(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】MRIノイズ除去用組成物及びこれを利用したパッド
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/055 355
(21)【出願番号】P 2021128245
(22)【出願日】2021-08-04
(62)【分割の表示】P 2019569653の分割
【原出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2017-0030077
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0060364
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519321199
【氏名又は名称】ペク、チョン-ウン
【氏名又は名称原語表記】BAEK,Jung-Eun
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、キョン ソク
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表平4-507004(JP,A)
【文献】特開平4-288139(JP,A)
【文献】特開2004-283587(JP,A)
【文献】国際公開第2016/090491(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素結合が可能な官能基を有する化合物を含むMRI映像のノイズ除去用組成物であって、
前記化合物は、エタノール(C
2H
5OH)、酢酸(CH
3COOH)、クエン酸(C
6H
8O
7H
2O)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、グリセリン(C
3H
8O
3)からなる群から選ばれる1種であり、
前記ノイズは、身体に挿入された金属により発生することを特徴とするノイズ除去用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、MRI映像の画質を改善することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、水(H
2O)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を含むMRI映像のノイズ除去用パッド。
【請求項5】
前記パッドは、MRI映像の画質を改善することを特徴とする請求項4に記載のパッド。
【請求項6】
前記パッドは、前記組成物を収容するカバーをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のパッド。
【請求項7】
前記パッドは、ヒトの身体形態に変形可能であることを特徴とする請求項4に記載のパッド。
【請求項8】
前記パッドは、MRI装備の主コイル(main body coil)、シムコイル(shim coil)、RFコイル(RF coil)、配列コイル(array coil)、表面コイル(surface coil)、後面コイル(spine coil)、頭部コイル(head coil)、末端コイル(extremety coil)、または胴体コイル(torso coil)に脱付着が可能であることを特徴とする請求項4に記載のパッド。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物が注入されたMRI装備コイル。
【請求項10】
前記MRI装備コイルは、主コイル(main body coil)、シムコイル(shim coil)、RFコイル(RF coil)、配列コイル(array coil)、表面コイル(surface coil)、後面コイル(spine coil)、頭部コイル(head coil)、末端コイル(extremety coil)、及び胴体コイル(torso coil)よりなる群から選ばれる1種以上のコイルであることを特徴とする請求項9に記載のMRI装備コイル。
【請求項11】
水素結合が可能な官能基を有する化合物を含む組成物を利用してMRI映像ノイズを除去する方法であって、
前記化合物は、エタノール(C
2H
5OH)、酢酸(CH
3COOH)、クエン酸(C
6H
8O
7H
2O)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、グリセリン(C
3H
8O
3)からなる群から選ばれる1種であり、
前記ノイズは、身体に挿入された金属により発生することを特徴とする方法。
【請求項12】
前記化合物は、水(H
2O)をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水素結合が可能な官能基を有する化合物を含むパッドの製造段階と;
前記パッドを個体の関心領域に付着する段階と;
