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特許7112923トンネル防水施工方法及びウォーターバリア並びに電磁誘導ヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】トンネル防水施工方法及びウォーターバリア並びに電磁誘導ヘッド
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
E21D11/38 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018177286
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020045740
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】真中 明浩
(72)【発明者】
【氏名】村田 知哉
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特許第3241344(JP,B2)
【文献】実開平06-071599(JP,U)
【文献】特開平05-059898(JP,A)
【文献】特開2004-143666(JP,A)
【文献】特開2017-089120(JP,A)
【文献】米国特許第06640511(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06
23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層と前記導電層の両面にそれぞれ積層されたホットメルト性のシール層とを含む細帯状の電磁誘導シール部材が該電磁誘導シール部材より細幅の粘着層を介して帯状のウォーターバリア本体の長手縁部に沿って設けられた帯状のウォーターバリアを用意し、
トンネルの掘削内壁に沿って張られた防水シートの内周面に前記ウォーターバリアを配置し、
電磁誘導エネルギーを出力する電磁誘導ヘッドを前記長手縁部に沿って移動させながら、前記電磁誘導シール部材を電磁誘導加熱して前記両面のシール層のうち前記導電層を挟んで前記ウォーターバリア本体とは反対側のシール層を前記防水シートに溶着させ、かつ前記両面のシール層のうち前記ウォーターバリア本体側のシール層における幅方向の両側の前記粘着層よりはみ出た部分を前記ウォーターバリア本体と溶着させることを特徴とするトンネル防水施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル防水に用いるウォーターバリアであって、
帯状のウォーターバリア本体と、
前記ウォーターバリア本体におけるトンネル外周側を向く裏面の長手縁部に沿って延びる細帯状の電磁誘導シール部材と、を備え、
前記電磁誘導シール部材が、導電層と、前記導電層の両面それぞれ積層されたホットメルト性のシール層とみ、前記電磁誘導シール部材が該電磁誘導シール部材より細幅の粘着層を介して前記ウォーターバリア本体の前記裏面に接着され、前記電磁誘導シール部材の幅方向の両側部分が前記粘着層よりはみ出ていることを特徴とするトンネル防水用ウォーターバリア。
【請求項3】
請求項1に記載のトンネル防水施工に用いる電磁誘導ヘッドであって、
ボックス状又は円盤形状のヘッド本体と、
前記ヘッド本体の上面部に設けられた取っ手と、
前記ヘッド本体に搭載され、電磁誘導エネルギーを出力する電磁誘導回路と、
前記ヘッド本体の底部に設けられ、前記ヘッド本体をウォーターバリアの長手縁部に沿って走行させる走行体と、
前記ヘッド本体に搭載され、前記ウォーターバリアに設けられた電磁誘導シール部材の両側のシール層への前記電磁誘導エネルギーの供給量が、前記ウォーターバリアの単位長さあたり一定になるよう、前記走行の速度を調節する速度調節部と、
を備えたことを特徴とするトンネル防水施工用電磁誘導ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの防水施工方法及び該方法に用いるウォーターバリアなどに関し、特に山岳トンネルにおけるウォータータイト工法による防水施工方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNATM(New Austrian tunneling Method)工法による山岳トンネルの施工においては、トンネルの掘削内壁に直接又は一次覆工を介して防水シートを張設し、湧水が二次覆工側に漏れるのを防止している。さらにウォータータイト工法においては、トンネルの掘削内壁の全周にわたって厚肉の防水シートを張設し、二次覆工コンクリートの打継目に対応する箇所などには、防水シートに重ねて帯状のウォーターバリアを設置することで、湧水がトンネル内へ流入するのを防止している(特許文献1等参照)。ウォーターバリアの一対の長手側縁と防水シートとの間は、例えばガン形状のホットメルト装置を用いた樹脂溶着によってシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3241344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ホットメルト装置は、接着剤の装着部と、接着剤を溶かすヒーターと、溶かした接着剤を押し出す機構を内蔵しており、重い。かつ接着剤を定期的に補充する必要があり、煩雑である。また、施工品質のばらつきが生じやすく、シールが不十分な箇所が出来やすい。更にヒーターで高熱になるため、手元が少し狂っただけで周りの防水シートなどを痛めやすい。
