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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】容器のラベル
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20220728BHJP
   H01Q 21/20 20060101ALI20220728BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20220728BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q21/20
H01Q1/22 Z
G06K19/077 272
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019549395
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 IB2018051535
(87)【国際公開番号】W WO2018163111
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】2017900841
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2017903507
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ポン、タイ ワイ
(72)【発明者】
【氏名】グリーン、ダロン
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-266963(JP,A)
【文献】特開2015-143912(JP,A)
【文献】特開2011-028168(JP,A)
【文献】特開2006-276033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0182211(US,A1)
【文献】国際公開第2014/064839(WO,A1)
【文献】特開2008-064586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-11/20
H01Q 21/00-25/04
G06K 19/00-19/18
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナであって、
逆向きに巻かれた2つのアンテナコイルを備え、
前記アンテナコイルの各々は、同心の複数の導電コイルによって形成され、
一方のアンテナコイルの最も外側の導電コイルは、共有された共通導電部を介して、他方のアンテナコイルの最も外側の導電コイルと導電的に接続され、
各アンテナコイルの最も内側の導電コイルは、ブリッジコネクタで終端され、
前記ブリッジコネクタを導電的につなぐブリッジをさらに備え、
前記アンテナは柔軟であり、
これにより、前記2つのアンテナコイルは、共有された共通導電部を介して互いに導電的に接続され、
これにより、前記2つのアンテナコイルは円柱状の物品の反対側に位置付けられ
前記2つのアンテナコイルの一方のアンテナコイルの内側領域は、他方のアンテナコイルの内側領域に対して間隔をあけて機能的に調整され、
これにより、前記2つのコイルの一方は、方向において効果的に反転され、
これにより、前記2つのコイルから誘起されたEMF(起電力)は互いに重畳され、
誘起されたEMFを生成する同心の導電コイルの数が増すことにより、実効的な誘導EMFが増大することを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記ブリッジコネクタの各々は、それぞれに対応するアンテナコイル内に位置することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
単一のブリッジが、前記ブリッジコネクタを介して、前記2つのアンテナコイルを導電的につなぐことを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ。
【請求項4】
長さが5cmより短く、幅が2cmより狭いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項5】
電気的リーダによって与えられた磁場が、前記物品を通過し、前記物品の両側に配置された前記逆向きに巻かれた2つのアンテナコイル内にEMFを誘導することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項6】
円柱状の物品の周囲に位置付けられるように構成され、
これにより前記アンテナの第1端部は、前記アンテナの第2端部に隣接することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項7】
RFIDアンテナであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項8】
