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特許7112937情報処理装置、その方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】情報処理装置、その方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20220728BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220728BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220728BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220728BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/00 130
H02J3/14 130
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018199507
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020068585
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】大槻 知史
(72)【発明者】
【氏名】愛須 英之
(72)【発明者】
【氏名】草清 和明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 龍朗
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-23389(JP,A)
【文献】特開2017-228148(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力削減要請に対する複数の需要家の電力削減履歴に基づき、前記複数の需要家のうち第1電力削減要請を行う対象となる複数の対象需要家を選択し、前記第1電力削減要請に対する前記複数の対象需要家の削減電力量を予測する処理部と、
前記第1電力削減要請が削減要求する電力量である削減目標量と、前記複数の対象需要家に対して予測した前記削減電力量の合計との差に基づいて、前記複数の対象需要家の少なくとも1つが保有する蓄電池の放電計画を作成する計画作成部と、
前記第1電力削減要請を前記複数の対象需要家の需要家システムに送信し、前記放電計画を、前記蓄電池を含む蓄電池システムに送信する通信部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記計画作成部は、前記予測した削減電力量の合計が、前記削減目標量よりも小さい時間帯について、前記予測した削減電力量の合計と、前記時間帯における前記蓄電池の放電量との合計が前記削減目標量以上又は前記削減目標量±10%の範囲内となるように、前記蓄電池の前記放電計画を作成する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記計画作成部は、前記蓄電池の充電計画を作成し、
前記計画作成部は、前記予測した削減電力量の合計が、前記削減目標量よりも大きい時間帯については、前記予測した削減電力量の合計から、前記時間帯における前記蓄電池の充電量を減算した値が、前記削減目標量以上となるように、前記蓄電池の前記充電計画を作成し、
前記通信部は、前記充電計画を前記少なくとも1つの対象需要家の前記需要家システムに送信する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記電力削減要請で電力削減を行うことを要請された期間において、前記需要家システム又は系統運用者システムと通信して、前記対象需要家が削減した電力を算出し、前記削減した電力と前記削減目標量との差に基づき、前記放電計画に追加する放電量を決定し、決定した放電量の放電を行うよう前記蓄電池システムを制御する蓄電池制御部
を備えた請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
2以上の前記対象需要家が蓄電池を保有しており、
前記蓄電池には優先度が設定されており、
前記処理部は、前記優先度に基づき、前記2以上の対象保有家が保有する蓄電池から、放電を行う蓄電池を選択し、選択した蓄電池の前記放電計画を作成する
請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
2以上の前記対象需要家が蓄電池を保有しており、
前記処理部は、前記蓄電池の応答遅延時間に基づき、前記2以上の対象需要家が保有する前記蓄電池のうち、放電を行う蓄電池を選択し、選択した蓄電池の前記放電計画を作成する
請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記複数の対象需要家のそれぞれの電力削減量の分布に基づき、前記複数の対象需要家の削減電力量を予測する
請求項1~6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
電力削減要請に対する複数の需要家の電力削減履歴に基づき、前記複数の需要家のうち第1電力削減要請を行う対象となる複数の対象需要家を選択し、前記第1電力削減要請に対する前記複数の対象需要家の削減電力量を予測するステップと、
前記第1電力削減要請が削減要求する電力量である削減目標量と、前記複数の対象需要家に対して予測した前記削減電力量の合計との差に基づいて、前記複数の対象需要家の少なくとも1つが保有する蓄電池の放電計画を作成するステップと、
前記第1電力削減要請を前記複数の対象需要家の需要家システムに送信し、前記放電計画を、前記蓄電池を含む蓄電池システムに送信するステップと、
を備えた情報処理方法。
【請求項9】
電力削減要請に対する複数の需要家の電力削減履歴に基づき、前記複数の需要家のうち第1電力削減要請を行う対象となる複数の対象需要家を選択し、前記第1電力削減要請に対する前記複数の対象需要家の削減電力量を予測するステップと、
前記第1電力削減要請が削減要求する電力量である削減目標量と、前記複数の対象需要家に対して予測した前記削減電力量の合計との差に基づいて、前記複数の対象需要家の少なくとも1つが保有する蓄電池の放電計画を作成するステップと、
