(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】ひずみセンサ、および圧電定数測定方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20220728BHJP
G01L 25/00 20060101ALI20220728BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20220728BHJP
H01L 41/193 20060101ALI20220728BHJP
G01B 7/16 20060101ALI20220728BHJP
G01R 29/22 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
G01L1/16 B
G01L25/00 A
H01L41/113
H01L41/193
G01B7/16 Z
G01R29/22 Z
(21)【出願番号】P 2018128866
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-05-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)集会名 第2回[次世代]都市開発 EXPO 開催日 平成29年12月13日 (2)公開場所 オムロン株式会社本社 京都経済記者クラブ 大阪機械記者クラブ 公開日 平成30年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋上 智彦
(72)【発明者】
【氏名】森山 信宏
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118032(JP,A)
【文献】国際公開第88/005606(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/059934(WO,A1)
【文献】実開昭48-099181(JP,U)
【文献】国際公開第2018/008572(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
G01L 25/00
H01L 41/113
H01L 41/193
G01B 7/16
G01R 29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のベース板の一方の面に、フィルム状に形成されたセンサ素子を積層したひずみセンサであって、
前記センサ素子は、圧電フィルムと、この圧電フィルムの両面に積層された電極とを有し、
前記ベース板は、前記一方の面を、積層されている前記センサ素子が外側にはみ出さない大きさに形成したものであり、さらに、前記一方の面に平行である引っ張り方向における両端部に、前記センサ素子が積層されていないチャック部を有
し、
さらに、前記ベース板には、前記センサ素子の端子を覆う端子カバーが設けられ、
前記端子カバーの内部には、樹脂を充填している、ひずみセンサ。
【請求項2】
前記ベース板は、前記一方の面が矩形形状であり、また前記引っ張り方向が前記一方の面の長手方向である、請求項1に記載のひずみセンサ。
【請求項3】
前記ベース板は、その厚みが、前記センサ素子の厚みよりも大きい、請求項1、または2に記載のひずみセンサ。
【請求項4】
前記ベース板は、絶縁材料で形成されている、請求項1~3のいずれかに記載のひずみセンサ。
【請求項5】
前記引っ張り方向の一方の側から、前記チャック部、前記センサ素子、前記端子カバー、および前記チャック部が、この順番に並んでいる、請求項
1~4のいずれかに記載のひずみセンサ。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載のひずみセンサについて、前記センサ素子の前記圧電フィルムの厚さ方向に直交する方向の圧電定数d
31を測定する圧電定数測定方法であって、
前記ベース板の両端部に形成されている前記チャック部を保持し、前記ベース板を長手方向に引っ張る引張力の大きさを変化させながら、前記ひずみセンサの出力を計測する、圧電定数測定方法。
【請求項7】
フィルム状に形成されたセンサ素子が板状のベース板の一方の面に積層され、
前記センサ素子が、圧電フィルムと、この圧電フィルムの両面に積層された電極とを有し、
前記ベース板が、前記一方の面を、積層されている前記センサ素子が外側にはみ出さない大きさに形成したものであり、さらに、前記一方の面に平行である引っ張り方向における両端部に、前記センサ素子が積層されていないチャック部を有するひずみセンサについて、前記センサ素子の前記圧電フィルムの厚さ方向に直交する方向の圧電定数d
31
を測定する圧電定数測定方法であって、