前記共有された共通導電部は、前記アンテナコイルの各々の最も外側の共通部分によって形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項9】
電気的ラベルであって、請求項1から8のいずれかに記載のアンテナを備えることを特徴とする電気的ラベル。
【請求項10】
RFIDラベルであることを特徴とする請求項に記載の電気的ラベル。
【請求項11】
試験管であって、請求項9または10に記載の電気的ラベルを備えることを特徴とする試験管。
【請求項12】
容器のタグ特性を備える容器データを記憶した請求項に記載の電気的ラベルでラベル付けされた容器を特定するシステムであって、
1つ以上の電気的ラベルの各々からタグデータを取得するために、1つ以上の電気的ラベルに問い合わせるように構成された電気的リーダと、
取得されたタグデータを前記電気的リーダから受信し、当該取得されたタグデータがタグ特性を含む場合は前記容器を特定するプロセッサと、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記タグ特性が優先タグ特性を含むか否かを特定するように構成され、
前記システムは、前記タグ特性が優先タグ特性を含む場合は、前記容器を優先容器であると特定することを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記容器データは、前記容器の中身に対応するサンプル情報を含むことを特徴とする請求項12または13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は広く無線周波数アンテナに関する。より具体的な非限定的な実施の形態は、アンテナの構成および当該アンテナを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数認識装置(RFID)タグのような電気的タグは、典型的には、物品を追跡および/または認識するために使われる。RFIDタグは、物品に接着されることにより固定されてよい。RFIDタグとRFIDリーダとが互いに読み取り可能な領域内にあれば、RFIDリーダは、RFIDタグとそれに対応する物品を認識することができる。
【0003】
受動的なRFIDタグは、導電コイルの形のアンテナを持つ。このようなRFIDタグは、RFIDリーダからの磁場エネルギーを利用する。この磁場はコイル領域を通過する。これにより、タグを認識するためにリーダが受信する電圧を生成することができる。生成された電圧は、読み取り領域を決定し、従ってRFIDタグからの情報をどの程度読み取れるかを決定する。
【0004】
本明細書に含まれる文書、動作、材料、デバイス、物品等に関するいかなる議論の全部または一部も、先行技術の基礎の一部を形成するとか、各請求項の本出願の優先日前に存在した関連分野の共通一般知識であるなどと自認するものとは解釈されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円柱状容器(例えば瓶、小瓶)などの円柱状対象物をラベル付けするために電気的タグを使うことは難しい。なぜなら、従来のRFIDタグアンテナの周囲を覆うのに使える部分は、対象物の外周の半分に限られるからである。これは、当該円柱状対象物の反対側に逆電圧(これにより効果的な収集領域が減少し、従って、タグが電気的リーダから問い合わせを受けたときに必要な全誘導電圧が減少する)が発生することを防ぐためである。
【0006】
電気的ラベルが一群の試験管に使われる場合は、ラベリングに使うことのできるスペースはさらに小さいものとなるだろう。例えば試験管が通常の試験管ホルダーに保持される場合、例えば移動中に試験管が損傷を受けないようにするために、試験管は互いに寄り添ってホルダーにフィットされる。従って、ホルダーにぴったりフィットした試験管の長さの一部に沿って、試験管の外周を取り囲んで利用できる追加的なスペースは殆どない、または全くない。従って、ラベリングに利用できる試験管の周囲の領域は、試験管ホルダーから上方に突出した各試験管の頂上部分に限られる。
【0007】
電気的ラベルが円柱状対象物の周囲にフィットできる(特にラベルに与えられるスペースが制限された部分で)ように構成されたアンテナを備えた電気的ラベルがあれば、有用だろう。シールドを与えることは面倒かつ高コストであり、簡単にその規模を変えることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある態様ではアンテナが与えられる。このアンテナは、逆向きに巻かれた2つのアンテナコイルを備える。アンテナコイルの各々は、同心の複数の導電コイルによって形成される。一方のアンテナコイルの最も外側の導電コイルは、共有された共通導電部を介して、他方のアンテナコイルの最も外側の導電コイルと導電的に接続される。各アンテナコイルの最も内側の導電コイルは、ブリッジコネクタで終端される。このアンテナは、ブリッジコネクタを導電的につなぐブリッジをさらに備え、アンテナは柔軟であり、これにより2つのアンテナコイルは物品の周囲に位置付けることができ、2つのアンテナコイルの一方のアンテナコイルの内側領域は、他方のアンテナコイルの内側領域に対して間隔をあけて機能的に調整され、これにより使用中に実効的な誘導EMFが増大する。