前記第1電力削減要請を前記複数の対象需要家の需要家システムに送信し、前記放電計画を、前記蓄電池を含む蓄電池システムに送信するステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、その方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力の使用抑制を促し、ピーク利用時の電力消費を抑制することで、電力の安定を図るデマンドレスポンス(電力削減)が提唱されている。
【0003】
ネガワットアグリゲーション事業においては、アグリゲート事業者(アグリゲータ)が、料金設定を行ったり、ピーク時に使用を控えた需要家に対して対価を支払ったりするなどの方法で、ネガワット(negawatt power)を需要家から収集する。ネガワットとは、通常の電力需要(正の電力)と対比する意味で、電力需要の減少分(負の電力)のことをいう。ネガワットを需要家から収集することで、電力消費を削減することができる。
【0004】
現行の制度設計では、アグリゲータは、あらかじめ系統運用者、小売電気事業者、親アグリゲータ等(以下、これらを総称して系統運用者という)との間で電力の削減量に関する契約を結ぶ。アグリゲータは、契約した削減量を達成できるかどうかにより、成功報酬を得る。アグリゲータは、系統運用者からの要求に基づいて電力削減要請であるデマンドレスポンス要請(DR要請)を行う対象となる需要家を選択し、選択した需要家を対象にデマンドレスポンス要請を行うことができる。アグリゲータは、選択した需要家の電力削減量の合計量として、契約した削減量を達成できればよい。しかしながら、需要家の削減量が、見込んでいた量から変動すると、アグリゲータの失敗リスクが高まる恐れがある。特にDR要請からDR実施までの時間が短いファストDRの場合、DR実施期間の最初の時間帯では需要家の反応が間に合わない可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-228148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、所望の電力削減量を達成できるように需要家の選択を行うことを可能とする情報処理装置、その方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の情報処理装置は、電力削減要請に対する複数の需要家の電力削減履歴に基づき、前記複数の需要家のうち第1電力削減要請を行う対象となる複数の対象需要家を選択し、前記第1電力削減要請に対する前記複数の対象需要家の削減電力量を予測する処理部と、前記第1電力削減要請が削減要求する電力量である削減目標量と、前記複数の対象需要家に対して予測した前記削減電力量の合計との差に基づいて、前記複数の対象需要家の少なくとも1つが保有する蓄電池の放電計画を作成する計画作成部と、前記第1電力削減要請を前記複数の対象需要家の需要家システムに送信し、前記放電計画を、前記蓄電池を含む蓄電池システムに送信する通信部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るデマンドレスポンスシステムの概略構成のブロック図。
図2】デマンドレスポンス計画装置の機能ブロック図。
図3】削減目標情報の例を示す図。
図4】需要家の削減履歴の例を示す図。
図5】蓄電池情報の例を示す図。
図6】削減シナリオの例を示す図。
図7】放電計画の作成例及びシナリオの実行の成功と失敗を説明するための図。
図8】第1の実施形態の具体例の説明図。
図9】DR計画装置により選択された需要家を特定する出力情報の例を示す図。
図10】第1の実施形態に係るデマンドレスポンス計画装置のハードウェアブロック図。
図11】第1の実施形態に係る動作のフローチャート。
図12】第2の実施形態に係るシナリオ元データの具体例を示す図。
図13】第3の実施形態で選択された需要家によるシナリオの具体例を示す図。
図14】第4の実施形態で選択された需要家によるシナリオの具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るデマンドレスポンスシステム(DRシステム)の概略構成のブロック図である。本実施形態に係るDRシステムは、本実施形態に係る情報処理装置であるデマンドレスポンス計画装置(DR計画装置)101と、系統運用者システム201と、複数の需要家がそれぞれ運用を行う需要家システム301とを備える。複数の需要家の全部又は一部は、蓄電池システム311を有している。需要家システム301は、DR計画装置101と情報を通信する通信装置を含み、蓄電池を保有している需要家の需要家システム301は、蓄電池システム311を含む。蓄電池システム311は、蓄電池(2次電池)1、蓄電池の充放電を制御する制御装置2、DR計画装置101と通信する通信装置3を含む。DR計画装置101及び系統運用者システム201間、及びDR計画装置101及び需要家システム301間は、通信媒体を介して接続されている。通信媒体は、インターネット回線等の広域ネットワークでもよいし、専用線であってもよい。また通信媒体は、必ずしも通信ネットワークである必要はなく、電話回線などの別の通信手段でもよい。需要家システム301が備える通信装置と蓄電池システム311はそれぞれ別の通信媒体を介してDR計画装置101と通信してもよいし、同じ通信媒体を介してDR計画装置101と通信してもよい。
【0011】
系統運用者システム201は系統運用者(例えば電力会社)が保有するシステムであり、アグリゲータに、電力削減要請であるDR要請を発行する。DR計画装置101はアグリゲータが保有するシステムであり、DR要請に従って、DR計画を作成する。DR計画装置101は、作成したDR計画に従って需要家に電力削減を要請する。DR計画装置101は、DR計画の実行の一環として、蓄電池システム311との通信を介し、需要家における蓄電池1の充電及び放電の少なくとも一方を制御することができる。本実施形態では放電の両方を制御できるとするが、充電及び放電の両方、又は充電のみを制御可能でもよい。
