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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】締固め管理方法および締固め管理装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
E02D3/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018041612
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019157385
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391019740
【氏名又は名称】三信建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000194756
【氏名又は名称】成和リニューアルワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】新坂 孝志
(72)【発明者】
【氏名】武田 耕造
(72)【発明者】
【氏名】関 昌則
(72)【発明者】
【氏名】本谷 洋二
(72)【発明者】
【氏名】中西 誉
(72)【発明者】
【氏名】廻田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】木脇 太郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 聖一
(72)【発明者】
【氏名】青木 政樹
(72)【発明者】
【氏名】湯川 誠二郎
(72)【発明者】
【氏名】大高 信雄
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177797(JP,A)
【文献】特開2005-009169(JP,A)
【文献】特開2002-146764(JP,A)
【文献】特開2015-063803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に振動を与える電動の偏心モーターを含む振動機と、杭体構築用の材料を地中に供給するためのケーシングパイプと、が併設して備えられた締固め装置を用いる締固め工法であって、締固め装置を貫入する工程と、材料を供給しながら横方向の振動を与え下から上に向かって杭体を構築する工程を含む締固め工法において、
前記杭体を構築する工程は、
締固め装置を引抜くことで発生する空洞部に材料を充填する工程と、
引抜いた締固め装置を打戻すことで前記空洞部への充填済み材料を拡径させることによって周辺地盤の締固めを行う工程と、を含んでおり、
前記偏心モーターの電流値に基づいて地盤強度を推定する締固め管理方法。
【請求項2】
前記周辺地盤の締固めを行う工程において、
前記振動機による横方向の振動が、前記充填済み材料が拡径する方向と一致している、
ことを特徴とする請求項1に記載の締固め管理方法。
【請求項3】
前記充填済み材料を拡径させる工程において、
前記偏心モーターの電流値が管理値に至るまで前記締固め装置を打戻す、
ことを特徴とする請求項に記載の締固め管理方法。
【請求項4】
目標の地盤強度に基づいて前記管理値を決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の締固め管理方法。
【請求項5】
貫入時における前記偏心モーターの電流値と地盤強度に基づいて前記管理値を決定する、ことを特徴とする請求項3に記載の締固め管理方法。
【請求項6】
前記締固め装置の引抜き量と打戻し量の差に基づいて、
拡径させた前記充填済み材料の径を推定する、
ことを特徴とする請求項乃至5の何れかに記載の締固め管理方法。
【請求項7】
前記振動機が具備するモーターは、周波数が30~100Hzの偏心モーターである、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の締固め管理方法。
【請求項8】
請求項3乃至5の何れかに記載の方法の実施に用いる装置であって、
あらかじめ定めた電流値である管理値を記録するための管理値記録部と、
前記管理値に基づいて締固め装置の打戻し量を制御するための制御部と、
を有する締固め管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングパイプを介して材料を地中に供給して杭体を構築する締固め工法で利用可能な締固め管理方法および締固め管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤改良方法として「サンドコンパクションパイル工法」や「バイブロフローテーション工法」といった締固め工法が一般的に知られている。
【0003】
サンドコンパクションパイル工法では、鉛直振動を発生させるバイブロハンマー(振動機)をケーシングパイプの上部に設け、このケーシングパイプの引抜き(材料供給)と打戻し(拡径・締固め)を繰り返すことによって、地盤中に締固めた砂杭を強制的に造成し、それによって対象地盤の密度増大を図る。サンドコンパクションパイル工法では、地盤に貫入させたケーシングパイプを通じて材料を地盤内に供給して下から上に向かって杭を構築する、いわゆる「ボトムフィード方式」で材料が供給される。
【0004】
バイブロフローテーション工法では、水平振動を発生させる振動機(バイブロフロット)を用いて断続的に引抜きと締固めを行う一方で、振動機の周りと地盤とに間に生じた空洞を介して材料を地中に供給する。このバイブロフローテーション工法は、これまでに複数の施工方法が提案されており、初期のバイブロフローテーション工法では、地表から材料を補給する、いわゆる「トップフィード方式」が採用されている。その他、特許文献1、2では、改良されたバイブロフローテーション工法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-339933号公報