MRI映像撮影装置を利用して前記関心領域のMRI映像を獲得する段階と;を含むノイズが減少したMRI映像の獲得方法であって、
前記化合物はエタノール(C
2H
5OH)、酢酸(CH
3COOH)、クエン酸(C
6H
8O
7H
2O)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、グリセリン(C
3H
8O
3)からなる群から選ばれる1種であり、
前記ノイズは、身体に挿入された金属により発生することを特徴とするノイズが減少したMRI映像の獲得方法。
【請求項14】
前記化合物は、水(H
2O)をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のノイズが減少したMRI映像の獲得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRIノイズ除去用組成物及びこれを利用したパッドに関し、前記組成物は、水素結合が可能な官能基を有する化合物を含むことを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
一般的なMRI造影剤は、侵襲的な行為により人体に注入されて、体内の水素原子核の共鳴による信号を強化して、さらに明確な身体深部の映像イメージを得ることができるようにする。しかしながら、侵襲的な行為、例えば静脈注射を通した造影剤の注入は、嘔吐、腹痛、下痢、高血圧、頭痛、発熱、悪寒、せき、鼻詰まりなど特別な処置が必要ない軽い症状から目まい、低血圧、徐脈、全身じんましん、血管浮腫、呼吸困難、腎原性線維皮膚疾患、腎原性全身線維症(NSF)など深刻な副作用が発生する問題があり、体内に金属インプラントなど磁場に影響を及ぼす物質がある場合、映像に発生するノイズを除去しない限界がある。
【0003】
また、造影剤により解決できない体内の金属インプラントなどによるノイズ除去のための技術は、主として映像の欠損部分をコンピュータアルゴリズムで推定して補完するものであって、このような技術は、不正確であり、再現できる部分が広くないという問題がある。前記のような問題点を解決するために、MRI映像を通じて正常組織と病変組織をさらに明確に区分することができるように人体映像の獲得過程で発生する金属物質ノイズ及び不均質な歪曲映像を解決するための多くの研究が進行されているが(韓国特許登録KR10-1262479参照)、ソフトウェアによる映像改善が有する限界と体内で発生する造影剤の副作用の問題を同時に改善できる映像改善技術は、研究が十分でないのが現況であり、特にこのような問題を克服するために、体内注入されない非侵襲的組成物を利用した技術はまだ報告されたことがない。
【0004】
本発明者らは、一般的な造影剤とは異なって、非侵襲的な方法によりMRI映像の獲得に発生するノイズを除去するために鋭意努力して、水素結合が可能な官能基を含む物質を診断が必要な人体の一領域に付着したり、これを含むパッドを製作して覆う方法により効果的に金属ノイズを除去することができることを確認し、本発明の組成物またはパッドをMRIコイルに付着したり挿入させる場合にも、同一の効果を得ることができることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これより、本発明の発明者は、前記のような問題点を解決するために、MRI映像を撮影する場合、ノイズを除去するために鋭意努力しているところ、水素結合が可能な官能基を含む物質を通じてMRI映像のノイズと虚像の映像を復元して、効率的に金属物質のノイズ除去と画質改善を行うことができるという点を確認することによって、本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって、本発明の目的は、水素結合が可能な官能基を有する化合物を含む、MRI映像のノイズ除去のための組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記組成物を利用してMRI映像のノイズ除去のためのパッドを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、前記組成物が注入されたMRI装備コイルを提供することにある。
【0009】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、水素結合が可能な官能基を有する化合物を含む、MRI映像のノイズ除去のための組成物を提供する。
【0011】
前記組成物は、MRI映像の画質を改善することができるが、これに制限されるものではない。
【0012】