【0012】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置であるDR計画装置101の機能ブロック図である。DR計画装置101は、系統運用者からのDR要請に基づいて複数の需要家のうちから選択した需要家に対して需要電力の削減を要請するためのDR計画を作成するとともに、DR計画の成功確率をできるだけ高めるような蓄電池1の放電計画を作成することを特徴の1つとする。
【0013】
DR計画装置101は、DR計画最適化部20と、通信部30と、入出力I/F27と、シナリオ作成部21と、操作入力部28と、表示部29と、需要家削減履歴DB_40と、削減シナリオDB_41と、削減目標量DB_42と、計画作成パラメータDB_43と、蓄電池情報DB_44と、充放電計画DB_45と、DR要請需要家組合せDB_46と、を備えている。通信部30は、情報通信部25と蓄電池制御部26とを備えている。シナリオ作成部21は、需要家組合せ作成部22を備えている。DR計画最適化部20は、充放電計画作成部23と、処理部24とを備えている。
【0014】
情報通信部25は、系統運用者システム201及び需要家システム301と、上述した通信媒体を介して通信を行う。需要家システム301は、需要家がDR計画装置101(アグリゲータ)から情報を受け取ったり、アグリゲータに情報を送ったりするためのシステムである。需要家システム301は、スマートフォン等の移動体端末でもよいし、DR計画装置101と通信するための専用装置でもよいし、一般的なパーソナルコンピュータでもよいし、電話でもよい。DR計画装置101が需要家に通知する情報の例として、本実施形態によって選択した需要家に送信するDR要請がある。また、需要家宅内の電力消費履歴の送信指示、需要家情報の送信指示などもある。需要家がDR計画装置101に送信する情報として、これらのDR計画装置101の指示に応じて送信する情報がある。DR計画装置101及び需要家システム301間で送受信する情報はこれらに限定されない。
【0015】
操作入力部28は、アグリゲータのオペレータが各種操作又はデータの入力を行うためものである。操作入力部28は、一例として、キーボード、マウス、タッチパネル、スマートフォン等の移動体端末である。
【0016】
表示部29は、各種情報を表示するため表示装置である。表示装置の例は、液晶表示装置、有機EL表示装置、又はCRT表示装置である。
【0017】
入出力I/F27は、操作入力部28及び表示部29と接続され、入出力のインタフェース動作を行う。操作入力部28及び表示部29との接続は、有線又は無線のいずれでもよい。
【0018】
削減目標量DB_42は、アグリゲータと系統運用者間の契約に基づく電力の削減目標量に関する情報(削減目標情報)を記憶する。
【0019】
図3は、削減目標量DB_42に格納された削減目標情報の例を示す。削減目標情報は、系統運用者とアグリゲータ間の契約に基づき、例えば1年契約単位で定められる。具体例として、「8:00-17:00の間の任意の時間帯について、最大継続時間8時間として、削減目標量以上の電力削減を実施する」といったものがある。系統運用者はこの契約に基づき、DR要請を発行する。発行したDR要請は、DR要請の指定期間(DR実施期間)と、当該期間の各時間帯(スロット)の削減目標情報とを含む。削減目標量DB_42は、DR要請に含まれる削減目標情報を、DR要請の指定期間(DR実施期間)に関連づけて内部に格納する。ただし、削減目標量の値が予め決められている場合には、DR要請にはDR実施期間の情報のみ含まれ、削減目標量の値が含まれていなくてもよい。また、DR実施期間が予め決められている場合は、DR要請にはDR実施期間の情報を含めなくてもよい。
【0020】
図3の削減目標情報は、需要家全体として、指定期間としての13:00-15:00の各30分帯(4スロット分)全てで20kWh削減させることが要請されている(指定期間の表記は省略している)。各スロットで20kWh削減させることが、アグリゲータの目標となる。系統運用者システム201は、このようなDR要請は、一例として、所定の時点又は任意に決めた時点において(例えばDR期間の一定時間前に)、DR計画装置101に送信する。例えば、12:45時点において、13:00-15:00の各30分帯(4スロット分)全てで、契約で定めた電力量(例えば20kWh)を削減することを要請する。
【0021】
アグリゲータと系統運用者間の契約においては、この削減目標量を基にした成功条件が定められている。成功条件を満たした場合には、系統運用者がアグリゲータに何かしらのインセンティブを与え、満たさない場合には、系統運用者がアグリゲータに対して何らかのペナルティを課すことがある。成功条件の情報は、削減目標量DB_42に格納されていてもよい。あるいは成功条件の情報が、本実施形態の動作を実現するプログラムコード内に記述されていてもよい。
【0022】
成功条件の第1の例として、全てのスロットのそれぞれにおいて、DR実施の対象として選択された需要家の電力削減量の合計が、削減目標量以上となることがある。
【0023】
成功条件の第2の例として、全てのスロットのそれぞれにおいて、DR実施の対象として選択した需要家の電力削減量の合計が、所定の目標範囲に収まることがある。所定の目標範囲の例として、削減目標量の90%以上110%以下がある。
【0024】
ただし、成功条件の例は、これらに限定されない。
【0025】
また上記第1及び第2の例の成功条件では、全てのスロットで条件(第1の例の条件又は第2の例の条件)を満たすことを要求しているが、一部のスロットで条件を満たす場合に、部分的な成功を決定してもよい。部分的な成功の場合、ペナルティが減額されるようにしてもよい。
【0026】
スロットの実際の電力削減量は、一例として、スロットごとに定められたベースライン電力と、DR要請された需要家の受電電力(消費電力)の合計との差分により計算される。ベースライン電力の計算方法には、標準ベースラインとされるHigh 4 of 5(当日調整あり)法の他、High 4 of 5(当日調整なし)法、同等日採用法、事前計測法などさまざまな手法が知られているが、どのような手法でベースライン電力を計算してもよい。DR要請された需要家の消費電力の情報は、例えば需要家が保有するスマートメータから情報通信部25が受信してもよいし、情報通信部25が、需要家の消費電力を管理するサーバから受信してもよい。または、DR要請された需要家の消費電力の情報を、DR計画装置101ではなく、系統運用者システム201が受信してもよい。DR要請の成功又は失敗をDR計画装置101が判定してもよいし、系統運用者システム201が判定してもよい。需要家の蓄電池1が放電を行った場合、計測される電力削減量には、蓄電池1からの放電量も含まれる。
