルの立ち上がりの際に決定される。
【0092】
吸収スペクトルの立ち上がりは、吸収スペクトルの接線とx軸との交点を計算することによって決定される。吸収スペクトルに対する接線は、吸収帯の低エネルギー側で、および吸収スペクトルの最大強度の半値の地点で設定される。
【0093】
第一励起三重項状態T1のエネルギーは、低温、通常は77Kでの発光スペクトルの立ち上がりから求める。第一励起一重項状態および最低三重項状態がエネルギー的に>0.4eVの分だけ分離されているホスト化合物に対して、リン光は2-Me-THFにおける定常状態スペクトルにおいて通常可視である。三重項エネルギーは、リン光スペクトルの立ち上がりとして求めることができる。TADF発光体分子に対して、第一励起三重項状態T1エネルギーは、特に述べられていない限り、10重量%の発光体を有するPMMAのフィルム内で測定された、77Kでの遅延発光スペクトルの立ち上がりから求める。ホストと発光体化合物の両方に対して、第一励起一重項状態S1エネルギーは、特に述べられていない限り、10重量%のホストまたは発光体化合物を有するPMMAのフィルム内で測定された、発光スペクトルの立ち上がりから求める。
【0094】
発光スペクトルの立ち上がりは、x軸と、発光スペクトルへの接線との交点を計算することにより求める。発光スペクトルの接線は、発光帯の高エネルギー側で、そして発光スペクトルの最大強度の半値の点で設定される。
【0095】
本発明のさらなる態様は、本発明による有機分子を調製するプロセス(随意のその後の反応と共に)に関し、反応物質としてR
2-置換、シアノ-置換1-ブロモ-2-フルオロフェニルが用いられる:
【化39】
【0096】
本発明によれば、E1の合成反応には、ボロンピナコールエステルの代わりにボロン酸または等価なボロン酸エステルを用いることができる。
【0097】
求核芳香族置換において窒素ヘテロ環をハロゲン化アリール、好ましくはフッ素化アリールと反応させるために、一般的な条件として、例えば、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)またはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒にリン酸三カリウムまたは水素化ナトリウムなどの塩基の使用が含まれる。
【0098】
代替の合成経路は、銅のまたはパラジウムの触媒カップリングにより、窒素ヘテロ環をハロゲン化アリールまたは擬ハロゲン化アリール、好ましくは臭化アリール、ヨウ化アリール、アリールトリフレートまたはアリールトシレートに導入することを含む。
【0099】
本発明のさらなる態様は、光電子デバイス中で、発光体として、または吸収体として、および/またはホスト材料および/または電子輸送材料として、および/または正孔注入材料として、および/または正孔ブロッキング材料として、本発明による有機分子の使用に関する。
【0100】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、可視または最も近い紫外線(UV)範囲、すなわち、380~800nmの波長の範囲内で光を発光するのに適切である有機材料に基づく任意のデバイスとして最も広範な意味で理解することができる。より好ましくは、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、可視範囲、すなわち、400~800nmで光を発光することができる。
【0101】
こうした使用の文脈においては、光電子デバイスは、より具体的には以下から成る群から選択される:
・ 有機発光ダイオード(OLED)、
・ 発光電気化学セル、
・ OLEDセンサーであって、特に外部から気密密閉されていない気体および蒸気のセンサー、
・ 有機ダイオード、
・ 有機太陽電池、
・ 有機トランジスタ、
・ 有機電界効果トランジスタ、
・ 有機レーザー、および
・ ダウンコンバージョン素子。
【0102】
好ましい実施形態では、このような使用との関連で、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEC)、および発光トランジスタから成る群から選択されるデバイスである。
【0103】
使用する場合、光電子デバイス、より具体的にはOLEDにおける発光層内の本発明による有機分子の分率は、1%~99重量%、より具体的には5%~80重量%である。代替的な実施形態においては、発光層中の有機分子の割合は、100重量%である。
【0104】
一実施形態においては、発光層は、本発明による有機分子だけでなく、三重項(T1)および一重項(S1)エネルギー準位が、有機分子の三重項(T1)および一重線(S1)エネルギー準位よりエネルギー的に高いホスト材料も含む。
【0105】
本発明のさらなる態様は、以下のものを含む、またはそれから成る組成物に関する:
(a) 特に発光体および/またはホストの形態での少なくとも1つの本発明による有機分子、ならびに
(b) 本発明による有機分子とは異なる、一つまたは複数の発光体材料および/またはホスト材料、ならびに
(c) 随意の一つもしくは複数の色素および/または一つもしくは複数の溶媒を含む、組成物。
【0106】
一実施形態においては、発光層は、以下のものを含む、またはそれから成る組成物を含む(または(本質的に)組成物から成る):
(a) 特に発光体および/またはホストの形態での少なくとも1つの本発明による有機分子、ならびに
(b) 本発明による有機分子とは異なる、一つまたは複数の発光体材料および/またはホスト材料、ならびに
(c) 随意の一つもしくは複数の色素および/または一つもしくは複数の溶媒を含む、組成物。
【0107】
特に好ましくは、発光層EMLは、以下のものを含む、またはそれから成る組成物を含む(または(本質的に)組成物から成る):
(i) 1~50重量%、好ましくは5~40重量%、特に10~30重量%の一つまたは複数の本発明Eによる有機分子、
(ii) 5~99重量%、好ましくは30~94.9重量%、特に40~89重量%の少なくとも1つのホスト化合物H、
(iii) 随意に、0~94重量%、好ましくは0.1~65重量%、特に1~50重量%の、本発明による分子の構造とは異なる構造を有する少なくとも1つのさらなるホスト化合物D、
(iv) 随意に、0~94重量%、好ましくは0~65重量%、特に0~50重量%の溶媒、および
(v) 随意に、0~30重量%、特に0~20重量%、好ましくは0~5重量%の、本発明による分子の構造とは異なる構造を有する少なくとも1個のさらなる発光体分子F。
