(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】点群データ表示システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
G01C15/00 105Z
G01C15/00 103A
(21)【出願番号】P 2018185900
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】安富 敏
(72)【発明者】
【氏名】古明地 隆浩
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128291(JP,A)
【文献】特開2015-087307(JP,A)
【文献】特開2018-009957(JP,A)
【文献】特開2001-099647(JP,A)
【文献】特開2015-004588(JP,A)
【文献】特開2018-054396(JP,A)
【文献】特開2017-019072(JP,A)
【文献】特表2017-524944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0191822(US,A1)
【文献】特表2015-503099(JP,A)
【文献】特開2018-048866(JP,A)
【文献】米国特許第5900930(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射ターゲットを備えるターゲットユニットと、
測距光を送光し、測定対象物で反射した反射測距光を受光して測距する測距部と、測距光で測定範囲を走査する走査部と、角度を検出する角度検出器と、測定範囲の点群データを取得する演算制御部を備えるスキャナ装置と、
前記反射ターゲットを測距・測角する測量部を備え、前記反射ターゲットの測距・測角データに基づいて前記スキャナ装置の測定座標および方向角を算出する演算制御部を備える測量装置と、
前記スキャナ装置および前記測量装置から出力されたデータを処理する演算制御部と表示部を備える表示装置とを備え、
前記スキャナ装置は、前記点群データを取得するごとに観測点と関連付けて前記表示装置に出力し、
前記測量装置は、前記観測点における前記スキャナ装置の座標および方向角を、前記観測点と関連付けて前記表示装置に出力し、
前記表示装置の演算制御部は、前記観測点についての点群データ、スキャナ装置の座標、および方向角が揃ったかどうかを判断するデータ受付部、前記点群データを地図座標系のデータに変換するデータ変換部、および変換した点群データを逐次、地図と関連させて表示部に表示する表示制御部とを備えることを特徴とする点群データ表示システム。
【請求項2】
前記ターゲットユニット、前記スキャナ装置および前記測量装置を、択一的に鉛直方向の中心軸を共有するように、着脱可能に取り付けられるように構成され、前記ターゲットユニット、前記スキャナ装置および前記測量装置とのそれぞれの前記中心軸周りのオフセット角度が既知である整準台をさらに備え、
前記ターゲットユニットは、前記ターゲットユニットの中心軸周りの周方向の角度を示すエンコーダパターンを備え、
前記測量装置は、前記エンコーダパターンを光学的に読み取るエンコーダパターン読取部を備える測量機であり、
前記測量装置の演算制御部は、前記エンコーダパターン読取部の読取結果に基づいて、エンコーダパターン読取角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットのエンコーダパターン読取角および前記ターゲットユニットの前記オフセット角度に基づいて前記整準台の方向角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの前記反射ターゲットの測定座標および前記方向角に基づいて前記ターゲットユニットの設置点の地図座標系の座標を算出し、
前記測量装置の演算制御部は、前記測量装置のオフセット角度および前記整準台の前記方向角に基づいて前記測量装置の方向角を算出し、前記スキャナ装置のオフセット角度および前記整準台の方向角に基づいて
前記スキャナ装置の方向角を算出することを特徴とする請求項1に記載の点群データ表示システム。
【請求項3】
前記測量装置は前記スキャナ装置であり、
前記スキャナ装置の演算制御部は、前記反射ターゲットの周囲を集中的にスキャンして得られた点群データに基づいて、前記測距・測角データを取得するターゲットスキャン実行部を備えて、前記スキャナ装置の測定座標および方向角を算出することを特徴とする請求項1に記載の点群データ表示システム。
【請求項4】
前記ターゲットユニットおよび前記スキャナ装置を、択一的に鉛直方向の中心軸を共有するように、着脱可能に取り付けられるように構成され、前記ターゲットユニット、前記およびスキャナ装置とのそれぞれの前記中心軸周りのオフセット角度が既知である整準台をさらに備え、
前記ターゲットユニットは、前記ターゲットユニットの中心軸周りの周方向の角度を示すエンコーダパターンを備え、
前記スキャナ装置は、前記エンコーダパターンを光学的に読み取るエンコーダパターン読取部を備え、
前記スキャナ装置の演算制御部は、前記エンコーダパターン読取部の読取結果に基づいて、エンコーダパターン読取角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットのエンコーダパターン読取角および前記ターゲットユニットの前記オフセット角度に基づいて前記整準台の方向角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの前記反射ターゲットの測定座標および前記方向角に基づいて前記ターゲットユニットの設置点の地図座標系の座標を算出し、
前記スキャナ装置の演算制御部は、前記スキャナ装置のオフセット角度および前記整準台の前記方向角に基づいて前記スキャナ装置の方向角を算出することを特徴とする請求項3に記載の点群データ表示システム。
【請求項5】
前記スキャナ装置は、前記表示装置を備えることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の点群データ表示システム。
【請求項6】
前記スキャナ装置は、前記点群データを部分的に抽出し、抽出したデータを前記表示装置に出力する点群データ抽出部を備えることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の点群データ表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点群データ表示システムに関し、より詳細には、地上設置型スキャナ装置により取得した点群データの表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地形・地物等の3次元データを取得するシステムとして、地上設置型のスキャナ装置を用いて複数地点から測定対象物、または測定範囲の点群データを取得するシステムが知られている。
【0003】
スキャナ装置は、走査部を介してレーザのパルス光を回転照射し、測定対象物を走査して、パルス光ごとに測距、測角を行うことで、測定対象物または範囲のスキャナ装置を中心とする座標系で三次元点群データを取得する。
