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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】パスタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220728BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018012322
(22)【出願日】2018-01-29
(65)【公開番号】P2019129712
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227489
【氏名又は名称】日東富士製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】池田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】羽立 只勝
(72)【発明者】
【氏名】市野 広
(72)【発明者】
【氏名】高柳 雅義
(72)【発明者】
【氏名】大島 秀男
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-125003(JP,A)
【文献】特開2001-204411(JP,A)
【文献】特開2007-082542(JP,A)
【文献】特開2017-012099(JP,A)
【文献】特開2015-070836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉を含有する原料を用いて調製されたパスタであって、前記原料中の穀粉100質量部のうち、デュラム小麦セモリナ及び/又はデュラム小麦フラワーを70~99質量部、乾熱加熱処理されていて、かつ、目開き200μmの篩をパスするものの割合が75質量%以上となるように微粉砕処理されているデュラムふすまを1~30質量部含有し、
前記デュラムふすまは、デュラム小麦の製粉工程で分離されるふすまのうち目開き800μmの篩目をオンした画分である大ふすまを原料として得られたものであることを特徴とするパスタ。
【請求項2】
原料中の穀粉100質量部のうち、デュラム小麦セモリナ及び/又はデュラム小麦フラワーを70~99質量部、デュラムふすまを1~30質量部配合するパスタの製造方法であって、
前記デュラムふすまとして、デュラム小麦の製粉工程で分離されるふすまのうち目開き800μmの篩目をオンした画分である大ふすまを乾熱加熱処理し、目開き200μmの篩をパスするものの割合が75質量%以上となるように、気流粉砕機を用いて微粉砕処理して得られたものを使用することを特徴とするパスタの製造方法。
【請求項3】
前記乾熱加熱処理は、前記デュラム小麦のふすまを、水分を添加することなく、加熱容器に入れて、撹拌しながら、最終品温が95~140℃になるように、トータル加熱時間30~180分間で加熱することにより行う、請求項に記載のパスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュラム小麦とデュラム小麦のふすまとを含有するパスタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
穀類の精白工程で得られる糠やふすまなど、穀類の外皮を含む成分は、食物繊維、ビタミン、ミネラル等の栄養成分に富むものであるため、近年、麺類、パン、菓子などの原料として注目されている。しかし、糠やふすまは特有の穀物臭があり、また通常用いられる小麦粉と比べると硬いために粒感やざらつきが多く、食感が悪いため、消費者に必ずしも好まれるようなものではない。
【0003】
このような問題点を解消するものとして、ふすまを微粉砕して含有させる技術が知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、糟糠類及び/又は穀物全粒粉を含有する非乾燥又は半乾燥スモールパスタが記載されており、さらに、全粒粉は、原料小麦を粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、平均粒径150μm未満~200μm未満の微粉画分(A)と、平均粒径150μm以上~200μm以上の粗粉画分(B)とに分離する;次に、画分(B)を湿熱処理した後、得られた湿熱処理済画分(B)を衝撃式微粉砕して微粉砕し、得られた微粉砕物から150μm未満~200μmメッシュパスの微粉画分(C)を分取する;得られた150μm未満~200μmメッシュパスの微粉画分(C)と、前述の工程で得られた微粉画分(A)とを混合することによって調製することが記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、穀粉を用いて麺生地を製造する工程を有し、前記穀粉は、デュラム小麦粉を5~99.8質量%、並びに穀類全粒粉、穀類粒の外皮部及び胚芽からなる群から選択される1種以上を含む粒径180μm未満の微粉原料を0.2~95質量%含有する、麺類の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-167507号公報
