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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】導水渠並びに沈殿池
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/40 20060101AFI20220728BHJP
   E03F 5/14 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
C02F1/40 F
E03F5/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021569152
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2021025906
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2020143546
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020152897
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504036291
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 秀雄
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088048(JP,A)
【文献】特開2018-051461(JP,A)
【文献】特開2003-170163(JP,A)
【文献】特開2020-014999(JP,A)
【文献】特開2008-221158(JP,A)
【文献】特開2017-070897(JP,A)
【文献】特開2015-110195(JP,A)
【文献】特開2015-116569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-78、3/00-34
E03F 1/00-11/00
F16B 7/00-22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水処理場に設けられ、複数の沈殿池に原水を分配供給する導水渠であって、
前記原水が流入する長水路としての導水渠本体と、水中に圧縮空気を噴出する圧縮空気噴出機構と、を備え、
前記圧縮空気噴出機構は、
前記導水渠本体の長手方向に沿う側壁の内側であって、その導水渠本体内に生成されるスカム層の下方、かつ、前記沈殿池内に前記原水を流入させるための前記側壁に設けた流入口の上方の位置に、その導水渠本体の長手方向に沿って設けられたパイプと、
このパイプに接続されていて前記パイプが設置される前記水中の圧力より高い圧力の前記圧縮空気を中空の前記パイプ内に供給する圧縮空気供給系と、を備え、
複数の前記沈殿池が前記導水渠本体の長手方向に沿って並設されており、
前記パイプは、弾性材から形成された周壁だけから成り、且つ、長手方向を前記パイプの長手方向と一致させて前記周壁を貫通したスリットを前記パイプの長手方向に複数有して、支持装置を介して前記側壁それぞれに設けられており、
前記スリットは、それぞれ前記パイプ内の圧力が水圧と同じか水圧より小さいときに閉じており、前記パイプに前記圧縮空気が供給されたときに開くことで前記圧縮空気が前記水中に噴出することを特徴とする導水渠。
【請求項2】
複数の前記スリットは、前記パイプの長手方向に所定の間隔を保って、一つの或いは複数の列状を成すように前記パイプに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の導水渠。
【請求項3】
複数の前記スリット前記パイプの長手方向に所定の間隔を保って、複数の列状を成すように前記パイプに設けられ、さらに周方向に重ならないように長手方向で交互に配置されていることを特徴とする請求項に記載の導水渠。
【請求項4】
前記スカム層の上面に対して、そのスカム層がスカムピットに向くように流れを助長する圧力水を噴射する水上ノズル、又は、前記スカム層が前記スカムピットに向くように流れを助長する圧力水を水中から噴射する水中ノズルのいずれか一方、あるいは、これら両ノズルが共に設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の導水渠。
【請求項5】
下水処理場に設けられ、開口部の一部を水中に没するようにしてスカムを除去するパイプ式スカム除去機構を備えた沈殿池であって、
前記パイプ式スカム除去機構は、沈殿池本体の両側壁に両端を回転自在に支持されており前記開口部を軸心に沿って細長に設けたパイプ本体と、前記水中に圧縮空気を噴出させる圧縮空気噴出機構と、を有し、
前記圧縮空気噴出機構は、支持部材を介して前記パイプ本体の外側に設けられており更に前記開口部の長手方向に沿って前記水中に設けられるパイプと、前記パイプに接続され、該パイプが設置される前記水中の圧力より高い圧力の前記圧縮空気を中空の前記パイプ内に供給可能な圧縮空気供給系と、を備え、
前記パイプは、弾性材から形成された周壁だけから成り、且つ、長手方向を前記パイプの長手方向と一致させて前記周壁を貫通したスリットを前記パイプの長手方向に複数有していて、
