(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2018194654
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】溝口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】平澤 茂
(72)【発明者】
【氏名】伊東 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】穴原 圭一郎
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-168973(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169352(WO,A1)
【文献】特開2014-181509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体と、
前記
上部旋回体の前側で俯抑動可能に取り付けられたフロント作業機と、
前記フロント作業機を駆動させるための複数の操作装置と、
前記複数の操作装置によって前記フロント作業機、前記上部旋回体、及び前記下部走行体を駆動させて作業を行うことが可能な作業可能状態と、前記複数の操作装置によって前記フロント作業機、前記上部旋回体、及び前記下部走行体を駆動させて作業を行うことができない作業不可状態とを切り換えるゲートロックレバーと、
前記
上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側に搭載されて
前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に位置する障害物を検出する障害物検出装置と、
前記障害物検出装置の検出結果に基づいて前記障害物の有無を判定し、判定結果に応じた報知情報を出力するコントローラと、
前記コントローラから出力される報知情報に応じて前記障害物の検出をオペレータに報知する報知装置と
、
を備えた
油圧ショベルにおいて、
前記コントローラは、
前記ゲートロックレバーにより前記作業可能状態に切り換えられた状態で前記障害物検出装置により前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に前記障害物が検出された場合と、前記ゲートロックレバーにより前記作業不可状態に切り換えられた状態で前記障害物検出装置により前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に前記障害物が検出された場合とで前記報知装置による報知の方法を変更することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項2】
請求項1に記載の
油圧ショベルにおいて、
前記報知装置は連続した報知音である第1報知音と、断続した報知音である第2報知音とを鳴らすブザー装置であり、
前記コントローラは、
前記前記作業可能状態で前記障害物検出装置
により前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に前記障害物が検出され
た場合は、前記ブザー装置に前記第1報知音を鳴らす指令を出力し、前記作業不可状態で
前記障害物検出装置により前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に前記障害物が検出された場合は、前記ブザー装置に前記第2報知音を鳴らす指令を出力することを特徴とする
油圧ショベル。
【請求項3】
請求項1記載の
油圧ショベルにおいて、
前記障害物検出装置による前記障害物の検出範囲のうち前記
上部旋回体に隣接する範囲には、隣接検出範囲が設定されており、
前記コントローラは、
前記障害物が前記周囲検出範囲で検出された状態から検出されていない状態になったとき、直前の前記障害物の検出位置が前記隣接検出範囲にあった場合には、前記報知装置によるオペレータへの報知を継続させることを特徴とする
油圧ショベル。
【請求項4】
請求項1記載の
油圧ショベルにおいて、
前記上部旋回体の左右に搭載されて前記上部旋回体の左右に設定された周囲検出範囲に位置する障害物を検出する障害物検出装置をさらに備え、
前記報知装置は連続した報知音である第1報知音と、断続した報知音である第2報知音とを鳴らすブザー装置であり、
前記コントローラは、前記ゲートロックレバーにより前記作業可能状態に切り換えられた状態で前記障害物検出装置により前記上部旋回体の左右の周囲検出範囲、又は、前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に前記障害物が検出された場合は、前記ブザー装置に前記第1報知音を鳴らす指令を出力し、前記ゲートロックレバーにより前記作業不可状態に切り換えられた状態で前記障害物検出装置により前記上部旋回体の左右の周囲検出範囲、又は、前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に前記障害物が検出された場合は、前記ブザー装置に前記第2報知音を鳴らす指令を出力することを特徴とする