【文献】特開平8-144258号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「土木工法事典 改訂V」 産業調査会 2001年 資-170,179
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サンドコンパクションパイル工法の問題点について、図5を参照して説明する。
図5(a)(b)(c)は、それぞれ、サンドコンパクションパイル工法により施工する場合の事前N値、設計改良率、事後N値を概略的に図式化したものである。
サンドコンパクションパイル工法は、図5(b)に示すように一般的に改良径が固定されているため、事前の最小N値と目標N値から改良率を設定する。図5(a)において、最小のN値は○で囲まれた範囲内にあり、目標N値は一点鎖線で示している。図5(a)に示す事前N値と、図5(b)に示す設計改良率を踏まえて、サンドコンパクションパイル工法により施工を行うと、施工現場の事後N値は図5(c)に示すように、すべての深度領域にわたってN値が一律に底上げした様になる。したがって図5(c)に示すように、深度によっては過剰な改良を行うことになり、地盤の変位が大きくなる。
【0008】
また、サンドコンパクションパイル工法では、バイブロハンマーがケーシングパイプの上部に設置されている。そのため、バイブロハンマーによる縦方向の振動エネルギーが、ケーシングパイプの座屈や撓みや、ケーシングと地盤との摩擦などによって損失し、効率が悪い。
【0009】
また、前述した初期のバイブロフローテーション工法では、地表面から材料を供給するトップフィード方式を採用しているため、深度ごとの杭径(すなわち各深度に行き渡っている材料の投入量)が不明である。
【0010】
また、バイブロフローテーション工法によっては、深度ごとに振動機を地上まで引抜くことにより、深度ごとの材料投入量はある程度は予想することは可能な工法もある。しかしながら、トップフィード方式を採用していることに加え、孔壁の崩落等による土砂の落ち込みがあることから、正確な深度ごとの材料投入量を把握することができない。また、材料を所定量投入するたびにバイブロフロットを地上まで引抜くため、杭体1本を打設するための再貫入量が多くなり、施工能率が悪くなる。このため、工期延長や施工費の増大が発生する。
【0011】
また、特許文献2に開示されたバイブロフローテーション工法では、ケーシングパイプ下部に振動機が設けられているため、振動機を動かすための配線(電動タイプ)や配管(油圧タイプ)が複雑になる。また、ケーシングパイプ下端の開口部が実質的に小さくなるため、材料が閉塞しやすくなる。
【0012】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、過剰な改良を抑制し、締固め工法を効率良く施工することを可能にし、また、深度ごとの材料投入量を把握でき、任意の深度で所望の杭径を確保することを可能にする、締固め管理方法および締固め管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、横方向に振動を与える電動の偏心モーターを含む振動機と、杭体構築用の材料を地中に供給するためのケーシングパイプと、が併設して備えられた締固め装置を用いる締固め工法であって、締固め装置を貫入する工程と、材料を供給しながら横方向の振動を与え下から上に向かって杭体を構築する工程を含む締固め工法において、
偏心モーターの電流値に基づいて地盤強度を推定する締固め管理方法によって達成される。
【0014】
上記締固め工法において杭体を構築する工程は、
締固め装置を引抜くことで発生する空洞部に材料を充填する工程と、
引抜いた締固め装置を打戻すことで前記空洞部への充填済み材料を拡径させる工程と、を含んでいる。
【0015】
また、上記締固め工法において充填済み材料を拡径させる工程では、偏心モーターの電流値が管理値に至るまで前記締固め装置を打戻すことが好ましい。
【0016】
前記管理値は、例えば、目標の地盤強度に基づいて決定する。
【0017】
また例えば、前記管理値は、貫入時における前記偏心モーターの電流値と地盤強度に基づいて決定してもよい。
【0018】
また上記締固め工法では、締固め装置の引抜き量と打戻し量の差に基づいて、拡径させた前記充填済み材料の径を推定することも可能である。
【0019】
締固め装置を貫入する工程では、例えば、水または圧縮空気を送りながら締固め装置を貫入することが好ましい。
【0020】
振動機が具備するモーターは、例えば、周波数が30~100Hzの偏心モーターで構成する。
【0021】
また、前述した目的は、
あらかじめ定めた電流値である管理値を記録するための管理値記録部と、
前記管理値に基づいて締固め装置の打戻し量を制御するための制御部と、
を有する締固め管理装置によって達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明で用いる締固め装置は、横方向に振動を与える電動の偏心モーターを含む振動機と、杭体構築用の材料を地中に供給するためのケーシングパイプを、並設している。すなわち、振動機とケーシングパイプを並列のレイアウトで配置し、その状態で固定している。したがって、従来のサンドコンパクションパイル工法では締固め箇所(拡径箇所)から遠く離れたところにバイブロハンマーが位置しているのに対し、本発明では、地中の締固め箇所(拡径箇所の深度)の直近に偏心モーターが位置することになる。そして、地中の締固め箇所に位置する偏心モーターの電流値(偏心モーターに対する負荷の値)は、地盤の強度(締固め具合)に応じて増加することから、施工時における偏心モーターの電流値から対象深度における地盤の強度(締固め具合)を把握することができる。