複数の前記スリットは、それぞれ前記パイプ内の圧力が水圧と同じか水圧より小さいときに閉じており、前記パイプに前記圧縮空気が供給されたときに開いて前記圧縮空気が前記水中に噴出することを特徴とする沈殿池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気噴出機構及びその圧縮空気噴出機構を用いた導水渠、並びにその圧縮空気噴出機構を用いた沈殿池に関する。
【0002】
本願は、2020年8月27日に日本国に出願された特願2020-143546号及び2020年9月11日に日本国に出願された特願2020-152897号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0003】
下水処理場には、最初沈殿池として複数の沈殿池が並設されており、各沈殿池には一つの導水渠から原水が分配供給されるように構成されている。この導水渠に供給される原水中には、原水が下水という性質上、沈殿池で処理対象とされる沈殿性物質の他に浮上性物質が含まれている。この浮上性物質がある程度の大きさの集合状態となってスカムが生成される。
【0004】
導水渠に原水が供給されて時間が経過すると、導水渠の水面上にはスカムが浮上し、その浮上したスカムが徐々に厚みを増してスカム層が生成される。生成されたスカム層の厚さが例えば10cm程度に達したとき、スカムの除去が行われる。スカムの除去は、作業員が柄杓で汲み取ったり、あるいはバキュームカーのホースを手にして吸引したりして行われる。また、このような作業員の手作業によるスカム除去作業を改善するために、例えば、特許文献1に示されるような、スカムを自動的に除去するスカム除去装置も提案されている。この特許文献1のスカム除去装置は、立体物を上下動させる機構により水面上に生成されたスカムを破砕して導水渠の流れ方向の終端位置に設けられているスカム除去機構に移動させるようにしている。
【0005】
ところで、導水渠から沈殿池に供給された原水の中にも浮上性物質が含まれているので、沈殿池にも、生成されたスカムを除去するスカム除去装置が設けられている。すなわち、沈殿池に流入された原水中の浮上性物質は水面上に浮上してスカム層を生成させるが、その生成されたスカム層は、沈殿池の流れの下流側に設けられるスカム除去装置によって除去される。この沈殿池に設けられるスカム除去装置としては、特許文献2に示されるような、パイプ式スカム除去機構を備えたものが知られている。
【0006】
この特許文献2に示されるスカム除去装置には、スカム排出時に、パイプ本体に設けられている開口部の一部が水中に没する際、その開口部を形成する壁面のうちスカムが流れてくる壁面側に設けられ、かつ、その壁面に沿って、圧縮空気を上方に向けて噴出させる噴出手段が設けられている。
【0007】
なお、この特許文献2に示されるスカム除去装置は、スカムが開口部に円滑に流入できるとともに、スカム全体の移動が円滑に行えるので、スカムの排出を速やかに行うことができ、スカムの排出に伴う水の流出量を従来のパイプ式スカム除去機構を備えたスカム除去装置に比べて1/20~1/30に減らすことができる。このように、排出されるスカムに同伴される水の量が従来に比べて極端に少ないため、加圧浮上装置や脱水機等の後処理装置の設備費が少なくて済むとともに、揚水ポンプの消費電力が少なくて済み、省エネルギーに貢献することができるという特長を有していて、「週一君」(登録商標)の愛称が付されて実用化されている。
【0008】
また、特許文献3には、上記特許文献2に示されるスカム除去装置に設けられる噴出手段の改良型が提案されている。この特許文献3に示される噴出手段は、圧縮空気の供給源に連なるパイプ材と、そのパイプ材に開口部が下向きとなるように設けられたわん状体と、そのパイプ材とそのわん状体との接合部に設けられたそのパイプ材の内側とそのわん状体の内側とを連通する孔部とからなることを特徴としている。このため、孔部は、空気を噴出しない状態では汚水(下水)と接触せず、目詰まりを効果的に防止することができる。したがって、空気の噴出が良好に行なわれるから、スカムの開口部への流入が円滑に行なわれ、スカム排出を速やかに行うことができる特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開11-290847号公報
【文献】特許第3943551号公報
【文献】特許第5443122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の導水渠に発生するスカムの除去は、バキュームカーのホースを作業員が手に持つなどの手作業によるものなので、人手を掛けずに自動的にスカムを除去できるようにすることが望まれていた。このような要望を満たすために特許文献1に示されるような機械的にスカムを移動させることも提案されているが、設備が大掛かりでコスト高になるだけでなく、その設備が、下水を扱うという悪環境下に設置されるので、設備機器のメンテナンス等の問題があり実現を見ていない。
【0011】
また、上記特許文献2及び特許文献3に示される沈殿池のスカム除去装置は、従来のパイプ式スカム除去機構を備えたスカム除去装置に比べてスカムに同伴される水の量が極端に少なくできる等の優れた特長を有しているが、パイプ本体に付設される圧縮空気の噴出手段のより一層の簡略化が望まれていた。
【0012】