油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械においては、障害物検知器などによって作業機械の周囲に設定された監視範囲内に作業者を検出した場合に警報音を発することで、オペレータによる作業機械の周囲確認作業を補助する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、操作者に対する警報を出力する警報出力部を備える作業機械の周辺監視装置であって、前記作業機械の状態を判定する作業機械状態判定手段と、前記作業機械の周囲における人の存否を判定する人存否判定手段と、前記警報出力部を制御する警報制御手段と、を有し、前記警報制御手段は、前記作業機械が作業可能状態にないと判定され、且つ、前記作業機械の周囲に人が存在すると判定された場合、その後に前記作業機械が作業可能状態にあると判定されたときに警報を出力させる、作業機械用周辺監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、操作者がショベルを操作できる状態である作業可能状態である場合には警報を出力するものの、その他の場合については警報を出力しないため、オペレータによる作業機械の周囲確認の効率化には改善の余地が残されている。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、オペレータによる作業機械の周囲確認の効率を向上することができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体の前側で俯抑動可能に取り付けられたフロント作業機と、前記フロント作業機を駆動させるための複数の操作装置と、前記複数の操作装置によって前記フロント作業機、前記上部旋回体、及び前記下部走行体を駆動させて作業を行うことが可能な作業可能状態と、前記複数の操作装置によって前記フロント作業機、前記上部旋回体、及び前記下部走行体を駆動させて作業を行うことができない作業不可状態とを切り換えるゲートロックレバーと、前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側に搭載されて前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に位置する障害物を検出する障害物検出装置と、前記障害物検出装置の検出結果に基づいて前記障害物の有無を判定し、判定結果に応じた報知情報を出力するコントローラと、前記コントローラから出力される報知情報に応じて前記障害物の検出をオペレータに報知する報知装置と、を備えた油圧ショベルにおいて、前記コントローラは、前記ゲートロックレバーにより前記作業可能状態に切り換えられた状態で前記障害物検出装置により前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に前記障害物が検出された場合と、前記ゲートロックレバーにより前記作業不可状態に切り換えられた状態で前記障害物検出装置により前記上部旋回体の前記フロント作業機とは反対側の周囲検出範囲に前記障害物が検出された場合とで前記報知装置による報知の方法を変更するものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オペレータによる作業機械の周囲確認の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を概略的に示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を概略的に示す上面図である。
【
図3】赤外線距離センサによる検出範囲の設定例を示す図である。
【
図4】オペレータが搭乗する運転席の様子を示す図である。
【
図5】油圧ショベルに適用される油圧回路システムを関連構成とともに模式的に示す油圧回路図である。
【
図6】コントローラの処理機能を関連構成とともに抜き出して示す機能ブロック図である。
【
図7】コントローラの処理内容を示すフローチャートである。
【
図8】作業不可状態におけるモニタの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、作業機械の一例として油圧ショベルを示して説明するが、例えば、ホイールローダやクレーンのような他の作業機械であっても本発明の適用が可能である。
【0011】
図1及び
図2は、本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を概略的に示す図であり、
図1は側面図、
図2は上面図である。
【0012】
図1及び
図2において、作業機械の一例として示す油圧ショベル100は、クローラ式の下部走行体1と、下部走行体1に対して旋回可能に設けられた上部旋回体2と、上部旋回体2の前側に俯仰動可能に設けられたフロント作業機3とから概略構成されている。
【0013】