【文献】特開2015-226527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2の記載から得られるパスタは、ふすま特有の穀物臭が十分解消されているとは言えず、また食感も満足できるものではなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ふすま特有の穀物臭が抑えられた、食感がなめらかであり、かつ、粒感の少ない、食物繊維等の栄養成分に富むパスタとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のパスタは、穀粉を含有する原料を用いて調製されたパスタであって、前記原料中の穀粉100質量部のうち、デュラム小麦セモリナ及び/又はデュラム小麦フラワーを70~99質量部、乾熱加熱処理されていて、かつ、微粉砕処理されているデュラムふすまを1~30質量部含有することを特徴とする。
【0010】
本発明のパスタによれば、デュラム小麦のふすまから調製されたデュラムふすまを含有するので、食物繊維などの栄養成分に富むパスタを提供できる。また、デュラムふすまは、乾熱加熱処理されているので、ふすまの嫌な穀物臭が改善される。また、デュラムふすまは、微粉砕処理されているので、食感がなめらかになり、粒感が残らない。更に、デュラム小麦セモリナ及び/又はデュラム小麦フラワーと、デュラムふすまとを含有するので、ふすまを含有させても、パスタらしい色調を維持することができる。
【0011】
本発明のパスタにおいては、前記デュラム小麦のふすまとして大ふすまを用いることが好ましい。また、前記大ふすまは、デュラム小麦の製粉工程で分離されるふすまのうち目開き800μmの篩目をオンした画分であることが好ましい。大ふすまは、通常のふすまよりも食物繊維が多いので、パスタに食物繊維含量の高いふすまを含有させることができる。また、同じ食物繊維含量にしたい場合、デュラムふすまの添加量を減らせるので食味食感への影響が抑えられる。
【0012】
本発明のパスタにおいては、前記デュラムふすまは、目開き200μmの篩をパスするものの割合が75質量%以上となるように微粉砕処理されていることが好ましい。このことにより、パスタの食感がよりなめらかになり、粒感が残らないものとなる。
【0013】
また、本発明のパスタの製造方法は、原料中の穀粉100質量部のうち、デュラム小麦セモリナ及び/又はデュラム小麦フラワーを70~99質量部、デュラムふすまを1~30質量部配合するパスタの製造方法であって、前記デュラムふすまとして、デュラム小麦のふすまを用い、該ふすまを乾熱加熱処理し、微粉砕処理して得られたものを使用することを特徴とする。
【0014】
本発明のパスタの製造方法においては、前記デュラム小麦のふすまとして、大ふすまを用いることが好ましく、更に、大ふすまとして、デュラム小麦の製粉工程で分離されるふすまのうち、目開き800μmの篩目をオンした画分を用いることが好ましい。
【0015】
本発明のパスタの製造方法においては、前記乾熱加熱処理は、前記大ふすまを、水分を添加することなく、加熱容器に入れて、撹拌しながら、最終品温が95~140℃になるように、トータル加熱時間30~180分間で加熱することにより行うことが好ましい。これによれば、ふすまの嫌な穀物臭がより効果的に軽減され、風味のよいパスタを得ることができる。
【0016】
本発明のパスタの製造方法においては、前記微粉砕処理は、気流粉砕機を用いて、目開き200μmの篩をパスするものの割合が75質量%以上となるように行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のパスタやその製造方法によれば、デュラムふすまを含有するので、食物繊維などの栄養成分に富むパスタを提供できる。また、デュラムふすまは、乾熱加熱処理されているので、ふすまの嫌な穀物臭が改善される。また、デュラムふすまは、微粉砕処理されているので、食感がなめらかになり、粒感が残らない。更に、デュラム小麦セモリナ及び/又はデュラム小麦フラワーと、デュラムふすまとを含有するので、ふすまを含有させても、パスタらしい色調を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