本発明は、かかる事情に鑑み、トンネルの防水施工において、防水シートなどの熱損傷を避けながら、ウォーターバリアの長手側縁を防水シートに確実に溶着してシール可能な施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係るトンネル防水施工方法は、導電層とホットメルト性のシール層とを含む細帯状の電磁誘導シール部材が長手縁部に沿って設けられた帯状のウォーターバリアを用意し、
トンネルの掘削内壁に沿って張られた防水シートの内周面に前記ウォーターバリアを配置し、
電磁誘導エネルギーを出力する電磁誘導ヘッドを前記長手縁部に沿って移動させながら、前記電磁誘導シール部材を電磁誘導加熱して前記シール層を前記防水シートに溶着させることを特徴とする。
【0006】
好ましくは、電磁誘導ヘッドを一定速度で移動させる。電磁誘導エネルギー出力は一定に保持する。これによって、ウォーターバリアの単位長さあたりに供給される電磁誘導エネルギーが一定になる。このため、ウォーターバリアの長手方向のどの位置においても、シール層が均一に加熱溶融されて防水シートに一様に溶着される。
言い換えると、シール層の各部分が防水シートに十分に溶着されるように、電磁誘導ヘッドの移動速度及び電磁誘導エネルギー出力を設定する。これによって、ウォーターバリアの長手側縁と防水シートとの間をしっかりとシールすることができ、場所によってシールが不十分であったり、作業者によってシール状態がばらついたりするのを防止できる。
また、電磁誘導ヘッド自体は防水シートが溶解する程の高熱になることが無く、かつ導電層が存在しない箇所では電磁誘導加熱が起きないから、たとえ手元が狂ったとしても、周りの防水シートが熱損傷を来すおそれが無い。
【0007】
前記ウォーターバリアは、
帯状のウォーターバリア本体と、
前記ウォーターバリア本体におけるトンネル外周側を向く裏面の長手縁部に沿って延びる細帯状の電磁誘導シール部材と、を備え、
前記電磁誘導シール部材が、導電層と、前記導電層の少なくともトンネル外周側に積層されたホットメルト性のシール層と含むことが好ましい。
【0008】
前記電磁誘導ヘッドは、電磁誘導エネルギーを出力する電磁誘導回路を有するヘッド本体と、
前記ヘッド本体をウォーターバリアの長手縁部に沿って走行させる走行体と、
前記走行の速度を調節する速度調節部と、
を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トンネルの防水施工において、ウォーターバリアの長手側縁を防水シートとの間を確実にシールでき、施工品質のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る防水構造を含むトンネルの断面図である。
図2図2は、前記トンネルを二次覆工構築前の状態で示す、図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、図1の円部IIIの拡大断面図である。
図4図4は、前記防水構造におけるウォーターバリアの一例を示す断面図である。
図5図5(a)は、前記ウォーターバリアをトンネル内周側から見た正面図である。図5(b)は、前記ウォーターバリアをトンネル外周側から見た裏面図である。図5(c)は、前記ウォーターバリアの仮止め部材の変形態様を示す裏面図である。
図6図6は、図4の円部VIの拡大断面図である。
図7図7は、前記ウォーターバリアの設置施工に用いる電磁誘導ヘッドの斜視図である。
図8図8は、前記電磁誘導ヘッドの回路図である。
図9図9は、前記ウォーターバリアの設置施工の様子を示す解説図である。
図10図10は、図9のX-X線に沿う、設置施工時のウォーターバリアをトンネル内周側から見た図である。
図11図11は、前記電磁誘導ヘッドの使用状態の変形態様を示す解説正面図である。
図12図12は、ウォーターバリアの変形例を示す断面図である。
図13図13(a)は、前記変形例に係るウォーターバリアをトンネル内周側から見た正面図である。図13(b)は、前記変形例に係るウォーターバリアをトンネル外周側から見た裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び図2は、ウォータータイト型(非排水型)のトンネル1を示す。地山2の掘削内壁2aの全周に一次覆工3を介して防水シート4が張設されている。図3に示すように、防水シート4は、裏面緩衝材4bと、トンネル内面側に配置された不透水シート4aとを含む。裏面緩衝材4bは、不織布にて構成され、一次覆工3に面している。裏面緩衝材4bのトンネル内面側に不透水シート4aが配置されている。不透水シート4aは、EVAなどの不透水性樹脂によって構成されている。不透水シート4aの厚みは、通常の排水型に使用されるものより厚肉であり、例えば数mm程度である。
