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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】プラズマ発生装置と情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
H05H1/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018162227
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020035685
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 慎二
(72)【発明者】
【氏名】東田 明洋
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-114678(JP,A)
【文献】特開平11-083907(JP,A)
【文献】特開平06-274778(JP,A)
【文献】特開2007-214254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電によりプラズマを発生させるプラズマヘッドと、
前記プラズマヘッドに供給する電力を生成する電源装置と、
前記電源装置から前記プラズマヘッドに前記電力を伝送する1対のケーブルと、
前記1対のケーブルをシールドする導電性のシールド部材と、
前記シールド部材に流れる電流を非接触で検出する検出装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記検出装置で検出した電流の電流値と所定値を比較した結果に応じて、電流異常の有無を判定する判定処理を実行するプラズマ発生装置であって、
オートチューニング期間終了時点から一定期間前までの前記電流値の平均である第1現在基準値を算出する第1算出処理と、
前記第1現在基準値に基づいて前記所定値を更新する更新処理と、を実行するプラズマ発生装置
【請求項2】
放電によりプラズマを発生させるプラズマヘッドと、
前記プラズマヘッドに供給する電力を生成する電源装置と、
前記電源装置から前記プラズマヘッドに前記電力を伝送する1対のケーブルと、
前記1対のケーブルをシールドする導電性のシールド部材と、
前記シールド部材に流れる電流を検出する検出装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記検出装置で検出した電流の電流値と所定値を比較した結果に応じて、電流異常の有無を判定する判定処理と、
オートチューニング期間終了時点から一定期間前までの前記電流値の平均である第1現在基準値を算出する第1算出処理と、
前記オートチューニング期間終了後の現時点から前記一定期間前までの前記電流値の移動平均である第2現在基準値を算出する第2算出処理と、
前記第1現在基準値と前記第2現在基準値との差分を用いて前記所定値を更新する更新処理と、を実行するプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記所定値は、前記オートチューニング期間中の前記電流値の最小値から第1許容値が減算された下限基準値であり、
前記制御装置は、前記判定処理において、前記検出装置が前記下限基準値以下の電流を検出したときに、前記電流異常が有ると判定する請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記所定値は、前記オートチューニング期間中の前記電流値の最大値から第2許容値が加算された上限基準値であり、
前記制御装置は、前記判定処理において、前記検出装置が前記上限基準値以上の電流を検出したときに、前記電流異常が有ると判定する請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
放電によりプラズマを発生させるプラズマヘッドと、前記プラズマヘッドに供給する電力を生成する電源装置と、前記電源装置から前記プラズマヘッドに前記電力を伝送する1対のケーブルと、前記1対のケーブルをシールドする導電性のシールド部材と、を備えるプラズマ発生装置における情報処理方法であって、
前記シールド部材に流れる電流を非接触で検出した電流値と所定値を比較した結果に応じて、電流異常の有無を判定する判定工程を備える情報処理方法であって、
オートチューニング期間終了後の現時点から一定期間前までの前記電流値の移動平均である第2現在基準値を算出する第2算出処理と、
前記第2現在基準値に基づいて前記所定値を更新する更新処理と、を実行する情報処理方法
【請求項6】