【0009】
ブリッジコネクタの各々は、それぞれに対応するアンテナコイル内に位置してよい。単一のブリッジが、ブリッジコネクタを介して、2つのアンテナコイルを導電的につないでよい。前述のアンテナは、エッチング技術または付加製造技術の少なくともいずれかを用いて製造されてよい。アンテナは、長さが5cmより短く、幅が2cmより狭くてよい。
【0010】
電気的リーダによって与えられた磁場が、物品を通過し、物品の両側に配置された逆向きに巻かれた2つのアンテナコイル内にEMFを誘導してもよい。前述のアンテナは円柱状の物品の周囲に位置付けられるように構成されてよく、これによりアンテナの第1端部は、前記アンテナの第2端部に隣接してよい。前述のアンテナはRFIDアンテナであってよい。
【0011】
別の態様でもアンテナが与えられる。このアンテナは、逆向きに巻かれた2つのアンテナコイルを備える。アンテナコイルの各々は、同心の複数の導電コイルによって形成される。一方のアンテナコイルの最も外側の導電コイルは、他方のアンテナコイルの最も外側の導電コイルと導電的に接続される。各アンテナコイルの最も内側の導電コイルは、ブリッジコネクタで終端される。前述のアンテナは、ブリッジコネクタを導電的につなぐブリッジをさらに備え、アンテナは柔軟であり、これにより2つのアンテナコイルは物品の周囲に位置付けることができ、2つのアンテナコイルの一方のアンテナコイルの内側領域は、他方のアンテナコイルの内側領域に対して間隔をあけて機能的に調整され、これにより使用中に実効的な誘導EMFが増大する。
【0012】
前述のアンテナは柔軟であってよく、これにより2つのアンテナコイルは物品の周囲に位置付けることができ、2つのアンテナコイルの一方のアンテナコイルの内側領域は、他方のアンテナコイルの内側領域に対して機能的に調整されてよい。
【0013】
別の態様では、前述のアンテナを備える電気的ラベルが与えられる。電気的ラベルはRFIDラベルであってよい。別の態様では、前述の電気的ラベルを備える試験管が与えられる。
【0014】
別の態様ではアンテナを製造する方法が与えられる。この方法は、材料のストリップを供給するステップと、逆向きに巻かれた2つのアンテナコイルを形成するために、材料のストリップを加工するステップと、を備える。アンテナコイルの各々は、同心の複数の導電コイルによって形成される。一方のアンテナコイルの最も外側の導電コイルは、共有された共通導電部を介して、他方のアンテナコイルの最も外側の導電コイルと導電的に接続される。各アンテナコイルの最も内側の導電コイルは、ブリッジコネクタで終端される。この方法は、ブリッジコネクタを導電的につなぐためのブリッジを与えるステップをさらに備える。
【0015】
前述の方法は、ストリップをキャリアの上に供給するステップを含んでよい。前述の方法は、エッチング技術または付加製造技術の少なくともいずれかを用いて材料を加工するステップを含んでよい。前述の方法は、ブリッジコネクタに単一のブリッジを与えるステップを含んでよい。
【0016】
別の態様では、電気的ラベルを製造する方法が与えられる。この方法は、前述の方法を備える。
【0017】
電気的ラベルが医療サンプル容器に使われるときは、特定の課題がある。例えば、大量の群の中から、1つ以上のサンプルを特定し優先付けることは難しいだろう。これは、サンプルの群が1つ以上のクーラーバッグ内に保管されており、中身がバッグの外から見えない場合(例えばバッグが不透明な場合)特に難しい。
【0018】
医療サンプルのラベル付けに関係する別の課題として、機密情報の安全な取り扱いに関するものがある。特に緊急サンプルに関しては、とりわけ当該サンプルとその情報とが分離されている場合、情報を安全に保ち、かつ必要なときにそれを取得することが困難となる可能性がある。
【0019】
別の態様では、容器のタグ特性を備える容器データを記憶した前述の電気的ラベルでラベル付けされた容器を特定するシステムが与えられる。このシステムは、1つ以上の電気的ラベルの各々からタグデータを取得するために、1つ以上の電気的ラベルに問い合わせるように構成された電気的リーダと、取得されたタグデータを電気的リーダから受信し、当該取得されたタグデータがタグ特性を含む場合は容器を特定するプロセッサと、を備える。
【0020】
電気的ラベルは、前述のアンテナを備えてよい。
【0021】
プロセッサは、前記タグ特性が優先タグ特性を含むか否かを特定するように構成されてよく、前述のシステムは、タグ特性が優先タグ特性を含む場合は、容器を優先容器であると特定してよい。
【0022】
容器データは、容器の中身に対応するサンプル情報を含んでよい。
【0023】
本明細書全体を通じて、「備える」またはその変形である「備えている」という用語は、指定された要素、整数もしくはステップ、または、要素、整数もしくはステップのグループが含まれることを意味するが、他のいかなる要素、整数もしくはステップ、または、他のいかなる要素、整数もしくはステップのグループも排除されないことを理解されたい。
