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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】杭頭接合部用治具
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018097730
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019203277
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】316001674
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 知子
(72)【発明者】
【氏名】前野 剛太
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 正孝
(72)【発明者】
【氏名】石川 一真
(72)【発明者】
【氏名】菅 一雅
(72)【発明者】
【氏名】本間 裕介
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-034458(JP,A)
【文献】特開2016-089329(JP,A)
【文献】特開2018-031206(JP,A)
【文献】特開2016-089539(JP,A)
【文献】特開2014-194121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部に接合部材を接合するための杭頭接合部用治具であって、
前記杭頭部の上端に掛けられる掛け部と、
前記接合部材を支持する支持部と、
前記支持部と前記掛け部とを連結する連結部と、
を具備することを特徴とする杭頭接合部用治具
【請求項2】
前記支持部または前記連結部に設けられ、前記掛け部と略同一方向に突出し、基礎杭の外面に接触する位置決め部を具備することを特徴とする請求項記載の杭頭接合部用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭の杭頭部に補強鉄筋を配筋するために用いられる接合部材を、基礎杭に接合する際に用いられる杭頭接合部用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎杭と基礎コンクリートとを一体化するためには、あらかじめ基礎杭の杭頭部に複数の補強鉄筋が接合される。この状態で、補強鉄筋と杭頭部の周囲に基礎コンクリートを打設することで、基礎杭と基礎コンクリートとが一体化されていた。
【0003】
このように、杭頭部に補強鉄筋を接合する際には、特殊な補強鉄筋を使用することなく高い補強強度を得るため、所定の接合部材を使用することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-34458
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6は、特許文献1で示された杭頭接合構造100を示す図である。基礎杭101は、基礎地盤103の地中深くまで打設される。基礎杭101は、例えば鋼管杭、SC杭(外殻鋼管付き高強度コンクリート杭)であり、杭頭部105が基礎地盤103の上方に突出する。
【0006】
杭頭部105の外周部には、周方向に所定の間隔で接合部材107が接合される。接合部材107は、鋼製であり、杭頭部105の外周面から径方向外側に突出するように基礎杭101の外周部に溶接で接合される。接合部材107は、補強鉄筋109との干渉を避けるため、上部には図示を省略したU字状の切欠き部が設けられ、下部には、図示を省略する雌ねじ部が形成される。
【0007】
接合部材107の補強鉄筋109の下方には雄ねじ部が形成され、補強鉄筋109の下部は接合部材107の雌ねじ部にねじ込まれる。補強鉄筋109は、接合部材107の下方において接合部材107と接合され、上部においては、U字状の切欠き部の内部に配置される。
【0008】
このようにすることで、基礎杭101の上方に、基礎杭101の軸方向と同一方向に向けて、複数の補強鉄筋109を配置することができる。この状態で、補強鉄筋109と杭頭部105の全体を埋めるように基礎コンクリートが打設される。補強鉄筋109の上方に向けた張力に対しては、接合部材107の下部の雌ねじ部が力を受けることができ、さらに、接合部材107の内部に充填されるコンクリートが接合部材107の上部の切欠き部近傍と接触して力を受けることができる。
【0009】
また、補強鉄筋109を基礎杭101に直接接合する場合と比較して、より長い溶接長を確保することができるため、補強鉄筋109が受けた力を効率よく基礎杭101に伝達することができる。このため、高い補強強度を得ることができる。
【0010】
また、補強鉄筋109は溶接されないため、溶接性の良好な特殊な材質を適用する必要がなく、安価に施工することができる。
【0011】