パスタとは、一般的には、日本農林規格(JAS規格)でマカロニ類とされているものを指すが、本発明におけるパスタはこれに限定されない。日本農林規格(JAS規格)によれば、マカロニ類は「デユラム小麦のセモリナ又は普通小麦粉に水を加え、これに卵、野菜を加え又は加えないで練り合わせ、マカロニ類成形機から高圧で押し出した後、切断し、及び熟成乾燥したものをいう。」と定義されているが、この他、例えば、原料としてデュラム小麦のフラワーを用いるものや、熟成乾燥させない生の状態のものも含まれる。
【0019】
本発明のパスタにおいては、原料中の殻粉100質量部のうち、デュラム小麦セモリナ及び/又はデュラム小麦フラワーを好ましくは70~99質量部、より好ましくは75~97質量部、さらに好ましくは80~95質量部含有する。デュラム小麦セモリナ及び/又はデュラム小麦フラワーが70質量部未満であると、パスタらしい食味・食感が乏しくなる傾向にあり、99質量部を超えると、デュラムふすまの添加量が少なくなるので、食物繊維などの栄養成分が十分とは言えなくなる。
【0020】
また、本発明のパスタにおいては、原料中の殻粉100質量部のうち、デュラムふすまを好ましくは1~30質量部、より好ましくは3~25質量部、さらに好ましくは5~20質量部含有する。デュラムふすまが1質量部未満であると、デュラムふすま由来の食物繊維などの栄養成分が十分とは言えなくなり、30質量部を超えると、パスタの食味・食感、風味、色相が悪くなる傾向がある。
【0021】
上記デュラムふすまには、デュラム小麦のふすまを原料とし、乾熱加熱処理されていて、かつ、微粉砕処理されているものを用いる。
また、デュラム小麦のふすまとしては、大ふすまを用いることが好ましい。ここで、デュラム小麦の大ふすまとは、デュラム小麦の製粉工程で分離される比較的粒度の粗いふすまのことをいう。製粉工程では、大ふすまの他に、比較的粒度の細かい小ふすまと粉ふすまが分離されるが、このような細かいふすまには、胚乳部分である小麦粉が多く混入している。本発明で用いるデュラムふすまの原料として粒度の粗い大ふすまを用いることによって、パスタの食物繊維含量を高めることができる。
【0022】
大ふすまは、デュラム小麦の製粉工程で分離されるふすまのうち、好ましくは目開き500~1000μmの間で選択された篩目、より好ましくは目開き700~900μmの間で選択された篩目、最も好ましくは目開き800μmの篩目をオンした画分を用いる。500μmの篩目をパスする画分が含まれると、胚乳部分である小麦粉が多く混入してしまうため、パスタの食物繊維含量が低くなってしまう傾向がある。
【0023】
なお、食物繊維含量は、例えば、プロスキー法(No.985.29, Total Dietary Fiber in Foods, "Official Method of Analysis", AOAC, 15th ed., 1990, P.1105-1106)、酵素HPLC法(AOAC2001.03)等の方法により、測定することができる。
【0024】
ふすまの乾熱加熱処理の手段は、均一に焙煎できるものであれば特に制限されず、例えば回転釜、焙煎機、ホットプレート、オーブン、フライパンなどの加熱容器で行うことができる。乾熱加熱処理は、水分値が好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下となるように行うことが好ましい。乾熱加熱処理することで、本発明のパスタに焙煎の良い臭いが付着する。一方で、湿熱により加熱処理すると、穀物特有の独特な嫌な臭いが付着しやすい。
【0025】
乾熱加熱処理する方法としては、原料となる大ふすまを、水分を添加することなく、回転釜等の加熱容器に入れて、攪拌しながら、最終品温が、好ましくは95~140℃、より好ましくは100~140℃となるように、トータル加熱時間が、好ましくは30~180分間、より好ましくは30~120分間となるように乾熱加熱することによってなされる。最終品温やトータル加熱時間が上記範囲未満であると、ふすまの穀物臭を抑制できなかったり、パスタの保存性が低くなったりし、また、後述する粉砕処理において、微細に粉砕されにくくなり、上記範囲を超えると、焦げ付きによってパスタに苦味が生じやすい傾向にある。
【0026】