本発明は、上記要望に応えるためになされたものであって、その目的は、スカム除去の自動化に資することのできる圧縮空気噴出機構を用いた導水渠及び沈殿池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下水処理場に設けられ、複数の沈殿池に原水を分配供給する導水渠であって、前記原水が流入する長水路としての導水渠本体と、水中に圧縮空気を噴出する圧縮空気噴出機構と、を備えている。前記圧縮空気噴出機構は、前記導水渠本体の長手方向に沿う側壁の内側であって、その導水渠本体内に生成されるスカム層の下方、かつ、前記沈殿池内に前記原水を流入させるための前記側壁に設けた流入口の上方の位置に、その導水渠本体の長手方向に沿って設けられたパイプと、そのパイプに接続されていて前記パイプが設置される前記水中の圧力より高い圧力の圧縮空気を中空の前記パイプ内に供給する圧縮空気供給系と、を備えている。複数の前記沈殿池が前記導水渠本体の長手方向に沿って並設されている。前記パイプは、弾性材から形成された周壁だけから成り、且つ、長手方向を前記パイプの長手方向と一致させて前記周壁を貫通したスリットを前記パイプの長手方向に複数有して、支持装置を介して前記側壁それぞれに設けられている。前記スリットは、それぞれ前記パイプ内の圧力が水圧と同じか水圧より小さいときに閉じており、前記パイプに前記圧縮空気が供給されたときに開くことで前記圧縮空気が前記水中に噴出する
【0014】
この圧縮空気噴出機構は、圧縮空気供給系からパイプ内に水圧を超える圧力で圧縮空気が供給されたときにスリットが開きパイプからスリットを通して水中に圧縮空気が噴出される。弾性材からなるパイプにスリットを形成した簡単な構成であり、また、圧縮空気による内圧がかかるので目詰まりし難い。
【0015】
本発明の圧縮空気噴出機構において、前記スリットは、そのスリットの長手方向が前記パイプの長手方向と平行で、かつ、長手方向に互いに所定の間隔をあけて複数個設けられているとよい。
【0016】
この圧縮空気噴出機構は、スリットがパイプの長手方向と平行して互いに所定の間隔を保って複数個設けられているので、パイプの強度を弱めることなく適切に圧縮空気を噴出することができる。
【0018】
この導水渠は、導水渠本体の側壁からのスカムの剥離を促してスカムの移動を円滑に行わせることができる。
【0020】
この導水渠において、弾性材からなるパイプにスリットを形成した圧縮空気噴出機構を採用したことにより、簡単な構成でありながら、目詰まりし難く、設備を簡素化することができる。
【0026】
本発明の導水渠において、前記スカム層の上面に対して、そのスカム層がスカムピットに向くように流れを助長する圧力水を噴射する水上ノズル、又は、前記スカム層がスカムピットに向くように流れを助長する圧力水を水中から噴射する水中ノズルのいずれか一方、あるいは、これら両ノズルが共に設けられているとよい。
【0027】
これら水上ノズル等を用いることにより、スカムの排出を短時間で、かつ、効率よく行うことができる。
【0028】
本発明の沈殿池は、下水処理場に設けられ、開口部の一部を水中に没するようにしてスカムを除去するパイプ式スカム除去機構を備えた沈殿池であって、前記パイプ式スカム除去機構は、沈殿池本体の両側壁に両端を回転自在に支持されており前記開口部を軸心に沿って細長に設けたパイプ本体と、前記水中に圧縮空気を噴出させる圧縮空気噴出機構と、を有し、その圧縮空気噴出機構は、支持部材を介して前記パイプ本体の外側に設けられており更に前記開口部の長手方向に沿って前記水中に設けられるパイプと、そのパイプに接続され、該パイプが設置される水中の圧力より高い圧力の圧縮空気を中空の前記パイプ内に供給可能な圧縮空気供給系と、を備えている。前記パイプは、弾性材から形成された周壁だけから成り、且つ、長手方向を前記パイプの長手方向と一致させて前記周壁を貫通したスリットを前記パイプの長手方向に複数有する。複数の前記スリットは、それぞれ前記パイプ内の圧力が水圧と同じか水圧より小さいときに閉じており、スカム排出時に前記パイプに前記圧縮空気が供給されたときに開いて前記圧縮空気が前記水中に噴出する。
【0029】
パイプにスリットを形成した圧縮空気噴出機構であり、簡単に実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
パイプを主体とした簡単な構成の圧縮空気噴出機構により、下水処理場に設けられる沈殿池に原水を分配供給する導水渠におけるスカム除去を円滑に行い、その自動化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施の形態に係る圧縮空気噴出機構を備えた導水渠の平面図ある。
図2図1のX-X線断面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る圧縮空気噴出機構を備えた導水渠のスカム除去時の説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る圧縮空気噴出機構の一部分の正面図である。
図5】本発明の他の実施の形態に係る圧縮空気噴出機構の一部分の正面図である。
図6図4のX-Xの断面図であって、圧縮空気が供給されていない状態を示す。
図7図4のX-Xの断面図で、圧縮空気が供給されている状態を示している。
図8】導水渠に適用される本発明の他の実施の形態に係る圧縮空気噴出機構の正面図である。
図9図8のX-X線断面図(わん状体は半断面とした)である。