また本発明では、締固め箇所に位置する偏心モーターが横方向の振動を発生させる。すなわち、地盤を横方向に押し広げるときの方向と、振動機による振動方向が一致するため、偏心モーターに対する負荷(すなわち偏心モーターの電流値)から地盤の状態を推定することができる。なお、従来のサンドコンパクションパイル工法では、バイブロハンマーが縦方向の振動を発生させるため、地盤を横方向に押し広げるときの方向と、バイブロハンマーによる振動方向が一致しない。また、バイブロハンマーがケーシングの上部(地上)にあるため、締固め箇所の地盤の状態をケーシングを媒体として間接的に影響を受けることになる。さらにケーシング自体の動作は地盤との摩擦の影響を受けている。したがって、地盤強度によるバイブロハンマー(偏心モーター)の電流値の変化が少なく、また損失も多いので、従来のサンドコンパクションパイル工法では、偏心モーターに対する負荷から地盤の状態を推定するといったことはできない。
また本発明では、振動機とケーシングパイプを並設するという構成を採用しているので、振動機がケーシングパイプの下端開口部を遮ることがなく、材料の閉塞等が発生しない。
また本発明では、ケーシングパイプを通じて材料を地中に供給する、いわゆる「ボトムフィード方式」を採用しているので、施工時において深度ごとの材料充填量、杭径を簡単にかつ正確に把握することができる。
【0023】
また本発明では、締固め装置を所定長さ引抜くことで発生する空洞部に、ケーシングパイプを通じて材料を充填し、続いて、該締固め装置を打戻すようになっている。このように打戻しを行うことにより、従来のバイブロフローテーション工法よりも大径の杭体を構築することができる。
また、空洞部に充填した材料を拡径し、周辺地盤が締め固まる(密になる)ことにより、振動機の動きが拘束され、その結果、偏心モーターの電流値が上昇する。この原理を利用し、周辺地盤の地盤強度を推定することができる。
【0024】
また本発明では、偏心モーターの電流値が管理値(予め定めた上限値)に至るまで締固め装置を打戻す。逆に言えば、偏心モーターの電流値が管理値に至った段階で、その深度での締固め装置の打戻しを完了とする。これにより、必要以上の締固めを行う必要がなくなるため、施工を効率的に進めることができる。
【0025】
また本発明では、締固め装置の打戻し完了の判断基準の値となる、偏心モーターの電流値の「管理値」を、原地盤の地盤強度と目標とする地盤強度に基づいて決定し、この管理値に至るまで締固め装置を打戻す。これにより、目標の地盤強度を確保できる一方で、必要以上の締固めを行う必要がなくなるため、振動機の引抜き不能を防ぐことができる。また、過剰な締固めを避けることで、地盤隆起や側方変位を抑制することができる。さらに、振動機の破損やケーシングパイプの損耗を低減することができる。
【0026】
また本発明では、締固め装置の打戻し完了の判断基準となる、偏心モーターの電流値の「管理値」を、貫入時における偏心モーターの電流値と地盤強度に基づいて決定することも可能である。締固め装置の貫入の過程においても、原地盤の状態(硬軟)により振動機の電流値が変化するので、このときの電流値を用いることにより、さらに対象地盤の状態や施工条件に応じた管理値を設定することができる。
【0027】
また本発明では、締固め装置の引抜き量と打戻し量の差に基づいて、拡径させた充填済み材料の径(構築途中の杭径)を推定することも可能である。
具体的には、次式に基づいて拡径後の充填済み材料の断面積A2を算出し、その断面積A2から、拡径させた充填済み材料の径を求める。
(A1×L1)×C=A2×(L1-L2)
V1×C=V2
A1:締固め装置の断面積(m2
A2:拡径後の杭体(拡径させた充填済み材料)の断面積(m2
L1:引抜き量(m)
L2:打戻し量(m)
V1:空洞部に充填した材料の体積(m3) =A1×L1
V2:拡径後の杭体の体積(m3) =A2×(L1-L2)
C :締固め率 =V2/V1
なお、上記式において、締固め装置の断面積A1は、装置の設計段階で把握することができ、また、引抜き量L1、打戻し量L2は、施工時にその値を計測または決定することができる。そして、締固め率Cは、用いる材料の種類から決定することができる。このように、A1、L1、L2、Cを事前に把握することができるため、上記式に基づいて拡径後の充填済み材料の断面積A2を算出することができる。
したがって、本発明によれば、施工途中(杭体構築途中)において深度ごとの杭径を簡単に把握することができるので、深度ごとに杭径が異なる杭体を簡単かつ確実に構築することが可能になる。
【0028】
また本発明では、水または圧縮空気を送りながら締固め装置を貫入する。これにより貫入抵抗が軽減するので、締固め装置を対象地盤に対し確実に貫入させることができる。
【0029】
また本発明では、振動機が具備するモーターを、例えば周波数が30~100Hzの偏心モーターで構成する。このような高出力のモーターを用いることで振動エネルギーが大きくなり、締固め工法を効率的に進めることができる。また、従来のサンドコンパクションパイル工法よりも高周波であり、振動の伝播が限定されるため、周辺への影響が少ない。
【0030】
また本発明に係る締固め管理装置は、あらかじめ定めた電流値である管理値を記録するための管理値記録部と、その管理値に基づいて締固め装置の打戻し量を制御するための制御部と、を具備している。