【0108】
好ましくは、エネルギーは、ホスト化合物Hから一つまたは複数の本発明Eによる有機分子まで移動することが可能であり、特に、ホスト化合物Hの第一励起三重項状態T1(H)から一つまたは複数の本発明Eによる有機分子の第一励起三重項状態T1(E)まで、および/または、ホスト化合物Hの第一励起一重項状態S1(H)から一つまたは複数の本発明Eによる有機分子の第一励起一重項状態S1(E)まで移動することが可能である。
【0109】
さらなる実施形態においては、発光層EMLは、以下のものを含む、またはそれから成る組成物を含む(または(本質的に)組成物から成る):
(i) 1~50重量%、好ましくは5~40重量%、特に10~30重量%の一つの本発明Eによる有機分子、
(ii) 5~99重量%、好ましくは30~94.9重量%、特に40~89重量%の1つのホスト化合物H、
(iii) 随意に、0~94重量%、好ましくは0.1~65重量%、特に1~50重量%の、本発明による分子の構造とは異なる構造を有する少なくとも1つのさらなるホスト化合物D、
(iv) 随意に、0~94重量%、好ましくは0~65重量%、特に0~50重量%の溶媒、および
(v) 随意に、0~30重量%、特に0~20重量%、好ましくは0~5重量%の、本発明による分子の構造とは異なる構造を有する少なくとも1個のさらなる発光体分子F。
【0110】
一実施形態においては、ホスト化合物Hは、-5~-6.5eVの範囲のエネルギーEHOMO(H)を有する最高被占分子軌道HOMO(H)を有し、少なくとも1つのさらなるホスト化合物Dは、エネルギーEHOMO(D)(EHOMO(H)>EHOMO(D)である)を有する最高被占分子軌道HOMO(D)を有する。
【0111】
さらなる実施形態においては、ホスト化合物HはエネルギーELUMO(H)を有する最低被占分子軌道LUMO(H)を有し、少なくとも1つのさらなるホスト化合物DはエネルギーELUMO(D)(ELUMO(H)>ELUMO(D)である)を有する最低被占分子軌道LUMO(D)を有する。
【0112】
一実施形態においては、ホスト化合物HはエネルギーEHOMO(H)を有する最高被占分子軌道HOMO(H)およびエネルギーELUMO(H)を有する最低被占分子軌道LUMO(H)を有し、
少なくとも1つのさらなるホスト化合物Dは、エネルギーEHOMO(D)を有する最高被占分子軌道HOMO(D)およびエネルギーELUMO(D)を有する最低被占分子軌道LUMO(D)を有し、
本発明Eによる有機分子は、エネルギーEHOMO(E)を有する最高被占分子軌道HOMO(E)およびエネルギーELUMO(E)を有する最低被占分子軌道LUMO(E)を有し、
式中、
EHOMO(H)>EHOMO(D)であり、本発明Eによる有機分子の最高被占分子軌道HOMO(E)のエネルギーレベル(EHOMO(E))と、ホスト化合物Hの最高被占分子軌道HOMO(H)のエネルギーレベル(EHOMO(H))との差は、-0.5eV~0.5eVであり、より好ましくは-0.3eV~0.3eVであり、さらにより好ましくは-0.2eV~0.2eV、またはさらに-0.1eV~0.1eVであり、
ELUMO(H)>ELUMO(D)であり、本発明Eによる有機分子の最低被占分子軌道LUMO(E)のエネルギーレベル(ELUMO(E))と、少なくとも一つのさらなるホスト化合物Dの最低被占分子軌道LUMO(D)(ELUMO(D))との差は、-0.5eV~0.5eVであり、より好ましくは-0.3eV~0.3eVであり、さらにより好ましくは-0.2eV~0.2eV、またはさらに-0.1eV~0.1eVである。
【0113】
さらなる態様においては、本発明は、より具体的には有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル、OLEDセンサー、より具体的には、外部から気密封止されていない気体および蒸気センサー、有機ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機電界効果トランジスタ、有機レーザーおよびダウンコンバージョン素子から成る群から選択されるデバイスの形態の本明細書に記載されているような有機分子または組成物を含む光電子デバイスに関する。
【0114】
好ましい実施形態では、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEC)、および発光トランジスタから成る群から選択されるデバイスである。
【0115】
本発明Eの光電子デバイスの一実施形態においては、本発明Eによる有機分子を、発光層EML中の発光材料として用いる。
【0116】
本発明の光電子デバイスの一実施形態では、発光層EMLは、本明細書に記載されている本発明による組成物から成る。
【0117】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスがOLEDである場合、これは、例えば以下の層構造を示してもよく、
1. 基板
2. アノード層A
3. 正孔注入層、HIL
4. 正孔輸送層、HTL
5. 電子ブロッキング層、EBL
6. 発光層、EML
7. 正孔ブロッキング層、HBL
8. 電子輸送層、ETL
9. 電子注入層、EIL
10. カソード層、
【0118】
ここで、OLEDは各層を含み、随意に異なる層は融合されていてもよく、OLEDは上で定義された各層の種類のうちの1つより多くの層を含んでもよい。
【0119】
また、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは随意に、例として水分、蒸気および/または気体を含む、環境内の有害種への有害な曝露からデバイスを保護する1つまたは複数の保護層を含んでもよい。
【0120】
本発明の一実施形態では、有機エレクトロルミネッセンスデバイスはOLEDであり、これは以下の反転した層構造を示し:
1. 基板
2. カソード層
3. 電子注入層、EIL
4. 電子輸送層、ETL
5. 正孔ブロッキング層、HBL
6. 発光層、B
7. 電子ブロッキング層、EBL
8. 正孔輸送層、HTL
9. 正孔注入層、HIL
10. アノード層A、
【0121】
ここで、反転した層構造を有するOLEDは各層を含み、随意に異なる層は融合されていてもよく、OLEDは上で定義された各層の種類のうちの1つより多くの層を含んでもよい。
【0122】