【0004】
このようなシステムでは、各器械点での点群データ、および各器械点の座標および方向角データをそれぞれ取得して、事務所に持ち帰り、点群データおよび座標および方向角データをPC等のデータ処理装置に入力して、点群データを地図座標系のデータに変換して、点群データの統合処理を行ったり、観測結果の表示を行ったりしていた。しかし、実際の測量現場では、地図と関連付けて表示されるものがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、測量現場でリアルタイムに地図上で点群データの取得状況を確認できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様にかかる点群データ表示システムは、反射ターゲットを備えるターゲットユニットと、測距光を送光し、測定対象物で反射した反射測距光を受光して測距する測距部と、測距光で測定範囲を走査する走査部と、角度を検出する角度検出器と、測定範囲の点群データを取得する演算制御部を備えるスキャナ装置と、前記反射ターゲットを測距・測角する測量部を備え、前記反射ターゲットの測距・測角データに基づいて前記スキャナ装置の測定座標および方向角を算出する演算制御部を備える測量装置と、前記スキャナ装置および前記測量装置から出力されたデータを処理する演算制御部と表示部を備える表示装置とを備え、前記スキャナ装置は、前記点群データを取得するごとに観測点と関連付けて前記表示装置に出力し、前記測量装置は、前記観測点における前記スキャナ装置の座標および方向角を、前記観測点と関連付けて前記表示装置に出力し、前記表示装置の演算制御部は、前記観測点についての点群データ、スキャナ装置の座標、および方向角が揃ったかどうかを判断するデータ受付部、前記点群データを地図座標系のデータに変換するデータ変換部、および変換した点群データを逐次、地図と関連させて表示部に表示する表示制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記態様において、前記ターゲットユニット、前記スキャナ装置および前記測量装置を、択一的に鉛直方向の中心軸を共有するように、着脱可能に取り付けられるように構成され、前記ターゲットユニット、前記スキャナ装置および前記測量装置とのそれぞれの前記中心軸周りのオフセット角度が既知である整準台をさらに備え、前記ターゲットユニットは、前記ターゲットユニットの中心軸周りの周方向の角度を示すエンコーダパターンを備え、前記測量装置は、前記エンコーダパターンを光学的に読み取るエンコーダパターン読取部を備える測量機であり、前記測量装置の演算制御部は、前記エンコーダパターン読取部の読取結果に基づいて、エンコーダパターン読取角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットのエンコーダパターン読取角および前記ターゲットユニットの前記オフセット角度に基づいて前記整準台の方向角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの前記反射ターゲットの測定座標および前記方向角に基づいて前記ターゲットユニットの設置点の地図座標系の座標を算出し、前記測量装置の演算制御部は、前記測量装置のオフセット角度および前記整準台の前記方向角に基づいて前記測量装置の方向角を算出し、前記スキャナ装置のオフセット角度および前記整準台の方向角に基づいて前記スキャナ装置の方向角を算出することも好ましい。
【0009】
また、上記態様において、前記測量装置は前記スキャナ装置であり、前記スキャナ装置の演算制御部は、前記反射ターゲットの周囲を集中的にスキャンして得られた点群データに基づいて、前記測距・測角データを取得するターゲットスキャン実行部を備えて、前記スキャナ装置の測定座標および方向角を算出することも好ましい。
【0010】
また、上記態様において、前記ターゲットユニットおよび前記スキャナ装置を、択一的に鉛直方向の中心軸を共有するように、着脱可能に取り付けられるように構成され、前記ターゲットユニット、前記およびスキャナ装置とのそれぞれの前記中心軸周りのオフセット角度が既知である整準台をさらに備え、前記ターゲットユニットは、前記ターゲットユニットの中心軸周りの周方向の角度を示すエンコーダパターンを備え、前記スキャナ装置は、前記エンコーダパターンを光学的に読み取るエンコーダパターン読取部を備え、前記スキャナ装置の演算制御部は、前記エンコーダパターン読取部の読取結果に基づいて、エンコーダパターン読取角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットのエンコーダパターン読取角および前記ターゲットユニットの前記オフセット角度に基づいて前記整準台の方向角を算出し、前記整準台に取り付けて設置した前記ターゲットユニットの前記反射ターゲットの測定座標および前記方向角に基づいて前記ターゲットユニットの設置点の地図座標系の座標を算出し、前記スキャナ装置の演算制御部は、前記スキャナ装置のオフセット角度および前記整準台の前記方向角に基づいて前記スキャナ装置の方向角を算出することも好ましい。
【0011】
また、上記態様において、前記スキャナ装置は、前記表示装置を備えることも好ましい。
【0012】
また、上記態様において、前記スキャナ装置は、前記点群データを部分的に抽出し、抽出したデータを前記表示装置に出力する点群データ抽出部を備えることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記態様によれば、測量現場でリアルタイムに、地図上で点群データの取得状況を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施の形態にかかる点群データ表示システムの全体構成を示す図である。
【
図2】同形態にかかる、ターゲットユニットを整準台に組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図3】(a)は、同形態に係るターゲットユニットに係るエンコーダパターン部の拡大斜視図であり、(b)は、該エンコーダパターン部のエンコーダパターンの部分展開図である。
【
図4】同形態に係るスキャナ装置の構成ブロック図である。
【
図5】同形態に係る測量機の構成ブロック図である。
【
図6】同形態に係るターゲットユニットの、整準台との取付構造を示す図である。
【
図7】(a),(b),(c),(d)は、同形態に係る、ターゲットユニット、整準台、スキャナ装置、および測量機の平面図であり、水平角方向の関係を説明する図である。
【
図8】同形態に係る表示装置の構成ブロック図である。
【
図9】同形態に係る点群データ表示システムを用いて行う観測の観測計画を示す図である。
【
図10】同システムを用いた点群データの表示処理のフローチャートである。
【
図11】同システムによる点群データの表示の1つの例である。
【
図12】同システムによる点群データの表示の別の例である。
【
図13】(a),(b)は同システムによる点群データの表示の更に別の例である。
【