図10】本発明の一実施の形態に係る圧縮空気噴出機構を備えた沈殿池の平面図である。
図11図10のX-X線断面図である。
図12】沈殿池に設けられるパイプ本体の開口部が水面上に位置している状態の断面図である。
図13図12のパイプ本体に設けられる圧縮空気噴出機構部分の拡大図である。
図14】沈殿池に設けられるパイプ本体の開口部の一部が水面下に位置している状態の断面図である。
図15図14のパイプ本体に設けられる圧縮空気噴出機構部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施の形態に係る圧縮空気噴出機構(以下、「噴出機構」という。)を説明する前に、図1図3を用いて、この噴出機構を備えた導水渠について説明する。
【0033】
導水渠1は、上部開放形の長水路を呈している導水渠本体2と、この導水渠本体2で浮上したスカムSを受け入れるスカムピット3とを備えており、その導水渠本体2の長手方向の一端側(図示の例では右端側)からは、下水からなる原水が供給される(矢印a参照)。
【0034】
スカムピット3は、この導水渠本体2の原水の流れ方向の終端側(図示の例では左端側)に設けられており、このスカムピット3を形成する一部の壁は、導水渠本体2の終端側を形成する壁を兼ねている(この壁を符号Eで示す)。その壁Eの上面Eaの高さは、導水渠本体2内の水面よりも低い(図2参照)。そして、その壁Eの導水渠本体2側には、可動ゲート4が設けられている。可動ゲート4は、導水渠本体2からの原水がスカムピット3へ流入するのを制御できる。
【0035】
この可動ゲート4は、ゲート板4aと駆動機構4b(図2参照)とを備えており、導水渠本体2からスカムピット3内にスカムSを排出しないときは、図2に示すようにゲート板4aにより導水渠本体2内とスカムピット3との間が遮断され、導水渠本体2からスカムピット3内にスカムSを排出するときは、図3に示すようにゲート板4aによる遮断状態が解除される。したがって、可動ゲート4が図3に示されるように開けられたときは、導水渠本体2の表層水、すなわちスカムSを含んだ原水をスカムピット3内に排出させることができる。
【0036】
ゲート板4aの幅は、導水渠本体2の水路幅より少し小さく、その高さは、壁Eの上面Eaの位置と導水渠本体2内の水面位置との差分よりも十分に大きい。また、駆動機構4bは、ねじ棒と回転ナットとからなる方式やラックアンドピニオン方式等の周知の上下動移動機構が採用され、ゲート板4aを上下動する。
【0037】
したがって、スカムSを排出しないとき、駆動機構4bは、図2に示されるように、ゲート板4aの上端位置が導水渠本体2内の水面位置よりも十分に高くなるようにゲート板4aを上昇させ(この状態でゲート板4aの下端は壁Eの上面Eaより下方に配置される)、そして、スカムSを排出するとき、駆動機構4bは、図3に示されるように、ゲート板4aの上端位置が導水渠本体2内の水面位置よりも下方で、かつ、その導水渠本体2内に生成されるスカム層Sの底面位置よりも少し下方となるようにゲート板4aを降下させる。これにより、導水渠本体2内のスカム層Sは、ゲート板4a及び壁Eの上方を通過してスカムピット3に流出する。
【0038】
導水渠本体2を形成する長水路の長手方向の両方の側壁5の外側には、図1に示すように、下水処理場の最初沈殿池に相当する複数の沈殿池6が並設されている。この沈殿池6の側壁の一部は、導水渠本体2の側壁5を兼ねている。そして、その側壁5のほぼ中間の高さ位置に開閉扉(図示せず)の付いた流入口7が設けられている。したがって、この流入口7を介して導水渠本体2内と沈殿池6内とが連通するように構成されている。このため、流入口7の開閉扉が開かれているとき、導水渠本体2内の原水は沈殿池6内に流入し、その流入した原水は、沈殿池6内を側壁5から離れる方向(図1の矢印b参照)に向けて流れることができる。なお、図示の例では、沈殿池6は、導水渠本体2の両方の側壁5の外側に並設されているが、片方の側壁5の外側にのみ並設されていてもよい。
【0039】
導水渠本体2には、水供給管8aとノズル8bとを備える複数の水上ノズル8が設けられている。この水上ノズル8は、導水渠本体2内の水面より少し上で、かつ、その導水渠本体2内の水の流れ方向に所定の間隔をあけて複数個設けられている。
【0040】
水上ノズル8の水供給管8aは、導水渠本体2の相対する側壁5間に、その導水渠本体2の長手方向と直交するように設けられている。言い換えると、水供給管8aは、導水渠本体2の流れ方向に直交する方向に沿って設けられている。これら水供給管8aは、導水渠本体2の水面より上方のほぼ同じ高さ位置に、相互に平行に配置される。この水供給管8aには、図示しないポンプを介して所定圧の水が供給される。なお、水供給管8aに供給される水は、下水処理場の処理水を用いることができる。
【0041】
ノズル8bは、水供給管8aの長手方向に所定の間隔をあけて設けられており、その先端開口が導水渠本体2内の水の流れの下流側で、かつ下方に向くように斜め下向きに設けられている。したがって、水供給管8aに圧力水が供給されると、ノズル8bからは、導水渠本体2の水面上に積層されているスカムS上に対して噴出水が供給され、スカムピット3に向けて流れようとするスカムSの流れを助長させることができる(図3参照)。なお、本発明では、説明の便宜上、水面上にある程度の厚さに成長したスカムSを「スカム層S」というときもある。