本発明の一実施形態においては、有機エレクトロルミネッセンスデバイスはOLEDであり、これはスタック構造を示してもよい。この構造では、OLEDが並んで配置される典型的な構造とは異なり、個々の構成単位が互いの上にスタックされている。スタック構造を示すOLEDを用いてブレンドされた光を作ることができ、特に青色、緑色および赤色のOLEDをスタッキングすることにより白色光を作ることができる。さらに、スタック構造を示すOLEDは、電荷発生層(CGL)を随意に含んでもよく、この電荷発生層は通常、2つのOLEDサブユニットの間に位置し、通常、n-ドープしたおよびp-ドープした層から成り、1つのCGLのn-ドープした層は通常アノード層のより近くに位置する。
【0123】
本発明の一実施形態においては、有機エレクトロルミネッセンスデバイスはOLEDであり、それはアノードとカソード間に2つ以上の発光層を備える。特に、このいわゆる直列OLEDは、3つの発光層を含み、1つの発光層が赤色光を発光し、1つの発光層が緑色光を発光し、1つの発光層が青色光を発光し、随意に個々の発光層の間でさらなる層、例えば、電荷発生層、ブロッキング層または輸送層などを含んでもよい。さらなる実施形態においては、発光層は隣接してスタックされる。さらなる実施形態においては、直列OLEDは、発光層の各二層間に電荷発生層を備える。さらに、隣接する発光層または電荷発生層で分離された発光層は、融合されてもよい。
【0124】
基板は、任意の材料または材料の組成物によって形成されてもよい。最もよく基板として用いられるのはガラススライドである。代わりに、薄い金属層(例えば、銅、金、銀またはアルミニウムフィルム)またはプラスチックフィルムまたはスライドを用いてもよい。これにより、より高度な可撓性が可能になる。アノード層Aは、(本質的に)透明なフィルムを得ることを可能にする材料で主に構成される。OLEDからの発光を可能にするように両方の電極の少なくとも1つが(本質的に)透明であるべきなので、アノード層Aまたはカソード層Cのいずれかは透明である。好ましくは、アノード層Aは、透明導電性酸化物(TCO)を大量に含有するか、またはそれから成る。このようなアノード層Aは、酸化インジウムスズ、アルミニウム酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化スズ、インジウム酸化亜鉛、PbO、SnO、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ウォルフラム、グラファイト、ドープSi、ドープGe、ドープGaAs、ドープポリアニリン、ドープポリーピロールおよび/またはドープポリチオフェンを例示的に含んでもよい。
【0125】
アノード層Aは、特に好ましくは(本質的に)酸化インジウムスズ(ITO)(例えば、(InO3)0.9(SnO2)0.1)から成る。透明導電性酸化物(TCO)により引き起こされるアノード層Aの粗さは、正孔注入層(HIL)を使用することにより埋め合わせることができる。さらに、TCOから正孔輸送層(HTL)への擬電荷担体の輸送が促進されるという意味で、HILは擬電荷担体(すなわち、正孔)の注入を促進することができる。正孔注入層(HIL)は、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホネート(PSS)、MoO2、V2O5、CuPCまたはCuI、特にPEDOTとPSSの混合物を含むことができる。正孔注入層(HIL)はまた、アノード層Aから正孔輸送層(HTL)への金属の拡散を阻止することができる。HILは、PEDOT:PSS(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート)、PEDOT(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン)、mMTDATA(4,4’,4”-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン)、スピロ-TAD(2,2’,7,7’-テトラキス(n,n-ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン)、DNTPD(N1,N1’-(ビフェニル-4,4’-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4-di-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン)、NPB(N,N’-nis-(1-ナフタレニル)-N,N’-ビス-フェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、NPNPB(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ-[4-(N,N-ジフェニル-アミノ)フェニル]ベンジジン)、MeO-TPD(N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン)、HAT-CN(1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレン-ヘキサカルボニトリル)および/またはスピロ-NPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-(1-ナフチル)-9,9’-スピロビフルオレン-2,7-ジアミン)を例示的に含んでもよい。
【0126】
アノード層Aまたは正孔注入層(HIL)に隣接して、通常、正孔輸送層(HTL)が位置する。本明細書においては、任意の正孔輸送化合物を使用することができる 例として、電子を豊富に含むヘテロ芳香族化合物、例えば、トリアリールアミンおよび/またはカルバゾールなどを正孔輸送化合物として使用することができる。HTLは、アノード層Aと発光層EMLとの間のエネルギーバリアを低減することができる。正孔輸送層(HTL)はまた電子ブロッキング層(EBL)であってもよい。好ましくは、正孔輸送化合物は、これらの三重項状態T1と同等の高エネルギーレベルを保持する。