このような締固め管理装置を施工に用いることで、締固め装置の打戻し量を自動で制御することが可能になり、また、必要以上の締固めを確実に抑制できるため、施工を効率的に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施に利用する締固め装置の、(a)貫入完了時の様子(杭体構築用の材料をケーシング内に充填した状態)、(b)引抜き時の様子、(c)打戻し時の様子を示しており、また、図1(a)(b)(c)の上段側は断面図であり、下段側は平面図である。
図2】打戻し時における締固め装置の様子を示す断面図である。
図3】貫入時における締固め装置の様子を示す断面図である。
図4】打戻しによって増加する地盤強度と、それに伴って上昇する電動の偏心モーターの電流値(偏心モーターに対する負荷)の関係を概略的に示すグラフである。
図5】従来工法(サンドコンパクションパイル工法等)で施工する場合における、(a)事前N値、(b)設計改良率、(c)事後N値を示すグラフである。
図6】本発明を利用して施工する場合における、(a)事前N値、(b)設計改良率、(c)事後N値を示すグラフである。
図7】本発明を利用して施工する場合における、(a)事前N値、(b)設計改良率、(c)実施改良率、(d)事後N値を示すグラフである。なお、図5図6図7に例示する各工法は、同じ条件の地盤で施工を行うことを想定している。
図8】締固め工法の標準的な施工手順を示すフローチャートである。
図9図8に示す標準的な施工を行う場合における、締固め装置下端の動作(貫入、引抜き、打戻し)に係る施工記録例を示すグラフである。
図10】電流値による締固め管理を行う場合の締固め工法の施工手順を示すフローチャートである。
図11図10に示す施工を行う場合における、締固め装置下端部の動作(貫入、引抜き、打戻し)に係る施工記録例を示すグラフである。
図12】締固め装置と締固め管理装置の電気的関係を示すブロック図である。
図13】本発明の実施に用いる施工装置の全体図と、本発明による標準的な施工手順図である。
図14】締固め工法の実施工で得られた実測データ(実施例)であって、事前N値と同深度における偏心モーターの電流値の関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(締固め装置)
はじめに、図1および図13に基づいて、本発明の技術的前提となる締固め装置の概要について説明する。
図1は、本発明の実施に利用する締固め装置の、(a)貫入完了時の様子(杭体構築用の材料をケーシング内に充填した状態)、(b)引抜き時の様子、(c)打戻し時の様子を示している。また、図1(a)(b)(c)の上段側は断面図であり、下段側は平面図である。
図13は、本発明の実施に用いる施工装置の全体図と、本発明による標準的な施工手順図である。
【0033】
本発明の実施に利用する締固め装置1は、施工対象の地盤に貫入して杭体を構築する際に用いる装置であって、図1に示すとおり、
・横方向の振動を与えるための長尺の振動機3(バイブロフロット/振動体)と、
・杭体構築用の材料を地中に供給するための長尺のケーシングパイプ5と、
を一体的に具備している。
また、図13に示すとおり、締固め装置1はその上部に、クレーン等による吊り下げを可能にするための吊り下げ部材8を具備している。
【0034】
締固め装置1が具備する振動機3とケーシングパイプ5は、図1に示すように併設されている。すなわち、長尺の振動機3とケーシングパイプ5を横並びにして、一方が他方を抱きかかえた様な構成を具備している。また、振動機3とケーシングパイプ5が一体化して並行に並んだ状態を保つように、振動機3とケーシングパイプ5は、連結部材によって相互に確りと固定されている。
【0035】
締固め装置1が片方に具備する振動機3は、起振機であって、横方向に振動を与える電動の偏心モーター(図示せず)を含んで構成されている。偏心モーターは、例えば、振動機3の下端近傍に内蔵されている。この偏心モーターは、例えば、周波数が30~100Hzのモーターで構成することが好ましい。
【0036】
振動機3は、締固め装置1の下端領域の周囲に対し横方向(水平方向)の振動を与える役割を担っている。振動機3が作動すると、図2に例示するように振子が高速で揺れ動く様な感じで、締固め装置1の下端側が横方向に振動する。
【0037】
締固め装置1がもう片方に具備するケーシングパイプ5は、杭体構築用の材料を地中の所定深度に供給する役割を担っている。すなわち、本発明の実施に際し、杭体構築用の材料は、ケーシングパイプ5を介していわゆる「ボトムフィード方式」で地中に供給される。ケーシングパイプを通じて材料を供給することで、地中の所定深度(狙った深度領域)に対して必要量の材料を確実に行き渡らせることができる。杭体構築用の材料の具体例としては、たとえば砂や礫などが挙げられる。また、構築する杭体の具体例としては砂杭や礫杭などが挙げられる。
【0038】
また図13に示すように、ケーシングパイプはその上端に、材料投入口として機能する圧力タンク6およびホッパー7を有し、またその下端に、材料排出口として機能する開口部を有している。
【0039】
上述した構成のほか、締固め装置1は、貫入抵抗を軽減するための水または圧縮空気を送り込む流路を具備していてもよい。このような流路を介して、水または圧縮空気を締固め装置の先端部あるいは側部から排出することで、締固め装置の貫入抵抗を軽減し、締固め装置を対象地盤に対し確実に貫入させることができる。
【0040】
(締固め工法)
次に、図1および図13を参照しつつ、図8および図9に基づいて、上述した締固め装置1を利用した締固め工法の概要について説明する。
図8は、締固め工法の標準的な施工手順を示すフローチャートである。
図9は、図8に示す標準的な施工を行う場合における、締固め装置下端の動作(貫入、引抜き、打戻し)に係る施工記録例を示すグラフである。
【0041】