図1に示すように、防水シート4のトンネル内周側に二次覆工5が構築されている。
【0012】
図2に示すように、防水シート4の要所には、ウォーターバリア10(10A,10B)が設置されている。ウォーターバリア10Aは、トンネル周方向に沿って環状に延びている。ウォーターバリア10Bは、トンネル軸方向に沿って直線状に延びている。ウォーターバリア10(10A,10B)の設置箇所は、好ましくは二次覆工コンクリート5aの打継目に対応する箇所であるが、打継目以外の箇所であってもよい。
【0013】
図4に示すように、ウォーターバリア10は、帯状のウォーターバリア本体11と、仮止め部材20と、電磁誘導シール部材30とを備えている。
ウォーターバリア本体11は、ベース部12と、大小複数の突条部13,14を含む。ベース部12は、平坦な帯状に形成されている。ベース部12の表側面(トンネル内周側を向く面)に突条部13,14が突設されている。図5(a)に示すように、突条部13,14は、ウォーターバリア10の幅方向に互いに並んで、ウォーターバリア10の長手方向へ平行に延びている。
【0014】
詳しくは、ウォーターバリア10の幅方向の両側部にそれぞれ3つの大突条部13と2つの小突条部14とが交互に配置されている。小突条部14は、3つの大突条部13のうち両側の大突条部13に片寄って配置されている。ウォーターバリア10全体では、6つの突条部13が設けられている。
ベース部12における突条部13,14の配置部分よりも幅方向の外側の部分は、ヒレ部15を構成している。ベース部12の幅方向の両外側部分に、一対のヒレ部15が形成されている。
【0015】
図5(b)に示すように、ウォーターバリア本体11のベース部12の裏面(トンネル外周側を向く面)には、仮止め部材20と、電磁誘導シール部材30とが設けられている。仮止め部材20は、ウォーターバリア10の長手方向に沿って延びる帯状に形成されており、ベース部21の裏面の幅方向の中央部に配置されている。
なお、図5(c)に示すように、仮止め部材は、帯状に限らず、例えば円形(ないしはスポット状)であってもよい。複数の円形の仮止め部材20Bが、ウォーターバリア10の長手方向に間隔を置いて配置されていてもよい。
【0016】
図4に示すように、仮止め部材20は、アルミなどの導電層21と、ホットメルト層22,23と、粘着層24を含む。導電層21の両面にホットメルト層22,23がそれぞれ積層されている。ベース部12側のホットメルト層22が、粘着層24を介してベース部12に接着されている。
図4に示すように、導電層21の裏側のホットメルト層23が電磁誘導加熱によって防水シート4に溶着されている。これによって、ウォーターバリア10が、仮止め部材20を介して、防水シート4に仮止めされている。
【0017】
図4に示すように、ウォーターバリア本体11の一対のヒレ部15におけるトンネル外周側を向く裏面(図4において上面)には、それぞれ電磁誘導シール部材30が設けられている。図5(b)に示すように、電磁誘導シール部材30は、ウォーターバリア本体11よりも幅が小さい細帯状に形成され、ウォーターバリア本体11の長手縁部に沿って延びている。電磁誘導シール部材30(後述する三層31~33)の幅は、ヒレ部15の幅より少し(好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm程度)小さい。
【0018】
図6に示すように、電磁誘導シール部材30は、導電層31と、シール層32,33を含む。導電層31は、アルミニウムなどの金属によって構成されている。導電層31の厚みは、好ましくは6μm~100μm程度である。
【0019】
導電層31の両面にシール層32,33がそれぞれ積層されている。トンネル外周側(図6において上側)のシール層33は、ホットメルトフィルムによって構成され、ホットメルト性を有している。シール層33の厚みは、好ましくは30μm~100μm程度である。
ベース部12側の(図6において下側)のシール層32は、例えば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などの熱可塑性樹脂によって構成され、ホットメルト性を有している。シール層32の厚みは、好ましくは30μm~200μm程度、より好ましくは100μm程度である。
【0020】
シール層32が、粘着層34を介してベース部12の裏面(図6において上面)に接着されている。ひいては、電磁誘導シール部材30がウォーターバリア本体11と接合されている。