【0042】
また、この導水渠本体2には、水中ノズル9が設けられている。この水中ノズル9は、導水渠本体2内の水面より少し下(スカム層Sの下方となる位置)の水中で、かつ、その導水渠本体2内の水の流れ方向に所定の間隔をあけて複数個設けられている。また、導水渠本体2内の水の流れ方向と直交する方向、つまり水路幅に対しても、互いに所定の間隔を保って複数個(図示の例では4個)の水中ノズル9が設けられている。つまり、水路幅方向(導水渠本体2の流れ方向と直交する方向)に沿って列をなすように並んだ複数の水中ノズル9の列が、導水渠本体2の流れ方向に所定間隔をあけて配置されている。各水中ノズル9の開口部は、スカムピット3側に向けて設けられている。
【0043】
この水中ノズル9は、図示しない圧力水供給管に支持されている。例えば、この水中ノズル9は、本出願人に係る特許第5443260号及び特願2019-150022号で提案されているスカム除去装置用噴出ノズルを採用することができる。このため、この水中ノズル9は、これら提案のノズルと同様に、圧力水供給管から水中ノズル9に圧力水が供給されると、スカムピット3側に向けて開口している開口部から圧力水をほぼ水平に噴出して、スカムピット3に向けて流れようとするスカムSの流れを助長させることができる(図3参照)。また、この水中ノズル9には、上記提案のノズルと同様に、圧力水の力で開き、その圧力水の供給が停止されたときに開口部を閉じる閉止部材が設けられており、これにより、水中ノズル9の内部の汚損を防止できる特長を有している。さらに、この水中ノズル9に供給される水は、下水処理場の処理水を用いることができる。
【0044】
次に、本発明の実施の形態に係る噴出機構10aについて、図4から図7も参照しながら詳細に説明する。
【0045】
この噴出機構10aは、その全体的形態が棒状を呈しており、導水渠本体2の両方の側壁5の内側に図示しない支持装置を介して設けられている(図1図3参照)。この噴出機構10aの設置位置は、導水渠本体2内に生成されるスカム層Sの下方となるように決められている。例えば、導水渠1の運転によりスカムSが滞留し、その厚さが10cm近くに成長したときに、導水渠本体2からスカムピット3内にスカムSを排出するようになっている場合、噴出機構10aは、水面から10cmよりも少し下となるように設置される。
【0046】
この噴出機構10aは、天然ゴム、合成ゴム等の弾性材からなるパイプ11を有し、そのパイプ11にスリット12が形成されている。このような弾性材からなるパイプ11としては、市販のゴムホースを利用することも可能である。また、スリット12は、パイプ11の周壁の内側と外側とを貫通させる切り込み加工によって形成されている。
【0047】
パイプ11は、導水渠本体2の両方の側壁5の内側に、側壁5に沿って設けられており、その一端側は、図示しない閉止部材で閉止されている。そして、その他端側は、開閉弁Faを介して圧縮空気供給系Fに接続されており、その開閉弁Faが開かれたときには、パイプ11内に所定圧の空気が供給される。
【0048】
スリット12は、図4に示すように、そのスリット12の長手方向がパイプ11の長手方向と一致し、かつ、そのパイプ11の長手方向に直線上に並ぶように互いに所定の間隔を保って設けられている。
【0049】
また、スリット12の配置状態は、図5に示される噴出機構10bのように、スリット12の長手方向がパイプ11の長手方向と一致し、かつ、そのパイプ11の長手方向に沿って二列の列をなすように設けることもできる。この図5に示すように複数の列状にスリットを設ける場合、各列のスリット12が図5に示すようにパイプ11の周方向に重ならないように交互に配置されるとよい。なお、スリット12の長さ、方向、間隔は、図4及び図5に示す例に限定されず、スリット12を設けてもパイプ11の強度が所定以上に保たれる長さ、方向、間隔を採用すればよい。
【0050】
なお、噴出機構10a,10bが導水渠本体2に取り付けられたときのスリット12の水面に対する位置関係は、水面側(上側)に向いていても、水面と反対側(下側)に向いていても、あるいは、水面と平行する側(横側)に向いていてもよく、導水渠本体2に流入される原水の性情等によって適宜、選択される。パイプ11のスリット12から放出される圧縮空気は、気泡となって浮上するので、その浮上する気泡によって側壁5の内面に付着していたスカムを剥離できれば、スリット12の向きは上記のいずれでもよい。
【0051】
図6は、噴出機構10aに圧縮空気が供給されていない状態、すなわち、開閉弁Faが閉じられていてパイプ11内に圧縮空気供給系Fから圧縮空気が供給されていない状態を示している。このときのスリット12は、パイプ11の弾性力によって閉じられた状態に保たれている。また、パイプ11の周囲の水圧はスリット12を押し広げるまでには至らない。したがって、この状態の場合、パイプ11内にはスリット12を介して原水が流入することはない。
【0052】
図7は、噴出機構10aに圧縮空気が供給されている状態、すなわち、開閉弁Faが開かれて、パイプ11内に圧縮空気供給系Fから圧縮空気が供給されている状態を示している。供給される圧縮空気の圧力は、同図の矢印で示すように弾性力を有するパイプ11の内径を広げるように作用するので、スリット12が開かれる。したがって、パイプ11内の圧縮空気はスリット12を介して原水中に気泡となって放出される(図3も参照)。