前記ベース板の両端部に形成されている前記チャック部を保持し、前記ベース板を長手方向に引っ張る引張力の大きさを変化させながら、前記ひずみセンサの出力を計測する、圧電定数測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体に生じたひずみを計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体に生じたひずみを計測するセンサとして、フィルム状に形成した圧電フィルム(ピエゾフィルム)を用いたひずみセンサがあった。例えば、ひずみセンサで、橋梁やビル等の様々な種類の構造物に生じたひずみ量を計測し、その構造物の状態(損傷等にかかる状態)をモニタリング(診断)することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ひずみセンサは、圧電フィルムの両面に電極を形成したセンサ素子を用いた構成である。圧電フィルムに生じたひずみに応じた電圧が、センサ素子の電極間に生じる。
【0004】
なお、ひずみセンサは、上述した橋梁やビル等の構造物に限らず、産業機械等の構成要素(例えば、ロボットアーム、)に生じたひずみ量を計測することにも使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧電フィルムの厚さ方向に直交する方向(ここでは、延伸方向と言う。)の圧電定数d31を比較的簡単に測定できるひずみセンサがなかった。検出対象部材のひずみ量は、ひずみセンサの計測出力と、そのひずみセンサの特性である延伸方向の圧電定数d31とを用いて算出される。このため、サンプル抽出したセンサ素子について圧電定数d31を測定し、これらの測定結果に基づいて取得した値を、ひずみセンサの圧電定数d31にしていた。
【0007】
なお、延伸方向とは、圧電フィルムの厚さ方向に直交する方向である。また、検出対象部材とは、構造物や産業機械等に対して、ひずみセンサを取り付けた部分である。
【0008】
ひずみセンサの圧電定数d31は、当該ひずみセンサを構成するセンサ素子の個体差を有する値である。また、上述したように、圧電定数d31は、サンプル抽出したセンサ素子に対して測定した測定結果に基づくものであり、製品であるひずみセンサに対して測定した測定結果に基づくものでなかった。したがって、検出対象部材のひずみ量の算出において、使用している圧電定数d31と、ひずみセンサの実際の圧電定数d31とに差があり、計測精度を低下させていた。
【0009】
なお、製品であるひずみセンサに対する、分極方向の圧電定数d33の測定は、重り等を利用して、圧電フィルムの厚さ方向に荷重を作用させることにより、比較的簡単に測定できる。分極方向とは、圧電フィルムの厚さ方向である。
【0010】
この発明の目的は、圧電フィルムの延伸方向の圧電定数d31を比較的簡単に測定でき、検出対象部材のひずみ量の計測が精度よく行える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のひずみセンサは、上記目的を達するため、以下のように構成している。
【0012】
ひずみセンサは、板状のベース板の一方の面に、フィルム状に形成されたセンサ素子を積層した構成である。また、センサ素子は、圧電フィルムと、この圧電フィルムの両面に積層された電極とを有する。また、ベース板は、一方の面を、積層されているセンサ素子が外側にはみ出さない大きさに形成したものであり、さらに、一方の面に平行である引っ張り方向における両端部に、センサ素子が積層されていないチャック部を有する。
【0013】
この構成では、ベース板の両端部に設けたチャック部を保持し、ひずみセンサの長手方向に作用させる引張力の大きさを変化させながら、このひずみセンサの出力を計測することにより、圧電定数d31を測定することができる。すなわち、ひずみセンサ毎に、そのひずみセンサの圧電定数d31の測定が比較的簡単に行える。
【0014】
また、ひずみセンサの圧電定数d31を得ることができるので、このひずみセンサを利用した検出対象部材のひずみ量の計測が精度よく行える。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、圧電フィルムの延伸方向の圧電定数d31を比較的簡単に測定でき、検出対象部材のひずみ量の計測が精度よく行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(A)、(B)は、ひずみセンサの概略図である。
【
図4】ひずみセンサの圧電定数d
31を測定する測定器の概略図である。
【
図5】別の例にかかる、ひずみセンサの概略図である。
【
図6】別の例にかかる、ひずみセンサの概略図である。
【
図7】別の例にかかる、ひずみセンサの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態であるひずみセンサについて説明する。
【0018】
<1.構成例>
図1は、この例にかかるひずみセンサの概略図である。
図1(A)は、平面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示すA-A線部の断面図である。この例にかかるひずみセンサ1は、
図1(A)に示すように、ベース板10、センサ素子20、センサカバー30、端子カバー40、および出力ケーブル50を備えている。
【0019】
ベース板10は、絶縁材料で形成された板状部材である。ベース板10は、例えばポリカーボネート製の樹脂基板である。ベース板10の厚さは、1mm程度である。ベース板10は、センサ素子20を積層する積層面が矩形形状である。積層面は、ベース板10の厚さ方向(