また、前記化合物は、 水(H2O)、アミルアルコール(C5H11OH)、ブチルアルコール(CH3CH2CH2OH)、エタノール(C2H5OH)、メチルアルコール(CH3OH)、エチレングリコール(OHCH2CH2OH)、ホルムアルデヒド(HCHO)、ニトロベンゼン(C6H5NO2)、プロピレングリコール(OH(CH2)3OH)、過酸化水素(H2O2)、酢酸(CH3COOH)、氷酢酸(C4H6O3)、酪酸(C3H7COOH)、ベンゼンスルホン酸(C6H5SO3H)、安息香酸(C6H5COOH)、クロム酸(H2CrO4)、クエン酸(C6H8O7H2O)、フッ化ケイ素酸(H2SiF6)、フッ化ホウ素酸(HBF4)、蟻酸(HCOOH)、塩酸(HCl)、シアン化水素酸(HCN)、フッ化水素酸(HF)、次亜塩素酸(HClO)、乳酸(CH3CHOHCOOH)、マレイン酸(CHOOH)2、硝酸(HNO3)、オレイン酸(C18H34O2)、リン酸(H3PO4)、過塩素酸(HClO4)、硫酸(H2SO4)、ステアリン酸(C17H35COOH)、三塩化酢酸(CCl3COOH)、アンモニア(NH4OH)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、塩化アンモニウム((NH4)2Cl)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、過硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8)、グリセリン(C3H8O3)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、及び重炭酸アンモニウム(NH4HCO3)よりなる群から選ばれる一つ以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0013】
また、前記水は、軽水、重水、三重水、及び蒸留水よりなる群から選ばれる一つであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0014】
また、前記水素結合を含む化合物は、組成物の総重量に対して40重量%以上を含むことが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0015】
また、本発明の組成物は、映像強化のために、造影剤として使用され得る物質を追加的にさらに含むことができ、前記造影剤として使用され得る物質は、ガドキセト酸二ナトリウム、酸化カルシウム、トロメタモール、水酸化ナトリウム、塩酸、注射用水、カルテリドールカルシウム、酸化ガドリニウム、カルシウム、メグルミン、イオビ-ディティピエイ(EOB DTPA)、ガドテリドール及びキレート化剤よりなる群から選ばれるが、これらに制限されるものではない。
【0016】
また、前記ノイズは、身体に挿入された金属により発生することができる。
【0017】
また、本発明の組成物は、パッド内に充填されて使用され得、本発明の組成物は、身体を覆うパッドとして使用することができると共に、MRI装備の主コイル(main body coil)、シムコイル(shim coil)、RFコイル(RF coil)、配列コイル(array coil)、表面コイル(surface coil)、後面コイル(spine coil)、頭部コイル(head coil)、末端コイル(extremety coil)または胴体コイル(torso coil)に脱付着が可能である。
【0018】
また、本発明の組成物をMRI装備の主コイル(main body coil)、シムコイル(shim coil)、RFコイル(RF coil)、配列コイル(array coil)、表面コイル(surface coil)、後面コイル(spine coil)、頭部コイル(head coil)、末端コイル(extremety coil)、または胴体コイル(torso coil)に注入する形態で使用することができる。
【0019】
本発明の他の態様では、前記MRI映像のノイズ除去用組成物を含むMRI映像のノイズ除去のためのパッドを提供する。
【0020】
前記パッドは、MRI映像の画質を改善することができるが、これに制限されるものではない。
【0021】
また、本発明のパッドは、前記組成物を収容するカバーをさらに含むことができる。前記カバーは、ビニルカバーであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0022】
また、本発明のパッドは、ヒトの身体形態、例えば頭部、四肢、脊椎、腹部などに変形可能なパッドであってもよい。
【0023】
また、本発明のパッドは、MRI装備の主コイル(main body coil)、シムコイル(shim coil)、RFコイル(RF coil)、配列コイル(array coil)、表面コイル(surface coil)、後面コイル(spine coil)、頭部コイル(head coil)、末端コイル(extremety coil)、または胴体コイル(torso coil)に脱付着が可能なパッドであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0024】
また、パッド内に充填剤をさらに含むことができ、前記充填剤は、液体ゼリー型と固体型であってもよく、固体型である場合、流動性が少ないビーズ状、粉末状またはビーズ状とゼリー型の混合が可能になり得る。
【0025】
