(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】複合ケーブルおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20220728BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B7/00 301
H01B7/18 C
H01B7/18 H
(21)【出願番号】P 2018175476
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】田口 朋孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正宣
(72)【発明者】
【氏名】リ リッキー
(72)【発明者】
【氏名】リウ ペン
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135153(JP,A)
【文献】特開2018-006181(JP,A)
【文献】特開2014-232731(JP,A)
【文献】実開平05-023336(JP,U)
【文献】特開2017-131054(JP,A)
【文献】特開2017-076515(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0277087(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体線の周囲を絶縁体で被覆したブレーキ線を有し、車輪の回転を抑える制動機構に接続する電気ブレーキ用ケーブルと、
導体線の周囲を絶縁体で被覆した複数の信号線および前記複数の信号線を被覆した信号線ジャケットを有し、前記車輪の回転速度計測に用いる車輪速センサに接続する車輪速センサ用ケーブルと、
前記電気ブレーキ用ケーブルと前記車輪速センサ用ケーブルとを撚った撚り線に巻かれた押さえ巻紙と、
前記押さえ巻紙で巻かれた撚り線を被覆するアウタージャケットと、を備え、
少なくとも前記車輪速センサ用ケーブルにおける前記信号線ジャケットの外周に潤滑剤が付された複合ケーブル。
【請求項2】
前記信号線ジャケットと前記アウタージャケットとは、硬さが異なるポリウレタンを材料とする請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記アウタージャケットの方が、前記信号線ジャケットよりも軟らかい請求項2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記電気ブレーキ用ケーブルと前記車輪速センサ用ケーブルとにおける撚り方向と、前記撚り線に巻かれた前記押さえ巻紙における巻き方向とが同じ方向を成している請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記電気ブレーキ用ケーブルおよび前記車輪速センサ用ケーブルとともに、前記押さえ巻紙に巻かれ、前記車輪速センサ用ケーブルと前記電気ブレーキ用ケーブルが有する前記ブレーキ線との谷間に配置された別ケーブルをさらに備えた請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記別ケーブルは、前記車輪の振動を減衰させるダンパと接続して、前記ダンパに信号を送る信号線を有するアクティブダンパ用ケーブルである請求項5に記載の複合ケーブル。
【請求項7】
請求項1~6いずれか一項に記載の複合ケーブルを備えたワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用の複合ケーブルおよびワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、車両のABS(Anti-lock Brake System)を機能させるため、車両には、車輪の回転速度計測に用いる車輪速センサが設置される。車輪速センサのセンサ部(センサヘッド)は、車輪の近傍に設置される。センサ部と車両が有する制御装置との間は、車輪速センサ用ケーブルにより接続される。
【0003】
また、パーキングブレーキを電動化した電動パーキングブレーキ(EPB:Electric Parking Brake)を含む電気ブレーキが設置される車両がある。電気ブレーキにおいては、制御装置が車輪に設置されたブレーキキャリパーを駆動させ、ブレーキをかける。ブレーキキャリパーと制御装置との間は、電気ブレーキ用ケーブルにより接続される。
【0004】