図1(B)における上下方向)に直交する一方の面である。また、この例では、ベース板10の積層面の長辺に沿う方向(
図1(A)、(B)における左右方向)を長手方向と言い、短辺に沿う方向(
図1(A)における上下方向)を幅方向と言う。センサ素子20の厚さは、数十μmであり、ベース板10よりも薄い。
【0020】
なお、ベース板10の平面形状は、矩形形状に限らず、例えば角の形状を円弧状に形成した形状(角に丸みを持たせた形状)であってもよいし、角度が90度でない角を有する形状であってもよい。
【0021】
センサ素子20は、ベース板10の積層面に積層されている。センサ素子20は、接着剤、または両面テープ等を用いて、ベース板10の積層面に貼り合わせられている。センサ素子20は、ベース板10の外側にはみ出さない大きさである。言い換えれば、ベース板10は、積層面の大きさを、積層されるセンサ素子20が外側にはみ出さない大きさに形成している。すなわち、センサ素子20の幅方向の長さは、ベース板10の幅方向の長さ未満であり、且つセンサ素子20の長手方向の長さは、ベース板10の長手方向の長さ未満である。
【0022】
図2は、センサ素子の構成を示す概略図である。センサ素子20は、フィルム状に形成された、圧電効果を有するものである。センサ素子20は、保護膜23a、電極22a、圧電フィルム21、電極22b、保護膜23bが、この順に積層されたフィルム状の素子である。圧電フィルム21は、例えば圧電効果を有するプラスチックPVDF(Polyvinylidene fluoride)をフィルム状に形成したものである。電極22a、22bが、圧電フィルム21を挟むように積層されている。電極22a、22bは、例えば銀インクスクリーン印刷により形成したものである。また、保護膜23a、23bが、この順に積層された電極22a、圧電フィルム21、電極22bを挟むように積層されている。保護膜23a、23bは、薄いアクリルの皮膜であり、電極22a、22bの表面の酸化を抑える。保護膜23a、23bは、電極22a、22bの表面を覆う大きさである。
【0023】
また、電極22a、22bには、出力ライン24a、24bがそれぞれ接続されている。この出力ライン24a、24bは、電極22a、22bに接続されていない他端を端子カバー40の内側に形成されている出力端子(不図示)に接続している。
【0024】
センサ素子20は、圧電フィルム21にひずみ(変形)が生じると、そのひずみに応じた電圧を出力ライン24a、24bに出力する。このセンサ素子20は、すでに実用化されているものであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0025】
センサカバー30は、ベース板10に積層されているセンサ素子20を覆うように、貼付されている。このセンサカバー30は、防水気密用片面粘着テープ(所謂、全天テープ)である。センサカバー30は、センサ素子20の変形、変色、劣化等を抑制する。
【0026】
また、ひずみセンサ1は、ベース板10の長手方向におけるセンサ素子20の一方の端部側に端子カバー40を設けている。端子カバー40は、センサ素子20の出力ライン24a、24bが引き出されている側に設けられている。端子カバー40は、例えばポリカーボネート製の樹脂を原材料とする成型品である。端子カバー40は、外形が直方体形状であり、中空の空間を有する箱型形状である。端子カバー40の幅方向の長さは、ベース板10の幅方向の長さよりも短い。端子カバー40は、開口面をベース板10の積層面に対向する向きに取り付けられ、端子カバー40の内側の空間内に、出力ライン24a、24bが接続されている出力端子(不図示)が位置する。また、この出力端子には、出力ケーブル50が接続されている。この出力ケーブル50は、端子カバー40の側面に形成したケーブルの引き出し孔を通して、外部に引き出されている。端子カバー40は、接着剤等を使用してベース板10に取り付けられている。また、ベース板10に取り付けられている端子カバー40の内側の空間には、樹脂41が充填されている。
【0027】
ひずみセンサ1は、
図1に示すように、センサ素子20と、端子カバー40とをベース板10の長手方向に並べて取り付けている。また、ひずみセンサ1は、ベース板10の長手方向の両端部に、センサ素子20、および端子カバー40が設けられていない、チャック部10a、10bを有する形状である。チャック部10a、10bでは、ベース板10が露出している。
【0028】
<2.動作例>
この例にかかるひずみセンサ1は、
図3に示すように、接着剤を用いて、ひずみを検出する検出対象部材に貼り付けて使用する。ひずみセンサ1は、ベース板10のセンサ素子20、および端子カバー40が設けられていない面(ここでは、取付面と言う。)を検出対象部材に貼り付ける。取付面は、積層面に対向する面である。検出対象部材は、構造物である橋梁の鋼材や、構造物であるビルの壁面、ロボットのアーム等である。
【0029】
また、ベース板10は、ヤング率Yを、センサ素子20のヤング率Zよりも大きく、このひずみセンサ1を貼り付ける検出対象部材のヤング率Xよりも小さく(Z<Y<X)するのが好ましい。