フロント作業機3は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム3a、アーム3b、及びバケット3c)を連結して構成されている。ブーム3aの基端は上部旋回体2の前部に回動可能に支持されている。また、ブーム3aの先端にはアーム3bの一端が回動可能に連結されており、アーム3bの他端(先端)にはバケット3cが回動可能に連結されている。ブーム3a、アーム3b、及びバケット3cは、油圧アクチュエータであるブームシリンダ3d、アームシリンダ3e、及び、バケットシリンダ3fによってそれぞれ駆動される。
【0014】
下部走行体1は、左右一対のクローラフレーム1c(1d)にそれぞれ掛け回された一対のクローラb(1f)と、クローラ1e(1f)を図示しない減速機構等を介してそれぞれ駆動する油圧アクチュエータとしての走行油圧モータ1a(1b)とから構成されている。なお、
図1において、下部走行体1の各構成については、左右一対の構成のうちの一方のみを図示して符号を付し、他方の構成については図中に括弧書きの符号のみを示して図示を省略する。
【0015】
上部旋回体2は、基部となる旋回フレーム2a上に各部材を配置して構成されており、旋回フレーム2aが油圧アクチュエータである旋回油圧モータ(図示せず)により下部走行体1に対して旋回駆動されることにより、上部旋回体2が下部走行体1に対して旋回可能となっている。
【0016】
上部旋回体2の旋回フレーム2a上には、オペレータが搭乗して油圧ショベル100の操作を行うための運転室4が配置されているほか、原動機であるエンジン50、エンジン50により駆動される油圧ポンプ33(後述)及びパイロットポンプ34(後述)、各油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1a,1b、旋回油圧モータ(図示せず)、ブームシリンダ3d、アームシリンダ3e、バケットシリンダ3f)を駆動するための油圧回路システム、油圧ショベル100の全体の動作を制御するコントローラ60(後述)などが搭載されている。
【0017】
上部旋回体2の上部の左右および後方には、車体の周囲に位置する障害物を検出する障害物検出装置である赤外線距離センサ14~16が搭載されている。赤外線距離センサ14~16は、照射した赤外線が検出した障害物に反射して戻ってくるまでの時間および方向を計測することで、各赤外線距離センサ14~16から障害物までの距離および方向を測定することができるものである。すなわち、赤外線距離センサ14~16の車体における搭載位置は既知であるので、赤外線距離センサ14~16の検出結果を用いることで、車体に対する障害物の位置を特定することができる。
【0018】
図3は、赤外線距離センサによる検出範囲の設定例を示す図である。
【0019】
図3に示すように、赤外線距離センサ14~16の検出範囲としては、車体の周囲に周囲検出範囲141,151,161を設定し、さらに、周囲検出範囲141,151,161のうち車体に隣接する範囲に隣接検出範囲141a,151a,161aを設定する。すなわち、赤外線距離センサ14~16で障害物を検出した場合には、その検出結果から障害物が周囲検出範囲141,151,161であるかどうか、さらには、隣接検出範囲141a,151a,161aであるかどうかを特定することができる。
【0020】
図4は、オペレータが搭乗する運転席の様子を示す図である。
【0021】
図4において、運転室4内には、オペレータが着座する運転席17と、フロント作業機3の操作および上部旋回体2の旋回操作を行うための操作レバー18,19と、下部走行体1の左右の走行油圧モータ1a,1bを操作するための走行レバー20,21と、走行レバー20,21のそれぞれと互いに連動した操作が可能な左右の走行ペダル20a,21aとが設けられている。運転室4内のオペレータから見やすい位置、かつ、外部視野確保の妨げにならない位置には、油圧ショベル100に関する種々の情報や設定画面等を表示するための表示装置であるモニタ23(報知装置)が配置されている。運転室4内には、音や音声を出力することで種々の情報をオペレータに報知することができるスピーカ24(報知装置)が配置されている。運転席17の運転室4における乗降口側(本実施の形態では、運転席17からみて左側)には、ロック解除位置(詳細には、オペレータの乗降を妨げる下降位置)とロック位置(詳細には、オペレータの乗降を許容する上昇位置)に操作されるゲートロックレバー22が設けられている。
【0022】
図5は、油圧ショベルに適用される油圧回路システムを関連構成とともに模式的に示す油圧回路図である。なお、
図5においては、油圧ショベル100の複数の油圧アクチュエータの代表として、左の走行油圧モータ1a及びブームシリンダ3dに係わる構成を示している。
【0023】
図5において、油圧回路システムは、原動機であるエンジン50と、エンジン50によって駆動される油圧ポンプ33及びパイロットポンプ34と、油圧ポンプ33から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータ1a,3d・・・(左の走行油圧モータ1a及びブームシリンダ3d以外の油圧アクチュエータの図示は省略)と、油圧ポンプ33から複数の油圧アクチュエータ1a,3d・・・に供給される圧油の流れを制御する複数の方向切換弁36,38・・・(左走行用方向切換弁36及びブーム用方向切換弁38以外の方向切換弁の図示は省略)と、複数の油圧アクチュエータ1a,3d・・・の動作を指示し、複数の方向切換弁36,38・・・を切り換えるパイロット圧(操作信号)を生成する油圧パイロット式の複数の操作装置35,37・・・(左走行用の操作装置35及びバケット・ブーム用の操作装置37以外の操作装置の図示は省略)を備えている。