車輪速センサ用ケーブルおよび電気ブレーキ用ケーブルは、一方の端部が制御装置に接続され、他方の端部が車輪または車輪近傍にある機器に接続されるため、位置関係が近くなる。このように、近い位置において接続される端部を有するケーブルについては、配線スペースを少なくする、配線作業を容易にするなどの観点から、ケーブル同士を一体化したいという要求がある。そこで、複数のケーブルを一体化した複合ケーブルが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数のケーブルを束ねて複合ケーブルにする際、複数のケーブルを撚り、撚ったケーブルの外側に、紙などを巻いてケーブルの位置関係を安定させ、アウタージャケットを被覆する。ここで、アウタージャケットを被覆する際の温度によっては、架橋処理などを行っていない被覆を有するケーブルの表面が軟化し、紙などが付着する。アウタージャケットを被覆した後に、端部にコネクタを取り付けるために、ケーブルの被覆を剥いで除去する工程があるが、紙などが付着していると、被覆を除去する工程を行うのに手間がかかる。
【0007】
この発明は、上述した問題を解決するため、ケーブルに紙などが付着しないように構成する複合ケーブルなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る複合ケーブルは、導体線の周囲を絶縁体で被覆したブレーキ線を有し、車輪の回転を抑える制動機構に接続する電気ブレーキ用ケーブルと、導体線の周囲を絶縁体で被覆した複数の信号線および複数の信号線を被覆した信号線ジャケットを有し、車輪の回転速度計測に用いる車輪速センサに接続する車輪速センサ用ケーブルと、電気ブレーキ用ケーブルと車輪速センサ用ケーブルとを撚った撚り線に巻かれた押さえ巻紙と、押さえ巻紙で巻かれた撚り線を被覆するアウタージャケットとを備え、少なくとも車輪速センサ用ケーブルにおける信号線ジャケットの外周に潤滑剤が付されたものである。
【0009】
また、この発明に係る複合ケーブルは、信号線ジャケットとアウタージャケットとは、硬さが異なるポリウレタンを材料とするものである。
【0010】
さらに、この発明に係る複合ケーブルは、電気ブレーキ用ケーブルと車輪速センサ用ケーブルとにおける撚り方向と、撚り線に巻かれた押さえ巻紙における巻き方向とが同じ方向を成している。
【0011】
そして、この発明に係るワイヤハーネスは、上記の複合ケーブルを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、車輪速センサ用ケーブルの外周に、潤滑剤が付されているので、車輪速センサ用ケーブルに、押さえ巻紙が付着することを防止することができる。このため、車輪速センサ用ケーブルに被覆された信号線ジャケットの除去を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るワイヤハーネス100を示す図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係る複合ケーブル10内部の構成について示す図である。
【
図3】この発明の実施の形態2に係る複合ケーブル10における撚り線の撚り方向と押さえ巻紙40の巻き方向との関係を示す図である。
【
図4】この発明の実施の形態3に係る複合ケーブル10内部の構成について示す図である。
【
図5】この発明の実施の形態4に係る複合ケーブル10内部の構成について示す図である。
【
図6】この発明の実施の形態5に係る複合ケーブル10内部の構成について示す図である。
【
図7】この発明の実施の形態5に係るワイヤハーネス100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。また、温度などの高低などについては、特に絶対的な値との関係で高低が定まっているものではなく、装置などにおける状態、動作などにおいて相対的に定まるものとする。そして、図面では、機器、素子などの各構成要素の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態1に係るワイヤハーネス100を示す図である。
図1に示すように、ワイヤハーネス100は、複合ケーブル10を有する。複合ケーブル10は、電気ブレーキ用ケーブル20と車輪速センサ用ケーブル30とを、後述するように、
図2などで示す押さえ巻紙40で巻き、共通のアウタージャケット50で被覆して一体化した、長さが約50cm~1mのケーブルである。ただし、車両サイズに応じて、ケーブル長さは適時変更することが可能である。複合ケーブル10には、複合ケーブル10を車体に取り付ける固定金具を固定するグロメット80が取り付けられる。
【0016】
複合ケーブル10の両端部は、アウタージャケット50が被覆されておらず、車輪速センサ用ケーブル30と電気ブレーキ用ケーブル20の2本のブレーキ線21が露出して分岐されている。電気ブレーキ用ケーブル20の一方の端部には、制動機構300に接続されるコネクタ61が設けられる。また、電気ブレーキ用ケーブル20の他方の端部には、第1制御装置201に接続されるコネクタ62が設けられる。特に限定するものではないが、露出した電気ブレーキ用ケーブル20のブレーキ線21を保護するため、ブレーキ線21をチューブなどで覆うようにしてもよい。
【0017】
また、車輪速センサ用ケーブル30の一端に、車輪の回転速度計測に用いる車輪速センサ400に接続されるコネクタ63が設けられる。ここでは、車輪速センサ用ケーブル30と車輪速センサ400とを、コネクタ63を介して接続しているが、直接接続してもよい。また、車輪速センサ用ケーブル30の他端には、第2制御装置202に接続されるコネクタ64が設けられる。