粘着層34の幅は、導電層31及びシール層32,33の幅より少し(例えば5mm以上)小さい。粘着層34の材質は、例えばアクリル系粘着剤である。粘着層34の厚みは、好ましくは30μm~100μm程度、より好ましくは50μm程度である。
【0021】
図3に示すように、電磁誘導シール部材30のシール層33が、ウォーターバリア10の全長にわたって、電磁誘導加熱によって防水シート4に溶着されている。溶着したシール層33によって、防水シート4と導電層31との間がシール(止水)されている。また、シール層32における特に粘着層34よりはみ出た部分(図6参照)が、電磁誘導加熱によってウォーターバリア本体11に全長にわたって溶着されている。溶着したシール層32によって、導電層31とウォーターバリア本体11との間がシール(止水)されている。ひいては、電磁誘導シール部材30によって、ウォーターバリア10の一対の長手縁部と防水シート4との間がウォーターバリア10の全長にわたってシール(止水)されている。
【0022】
<トンネル構築方法>
トンネル1の施工方法を、防水施工の特にウォーターバリア10の設置施工を中心に説明する。
地山2を掘削し、掘削内壁2aに吹付けコンクリート3aを打設して一次覆工3を構築する。
一次覆工3の内周面に防水シート4を張設する。
【0023】
さらに防水シート4の内周面の要所(例えば二次覆工コンクリート5aの打継目となる箇所など)には、ウォーターバリア10を設置する。
詳しくは、ウォーターバリア10を防水シート4の内周面に沿ってトンネル周方向へ張り渡す。仮止め部材20を防水シート4に電磁溶着することによって、ウォーターバリア10の幅方向中央部を防水シート4に仮止めする。前記電磁溶着には一般的な公知の電磁誘導ヘッドを用いることができる。
なお、仮止め部材20の仮止め溶着手段として、後記の電磁誘導ヘッド40を用いてもよい。
【0024】
前記仮止め後、ウォーターバリア10の一対の長手縁部を防水シート4に接合する。
<電磁誘導ヘッド40>
ここで、図7に示すように、電磁誘導ヘッド40を用意する。電磁誘導ヘッド40は、ヘッド本体41と、走行体42を備えている。ヘッド本体41は、例えば前後に長い直方体のボックス状になっている。なお、ヘッド本体41の形状はボックス状に限られず、適宜改変でき、例えば円盤形状であってもよい。ヘッド本体41の上面部には、取っ手41bが設けられている。
【0025】
ヘッド本体41の底部に走行体42が設けられている。これによって、電磁誘導ヘッド40が自走可能になっている。走行体42は、円形のホイールによって構成されている。走行体42は、ヘッド本体41の走行方向の前後における左右両側に設けられている。なお、走行体42が、ヘッド本体41の走行方向の前部の左右両側だけに設けられ、後部には設けられていなくてもよい。走行体42は、ホイールに代えて、クローラであってもよい。
【0026】
図8に示すように、ヘッド本体41には、電源回路43と、電磁誘導回路46と、コントローラ44(制御部)と、操作パネル45と、モータ駆動回路47と、モータ48が搭載されている。
電源回路43は、外部電源からの供給電力を電磁誘導ヘッド40の各電力駆動素子用の電力に変換する。前記外部電源に代えて、ヘッド本体41に内部電源(バッテリ)が内蔵されていてもよい。
電磁誘導回路46は、電磁誘導エネルギー(誘導磁束)の出力コイル46aを含む。
【0027】
詳細な図示は省略するが、操作パネル45には、例えば電磁誘導エネルギー出力の入切部、電磁誘導エネルギー出力量の設定部、走行の開始・停止操作部、走行速度の設定部などが設けられている。作業者Aは、操作パネル45を操作することによって、電磁誘導エネルギー出力を入切(オン・オフ)したり、電磁誘導エネルギー出力を増減させたり、走行開始や走行停止を行ったり、走行速度を変更したりできる。該操作パネル45の操作情報がコントローラ44に入力される。
【0028】
コントローラ44は、前記操作情報などに基づいて、電磁誘導エネルギーの出力や走行速度などの制御を行う。
モータ駆動回路47はモータ48を駆動する。
モータ48が走行体42にトルク伝達可能に接続されている。
【0029】
コントローラ44と操作パネル45とモータ駆動回路47とモータ48によって、電磁誘導ヘッド40の走行速度を調節する速度調節部49が構成されている。
なお、コントローラ44ひいては速度調節部49が、電磁誘導エネルギー出力等からシール層33を溶着可能な走行速度を算出して、走行速度を自動設定するようになっていてもよい。特定の管理者以外の者が任意に電磁誘導エネルギー出力を増減させたり走行速度を変更したりすることは出来ないようにしてもよい。
【0030】
<ウォーターバリア10のシール>
図9及び図10に示すように、前記電磁誘導ヘッド40をウォーターバリア10のヒレ部15(長手縁部)に宛がい、電磁誘導回路46及びモータ48を作動させる。電磁誘導回路46の作動によって、コイル46aから電磁誘導エネルギーが出力される。該電磁誘導エネルギーによって電磁誘導シール部材30の導電層31が電磁誘導加熱され、その熱でシール層32,33が溶融されてウォーターバリア本体11及び防水シート4に溶着される。併行して、モータ48の作動によって走行体42が回転駆動されることで、図10の白抜き矢印に示すように、電磁誘導ヘッド40がウォーターバリア10の長手縁部に沿って所定の速度で自動走行(移動)される。