例として、正孔輸送層(HTL)は、星形状ヘテロ環、例えば、トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、ポリ-TPD(ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニル-アミン))、[アルファ]-NPD(ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニル-アミン))、TAPC(4,4’-シクロヘキシリデン-ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、2-TNATA(4,4’,4”-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン)、スピロ-TAD、DNTPD、NPB、NPNPB、MeO-TPD、HAT-CNおよび/またはTrisPcz(9,9’-ジフェニル-6-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール)を含む。さらに、HTLは、有機正孔輸送マトリックスにおいて無機または有機ドーパントで構成され得るp-ドープ層を含んでもよい。遷移金属オキシド、例えば、酸化バナジウム、酸化モリブデンまたは酸化タングステンなどを無機ドーパントとして例示的に使用することができる。テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)、ペンタフルオロ安息香酸銅(copper-pentafluorobenzoate)(Cu(I)pFBz)または遷移金属錯体を有機ドーパントとして例示的に使用することができる。
【0127】
EBLは、mCP(1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、TCTA、2-TNATA、mCBP(3,3-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、tris-Pcz、CzSi(9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール)、および/またはDCB(N,N’-ジカルバゾリル-1,4-ジメチルベンゼン)を例示的に含んでもよい。
【0128】
正孔輸送層(HTL)に隣接して、通常、発光層EMLが位置する。発光層EMLは、少なくとも一つの発光分子を含む。特にEMLは本発明Eにかかる発光分子を少なくとも一つ含む。一つの実施形態において、発光層は、本発明Eにかかる有機分子のみを含む。典型的に、EMLはさらに一つ以上のホスト材料Hを含む。例示的には、ホスト材料Hは、CBP(4,4’-ビス-(N-カルバゾリル)-ビフェニル)、mCP、mCBP Sif87(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン)、CzSi、SimCP([3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリフェニルシラン)、Sif88(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾール、T2T(2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)、T3T(2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)および/またはTST(2,4,6-トリス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン)から選択される。ホスト材料Hは、典型的に、有機分子の第一の三重項エネルギーレベル(T1)および第一の一重項エネルギーレベル(S1)よりもエネルギー的に高い、第一の三重項エネルギーレベル(T1)および第一の一重項エネルギーレベル(S1)を示すように選択されるべきである。
【0129】
本発明の一実施形態においては、EMLは、少なくとも1つの正孔が優位なホストおよび1つの電子が優位なホストを有するいわゆる混合したホストシステムを含む。特定の実施形態においては、EMLは、本発明Eにかかる厳密に一つの発光分子と、電子優勢ホストとしてT2Tならびに、ホール優勢ホストとしてCBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾールおよび9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールから選択されたホストを含む混合ホスト系と、を含む。さらなる実施形態では、EMLは、50~80重量%、好ましくは60~75重量%の、CBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾールおよび9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールから選択されるホスト;10~45重量%、好ましくは15~30重量%のT2T、および5~40重量%、好ましくは10~30重量%の本発明による発光分子を含む。
【0130】
発光層EMLに隣接して、電子輸送層(ETL)が位置してもよい。本明細書においては、任意の電子輸送体を用いることができる。例示的には、例えば、ベンズイミダゾール、ピリジン、トリアゾール、オキサジアゾール(例えば1,3,4-オキサジアゾール)、ホスフィンオキシドおよびスルホン等の電子不足の化合物が使用されてもよい。電子輸送体はまた、星形状ヘテロ環、例えば、1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル(TPBi)であってもよい。ETLは、NBphen(2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Alq3(アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン))、TSPO1(ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキシド)、BPyTP2(2,7-ジ(2,2’-ビピリジン-5-イル)トリフェニル)、Sif87(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン)、Sif88(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン)、BmPyPhB(1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン)および/またはBTB(4,4’-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]-1,1’-ビフェニル)を含みうる。随意に、ETLは、Liqなどの材料でドープされていてもよい。電子輸送層(ETL)はまた正孔をブロックすることもでき、または正孔ブロッキング層(HBL)が導入される。