前記判定工程において前記電流異常が有ると判定された場合に前記電源装置による前記電力の供給を停止する停止工程を備える請求項5に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流検出が行われるプラズマ発生装置と情報処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電流検出が行われるプラズマ発生装置と情報処理方法に関し、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、RF電流をRF電極であるアノード電極とカソード電極とに印加してプラズマ放電を発生させるプラズマ処理装置の電源回路において、この電源回路にカレントコンバータを結合し、この出力側に電力量積算器とこの出力を表示する表示器を接続し、前記カレントコンバータの出力電圧に基づいて、前記RF電極へ供給される電力量を積算して表示するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平06-260298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プラズマ発生装置は、1対の電極に電圧が印加されて、1対の電極の間に放電が生じ、プラズマを発生する。1対の電極に電力を供給する1対のケーブルが破損し、1対のケーブルの間で、短絡もしくは放電が発生する場合がある。1対のケーブル間で短絡もしくは放電が発生した場合には、一方のケーブルから他方のケーブルに異常電流が流れる。特許文献1では、1対の電極を含むチャンバーと電源回路との間において、ケーブル間での短絡もしくは放電を検出することは困難であった。
【0006】
そこで、本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、プラズマヘッドと電源装置を接続するケーブルの短絡もしくは放電を検出することが可能なプラズマ発生装置と情報処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、放電によりプラズマを発生させるプラズマヘッドと、プラズマヘッドに供給する電力を生成する電源装置と、電源装置からプラズマヘッドに電力を伝送する1対のケーブルと、1対のケーブルをシールドする導電性のシールド部材と、シールド部材に流れる電流を非接触で検出する検出装置と、制御装置と、を備え、制御装置は、検出装置で検出した電流の電流値と所定値を比較した結果に応じて、電流異常の有無を判定する判定処理を実行するプラズマ発生装置であって、オートチューニング期間終了時点から一定期間前までの前記電流値の平均である第1現在基準値を算出する第1算出処理と、前記第1現在基準値に基づいて前記所定値を更新する更新処理と、を実行するプラズマ発生装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、プラズマ発生装置は、プラズマヘッドと電源装置を接続するケーブルの短絡もしくは放電を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】産業用ロボットに取り付けられたプラズマ発生装置の概略構成を示す図である。
図2】プラズマヘッドの斜視図である。
図3】プラズマヘッドの内部構造を示す断面図である。
図4】プラズマ発生装置の制御系統を示すブロック図である。
図5】電流検出器の電気的構成を示すブロック図である。
図6】情報処理方法の制御プログラムを示すフローチャートである。
図7】下限基準値および上限基準値の更新を説明するための図である。
図8】電流検出器の電気的構成の変更例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
全体構成
図1に示すように、プラズマ発生装置10は、プラズマヘッド11、制御装置110、電力ケーブル40、ガス配管80、および電流検出器120等を備える。プラズマ発生装置10は、制御装置110から電力ケーブル40を介してプラズマヘッド11に電力を伝送し、ガス配管80を介して処理ガスを供給し、プラズマヘッド11からプラズマを照射させる。プラズマヘッド11は、産業用ロボット100のロボットアーム101の先端に取り付けられている。電力ケーブル40およびガス配管80はロボットアーム101に沿って取り付けられている。ロボットアーム101は、2つのアーム部105,105を1方向に連結させた多関節ロボットである。産業用ロボット100は、ロボットアーム101を駆動して、ワーク台5が支持するワークWにプラズマを照射する作業を行う。後述するように、電力ケーブル40は、第1ケーブル41、第2ケーブル42、第1アースケーブル43、および第2アースケーブル44を有する(図5参照)。制御装置110は、第1処理ガス供給装置111および第2処理ガス供給装置112を有する。第1処理ガス供給装置111は、窒素等を含む不活性ガスを処理ガスとして供給する。第2処理ガス供給装置112は、ドライエア等を含む活性ガスを処理ガスとして供給する。また、制御装置110は、タッチパネル113を備える。タッチパネル113は、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示する。
【0011】
プラズマヘッドの構成