本発明の技術的前提となる締固め工法は、ボトムフィードタイプのバイブロフロットによる振動締固め工法であって、図8図9に示すとおり、大きく分けて次の2工程で構成される。
・貫入工程
・杭体構築工程
【0042】
貫入工程では、図1(a)に示すように振動機3とケーシングパイプ5が併設して備えられた締固め装置1を、たとえば図13に示すようにクレーン(あるいはバックホウ)などの重機で吊り下げ、該締固め装置1の下端部を改良対象地盤に対して位置決めし、振動機3を作動させた状態で下端深度(目標深度)まで貫入させる<図8のステップS1>。なお、締固め装置1の貫入開始から、杭体1本分の構築が完了するまで、原則として振動機3の偏心モーターは作動させたままとする。
【0043】
貫入の際には、締固め装置1が具備する流路を介して水または圧縮空気を送りながら締固め装置を貫入してもよい。このような水や圧縮空気は、貫入時に締固め装置1の真下から吐出させてもよく、あるいは、締固め装置1の側部から吐出させてもよい。
【0044】
杭体構築工程は、材料を供給しながら横方向の振動を与え下から上に向かって1本の杭体を構築する工程であり、大きく分けて次の2工程で構成される。
・引抜き工程
・打戻し工程
【0045】
以下、杭体構築工程を構成する引抜き工程と打戻し工程の詳細について説明する。
【0046】
図13(a)に示すように締固め装置1を下端深度まで貫入し終えたら<S3>、続いて、図1(b)および図13(b)に示すように、締固め装置1を所定長さL1にわたって引抜く<S5>。この引抜きの際に、締固め装置1の引抜き量L1に相当する分だけ、締固め装置1の真下に材料が充填される。具体的には図1(b)に示すように、引抜きの進行に伴って、締固め装置1(振動機3およびケーシングパイプ5の下端)の真下に空洞部13が発生し、この真下の空洞部13に向かってケーシングパイプ5内の材料が自重および振動で落下して当該空洞部に充填される。なお、締固め装置1の引抜きの際にも、横方向に振動を与える振動機3は作動させたままとするので、引抜き時に地盤から受ける抵抗は当該振動の作用によって緩和される。
【0047】
締固め装置1を所定長さL1引抜くことで空洞部13に充填される材料の体積は、次の式によって求めることができる。
【0048】
空洞部に充填される材料の体積 = A1×L1
A1:締固め装置の断面積(m2
L1:引抜き量(m)
【0049】
なお、この出願で言及する「締固め装置の断面積」とは、締固め装置1の横断面の輪郭線(外周)より内側の面積を意味する。また、締固め装置1の断面積は、締固め装置1を引抜くことで地中に発生する空洞部13の断面積と略等しいものとする。
【0050】
所定長さL1に及ぶ締固め装置1の引抜きを完了したら、続いて、図1(c)および図13(c)に示すように、締固め装置1を所定長さL2(L2<L1)にわたって打戻す<S7>。この打戻しは、空洞部13への充填済み材料15を拡径させるために行われる。なお、この出願で充填済み材料とは、直近の引抜き工程で空洞部13に充填された材料の集合体であって、構築途中の杭体の一部を意味する。以下、「空洞部への充填済み材料」を、充填済み材料と略称する。
【0051】
打戻しの際にも振動機3は作動させたままとする。したがって、締固め装置1を打戻すことによる押し潰す方向のエネルギーと、振動機3による横方向の振動エネルギーが、真下にある充填済み材料15に直接的に印加され、それによって図1(c)に示すように充填済み材料15が略円形を描くように拡径する。更に、当該充填済み材料15が拡径することによって、その周辺地盤の締固めが行われる。
【0052】
この打戻し工程では、締固め装置1の引抜き量L1と打戻し量L2の差に基づいて、拡径させた充填済み材料15(杭体の構成部分)の径を推定することも可能である。
具体的には、次式に基づいて拡径後の充填済み材料15(構築途中の杭体)の断面積A2を求め、更にその断面積A2から、拡径させた充填済み材料の径を求める。
【0053】
(A1×L1)×C=A2×(L1-L2)
V1×C=V2
A1:締固め装置の断面積(m2
A2:拡径後の杭体(拡径させた充填済み材料)の断面積(m2
L1:引抜き量(m)
L2:打戻し量(m)
V1:空洞部に充填した材料の体積(m3) =A1×L1
V2:拡径後の杭体の体積(m3) =A2×(L1-L2)
C :締固め率 =V2/V1
【0054】
なお、上記式において、締固め装置の断面積A1は、装置の設計段階で把握することができ、また、引抜き量L1、打戻し量L2は、施工時にその値を計測または決定することができる。そして、締固め率Cは、用いる材料の種類から決定することができる。このように、A1、L1、L2、Cを事前に把握することができるため、上記式に基づいて拡径後の充填済み材料の断面積A2を算出することができる。
【0055】
このような径の推定を利用することで、施工時において深度ごとの杭径(構築途中の杭径)を簡単に把握することができるので、図13(d)に示すように深度ごとに杭径が異なる杭体を簡単かつ確実に構築することが可能になる。
【0056】
上述した打戻し工程が完了したら、以後は、所定の締固め長さに及ぶ杭体を構築し終えるまで、原則として引抜き工程と打戻し工程を必要回数繰り返す<S9の判断No>。このように引抜き工程と打戻し工程を繰り返して下から上に向かって杭体を構築することで、拡径された充填済み材料の結合体を含む杭体が構築される。そして、必要長さの杭体の構築が完了したら<S9の判断Yes>、最後に図13(e)に示すように、締固め装置1を地表に引抜くとともに地表部の引抜き孔に材料を充填し<S11>、杭体1本分の施工が完了する。
【0057】
(締固め管理方法)
次に、図2および図4に基づいて、上述した締固め工法において実施する締固め管理方法について説明する。
図2は、打戻し時における締固め装置1の様子を示す断面図である。