【0027】
需要家削減履歴DB_40は、過去のDR要請(電力削減要請)に対する各需要家の電力削減履歴の情報を格納する。
【0028】
図4に、需要家削減履歴DB_40に格納された各需要家の電力削減履歴の例を示す。図4の情報は、過去のDR要請時おける各需要家A,B,Cの電力削減実績を含む。ここでは需要家の数は3であるが、実際には4以上でもよいし、2でもよい。需要家ごとにDR要請のあった日が異なっている。各需要家について、DR要請があった日ごとに4スロットの電力削減実績が例示している。
【0029】
例えば、需要家A(需要家IDがAの需要家)では、8/1 13:00-15:00と、8/3 13:00-15:00と、8/5 13:00-15:00にDR要請があり、スロット1~4の電力削減実績が示されている。例えば8/1のスロット1(13:00-13:30)では、8kWh、スロット2(13:30-14:00)では10kWh、スロット3(14:00-14:30)では11kWh、スロット4(14:30-15:00)では10kWhの電力削減の実績があったことが示される。需要家の各日の削減実績には、各日の履歴を区別するための個別履歴IDが付与されている。各日の履歴データは、需要家ID、DR実施期間、個別履歴ID、各スロットの削減実績を含む。
【0030】
図4の情報から、各需要家におけるDR要請の対応状況に様々な傾向があることが理解される。
【0031】
例えば、需要家Aは、DR実施の開始タイミング(立ち上がりタイミング)に、ばらつきがある需要家の例である。8/1では最初のスロットから電力削減を行っているが、8/3は2番目のスロットから、8/5は3番目のスロットからしか電力削減を行っていない。
【0032】
需要家Bは、DR実施日間で電力削減量にばらつきがある需要家の例である。8/1は平均13.5kWhの削減を行っているが、8/5は平均9.25kWh、8/8は平均5.5kWhしか、電力削減していない。
【0033】
需要家Cは、電力削減の実行/非実行にばらつきがある需要家の例である。8/5と8/8は平均10kWh程度の電力削減をしているが、8/12に関しては、電力削減をしておらず、むしろ10kWh以上、需要(電力消費)が増加している。需要増加の場合、電力削減量の値は負の値によって表している。
【0034】
なお、ここではDR要請日におけるDR継続時間(DR実施期間)は4スロットであったが、5スロット以上の場合は5以上のスロットの実績を格納してもよい。あるいは、別の方法として、格納する実績を4スロットに固定してもよい。この場合、4スロットより長いDR実施期間の日がある場合、最初の4スロットの実績のみを取り出してもよい。逆に、DR実施期間が4スロットに満たない日がある場合に、機械学習手法などにより、不足するスロットの値を、補完処理により算出してもよい。またある日のDR実施の時間帯が他の日の時間帯と異なる場合に、典型的な需要曲線による補正をしてもよい。さらにDR要請日のベースラインやDR開始直前の需要カーブが、通常の日のベースラインや需要カーブの傾向と異なる場合には、その差分により、削減量の補正をしてもかまわない。
【0035】
蓄電池情報DB_44は、各需要家の蓄電池1の蓄電池情報を格納する。
【0036】
図5に、蓄電池情報DB_44に格納された各需要家の蓄電池情報の例を示す。図5の情報は、各需要家A,B,Cにおける蓄電池の有無と、有りの場合の、単位時間当たり(1スロット当たり)の電力出力量及び電池容量の値などを含む。電力出力量及び容量以外の例として、単位時間当たり(1スロット当たり)の電力の充電量(充電速度)、通信に対する応答遅れ時間(DR計画装置101から蓄電池に対する指示を送信してから当該指示が反映されるまでの時間)、蓄電池の劣化度、DR実施中に蓄電池が放電又は充電に使用される優先度等の情報がある。充電速度、応答遅れ時間、劣化度、又は優先度等を用いた例は後述する実施形態で説明する。需要家が、特性の異なる蓄電池を2以上保有する場合、蓄電池ごとに情報を登録してもよい。
【0037】
シナリオ作成部21における需要家組合せ作成部22は、DR要請(第1電力削減要請)を行う対象となる需要家組合せs(k)を作成する。需要家組合せs(k)の作成方法としては、ランダムに作成したり、全ての組合せを作成したりする方法がある。また、直前に作成したk-1番目の需要家組合せs(k-1)に近い組合せ(需要家の一部を他の需要家と置き換えたり、削除したり、新たな需要家を追加する等)を選択する方法もある。あるいは、シミューレーティッドアニーリング、タブーサーチ、遺伝的アルゴリズム等の公知のメタヒューリスティック手法を用いて需要家組合せを作成するようにしてもよい。需要家A,B,Cの場合、需要家組合せの例として(A,B,C)、(A,B)、(A,C)、(B,C)がある。需要家組合せとして単数の需要家を許容する場合は、これらの組合せに加えて、需要家A、需要家B、及び需要家Cを追加すればよい。
【0038】
シナリオ作成部21は、需要家削減履歴DB_40を用いて、需要家組合せ作成部22で作成された需要家組合せごとに、DR実施期間における電力の削減シナリオ(以下、単にシナリオと呼ぶ)を生成する。シナリオは、需要家組合せについて、スロット毎の合計削減量の予測値を表す。具体的には、シナリオは、需要家削減履歴DB_40から需要家組合せに含まれる各需要家の任意の日(DR要請日)の履歴データを抽出し、抽出した履歴データの電力削減量をスロット毎に合計したものである。シナリオ作成部21は、作成したシナリオを削減シナリオDB_41に格納する。削減シナリオDB_41は、シナリオ作成部21が作成したシナリオを格納する。
【0039】