次に、プラズマヘッド11の構成について、図2,3を用いて説明する。図2に示すように、プラズマヘッド11は、本体ブロック20、1対の電極22(図3)、緩衝部材26、第1連結ブロック28、反応室ブロック30、および第2連結ブロック32を備えている。以下の説明において、方向は、図2,3に示す方向を用いる。
【0012】
本体ブロック20の上面には、上下方向に貫通する穴(不図示)が形成されており、貫通する穴に円筒状の上部ホルダ54,54が取り付けられている。上部ホルダ54,54には、棒状の導電部58,58が挿入されており、上部ホルダ54,54によって導電部58,58が固定的に保持されている。導電部58,58は、夫々、上述した第1ケーブル41および第2ケーブル42と電気的に接続されている。導電部58,58の下の先端部には、上述した1対の電極22が取り付けられている(図3)。1対の電極22は、概して棒状である。本体ブロック20には、本体ブロック20の上面のY軸方向に沿う中心線上の位置に、上下方向に貫通する第1ガス流路62の開口部が形成されている。また、本体ブロック20の左右の面には、2本の第2ガス流路66の開口部が形成されている。第1ガス流路62および第2ガス流路66は、夫々、異なるガス配管が物理的に接続されている(接続状態については不図示)。
【0013】
緩衝部材26は、概して板状をなし、シリコン樹脂製の素材により成形されている。第1連結ブロック28、反応室ブロック30、および第2連結ブロック32は、概して板厚形状をなし、セラミック製の素材により成形されている。
【0014】
次に、図3を用いて、プラズマヘッド11の内部構造について説明する。本体ブロック20の下面には、1対の円柱状の円柱凹部60が形成されている。また、本体ブロック20の内部には、第1ガス流路62と、2本の第2ガス流路66とが形成されている。第1
ガス流路62は1対の円柱凹部60の間に開口し、2本の第2ガス流路66は1対の円柱凹部60の内部に開口している。尚、第2ガス流路66は、本体ブロック20の左右面から、本体ブロック20の中央部に向かって、X軸方向に沿って所定距離、延びた後、下方向に向かって折れ曲がって形成されている。また、第1ガス流路62は、本体ブロック20の上面から、下に向かって、Z軸方向に沿って所定距離、延びた後、後方向に向かって折れ曲がり、さらに、下方向へ折れ曲がって形成されている。
【0015】
緩衝部材26には、円柱凹部60と連通する挿入部76が形成されている。第1連結ブロック28には、挿入部76と連通する挿入部64が形成されている。反応室ブロック30には、挿入部64と連通する挿入部63が形成されている。本体ブロック20の円柱凹部60、挿入部76、挿入部64、および挿入部63が連通しており、それらの内部の空間が反応室35である。第2連結ブロック32には、上下方向に貫通する複数の連通穴36が形成されている。複数の連通穴36は、Y方向(つまり、図3の紙面に対して垂直方向)における中央部において、X方向に並ぶように形成されている。
【0016】
プラズマ照射
次に、プラズマ発生装置10におけるプラズマ発生について説明する。第1ガス流路62に、窒素等の不活性ガスとドライエアの活性ガスとが混合されたガスが処理ガスとして供給される。第1ガス流路62に供給されたガスは、反応室35に供給される。また、第2ガス流路66に、窒素等の不活性ガスが処理ガスとして供給される。第2ガス流路66に供給された不活性ガスは、反応室35に供給される。また、1対の電極22に電圧が印加される。これにより、1対の電極22間に疑似アーク放電が生じ、電流が流れる。疑似アーク放電により、処理ガスがプラズマ化される。尚、疑似アーク放電とは、通常のアーク放電のように大電流が流れないように、プラズマ電源(つまり、後述する電源装置140)で電流を制限しながら放電させる方式のものである。反応室35で発生したプラズマは、第2連結ブロック32の複数の連通穴36を介して噴出され、ワークWにプラズマが照射される。
【0017】
制御系統
次にプラズマ発生装置10の制御系統について、図4を用いて、説明する。制御装置110は、上記した構成の他に、コントローラ130、1対の電極22に繋がれた電源装置140、および複数の駆動回路132を備えている。複数の駆動回路132は、第1処理ガス供給装置111、第2処理ガス供給装置112、およびタッチパネル113に接続されている。コントローラ130は、不図示のCPU、ROM、RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路132および電源装置140に接続されている。コントローラ130は、電源装置140、第1処理ガス供給装置111、第2処理ガス供給装置112、およびタッチパネル113等を制御する。
【0018】
電流検出器による異常電流の検知
図1に示したように、プラズマヘッド11の電極22と電源装置140とを繋ぎ、電極22に電力を供給する電力ケーブル40は、産業用ロボット100のロボットアーム101に取り付けられている。このため、ロボットアーム101の動きに応じて、電力ケーブル40には、屈曲、拠り、引っ張り等のストレスがかかり、損傷を受ける場合がある。そこで、プラズマ発生装置10は、電流検出器120を使用して、電力ケーブル40が損傷する等して生じる異常電流を検知する。次に詳述する。