【0131】
HBLは、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン=バソクプロイン)、BAlq(ビス(8-ヒドロキシ-2-メチルキノリン)-(4-フェニルフェノキシ)アルミニウム)、NBphen(2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Alq3(アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン))、TSPO1(ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキシド)、T2T(2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)、T3T(2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)、TST(2,4,6-トリス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン)、および/またはTCB/TCP(1,3,5-トリス(N-カルバゾリル)ベンゾール/1,3,5-トリス(カルバゾール)-9-イル)ベンゼン)を含んでもよい。
【0132】
電子輸送層(ETL)に隣接して、カソード層Cが位置してもよい。例えば、カソード層Cは、金属(例えば、Al、Au、Ag、Pt、Cu、Zn、Ni、Fe、Pb、LiF、Ca、Ba、Mg、In、W、もしくはPd)または金属合金を含んでもよいし、またはこれから成ってもよい。実用的な理由から、カソード層はまた、不透明な金属、例えば、Mg、CaまたはAlなどから(本質的に)成ってもよい。代わりにまたはさらに、カソード層Cはまた、グラファイトおよびまたは炭素ナノチューブ(CNT)を含んでもよい。代わりに、カソード層Cはまた、ナノスケールの銀導線から成ってもよい。
【0133】
OLEDは、さらに随意に、電子輸送層(ETL)とカソード層C(電子注入層(EIL)と命名することもできる)の間に保護層を含んでもよい。この層は、フッ化リチウム、フッ化セシウム、銀、Liq(8-ヒドロキシキノリノラトリチウム)、Li2O、BaF2、MgOおよび/またはNaFを含んでもよい。
【0134】
随意に、電子輸送層(ETL)および/またはホールブロッキング層(HBL)もまた、一つまたは複数のホスト化合物Hを含みうる。
【0135】
発光層EMLの発光スペクトルおよび/または吸収スペクトルをさらに改変するため、発光層EMLは、1つまたは複数のさらなる発光体分子Fをさらに含んでもよい。このような発光体分子Fは、当技術分野で公知の任意の発光体分子であってよい。こうした発光体分子Fは、本発明Eにかかる分子の構造とは異なる構造をもつ分子であることが好ましい。発光分子Fは随意にTADF発光体であってもよい。代わりに、発光体分子Fは、随意に、発光層EMLの発光スペクトルおよび/または吸収スペクトルをシフトすることができる蛍光のおよび/またはリン光発光体分子であってもよい。例示的に、三重項励起子および/または一重項励起子は、基底状態S0まで緩和される前に、発光体分子Eが発する光と比べて典型的に深色シフトした光を発しながら、本発明Eにかかる発光体分子から発光体分子Fに移動しうる。随意に、発光体分子Fはまた、二光子効果を引き起こしうる(すなわち、二つの光子の吸収は吸収極大のエネルギーの半分)。
【0136】
随意に、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(例えばOLED)は、例示的に、本質的に白色の有機エレクトロルミネッセンスデバイスであってよい。例示的にこうした白色の有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、少なくとも1つの(深)青色発光体分子および緑色光および/または赤色光を発する一つまたは複数の発光体分子を含むことができる。その後、随意に、上記に記載した2個以上の分子間のエネルギー透過率もまた存在してもよい。
【0137】
本明細書で使用される場合、特定の状況においてより具体的に定義されていない限り、発光するおよび/または吸収される光の色の命名は以下の通りである:
紫色: 波長範囲>380~420nm;
深青色: 波長範囲>420~480nm;
水色: 波長範囲>480~500nm;
緑色: 波長範囲>500~560nm;
黄色: 波長範囲>560~580nm;
オレンジ色:波長範囲>580~620nm;
赤色: 波長範囲>620~800nm。
【0138】
発光体分子に関して、こうした色が発光極大を指す。したがって、例として、深青色発光体は、>420~480nmの範囲に発光極大を有し、水色発光体は、>480~500nmの範囲に発光極大を有し、緑色発光体は、>500~560nmの範囲に発光極大を有し、赤色発光体は、>620~800nmの範囲に発光極大を有する。
【0139】
深青色発光体は、好ましくは480nm未満、より好ましくは470nm未満、さらにより好ましくは465nm未満またはさらには460nm未満の発光極大を有してもよい。発光極大は通常、420nm超、好ましくは430nm超、より好ましくは440nm超、またはさらに450nm超である。
【0140】
したがって、本発明のさらなる態様は、1000cd/m2において、8%を超える、より好ましくは10%を超える、より好ましくは13%を超える、さらにより好ましくは15%を超える、もしくはさらには20%をも超える外部量子効率を示し、および/または420nm~500nmの間、好ましくは430nm~490nmの間、より好ましくは440nm~480nmの間、さらにより好ましくは450nm~470nmの間の発光極大を示し、および/または500cd/m2において、100hを超える、好ましくは200hを超える、より好ましくは400hを超える、さらにより好ましくは750hを超える、もしくはさらに1000hを超える、LT80値を示すOLEDに関する。したがって、本発明のさらなる態様は、その発光が、0.45未満、好ましくは0.30未満、より好ましくは0.20未満またはさらにより好ましくは0.15未満、またはさらに0.10未満の、CIEy色座標を示すOLEDに関する。
【0141】
本発明のさらなる態様は、明確な色ポイントにおいて光を発光するOLEDに関する。本発明によれば、OLEDは、狭い発光帯(小さな半値全幅(FWHM))を有する光を発光する。一態様においては、本発明によるOLEDは、0.50eV未満、好ましくは0.48eV未満、より好ましくは0.45eV未満、さらにより好ましくは0.43eV未満、またはさらに0.40eV未満の、主要発光ピークのFWHMを有する光を発光する。