図6(A)は、削減シナリオDB_41に格納されたシナリオの例を示す。各需要家組合せについて複数のシナリオが生成されている。具体的に、需要家組合せ(A,B,C)に対して27個のシナリオABC1~ABC27、需要家組合せ(A,B)に対して9個のシナリオAB1~AB9、需要家組合せ(A,C)に対して9個のシナリオAC1~AC9、需要家組合せ(B,C)に対して9個のシナリオBC1~BC9が生成されている。「*」の需要家はシナリオが生成された需要家組合せに含まれないことを意味する。例えば、シナリオAB1は需要家A、Bの履歴データから生成されており、需要家Cの履歴データは用いられていない。図4の例では各需要家の履歴データは3個ずつであることから、需要家組合せが(A,B,C)の場合、全部で3×3×3=27個のシナリオが生成される。2つの需要家の組合せの場合、それぞれ3×3=9個のシナリオが生成される。但し、シナリオとしては、ランダムに一部のみを選択、例えば需要家組合せ(A,B,C)の場合、27個のシナリオのうちの一部をランダムに選択してもよい。また、複数の需要家で共通の日の履歴データは、同じシナリオに含めるなどの工夫をしてもよい。
【0040】
各シナリオには、シナリオの生成に用いた各需要家の個別履歴IDと、個別履歴IDの履歴データのスロット毎の電力削減量の合計値とが含まれる。例えばシナリオABC4は、需要家Aの個別履歴ID=1の日の履歴データ、需要家Bの個別履歴ID=2の日の履歴データ、需要家Cの個別履歴ID=1の日の履歴データを、スロット毎に合計したものである。
【0041】
具体的には、スロット1,2,3,4の電力削減量を(x1,x2,x3,x4)と表すと、需要家Aの個別履歴ID=1の電力削減量は(8,10,11,10)、需要家Bの個別履歴ID=2の電力削減量は(8,12,9,8)、需要家Cの個別履歴ID=1の電力削減量は(10,11,10,11)である。よって、シナリオABC4のスロット毎の電力削減量の予測値は、これらの需要家の電力削減量を合計することにより、計算される。
すなわち、(8,10,11,10)+(8,12,9,8)+(10,11,10,11)=(26,33,30,29)、のように計算される。
【0042】
DR計画最適化部20は、削減シナリオDB_41に基づき、DR実施対象として需要家を選択し、選択した需要家(対象需要化)の電力削減量の予測値に基づき、選択した需要家が保有する蓄電池の少なくとも1つの放電計画を作成し、選択した需要家の情報と、作成した放電計画とを含む、DR計画を作成する。以下、DR計画最適化部20の詳細を説明する。
【0043】
DR計画最適化部20の充放電計画作成部23は、各需要家組合せ作成部22が作成した需要家組合せごとに、各シナリオに対する放電計画を作成する。作成した放電計画を、充放電計画DB_45に格納する。DR計画最適化部20の処理部24は、作成された放電計画とシナリオとに基づき、シナリオの実行の成功又は失敗を判定する。
【0044】
放電計画とは各スロットに対する蓄電池(シナリオに含まれる需要家の保有する蓄電池)の放電量を計画することである。蓄電池からの放電量はDR実施において電力削減量として扱う。これは、放電量の電力だけ、系統の電力消費を削減できることになるからである。放電計画を作成することは、各スロットに対する放電量をゼロとする場合も含む。例えば放電を行わなくともシナリオの実行が成功する場合には各スロットに対する放電量をゼロとしてもよい。
【0045】
シナリオの実行の成功とは、シナリオに含まれる需要家の全てにDR実施を要請し、全ての需要家がシナリオの通りに電力削減し、需要家の蓄電池で放電計画通りの放電が行われたとした場合(放電を行わない場合、すなわち放電量がゼロの場合も含む)に成功条件が満たされることをいう。シナリオの実行の失敗とは、蓄電池情報の制約(蓄電池制約)を満たす放電計画を作成できず、シナリオに含まれる需要家の全てにDR実施を要請し、全ての需要家がシナリオの通りに電力削減したとしても、成功条件が満たすことができないことをいう。充放電計画作成部23は、需要家組合せ毎に、各シナリオの実行の成功及び失敗を判定し、成功と失敗の回数の比率に基づき、需要家組合せ毎に成功率rateを計算する。
【0046】
図7を用いて放電計画の作成例、及びシナリオの実行の成功・失敗の判定例を説明する。図7(A)は、作成した放電計画によりシナリオの実行が成功する例を示し、図7(B)は、蓄電池情報の制約(蓄電池制約)を満たす放電計画が作成できず、シナリオの実行が失敗となる例を示している。
【0047】
図7(A)では、需要家組合せ(A,B,C)のあるシナリオにおけるスロット1~4の電力削減量が(12,16,22,25)である。この場合に、最初のスロット1から順に、電力削減量が20kWh以上となるように、需要家Aの蓄電池の放電量を決定していくと、放電計画のスロット1~4の放電量は(8,4,0,0)となる。この場合、スロット1~4の合計削減量は(20,20,22,25)となる。
【0048】
各スロットの蓄電池の放電量は、蓄電池情報DB_44(図4)で定められた出力10kWh/slot以下である。また全スロット合計の放電量は12(=8+4+0+0)kWhであり、この値は、蓄電池情報DB_44で定められた需要家Aの蓄電池の容量である20kWh以下である。よって、この放電計画は、蓄電池情報の制約を満たす。
【0049】
よって、図7(A)の場合、全スロットの電力削減量が20kWh以上であり、放電計画は蓄電池情報の制約を満たすことから、シナリオ通りに需要家が電力削減を行い、放電計画が実行されれば、DR要請の実行は成功する。よって、このシナリオの実行は成功と判断する。マージンを考慮して、スロット毎の削減量が契約で定めた削減量(20kWh)に一定の電力量を加算し、出来るだけ、当該加算した電力量以上となるように放電量を決定してもよい。
【0050】
なお、需要家の蓄電池には、一定電力量又は電池容量の所定割合の電力量が、アグリゲータから需要家に又は系統運用者からアグリゲータにDR要請が発行される可能性のある時刻に残存しているとする。このようなことは、アグリゲータと需要家との間で定めた契約で実現してもよいし、別の方法で実現してもよい。蓄電池には夜間充電又は太陽光発電パネルの発電電力の充電など、任意の方法で蓄電池を充電してもよい。
【0051】
ここでは需要家A~Cのうち需要家Aのみが蓄電池を保有しているが、他の需要家が蓄電池を保有している場合は、1又は複数の需要家の蓄電池の放電量を決定し、決定した放電量の合計と、電力削減量との合計がスロット毎に、20kWh以上となればよい。
【0052】