図14】同システムによる点群データの観測におけるエンコーダパターンの読取りの詳細を説明するフローチャートである。
【
図15】(a)は、同形態に係る測量機のカメラにより取得したエンコーダパターン部周辺の風景画像であり、(b)は、(a)より切り出されたエンコーダパターン部の拡大画像であり、(c)は、(b)を周方向に線状に読み込んで、画素値に変換した結果を示すグラフである。
【
図16】本発明の第2の実施の形態にかかる点群データ表示システムの全体構成を示す図である。
【
図17】同形態に係るスキャナ装置の構成ブロック図である。
【
図18】同スキャナ装置の測距部およびエンコーダパターン読取部における、送受光の仕組みを説明する模式図である。
【
図19】同システムを用いた点群データの表示処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、各図において、説明の便宜上構成部品は適宜拡大して模式的に示しており、実際の比率を反映したものではない。また、下記の実施の形態は、一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
1.第1の実施の形態
1-1. 全体構成
図1は、本発明の実施の形態にかかる点群データ表示システム100の概略構成を示す図である。点群テータ表示システム100は、ターゲットユニット10、スキャナ装置30、測量機60、整準台90および表示装置Dを備える。
【0017】
1-2. ターゲットユニットの構成
図2に示す通り、ターゲットユニット10は、反射ターゲット11、支持部材12、エンコーダパターン部13、および基盤部14を備え、三脚2に取り付けられた整準台90に着脱可能に取り付けられて、鉛直に保持される。
【0018】
反射ターゲット11は、例えば、複数の三角錐状のプリズムを放射状に組み合わせて構成された、いわゆる全方位プリズムであり、その全周(360°)から入射する光を、その入射方向と反対の方向に反射する。
【0019】
支持部材12は、基盤部14から上方へ一定の長さをもって延びる、例えば、金属製または樹脂製の円柱状の部材である。その中心軸Aが、反射ターゲット11の中心Oおよびエンコーダパターン部13の(ベース13A)中心O
E(
図3(a))を通るように、エンコーダパターン部13および反射ターゲット11を固定支持している。また、共通するベース13Aの中心軸と支持部材12の中心軸Aとは、反射ターゲット11の中心Oを通るように構成されている。すなわち支持部材12の中心軸Aが、ターゲットユニット10の中心軸である。
【0020】
エンコーダパターン部13は、短尺円柱形状のベース13Aの側周面に、エンコーダパターン13Bを設けることにより構成されている。
【0021】
エンコーダパターン13Bは、角度情報部131と、角度情報部131の上方に隣接する幅情報部132とを備える。
【0022】
図3(a),(b)に示すように、角度情報部131は、例えば、白地に、幅w
1を有する狭幅の黒の縦線131aと、幅w
2を有する広幅の黒の縦線131bとを、縦線131aを「0」、縦線131bを「1」として、M系列の循環乱数コードを生成するように、等ピッチpで配置したバーコード状のパターンである。エンコーダパターン13Bは、エンコーダパターン部13の中心から基準点RPへの方向(以下、「エンコーダパターンの基準方向」という。)RDを0°として、カメラ(エンコーダパターン読取部)65により読み取ったパターンから算出される角度(以下、「エンコーダパターンの読取角」という。)
θ
E
が、エンコーダパターン13Bの基準方向RDから、支持部材12の中心軸A回りの時計回りの周方向の絶対角度と対応するように構成されている。
【0023】
幅情報部132は、所定の高さh1を有する黒色帯132aと、同高の白色帯132bとを備える。黒色帯132aと白色帯132bとはそれぞれ、エンコーダパターン部13の周方向の全周に亘り延びている。
【0024】
エンコーダパターン部13は、反射ターゲット11の下方に隣接して配置されている。しかし、エンコーダパターン部13と反射ターゲット11との位置関係は、これに限定されず、エンコーダパターン部13が反射ターゲット11の中心Oを通る支持部材12の中心軸Aと同軸となるように配置されていれば、他の配置であってもよい。
【0025】
基盤部14は、支持部材12と同軸に設けられた、支持部材12よりも太径の、例えば金属製または樹脂製の円柱状の部材であり、整準台90の基盤取付穴94(
図6)と整合する寸法を有する。基盤部14の底面には、後述するように整準台90の係合孔96a,96b,96cとそれぞれ係合する係合突起15a,15b,15c(
図6)が、支持部材12の中心軸Aに対して周方向等間隔に3か所設けられている。
【0026】
また、基盤部14の側周面には、位置決め突起16が径方向に突出するように設けられている。
【0027】
1-3. スキャナ装置の構成
図4は、スキャナ装置30の構成ブロック図である。スキャナ装置30は、いわゆるレーザスキャナであり、測距部31、鉛直回転駆動部32、回動ミラー33、鉛直角検出器34、水平回転駆動部35、水平角検出器36、記憶部37、表示部38、操作部39、通信部41、演算制御部42、および外部記憶装置43を備える。
【0028】
また、スキャナ装置30は、
図1に示すように、ターゲットユニット10と同様に、三脚2に取り付けられる整準台90を介して設置される。スキャナ装置30は、整準台90に着脱可能に取り付けられる基盤部6aと、基盤部6aに軸H1-H1回りに360°水平回転可能に設けられた托架部6bと、托架部6bの凹部7に、軸V1-V1回りに鉛直回転可能に設けられた望遠鏡部6cとを備える。
【0029】
基盤部6aには、水平回転駆動部35、および水平に回転させる軸H1-H1回りの回転角を検出する水平角検出器36が収納されている。水平回転駆動部35は、例えばモータであり、水平角検出器36は例えばロータリエンコーダである。水平回転駆動部35は、水平に回転させる軸H1-H1を中心に托架部6bを回転し、水平角検出器36は、托架部6bの水平に回転させる軸H1-H1の基盤部6aに対する回転角を検出し、検出信号を演算制御部42に出力する。
【0030】
また、基盤部6aの底部は、ターゲットユニット10の基盤部14の底部と同様の構成を有する。すなわち、整準台90の基盤取付穴94と整合する円柱形状に成形され、その底面は、整準台90の係合孔96a,96b,96cと整合する形状を有し、係合突起51a,51b,51c(
図9(c))が設けられている。また、基盤部6aの底部の側周面には、位置決め突起52が設けられている。
【0031】
托架部6bには、鉛直回転駆動部32、鉛直角検出器34、記憶部37および演算制御部42が設けられている。また、表示部38および操作部39は托架部6bの外部に設けられている。
【0032】
鉛直回転駆動部32は、モータであり、鉛直に回転させる軸V1-V1上に設けられている。その回転により、望遠鏡部6cが鉛直方向に全周回転する。鉛直角検出器34は、例えばロータリエンコーダである。鉛直角検出器34は、鉛直に回転させる軸V1-V1上に設けられ、該軸V1-V1の回転角を検出し、検出信号を演算制御部42に出力する。
【0033】