図4は、打戻しによって増加する地盤強度と、それに伴って上昇する電動の偏心モーターの電流値(偏心モーターに対する負荷)の関係を示すグラフである。
【0058】
前述したとおり、打戻し工程では、締固め装置1が具備する振動機3は作動させたままとする。したがって図2(a)に示すように、振動機3による横方向の振動エネルギーと、締固め装置1の打戻しによる押し潰す方向のエネルギーが、充填済み材料15に印加され、それによって当該充填済み材料15の拡径と周辺地盤の締固めが行われる。
【0059】
一方で、図2(b)に示すように、周辺地盤の締固めが進行するにつれて地盤の密度(地盤強度)が増加し、それに伴って、充填済み材料15の更なる広がりが徐々に困難となり、拡径が抑制されることになる。締固めの進行に伴う拡径の抑制は、振動機3の拘束を招き、その結果、振動機3が具備する電動の偏心モーターに対する負荷が増大する。そして、この偏心モーターに対する負荷の増大は、偏心モーターの電流値の上昇という現象になって現れる。
【0060】
つまり図4(a)に示すように、打戻しによって地盤強度(N値、コーン貫入抵抗)が増加すると、それに伴って、偏心モーターの電流値が上昇する。そこで本発明では、打戻し工程における、地盤強度(たとえばN値、コーン貫入抵抗)と偏心モーターの電流値の関係を利用して、締固めを管理する。
【0061】
具体的には、充填済み材料15を拡径させる工程である打戻し工程において、地盤強度の増加に伴って上昇する偏心モーターの電流値が、所定の管理値に至るまで、締固め装置1を打戻す。例えば図4(b)に示す事例では、偏心モーターの電流値が、予め定めた管理値に至った時点で、地盤強度(たとえばN値やコーン貫入抵抗値等)が目標値に至ったと判断して、その深度での打戻しを完了とする。
【0062】
このように本発明では、偏心モーターの電流値から地盤強度を推定する。したがって本発明の実施にあたっては、偏心モーターの電流値と地盤強度の相関関係を予め把握しておくことが好ましく、また、地盤強度の目標値に相当する(対応する)偏心モーターの電流値を予め把握しておくことが好ましい。
【0063】
(電流値による締固め管理を利用した締固め工法)
次に、図1および図13を参照しつつ、図10および図11に基づいて、電流値による締固め管理を利用した締固め工法の施工手順について具体的に説明する。
図10は、電流値による締固め管理を行う場合の締固め工法の施工手順を示すフローチャートである。
図11は、図10に示す施工を行う場合における、締固め装置下端部の動作(貫入、引抜き、打戻し)に係る施工記録例を示すグラフである。
【0064】
本発明の技術的前提となる締固め工法は、図10図11に示すとおり、大きく分けて次の2工程で構成される。
・貫入工程
・杭体構築工程
【0065】
貫入工程<図10のステップS11,S13>は、図8に示す施工手順における貫入工程<ステップS1,S3>と同様であるので、前述した説明を援用する。
杭体構築工程は、材料を供給しながら横方向の振動を与え下から上に向かって1本の杭体を構築する工程であり、大きく分けて次の2工程で構成される。
・引抜き工程
・打戻し工程
【0066】
引抜き工程<図10のステップS15>は、図8に示す施工手順における引抜き工程<ステップS5>と同様であるので、前述した説明を援用する。
【0067】
所定長さL1に及ぶ締固め装置の引抜き<S15>を完了したら、続いて、図1(c)および図13(c)に示すように、締固め装置を所定長さL2’(L2’<L1)にわたって打戻す<S17>。この打戻しは、空洞部への充填済み材料を拡径させるために行われる。
【0068】
打戻しの際にも振動機は作動させたままとする。したがって、締固め装置を打戻すことによる押し潰す方向のエネルギーと、振動機による横方向の振動エネルギーが、真下にある充填済み材料に直接的に印加され、それによって図1(c)に示すように充填済み材料が拡径する。更に、当該充填済み材料が拡径することによって、周辺地盤の締固めが行われる。
【0069】
本実施形態では、打戻しの過程において、次の二つの値を比較する<S19>。
・計測される偏心モーターの電流値I
・予め定めた偏心モーターの電流値の管理値I(lmt)
【0070】
電流値Iは、偏心モーターの電流値の計測値である。
管理値I(lmt)は、打戻し完了の判断基準となる上限値であって、予め定めた値(偏心モーターの電流値の値)である。
【0071】
打戻し工程では、「電流値I<管理値I(lmt) ?」の判断<S19>を繰返し実行し、電流値Iが管理値I(lmt)に達していないと判断された場合には<S19の判断Yes>、締固め装置の打戻しを継続する。したがって、このように判断される間は、図4に示すとおり、地盤強度(N値、コーン貫入抵抗)の増大に伴って、計測されるモーターの電流値Iは上昇し続ける。
【0072】
そして、打戻し工程における「電流値I<管理値I(lmt) ?」の判断において、電流値Iが管理値I(lmt)に達したと判断された場合には<S19の判断No>、この工程における打戻しを完了する<S21>。
【0073】
なお本実施形態では、打戻し工程における打戻し量L2’(締固め装置の打戻し開始から管理値I(lmt)に達するまでの打戻し長さ)は、必ずしも一定ではなく、この点で、図8に示す標準的な施工の場合の打戻し量L2と相違する。つまり、本実施形態において、打戻し工程における打戻し量L2’は、原地盤の地盤強度と目標の地盤強度によって変動する。
【0074】
また本実施形態では、打戻し工程において打戻し量L2’(締固め装置の打戻し開始から管理値I(lmt)に達するまでの打戻し長さ)を計測し、締固め装置の引抜き量L1と打戻し量L2’の差に基づいて、拡径させた充填済み材料15(構築途中の杭体部分)の径を推定することも可能である。