一方、図7(B)では、あるシナリオにおいてスロット1~4の電力削減量が(11,13,15,25)である。この場合に、最初のスロット1から順に、電力削減量が20kWh以上となるように、需要家Aの蓄電池の放電量を決定していくと、放電計画のスロット1~4の放電量は(9,7,5,0)となる。合計削減量は(20,20,20,25)となる。
【0053】
しかしながら、この場合、需要家Aの蓄電池の全スロット合計の放電量が21(=9+7+5+0)(kWh)となる。この値は、蓄電池情報DB_44で定められた容量である20kWhを超えている。よって、このシナリオの実行は実現できないため失敗と判断される。
【0054】
シナリオによっては各スロットの放電量がゼロでも(放電計画を行わなくても)、シナリオの実行が成功と判断される。例えば、図6のシナリオABC4に含まれる需要家の全てにDR実施を要請し、全ての需要家がシナリオABC4の通りに電力削減する場合は、蓄電池からの放電を行わなくとも、全てのスロットにおいて合計削減量が20kWh以上であるため、DR実施は成功となる。シナリオ1及びシナリオ2等の場合も同様に成功となる。
【0055】
以上のような方法で、充放電計画作成部23は、需要家組合せ毎に、各シナリオに対する蓄電池の放電計画を生成し、処理部24は、放電計画に基づき、各シナリオの実行に対する成功又は失敗を判断する。例えば、需要家組合せ(A,B,C)の場合、27個のシナリオが存在し、そのうち18個のシナリオで実行が成功し、成功率rate=18/27=66.7%となる。その他の需要家組合せ(A,C)、(A,B)、(B,C)についても同様に成功率を計算できる。
【0056】
図8に、各需要家組合せの各シナリオについて、スロット毎の電力削減量Q、放電計画におけるスロット毎の放電量P、放電量Pの放電を行った場合のスロット毎の電力削減量S(電力削減量Qに放電量Pを加算したもの)、各スロットの電力削減量Sの最小値、シナリオの実行の成功又は失敗のフラグをまとめた結果表を示す。但し、この例では、需要家組合せ(A,B)部分のみ示し、その他の需要家組合せの表部分は省略している。各需要家組合せについて成功(○)の数と、失敗(×)の数の比率を計算することで成功率rateを計算できる。
【0057】
ここでは需要家組合せ(A,B)の成功率rateが最も高いため、処理部24は、需要家A,BをDR要請する需要家として選択する。なお、計画作成パラメータDB_43は、処理部24が本実施形態の処理を行う際に用いる演算用のパラメータを格納している(詳細は後述する)。
【0058】
また、処理部24は、選択した需要家に適用する放電計画(適用放電計画)を決定する。適用放電計画は、例えば選択した需要家組合せの各シナリオの放電計画から任意に選択した1つでもよいし、各シナリオの放電計画の平均(ただし蓄電池情報の制約を満たす必要がある)でもよいし、その他の方法で定めてもよい。
【0059】
処理部24は、選択した需要家を特定する情報と、適用放電計画とを含む出力情報(DR計画)を生成する。生成したDR計画を、DR要請需要家組合せDB_46に格納する。この際、DR計画を、系統運用者システム201から受信したDR要請の情報と関連づけてもよい。
【0060】
処理部24は、生成されたDR計画を、表示部29に表示してもよい。
【0061】
図9に、表示部29の表示例を示す。DR計画のうち、選択した需要家を特定する情報の例を示す。DR実施を要請する対象となる需要家に○が、それ以外の需要家に×が付けられている。また、適用放電計画の情報を表示部29に表示してもよい。
【0062】
情報通信部25は、DR計画に基づき、選択された需要家の需要家システム301に、DR実施の要請を、DRの開始時刻又はそれより一定時間前に送信する。DR実施の要請に、DR要請の期間の情報を含めてもよい。また、当該DR実施の要請に、需要家に期待する電力削減量の情報等を含めてもよい。需要家に期待する電力削減量は、所定値でもよいし、需要家と契約で定めた値でもよいし、その他の値でもよい。
【0063】
蓄電池制御部26は、DR計画に含まれる適用放電計画(すなわちスロット毎の放電指示)を、需要家(本例では需要家A)の蓄電池システム311に送信する。蓄電池システム311の制御装置2は、適用放電計画に従って蓄電池1の充放電を行う。これにより蓄電池1の放電を制御する。本装置101でリアルタイムに、各選択した需要家の電力削減量を算出し、成功条件を満たさなくなる可能性が高いと判断した場合(例えばスロットの終了の一定時間前に契約で定めた削減量の所定パーセントの電力量の削減を達成できていないとき)、放電計画で定められていなくても、放電を行うように蓄電池システム311に放電指示(放電計画の修正指示)を出力してもよい(但し、蓄電池情報の制約は満たすものとする)。選択した需要家のリアルタイムの電力削減量の情報を表示部29に表示し、オペレータが必要と判断した場合に、蓄電池システム311に対する放電の指示を、オペレータが操作入力部28を用いて入力し、当該指示に基づき蓄電池システム311に放電指示を出力してもよい。
【0064】
DR計画装置101は、需要家組合せを決定する処理を、系統運用者システム201からDR要請を受信した際に行ってもよいし、予めDR要請を受信する前に行ってもよい。
【0065】
図10に、本実施形態に係るDR計画装置(情報処理装置)101のハードウェア構成を示す。本実施形態に係る情報処理装置101は、コンピュータ装置150により構成される。コンピュータ装置150は、CPU151と、入力インタフェース152と、表示装置153と、通信装置154と、主記憶装置155と、外部記憶装置156とを備え、これらはバス157により相互に接続されている。
【0066】
CPU(中央演算装置)151は、主記憶装置155上で、情報処理装置101の上述の各機能構成を実現するコンピュータプログラムを実行する。CPU151が、コンピュータプログラムを実行することにより、各機能構成は実現される。
【0067】
入力インタフェース152は、キーボード、マウス、及びタッチパネルなどの入力装置からの操作信号を、情報処理装置101に入力するための回路である。
【0068】
表示装置153は、情報処理装置101から出力されるデータ又は情報を表示する。表示装置153は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、CRT(ブラウン管)、及びPDP(プラズマディスプレイ)であるが、これに限られない。コンピュータ装置150から出力されたデータ又は情報は、この表示装置153により表示することができる。