望遠鏡部6cには、測距部31が収容されている。望遠鏡部6cの内部には、回動ミラー33を備える鏡筒(図示せず)が設けられ、この鏡筒を水平に回転させる軸は、托架部6bを水平に回転させる軸H1-H1と同軸である。鏡筒は、望遠鏡部6cに適宜の手段で取り付けられている。
【0034】
測距部31は、測距光送光部、測距光受光部、ビームスプリッタ、および回動ミラー33等を有する測距光用送受光光学系を備える。
【0035】
測距光送光部は、例えば半導体レーザ等の発光素子(図示せず)を備え、測距光としてパルスレーザ光線を出射する。出射された測距光3は、測距光用ミラーで反射され、さらに回動ミラー33によって反射されて測定対象物に照射される。回動ミラー33は、両面ミラーであり、鉛直回転駆動部32により駆動され鉛直に回転させる軸V1-V1周りに回転する。回動ミラー33と鉛直回転駆動部32により測距光3を鉛直方向に走査する走査部49を構成する。
【0036】
そして、測定対象物により再帰反射された測距光3を、回動ミラー33を介して、例えばフォトダイオードなどの受光素子である測距光受光部で受光し、ビームスプリッタにより分割された測距光の一部である内部参照光に基づいて、演算制御部42により、照射点までの距離を求める。
【0037】
回動ミラー33の鉛直方向の回転と、前記托架部6bの水平方向の回転との協働により、測距光が2次元に走査される。測距部31によりパルス光毎の測距データが取得され、鉛直角検出器34および水平角検出器36によりパルス光ごとの測角データが取得される。鉛直方向に天頂を含む270°、水平方向に360°回転することでフルドームスキャン(全周スキャン)が実行され、測定範囲全周の3次元点群データが取得される。
【0038】
記憶部37は、例えばRAM(Ramdam・Access・Memory)等であり、スキャナ装置30を作動させるための各種プログラムを格納する。
【0039】
表示部38は、例えば液晶ディスプレイ等であり、演算制御部42により得られた作業状況データや測定結果等を表示する。
【0040】
操作部39は、タッチディスプレイやキーボード等であり、スキャナ装置30に対する指令の入力を行う。
【0041】
通信部41は、スキャナ装置30と表示装置Dとの通信を可能にするものであり、点群データを表示装置Dに出力する。通信は、有線であってもよく、無線であってもよい。
【0042】
演算制御部42は、例えばCPU(Central・Processing・Unit)を備える。演算制御部42が記憶部37に格納されたプログラムを読み出して、実行することによりスキャナ装置30の各種機能が実行される。
【0043】
また、演算制御部42は、測距部31、鉛直回転駆動部32、鉛直角検出器34、水平回転駆動部35、水平角検出器36、記憶部37、表示部38、操作部39、および外部記憶装置43と電気的に接続されている。
【0044】
演算制御部42には、鉛直角検出器34、水平角検出器36からの角度検出信号が入力され、また、測距光受光部45からの受光信号が入力される。また、作業者の操作による操作部39からの信号が入力される、
【0045】
また、演算制御部42は、測距光送光部44、鉛直回転駆動部32、水平回転駆動部35を駆動すると共に、作業状況、測定結果等を表示する表示部38を制御する。
【0046】
また、演算制御部42は、各種プログラムを実行する機能部として、点群データ取得部57と、点群データ抽出部58とを備える。点群データ取得部57は、測定対象物(範囲)に測距光を回転照射した各点を、測距、測角した結果を演算し、点群データを取得する。
【0047】
また、演算制御部42は、取得した点群データを外部記憶装置43に出力する。
【0048】
外部記憶装置43は、例えばメモリカード、ハードディスクドライブ、USBメモリ等であり、点群データを格納している。また、演算制御部42に対して、固定的に設けられていてもよく、取り外し可能に設けられていてもよい。
【0049】
1-4. 測量機の構成
本実施の形態における測量機60は、トータルステーションである。
図5に示す通り、測量機60は、EDM(Electro-optical・Distance・Measuring-Instrument)61、水平角検出器62、鉛直角検出器63、エンコーダパターン読取部として機能するカメラ65,追尾部66、水平回転駆動部68、鉛直回転駆動部69、記憶部71、入力部72、表示部73、演算制御部74および通信部79を備える。
【0050】
測量機60は、
図1に示すように、ターゲットユニット10およびスキャナ装置30と同様に、三脚2に取り付けられる整準台90を介して設置される。測量機60は、外観上、整準台90に着脱可能に取り付けられる基盤部8aと、基盤部8aに軸H2-H2回りに360°水平回転可能に設けられた托架部8bと、托架部8bの凹部9に、軸V2-V2回りに鉛直回転可能に設けられた望遠鏡8cとを備える。
【0051】
基盤部8aには、水平回転駆動部68、および水平に回転させる軸H2-H2回りの回転角を検出する水平角検出器62が収容されている。
【0052】
托架部8bには、鉛直角検出器63、鉛直回転駆動部69、記憶部71、および演算制御部74が収容されている。托架部8bの外部には、入力部72および表示部73が設けられている。
【0053】
望遠鏡8cには、EDM61、および追尾部66が収容されており、カメラ65は、望遠鏡8cの上部に取り付けられている。
【0054】
また、基盤部8aの底部は、ターゲットユニット10と同様に構成されており、整準台90への取り付けのために、その底面には、係合突起81a,81b,81c(
図7(d)参照)が、その外周側面には、位置決め突起82が設けられている。
【0055】
EDM61は、発光素子、測距光学系および受光素子を備える。EDM61は、発光素子から測距光4を出射し、反射ターゲット11からの反射光を受光素子で受光して、反射ターゲット11を測距する。
【0056】
水平角検出器62および鉛直角検出器63は、ロータリエンコーダであり、水平回転駆動部68および鉛直回転駆動部69でそれぞれ駆動される托架部8bおよび望遠鏡8cの回転軸周りの回転角度を検出し、測距光軸の水平角および鉛直角を求める。
【0057】
EDM61、水平角検出器62、および鉛直角検出器63は、測量機60の要部である測量部64を形成している。
【0058】
カメラ65は、カメラとして公知の光学系と、撮像素子とを備える。カメラ65は、望遠鏡8cの上部に、望遠鏡8cと平行に取り付けられている。また、カメラ65は、望遠鏡8cで反射ターゲット11を視準している状態で、反射ターゲット11との位置関係が固定されているエンコーダパターン部13を視準するように構成されている。
【0059】
このために、カメラ65が、撮影をおこなう際に上下左右に回動可能に構成されていてもよい。撮像素子としては、CCDセンサやCMOSセンサ等のイメージセンサが用いられる。カメラ65は、その光学系を通して、受光素子を用いて光を受光し、その光の像を撮像する。
【0060】
追尾部66は、追尾光を出射する発光素子、および例えばCCDセンサやCMOSセンサ等のイメージセンサである受光素子を備え、測距光学系と光学要素を共有する追尾光学系を備える。追尾部66は、測距光とは異なる波長の赤外レーザ光を追尾対象物(ターゲット)に投射し、該追尾対象物からの反射光を受光し、受光結果に基づいて追尾対象物の追尾を行う様に構成されている。