【0030】
上述したように、ひずみセンサ1は、接着剤等によって、ひずみを検出する検出対象部材に貼り付けられる。具体的には、ひずみセンサ1は、ベース板10の取付面または検出対象部材の表面に接着剤を塗布し、検出対象部材に貼り付けている。また、ひずみセンサ1は、ベース板10によってある程度の硬さを有している。また、ひずみセンサ1を取り付けるために、検出対象部材に対して加工を施す必要もない。したがって、ひずみセンサ1は、既存の構造物に対しても、その取り付け作業が簡単に行える。
【0031】
なお、ひずみセンサ1は、両面テープで、ひずみを検出する検出対象部材に貼り付けてもよい。
【0032】
また、ひずみセンサ1は、センサカバー30によってセンサ素子20を覆っているので、センサ素子20における外部環境(紫外線や雨等)の影響が抑えられる。すなわち、ひずみセンサ1は、センサカバー30によってセンサ素子20に耐候性を持たせているので、ひずみセンサ1(センサ素子20)の劣化速度が抑えられる。
【0033】
また、ひずみセンサ1は、貼り付けた検出対象部材と、センサ素子20との間にベース板10が位置するので、検出対象部材から染み出てきた雨水等による、センサ素子20の劣化も抑えられる。
【0034】
また、ひずみセンサ1は、ベース板10のヤング率Yを、センサ素子20のヤング率Zよりも大きく、このひずみセンサ1を貼り付ける検出対象部材のヤング率Xよりも小さく(X>Y>Z)することにより、検出対象部材のひずみを精度よく検出することができる。このことを以下に説明する。
【0035】
ヤング率Eとひずみεとの関係は、
E=F/ε・・・(1)
である。Fは、応力である。
【0036】
ここで、ベース板10のヤング率Yと、このひずみセンサ1を貼り付けた検出対象部材のヤング率Xとの関係が、X<Yであると、
F1=Xε1、F2=Yε2・・・(2)
である。F1は、検出対象部材に作用した応力であり、F2は、ベース板10に作用した応力である。ε1は、検出対象部材のひずみであり、ε2は、ベース板10のひずみである。
【0037】
検出対象部材に作用した応力F1が、ベース板10に作用したとしても(すなわち、ベース板10に作用した応力F2≒検出対象部材に作用した応力F1であったとしても、)、ベース板10のヤング率Yが検出対象部材のヤング率Xよりも大きいので、ベース板10のひずみε2は、
ε2=ε1×(X/Y)・・・(3)
になる。ここで、X<Yであることから、0<(X/Y)<1である。したがって、ベース板10のひずみε2は、検出対象部材のひずみε1よりも小さくなる。
【0038】
センサ素子20のひずみε3は、ベース板10のひずみε2に応じた大きさになるので、検出対象部材のひずみε1に比べて小さくなる。このため、ひずみセンサ1は、ベース板10のヤング率Yと、このひずみセンサ1を貼り付けた検出対象部材のヤング率Xとの関係が、X<Yであると、検出対象部材のひずみε1の検出精度が低下する。
【0039】
したがって、ひずみセンサ1は、ベース板10のヤング率Yと、このひずみセンサ1を貼り付けた検出対象部材のヤング率Xとの関係をX>Yにすることにより、検出対象部材のひずみε1≒ベース板10のひずみε2になるので、検出対象部材のひずみε1の検出精度が向上する。
【0040】
なお、検出対象部材とベース板10との間には、ひずみセンサ1を検出対象部材に貼り付けるために使用した、接着剤や、両面テープが存在するので、この接着剤や、両面テープによって応力の吸収が生じる。したがって、検出対象部材に作用した応力F1と、ベース板10に作用した応力F2とは等しくない。
【0041】
さらに、ひずみセンサ1は、ベース板10のヤング率Yを、センサ素子20のヤング率Zよりも大きくすることにより、上述した検出対象部材とベース板10との関係と同様に、ベース板10のひずみε2≒センサ素子20のひずみε3、になる。すなわち、検出対象部材のひずみε1≒センサ素子20のひずみε3になる。
【0042】
したがって、各ヤング率の関係をX>Y>Zとすると、検出対象部材のひずみε1の検出精度を向上できる。
【0043】
なお、上述した検出対象部材のヤング率X、ベース板10のヤング率Y、およびセンサ素子20のヤング率Zの関係(Z<Y<X)は、検出対象部材のひずみε1の検出精度を向上させる上で好ましい関係であり、この関係が成立しないものが本願発明に含まれないという意味ではない。
【0044】
また、ベース板10は、絶縁材料で形成されているので、センサ素子20で発生した電荷の漏れ、およびセンサ素子20への外部からの電荷の流入が抑えられる。
【0045】
次に、この例にかかるひずみセンサ1について、圧電フィルム21の厚さ方向に直交する方向(ここでは、延伸方向と言う。)における圧電定数d
31の測定について説明する。
図1に示したように、この例にかかるひずみセンサ1は、長手方向の両端部に、センサ素子20、および端子カバー40が設けられておらず、ベース板10が露出しているチャック部10a、10bを有する。
【0046】
図4は、ひずみセンサの圧電定数d
31を測定する測定器の概略図である。