【0053】
次に、上記構成からなる噴出機構10aを備えた導水渠1のスカム排出動作について説明する。
【0054】
図1及び図2の矢印aで示すように、導水渠1に原水(下水)が流入し、その原水は流入口7から沈殿池6に流入し、沈殿池6では所定の沈殿処理が行われている(図1参照)。このとき可動ゲート4は閉じられている(図2参照)。可動ゲート4の閉止により、導水渠本体2の水面上にはスカムSが徐々に溜まり始める。
【0055】
可動ゲート4の閉止状態が所定時間経過すると、スカム層Sの厚さが所定の厚さ、例えば10cm近くに達してくる。スカム層Sの厚さが所定の厚さに達したときは、圧縮空気供給系Fから噴出機構10a(パイプ11内)に圧縮空気が供給される。供給された圧縮空気の圧力により、パイプ11に設けられているスリット12が開かれる。その結果、パイプ11内の圧縮空気はスリット12を介して原水中に気泡となって放出される。そして、その放出された気泡は側壁5の面に沿って上昇し、側壁5に付着していたスカム層Sを側壁5の面から剥離させる。
【0056】
噴出機構10a(パイプ11内)に圧縮空気が供給されると同時に、又はこれと前後して、水上ノズル8の水供給管8aに圧力水が供給される。このため、ノズル8bから導水渠本体2の水面上のスカム層S上に対して図3に示すように斜め下向きに噴出水が噴出されて、スカム層Sのスカムピット3側への移動が助長される。さらに、圧力水供給管から水中ノズル9に圧力水が供給されると、スカムピット3側に向けて開口している開口部から圧力水を噴出して、スカムピット3に向けて流れようとするスカム層Sの流れが助長される。また、水上ノズル8及び水中ノズル9からの圧力水噴出と同時、又は、これらの作動より若干遅れて可動ゲート4が開かれる。これにより、導水渠本体2の水面上のスカム層Sは、導水渠本体2からスカムピット3内に移動してスカム排出が進行される(図3参照)。なお、水上ノズル8及び水中ノズル9への圧力水供給と可動ゲート4の開きは、噴出機構10aによるスカム層Sの剥離(側壁5からの剥離)がある程度進んだ状態で開始することもできる。
【0057】
導水渠本体2の水面上から、スカム層Sのほとんどがスカムピット3内に移動したとき、噴出機構10a(パイプ11内)への圧縮空気の供給が停止されるとともに、水上ノズル8の水供給管8a及び水中ノズル9への圧力水の供給が停止され、また可動ゲート4も閉止されて、一連のスカム排出動作は終了する(図1参照)。なお、スカムピット3内に移動したスカムSは、ポンプPによりスカム処理施設に送出されて処理される。
【0058】
上述のスカム処理において、噴出機構10aへの圧縮空気の供給・停止、水上ノズル8(供給管8a)及び水中ノズル9への圧力水の供給・停止及び可動ゲート4の開閉を、作業員がスイッチのオン・オフで自動的に行うことができるが、タイマーを用いて、またはスカム層Sの厚さを検知して完全自動化することもできる。
【0059】
上述の例では、水上ノズル8及び水中ノズル9の両方から圧力水を噴射してスカムの流れを助長するようにしたが、いずれか一方のみとすることもできる。また、両方を設置しておいて適宜選択することもできる。どのノズルを設置するか、あるいは、両方のノズルを設置するかは、導水渠に流入してくる下水の性状によって決められる。いずれにしても、両方のノズルを設置したときは、強固に成長したスカムを排出できる効果を得ることができる。
【0060】
図8及び図9は、本発明の他の実施形態に係る噴出機構10cを示している。図8及び図9に示す噴出機構10cは、例えばSUS等の剛性材からなる鋼管13と、吐出口部材15とを備えている。この鋼管13は、上述した噴出機構10a,10bと同様に、導水渠本体2の両方の側壁5の内側に図示しない支持装置を介して設けられる。また、この噴出機構10cも、上述した噴出機構10a,10bと同様に、鋼管13の一端側は閉じられ、他端側は圧縮空気供給系Fに連絡されている。
【0061】
鋼管13には、長手方向の下部に雌ねじの切られた孔14が周壁を貫通し、鋼管13の長手方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。吐出口部材15は、全体としてカップ状(わん状、釣鐘状等)に形成され、その開口部が下向きとされ、その上部に、鋼管13に設けられている孔14の雌ねじに螺合できる雄ねじを有する取付部16が設けられている。この吐出口部材15には、取付部16の軸心部分に貫通孔17が設けられている。したがって、この吐出口部材15が取付部16を介して鋼管13に取り付けられたときは、鋼管13の内部と吐出口部材15の内部とは貫通孔17を介して連通状態になる。この吐出口部材15の内側の空間は、貫通孔17より十分に大きい断面積に形成される。
【0062】
この噴出機構10cは、導水渠本体2の両方の側壁5の内側に取り付けられ、鋼管13に圧縮空気が供給されると、図9に示すように、吐出口部材15の下端の開口部から気泡が放出され、その放出された気泡は、側壁5の面に沿って上昇し、側壁5に付着していたスカム層Sを側壁5の面から剥離させることができる。しかも、鋼管13に圧縮空気が供給されないときは、吐出口部材15の開口部が下向きに配置され、かつ吐出口部材15の内部空間の容積が大きいので、吐出口部材15の内部に空気が充満された状態が維持され、貫通孔17が原水(下水)にさらされることがない。したがって、貫通孔17の目詰まりを効果的に防止することができる。