【0019】
図5に示すように、制御装置110において、商用電源(不図示)から給電される電源装置140は、AC電源141を有する。電流検出器120は、カレントトランスCT、整流基板121、およびAD変換器122を有する。電力ケーブル40は、第1ケーブル41、第2ケーブル42、第1アースケーブル43、および第2アースケーブル44を有
する。第1ケーブル41、第2ケーブル42、第1アースケーブル43、および第2アースケーブル44の各々は、電線に絶縁体が被覆されているものである。第1ケーブル41、第2ケーブル42、および第1アースケーブル43は、メッシュ状の導電性のシールド部材45でシールドされている。AC電源141は、第1ケーブル41および第2ケーブル42を介して、プラズマヘッド11へ交流電力を供給する。詳しくは、第1ケーブル41および第2ケーブル42の各々は、プラズマヘッド11の電極22,22へ電力を供給する。プラズマヘッド11は、第1アースケーブル43によって、アースされている。第2アースケーブル44は、シールド部材45に接続されることによって、シールド部材45をアースしている。
【0020】
尚、以下では、第1アースケーブル43と第2アースケーブル44を区別しない場合には、アースケーブル43,44と表記する。
【0021】
電流検出器120は、カレントトランスCT、整流基板121、およびAD変換器122を有する。カレントトランスCTは、第1アースケーブル43と第2アースケーブル44に取り付けられている。カレントトランスCTは、第1アースケーブル43と第2アースケーブル44に流れる電流に応じた検出電圧を整流基板121へ入力する。整流基板121は、その入力された検出電圧を整流して、AD変換器122へ入力する。AD変換器122は、その入力された整流電圧をAD変換して、コントローラ130へ入力する。
【0022】
ここで、第1ケーブル41もしくは第2ケーブル42と、アースケーブル43,44との間で短絡もしくは放電が発生した場合、AC電源141からアースケーブル43,44を介して大地へ上限基準値以上の電流が流れる。このとき、カレントトランスCTの検出電圧は、上限基準値以上の電流に応じた電圧であり、整流基板121およびAD変換器122を経ることでデジタル信号となって、コントローラ130に入力される。また、第1ケーブル41と、第2ケーブル42との間で短絡もしくは放電が発生した場合、電磁誘導により、シールド部材45に電流が流れる。これにより、第2アースケーブル44に上限基準値以上の電流が流れる。このとき、カレントトランスCTの検出電圧は、上限基準値以上の電流に応じた電圧であり、整流基板121およびAD変換器122を経ることでデジタル信号となって、コントローラ130に入力される。このようにして、コントローラ130は、第1ケーブル41もしくは第2ケーブル42の地絡もしくは放電の時だけでなく、第1ケーブル41および第2ケーブル42間の短絡もしくは放電も検知することができる。
【0023】
これに対して、アースケーブル43,44が断線した場合等は、アースケーブル43,44に下限基準値より大きな電流が流れることはない。このとき、カレントトランスCTの検出電圧は、下限基準値以下の電流に応じた電圧であり、整流基板121およびAD変換器122を経ることでデジタル信号となって、コントローラ130に入力される。このようにして、コントローラ130は、アースケーブル43,44の断線等も検知することができる。
【0024】
以上より、コントローラ130には、デジタル信号が電流検出器120から入力される。コントローラ130は、上限基準値以上又は下限基準値以下の電流に対応するデジタル信号が電流検出器120から入力されると、電源装置140にAC電源141のプラズマヘッド11への給電を停止するように指示する。また、第1処理ガス供給装置111および第2処理ガス供給装置112の各駆動回路132に、ガスの供給を停止するように指示する。これにより、プラズマヘッド11の電極22,22への電力が停止され、処理ガスの供給が停止される。また、タッチパネル113の駆動回路132に、例えば、全域を赤色表示して、電流異常のメッセージを表示させる等の警告表示を指示する。
【0025】
上限基準値と下限基準値の更新
第1ケーブル41、第2ケーブル42、およびシールド部材45と、大地とを接続するアースケーブル43,44には、常に、僅かな電流が、電線を被覆する絶縁体の内部や表面等を通じて大地に流出している。以下、そのような僅かな電流を、アースケーブル43,44の漏洩電流と表記する。すなわち、アースケーブル43,44の漏洩電流は、短絡、放電、および断線等が発生していない通常状態において、アースケーブル43,44から大地に流出している。アースケーブル43,44の漏洩電流は、例えば、プラズマ発生装置10の設置環境、個体差、電力ケーブル40の長さ、ロボットアーム101の駆動等の使用条件に応じて、絶えず変化している。そのようなアースケーブル43,44の漏洩電流の変化は、(上述した上限基準値又は下限基準値を使用して行われる)短絡、放電、又は断線等の検知に影響を及ぼす。そこで、プラズマ発生装置10は、短絡、放電、および断線等を検知する際に、アースケーブル43の漏洩電流の変化に応じて、上限基準値および下限基準値を更新している。次に詳述する。