本発明のさらに他の態様では、前記MRI映像のノイズ除去用組成物が注入されたMRI装備コイルを提供する。
【0026】
前記MRI装備コイルは、主コイル(main body coil)、シムコイル(shim coil)、RFコイル(RF coil)、配列コイル(array coil)、表面コイル(surface coil)、後面コイル(spine coil)、頭部コイル(head coil)、末端コイル(extremety coil)、及び胴体コイル(torso coil)よりなる群から選ばれる1種以上のコイルであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0027】
また、本発明は、水素結合が可能な官能基を有する化合物を含む組成物を利用してMRI映像ノイズを除去する方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、水素結合が可能な官能基を有する化合物を含むパッドの製造段階と;前記パッドを個体の関心領域に付着する段階と;MRI映像撮影装置を利用して前記関心領域のMRI映像を獲得する段階と;を含むノイズが減少したMRI映像の獲得方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、水素結合が可能な官能基を有する化合物を含む組成物のMRI映像ノイズ除去のための使用を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の水素結合が可能な官能基を有する化合物は、水素結合の磁化による間接的なエネルギー交換を通じて自然的に高い信号を発生させ、金属により発生するノイズによって映像として具現されない組織の映像を活性化させることができるという長所がある。金属物質による組織破損映像は、理論的に再生及び復旧が不可能であるが、本発明によるパッドは、欠損された映像の撮影が可能であるので、映像欠損の問題を根本的に解決することができるので、本映像技術を利用する場合、理論的に回復が難しい映像を現実的に再生可能にする。また、本発明は、MRIの基本映像獲得において水素の磁化率による人体の臓器を表わす基本的な理論に基づいて根本的かつ具体化した科学的知識に基づいて着目したものであるから、その理論に基づいて金属物質のノイズ除去効果と画質改善を証明したものと認められる。
【0031】
また、本発明による組成物は、MRI造影剤とは異なって、非侵襲的な方法により適用することができるので、人体に副作用を招く問題がなく、毒性がないため、安全である。また、診断が必要な領域に覆ったり、MRI装置に付着する方法により利用されて、比較的広い範囲の映像を改善することができ、アルゴリズムを利用したソフトウェアにより歪曲された映像を復元することよりも正確な映像情報を獲得することができるという長所がある。同時に、本発明による組成物は、その価格が安くて効果的でありながら経済的なMRI 映像の改善の補助ツールとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1ab】
図1aは、酢酸パッドを製作するために、果汁酢酸、増粘剤、及びグリセリン(超音波ゼリー)溶液を準備したものを示し、
図1bは、前記準備した材料を混合してゼリー形態で作ることを示す。
【
図2】
図2は、混合されたゼリー形態の果汁酢酸を衛生ビニル型容器に入れて作った酢酸ゼリーパッドを示す。
【
図3】
図3は、脂肪容器にクリップを加えて自体製作したファントムを示す。
【
図4ab】
図4aは、一般ファントム映像と水パッド、酢酸パッドのROI平均値を比較した結果を示し、
図4bは、金属物質のノイズ減少に対する比較実験結果、GEヘルスケア補助パッド(
図4bの左側)と酢酸パッド(
図4bの右側)映像の差異を示す。
【
図5】
図5a及び
図5bは、金属物質のノイズによる映像を、パッドの使用前(
図5a及び
図5bの各左側)と使用後(
図5a及び
図5bの各右側)を比較した結果を示し、
図5cは、人体の磁化率の差異による虚像の映像を比較した結果であり、
図5d~
図5lは、パッドの使用前(
図5d~
図5lの各左側)と使用後(
図5d~
図5lの各右側)の映像の金属物質のノイズ改善と画質改善効果を肉眼で観察した結果を示す。
【
図6】
図6は、水及び酢酸を利用したMRI映像のノイズ除去効果を確認した結果を示す。
【
図7】
図7は、クエン酸を利用したMRI映像のノイズ除去効果を確認した結果を示す。
【
図8】
図8は、炭酸水素ナトリウムを利用したMRI映像のノイズ除去効果を確認した結果を示す。
【
図9】
図9は、エタノールを利用したMRI映像のノイズ除去効果を確認した結果を示す。
【
図10】
図10は、グリセリンを利用したMRI映像のノイズ除去効果を確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、次の実施例または図面により本発明をより具体的に説明する。しかしながら、次の実施例または図面に関する説明は、本発明の具体的な実施態様を特定して説明しようとするものに過ぎず、本発明の権利範囲をこれらに記載された内容に限定したり制限解析しようと意図するものではない。