【0069】
通信装置154は、情報処理装置101が外部装置と無線又は有線で通信するための回路である。通信装置154を介して外部装置から情報を入力することができる。外部装置から入力した情報を、DBに格納することができる。情報通信部25、及び蓄電池制御部26のうち通信機能を担う部分は、通信装置154上に構築されることができる。
【0070】
主記憶装置155は、本実施形態の処理を実現するプログラム、及びプログラムの実行に必要なデータ、及びプログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。プログラムは、主記憶装置155上で展開され、実行される。主記憶装置155は、例えば、RAM、DRAM、SRAMであるが、これに限られない。各実施形態における各種DB及び記憶部は、主記憶装置155上に構築されてもよい。
【0071】
外部記憶装置156は、上記プログラム及びプログラムの実行に必要なデータ、及びプログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。これらのプログラムやデータは、本実施形態の処理の際に主記憶装置155に読み出される。外部記憶装置156は、例えば、ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、及び磁気テープであるが、これに限られない。各実施形態における各種DB及び記憶部は、外部記憶装置156上に構築されてもよい。
【0072】
なお、上述のプログラムは、コンピュータ装置150に予めインストールされていてもよいし、CD-ROMなどの記憶媒体に記憶されていてもよい。また、当該プログラムは、インターネット上にアップロードされていてもよい。
【0073】
なお、コンピュータ装置150は、プロセッサ151、入力インタフェース152、表示装置153、通信装置154、及び主記憶装置155を、それぞれ1つ又は複数備えてもよいし、プリンタやスキャナなどの周辺機器を接続されていてもよい。
【0074】
また、情報処理装置101は、単一のコンピュータ装置150により構成されてもよいし、相互に接続された複数のコンピュータ装置150からなるシステムとして構成されてもよい。
【0075】
図11は、本実施形態のDR計画装置101の動作を表すフローチャートである。本動作は、系統運用者システム201からDR要請を受けたときに行ってもよいし、所定の時刻(例えばDR要請を受ける可能性がある時刻の一定時間前)に行ってもよいし、その他のタイミング(例えばオペレータが指示したタイミング)で行ってもよい。
【0076】
まずDR計画装置101は、入出力I/F27及び情報通信部25の少なくとも一方を通して、需要家削減履歴DB_40、削減目標量DB_42、計画作成パラメータDB_43、蓄電池情報DB_44の少なくとも1つに格納する情報を取得し、取得した情報をこれらのDBに格納する(ステップS1)。事前にこれらのDBに情報が格納されている場合は本ステップでの情報の格納は必要ない。
【0077】
次にステップS2では、シナリオ作成部21が需要家組合せを生成し、需要家削減履歴DB_40の各需要家の履歴データを元に、各需要家組合せについて、1つ又は複数の電力量削減のシナリオを作成する。作成したシナリオを、削減シナリオDB_41に格納する。需要家組合せは、需要家削減履歴DB_40に登録されている需要家削減履歴に含まれる需要家を対象に生成してもよいし、需要家の情報を登録したDBを別途用意し、当該DBを用いて行ってもよい。
【0078】
次にステップS3では、処理部24が、成功率を格納するパラメータであるrate_maxを0%に初期化する。初期化したパラメータを、計画作成パラメータDB_43に格納する。
【0079】
次に、k=1~Kmaxについて、k=1から需要家組合せs(k)を順次生成し、需要家組合せs(k)を生成するごとに、ステップS4~S7の処理を行う。Kmaxは、一例として、需要家組合せ数の最大値に対応する。以下、ステップS4~S7の詳細を説明する。
【0080】
ステップS4では、前回のkに1を加算して、k番目の需要家の組合せs(k)を生成する。初回はk=1として処理を行う。
【0081】
次にステップS5では、需要家の組合せs(k)に対する各シナリオに対して、系統運用者とアグリゲータ間の削減契約量に基づき、需要家組合せに含まれる需要家が保有する蓄電池の放電計画(bで表す)を作成する。作成した放電計画と、蓄電池情報に基づき、各シナリオの実行の成功又は失敗を判定する。成功と失敗の回数の比率に基づき、DR実施の成功率rateを計算する。
【0082】
ステップS6では、ステップS5で計算した成功率rateが、rate_maxより大きいかを判断する。rateがrate_maxより大きい場合には(YES)、ステップS7において、rate_maxを、成功率rateによって更新する。また、このときの需要家組合せs(k)によってs*を更新する。また需要家組合せs(k)のシナリオのうち成功したシナリオに対応する放電計画bに基づき適用放電計画brを決定し、決定した適用放電計画brによってb*を更新する。適用放電計画brは、例えば上記成功したシナリオに対応する放電計画bから選択した1つの放電計画でもよいし、上記成功したシナリオに対応する放電計画bの平均値でもよいし(ただし蓄電池情報の制約を満たす必要がある)、その他の方法で決めてもよい。s*及びb*の初期値は任意でよい。一方、rateがrate_max以下の場合には(NO)、rate_max、s*、及びb*を、更新しない。
【0083】
Kmax番目の需要家組合せs(Kmax)についてステップS4~S7の処理が完了すると、結果的に、Kmax個の需要家組合せのうち、成功率が最大となる需要家組合せを示す値がs*に格納され、また、その場合の蓄電池の放電計画がb*に格納される。
【0084】
以上、本実施形態によれば、需要家の蓄電池を用いて、DR実施時の需要家の電力削減量の変動を吸収することで、系統運用者からのDR要請の実行の成功率を高めるDR計画の作成(DR要請を行う対象となる需要家の選択と、適用放電計画の決定)が可能となる。
【0085】