【0142】
本発明のさらなる態様は、ITU-R Recommendation BT.2020(Rec.2020)で定義されているような原色の青色(CIEx=0.131およびCIEy=0.046)のCIEx(=0.131)およびCIEy(=0.046)色座標に近いCIExおよびCIEyの色座標で発光し、したがって、超高精細(UHD)ディスプレイ、例えば、UHD-TVなどにおける使用に適合したOLEDに関する。したがって、本発明のさらなる態様は、その発光が、0.02~0.30、好ましくは0.03~0.25、より好ましくは0.05~0.20、もしくはさらに好ましくは0.08~0.18、またはさらに0.10~0.15のCIEx色座標、および/または、0.00~0.45、好ましくは0.01~0.30、より好ましくは0.02~0.20、もしくはさらに好ましくは0.03~0.15、またはさらに0.04~0.10のCIEy色座標を示す、OLEDに関する。
【0143】
さらなる態様においては、本発明は、光電子部品の製造方法に関する。この場合、本発明の有機分子が用いられる。
【0144】
有機エレクトロルミネッセンスデバイス、特に本発明によるOLEDは、任意の手段の蒸気堆積および/または液体処理によって製造することができる。したがって、少なくとも一つの層は、
- 昇華プロセスによって調製され、
- 有機気相堆積プロセスによって調製され、
- キャリアガス昇華プロセスによって調製され、
- 溶液処理または溶液印刷される。
【0145】
有機エレクトロルミネッセンスデバイス、特に本発明によるOLEDを製造するために用いる方法は、この技術分野において公知である。異なる層は、続く堆積プロセスにより、適切な基板上に個々におよび逐次的に堆積される。個々の層は、同じまたは異なる堆積方法を使用して堆積させることができる。
【0146】
蒸気堆積処理は、熱的(共)蒸着、化学蒸着および物理蒸着を例示的に含む。アクティブマトリックスOLEDディスプレイに対して、AMOLEDバックプレーンを基板として使用する。個々の層は、十分な溶媒を利用して、溶液または分散液から処理してもよい。溶液堆積処理は、スピンコーティング、ディップコーティングおよびジェット式プリンティングを例示的に含む。液体処理は、随意に、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行ってもよく、溶媒は、随意に、最先端技術で公知である手段によって、完全にまたは部分的に除去してよい。
【実施例】
【0147】
【0148】
【0149】
3-ブロモ-4-フルオロベンゾニトリル(1.10当量)、4-シアノ-2-フルオロフェニルボロン酸エステル(1.00当量)、Pd2(dba)3(0.04当量)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)(0.16当量)およびリン酸三カリウム(2.50当量)を、ジオキサン/水混合物(比10:1)中、窒素雰囲気下、110℃で4時間攪拌する。反応混合物に、Celite(登録商標)(珪藻土(diatomaceous earth、diatomaceous silicaまたはkiselguhr)として知られる)および活性炭素を加え、110℃で15分間攪拌する。続いて、反応混合物を高温で濾過し、残留物をジオキサンで洗浄する。反応混合物を200mLの飽和塩化ナトリウム溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出する。1つにまとめた有機相を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸発させる。残留物をエタノール中で再結晶させる。生成物Z1を固体として得る(82%収率)。
【0150】
【0151】
3-ブロモ-2-フルオロベンゾニトリル(1.10当量)、5-シアノ-2-フルオロフェニルボロン酸エステル(1.00当量)、Pd2(dba)3(0.04当量)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)(0.16当量)およびリン酸三カリウム(2.50当量)を、ジオキサン/水混合物(比10:1)中、窒素雰囲気下、110℃で3時間攪拌する。反応混合物に、Celite(登録商標)および活性炭素を加え、110℃で15分間攪拌する。続いて、反応混合物を高温で濾過し、残留物をジオキサンで洗浄する。反応混合物を200mLの飽和塩化ナトリウム溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出する。1つにまとめた有機相を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸発させる。残留物をエタノールで再結晶させると、生成物Z2固体として得る(78%収率)。
【0152】
【0153】
2-ブロモ-3-フルオロベンゾニトリル(1.10当量)、5-シアノ-2-フルオロフェニルボロン酸エステル(1.05当量)、Pd2(dba)3(0.04当量)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)(0.16当量)およびリン酸三カリウム(2.50当量)を、ジオキサン/水混合物(比10:1)中、窒素雰囲気下、110℃で2.5時間攪拌する。反応混合物に、Celite(登録商標)および活性炭素を加え、110℃で15分間攪拌する。続いて、反応混合物を高温で濾過し、残留物をジオキサンで洗浄する。反応混合物を200mLの飽和塩化ナトリウム溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出する。1つにまとめた有機相を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸発させる。残留物は、エタノールおよびシクロヘキサン中での再結晶によって精製される。生成物Z3を固体として得る(65%収率)。
【0154】
合成AAV4のための一般的手順:
【化44】
【化45】
【化46】
【0155】