具体的には、次式に基づいて拡径後の充填済み材料15(構築途中の杭体部分)の断面積A2を求め、更にその断面積A2から、拡径させた充填済み材料の径を求める。
【0075】
(A1×L1)×C=A2×(L1-L2’)
V1×C=V2
A1 : 締固め装置の断面積(m2
A2 : 拡径後の杭体(拡径させた充填済み材料)の断面積(m2
L1 : 引抜き量(m)
L2’: 打戻し量(m)
V1 : 空洞部に充填した材料の体積(m3) =A1×L1
V2 : 拡径後の杭体の体積(m3) =A2×(L1-L2’)
C : 締固め率 =V2/V1
【0076】
なお、上記式において、締固め装置の断面積A1は、装置の設計段階で把握することができ、また、引抜き量L1、打戻し量L2’は、施工時にその値を計測または決定することができる。そして、締固め率Cは、用いる材料の種類から決定することができる。このように、A1、L1、L2’、Cを事前に把握することができるため、上記式に基づいて拡径後の充填済み材料の断面積A2を算出することができる。
【0077】
このような径の推定を利用することで、施工時において深度ごとの杭径(構築途中の杭径)を簡単に把握することができるので、図13(d)に示すように深度ごとに杭径が異なる杭体を簡単かつ確実に構築することが可能になる。
【0078】
上述した打戻し工程が完了したら<S21>、以後は、所定の締固め長さに及ぶ杭体を構築し終えるまで、原則として引抜き工程と打戻し工程を必要回数繰り返す<S23の判断No>。このように引抜き工程と打戻し工程を繰り返して下から上に向かって杭体を構築することで、拡径された充填済み材料の結合体を含む杭体が構築される。そして、必要長さの杭体の構築が完了したら<S23の判断Yes>、最後に図13(e)に示すように、締固め装置1を地表に引抜くとともに地表部の引抜き孔に材料を充填し<S25>、杭体1本分の施工が完了する。
【0079】
(電流値による締固め管理を利用した施工事例(1))
次に、図6に基づいて、電流値による締固め管理を利用した第1の施工事例について説明する。
【0080】
締固め工法では、その設計時の段階で、施工前の原地盤の地盤強度(事前N値)を把握するとともに、目標とする地盤強度(目標N値)を設定する。図6(a)には、そのような施工前の原地盤の地盤強度(事前N値)を破線で示し、また、目標とする地盤強度(目標N値)を一点鎖線で示す。
【0081】
そして、電流値による締固め管理を利用した第1の施工事例では、図6(a)に示すように、予め定めたブロック(深度区間)における事前N値の最低値(図中○で示す)を決定し、その最低値が目標N値を満たすように、前記ブロックにおいて、引抜き工程と打戻し工程を繰返し(または各1回)実行する。その際、必要に応じて、図4(a)に例示するような地盤強度と偏心モーターの電流値の相関関係をもとに、偏心モーターの電流値に基づいて地盤強度を推定する。地盤強度を推定しながら施工(引抜き工程と打戻し工程の繰返し)を進めることで、事前N値の最低値(図中○で示す)が目標N値をクリアしているか否かを判断することができる。
【0082】
なお図4(a)は、打戻しによって増加する地盤強度と、それに伴って上昇する電動の偏心モーターの電流値(偏心モーターに対する負荷)の関係を概略的に示しているが、実際の施工事例では、地盤強度と電流値の関係は図14に示す様になる。
図14は、締固め工法の実施工で得られた実測データであって、事前N値と同深度における偏心モーターの電流値の関係を表したグラフである。図14に示すデータは、同じ施工現場で得られた実測データであって、杭体番号ごとに(構築する杭体ごとに)グラフ中のプロットを変えている。
図14に例示する実施工のデータ(実施例)に示されるとおり、N値(地盤強度)が増加すると、それに伴って偏心モーターの電流値が上昇しており、地盤強度と偏心モーターの電流値との間には相関関係があることが明らかである。したがって、このような相関関係をもとに、偏心モーターの電流値に基づいて地盤強度を推定することができる。
【0083】
締固め工法において、このような電流値による締固め管理を採用することで、たとえば図6(b)の設計改良率に例示するように、予め定めたブロック(深度区間)で必要な分だけ改良して(材料の充填と拡径を行い)、過剰な改良を避ける、といった設計を行うことが可能になる。具体的には、図5(c)に示す従来工法の事後N値と、図6(c)に示す本発明による事後N値を比較することで明らかなとおり、電流値による締固め管理を採用することで、すべての深度領域にわたってN値を一律に底上げしなくても、目標の地盤強度を確保することができ、その結果、無駄な締固めを抑制することができる。
【0084】
なお、図6(a)において中間の深度領域に例示するように、深度によっては、施工前の段階で事前N値が目標N値を満たしていることも想定される。そのような深度(事前N値が目標N値を満たしている深度区間)では、引抜き時に空洞部への材料の充填のみを行い、打戻しは行わない。これにより、図5(b)に示す如く改良径が固定されているサンドコンパクションパイル工法と比較して、無駄な改良が回避され、施工の更なる効率化を図ることができることができるだけでなく、振動機の引抜き不能や振動機の破損やケーシングの損耗、さらには地盤隆起や則本変位を抑制することができる。
【0085】
(電流値による締固め管理を利用した施工事例(2))
次に、図7に基づいて、電流値による締固め管理を利用した第2の施工事例について説明する。
【0086】
締固め工法においては、その設計時の段階で、施工前の原地盤の地盤強度(事前N値)を把握するとともに、目標とする地盤強度(目標N値)を設定する。図7(a)には、そのような施工前の原地盤の地盤強度(事前N値)を破線で示し、また、目標とする地盤強度(目標N値)を一点鎖線で示す。
【0087】