図4では、測定器100にセットしたひずみセンサ1を破線で示している。この測定器100は、上端保持部101と、下端保持部102と、スライド部材103とを有している。上端保持部101は、ひずみセンサ1の長手方向の一方の端部に位置するチャック部10aを挟持して保持する構造である。下端保持部102は、ひずみセンサ1の長手方向の他方の端部に位置するチャック部10bを挟持して保持する構造である。上端保持部101がひずみセンサ1の長手方向の一方の端部を保持する保持部と、下端保持部102がひずみセンサ1の長手方向の他方の端部を保持する保持部と、は対向している。
【0047】
スライド部材103は、図示していないスライド機構部によって、下端保持部102に対して接離する方向(
図4における上下方向)にスライド自在に取り付けられている。また、上端保持部101は、スライド部材103に取り付けられている。すなわち、上端保持部101は、スライド部材103のスライドにともなって、下端保持部102に対して接離する方向にスライドする。
【0048】
なお、ここでは、上端保持部101がチャック部10aを保持し、下端保持部102がチャック部10bを保持するとしているが、上端保持部101がチャック部10bを保持し、下端保持部102がチャック部10aを保持してもよい。
【0049】
図4に示すように、ひずみセンサ1を測定器100にセットし、ひずみセンサ1の長手方向に作用させる引張力の大きさを変化させながら、このひずみセンサ1の出力を計測することにより、圧電定数d
31を測定する。測定器100は、スライド部材103を下端保持部102から離れる方向にスライドすることにより、ひずみセンサ1の長手方向に作用させる引張力を大きくできる。したがって、ひずみセンサ1毎に、そのひずみセンサ1の圧電定数d
31の測定が比較的簡単に行える。これにより、検出対象部材のひずみ量の算出において、使用しているひずみセンサ1について測定した圧電定数d
31を用いることができる。このため、検出対象部材のひずみ量の計測精度を向上させることができる。
【0050】
また、ひずみセンサ1は、圧電定数d31の測定時に、測定器100によってセンサ素子20、および端子カバー40が保持されないので、破損することもない。
【0051】
また、上記の説明では、測定器100は、ひずみセンサ1を鉛直方向に引っ張る構成であるが、ひずみセンサ1を引っ張る方向は、ひずみセンサ1の長手方向であればよい。例えば、測定器100は、セットされたひずみセンサ1を水平方向に引っ張る構成であってもよい。
【0052】
<3.変形例>
図5は、別の例にかかるひずみセンサを示す平面図(
図1(A)に相当する図)である。この例にかかるひずみセンサ1は、チャック部10a、10bに中心線11a、11bをマーキングした点で、上記の例と異なっている。中心線11a、11bは、ひずみセンサ1の長手方向に延びる線であり、ひずみセンサ1の幅方向の略中心にマーキングしている。
【0053】
ひずみセンサ1を
図4に示した測定器100にセットするときに、この中心線11a、11bを基準線として利用することによって、ひずみセンサ1がまっすぐ立設するようにセットできる。
【0054】
図6は、また別の例にかかるひずみセンサを示す平面図(
図1(A)に相当する図)である。この例にかかるひずみセンサ1は、長手方向の両端部に位置するチャック部10a、10bの幅を他の部分(センサ素子20、および端子カバー40が取り付けられている部分)よりも細くした形状である。
【0055】
なお、チャック部10aと、チャック部10bとは、同じ幅である。
【0056】
図7は、さらに別の例にかかるひずみセンサを示す平面図(
図1(A)に相当する図)である。この例にかかるひずみセンサ1は、長手方向の両端部に位置するチャック部10a、10bの幅を他の部分(センサ素子20、および端子カバー40が取り付けられている部分)よりも太くした形状である。
【0057】
なお、チャック部10aと、チャック部10bとは、同じ幅である。
【0058】
この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0059】
さらに、この発明にかかる構成と上述した実施形態にかかる構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
板状のベース板(10)の一方の面に、フィルム状に形成されたセンサ素子(20)を積層したひずみセンサ(1)であって、
前記センサ素子(20)は、圧電フィルム(21)と、この圧電フィルム(21)の両面に積層された電極(22a、22b)とを有し、
前記ベース板(10)は、前記一方の面を、積層されている前記センサ素子(20)が外側にはみ出さない大きさに形成したものであり、さらに、前記一方の面に平行である引っ張り方向における両端部に、前記センサ素子(20)が積層されていないチャック部(10a、10b)を有する、ひずみセンサ(1)。
【符号の説明】
【0060】
1…ひずみセンサ
10…ベース板
10a、10b…チャック部
11a…中心線
20…センサ素子
21…圧電フィルム
22a、22b…電極
23a、23b…保護膜
24a、24b…出力ライン
30…センサカバー
40…端子カバー
41…樹脂
50…出力ケーブル
100…測定器
101…上端保持部
102…下端保持部
103…スライド部材