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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20220728BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220728BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220728BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/81
A61K8/86
A61Q19/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017247496
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019112352
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤山 一平
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206956(JP,A)
【文献】特開2013-139423(JP,A)
【文献】特表2016-500688(JP,A)
【文献】特開2001-335460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、及び、ローカストビーンガムを含む化粧料であって、
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを0.5質量%以下含み、
ローカストビーンガムとポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比が5:1~1:10であり、
含水率が70質量%以上の化粧水である、化粧料。
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルがポリオキシエチレングリセリルエーテルであり、
前記ポリオキシエチレングリセリルエーテルのオキシアルキレン単位の繰り返し数が10~20である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルが、炭素数2~4のオキシアルキレン単位が5~30繰り返すポリオキシアルキレンがグリセリンに付加したものである、請求項1に記載の化粧料
【請求項4】
カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含有し、
カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量が0.1質量%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量が、化粧料全体の0.05質量%以上である、請求項1~の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記ローカストビーンガムと前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比が、2:1~1:5の範囲内にある、請求項1~の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項7】
前記化粧料が、さらに、濃グリセリン及び/又はジグリセリンを含み、
前記濃グリセリン及び/又はジグリセリンの含有量が、化粧料全体の5質量%以上、45質量%以下である、請求項1~6の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項8】
前記濃グリセリン及び/又はジグリセリンの含有量は、前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の100倍以上である、請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
前記化粧料が、ローカストビーンガム及びキサンタンガムを含み、
前記ローカストビーンガムと前記キサンタンガムの総含有量が、化粧料全体の5質量%以下であり、
ローカストビーンガム及びキサンタンガムの総含有量とポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比は、5:1~1:10である、
請求項1~8の何れか1項に記載の化粧料。
【請求項10】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを有効成分とし、
含水率が70質量%以上の化粧水に、前記有効成分であるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを0.05質量%以上0.5質量%以下、ローカストビーンガムとポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比が2:1~1:5となるよう適用する、前記の化粧水のヌルツキ改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水は、皮膚に塗布することにより、皮膚に水分や保湿成分を与える機能をもつ透明液状を呈した化粧品である。ここで、化粧水は主たる成分が水であることから、化粧水に含ませることのできる構成成分が少なく、他の化粧品との区別をつけることが難しかった。
上記事情から、近年化粧水開発の現場において、他の化粧品との区別をつけるために独特の物性又は機能をもった化粧水が研究・開発されている。
【0003】
従来技術として、化粧料の粘度調整のためにローカストビーンガム等の水溶性高分子が用いられることが知られている(特許文献1)。
また、キサンタンガムとローカストビーンガムを併用することにより、少量の配合で高い強度と透明度を有するゲル状物質が得られることが知られている(特許文献2)。
【0004】