【0024】
左走行用の操作装置35は左走行用の走行レバー20を備え、走行レバー20の前後方向の操作に応じて油圧ポンプ33から左の走行油圧モータ1aへの圧油の流れを制御する。バケット・ブーム用の操作装置37はブーム・バケット用の操作レバー18を備え、操作レバー18の前後方向の操作に応じて油圧ポンプ33からブームシリンダ3dへの圧油の流れを制御する。
【0025】
なお、
図5に図示しない右の走行油圧モータ1b、アームシリンダ3e、バケットシリンダ3f、及び、旋回油圧モータに係わる油圧回路システムもほぼ同様の構成を備えている。
【0026】
左走行用方向切換弁36及びブーム用方向切換弁38と図示しないその他の方向切換弁は、センタバイパス型であり、センタバイパスライン39上に位置するセンタバイパス通路をそれぞれ有している。各方向切換弁のセンタバイパス通路は、センタバイパスライン39に直列に接続されており、各方向切換弁のスプールが中立位置にあるときセンタバイパス通路を連通し、各方向切換弁のスプールが
図5中左側又は右側の切換位置に切換えられるとセンタバイパス通路を遮断するようになっている。センタバイパスライン39の上流側は油圧ポンプ33の吐出ライン40に接続され、センタバイパスライン39の下流側はタンクライン41に接続されている。
【0027】
左走行用方向切換弁36は、操作装置35からのパイロット圧によって切換えられるようになっている。操作装置35は、左の走行レバー20と、走行レバー20の前後方向の操作に応じパイロットポンプ34の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)とを有している。例えば、走行レバー20を中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁36の
図5中右側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁36が
図5中右側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行油圧モータ1aが前方向に回転し、左のクローラ1eが前方向に回転するようになっている。一方、例えば走行レバー20を中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁36の
図5中左側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁36が
図5中左側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行油圧モータ1aが後方向に回転し、左のクローラ1eが後方向に回転するようになっている。
【0028】
ブーム用方向切換弁38は、操作装置37からのパイロット圧によって切換えられるようになっている。操作装置37は、ブーム・バケット用の操作レバー18と、操作レバー18の前後方向の操作に応じパイロットポンプ34の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)等を有している。例えば、操作レバー18を中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁38の
図5中右側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁38が
図5中右側の切換位置に切換えられる。これにより、ブームシリンダ3dが縮短し、ブーム3aが下がるようになっている。一方、例えば操作レバー18を後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁38の
図5中左側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁38が
図5中左側の切換位置に切換えられる。これにより、ブームシリンダ3dが伸張し、ブーム3aが上がるようになっている。
【0029】
パイロットポンプ34の吐出ライン43には、パイロットポンプ34の吐出圧を一定に保持するパイロットリリーフ弁(図示せず)が設けられている。また、パイロットポンプ34の吐出ライン43にはロック弁45が設けられており、このロック弁45は、ゲートロックレバー22の操作に応じて切換えられるようになっている。ゲートロックレバー22には、ゲートロックレバー22がロック解除位置(下降位置)にある場合に閉じ状態、ロック位置(上昇位置)にある場合に開き状態となるポジションスイッチ22a(
図4参照)が設けられている。そして、例えば、ポジションスイッチ22aが閉じ状態になると、ポジションスイッチ22aを介してロック弁45のソレノイド部が通電されて、ロック弁45が