【0018】
電気ブレーキ用ケーブル20と車輪速センサ用ケーブル30とを複合ケーブル10で束ね、コネクタ61~コネクタ64などを取り付けてワイヤハーネス100とすることで、各種ケーブルの取り付け改善、省スペース化などをはかる。
【0019】
図2は、この発明の実施の形態1に係る複合ケーブル10内部の構成について示す図である。
図2は、
図1において示したA-A線での断面における図である。電気ブレーキ用ケーブル20は、2本のブレーキ線21を有する。電気ブレーキ用ケーブル20は、ワイヤハーネス100を有する車両を停止させる際、第1制御装置201から制動機構300を駆動させる信号を送る線である。ブレーキなどの制動機構300は、信号に基づいて駆動し、車輪の回転を抑え、車両を停止または減速させる。ここで、実施の形態1における制動機構300は、車両の停車後に、運転者などから指示されて、駆動する電動パーキングブレーキ(EPB)機構であるものとして説明するが、特に限定するものではない。たとえば、制動機構300が、電気機械式ブレーキ(EMB:Electro-Mechanical Brake)機構であってもよい。
【0020】
ブレーキ線21は、導体線21aの周囲を絶縁体21bで被覆して構成される。導体線21aは、たとえば、銅線または銅合金線である。絶縁体21bは、絶縁性や耐熱性を確保するため、たとえば、XLPE(架橋ポリエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)などを材料とする。
【0021】
また、車輪速センサ用ケーブル30は、2本の信号線31を有するケーブルである。信号線31は、車輪速センサ400と第2制御装置202との間で信号を送る線である。車輪速センサ用ケーブル30は、信号線31を保護する信号線ジャケットとなるホイールスピードセンサWSSジャケット32(以下、WSSジャケット32という)を有する。信号線31は、導体線31aの周囲を絶縁体31bで被覆して構成される。導体線31aは、導体線21aと同様に、たとえば、銅線または銅合金線である。また、絶縁体31bは、絶縁体21bと同様に、たとえば、XLPEなどからなる。そして、実施の形態1では、WSSジャケット32は、熱可塑性樹脂を材料とする。ここでは、WSSジャケット32は、熱可塑性を有するポリウレタンを材料とするものとして説明する。ポリウレタンは、軟らかく、屈曲させやすいという特性を有する。このため、WSSジャケット32がポリウレタン製であることは、車輪近くで頻繁に振動するワイヤハーネス100に都合がよい。また、後述するように、アウタージャケット50の被覆に係る温度は、比較的低い温度となる。そこで、実施の形態1の複合ケーブル10においては、WSSジャケット32に架橋処理は行わず、柔軟性を確保する。
【0022】
ここで、実施の形態1の車輪速センサ用ケーブル30は、WSSジャケット32の外周表面に、潤滑剤となるタルクパウダー33が付されている。タルクパウダー33は、滑石を粉末状にしたものである。タルクパウダー33は、潤滑剤となり、ブレーキ線21とWSSジャケット32との間の摩擦を低減し、屈曲時において、ケーブルにかかるストレスを低減して、耐屈曲性を向上させることができる。また、特に、タルクパウダー33は、アウタージャケット50を被覆する際に、WSSジャケット32が晒される温度よりも融点が高い。このため、タルクパウダー33は、WSSジャケット32と押さえ巻紙40との接触を阻害するとともに、WSSジャケット32表面の軟化および溶融を防ぐことで、WSSジャケット32に押さえ巻紙40が付着しないように保護することができる。タルクパウダー33は、電気ブレーキ用ケーブル20の2本のブレーキ線21と車輪速センサ用ケーブル30とを撚る工程よりも前の段階で、車輪速センサ用ケーブル30にまぶされて付される。ここで、実施の形態1の複合ケーブル10においては、潤滑剤としてタルクパウダー33を付しているが、これに限定するものではない。WSSジャケット32に押さえ巻紙40が付着しないように保護するものであれば、潤滑剤となる他の材料を用いることができる。また、実施の形態1の複合ケーブル10においては、車輪速センサ用ケーブル30のみにタルクパウダー33を付するが、少なくとも車輪速センサ用ケーブル30に付していれば、これに限定しない。たとえば、電気ブレーキ用ケーブル20の2本のブレーキ線21にも、タルクパウダー33を付してもよい。実施の形態1では、車輪速センサ用ケーブル30と電気ブレーキ用ケーブル20の2本のブレーキ線21とは、接触して設けられている。
【0023】
押さえ巻紙40は、電気ブレーキ用ケーブル20の2本のブレーキ線21と車輪速センサ用ケーブル30とを撚ってできる撚り線(以下、単に撚り線とする)に、螺旋状に巻かれる。また、押さえ巻紙40は、撚り線に対してアウタージャケット50を被覆するにあたり、撚り線の外周を覆い、電気ブレーキ用ケーブル20における2本のブレーキ線21と車輪速センサ用ケーブル30との位置関係を安定させる。そして、撚り線に対してアウタージャケット50を被覆する際、撚り線を保護する。ここで、押さえ巻紙40の紙の種類については、特に限定しない。また、紙を材料として撚り線を巻くようにしたが、これに限定しない。たとえば、不織布などを材料として撚り線を巻くようにしてもよい。