乾熱加熱処理されたふすまの微粉砕処理の手段は、特に制限されないが、例えば、気流式粉砕機や、衝撃式粉砕機などの粉砕機で行うことができるが、ふすまを細かく粉砕することができるということから、好ましくは気流式粉砕機で行う。
【0027】
本発明に用いるデュラムふすまは、更に、微粉砕処理後に、好ましくは目開き200μmの篩目をパスするものを採取することが好ましく、目開き180μmの篩目をパスするものを採取することがより好ましい。これによれば、比較的粗い粒子のものを除いて、パスタのざらつきを低減することができる。また、万が一、粒度の粗い異物が混入していたとしても、それらを確実に除去することができる。
【0028】
また、上記微粉砕処理では、目開き200μmの篩をパスするものの割合が、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上となるように行う。これによれば、充分に微粉砕してパスタのざらつきを低減できる。
【0029】
さらに、上記微粉砕処理では、粒度分布における50%中位径が200μm、好ましくは100μm、より好ましくは30~80μmになるように行う。50%中位径が200μmを超えると、パスタにざらつき感が生じ、滑らかで良好な食感を得ることができない傾向にある。
【0030】
なお、粒度分布における50%中位径とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径(体積中位径)を意味する。中位径は、レーザー回折/散乱式粒度分布計(例えば商品名「マイクロトラック」、日機装社製)で測定したメジアン径として得られる。
【0031】
本発明のパスタにおいては、原料中の殻粉として、上記デュラム小麦セモリナ、デュラム小麦フラワー、及びデュラムふすまの他に、小麦粉(デュラム小麦由来でない)、ふすま(デュラム小麦由来でない)、大麦粉、ライムギ粉、オーツ粉、あるいはこれら穀粉の全粒粉等の全穀粉を含有することができる。上記デュラム小麦セモリナ、デュラム小麦フラワー、デュラムふすま等の以外穀粉は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。ただし、デュラム小麦セモリナ、デュラム小麦フラワー、デュラムふすま以外の殻粉の含有量は、全原料殻粉100質量部中に10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
本発明のパスタの原料としては、上記穀粉の他に、水、食塩、卵、小麦たん白、でん粉、糖類、増粘剤、乳化剤、こんにゃく粉末等を用いることができる。この他にも、パスタに風味や彩りを持たせるために、イカ墨、唐辛子、ホウレンソウ、トマト、ニンジン、ケール、大麦若葉、大麦粉などを原料に加えてもよい。
【0033】
パスタの製造方法は、特に限定されず、従来の方法を適用することができる。例えば、パスタの原料に、水、塩などを加えて、ミキサー等により混ぜ合わせ、捏ね上げた後、押出機などに投入して成形し、そのまま乾燥させることにより製造できる。また、乾燥させずに生パスタとして製品化することもできる。
【0034】
こうして得られた本発明のパスタの種類は限定されないが、例えば、スパゲッティ、フィットチーネ・タリアッテレ、バーミセリー、ロングマカロニ、及びスペルチーニ等のロングパスタ、マカロニ、ペンネ、ツイスト、カール、及びシェル等のショートパスタが挙げられる。
【0035】
また、パスタの調理方法も特に限定されず、例えば、湯の入った大きめの鍋に投入し茹で、茹だったら鍋から上げ、ソースや具と絡めて食することができる。
【0036】
本発明のパスタによれば、食物繊維などの栄養成分に富むパスタを提供できるので、便秘予防、肥満予防、糖尿病予防、脂質代謝を調節して動脈硬化の予防、大腸癌の予防、その他腸内細菌によるビタミンB群の合成、食品中の毒性物質の排除促進等を所望する人に好適である。
【実施例
【0037】
<実験例1>
1.デュラムふすま等の調製
(1)実施例1
デュラム小麦としてアンバーデュラムを用い、その製粉工程で得られる大ふすまであって、目開き800μmの篩目をオンした画分を採取した。この採取した大ふすまの食物繊維は約55.0質量%であった。
【0038】
上記大ふすまを、水分を添加することなく回転釜に入れて、撹拌しながら、最終品温110℃となるように乾熱加熱し、合計90分間焙煎した。
【0039】
上記焙煎ふすまを、気流粉砕によって粉砕した。上記粉砕物を目開き200μmの篩にかけ、オンした部分を除去、パスした部分を採取し、デュラムふすまを得た。
【0040】
(2)実施例2