【0034】
[実施例1]実験準備及び実験方法1-1.酢酸パッド製作
酢酸は、購入が容易であると共に、人体に無害であるので、このような酢酸を使用してMRI映像のノイズ除去と画質改善効果を得ることができるかを調べてみるために、果汁で作った酢酸を利用して自然的に得ることができる濃度の酢酸をもってパッドを製作した。
【0035】
果汁酢酸に若干のグリセリンを混合し、患者のインプラント部位に容易に付着するための増粘剤を使用したが、この際、使用された増粘剤は、超音波ゼリー成分のうちグリセリンと一般増粘成分が混合されたものを言い、前記増粘剤は、超音波ゼリーに代替可能である。
【0036】
図1aに示されたように、果汁酢酸約1リットル、増粘剤、及びグリセリン(超音波ゼリー)溶液を準備した後、果汁酢酸200mlと増粘剤及びグリセリン(超音波ゼリー)800mlの割合で粘性があるまで混合して、ゼリー形態で作った(
図1b参照)。
【0037】
次に、
図2に示されたように、混合されたゼリー形態の果汁酢酸を衛生ビニル型容器に入れて常温(15~25℃)保管した後、前記酢酸ゼリーパッドを口頭同意が完了した患者を対象として検査の最後にインプラントの周囲に付着させて検査を1回施行した。
【0038】
1-2.酢酸パッド使用前/後の比較実験
人体実験の限界を克服するために、
図3に示されたように、脂肪容器にクリップを加えて自体製作したファントムを使用して、一般ファントム、動き防止パッド、砂袋パッド、米パッド(組織等価物質)、GEヘルスケア腹部脂肪減少パッド、水、酢酸パッドの順に、各種パッドを比較実験した。
【0039】
より具体的に、規定されたプロトコルT1 Fat Saturation(Fov 240×207、TR 750ms、TE 12ms、Thickness 4mm、Gap 1.5mm)を利用して国際規格のファントムを検査対象とし、果汁酢酸成分パッド使用前と後を比較して観察した。検査後、映像は、Maroview Infinitt、バージョンM-view v 5.4.10.61のワークステーションROI(対照度HU値)で関心領域ROI(Region Of Interest)部位を測定した。
【0040】
前記ファントム実験後に患者観察検査を行い、酢酸パッドを使用前と後に分けて検査してイメージを獲得した。
【0041】
[実施例2]ファントムを対象とする酢酸パッド使用前/後の確認
国際規格のQC(quality control)、すなわち、機器の質の向上を点検するために、前記実施例1-2に記載された方法によって国際規格QCファントムを利用して実験を行った後、一般ファントム映像と水パッド、酢酸パッドのROI平均値を比較した結果、
図4a及び表1に示されたように、何も載置しない一般ファントム映像の平均値は、2029(
図4aの上段左側)、水を載置したパッドは、2318(
図4aの上段右側)、酢酸パッドを載置した平均値は、2364(
図4aの下段)と測定された。
【0042】
【0043】
また、
図4bに示されたように、金属物質のノイズ減少に対する比較実験結果、GEヘルスケア補助パッド(
図4bの左側)と酢酸パッド(
図4bの右側)の映像は差異を示した。前記から、酢酸の含有量が高ければ高いほどROI平均値が増加し、ノイズ減衰率が上昇することを確認することができるところ、これを通じて、酢酸が金属物質のノイズを減衰させるという事実を知ることができ、これは、水素含有率が高く、その濃度が濃厚であるほどROI測定値とノイズ減衰効果がさらに増加するという事実を示唆する。
【0044】
[実施例3]患者を対象とする酢酸パッド使用前/後の確認
金属物質のノイズによる映像の酢酸パッド使用前と後を比較するために、前記実施例1-2に記載された方法によって患者を観察した。この際、酢酸パッド使用効果に対する客観的測定データ数値を比較するために、画質対照度の最小及び最大標準偏差のROI平均値を示して比較した。
【0045】
その結果、
図5a~
図5c及び表2に示されたように、酢酸パッド前と後の客観的ROI平均値を比較したとき、パッドの使用前(
図5a~
図5cの各左側)に比べてパッド使用後(
図5a~
図5cの各右側)のROI平均値がすべて増加したところ、酢酸パッド使用後、映像の対照度が卓越することが分かる。
【0046】
【0047】
また、
図5cは、人体の磁化率の差異による虚像の映像を比較した結果であって、首側の癌病変において虚像により示さなかった部位(
図5cの左側)に酢酸パッドを使用(
図5cの右側)したとき、映像の画質が大きく改善されたことを示す。また、
図5d~5lに示されたように、肉眼で観察したとき、パッド使用前(
図5d~
図5lの各左側)に比べてパッド使用後(
図5d~
図5lの各右側)、MRI映像の金属物質のノイズ改善と画質改善効果が明白であることが分かるので、酢酸パッドを利用する場合、MRI診断領域の情報が非常に広くなり得るという事実を導き出すことができる。