また、特許文献3には、水溶性高分子を溶解又は膨潤した水中に、分散剤及び/又は水溶性溶媒を用いて特定の多孔質粉体とフッ素化合物処理粉体とを分散させることで、経時安定性に優れ、伸び拡がりが軽く、水々しい使用感と、さっぱりとした仕上がり感を有し、且つ、化粧持続性が良好である化粧料となることが開示されている。
【0005】
また、分子量が300以上であるパーフルオロポリエーテル基を有する化合物で表面を処理した粉体と水溶性高分子を含有する水中油型化粧料が、分散性が良好であり、肌への付着性が良く、エモリエント感が高く、且つ化粧持続性が向上するという優れた特性を有することが知られている(特許文献4)。
【0006】
ところで、特許文献5には、グリセリンを含むジェル状化粧料にポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを含有させることで、塗布時のすべりが良くなることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-189641号公報
【文献】特開2008-106000号公報
【文献】特開2000-119158号公報
【文献】特開平11-246331号公報
【文献】特開2017-128524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
他の化粧水にはない独特の物性又は機能をもった化粧水の研究開発の過程で、ローカストビーンガムを含む化粧水はふっくらとした外観を呈するものの、ローカストビーンガム由来のヌルツキにより化粧水としての使用感に課題があった。
【0009】
上記事情に鑑みなされた本発明は、ローカストビーンガムを含ませることによる、ふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキが抑えられた化粧料を提供することを課題とする。また、本発明の好ましい形態では、他の化粧水にはない独特の物性又は機能をもった化粧水を提供することを課題とする。
【0010】
本発明者らは、ローカストビーンガムを含む化粧料に特定の構造を備える物質を加えることで、ローカストビーンガムを含む化粧料特有のふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキを抑えることができることを見出し、本発明を完成させた。また、一定以上の含水量の化粧料に、ローカストビーンガムを含む化粧料に特定の構造を備える物質を加えることで、化粧料を手に乗せたときにはふっくらとした外観を有し、かつ使用時の塗布動作により形状が崩壊し、水のような性状となり肌へ馴染むという独特の崩れ感を有する化粧料となることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、ローカストビーンガムを含む化粧料であって、さらに、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを含む化粧料である。
本発明によれば、ローカストビーンガムを含ませることによる、ふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキが抑えられた化粧料を提供することができる。
【0012】
ここで、本明細書において、「ふっくらとした外観」とは、化粧料の中心付近を膨らみの頂点として全体的に丸みを帯びている外観のことをいう。具体的に例えば、「ふっくらとした外観」とは、バイオスキン(ビューラックス社製)の上に0.3mLの化粧料をスポイトを用いて静置させ、20℃室温雰囲気下、静置後1時間経過したときの化粧料の直径が12mm以下であることをいう。
【0013】
また、本明細書において、「ヌルツキ」とは、肌に化粧料を塗布する場合、化粧料が薄く塗り広げられるにつれ、肌と手との間に上滑り感を感じる薄い膜が介在したかのような感触をいう(特開2012-47667号公報 参照)。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態では、化粧料の含水率が70質量%以上である。
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを含み、かつ化粧料の含水率が70質量%以上であることで、化粧料を手に乗せたときにはふっくらとした外観を有し、かつ使用時の塗布動作により形状が崩壊し、水のような性状となり肌へ馴染むという独特の崩れ感を有する化粧水を提供することができる。
【0015】
また、本発明の好ましい実施の形態では、ローカストビーンガムを含む化粧料は化粧水である。
化粧水である本発明の化粧料は、化粧料を手に乗せたときにはふっくらとした外観を有し、かつ使用時の塗布動作により形状が崩壊し、水のような性状となり肌へ馴染むという他の化粧水にはない独特の崩れ感を有する。
【0016】
また、本発明の好ましい実施の形態では、前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量が、化粧料全体の0.05質量%以上である。
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量が、化粧料全体の0.05質量%以上であることで、ローカストビーンガム由来のヌルツキをより抑えることができる。
【0017】
また、本発明の好ましい実施の形態では、前記ローカストビーンガムと前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比が、5:1~1:10の範囲内にある。
前記ローカストビーンガムと前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比が上記範囲内にあることで、ローカストビーンガムを含ませることによる、ふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキが十分に抑えられた化粧料を提供することができる。
【0018】
また、本発明の好ましい実施の形態では、前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルが、炭素数2~4のオキシアルキレン単位が5~30繰り返すポリオキシアルキレンがグリセリンに付加したものである。