【0024】
以下、添付の図面を参照しながら下記の特定の非限定的な実施の形態の説明を読むことにより、非限定的な実施の形態のこれらおよびその他の態様および特徴が、当業者に明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
添付の図面を参照しながら、例示のみを用いて、本開示の非限定的な実施の形態を説明する。
【0026】
図1】非限定的なアンテナの実施の形態を示す模式図である。
【0027】
図2A】従来技術のアンテナの略図である。
【0028】
図2B図2Aの従来技術のアンテナの実現を示す模式図である。
【0029】
図3A】従来技術のアンテナの試験管への応用を示す図である。
【0030】
図3B図3Aの試験管およびアンテナの断面図である。
【0031】
図4A図1の非限定的なアンテナの実施の形態の試験管への応用を示す図である。
【0032】
図4B図4Aの試験管およびアンテナの断面図である。
【0033】
図5図1の非限定的なアンテナの実施の形態の、試験管ラック内で保持された試験管への応用を示す図である。
【0034】
図面において、同様の要素には同様の符号を付す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、アンテナ101を備える無線周波数認識装置(RFID)タグの形の電気的タグ100を示す。アンテナ101は、第1の巻かれたアンテナコイル102と、第2の逆向きに巻かれたアンテナコイル104とを備える。互いに逆向きに巻かれた2つのアンテナコイル102、104の各々は、同心の複数の導電コイル106によって形成される。第1のアンテナコイル102の最も外側の導電コイル108は、共有された共通導電部112を介して、第2のアンテナコイル104の最も外側の導電コイル110と導電的に接続される。第1のアンテナコイル102の最も内側の導電コイル114は、ブリッジコネクタ116で終端される。第2のアンテナコイル104の最も内側の導電コイル118もまた、ブリッジコネクタ120で終端される。ブリッジ122は、ブリッジコネクタ116、120を導電的につなぐ。
【0036】
この非限定的な実施の形態では、共有された導電部112は、各アンテナコイルの最も外側のコイルの共有部分によって形成される。代替的な非限定的な実施の形態では、共有された導電部は、別のタイプの導電リンク、例えば2つのブリッジコネクタおよび追加的なブリッジによって与えられてもよい。別の代替的な非限定的な実施の形態では、逆向きに巻かれた2つのアンテナコイルは、共有されたマウンティングパッド(これは、逆向きに巻かれた2つのパッドの間に導電接続を形成する)によって接続される。
【0037】
ある非限定的な実施の形態では、アンテナ101は、エッチング技術を用いて作られる。この場合、材料(例えばアルミニウム)のストリップが、非導電性のキャリアまたは基板(典型的には、例えばポリマーやプラスチックシートなどの柔軟な素材である)の上に与えられる。いくつかの非限定的な実施の形態では、キャリアは、RFIDタグを物品に取り付けるための接着性の底面を含む。材料のストリップは、逆向きに巻かれた2つのアンテナコイル102、104およびブリッジコネクタ116、120(各ブリッジコネクタは、それぞれに対応するアンテナコイル内に位置する)を形成するために、例えばエッチング技術によって加工される。アンテナコイル102、104が形成されると、アンテナコイル102、104は絶縁材によって覆われる。一方、ブリッジコネクタ116、120は、露出されたままである。ブリッジ122(これもまたアルミニウムなどの導電材料で作られる)は、ブリッジ122の両端が接着的に固定されることにより、導電性接着剤を用いてブリッジコネクタ116、120の対応する方に適用される。ブリッジ122は、アンテナコイル102、104の少なくとも一部を覆う絶縁材料によって、ブリッジの底のアンテナコイルトラック124から絶縁される。
【0038】
RFIDタグ100はまた、マウントパッド126の形をした電気的インタフェースを含む。この電気的インタフェースは、アンテナ101を、RFIDタグの認識チップ(図示しない)に接続する。
【0039】
RFIDタグ100、およびRFIDタグ100の一部を形成する部品(例えばアンテナ101)は、柔軟な素材から作られてもよい。これにより、RFIDタグ100およびアンテナ101を、例えば円柱状の物品などの物品または対象物の周囲に位置付けることができる。
【0040】
このアンテナ構成がどのように磁場の収集を増加させるか、従ってRFIDタグの読み取り領域性能が効果的に拡張されるかは、図2A図2B図3Aおよび図3Bを参照することで理解されるだろう。
【0041】
図2Aは、従来技術、すなわち通常のシンプルなアンテナ200を示す。アンテナ200は、複数のターンまたはコイル導体を持つ単一の導電コイル202からなる。アンテナ200の長さはx、幅はyである。従って、コイル202で境界付けられる面積Aは、概ねA=x×yで与えられる。ファラデーの法則に従い、コイルで境界付けられる表面を通る磁束φは、コイルで境界付けられる面積Aに関する面積分で定義される。