図5中下側の切換位置に切換えられる。これにより、パイロットポンプ34の吐出ライン43を連通して、パイロットポンプ34の吐出圧が操作装置35,37等に導入される。その結果、操作装置35,37等の操作によってパイロット圧が生成され、油圧アクチュエータを作動させることができる(作業可能状態)。一方、ポジションスイッチ22aが開き状態になると、ロック弁45のソレノイド部が通電されず、バネの付勢力で、ロック弁45が
図5中上側の中立位置となる。これにより、パイロットポンプ34の吐出ライン43を遮断する。その結果、操作装置35,37等を操作してもパイロット圧が生成されず、油圧アクチュエータが作動しないようになっている(作業不可状態)。
【0030】
図6は、コントローラの処理機能を関連構成とともに抜き出して示す機能ブロック図である。
【0031】
コントローラ60は、処理装置(例えばCPU)と、処理装置が実行するプログラム、及びそのプログラムの実行に必要なデータ等が格納される記憶装置(例えばROM、RAM等の半導体メモリ)を有するコンピュータ相当のハードウェアである。
図6においては、コントローラ60によって実行される各種演算処理を機能ブロックで示している。
【0032】
図6において、コントローラ60は、障害物検出部61、フラグ処理部62、作業可能状態判定部63、報知制御部64、及び、記憶部65を有している。
【0033】
障害物検出部61は、予め設定されて記憶部65に記憶された周囲検出範囲141,151,161及び隣接検出範囲141a,151a,161aを読み込み、障害物検出装置である赤外線距離センサ14~16からの検出結果に基づいて、周囲検出範囲141,151,161に作業員やその他の物体などの障害物の有無を判定する。また、障害物検出部61は、周囲検出範囲141,151,161において障害物を検出した場合には、さらに、その障害物が隣接検出範囲141a,151a,161aにあるかどうかを判定する。
【0034】
フラグ処理部62は、周囲検出範囲141,151,161で障害物が検出されたとき、検出位置が隣接検出範囲141a,151a,161aである場合には、フラグ処理としてフラグ変数F=1とする処理を行い、検出位置が隣接検出範囲141a,151a,161aの外側である場合には、フラグ処理としてフラグ変数F=0とする処理を行う。なお、フラグ処理部62は、周囲検出範囲141,151,161で障害物が検出されなかった場合にはフラグ処理を行わず、フラグ変数の値を維持する。
【0035】
作業可能状態判定部63は、油圧ショベル100が作業を行うことが可能な作業可能状態であるか、作業を行うことができない作業不可状態であるかを判定する。具体的には、ゲートロックレバー22のポジションスイッチ22aの状態を検出し、ゲートロックレバー22がロック解除位置(下降位置)にある場合(すなわち、ポジションスイッチ22aが閉じ状態である場合)には、油圧ショベル100が作業可能状態であると判定し、ゲートロックレバー22がロック位置(上昇位置)にある場合(すなわち、ポジションスイッチ22aが開き状態である場合)には、油圧ショベル100が作業不可状態であると判定する。
【0036】
報知制御部64は、障害物検出部61で障害物が検出されたときに報知情報を出力してモニタ23やスピーカ24の動作を制御することで、モニタ23への表示やスピーカ24からの音声出力等によってオペレータに障害物の検出を報知する。また、報知制御部64は、障害物検出部61で障害物が検出されないときに、フラグ処理部62からのフラグ変数がF=0である場合には報知を行わず、フラグ処理部62からのフラグ変数がF=1である場合には、障害物が検出された場合と同様にオペレータへの報知を行う。このとき、報知制御部64は、作業可能状態判定部63で油圧ショベル100が作業可能状態であると判定された場合と作業不可状態であると判定された場合とで報知の方法を異ならせる。具体的には、例えば、報知制御部64は、障害物が検出されたときに、作業不可状態であれば断続的な報知音(注意を促すような注意音)を出力させる報知情報をスピーカ24に出力し(報知パターンB)、作業可能状態であれば連続的な報知音を出力させる報知情報をスピーカ24に出力する(報知パターンA)。これにより、オペレータに車体周囲の確認作業を促して、確認作業の補助を行うことができる。また、作業不可状態であっても、車体周囲の確認作業をオペレータに促すことができるので、オペレータはより効率的に車体周囲の確認作業を行うことができる。なお、作業可能状態と作業不可状態のそれぞれにおいての報知方法は、記憶部65に記憶されている。
【0037】
その他の例としては、障害物が検出されたときに、作業不可状態であれば障害物を検出した旨を示す内容をモニタ23に表示させる報知情報を出力し(報知パターンB)、作業可能状態であれば連続的な報知音(周囲確認を警告するような警告音)を出力させる報知情報をスピーカ24に出力する(報知パターンA)。この作業不可状態におけるモニタ23の表示例としては、
図8に示すように、油圧ショベル100に係る各種情報や油圧ショベル100の周囲画像を俯瞰的に表示したりする表示画面23aに表示されている情報等に車体周囲の確認を促す文字情報23b等を重畳させるものが考えられる。なお、その他にも、作業可能状態と作業不可状態とで、音量を異ならせたり、音色を異ならせたり、音声出力させる言葉を異ならせたり、これらの組み合わせによって異ならせたりすることが考えられる。
【0038】