しかし、接合部材107は比較的重量のある部材であるため、接合部材107を所定の位置に所定の向きとなるように配置した状態で溶接を行う作業が困難であるという問題があった。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、杭頭部に補強鉄筋を配筋するために用いられる接合部材を、容易に杭頭部に接合することが可能な杭頭接合部用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明は、杭頭部に接合部材を接合するための杭頭接合部用治具であって、前記杭頭部の上端に掛けられる掛け部と、前記接合部材を支持する支持部と、前記支持部と前記掛け部とを連結する連結部と、を具備することを特徴とする杭頭接合部用治具である。
【0017】
前記支持部または前記連結部に設けられ、前記掛け部と略同一方向に突出し、基礎杭の外面に接触する位置決め部を具備してもよい。
【0019】
本発明によれば、杭頭部に杭頭接合部用治具を設置することで、容易に接合部材を杭頭部の所定の位置に配置することができる。
【0020】
特に、図5のように、上部にねじ21を設けて杭頭部に接触可能とすることで、杭頭接合部用治具の高さやや傾きの調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、杭頭部に補強鉄筋を配筋するために用いられる接合部材を、容易に杭頭部に接合することが可能な杭頭接合部用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】杭頭接合部用治具1を示す斜視図。
図2】杭頭接合部用治具1の使用状態を示す斜視図。
図3】杭頭接合部用治具1の使用状態を示す側面図。
図4】杭頭接合部用治具1aの使用状態を示す側面図。
図5】杭頭接合部用治具1bの使用状態を示す側面図。
図6】従来の杭頭接合構造100を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態にかかる杭頭接合部用治具について説明する。図1は、杭頭接合部用治具1を示す斜視図である。杭頭接合部用治具1は、主に、掛け部3、支持部5、位置決め部7、連結部9等から構成される。
【0024】
杭頭接合部用治具1は、例えば鋼材からなり、鋼棒や鋼板などで構成される。掛け部3は、杭頭部の上端に掛けられる部位である。支持部5は、接合部材を支持する部位である。掛け部3と支持部5とは連結部9を介して連結される。
【0025】
連結部9の下方には掛け部3と略同一方向にむけて突出する位置決め部7が設けられる。図示した例では、掛け部3、連結部9および位置決め部7が一体で形成され、掛け部3および位置決め部7は、連結部9に対して略直角に屈曲して形成される。また、掛け部3、連結部9および位置決め部7は所定の間隔でそれぞれ一対配置され、支持部5で接続される。
【0026】
なお、位置決め部7は、連結部9に設けられるのではなく、支持部5に設けられてもよい。また、支持部5は、連結部9で接合されてもよく、位置決め部7で接合されてもよい。また、各部は、それぞれ別体で形成されてそれぞれ接合されてもよい。
【0027】
図2は、杭頭接合部用治具1の使用状態を示す斜視図であり、図3は側面図である。接合部材15は鋼製であり、特許文献1に記載されたものを用いることができる。例えば、接合部材15は、杭頭部11の軸方向と平行方向に間隔を空けて互いに対向するように配置された上板部16aと下板部16bをそれぞれ有する。上板部16aには、杭頭部11の軸方向と平行方向に補強鉄筋が挿通する通路が形成される。すなわち、接合部材107は、補強鉄筋との干渉を避けるため、上板部16aにはU字状の切欠き部が設けられる。また、接合部材15の下板部16bには、雌ねじ部17が形成される。また、接合部材15は、杭頭部11の軸方向と平行方向に長さを有し杭頭部11に接合される接続板部16cを備える。接続板部16cは、上板部16aの杭頭部11側の端部と下板部16bの杭頭部11側の端部との間に形成される。
【0028】
杭頭接合部用治具1は、基礎杭13の杭頭部11の上部に掛けられる。基礎杭13は、例えば鋼管杭、SC杭(外殻鋼管付き高強度コンクリート杭)である。この際、位置決め部7の先端が基礎杭13の外周面と接触するように配置される。
【0029】
接合部材15は支持部5の上に配置される。この際、接合部材15が、杭頭部11の上方に突出しないように、連結部9の長さが設定される。また、支持部5に接合部材15を設置した際に、接合部材15の重心位置よりも、外側(基礎杭13の径方向の外方)に支持部5が配置されることで、接合部材15が外側に倒れることがなく、基礎杭13側に密着させた状態で支持することができる。
【0030】
また、接合部材15の下面に、支持部5と接触するような凹形状を形成してもよい。この場合、支持部5と位置決め部7との距離を、接合部材15の凹形状と背面までの距離と合わせることで、支持部5に接合部材15を配置した際に、接合部材15の背面を基礎杭13の外周面に接触させることができる。
【0031】
また、支持部5の長さを接合部材15の幅よりも長くしておくことで、接合部材15と杭頭接合部用治具1との干渉を避けることができ、接合部材15を容易に支持部5に設置することができる。
【0032】