【数1】
ここでBは磁場である。
【0042】
コイルは、磁束の変化率で定義される起電力EMF(または電圧)を得る。ここで使われる密に巻かれたタイプのコイルでは、電圧はコイルのターン数Nに比例する。
【数2】
【0043】
従って、コイルで境界付けられる面積Aが大きければ大きいほど、RFIDリーダから問い合わされたとき、コイルによって生成される電圧は大きくなる。
【0044】
図2Bに、通常のシンプルなアンテナの実際の実現が示される。実際には導電コイル106は、マウントパッド126から外側ブリッジコネクタ204まで外側に向けて巻かれ、マウントパッド126から内側ブリッジコネクタ206まで内側に向けて巻かれる。その後、内側ブリッジコネクタ206および外側ブリッジコネクタ204は、ブリッジ122によって接続される。
【0045】
図3Aは、試験管302のような円柱に応用したときの、図2Aのアンテナ200を備えるタグ300を模式的に示す。この応用では、磁場収集領域Aは、試験管302の高さhおよび直径dに拘束される。さらに図3Bに示されるように、アンテナ200の幅yは、矢印で示される磁場Bが領域Aを通るときに逆電圧が発生することを防ぐために、試験管302の外周の半分に限られる。試験管302の反対側304でのこのような逆電圧が発生すると、効果的な収集領域が減少し、従って全誘導電圧が減少するだろう。
【0046】
図1に示されるアンテナ101により、円柱状の試験管のような3次元形状の周囲の領域の表面をより効率的に利用することができる。なぜなら、当該形状の反対側の表面もまた、アンテナに接着して使うことができるからである。これは図4Aおよび図4Bに示される。柔軟なRFIDタグ100およびアンテナ101により、2つのアンテナコイル102、104は、試験管302のような物品の周囲に位置付けることができる。このとき、一方のアンテナコイル102の内側領域130を、他方のアンテナコイル104の内側領域132に対して機能的に調整することができる。言い換えれば、試験管302の場合、タグ100はこの試験管の外周全体を取り囲んで覆うことができる。
【0047】
2つのアンテナコイル102、104の巻き方が逆向きであることは、2つのコイル102、104が、1つの平面上で、互いに打ち消し合う反対の作用を持つ電圧を生むことを意味する。これは、図4Aにおける矢印402で示される。すなわちこの例では、矢印402は、コイル104の周囲では時計回り方向であり、逆にコイル102の周囲では反時計周り方向である。しかしながら、アンテナ101の一方の端部134が他方の端部136と隣接するようにして、RFIDタグ100が表面周囲に巻かれた場合、2つのコイルの一方は、方向において効果的に反転されるだろう。実際、誘起されたEMFは反対方向を向くことで互いに重畳され、コイルのターン数Nの増加に起因して(式2を参照)、実効的な誘導EMFが増大する(あるいはむしろ2倍になる)。
【0048】
図1では、各コイルは10個のターンを持つ。すなわちN=10である。この数は応用に応じて(例えば、必要なEMFあるいは実現可能な性能に基づいて)変わってよく、3以上20以下、典型的には5以上15以下であってよい。なぜなら、ターン数が15を超えると自己共振周波数が減少する傾向があり、2つ以上のタグが互いに接近すると受信回路を妨害する可能性があるからである。
【0049】
いくつかの非限定的な実施の形態では、RFIDタグ100は物品に接着されず、2つに折りたたまれて、コンパクトながら効率的なRFIDを提供する。
【0050】
いくつかの非限定的な実施の形態は、直列に配列されたアンテナの拡張されたマルチコイル構成を含んでよい。このとき、隣接するコイルのペアの各々は逆向きに巻かれ、ブリッジによって相互接続される。例えば3つの隣接するコイルでは、2つのブリッジが必要である。2つのコイル構成では、1つのブリッジが必要である。
【0051】
本明細書で説明した2コイルかつ単一ブリッジのアンテナの利点は、このタイプの構成が、例えば箔エッチングまたはプリンティングを用いて簡単に大量生産可能であることにある。典型的な8字型構成の場合、例えばコイルが欠くループに交差し、通常の除去製造技術(subtractive manufacturing。エッチングなど)や付加製造技術(additive manufacturing。3Dプリンティングなど)は少なくとも実行可能ではない。なぜなら、各交差についてブリッジコネクタのペアが必要となり、図1に示されるようにブリッジコネクタ116、120は、各コイルで境界付けられる領域内の表面領域の比較的大きな部分を占めるからである。
【0052】
例えばエッチング技術を用いて製造される簡単に接続された2コイル構成により、試験管その他の小型の物品で使用可能な、比較的小型のRFIDタグを実現することできる。試験管は、サイズが例えば直径12mm、高さ50mmに制限されてもよい。ある非限定的な実施の形態では、RFIDタグ100は、全高が10-20mm(例えば11mm)で、囲む対象の物品の全幅が30-70mm(例えば38mm)のアンテナを持つ。