Z1、Z2またはZ3(各1当量)と、対応するドナー分子D-H(2当量)と、リン酸三カリウム(5当量)とを、窒素雰囲気下、DMSO中で懸濁させ、120℃(21時間)で攪拌する。その後、反応混合物を飽和塩化ナトリウム溶液に注ぎ、沈殿物を濾過し、水で洗浄する。その後、固形物をジクロロメタンに溶解し、MgSO4上で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させる。残留物は、濾過カラム、再結晶およびMPLCによって精製され、生成物を固体として得る。
【0156】
ドナー分子D-Hは、特に、3,6-置換カルバゾール(例えば、3,6-ジメチルカルバゾール、3,6-ジフェニルカルバゾール、3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール)、2,7-置換カルバゾール(例えば、2,7-ジメチルカルバゾール、2,7-ジフェニルカルバゾール、2,7-ジ-tert-ブチルカルバゾール)、1,8-置換カルバゾール(例えば、1,8-ジメチルカルバゾール、1,8-ジフェニルカルバゾール、1,8-ジ-tert-ブチルカルバゾール)、1-置換カルバゾール(例えば、1-メチルカルバゾール、1-フェニルカルバゾール、1-tert-ブチルカルバゾール)、2-置換カルバゾール(例えば、2-メチルカルバゾール、2-フェニルカルバゾール、2-tert-ブチルカルバゾール)または3-置換カルバゾール(例えば、3-メチルカルバゾール、3-フェニルカルバゾール、3-tert-ブチルカルバゾール)である。
【0157】
例示的には、D-Hとして、ハロゲン置換カルバゾール、特に3-ブロモカルバゾールを使用することができる。
【0158】
続く反応においては、例えば、ビス(ピナコラト)ジボロン(CAS登録番号73183-34-3)との反応により、D-Hを介して導入された、1つまたは複数のハロゲン置換基の位置に、ボロン酸エステル官能基またはボロン酸官能基を、例えば、導入して、相応するカルバゾール-3-イルボロン酸エステルまたはカルバゾール-3-イルボロン酸を得ることができる。続いて、ボロン酸エステル基またはボロン酸基の代わりに、相応するハロゲン化反応物質Ra-Hal、好ましくはRa-ClおよびRa-Brとのカップリング反応を介して、1つまたは複数の置換基Raを導入することができる。
【0159】
あるいは、置換基Ra[Ra-B(OH)2]のボロン酸または相応するボロン酸エステルとの反応を介して、D-Hを介して導入された1つまたは複数のハロゲン置換基の位置に、1つまたは複数の置換基Raを導入することができる。
【0160】
サイクリックボルタンメトリー
サイクリックボルタモグラムは、ジクロロメタンまたは適切な溶媒中10-3モル/Lの濃度の有機分子および適切な支持電解質(例えば0.1モル/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)を有する溶液から測定する。測定は、窒素雰囲気下、室温で、3電極接合体(作用電極および対電極:Pt導線、基準電極:Pt導線)を用いて行われ、内部標準としてFeCp2/FeCp2 +を使用して較正される。飽和カロメル電極(SCE)に対する内部標準としてフェロセンを用いて、HOMOデータを補正した。
【0161】
密度汎関数法の計算
分子構造は、BP86関数手法および単位の分解手法(RI)を利用して最適化する。励起エネルギーは、時間依存性DFT(TD-DFT)法を利用した、(BP86)最適化構造を使用して計算する。B3LYP関数を用いて、軌道および励起状態エネルギーを計算する。数値積分のためのDef2-SVPベースのセットおよびm4-グリッドを使用する。全ての計算に、Turbomoleプログラムパッケージを用いる。
【0162】
光物理的測定
サンプルの事前処理:スピンコーティング
装置:Spin150、SPS euro。
サンプル濃度は、10mg/mlであり、適切な溶媒に溶解している。
プログラム:1)400U/分で3秒;1000U/分で、1000Upm/秒で20秒。3)4000U/分で、1000Upm/秒で10秒。コーティング後、フィルムは70℃で1分間試す。
【0163】
光ルミネセンス分光法およびTCSPC(時間相関シングルフォトンカウンティング)
150W Xenon-Arcランプ、励起および発光モノクロメーター、ならびに浜松ホトニクス製R928光電子増倍管および時間相関シングルフォトンカウンティングオプションを備えた、堀場製作所製FluoroMax-4型で定常状態の発光分光法を測定する。標準的な補正適合を使用して発光および励起スペクトルを補正する。
【0164】
FM-2013装置および堀場製作所製Yvon TCSPC hubを用いたTCSPC方法を使用して、同じシステムを利用して、励起状態寿命を決定する。
励起光源:
NanoLED 370(波長:371nm、パルス幅:1,1ns)
NanoLED 290(波長:294nm、パルス幅:<1ns)
SpectraLED 310(波長:314nm)
SpectraLED 355(波長:355nm)。
【0165】
データ分析(指数近似)は、ソフトウエアスイートDataStationおよびDAS6分析ソフトウエアを使用して行う。適合はカイ二乗検定を使用して特定する。
【0166】
フォトルミネッセンス量子収率測定
フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)測定のため、絶対PL量子収率測定C9920-03Gシステム(浜松ホトニクス製)を使用する。量子収率およびCIE座標は、ソフトウエアU6039-05バージョン3.6.0を使用して決定する。
発光極大はnmで、量子収率Φは%で、CIE座標はx、y値として与えられる。
PLQYは、以下のプロトコルを使用して決定する。
1)品質保証:エタノール中のアントラセン(公知の濃度)を基準物質として使用する
2)励起波長:有機分子の最大吸収を決定し、この波長を使用して分子を励起させる
3)測定
窒素雰囲気下、溶液またはフィルムの試料に対して量子収率を測定する。以下の方程式を使用して収率を計算する:
【数1】
式中、n
光子はフォトン数を示し、Int.は強度を示す。
【0167】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスの生成および特徴付け
本発明による有機分子を含むOLEDデバイスは真空堆積法を介して生成することができる。層が1つ超の化合物を含有する場合、1つまたは複数の化合物の質量パーセンテージは%で与えられる。総質量パーセンテージ値は100%になるため、したがって、値が与えられていない場合、この化合物の分率は、与えられた値と100%との間の差異に等しい。
【0168】