【0031】
これによって、電磁誘導シール部材30に対して単位長さあたり一定量の電磁誘導エネルギーが供給される。この結果、電磁誘導シール部材30の長手方向のどの位置においても、シール層32,33が均一に加熱溶融されてウォーターバリア本体11及び防水シート4に溶着される。
言い換えると、シール層32,33の各部分が十分に溶着されるように、電磁誘導ヘッド40の走行速度(移動速度)及び電磁誘導エネルギー出力が設定されている。
これによって、ウォーターバリア10の長手側縁と防水シート4との間をしっかりとシールすることができ、場所によってシールが不十分であったり、作業者によってシール状態がばらついたりするのを防止できる。この結果、施工品質のばらつきを防止または抑制できる。
ウォーターバリア10の両側の長手側縁を同様の方法で防水シート4に溶着してシールする。
【0032】
図9に示すように、前記の溶着シール作業中、例えば作業者Aが取っ手41bを把持する等して、電磁誘導ヘッド40を人力で支持する。
作業者Aは、電磁誘導ヘッド40が重力で落下しないように手を添えるか、持っているだけでよい。ウォーターバリア10の長手縁部に沿う移動は、電磁誘導ヘッド40の自走に任せる。作業者Aが電磁誘導ヘッド40を推進方向の前方に押したりブレーキを掛けたりしないことが好ましい。
電磁誘導ヘッド40自体は高熱になることが無く、かつ導電層が存在しない箇所では電磁誘導加熱が起きないから、たとえ手元が狂ったとしても、周りの防水シート4が熱損傷を来すおそれが無い。
【0033】
電磁誘導ヘッド40をヒレ部15の直近の突条部13に当てることによって、前記直近の突条部13をガイドとして、電磁誘導ヘッド40を走行させてもよい。電磁誘導ヘッド40に、前記直近の突条部13とスライド可能に係合されるスライド係合部(図示省略)を設けてもよい。
図11に示すように、トンネル内にウォーターバリア10に沿うガイドレール6を架設し、該ガイドレール6に沿って電磁誘導ヘッド40が自走されるようにしてもよい。
【0034】
図1に示すように、前記ウォーターバリア10の溶着後、二次覆工コンクリート5aを打設して、二次覆工5を構築する。これによって、ウォータータイト型のトンネル1が構築される。
ウォーターバリア10と防水シート4との間を確実にシールしておくことによって、湧水が二次覆工5側へ漏れるのを確実に防止できる。
【0035】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、電磁誘導シール部材30のシール層としては、少なくとも、防水シート4と溶着されて導電層31と防水シート4との間をシールするトンネル外周側のシール層33があればよい。導電層31とウォーターバリア本体11との間は、電磁誘導加熱溶着方式とは異なるシール手段及び接合手段によって液密に接合されていてもよい。
【0036】
ウォーターバリアの断面形状は、前記実施形態(図4)のものに限らない。図12及び図13(a)に示すように、幅狭のウォーターバリア10Cを用いてもよい。ウォーターバリア10Cには、幅方向の中央部と両側部とに3つの大突条部13が配置されている。隣接する大突条部13どうし間に小突条部14が配置されている。小突条部14は、両側部の大突条部13に片寄って配置されている。
図13(b)に示すように、小幅のウォーターバリア10Cにおいては、仮止め部材20は不要である。
前記実施形態(図4)の幅広のウォーターバリア10と、図12及び図13の幅狭のウォーターバリア10Cとを、トンネル内の設置場所や設置方向(トンネル周方向かトンネル軸方向か)に応じて使い分けてもよい。
電磁誘導ヘッド40の移動速度や出力が、気温などの環境条件に応じて変更されるようになっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば山岳トンネルにおけるウォータータイト工法による防水施工に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 トンネル
2 地山
2a 掘削内壁
3 一次覆工
4 防水シート
5 二次覆工
10,10B ウォーターバリア
11 ウォーターバリア本体
15 ヒレ部(長手縁部)
30 電磁誘導シール部材
31 導電層
32 ウォーターバリア本体側のシール層
33 トンネル外周側のシール層
34 粘着層
40 電磁誘導ヘッド
41 ヘッド本体
42 走行体
43 電源回路
44 コントローラ(制御部)
45 操作パネル
46 電磁誘導回路
46a コイル
47 モータ駆動回路
48 モータ
49 速度調節部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13