【0053】
コイルの他の導電部分を横断するブリッジを1つだけ持つことにより、寄生容量が減少し、これによりコイルの性能が改善することにもなる。これは、アンテナの共振周波数が動作周波数にさほど近くなく、2つ以上のタグが互いに接近しても応答信号が妥協しないことを意味する。例えば、RFIDタグからの応答が16.3MHz近辺にあると期待される場合、8字型構成の浮遊容量に起因する17MHzの共振周波数は、小さな応答信号を超過するだろう。提案された10ターンのアンテナ構成の場合、測定された共振周波数は23.9MHzである。これは、同じ10ターン構造で17MHzの共振周波数を持つ8字型構成に対し、著しい性能向上をもたらす。
【0054】
有利なことに、本明細書で説明したアンテナ構成により、物理的により小型の電気的タグを使用することが可能となる。なぜなら、効率的な収集領域(円柱のそれぞれの側に1つづつ)が2つ存在するからである。これらの両方が、磁束とそれによる電圧に寄与する。図5に示されるような試験管ホルダーに寄り添ってフィットした試験管500をラベル付けするために、このより細いタイプの巻きつけ型のラベルを使うことができる。
【0055】
ホルダー502に近接して保持された試験管500の部分(以下、保持ゾーン504と呼ぶ)は、電気的ラベル(アンテナとそれに関連したサイズを持つ)を持つことができない。なぜなら、試験管500の保持ゾーン504とホルダー502との間のスペースが限られているからである。従って、試験管の周囲でタグに利用可能な領域は、上部の外周領域506にまで減少する。本明細書で説明した電気的タグ100は、この上部の外周領域506の周囲に巻きつけるのに好適である。
【0056】
有利なことにいくつかの非限定的な実施の形態では、電気的タグ100を上部の外周領域506上の可視的ラベルとして持つことにより、ホルダー内の特定の試験管がラベル付けされているという可視的な合図が与えられる。これは、例えば優先されるべき緊急のサンプルの存在を示すために使うことができる。例えば、上部の外周領域506に貼られたラベル上に識別可能なカラーコードを与えることにより、緊急の試験管を有するホルダーの特定を助けることができる。
【0057】
例えば1つ以上のクーラーバッグ内に保管された一群の医療サンプルの場合、その中身はバッグの外からは見えないだろう。従って、大量の群の中から、あるいは複数のクーラーバッグの中から、1つ以上のサンプルを特定し優先付けることは難しいだろう。前述のRFIDタグのような電気的タグを適用することにより、緊急のサンプルを特定することができる。例えば、サンプルのクーラーバッグがRFIDトンネルリーダ内に置かれる場合(あるいは、可搬型RFIDリーダで読まれる場合)、リーダで読まれるタグの識別特性は、RFIDシステムが優先タグ特性を認識できるように設定されてよい。このようにしてユーザは、優先タグ特性を持つRFIDタグでラベル付けされた優先サンプル容器を含むクーラーバッグを特定することができる。
【0058】
医療サンプルのラベル付けに関係する別の課題として、機密情報の安全な取り扱いに関するものがある。特に緊急サンプルに関しては、特に当該サンプルとその情報とが分離されている場合、情報を安全に保ち、かつ必要なときにそれを取得することが困難となる可能性がある。すべての必要な情報(例えば、機密情報および/または機密でない情報)が、サンプルに貼られた電気的ラベルに記憶された電気的データの一部として含まれることは、当該情報がサンプルとともに移動するので、潜在的に安全でない通信ネットワーク上に送信されることがないことを意味する。タグ上に記憶されたサンプル情報を持つRFIDタグを使うことにより、容器内の内容に関する機密情報が安全でない通信ネットワークにさらされるリスクを防ぎ、安全な通信ネットワークの必要なコストを不要とすることができる。
【0059】
上記の内容は、より適切な非限定的な実施の形態のいくつかを概略的に説明したものである点に注意する。当業者にとって、開示された非限定的な実施の形態の変形が、その範囲を逸脱することなく可能であることは明らかだろう。従って、開示された非限定的な実施の形態は、より卓越した性能または応用のいくつかに関する実例に過ぎないと理解されるべきである。これらの非限定的な実施の形態を別の方法で適用することにより、あるいは当業者に知られた方法で変形することにより、他の有利な結果を実現することができる。これは、特徴、要素、および/または機能の、様々な非限定的な実施の形態間での混合および組み合わせも明らかに考慮されていることを含む。従って当業者は、特段の断りがない限り、ある実施の形態の特徴、要素、および/または機能が別の適切な実施の形態にも含まれることを本開示から理解するだろう。以上の説明は特定の構成および方法に関するものであったが、これらの意図や概念は、他の構成やおよび方法に好適かつ適用可能であってよい。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5