前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルが、炭素数2~4のオキシアルキレン単位が5~30繰り返すポリオキシアルキレンがグリセリンに付加したものであることで、よりローカストビーンガム由来のヌルツキを抑えることができる。
【0019】
また、本発明の好ましい実施の形態では、前記化粧料が、さらに、グリセリンを含み、
前記グリセリンの含有量が、化粧料全体の5質量%以上、45質量%以下である。
化粧料に上限以下のグリセリンを含むことで、化粧料に汎用されるグリセリン由来のベタツキを抑えることができる。
また、化粧料に下限以上のグリセリンを含むことで、高い保温感を備える化粧料を提供することができる。また、化粧料にポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを加えることで、化粧料に汎用されるグリセリン由来のベタツキをローカストビーンガム由来のヌルツキと併せて抑えることができる。
【0020】
ここで、本明細書において、「ベタツキ」とは、化粧料を肌に塗布している間又は塗布した後での肌表面におけるはりつきや粘着を伴う感触をいう(特開2012-229962号公報 参照)。
【0021】
また、本発明の好ましい実施の形態では、前記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の100倍以上である。
化粧料に下限以上のグリセリンを含むことで、高い保温感を備える化粧料を提供することができる。また、グリセリンの含有量がポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量100倍以上であっても、化粧料に汎用されるグリセリン由来のベタツキを抑えることができる。
【0022】
また、本発明の好ましい実施の形態では、前記化粧料が、さらに、キサンタンガムを含み、
前記ローカストビーンガムと前記キサンタンガムの総含有量が、化粧料全体の5質量%以下である。
かかる形態の化粧料によれば、ローカストビーンガム及びキサンタンガムを併用して含ませることによるふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム及びキサンタンガム由来のヌルツキが抑えられた化粧料を提供することができる。
【0023】
また、本発明は、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを有効成分とする、ローカストビーンガムを含む化粧料のヌルツキ改善剤でもある。
【発明の効果】
【0024】
本発明の化粧料によれば、ローカストビーンガムを含ませることによる、ふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキが抑えられた化粧料を提供することができる。
また、本発明の好ましい形態によれば、化粧料を手に乗せたときにはふっくらとした外観を有し、かつ使用時の塗布動作により形状が崩壊し、水のような性状となり肌へ馴染むという独特の崩れ感を有する化粧料を提供することができる。
また、本発明の好ましい形態によれば、ローカストビーンガムを含ませることによる、ふっくらとした外観を維持しつつ、化粧料に汎用されるグリセリン由来のベタツキとローカストビーンガム由来のヌルツキの両方が抑えられた化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、特許請求の範囲に記載された範囲内において適宜変更が可能である。
【0026】
本発明の化粧料は、ローカストビーンガムを含む化粧料であって、
さらに、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを含む。
ローカストビーンガムを含む化粧料にポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを含ませることで、ふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキを抑えることができる。
【0027】
ここで、本発明の化粧料は、含水率が70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
含水率が下限以上である化粧料は、化粧料を手に乗せたときにはふっくらとした外観を有し、かつ使用時の塗布動作により形状が崩壊し、水のような性状となり肌へ馴染むという独特の崩れ感を有する。
【0028】
ここで、本発明の化粧料は、含水率が90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
含水率が上限以下である化粧料は、よりふっくらとした外観を有する。
【0029】
ここで、本発明の化粧料は、皮膚に外用で適用するものであれば特段の限定なく適用できる。中でも本発明の化粧料は化粧水に応用することが特に好ましい。これは、手に乗せたときにはふっくらとした外観を有しかつ使用時の塗布動作により形状が崩壊し、水のような性状となり肌へ馴染むという性質は、他の化粧水にはないユニークなものであるためである。
【0030】
以下、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルに関し、より好ましい形態を説明する。
【0031】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルとは、ポリオキシアルキレンが多価アルコールにエーテル結合で付加した化合物をいう。
【0032】
前述の化合物としては、グリセリンに炭素数2~4のオキシアルキレン単位が5~30繰り返すポリオキシアルキレンを付加させたものを好ましく挙げることができる。
中でも、前述の炭素数2~4のオキシアルキレン単位が、酸化エチレンであることがより好ましい。
酸化エチレンが5~30繰り返すポリ酸化エチレンがグリセリンに付加したものとしては、ポリオキシエチレングリセリルエーテルを挙げることができる。
また、オキシアルキレン単位の繰り返し数は、好ましくは7~25、より好ましくは10~20である。
【0033】