【0061】
追尾部66は、追尾機能を必要としない場合には必須ではなく省略することができる。また、追尾部66を備える場合には、追尾部66にカメラ65の機能を組み込み、独立したカメラ65を省略することもできる。
【0062】
水平回転駆動部68は、および鉛直回転駆動部69はモータであり、それぞれ、水平に回転させる軸H2-H2および鉛直に回転させる軸V2-V2上に設けられている。それぞれ、演算制御部74に制御されて、托架部8bを水平回転させ、望遠鏡8cを鉛直回転させる。
【0063】
記憶部71は、ROMおよびRAMを備える。記憶部71は、測量機60を作動させるための各種プログラムを格納している。例えば、測距および測角を実行するためのシーケンスプログラム、整準台座標を演算するための演算プログラム、エンコーダパターンを読み取り、読取角を演算するためのプログラム等を格納する。これらプログラムは、RAMに読み出されて演算制御部74による実行が開始され、測量機60の各種処理を行う。
【0064】
また、記憶部71は、例えばメモリカード、ハードディスクドライブ、USBメモリ等を備え、測定により得られた、測距、測角データ、エンコーダパターンを読み取った画像データ、演算により得られた測定点座標および読取角データおよび方向角データを記憶する。記憶部71は、固定して設けられていてもよく、取り外し可能に設けられていてもよい。
【0065】
入力部72は、例えば、操作ボタンである。作業者は、入力部72に、測量機60に実行させるための指令を入力したり、設定の選択を行ったりすることができる。
【0066】
表示部73は、例えば、液晶ディスプレイであり、演算制御部74の指令に応じて測定結果、演算結果等種々の情報を表示する。また、入力部72より、作業者が入力を行うための設定情報や作業者により入力された指令を表示する。
【0067】
なお、入力部72と表示部73とを一体的に構成して、タッチパネル式ディスプレイとしてもよい。
【0068】
演算制御部74は、CPU、GPU(Graphical・Processing・Unit)等を集積回路に実装したマイクロコントローラである。演算制御部74は、EDM61、水平角検出器62、鉛直角検出器63、カメラ65,追尾部66、水平回転駆動部68、鉛直回転駆動部69、記憶部71、入力部72、および表示部73と電気的に接続されている。
【0069】
演算制御部74には、鉛直角検出器63、水平角検出器62からの角度検出信号が入力され、EDM61からの受光信号が入力される。また、作業者の操作による入力部72からの信号が入力される。また、カメラ65の撮像素子より出力された画素値データが入力される。
【0070】
また、演算制御部74は、EDM61、水平回転駆動部68、鉛直回転駆動部69を駆動すると共に、作業状況、測定結果等を表示する表示部38を制御する。
【0071】
また、演算制御部74は、機能部として、測定座標演算部75、エンコーダパターン読取角演算部76、方向角演算部77、および座標演算部78を備える。
【0072】
測定座標演算部75は、測量部64で得られた測距、測角データに基づいて、反射ターゲットの中心座標を演算し、演算結果を記憶部71に出力する。
【0073】
エンコーダパターン読取角演算部76は、カメラ65により取得されたエンコーダパターン部13周辺の画像からエンコーダパターン13Bを読み取り、エンコーダパターン読取角θEを算出する。エンコーダパターン13Bの読取りの詳細については後述する。
【0074】
方向角演算部77は、エンコーダパターン読取角演算部76で求めたエンコーダパターン読取角θE、およびターゲットユニット10のオフセット角度θTと、スキャナ装置30のオフセット角度θS,および測量機60のオフセット角度θTSとに基づいて、それぞれ整準台90に取り付けたスキャナ装置30および測量機60の方向角を算出する。
【0075】
座標演算部78は、ターゲットの測定座標とスキャナ装置30および測量機60の方向角に基づいて、スキャナ装置30および測量機60の座標を演算する。
【0076】
通信部79は、測量機60と表示装置Dとの通信を可能にするものであり、方向角データおよび座標データを表示装置Dに出力する。通信は、有線であってもよく、無線であってもよい。
【0077】
1-5. 整準台の構成
整準台90は、ターゲットユニット10、スキャナ装置30および測量機60を択一的に設置するための台座であり、自動整準機能を有する。整準台90は、
図6に示すように、三脚を取りつけるための三脚取付座部91と、整準装置本体92と三脚取付座部91と整準装置本体92とを連結する3個の整準ネジ93とから大略構成されている。
【0078】
整準装置本体92は、図示しないチルトセンサ、整準ネジ駆動機構、制御部等を備え、チルトセンサの傾斜姿勢情報に基づいて、整準装置本体92が水平となるように駆動機構を自動的に制御して整準ネジ93を調節する。また、整準装置本体92には、水平状態を確認するための水準器97が設けられている。
【0079】
整準装置本体92の上面には、ターゲットユニット10、スキャナ装置30または測量機60を取り付けるための、基盤取付穴94が開口し、基盤取付穴94には、円周方向の120°毎に3個の係合孔96a,96b,96cが設けられている。整準装置本体92の外縁部には、1箇所の合わせ溝98が形成されている。
【0080】
ターゲットユニット10は、係合孔96a,96b,96cおよび合わせ溝98により、周方向に位置決めされて、鉛直方向の中心軸Aを共有するように整準台90に取り付けられる。また、ターゲットユニット10は、図示しない板バネのロック機構が、1つの係合突起15aを押圧することにより、整準台90に着脱可能にロックされる。スキャナ装置30および測量機60も同様に整準台90に取り付けられる。
【0081】
この結果、
図7(b)に示す状態の整準台90にターゲットユニット10
、スキャナ装置30、または測量機60を設置すると、ターゲットユニット10の基準方向RD、スキャナ装置30の基準方向Ds、測量機60の基準方向D
TSは、それぞれ、
図7(a),
図7(c),
図7(d)に示すように、
整準台の基準方向D
L
から周方向に角度θ
T(以下、「ターゲットユニット10のオフセット角度θ
T」という。)、角度θ
S(以下、「スキャナ装置30のオフセット角度θ
S」,角度θ
TS(以下、「測量機60のオフセット角度θ
TS」という。)だけずれた状態で位置関係が固定される。図中符号O
T,O
L,O
S,O
TSはそれぞれターゲットユニット10、整準台90、スキャナ装置30、測量機60の中心を示す。
【0082】
ここで、ターゲットユニット10の基準方向RD、スキャナ装置30の方向DS、測量機60の方向DTS、整準台90の方向DLの北に対する右回りの角度が、それぞれターゲットユニット10の方向角、スキャナ装置30の方向角、測量機60の方向角、整準台90の方向角である。
【0083】