【0024】
実施の形態1のワイヤハーネス100における複合ケーブル10では、アウタージャケット50は、WSSジャケット32と同様に、熱可塑性を有するポリウレタンなどの熱可塑性樹脂を材料とする。ここで、実施の形態1におけるアウタージャケット50とWSSジャケット32とは、熱可塑性樹脂を材料とするが、それぞれの樹脂の硬さが異なるようにする。実施の形態1の複合ケーブル10では、アウタージャケット50の方が、WSSジャケット32よりも軟らかい。前述したように、ポリウレタンは、屈曲させやすいという特性を有する。このため、複合ケーブル10において、外側で被覆されるアウタージャケット50の方が軟らかい。アウタージャケット50が軟らかい方が、耐衝撃性が高く、地面からから飛んできた小石が当たることによる衝撃を吸収し、内部のケーブルを保護することができる。なお、ポリウレタンは、たとえば、リン酸エステルのような可塑剤の配合量を変えることで、硬さを調整することができる。また、アウタージャケット50に使用される材料のショアA硬度は80~90、WSSジャケット32に使用される材料のショアA硬度は80~95の範囲で選択され、かつ、それぞれの硬度範囲において、アウタージャケット50の材料のショアA硬度がWSSジャケット32の材料のショアA硬度より、5~10程度低い硬度であることが好ましい。
【0025】
撚り線にアウタージャケット50を被覆する際、WSSジャケット32の表面は高い温度に晒され、軟化などする。そこで、WSSジャケット32の表面にタルクパウダー33をまぶすことで、WSSジャケット32に押さえ巻紙40が付着することを防止する。
【0026】
以上のように、実施の形態1のワイヤハーネス100によれば、電気ブレーキ用ケーブル20と車輪速センサ用ケーブル30とをアウタージャケット50で被覆した複合ケーブル10とする。このため、電気ブレーキ用ケーブル20と車輪速センサ用ケーブル30とが一体化されるので、車両の配線スペースを有効に利用でき、配線作業を容易にすることができる。
【0027】
そして、実施の形態1のワイヤハーネス100によれば、少なくとも、車輪速センサ用ケーブル30(WSSジャケット32)の表面に、タルクパウダー33を付するようにした。このため、押さえ巻紙40が、車輪速センサ用ケーブル30のWSSジャケット32に付着しないようにすることができる。したがって、車輪速センサ用ケーブル30に被覆されたWSSジャケット32の除去を容易に行うことができる。
【0028】
また、実施の形態1では、WSSジャケット32とアウタージャケット50との硬さが異なる。このため、アウタージャケット50の内側にあるWSSジャケット32と外側のアウタージャケット50とのそれぞれの役割に合わせた硬さで、複合ケーブル10を構成することができる。また、アウタージャケット50の材料は、WSSジャケット32の材料よりも融点が低い。このため、WSSジャケット32に架橋処理を行わなくても、アウタージャケット50を被覆することができる。
【0029】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係る複合ケーブル10における撚り線の撚り方向と押さえ巻紙40の巻き方向との関係を示す図である。実施の形態1では、特に説明しなかったが、実施の形態2の複合ケーブル10では、撚り線の撚り方向と押さえ巻紙40の巻き方向とが同じ方向を成している。
図3では、撚り線の撚り方向および押さえ巻紙40の巻き方向は、時計回りの方向となっている。ここで、撚り線を撚るピッチと押さえ巻紙40を巻くピッチとでは、押さえ巻紙40を巻くピッチの方が狭い。押さえ巻紙40を巻くピッチの方が狭い方が、電気ブレーキ用ケーブル20における2本のブレーキ線21と車輪速センサ用ケーブル30との位置関係を、より安定させることができる。
【0030】
実施の形態2の複合ケーブル10によれば、撚り線の撚り方向と押さえ巻紙40の巻き方向とを同じ方向にすることで、押さえ巻紙40を緩みなく、撚り線に巻くことができる。
【0031】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3に係る複合ケーブル10内部の構成について示す図である。
図4の複合ケーブル10は、車輪速センサ用ケーブル30において、2本の信号線31とWSSジャケット32との間に、金属シールド34を有する。金属シールド34は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を材料とする。2本の信号線31を金属シールド34で覆うことで、車輪速センサ用ケーブル30の外部ノイズによる影響を抑えることができる。
【0032】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4に係る複合ケーブル10内部の構成について示す図である。