前述の化合物の具体例としては、グリセレス-7(リポ製のリポニックEG-7)、グリセレス-12(UPI製のユニペグ-ETG-12)、グリセレス-20(ユニオン・カーバイド製のカーボワックスTPEG990)等を挙げることができる。中でも、グリセレス-12(UPI製のユニペグ-ETG-12)を好ましく用いることができる。
【0034】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量は、化粧料全体の0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量が下限以上であることで、よりローカストビーンガム由来のヌルツキを抑えることができる。
【0035】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量は、化粧料全体の1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量が上限以下であっても、ローカストビーンガムを含む化粧料のふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキを十分に抑えることができる。
【0036】
また、ローカストビーンガムとポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比は、5:1~1:10、より好ましくは2:1~1:5の範囲内にあることが好ましい。
ローカストビーンガムとポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比が上記範囲内にあることで、ふっくらとした外観を維持しつつローカストビーンガム由来のヌルツキが十分に抑えられる。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態では、前記化粧料がさらにグリセリンを含む。
以下、グリセリンに関し、より好ましい形態を説明する。
【0038】
グリセリンは、その種類に特に制限はなく、例えば濃グリセリンやジグリセリンを好ましく挙げることができる。
【0039】
グリセリンの含有量は、化粧料全体の5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であることが好ましい。グリセリンの含有量が化粧料全体の下限以上である化粧料は、保湿感に優れる。
【0040】
また、グリセリンの含有量は、化粧料全体の45質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは12質量%以下であることが好ましい。グリセリンの含有量が化粧料全体の上限以下であることで、グリセリン由来のベタツキのない化粧料を提供することができる。
【0041】
また、グリセリンの含有量は、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の100倍以上、より好ましくは200倍以上であることが好ましい。
化粧料に下限以上のグリセリンを含むことで、高い保温感を備える化粧料を提供することができる。
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量に対するグリセリンの含有量が下限以上であっても、化粧料に汎用されるグリセリン由来のベタツキを十分に抑えることができる。
【0042】
また、グリセリンの含有量は、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の800倍以下、より好ましくは500倍以下、さらに好ましくは300倍以下、特に好ましくは150倍以下であることが好ましい。
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量に対するグリセリンの含有量が上限以下であることで、化粧料に汎用されるグリセリン由来のベタツキをより抑えることができる。
【0043】
本発明の好ましい実施の形態では、化粧料がさらにキサンタンガムを含む。
【0044】
以下、キサンタンガムに関し、より好ましい形態を説明する。
【0045】
ローカストビーンガムとキサンタンガムの総含有量は、化粧料全体の5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であることがより好ましい。ローカストビーンガム及びキサンタンガムを併用して含ませることにより、少量の配合で高い粘性をもたせた化粧料を提供することができる。
また、ローカストビーンガム及びキサンタンガムを含む化粧料にポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを加えることで、ローカストビーンガム及びキサンタンガム由来のヌルツキを抑えることができる。
【0046】
また、ローカストビーンガム及びキサンタンガムの総含有量とポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比は、5:1~1:10、より好ましくは3:1~1:5、さらに好ましくは1:1~1:3、特に好ましくは1:1.5~1:2の範囲内にあることがより好ましい。
ローカストビーンガム及びキサンタンガムの総含有量とポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの含有量の配合比が上記範囲内にあることで、ローカストビーンガム及びキサンタンガムを含ませることによるふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム及びキサンタンガム由来のヌルツキが十分に抑えられた化粧料を提供することができる。
【0047】
本発明の化粧料は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常化粧料に用いられる他の成分を任意に配合することができる。かかる任意成分としては、例えば、粉末成分、保湿剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤等が挙げられる。