【0048】
[実施例4]水素結合が可能な官能基を有する化合物を含むパッドのMRI映像のノイズ除去効果確認
前記実施例3のように、酢酸を構成成分とするパッド使用前と後の人体映像を獲得したところ、酢酸のように水素含量が多いクエン酸、炭酸水素ナトリウム、エタノール、及びグリセリンを充填した各パッドのMRI映像のノイズ除去効果を確認するために、自体製作したファントムを利用して映像で関心領域測定(region of interest;ROI)平均値を測定した。
【0049】
各酢酸、クエン酸、炭酸水素ナトリウム、エタノール、及びグリセリンの濃度0%は、水(H2O)を意味し、MRI映像獲得は、水素がある成分を対象とするところ、映像獲得のための基準であって、MRI定期点検及び国際標準点検によって自然状態である水(H2O)を標準として定めた。
【0050】
4-1.水(H2O)及び酢酸を利用したMRI映像のノイズ除去確認
前記実施例1-1に記載された方法によって、酢酸(CH3COOH)をパッド内に充填してパッドを製作した後、MRI映像を測定した。
【0051】
その結果、
図6及び表3に示されたように、図面の左側から右側に(上段の酢酸の濃度は、左側から右側に0%(H
2O)値を基準として20%、40%の順に高くなり、同様に、下段の酢酸の濃度も、左側から右側に60%、80%、100%の順に高くなった)次第に酢酸の濃度が高くなるほど、ROI平均値が増加し、MRI映像のノイズ減衰率が上昇することを観察することができた。
【0052】
【0053】
4-2.クエン酸を利用したMRI映像のノイズ除去確認
また、前記実施例1-1の方法によって、クエン酸(C6H8O7H2O)をパッド内に充填してパッドを製作した後、MRI映像を測定した。
【0054】
その結果、
図7及び表4に示されたように、図面の左側から右側に(上段のクエン酸濃度は、左側から右側に0%(H
2O)値を基準として20%、40%の順に高くなり、同様に、下段のクエン酸の濃度も、左側から右側に60%、80%、100%の順に高くなった。)次第にクエン酸の濃度が高くなるほど、ROI平均値が増加して、MRI映像のノイズ減衰率が上昇することを観察することができた。
【0055】
【0056】
4-3.炭酸水素ナトリウムを利用したMRI映像のノイズ除去確認
前記実施例1-1の方法によって、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)をパッド内に充填してパッドを製作した後、MRI映像を測定した。
【0057】
その結果、
図8及び表5に示されたように、図面の左側から右側に(上段の炭酸水素ナトリウムの濃度は、左側から右側に0%(H
2O)値を基準として20%、40%の順に高くなり、同様に、下段の炭酸水素ナトリウムの濃度も、左側から右側に60%、80%、100%の順に高くなった。)次第に炭酸水素ナトリウムの濃度が高くなるほど、ROI平均値が増加し、MRI映像のノイズ減衰率が上昇することを観察することができた。
【0058】
【0059】
4-4.エタノールを利用したMRI映像のノイズ除去確認
前記実施例1-1の方法によって、エタノール(C2H5OH)をパッド内に充填してパッドを製作した後、MRI映像を測定した。
【0060】
その結果、
図9及び表6に示されたように、図面の左側から右側に(上段のエタノールの濃度は、左側から右側に0%(H
2O)値を基準として20%、40%の順に高くなり、同様に、下段のエタノールの濃度も、左側から右側に60%、80%、100%の順に高くなった。)次第にエタノールの濃度が高くなるほど、ROI平均値が増加し、MRI映像のノイズ減衰率が上昇することを観察することができた。
【0061】
【0062】
4-5.グリセリンを利用したMRI映像のノイズ除去確認
前記実施例1-1の方法によって、グリセリン(C3H8O3)をパッド内に充填してパッドを製作した後、MRI映像を測定した。
【0063】
その結果、
図10及び表7に示されたように、図面の左側から右側に(上段のグリセリンの濃度は、左側から右側に0%(H
2O)値を基準として20%、40%の順に高くなり、同様に、下段のグリセリンの濃度も、左側から右側に60%、80%、100%の順に高くなった。)次第にグリセリンの濃度が高くなるほど、ROI平均値が増加し、MRI映像のノイズ減衰率が上昇することを観察することができた。
【0064】
【0065】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の水素結合が可能な官能基を有する化合物を利用したMRIノイズ除去用組成物及びこれを利用したパッドに関し、本発明による組成物またはパッドは、MRI映像の獲得において金属インプラントなどにより誘導されるノイズを減少させて映像改善効果に優れており、価格が安くて、経済的であり、人体に毒性がないため、安全であり、医療機器分野において映像診断装置の一構成として利用され得、映像医学分野においてノイズが除去されたMRI映像の獲得のために有用に利用されるものと期待される。