【0063】
なお、上記噴出機構10cでは、鋼管13に吐出口部材15を取り付けたが、鋼管13に孔14のみを設けて、吐出口部材15を有しない簡略化された低コスト化の噴出機構とすることもできる。なぜならば、この噴出機構の設置される水深は、10cm程度のスカム層Sに対応したもので、孔14に対する水圧が高くなく、また、その孔14の直径も数mm程度とすることにより、鋼管13に圧縮空気が供給されないときでも、圧縮空気供給系F側に設けられている開閉弁Faが閉じられているので、鋼管13内は密閉状態に保たれる。このため、孔14から鋼管13内に原水(下水)が侵入しにくく、孔14の目詰まりが起きにくい状態にあるからである。したがって、吐出口部材15を省略することも可能である。いずれにしても、鋼管13を用いた噴出機構は、耐久性に優れた特長を有している。吐出口部材15を設けたときは、この吐出口部材15の内側の空間の断面積が貫通孔17より十分に大きいので、目詰まりをより確実に防止することができる。
【0064】
次に、図10図15を用いて、本発明の実施の形態に係る噴出機構10aを適用した沈殿池について説明する。この沈殿池は、図1に示される複数の沈殿池6の一つに相当し、ここでは、上述した導水渠1側と反対側の一部分が示されている。
【0065】
沈殿池6は、周知の沈殿池と同様に、導水渠1から供給された原水が貯留される沈殿池本体20に、溢流トラフ21と汚泥掻寄機構22(図11参照)が設置されている。溢流トラフ21は、原水の流れ方向(矢印b参照)の終端側、すなわち、導水渠1と反対側に設けられており、沈殿処理された原水を取り出して、図示しない次段の反応槽に送出する。また、汚泥掻寄機構22は、チェーンコンベヤの往動により、沈殿池6の底部に堆積した汚泥(沈殿物)を、導水渠1側に設けられている図示しないピットへ排出できるように構成されている。
【0066】
この沈殿池6には、図4図7を用いて詳述した噴出機構10aを備えたパイプ式スカム排出機構23が備えられている。このパイプ式スカム排出機構23は、沈殿池本体20に設けられている溢流トラフ21の設置位置よりも少し上流側(図10及び図11に示す例では左側)で、原水の流れ方向と直交し、かつ、一部が水面に没するように設けられている。
【0067】
このパイプ式スカム排出機構23は、所定の太さのパイプ本体24を有しており、そのパイプ本体24の軸心が水面とほぼ一致するように水平に、かつ、沈殿池本体20を横断するように設けられている。そしてこのパイプ本体24の側部には、その軸心方向に沿った細長の開口部25が設けられている。なお、この開口部25の幅は、軸心を中心にパイプ本体24を所定角度回転させることにより、スカム排出時以外は水面上に位置し、スカム排出時は一部分が水没できる大きさに形成されている(図12及び図14参照)。開口部25の長さは、沈殿池本体20の幅とほぼ同じに設定される。なお、パイプ本体24は、通常、パイプスキマーと呼ばれている。
【0068】
このパイプ本体24の長手方向の両端側は、沈殿池本体20を形成する両側壁にそれぞれ回動自在に、かつ、水密状態に支持されている。そのパイプ本体24の長手方向の一端側は開放されており、開口部25を介してパイプ本体24内に流入してきたスカムSを高濃度に含む原水を、一端側から図示しない排水ピットに受け渡した後、脱水機等のスカム処理施設に送出できるように構成されている(矢印d参照)。他方、そのパイプ本体24の長手方向の他端側は閉止されており、図示しないモータ等を含んで構成される回転機構に接続され、パイプ本体24を軸心を中心に所定の角度、往復回転できるように構成されている(図12及び図14参照)。
【0069】
噴出機構10aは、パイプ本体24の外側で、かつ、原水が流れてくる方向に向けた側部に支持部材26を介して設けられている。そしてその設置高さは、パイプ本体24に設けられている開口部25の位置よりも少し下で、図12及び図14に示すように、所定の角度の範囲で回転するパイプ本体24の角度位置にかかわらず、生成されるスカム層Sの下側に、常時、位置できるように設定される。
【0070】
沈殿池6の沈殿池本体20には、水面より上方位置に、圧力水供給管27が設けられている。この圧力水供給管27は、パイプ式スカム排出機構23の設置位置よりも所定距離上流側の水面上で、その軸心方向がパイプ式スカム排出機構23のパイプ本体24の軸心方向と並行となるように、沈殿池本体20を形成する両側壁間に設けられている。さらに、この圧力水供給管27には、その圧力水供給管27の長手方向に所定の間隔を保ち、かつ、先端開口の向きが下流側(パイプ本体24側)で、少し下向きに設けられた複数のノズル28が設けられている。この圧力水供給管27及びノズル28からなる水上ノズル29は、図1図3に示した水上ノズル8と同様の構成である。
【0071】
この水上ノズル29の圧力水供給管27には、図示しないポンプを介して所定圧の水が供給される。したがって、圧力水供給管27に圧力水が供給されると、ノズル28から、沈殿池本体20の水面上に積層されているスカム層S上に対して斜め下向きに噴出水が供給され、これにより、パイプ本体24に向けて流れようとするスカムSの流れを助長することができる(図14参照)。なお、圧力水供給管27に供給される水は、下水処理場の処理水を用いることができる。
【0072】
次に、上記構成からなる沈殿池6のスカム排出動作について説明する。