また、化粧水の態様においては、カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含有することが好ましい。かかる成分を含有することにより、温感効果が持続するからである。これらのカルボキシビニルポリマーは、増粘剤として種々のものが市販されているので、それらを購入して使用することができる。アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、カルボキシビニルポリマーの一部にアルキル基を導入したもので、例えばグッドリッチ社(米)より「ペミレンTR-1」、「ペミレンTR-2」、「カーボポール1382」等が市販されている。
【0048】
ここで、ヌルツキ、ベタツキを抑える観点から、カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量は、0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0049】
また、ヌルツキ、ベタツキを抑える観点から、ローカストビーンガム、キサンタンガム以外の増粘剤の含有量は、10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0050】
また、後述する実施例に示す通り、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルは、ローカストビーンガムを含む化粧料のヌルツキを改善する作用に優れる。そのため、本発明に含まれるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルは、ローカストビーンガムを含む化粧料のヌルツキ改善剤として用いることもできる。
【0051】
また、後述する実施例に示す通り、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルは、グリセリンを含む化粧料のベタツキを改善する作用にも優れる。そのため、本発明に含まれるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルは、ローカストビーンガム及びグリセリンを含む化粧料のヌルツキ及び又はベタツキ改善剤として用いることもできる。
【0052】
また、後述する実施例に示す通り、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルは、キサンタンガムを含む化粧料のヌルツキを改善する作用にも優れる。そのため、本発明に含まれるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルは、ローカストビーンガム及びキサンタンガムを含む化粧料のヌルツキ改善剤として用いることもできる。
【0053】
本発明の化粧料は、定法により製造することができ、例えば任意の温度で処方成分を均一に撹拌して得ることができる。
【実施例
【0054】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[試験例1]グリセレス-12を含む化粧水の評価試験
表1に示す処方成分を80℃温度下で混合した。混合した化粧水原料を5~30分間加熱撹拌した後、15℃の冷却水を用いて28℃になるまで攪拌冷却し、実施例及び比較例の各化粧水を調製した。
【0056】
調製した化粧水について、以下の試験及び評価を行った。
【0057】
(1)試験内容及び評価項目
・保型性
0.3mLの化粧水をバイオスキン(ビューラックス社製)の上にスポイトを用いて静置させ、20℃室温雰囲気下、静置後1時間経過したときの化粧水の直径を測定し、保型性とした。
◎…非常に良好
〇…良好
△…普通
×…悪い
(◎:7mm未満、〇:7mm~12mm、△:12mm~25mm、×:25mm以上)
【0058】
・崩壊感
化粧水の崩壊感(化粧料を手に乗せたときの形状から、使用時の塗布動作により水のような性状に崩れるときの、形状の崩れの程度)について、10点を最高点、1点を最低点と定義し、化粧品を専門とする評価者による評価を行った。
◎…非常に良好
〇…良好
△…普通
×…やや悪い
(◎:9~10点、〇:7~9点、△:4~6点、×:4点以下)
【0059】
・保湿感
化粧水の保湿感について、10点を最高点、1点を最低点と定義し、化粧品を専門とする評価者による評価を行った。
◎…非常に良好
〇…良好
△…普通
×…やや悪い
(◎:9~10点、〇:7~9点、△:4~6点、×:4点以下)
【0060】
・ベタツキ
化粧水のベタツキ(化粧料を肌に塗布している間又は塗布した後での肌表面におけるはりつきや粘着を伴う感触)について、10点を最高点(ベタツキが弱い)、1点を最低点(ベタツキが強い)と定義し、化粧品を専門とする評価者による評価を行った。
◎…非常に良好
〇…良好
△…普通
×…やや悪い
(◎:9~10点、〇:7~9点、△:4~6点、×:4点以下)
【0061】
・ヌルツキ
化粧水のヌルツキ(肌に化粧料を塗布する場合、化粧料が薄く塗り広げられるにつれ、肌と手との間に上滑り感を感じる薄い膜が介在したかのような感触)について、10点を最高点(ヌルツキが弱い)、1点を最低点(ヌルツキが強い)と定義し、化粧品を専門とする評価者による評価を行った。
◎…非常に良好
〇…良好
△…普通
×…やや悪い
(◎:9~10点、〇:7~9点、△:4~6点、×:4点以下)
【0062】
【表1】
【0063】
(2)結果及び考察
グリセレス-12(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)を含む実施例1~実施例5の化粧水(化粧料)は、比較例1の化粧水(化粧料)に比して、ローカストビーンガムを含ませたことによる保型性を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキが抑えられていた。
【0064】
また、グリセレス-12(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)を含む実施例1~実施例5の化粧水(化粧料)は、含水量が70質量%以上であることで、化粧水(化粧料)を手に乗せたときにはふっくらとした外観を有し、かつ使用時の塗布動作により形状が崩壊し、水のような性状となり肌へ馴染むという独特の崩れ感を有することがわかった。