ターゲットユニット10のオフセット角度θT、スキャナ装置30のオフセット角度θSおよび測量機60のオフセット角度θTSは、予め測定または設定することにより既知とされ、記憶部71に記憶されている。測量機60を、既知の点に設置し、方向角を既知の値αとした状態でエンコーダパターン読取角θEを読み取ると、エンコーダパターン読取角θEはαの関数で表せる。したがって、エンコーダパターン読取角θEとターゲットユニット10のオフセット角度θTとに基づいて整準台90の方向角を求めることができる。さらに、整準台90の方向角が求まれば、スキャナ装置30のオフセット角度θSに基づいて、整準台90に取り付けたスキャナ装置30の方向角を求めることができる。
【0084】
なお、上記の整準台90の基準方向DL、スキャナ装置30の基準方向Ds、測量機60の基準方向DTSの設定は、本実施の形態における一例であって任意に設定することができる。
【0085】
このように、整準台90の合わせ溝98および係合孔96a,96b,96cにより、周方向に位置決めし、中心軸Aまわりの水平角を所定の角度とすることにより、ターゲットユニット10、整準台90、スキャナ装置30、および測量機60の鉛直中心軸周りの水平角方向の位置関係を一定とすることができる。
【0086】
また、ターゲットユニット10の反射ターゲット11の中心座標、整準台90の座標、スキャナ装置30の座標、および測量機60の座標は、取付状態で、鉛直方向の位置関係が固定され、その距離は既知となっている。したがって、反射ターゲット11の中心座標求めることにより、整準台90、スキャナ装置30、および測量機60の座標が求まるようになっている。
【0087】
1-6. 表示装置の構成
図9に示すように、表示装置Dは、例えば、タブレット端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等である。表示装置Dは、表示部21と、演算制御部22と、記憶部23と、通信部24とを備える。
【0088】
表示部21は、例えば、液晶ディスプレイであり、演算制御部22の制御に従って、入力された点群データを表示する。
【0089】
演算制御部22は、プログラムを記憶する制御記憶部とプログラムを実行する制御実行部とを備え、表示装置の各種機能を実行する。制御記憶部としては、例えばROMを、制御実行部としては例えばCPUを適用することができる。演算制御部22は、機能部として、データ受付部25とデータ変換部26と表示制御部27とを備える。
【0090】
データ受付部25は、データ受付プログラムを実行して、通信部24を介してスキャナ装置30から入力された、観測点に関連付けられた点群データおよび、測量機60から入力された、観測点に関連付けられた地図座標およびスキャナ方向角を受け付け、観測点に対して点群データ、地図座標およびスキャナ方向角が揃っているかどうかを判断し、揃った場合にデータ変換部26に出力する。
【0091】
データ変換部26は、データ変換プログラムを実行して、点群データを観測点の地図座標および観測点におけるスキャナ方向角に基づいて地図座標系のデータに変換する。
【0092】
表示制御部27は、変換後の点群データを、記憶部23に予め保存されている測定領域の地図データに関連付けて表示部21に表示する。
【0093】
記憶部23は、例えば、RAM、フラッシュメモリ、ROM、ハードディスクドライブ等である、データ受付部25で受け付けた点群データと方向角および座標データとを器械点に関連付けて記憶する。
【0094】
1-7. 点群データの表示方法
本実施の形態に係る点群データ表示システムを用いて、点群データを観測し、表示する方法を、
図10の領域を観測する場合について説明する。図中点P
0~P
4は予め計画された観測点である。
【0095】
観測計画は、測量機60、スキャナ装置30および表示装置Dにそれぞれ記憶されている。また、表示装置Dには、観測領域の地図が、地図座標と関連付けられて記憶されている。
【0096】
また、各観測点には、整準台90がそれぞれ設置されている。点P0は、後方交会法または後視点・器械点法によりその位置座標および方向角が取得可能な点である。また、測量機60が、測定する点に設置された整準台90には、ターゲットユニット10が設置されているものとする。また、測量機60はP0~P4の順で測定を行うものとし、スキャナ装置30は任意の順で測定を行うものとする。
【0097】
測量機60は、観測を開始すると、ステップS101で、作業者が、測量機60を点Pi(i=0)に設置して、その旨を入力部より入力する。
【0098】
次に、ステップS102では、測量機60は、既知点または後視点に設置された反射ターゲットを測定して、点P0での地図座標系の座標および方向角を算出する。
【0099】
次に、ステップS103で、算出した座標および方向角データを観測点P0と関連付けて、表示装置Dへ出力する。
【0100】
次にステップS104で、測量部64が、点P1の測距・測角を行い、測定座標演算部75が、反射ターゲット11の測定座標を算出する。
【0101】
次にステップS105で、点P0での測量機60の方向角およびステップS104の反射ターゲット11の測定座標に基づいて、点P0の地図座標系の座標を算出し、ステップS106で表示装置Dへデータを出力する。
【0102】
次に、ステップS107で、カメラ(エンコーダパターン読取部)65が、点P1のターゲットユニット10のエンコーダパターン13Bを読取り、エンコーダパターン読取角演算部76がエンコーダパターン読取角θEを算出する。エンコーダパターン13Bの読み取りについては後述する。
【0103】
次に、ステップS108で、方向角演算部77がエンコーダパターン読取角θEおよびターゲットユニット10のオフセット角θTに基づいて整準台90の方向角を演算する。
【0104】
次にステップS109で、演算制御部74が、計画の全ての点の測定が完了したかを判断し、全ての点の測定が完了した場合(Yes)、処理を終了する。
【0105】
完了していない場合(No)、測量機60は、表示部73に次の点に移動するように促す表示を行い、作業者が測量機60を次の点P1に移動する。ステップS110で、入力部72より、測量機の移動の完了が入力されるとi=i+1として、ステップS111で、方向角演算部77が、ステップS108で求めた整準台90の方向角および測量機60のオフセット角度θTSに基づいて測量機60の方向角を演算し、記憶部71に記憶する。また、スキャナ装置のオフセット角度θSに基づいて、スキャナ装置30の方向角を演算する。
【0106】
次にステップS112で、測量機60は、スキャナ装置30の方向角を表示装置Dに出力する。その後、ステップS104に戻り、全ての点の測定が完了するまで、ステップS104~S112を繰り返す。
【0107】
一方、スキャナ装置30は、測定を開始すると、ステップS201で作業者が、スキャナ装置30を観測点Pjに設置された整準台90に取り付ける。スキャナ装置30と測量機60の測定は、互いに干渉しない限り、独立に行うことができ、すなわち、iとjは同じ必要はない。また、スキャナ装置30による測定は、測量機と同じ順序である必要はない。
【0108】
次に、ステップS202で、スキャナ装置30は、観測点Pjで点群データの取得(フルドームスキャン)を行い、点群データを取得して外部記憶装置43に記憶する。