【0026】
図6は、上限基準値および下限基準値を更新するための情報処理方法200が示されたフローチャートである。図6のフローチャートで示された制御プログラムは、コントローラ130のROMに記憶されており、例えば、プラズマ発生装置10の設置後に初めてプラズマ照射が行われる場合において、オペレータがタッチパネル113で所定の操作を行うと、コントローラ130のCPUにより実行される。
【0027】
コントローラ130は、電流検出器120から入力されるデジタル信号を使用して、図6のフローチャートで示された各処理を行う。電流検出器120から入力されるデジタル信号は、カレントトランスCTの検出電圧に応じたデジタル信号であって、アースケーブル43,44から大地へ流れる電流を示している。そこで、以下の説明では、電流検出器120からコントローラ130に入力されるデジタル信号は、便宜上、アースケーブル43,44から大地へ流れる電流(の値)に変換されているものとし、電流検出器120の検出電流と表記する。更に、後述する図7では、電流検出器120の検出電流を、検出電流と表記する。
【0028】
コントローラ130は、情報処理方法200が実行されると、所定時間(例えば、1秒)毎に、電流検出器120の検出電流を取得する。電流検出器120の検出電流は、コントローラ130のRAMに記憶される。図7のグラフでは、電流検出器120の検出電流が太線で結ばれて表記されている。以下、図6のフローチャートで示された各処理を、図7を用いて説明する。
【0029】
情報処理方法200が実行されると、先ず、オートチューニング処理S10が行われる。この処理では、オートチューニング期間APにおいて、プラズマ発生装置10のオートチューニングが行われる。つまり、情報処理方法200は、プラズマ発生装置10のオートチューニングと同時に開始される。オートチューニング中には、ロボットアーム101の駆動が行われる。オートチューニング期間APは、時間的長さで言うと、電源装置140のAC電源141がプラズマヘッド11に電力供給を開始した時点(つまり、0秒)から、一定期間(例えば、100秒)が経過した時点t0に至るまでの間である。従って、例えば、オートチューニング期間APを100秒とし、所定時間を1秒とすると、100個の電流検出器120の検出電流がコントローラ130のRAMに記憶される。
【0030】
プラズマ発生装置10のオートチューニングが終了すると、第1算出処理S12が行われる。この処理では、第1現在基準値PV1、下限基準値LV、および上限基準値UVが算出される。第1現在基準値PV1は、オートチューニング期間APにおける電流検出器120の検出電流の平均値である。下限基準値LVは、オートチューニング期間APにおける電流検出器120の検出電流の最小値MNから第1許容値AV1を引いた値である。
これに対して、上限基準値UVは、オートチューニング期間APにおける電流検出器120の検出電流の最大値MXから第2許容値AV2を加えた値である。第2許容値AV2は、第1許容値AV1と同じ値であるが、異なる値であっても良い。
【0031】
尚、コントローラ130は、オートチューニング期間APの進行中において、電流検出器120の検出電流が取得される所定時間毎に、第1現在基準値PV1、下限基準値LV、および上限基準値UVを算出し直しても良い。そのような場合には、第1算出処理S12は、オートチューニング処理S10に含まれる。
【0032】
続いて、第2算出処理S14が行われる。この処理では、現時点の電流検出器120の検出電流が取得された後で、第2現在基準値PV2が算出される。第2現在基準値PV2は、(オートチューニング期間AP後の)現時点から一定期間前までにおける電流検出器120の検出電流の移動平均(値)である。一定期間の時間的長さは、オートチューニング期間APと同じである。
【0033】
続いて、更新処理S16が行われる。この処理では、下限基準値LVおよび上限基準値UVが更新される。そのために、先ず、第2現在基準値PV2から第1現在基準値PV1を引いた値が算出される。以下、そのように算出された値を差分値と表記する。下限基準値LVは、上記の差分値を下限基準値LVに加えることによって更新される。同様にして、上限基準値UVは、上記の差分値を上限基準値UVに加えることによって更新される。
【0034】
続いて、電流異常が有るか否かの判定処理S18が行われる。この処理では、第2算出処理S14で取得された現時点の電流検出器120の検出電流が下限基準値LV以下又は上限基準値UV以上のときに、電流異常が有ると判定される。電流異常が有ると判定されると(S18:YES)、電力供給停止処理S20が行われる。この処理では、電源装置140のAC電源141によるプラズマヘッド11への給電が停止される。また、第1処理ガス供給装置111および第2処理ガス供給装置112による処理ガスの供給が停止される。さらに、タッチパネル113において、上記の警告表示が行われる。その後、情報処理方法200が終了する。