標準的方法を使用して、ならびにエレクトロルミネッセンススペクトル、フォトダイオードにより検出した光を使用して計算した、強度に対する依存性における外部量子効率(単位:%)、および電流を測定して、完全には最適化されていないOLEDを特徴付ける。OLEDデバイス寿命は、定電流密度での動作中の輝度の変化から抽出する。LT50値は、測定された輝度が最初の輝度の50%まで低減する時間に対応し、同様にLT80は、測定された輝度が最初の輝度の80%まで低減する時間点に対応し、LT95は、測定された輝度が最初の輝度の95%まで低減する時間点に対応する。
【0169】
加速された寿命測定を実施する(例えば、より高い電流密度を適用することによって)。500cd/m
2での例示的なLT80値は、以下の方程式を使用して決定する。
【数2】
(式中、L
0は、適用された電流密度での最初の輝度を表す)
値はいくつかのピクセル(通常、2~8)の平均に相当し、これらのピクセル間の標準偏差が与えられる。
【0170】
HPLC-MS:
HPLC-MS分光法は、MS-検出器(Thermo LTQ XL)を有するAgilent製1100シリーズによりHPLC上で実施する。HPLCでは、Waters社の逆相カラム4.6mm×150mm、粒径5.0μmを用いる(プレカラムなし)。溶媒のアセトニトリル、水およびTHFを以下の濃度で用いて、HPLC-MS測定を室温(rt)で実施する:
【表1】
【0171】
0.5mg/mlの濃度の溶液から、15μLの注入量を測定用に取る。以下の勾配を使用する:
【表2】
【0172】
プローブのイオン化をAPCI(大気圧化学イオン化)により実施する。
【実施例1】
【0173】
【0174】
実施例1は、AAV1およびAAV4に従って合成されたもので、合成AAV4の収率は30%であった。
【0175】
【0176】
図1は、実施例1(PMMA中10重量%)の発光スペクトルを表す。発光極大(λ
max)は、472nmである。フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は74%であり、半値全幅(FWHM)は0.39eVであり、発光寿命は9μsである。得られたCIE
x座標は0.16で決定され、CIEy座標は0.27で決定される。mCBP(10重量%)では、発光寿命は5μsに有益に減少し、FWHMは0.35eV(PLQY= 81%;λ
max = 478nm)になる。
【実施例2】
【0177】
【0178】
実施例2は、AAV1およびAAV4に従って合成されたもので、合成AAV4の収率は50%であった。
【0179】
【0180】
図2は、実施例2(PMMA中10重量%)の発光スペクトルを表す。発光極大(λ
max)は、475nmである。フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は89%であり、半値全幅(FWHM)は0.38eVであり、発光寿命は7μsである。得られたCIE
x座標は0.16で決定され、CIEy座標は0.27で決定される。mCBP(10重量%)では、発光寿命は6μsに有益に減少し、FWHMは0.34eV(PLQY= 89%;λ
max = 475nm)になる。
【実施例3】
【0181】
【0182】
実施例3は、AAV1およびAAV4に従って合成されたもので、合成AAV4の収率は50%であった。
【0183】
【0184】
図3は、実施例3の発光スペクトルを表す。実施例3の発光極大(λ
max)(PMMA中10重量%)は462nmである。フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は66%であり、半値全幅(FWHM)は0.40eVであり、発光寿命は11μsである。得られたCIE
x座標は0.15で決定され、CIEy座標は0.17で決定される。mCBP(10重量%)では、発光寿命は7μsに有益に減少し、FWHMは0.38eV(PLQY= 68%;λ
max = 470nm)になる。
【実施例4】
【0185】
【0186】
実施例4は、AAV2およびAAV3に従って合成されたもので、合成AAV3の収率は40%であった。
【0187】
【0188】
図4は、実施例4(PMMA中10重量%)の発光スペクトルを表す。実施例4(PMMA中10重量%)の発光極大(λ
max)は443nmである。フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は45%であり、半値全幅(FWHM)は0.41eVであり、発光寿命は128μsである。得られたCIE
x座標は0.15で決定され、CIEy座標は0.09で決定される。
【実施例5】
【0189】
【0190】
実施例5は、AAV3およびAAV4に従って合成されたもので、合成AAV4の収率は38%であった。
【0191】
【0192】
図5は、実施例5(PMMA中10重量%)の発光スペクトルを表す。発光極大(λ
max)は、453nmである。フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は66%であり、半値全幅(FWHM)は0.40eVであり、発光寿命は51μsである。得られたCIE
x座標は0.15で決定され、CIEy座標は0.13で決定される。
【0193】
デバイスD1
実施例1を、次の層構造を持つOLED-デバイスD1で試験した:
【表8】
【0194】
D1について、1000cd/m2において、14.7±0.2%の外部量子効率(EQE)、および500cd/m2において、加速寿命測定から113時間のLT80値が決定された。発光極大は482nm、7VでのCIExは0.16であり、CIEyは0.33である。
【0195】
デバイスD2
実施例2を、次の層構造を持つOLED-デバイスD2で試験した:
【表9】
【0196】
D2について、1000cd/m2において、9.7±0.2%の外部量子効率(EQE)が決定された。発光極大は481nm、8VでのCIExは0.15であり、CIEyは0.29である。
【0197】
デバイスD3
実施例3を、次の層構造を持つOLED-デバイスD3で試験した:
【表10】
【化52】
【0198】
D3について、1000cd/m2において、16.5±0.2%の外部量子効率(EQE)が決定された。発光極大は468nm、7VでのCIExは0.14であり、CIEyは0.20である。
【本発明の有機分子のさらなる実施例】
【0199】
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】