スカムSを排出する時刻が到来すると、例えば、前回のスカム排出時から一週間程度経過すると、パイプ本体24は、図12に示すように開口部25を水面より上方に配置した状態から、図14に示すように回転され、開口部25の一部が水中に没する。この水中に没する時間は、例えば10分間である。またパイプ本体24の回転と同時に、水上ノズル29の圧力水供給管27のノズル28からスカム層S上に圧力水が噴出される。したがって、スカム層Sは、沈殿池6の原水の水流によるスカム移動の他にその圧力水によるスカム移動力が付与されてパイプ本体24の開口部25側への移動がより促進される。
【0073】
さらに、パイプ本体24の開口部25の一部が水中に没すると同時に、噴出機構10aのパイプ11に圧縮空気が供給され、パイプ11に設けられているスリット12が開かれて空気が噴出される(図14及び図15参照)。この噴出された空気によりパイプ本体24の開口部25近辺のスカム層Sは、気泡により持ち上げられ、その持ち上げられたスカム層Sが開口部25の端部を越えてパイプ本体24内に導かれる。一旦、スカム層Sが開口部25からパイプ本体24内に入ると、それに続くスカム層Sの全体がパイプ本体24内に引き込まれるように流れ、スカム層Sはパイプ本体24内に円滑に導かれる。
【0074】
噴出機構10aの空気噴出によるスカム層Sの開口部25への導入は、極めて短時間(30秒前後)で十分であり、その後、スカム層Sは、流れの勢いによってパイプ本体24内に連続して円滑に導かれる。
【0075】
なお、噴出機構10aからの空気噴出の時間を、パイプ本体24の開口部25の一部が水中に没している間(例えば10分間)とすることもできる。しかし、空気噴出は、パイプ本体24の開口部25の一部が水中に没したときの当初の短時間で十分であることが実証されている。
【0076】
パイプ11への圧縮空気の供給が絶たれると、パイプ11に設けられているスリット12が閉じる(図12及び図13参照)。したがって、パイプ11内への原水(下水)の流入を防止することができる。
【0077】
スカムSがパイプ本体24内に取込まれて沈殿池6の水面から除去された後、パイプ本体24は、元の位置、すなわちパイプ本体24の開口部25が水面より上方に位置するように回動させられるとともに(図12及び図13参照)、圧力水供給管27への圧力水の供給が停止させられて、一連のスカム排出動作は終了となる。
【0078】
上記の構成からなる沈殿池6は、スカム全体を排出するためのパイプ本体24に取込まれる水量を、従来の圧力水供給管27からの圧力水の噴射のみを駆動させて排出したときの水量の1/20~1/30に減らすことができるという極めて優れた効果を得ることができる。また、パイプ本体24内に取込まれたスカムSは、脱水機等を備えた図示しないスカム処理装置に送出されて処理されるが、このスカム処理装置においてもスカムに含まれる水の量が極めて少ないので、処理コストを低減できる等の効果を有することができる。
【0079】
以上、本発明に係る噴出機構、導水渠及び沈殿池について図面を参照して説明したが、具体的な構成は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において設計変更等が可能である。また、本発明では、原水を下水としたが、原水に浮上性スカムを含むものであればその性状は問わない。したがって各種工場排水等であってもよい。
【0080】
噴出機構として10a~10cを図示し、他に鋼管に孔のみを形成した例も説明したが、これらの噴出機構は、設置される位置及びその周辺の状況に応じて、いずれかを選択すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
下水処理場に設けられる沈殿池に原水を分配供給する導水渠におけるスカム除去を円滑に行い、その自動化を図ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1……導水渠
2……導水渠本体
3……スカムピット
E……壁
Ea……上面
4……可動ゲート
4a……ゲート板
4b……駆動機構
5……側壁
6……沈殿池
7……流入口
8……水上ノズル
8a……水供給管
8b……ノズル
9……水中ノズル
10a~10c……圧縮空気噴出機構(噴出機構)
F……圧縮空気供給系
Fa……開閉弁
11……パイプ
12……スリット
13……鋼管
14……孔
15……吐出口部材
16……取付部
17……貫通孔
20……沈殿池本体
21……溢流トラフ
22……汚泥掻寄機構
23……パイプ式スカム排出機構
24……パイプ本体
25……開口部
26……支持部材
27……圧力水供給管
28……ノズル
29……水上ノズル
S……スカム(スカム層)
P……ポンプ
【要約】
導水渠本体2の長手方向の内側の側壁5には、その導水渠本体2内に生成されるスカム層Sよりも少し下の位置で、かつ、その導水渠本体2の長手方向に沿って圧縮空気用噴出機構10aが設けられ、圧縮空気用噴出機構10aから噴出された気泡が上昇するとき、導水渠本体2の側壁5からスカムSを剥離することができ、さらに、生成されたスカム層Sの上面に対して、そのスカム層Sがスカムピット3に向くように流れを助長する圧力水を噴射するノズル8bが設けられるため、スカム層Sをスカムピット3に速やかに排出することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15