図7は、コントローラの処理内容を示すフローチャートである。
【0039】
図7において、コントローラ60は、以下に示すSTARTからENDまでの処理を所定の間隔(例えば、コントローラ60の処理サイクルである10ms)で繰り返し行う。
【0040】
まず、コントローラ60の障害物検出部61は、赤外線距離センサ14~16の検出結果を取得し(ステップS100)、車体周囲に障害物を検出したかどうかを判定する(ステップS110)。
【0041】
ステップS110での判定結果がYESの場合、すなわち、車体周囲の周囲検出範囲141,151,161において障害物を検出した場合には、フラグ処理部62は、障害物の検出位置が隣接検出範囲141a,151a,161aであるかどうかを判定し(ステップS120)、判定結果がYESの場合にはフラグ処理としてフラグ変数F=1の処理を行い(ステップS121)、判定結果がNOの場合にはフラグ処理としてフラグ変数F=0の処理を行う(ステップS122)。
【0042】
ステップS121又はS122の処理が終了すると、続いて、報知制御部64は、作業可能状態判定部63から作業機械である油圧ショベル100が作業可能状態であるか作業不可状態であるかを示す状態情報を取得し(ステップS130)、作業可能状態であるかどうかを判定する(ステップS140)。
【0043】
ステップS140での判定結果がYESの場合には、報知制御部64は、例えば、報知情報をスピーカ24に出力して連続的な報知音を出力するような報知パターンAの方法でオペレータに車体周囲の確認作業を促し(ステップS141)、処理を終了する。また、ステップS140での判定結果がNOの場合には、例えば、報知情報をスピーカ24に出力して断続的な報知音を出力するような報知パターンBの方法でオペレータに車体周囲の確認作業を促し(ステップS142)、処理を終了する。
【0044】
また、ステップS110での判定結果がNOの場合、すなわち、障害物を検出しなかった場合には、フラグ処理部62でのフラグ変数F=1であるかどうかを判定し(ステップS111)、判定結果がNOの場合には、処理を終了する。また、ステップS111での判定結果がYESの場合、すなわち、フラグ変数F=1である場合には、ステップS130の処理に進む。すなわち、ステップS110の処理は、前回の処理サイクルにおいて隣接検出範囲141a,151a,161aで障害物が検出されていた状態(フラグ変数F=1)から、周囲検出範囲141,151,161の隣接検出範囲141a,151a,161aより外側の範囲で障害物が検出された状態(フラグ変数F=0)を介さずに、障害物が検出されなくなった場合(ステップS111の判定結果がYESの場合)には、オペレータへの報知を継続する。隣接検出範囲141a,151a,161aに障害物が検出されてから、隣接検出範囲141a,151a,161aより外側の範囲で障害物を介さずに、障害物が検出されない場合は、障害物が車体の下などの周囲検出範囲141,151,161の外側に移動している場合である。この場合においては、オペレータへの報知を継続させて、油圧ショベル100の周囲の確認を促す。なお、この継続させた報知の解除に関しては、エンジンの始動スイッチの操作によりエンジンを停止させたときに解除させるものとする。
【0045】
以上のように構成した本実施の形態における作用効果を説明する。
【0046】
従来技術においては、操作者がショベルを操作できる状態である作業可能状である場合には警報を出力するものの、その他の場合については警報を出力しないため、オペレータによる作業機械の周囲確認の効率化には改善の余地が残されていた。
【0047】
これに対して本実施の形態においては、油圧ショベル100の車体に搭載され、車体の周囲に位置する障害物を検出する少なくとも1つの赤外線距離センサ14~16と、赤外線距離センサ14~16の検出結果に基づいて障害物の有無を判定し、判定結果に応じた報知情報を出力するコントローラ60と、コントローラ60から出力される報知情報に応じて障害物の検出をオペレータに報知するモニタ23やスピーカ24を有し、コントローラ60は、赤外線距離センサ14~16で障害物が検出されたときに、油圧ショベル100が作業を行うことが可能な作業可能状態であるか、作業を行うことができない作業不可状態であるかを判定し、作業可能状態である場合と作業不可状態である場合とでモニタ23やスピーカ24による報知の方法を異ならせるように構成した。これにより、オペレータは、作業を一時中断している状態等の油圧ショベル100が作業を行うことができない作業不可状態でも、オペレータが油圧ショベル100の周囲に近づいた障害物を逐次把握することができる。そのため、オペレータが油圧ショベル100を作業不可状態から作業可能状態に切り換えた時(作業再開時等)の確認をスムーズに行うことができ、すみやかに作業を開始することができる。また、作業可能状態と作業不可状態とで報知方法を変えているため、報知方法からもオペレータが現在の車体の状態が車体が作業可能状態か作業不可状態かを判断することができ、作業効率を向上させることも出来る。
【0048】
<変形例>