【0109】
次に、ステップS203で、スキャナ装置30は、取得した点群データを観測点と関連付けて表示装置Dに出力する。
【0110】
次にステップS204で、全ての点の点群観測が完了したかを判断し、全ての点の観測が完了した場合、処理は終了する。
【0111】
また、表示装置Dは測定を開始すると、ステップS301で、データの入力を待機する。
【0112】
次に、ステップS302では、データ受付部25が、測量機60およびスキャナ装置30からのデータを受け付ける。
【0113】
次に、ステップS303では、データ受付部25が、1つの観測点(例えばP0)について、スキャナ方向角、地図座標系の座標、および点群データの3つのデータが揃ったかを判断する。
【0114】
揃っていない場合(No)、ステップS301に戻り、表示装置Dは再度待機する。
【0115】
揃った場合(Yes)、ステップS304で、データ変換部26が、公知の手法により、3つのデータに基づいて、観測点で取得した点群データを地図座標系のデータに変換する。
【0116】
次に、ステップS305で、表示制御部27が、地図座標系のデータに変換した点群データを、表示部21に、例えば
図11に示すように、地図と関連付けて表示する。
【0117】
図11は、取得した点群データを、地図に投影して表示した例である。図中、△は、計画上の観測点を示す。
【0118】
次に、ステップS306で、全ての点についての表示が完了したかどうかを判断し、完了した場合(Yes)、処理は終了する。完了していない場合(No)、ステップS301に戻り再度待機して、全ての観測点について表示が完了するまでステップS301~S306を繰り返す。
【0119】
本実施の形態によれば、スキャナ方向角、観測点の地図座標系の座標、および点群データが揃った観測点についての点群データを逐次地図座標系のデータに変換し、表示装置Dに表示していくので、地図上で、リアルタイムに、点群データ取得の進捗状況を確認できる。このため、点群データの取得状況を容易に把握することができる。また、例えば、データの不足があった際にも、再測定をしなくても現場で適切に対処することが可能になる。
【0120】
なお、投影する地図は、図面による地図に限らず、地図座標と関連付けられた航空写真として表示されるものでもよい。
【0121】
また、
図12のように、取得した点群データ(下図)を3Dデータとして立体的に表示し、地図と並べて表示して、3次元での点群取得状況を把握できるようにしてもよい。また、マウスによるドラッグや、指でのスワイプにより上下の画面で連動して移動するスコープ28aを表示し、スコープ28aで位置と方向を指定することにより、スコープ28aから見た場合の3次元点群データ(図示せず)を表示できるように構成してもよい。
【0122】
上記構成によれば、表示されるデータが3次元状であるので、点群データの取得状況がより容易に把握できるようになる。また、スコープ28aを用いることにより、作業者と同じ視点で点群データを確認できるので、観測状況の把握がより容易になる。
【0123】
また、
図13(a)のように、点群データの他に、測定した観測点を合わせて表示し、その点の座標が未取得である場合には△を、その点の座標、方向角は取得済であるが、点群データは未取得である場合を★、点群データを取得した状態である場合を●などと、状態に合わせて、色や形状を変化させてもよい。図示の例では点群データの取得はP
0,P
1まで済んでおり、座標の取得はP
2,P
3まで済み、P
4は、この後、座標を測定する必要があることがわかる。
【0124】
上記構成によれば、観測の進捗状況を容易に把握することができる。
【0125】
また、
図13(b)のように、地図に重ねて表示した点群データに、重ねて、未観測の観測点から取得される点群データの範囲を予測する範囲を表示してもよい。このようにすれば、必要な点群データの範囲を勘案しながら、現場で測定計画の調整を行うことが可能になり、データの取り残し等を防止することができる。
【0126】
1-8. エンコーダパターンの読取り
最後に、ステップS107のエンコーダパターン13Bの読取りを、
図14,15を参照して説明する。
【0127】
測量機60では、ステップS107でエンコーダパターンの読取りを開始すると、ステップS401で、カメラ(エンコーダパターン読取部)65が、エンコーダパターン部13を含む風景画像85を取得する(
図15(a))。
【0128】
次に、ステップS402で、エンコーダパターン読取角演算部76が、ステップS104の反射ターゲット11の測距データ、および記憶部71に記憶された、既知のエンコーダパターン部13の寸法に基づいて、画像におけるエンコーダパターン13Bの範囲86を特定し、矩形に切り出す(
図15(a),(b))。
【0129】
次に、ステップS403で、切り出したエンコーダパターン13Bの範囲86の画像を、幅情報部132の黒色帯132aおよび白色帯132b、および角度情報部を間隔h
3ごとに水平方向に線状に読込み、画素値に変換する。I~Vの位置で線状の読込みを行う。I~Vの各位置における読込みの結果(以下、「画素列I~V」という。)は、例えば、
図15(c)のようになる。
【0130】
次に、ステップS404で、読込み結果の黒色または白色部分に該当する部分が、ステップS102で取得した反射ターゲット11の測距データ、および既知のエンコーダパターン部13の寸法から算出される、エンコーダパターン部13の直径Lに相当する長さ連続している部分を幅情報部132として、検出されたエンコーダパターン13Bの幅Lから、支持部材12の中心軸Aと合致するエンコーダパターン13Bの中心位置を特定する。
【0131】
次に、ステップS405で、ステップS403の読み込み結果から、画素列間の相関を算出し、相関性が所定の値よりも高いもの、
図15の例では画素列III~V部分を、角度情報部131の読取り結果として抽出する。
【0132】
そして、抽出した画素列III~Vの画素値を垂直方向に加算して平均値を算出する。その結果が所定のしきい値よりも小さな場合を黒色の領域と判断し、黒色の領域の幅を求める。次に、求めた幅の値が、狭幅、広幅のいずれに該当するかを判断し、狭幅のものをビット「0」すなわち縦線131a、広幅のものをビット「1」すなわち縦線131bとして読み取る。
【0133】
次に、ステップS405で、エンコーダパターン読取角演算部76が、ステップS403で求めたエンコーダパターン13Bの中心位置Aを中央として左右に伸びる所定幅Rに含まれるビットパターン、すなわち所定幅Rの領域に含まれる所定のビット数の縦線で示されるビットパターンと、記憶部71に記憶されたビットパターンと角度との相関とを対比して、エンコーダパターンの読取角θEを算出する。
【0134】
1-9. 変形例
また、本実施の形態の変形例として、
図4に破線で示すように、スキャナ装置30が点群データ抽出部を備え、ステップS203によるデータの出力を行う前に、点群データの一部を抽出し、出力するデータを間引くようにしてもよい。
【0135】
点群データの抽出方法としては、以下のような方法が挙げられる
(1)スキャナの仰角または水平角が、所定の値にある場合のみの点群データを抽出する。