この状態で、接合部材15の側部と基礎杭13の外周面とを溶接部19(図3参照)で溶接する。溶接部19は、接合部材15の略全長に渡って形成される。また、接合部材15の背面側の側端部に、基礎杭13との間に隙間を形成する開先形状を形成することで、容易に溶接を行うことができる。
【0033】
接合部材15と基礎杭13との接合が完了すると、杭頭接合部用治具1を取り外し、接合部材15に補強鉄筋を接合する。例えば、補強鉄筋の下部に設けられた雄ねじ部を雌ねじ部17にねじ込む。なお、杭頭接合部用治具1を取り付けた状態で、補強筋を接合してもよい。この場合でも、接合部材15に補強鉄筋を螺合した状態において、接合部材15を杭頭部11から取り外すことが可能である。以上の作業を、杭頭部11の周方向に所定の間隔で繰り返すことで、図6に示したのと同様の杭頭部における接合構造を得ることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、接合部材15を杭頭部11に容易に設置し、その状態で保持することができるため、接合部材15を基礎杭13の外周面に溶接する作業が容易である。また、位置決めが容易であるため、溶接作業中に位置ずれなどが生じることを抑制することができる。
【0035】
また、位置決め部7が形成されるため、杭頭接合部用治具1を基礎杭13の外周面に対して所定の距離に位置決めすることができる。このため、接合部材15を確実に基礎杭13の外周面に接触させて配置することができる。
【0036】
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、杭頭接合部用治具1aの利用状態を示す側面図である。杭頭接合部用治具1aは、杭頭接合部用治具1とほぼ同様の構成であるが、支持部5が板状である点で異なる。前述したように、杭頭接合部用治具1の各部は鋼棒や鋼板などいずれの形態であってもよいが、支持部5を板状とし、連結部9に対して略水平に設けることで、接合部材15の支持部5への設置がより容易となり、また、接合部材15をより安定して支持することができる。支持部5は、連結部9になんらかの形で固着されていればよい。
【0037】
なお、支持部5の先端には導入部23が設けられる。導入部23は、接合部材15を設置する際にガイド(切っ掛け)の役割を果たす。具体的には、接合部材15を導入部23に仮置きし、その後スライドさせることで、接合部材15を杭頭部11の所定の位置に配置することができる。
【0038】
この場合でも、支持部5で支持する部位は、接合部材15の重心よりも外側とすることで、接合部材15が外側に倒れることがない。
【0039】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、支持部5を板状とすることで、例えば支持部5と接合部材15とをより広い範囲で面接触させて支持することもできる。
【0040】
次に、第3の実施形態について説明する。図5は、杭頭接合部用治具1bの利用状態を示す側面図である。杭頭接合部用治具1bは、杭頭接合部用治具1とほぼ同様の構成であるが、掛け部3にねじ21が設けられる点で異なる。
【0041】
ねじ21は、掛け部3に対して略垂直に配置され、掛け部3と螺合する。例えば、掛け部3を板状として、掛け部3に雌ねじ部を形成することで、掛け部3にねじ21をねじ込むことができる。なお、一対の掛け部3のそれぞれにねじ21を配置することが望ましい。また、掛け部3に対してナットを接合してねじ21を螺合させてもよく、または、一対の掛け部3同士を板状の部材で連結し、この部位にねじ21を配置してもよい。いずれの場合でも、ねじ21は掛け部3に配置されているとする。
【0042】
ねじ21の先端は、杭頭部11と接触する。したがって、ねじ21のねじ込み量を調整することで、杭頭接合部用治具1bの高さを調整することができる。また、それぞれの掛け部3のねじ21を調整することで、杭頭接合部用治具1bの傾きを調整することもできる。
【0043】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ねじ21によって高さや傾きを微調整することができるため、例えば杭頭部11の上端に凹凸があるような場合でも、接合部材15をまっすぐに適切な位置に配置することができる。
【0044】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0045】
たとえば、各実施形態は互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0046】
1、1a、1b………杭頭接合部用治具
3………掛け部
5………支持部
7………位置決め部
9………連結部
11………杭頭部
13………基礎杭
15………接合部材
16a………上板部
16b………下板部
16c………接合板部
17………雌ねじ部
19………溶接部
21………ねじ
100………杭頭接合構造
101………基礎杭
103………基礎地盤
105………杭頭部
107………接合部材
109………補強鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6