なお、上記の実施の形態においては、ゲートロックレバー22のポジションスイッチ22aからの信号に基づいて油圧ショベル100の作業可能状態と作業不可状態とを判定する場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、エンジン50の動作状況に基づいて油圧ショベル100の作業可能状態と作業不可状態とを判定してもよい。具体的には、エンジン50から得られる回転数などの情報に基づいてエンジン50が停止状態であるか始動状態であるかを判定し、停止状態である場合には作業不可状態であると判定し、始動状態である場合には作業可能状態であると判定しても、上記の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
以上のように構成した本実施の形態の特徴を説明する。
【0050】
(1)上記の実施の形態では、車体と、前記車体に取り付けられたフロント作業機3と、前記フロント作業機を駆動させるための複数の操作装置35,37と、前記フロント作業装置による作業が可能か可能でないかの状態を検出する作業機械状態検出装置(例えば、ゲートロックレバー22)と、前記車体に搭載されて前記車体の周囲に位置する障害物を検出する障害物検出装置(例えば、赤外線距離センサ14~16)と、前記障害物検出装置の検出結果に基づいて前記障害物の有無を判定し、判定結果に応じた報知情報を出力するコントローラ60と、前記コントローラから出力される報知情報に応じて前記障害物の検出をオペレータに報知する報知装置(例えば、モニタ23、スピーカ24)と、を備えた作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記コントローラは、前記障害物検出装置で前記障害物が検出されたときに、前記作業機械状態検出装置により前記作業機械が作業を行うことが可能な作業可能状態であるか、作業を行うことができない作業不可状態であるかを判定し、前記作業可能状態である場合と前記作業不可状態である場合とで前記報知装置による報知の方法を変更するものとした。
【0051】
これにより、オペレータによる作業機械の周囲確認の効率を向上させることができ、作業効率を向上することができる。
【0052】
(2)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記報知装置は連続した報知音である第1報知音と、断続した報知音である第2報知音とを鳴らすブザー装置(例えば、スピーカ24)であり、前記コントローラは、前記障害物検出装置(例えば、赤外線距離センサ14~16)で前記障害物が検出されたときに、前記作業可能状態であると判定した場合は、前記ブザー装置に前記第1報知音を鳴らす指令を出力し、前記作業不可状態であると判定した場合は、前記ブザー装置に前記第2報知音を鳴らす指令を出力するものとした。
【0053】
(3)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記障害物検出装置(例えば、赤外線距離センサ14~16)による前記障害物の検出範囲のうち前記車体に隣接する範囲には、隣接検出範囲141a,151a,161aが設定されており、前記コントローラ60は、前記障害物が前記周囲検出範囲で検出された状態から検出されていない状態になったとき、直前の前記障害物の検出位置が前記隣接検出範囲にあった場合には、前記報知装置(例えば、モニタ23、スピーカ24)によるオペレータへの報知を継続させるものとした。
【0054】
(4)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記作業機械状態検出装置は、前記複数の操作装置による前記フロント作業機の操作の可否を切り換え可能なゲートロックレバー22であり、前記コントローラ60は、前記ゲートロックレバーによって、前記複数の操作装置35,37による前記フロント作業機3の操作が不可状態に切り換えられている場合には前記作業機械が作業不可状態であると判定し、前記複数の操作装置による前記フロント作業機の操作が可能状態に切り換えられている場合には前記作業機械が作業可能状態であると判定するものとした。
【0055】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…下部走行体、1a,1b…走行油圧モータ、1c,1d…クローラフレーム、1e,1f…クローラ、2…上部旋回体、2a…旋回フレーム、3…フロント作業機、3a…ブーム、3b…アーム、3c…バケット、3d…ブームシリンダ、3e…アームシリンダ、3f…バケットシリンダ、4…運転室、14~16…赤外線距離センサ、17…運転席、18,19…操作レバー、20,21…走行レバー、20a,21a…走行ペダル、22…ゲートロックレバー、22a…ポジションスイッチ、23…モニタ、24…スピーカ、33…油圧ポンプ、34…パイロットポンプ、35,37…操作装置、36…左走行用方向切換弁、38…ブーム用方向切換弁、39…センタバイパスライン、40…吐出ライン、41…タンクライン、43…吐出ライン、45…ロック弁、50…エンジン、60…コントローラ、61…障害物検出部、62…フラグ処理部、63…作業可能状態判定部、64…報知制御部、65…記憶部、100…油圧ショベル、141,151,161…周囲検出範囲、141a,151a,161a…隣接検出範囲