【0065】
中でも、グリセレス-12(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)を0.05質量%以上含む実施例1、実施例3~実施例5の化粧水(化粧料)は、グリセレス-12(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)を0.005質量%含む実施例2の化粧水(化粧料)に比して、ローカストビーンガムを含ませたことによる保型性を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキが抑えられていた。
【0066】
ここで、実施例1、実施例3~実施例5の化粧水(化粧料)は、ローカストビーンガムとグリセレス-12(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)の含有量の配合比が5:1~1:10の範囲内にある。
すなわち、ローカストビーンガムとグリセレス-12(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)の含有量の配合比が、5:1~1:10の範囲内にあることで、ローカストビーンガムを含ませることによる、ふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキを十分に抑えることができることがわかった。
【0067】
また、濃グリセリン及びジグリセリン(グリセリン)の含有量が、5質量%以上である実施例1~実施例5の化粧水(化粧料)は、グリセリンを含ませたことによる保温感を維持しつつ、グリセリン由来のベタツキが抑えられていた。
【0068】
ここで、実施例1~実施例5の化粧水(化粧料)は、濃グリセリン及びジグリセリン(グリセリン)の含有量は、グリセレス-12(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)の含有量の100倍以上である。
すなわち、濃グリセリン及びジグリセリン(グリセリン)の含有量がグリセレス-12(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)の含有量の100倍以上であっても、化粧料に汎用されるグリセリン由来のベタツキを抑えることができることがわかった。
【0069】
[試験例2]化粧料に含ませることのできるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの検討
次に、グリセレス-12以外のポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルがローカストビーンガム若しくはグリセリンを含む水溶液に与える影響について検討した。
【0070】
(1)試験内容及び評価項目
表2に示すポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルを添加したローカストビーンガム若しくはグリセリンを含む水溶液を、試験例1と同じ評価方法及び評価基準による評価に供した。
【0071】
ここで、グリセレス-7は、グリセリンに炭素数2のオキシアルキレン単位が7繰り返すポリオキシアルキレンがグリセリンに付加したものである。
また、グリセレス-12はグリセリンに炭素数2のオキシアルキレン単位が12繰り返すポリオキシアルキレンがグリセリンに付加したものであり、グリセレス-20は、グリセリンに炭素数2のオキシアルキレン単位が20繰り返すポリオキシアルキレンがグリセリンに付加したものである。
【0072】
【表2】
【0073】
(2)結果及び考察
表2の結果から、グリセリンに炭素数2のオキシアルキレン単位が5~30繰り返すポリオキシアルキレンがグリセリンに付加したものは、ローカストビーンガムを含む水溶液のヌルツキ及びグリセリンを含む水溶液のベタツキを低減させることがわかった。
【0074】
すなわち、表2の結果から、試験例1におけるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルとして、グリセリンに炭素数2のオキシアルキレン単位が5~30繰り返すポリオキシアルキレンがグリセリンに付加したものを用いる場合であっても、試験例1と同質の効果が得られることがわかった。
【0075】
また、表2の結果から、グリセリンに付加するものがポリオキシアルキレンであれば、ポリオキシアルキレンの鎖長に関係なくローカストビーンガム由来のヌルツキ及びグリセリン由来のベタツキが抑えられることが認められる。
すなわち、試験例1におけるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルとして、グリセリンに炭素数2~4のオキシアルキレン単位が5~30繰り返すポリオキシアルキレンがグリセリンに付加したものを用いる場合であっても、試験例1と同質の効果が得られることがわかった。そして、化粧料に含ませる化合物が、ポリオキシアルキレンが多価アルコールにエーテル結合で付加した化合物であれば試験例1と同質の効果が得られることが望めることがわかった。
【0076】
また、表2の結果から、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルはローカストビーンガムを含む化粧料のヌルツキ改善剤として用いることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により、ローカストビーンガムを含ませることによる、ふっくらとした外観を維持しつつ、ローカストビーンガム由来のヌルツキが抑えられた化粧料を提供することができる。また、本発明の好ましい形態によれば、化粧料を手に乗せたときにはふっくらとした外観を有し、かつ使用時の塗布動作により形状が崩壊し、水のような性状となり肌へ馴染むという独特の崩れ感を有する化粧料を提供することができる。また、本発明の好ましい形態によれば、保温剤として化粧料に汎用されるグリセリン由来のベタツキのない化粧料を提供することができる。