【0035】
これに対して、第2算出処理S14で取得された現時点の電流検出器120の検出電流が下限基準値LVより大きく且つ上限基準値UVより小さいときは、電流異常が無いと判定される。電流異常が無いと判定されると(S18:NO)、第2算出処理S14、更新処理S16、および判定処理S18が再び実行される。そのような再実行が繰り返されると、電流検出器120の検出電流が取得される所定時間毎に、第2算出処理S14、更新処理S16、および判定処理S18が行われることによって、第2現在基準値PV2、下限基準値LV、および上限基準値UVが更新される。
【0036】
そのような更新の繰り返しの一例を詳述する。オートチューニング期間AP後の時点t1において、第2算出処理S14および更新処理S16が行われるとする。時点t1における第2現在基準値PV2(t1)は、時点t1から一定期間DP前までにおける電流検出器120の検出電流の移動平均(値)として算出される。一定期間DPの時間的長さは、上述したように、オートチューニング期間APと同じである。時点t1における下限基準値LV(t1)および上限基準値UV(t2)は、時点t1における第2現在基準値PV2(t1)から第1現在基準値PV1を引いた値(つまり、差分値)によって更新される。
【0037】
以上詳細に説明した通り、プラズマ発生装置10では、情報処理方法200が実行されることによって、プラズマヘッド11と電源装置140を接続する第1ケーブル41および第2ケーブル42の短絡もしくは放電を検出することが可能であり、更に、アースケー
ブル43,44の断線等を検出することが可能である。
【0038】
変更例
本開示は前記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、プラズマ発生装置10が処理ガスを加温するためのヒーターおよびヒーターを駆動する駆動回路を備える構成としても良い。この場合、電流検出器120の検出電流が下限基準値以下又は上限基準値以上になることに応じて、ヒーターを駆動する駆動回路に加温を停止する指示を出す構成としても良い。
【0039】
また、コントローラ130が、産業用ロボット100が備える制御装置と通信する構成としても良い。この場合、電流検出器120の検出電流が下限基準値以下又は上限基準値以上になることに応じて、産業用ロボット100が備える制御装置に停止信号を出力する構成としても良い。この構成によれば、電流検出器120の検出電流が下限基準値以下又は上限基準値以上になることに応じて、速やかに産業用ロボット100の作業を停止させることができる。
【0040】
また、制御装置110はタッチパネル113を備え、タッチパネル113に警告表示させると説明したが、これに限定されない。例えばLED等の表示灯を点灯させて、電流異常を報知する構成、スピーカから警告音を放音させて、電流異常を報知する構成等としても良い。
【0041】
また、電力ケーブル40は難燃性の材料で覆われることが望ましい。
【0042】
また、カレントトランスCTは、アースケーブル43,44に流れる電流に応じた検出電圧を整流基板121へ入力すると説明したが、図8に示すように、シールド部材45に接続された第2アースケーブル44に流れる電流(つまり、シールド部材45から大地に流れる電流)のみに応じた検出電圧を整流基板121へ入力しても良い。
【0043】
また、情報処理方法200において、一定期間DPは、オートチューニング期間APと時間的長さが同じであると説明したが、短くても良い。但し、そのような場合には、第1算出処理S12では、オートチューニング期間APの終了時点から一定期間DP前までにおける電流検出器120の検出電流の平均値が、第1現在基準値PV1として算出される。
【0044】
また、情報処理方法200の判定処理S18では、下限基準値LVおよび上限基準値UVを使用して電流異常が有るか否かの判定が行われているが、下限基準値LV又は上限基準値UVを使用して電流異常が有るか否かの判定が行われても良い。
【0045】
ちなみに、本実施形態において、第1ケーブル41および第2ケーブル42は、1対のケーブルの一例である。電流検出器120は、検出装置の一例である。判定処理S18は、判定工程の一例である。電力供給停止処理S20は、停止工程の一例である。下限基準値LVおよび上限基準値UVは、所定値の一例である。
【符号の説明】
【0046】
10 プラズマ発生装置
11 プラズマヘッド
41 第1ケーブル
42 第2ケーブル
45 シールド部材
110 制御装置
120 電流検出器
140 電源装置
200 情報処理方法
AV1 第1許容値
AV2 第2許容値
AP オートチューニング期間
DP 一定期間
LV 下限基準値
MN 最小値
MX 最大値
PV1 第1現在基準値
PV2 第2現在基準値
S12 第1算出処理
S14 第2算出処理
S16 更新処理
S18 判定処理
S20 電力供給停止処理
UV 上限基準値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8