(2)スキャナを中心とする座標系において、所定の座標を指定してその点群データを抽出する。
(3)スキャナを中心とする座標系において、スキャナから放射状に延びる方向に複数のデータが存在するときに、スキャナからの距離が最も近いもの、または最も遠いデータを抽出する。
(4)意図した部分に反射シートを設置し、反射強度が所定の値よりも高いものを選択してして抽出する。
【0136】
このように、スキャナ装置が点群データ抽出部58を備え、点群データを部分的に抽出し、点群データの大きさを小さくすることで、表示装置Dへのデータ出力(通信)にかかる時間とコストを抑制することができる。また、その後のデータの変換についても処理にかかる時間を短縮することができる。
【0137】
2.第2の実施の形態
図16に示すように、第2の実施の形態に係る点群データ表示システム200は、ターゲットユニット10と、スキャナ装置230とを備える。
【0138】
スキャナ装置230は、測距部31、鉛直回転駆動部32、回動ミラー33、鉛直角検出器34、水平回転駆動部35、水平角検出器36、記憶部37、表示部38、操作部39、および外部記憶装置43を備える、第1の実施の形態に係るスキャナ装置30と同様の構成を有するレーザスキャナである。ただし、通信部41備えず、エンコーダパターン読取部243を備える点で異なる。
【0139】
また、演算制御部242が、機能部として、点群データ取得部57に加えて、反射ターゲットの周辺の範囲に対して、集中的に測距光を照射して測距・測角するターゲットスキャンを実行し、該測距測角データから、反射ターゲットの測定座標を算出するターゲットスキャン実行部231と、エンコーダパターン読取結果から、エンコーダパターン読取角θEを演算するエンコーダパターン読取角演算部233と、ターゲットユニット10のオフセット角θT,スキャナ装置30のオフセット角θS,エンコーダパターン読取角θEに基づいて、整準台90、スキャナ装置30の方向角を演算する方向角演算部234と、反射ターゲット11の測定座標とスキャナ装置30の方向角に基づいて、スキャナ装置30の設置点の地図座標系の座標を演算する座標演算部235とを備える点で異なる。
【0140】
また、演算制御部242が、さらに機能部として、点群データ取得部57に加えて、データ受付部236,データ変換部237、表示制御部238を備える点で異なる。
【0141】
エンコーダパターン読取部243は、
図18に示すように、読取光送光部244、読取光受光部245、読取光用ミラー246および読取光用集光レンズ247を有する読取光用送受光光学系248を備える。読取光送光部
244は、発光素子(図示せず)を備え、測距光3は異なる波長の光線、例えば可視光等をエンコーダパターン読取光5として出射する。出射されたエンコーダパターン読取光5は、読取光用ミラー53によって反射される。さらに回動ミラー33によって反射されてエンコーダパターン13Bに照射される。
【0142】
なお、
図18において、符号44,45,46,47,48は、それぞれ測距部31の測距光送光部、測距光受光部、測距光用ミラー、測距光用集光レンズ、測距光用送受光光学系を示し、エンコーダパターン読取光5を反射するのは、回動ミラー33の測距光3を反射する面の裏面である。
【0143】
ついで、エンコーダパターン13Bで反射された読取光5aは、回動ミラー33、読取光用ミラー246および読取光用集光レンズ247を経て、読取光受光部245に入射する。読取光受光部245は、例えば、アバランシェフォトダイオードなどの受光素子である。読取光受光部245に入力された受光信号は、受光光量分布として演算制御部42に出力される。エンコーダパターン読取角演算部233が、受光光量分布に基づいて、実施の形態1と同様に、エンコーダパターンの読取結果からビットパターンを読取角に変換する。
【0144】
データ受付部236は、観測点に関連付けられた点群データおよび観測点に関連付けられた地図座標およびスキャナ方向角を受け付け、観測点に対して点群データ、地図座標およびスキャナ方向角が揃っているかどうかを判断し、揃った場合にデータ変換部237に出力する。
【0145】
データ変換部237は、点群データを観測点の地図座標および観測点におけるスキャナ方向角に基づいて地図座標系のデータに変換する。
【0146】
表示制御部238は、変換後の点群データを、記憶部23に予め保存されている測定領域の地図データに関連付けて表示部39に表示する。
【0147】
このように第2の実施の形態にかかるスキャナ装置230は、第1の実施の形態に係る測量機60と表示装置Dの機能を備えるものである。
【0148】
従って、第2の実施の形態に係る点群データ取得した場合の、スキャナ装置230の動作は、
図19に示す通りとなる。なお、図中左のフローチャートは、スキャナ装置230の測量機能(点群データ取得、エンコーダパターン読取り)に関するフローチャートであり、右のフローチャートは、表示機能に関するフローチャートである。各ステップにおける動作は、測量機での測距・測角がスキャナ装置ではターゲットスキャンにより達成される点および、データの出力が装置間の通信により達成されるのではなく同一装置内のデータのやり取りである点を除き、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0149】
なお、上記の実施の形態では、ターゲットユニットにエンコーダパターン部を備え、スキャナ装置または測量機にエンコーダパターン読取部を備えて、既知点や後視点を測定することなく、方向角を算出可能なスキャナ装置または測量機を用いたシステムとして構成したが、これに限らず、点群データ観測システムにおいて、点群データ、観測点の地図座標系の座標、および観測点のスキャナ装置の方向角を測定可能なシステムまたは装置であれば、本発明の実施の形態として適用することができる。
【0150】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能である。また、上記の実施の形態は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0151】
10 ターゲットユニット
11 反射ターゲット
13B エンコーダパターン
21 表示部
22 演算制御部
25 データ受付部
26 データ変換部
27 表示制御部
30 スキャナ装置
31 測距部
34 鉛直角検出器
36 水平角検出器
42 演算制御部
44 測距光送光部
45 測距光受光部
49 走査部
57 点群データ取得部
58 点群データ抽出部
59 方向角演算部
60 測量機
64 測量部
65 エンコーダパターン読取部(カメラ)
74 演算制御部
75 測定座標演算部
76 エンコーダパターン読取角演算部
77 方向角演算部
78 座標演算部
90 整準台
100 点群データ表示システム
200 点群データ表示システム
230 スキャナ装置
231 ターゲットスキャン実行部
233 エンコーダパターン読取角演算部
234 方向角演算部
235 座標演算部
236 データ受付部
237 データ変換部
238 表示制御部
242 演算制御部
243 エンコーダパターン読取部