第2の施工事例は、偏心モーターの電流値を利用するという点で前述した第1の施工事例と共通しているが、第2の施工事例では、偏心モーターの電流値に基づいた地盤強度の推定にとどまらず、偏心モーターの電流値が管理値に至るまで締固め装置を打戻す。そのため、目標とする地盤強度(目標N値)に基づいて、あらかじめ管理値を決定する必要がある。具体的には、地盤強度と偏心モーターの電流値の相関関係から、目標N値に相当する偏心モーターの電流値(図4(b)参照)を事前に把握し、この電流値を管理値(打戻し完了の判断基準値)として設定する。そして、各深度領域における打戻し工程では、この決定した管理値を用いて締固め(打戻し量)を管理する。
【0088】
このように決定した管理値を用いて、前述した「締固め管理方法を利用した締固め工法」を実施する事例を図7に例示する。
【0089】
図7に示す事例では、予め定めた深度区間(深度領域)における事前N値の最低値(図中○で示す)を決定し、その最低値が目標N値を満たすように、前記深度区間ごとに改良率(杭径)を設定する。また、図7に示す事例の打戻し工程では、目標N値に相当する偏心モーターの電流値が、管理値(その深度区間での打戻し完了の判断基準値)として設定されている。
【0090】
このような電流値による締固め管理を採用することで、図7(b)の設計改良率に例示するように、任意の深度区間で、必要な分だけ改良する(材料の充填と拡径を行う)といった設計を行うことが可能になる。
加えて、第2の施工事例では、管理値を用いた締固め管理方法を採用しているので、図7(c)の実施改良率に例示するように、任意の深度において、事前N値と目標N値を踏まえて改良率(杭径)をきめ細かく制御することが可能になる。その結果、施工対象の深度全域にわたって目標の地盤強度を確実に確保できる一方で、きめ細かな改良率(杭径)の制御によって必要以上の締固めをより一層(第1の施工事例の場合よりも更に)抑制でき、また、振動機の引抜き不能を確実に防ぐことができる。
また、図5(c)に示す従来工法の事後N値と、図7(d)に示す本発明による事後N値を比較することで明らかなとおり、本発明によれば、施工後に目標の地盤強度を確保できるのは勿論のこと、管理値を用いた締固め管理方法によって無駄な締固めをより一層抑制することができる。
【0091】
なお、図7(a)において中間の深度領域に例示するように、深度によっては、施工前の段階で事前N値が目標N値を満たしていることも想定される。そのような深度(事前N値が目標N値を満たしている深度区間)では、引抜き時に空洞部への材料の充填のみを行い、打戻しは行わない。これにより、図5(b)に示す如く改良径が固定されているサンドコンパクションパイル工法と比較して、無駄な改良が回避され、施工の更なる効率化を図ることができることができるだけでなく、振動機の引抜き不能や振動機の破損やケーシングの損耗、さらには地盤隆起や則本変位を抑制することができる。
【0092】
上述した実施形態では、打戻し完了の判断基準となる「管理値」を、目標の地盤強度に基づいて決定しているが、管理値の決定方法は必ずしもこれに限定されるものではない。
例えば、締固め装置の貫入の過程においても、原地盤の状態(硬軟)により振動機の電流値が変化する。具体的には、図3(a)に示すように緩い地盤での貫入時には、振動機3は拘束されず、そのため偏心モーターの電流値は上昇しないが、一方で、図3(b)に示すように密な地盤での貫入時には、振動機3が拘束され、そのため偏心モーターの電流値が上昇する。そこで、打戻し完了の判断基準となる「管理値」を、貫入時における偏心モーターの電流値と地盤強度に基づいて決定するようしてもよい。このように、貫入時に得られる偏心モーターの電流値を用いることにより、さらに対象地盤の状態や施工条件に応じた管理値を設定することが可能になる。
【0093】
(締固め管理装置)
次に、図12に基づいて、締固め管理方法で利用可能な締固め管理装置について説明する。図12は、締固め装置1と締固め管理装置2の電気的関係を示すブロック図である。
【0094】
締固め管理装置2は、図12に示すように、
・あらかじめ定めた電流値である管理値を記録するための管理値記録部21と、
・その管理値に基づいて締固め装置1の打戻し量を自動制御するための制御部23と、
を具備している。
【0095】
管理値記録部21は、メモリなどの情報記録媒体で構成され、前述した管理値に関するデータを記録している。管理値は、前述したとおり施工前にあらかじめ決定され、管理値記録部21に入力されている。
【0096】
制御部23はプロセッサで構成され、締固め装置1の振動機3が具備する電動の偏心モーター31からリアルタイムで送信される電流値と、管理値記録部21の管理値を比較し、その比較結果に基づいて締固め装置1の打戻し量を制御する。
【0097】
具体的には、電動の偏心モーター31からの電流値が管理値に至っていないと判断した場合には、締固め装置1の打戻しを継続させる。これは、図10のステップS19の判断Yesに相当する。
一方、該モーター31からの電流値が管理値に達したと判断した場合には、締固め装置1の打戻しを停止させる。これは、図10のステップS19の判断Noに相当する。
【0098】
このような締固め管理装置2を施工に用いることで、締固め装置1の打戻し量を自動で制御することが可能になり、また、必要以上の締固めを行う必要がなくなるため、更なる施工の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 締固め装置
2 締固め管理装置
3 振動機(バイブロフロット/振動体)
5 ケーシングパイプ
6 圧力タンク
7 ホッパー
13 空洞部
15 充填済み材料
21 管理値記録部
23 制御部
31 電動の偏心モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14