実施例1において、粉砕処理の後、目開き200μmの篩にかけないこと以外は、実施例1と同様の方法でデュラムふすまを得た。
【0041】
得られたデュラムふすまを、レーザー回折/散乱式粒度分布計(商品名「マイクロトラック」、日機装社製)を用いて測定したところ、粒度分布における50%中位径が72.3μmであった。また、粒径200μm未満の割合は、85質量%であった。更に、このデュラムふすまの食物繊維含量は64.2質量%であった。
(3)比較例1
実施例1において、乾熱加熱処理を行っていないこと以外は、実施例1と同様の方法でデュラムふすま(以下「デュラムふすま(未加熱)」とする。)を得た。
【0042】
(4)比較例2
実施例1において、乾熱加熱に変え、湿熱加熱を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法でデュラムふすま(以下「デュラムふすま(湿熱加熱)」とする。)を得た。なお、湿熱加熱は、水分を添加することなくトレーに薄く敷き、蒸し器に入れて湿熱加熱することで行った。
【0043】
(5)比較例3
実施例1において、デュラム小麦に変え、強力系小麦としたこと以外は、実施例1と同様の方法でふすま(以下「強力系小麦ふすま」とする。)を得た。
【0044】
2.パスタの製造
下記表1に示す配合で、原料を6分間ミキシングし、得られた生地をまとめて押出機(ITALPAST社)に投入し、太さ2.0mmのスパゲッティを製造した(生パスタ)。それぞれのスパゲッティを沸騰水中で3分間茹でた。
【0045】
【表1】
【0046】
3.評価
茹でたパスタをお皿に移し、大さじ1杯のオリーブオイルをかけて、パスタにからませたものを食して食味・食感(なめらかであるか、粒感がないか等)と風味(穀物臭等)を、目視により色相を評価した。評価は、極めて良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、極めて悪いものを1点とし、パネラー7名の平均点を算出し、表2に示した。
【0047】
表2に示したように、デュラムふすまを含有したパスタでは、食味・食感、風味、色彩の評価が高かった(実施例1,2)。
【0048】
しかし、デュラムふすま(未加熱)を含有したパスタとデュラムふすま(湿熱加熱)を含有したパスタでは、食味・食感と風味、強力系小麦ふすまを含有したパスタでは、色相の評価が低かった(比較例1~3)。
【0049】
【表2】
【0050】
<実験例2>
1.パスタの製造
デュラムふすまとしては、上記実験例1の実施例1で調整したものを用い、下記表3に示す配合で、同様にスパゲッティを製造し、それぞれのスパゲッティを沸騰水中で3分間茹でた。
【0051】
【表3】
【0052】
2.評価
上記実験例1と同様に評価を行い、パネラー7名の平均点を表4に示した。
【0053】
表4に示したように、デュラム小麦セモリナを70~99質量部、デュラムふすまを1~30質量部含有したパスタでは、食味・食感、風味、色彩の評価が高かった(実施例1,3~6)。
【0054】
しかし、デュラム小麦セモリナを50質量部、デュラムふすまを50質量部含有したパスタでは、食味・食感、風味、色相の評価が低かった(比較例4)。
【0055】
【表4】
【0056】
<実験例3>
1.デュラムふすま等の調製
(1)実施例2
デュラムふすまとしては、上記実験例1の実施例2で調整したものを用いた。このデュラムふすまの食物繊維含量は64.2質量%であった。
【0057】
(2)比較例5
実施例2において、デュラム小麦に変え、強力系小麦全粒粉としたこと以外は、実施例2と同様の方法で「強力系小麦全粒粉」を得た。この強力系小麦全粒粉の食物繊維含量は11.2質量%であった。
【0058】
2.パスタの製造
下記表5に示す配合で、上記実験例1と同様にスパゲッティを製造し、それぞれのスパゲッティを沸騰水中で3分間茹でた。
【0059】
【表5】
【0060】
3.評価
上記実験例1と同様に評価を行い、パネラー7名の平均点を表6に示した。
【0061】
表4に示したように、デュラム小麦セモリナを97質量部、デュラムふすまを83質量部含有したパスタでは、食味・食感、風味、色彩の評価が高かった(実施例2)。
【0062】
しかし、デュラム小麦セモリナを83質量部、強力系小麦全粒粉を17質量部含有したパスタでは、食味・食感、風味、色相の評価が低かった(比較例5)。
【0063】
また、デュラムふすまは食物繊維含量が多いので、全粒粉と比較して少ない添加量でも、全粒粉を添加したパスタと同等かそれ以上の食物繊維含量のパスタを得ることができる。
【0064】
【表6】