図5において、同じ符号を付しているものについては、実施の形態1~実施の形態3で説明したことと同様の役割を果たすものである。
【0033】
上述した実施の形態1~実施の形態3のワイヤハーネス100における複合ケーブル10は、電気ブレーキ用ケーブル20と車輪速センサ用ケーブル30とを一体化した4芯のケーブルであった。実施の形態4のワイヤハーネス100における複合ケーブル10は、さらに、アクティブダンパシステムに用いるアクティブダンパ用ケーブル90を有するものである。アクティブダンパシステムは、車輪のダンパの減衰制御を行う。このため、アクティブダンパ用ケーブル90は、ワイヤハーネス100が装着された車両のダンパ(図示せず)と接続し、制御装置(図示せず)からの信号をダンパに送る。
【0034】
図5に示すように、実施の形態4に係る複合ケーブル10におけるアクティブダンパ用ケーブル90は、2つの信号線91から成る。信号線91における導体線91aおよび絶縁体91bは、車輪速センサ用ケーブル30の信号線31における導体線31aおよび絶縁体31bと同様である。ここで、図示しないが、アクティブダンパ用ケーブル90は、2つの信号線91の撚り線構造である。そして、2つの信号線91を撚ったアクティブダンパ用ケーブル90を、さらに、電気ブレーキ用ケーブル20の2本のブレーキ線21と車輪速センサ用ケーブル30とともに撚って、撚り線とする。本実施の形態では、アクティブダンパ用ケーブル90は、ジャケットを持たない。これにより、ケーブル太径化の影響を低減することができる。また、本実施の形態では、車輪速センサ用ケーブル30とブレーキ線21との谷間に、アクティブダンパ用ケーブル90を配置する。車輪速センサ用ケーブル30は、ブレーキ線21よりも太い。このため、実施の形態4の複合ケーブル10のように、車輪速センサ用ケーブル30とブレーキ線21との谷間にアクティブダンパ用ケーブル90を配置することで、2つのブレーキ線21間の谷間に配置したときよりも据わりがよくなる。したがって、実施の形態4の複合ケーブル10は、各ケーブルとアクティブダンパ用ケーブル90との位置関係を、より安定させることができる。また、実施の形態4の複合ケーブル10において、車輪速センサ用ケーブル30とブレーキ線21との谷間にできるスペースは、ブレーキ線21とブレーキ線21との谷間にできるスペースよりも広い。このため、車輪速センサ用ケーブル30とブレーキ線21との谷間にアクティブダンパ用ケーブル90を配置することで、ケーブル太径化の影響を低減することができる。
【0035】
ここで、実施の形態4において、電気ブレーキ用ケーブル20および車輪速センサ用ケーブル30と一体化するケーブルの用途は、アクティブダンパ用であるものとしたが、本発明は、これに限定するものではない。たとえば、ブレーキパッド摩耗検出用センサ(BPWS:Break pad wear sensor)と接続するケーブルなど、他の用途に用いる別ケーブル、信号線などにも適用可能である。
【0036】
実施形態5.
図6は、この発明の実施の形態5に係る複合ケーブル10内部の構成について示す図である。
図6において、同じ符号を付しているものについては、実施の形態1~実施の形態3で説明したことと同様の役割を果たすものである。
【0037】
上述した実施の形態1~実施の形態3のワイヤハーネス100における複合ケーブル10は、電気ブレーキ用ケーブル20とWSS用ケーブル30とを一体化した4芯のケーブルであった。実施の形態5のワイヤハーネス100における複合ケーブル10は、車輪速センサ用ケーブル30が、4本の信号線31を有するものである。
【0038】
図7は、この発明の実施の形態5に係るワイヤハーネス100を示す図である。4本の信号線31を有することで、ワイヤハーネス100の複合ケーブル10は、たとえば、2本の信号線31の組を2組有することができる。このため、IC410を備える2つの車輪速センサ401および車輪速センサ402と接続することができ、車両制御システムに冗長性を持たせることができる。ここで、信号線31はコネクタ63を介して車輪速センサ401および車輪速センサ402と接続するほか、直接に401および車輪速センサ402と接続してもよい。また、
図8では、2つの車輪速センサ401および車輪速センサ402と接続しているが、2つのIC410を備える1つの車輪速センサ400と接続してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 複合ケーブル
20 電気ブレーキ用ケーブル
21 ブレーキ線
21a 導体線
21b 絶縁体
30 車輪速センサ用ケーブル
31 信号線
31a 導体線
31b 絶縁体
32 WSSジャケット
33 タルクパウダー
34 金属シールド
40 押さえ巻紙
50 アウタージャケット
61,62,63,64 コネクタ
80 グロメット
90 アクティブダンパ用ケーブル
91 信号線
91a 導体線
91b 絶縁体
100 ワイヤハーネス
201 第1制御装置
202 第2制御装置
300 制動機構
400,401,402 車輪速センサ
410 IC