本実施形態では、需要家組合せごとに履歴データを組み合わせて1つ又は複数のシナリオを作成し、シナリオの実行の成功率の高い需要家組合せを選択したが、需要家ごとに削減量予測モデルを作成し、削減予測モデルを用いて、DR要請対象の需要家を選択してもよい。例えば、スロット1~4の予測削減量を正規分布など確率分布(削減量予測モデルに対応する)からサンプリングし、需要家ごとに履歴データに相当するサンプリングデータを1つ又は複数、生成する。前述した実施形態の履歴データをサンプリングデータと読み替えて上記と同様の処理を行う。確率分布の関数形を定めるパラメータは事前に需要家削除履歴DB_40を用いてパラメータ推定により求めておけばよい。また、確率分布を需要家組合せごとに生成してもよい。この場合、需要家組合せごとにスロット1~4の予測削減量をサンプリングすればよい。また複数の需要家の間に、削減量の傾向に共通性がみられる場合(例えば業種が同じなどの理由が考えられる)、共通の事前分布を使った上でサンプリングを行うようなベイズ的な手法を用いてもよい。さらに、需要家の削減履歴の情報がない最初の段階では分散の大きな確率分布を利用し、情報が集まるにつれて確度が高まるような手法(例えば、強化学習、バンデッドアルゴリズム等の手法)を用いてもよい。
【0086】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では需要家組合せごとに生成した複数のシナリオの実行の成功率を計算し、最も成功率の高い需要家組合せと、適用放電計画とを決定した。第2の実施形態では、数理計画を用いた問題のモデル化を行い、数理計画ソルバー等を使いて問題を解くことで、第1の実施形態と同様の結果を得る。数理計画ソルバーの例として、GurobiやCPLEXがある。
【0087】
本実施形態では、シナリオ作成部21は、全需要家間で履歴データを組合せたシナリオ元データを生成する。シナリオ元データを、削減シナリオDB_41に格納する。
【0088】
図12は、削減シナリオDB_41に格納されたシナリオ元データの例を示す。
【0089】
処理部24は、複数の需要家組合せのそれぞれについて、各シナリオ元データから、需要家組合せに係るデータを抽出する。抽出したデータは第1の実施形態の当該需要家組合せのシナリオに対応する。第1の実施形態と同様に、抽出したデータ(以下、シナリオと呼ぶ)に対する放電計画を生成し、シナリオの実行が成功するかを判断し、シナリオの実行が成功するシナリオ数をカウントする。複数の需要家組合せのうちカウント値が最も大きい需要家組合せを選択する。ここで述べた処理を、下記のような混合整数線形計画で問題として定式化する。s.t.は制約条件を意味する。
【0090】
【数1】
【0091】
変数は以下の通り定義される。
xi:需要家iにDR要請を出すか(需要家iを選択するか否か)の変数
DR要請を出す場合(需要家iを選択する場合)は1、DR要請を出さない場合は0である。例えば、需要家1~3が存在する場合、(x1,2,)=(1,1,0)は、需要家1,2を選択し、需要家3を選択しないことを意味する。すなわち、需要家組合せ(1,2)を選択することを意味する。
:シナリオ元データsの場合に時刻(スロット)tにおける需要家iの蓄電池の放電量
ls:シナリオ元データsの場合にDR要請の実行に成功するか否かの変数(失敗の場合は0、成功の場合は1)
【0092】
また、定数は以下の通り定義される。
I= {1, 2, …, N}:需要家の集合
T= {1, 2, …, T}:スロットの集合
S= {1, 2, …, S}:シナリオ元データの集合
:シナリオ元データsの場合にスロットtにおいて需要家iが削減する電力量(kWh)
Ai:需要家iの蓄電池の1スロット当たりの出力量(kWh/slot)すなわち放電速度
Bi:需要家iの蓄電池の容量(kWh)
C:削減目標量(kWh)
M:十分大きな定数
【0093】
式(1)の
は、DR要請の成功回数を表す。従って、この計画を解くことで、当該成功回数を最大化する、需要家iの組合せと、当該組合せにおける需要家の蓄電池のスロット毎の出力量とを求める。なお、成功回数ではなく、成功率を最大化する場合は、(1)の式を、
【数2】
に置き換えればよい。
【0094】
式(2)は、あるシナリオ(あるシナリオ元データにおいてある需要家組合せを特定した場合)の成功条件が、電力削減量と放電量の合計がスロットごとに削減目標量以上となることであることを表す。(1-ls)Mは、あるシナリオの実行が失敗の場合に制約条件(式(2)の左辺が削減目標量C以上)を満たすための項である。Mを十分大きな定数とすることで、シナリオの実行が失敗の場合に、左辺を必ず目標電力量よりも大きくすることができる。成功の場合、(1-ls)Mはゼロになるため、電力削減量と放電量の合計がスロットごとに削減目標量C以上になるとの制約条件になる。
【0095】
式(3)は、需要家iにおいて各スロットの放電量がA以下であることを表す。なお当該需要家iにDR要請しない場合(x=0の場合)は、需要家iの蓄電池を利用しないことも同時に表している。
【0096】
式(4)は、需要家iにおける蓄電池の放電量の合計が、蓄電池の容量B以下であることを表す。
【0097】
具体例として、図3の削減目標量(削減契約量)、図5の蓄電池情報、図12のシナリオ元データを用いる場合、需要家A,B,Cをそれぞれ需要家1,2,3と表すと、
需要家集合はI = {1, 2, 3}、
スロット集合はT = {1, 2, 3, 4}、
シナリオ元データ集合はS = {1, 2, 3, …, 27}となる。
は、図12のシナリオ元データにより設定される。例えば、
は、シナリオ元データ4において需要家2(需要家B)のスロット1の電力削減量を表す。
の値は、図12から10kWhとなる。
本例においては、需要家1(需要家A)のみが蓄電池を保有しており(図5参照)、A=10(kWh/slot)、B=20(kWh)である。需要家2(需要家B)及び需要家3(需要家C)は蓄電池を保有していないため、A=B=A=B=0である。
目標電力量は各スロットでC=20、である(図3参照)。
【0098】
この例の問題を解くと、(x1,x2,x3)=(1,1,0)となる最適解が得られる。これは需要家A,BがDR要請する対象として選択されることを意味する。また、この場合の適用放電計画は、第1の実施形態と同様に算出すればよい。例えば、需要家(A,B)の場合にシナリオの実行が成功したシナリオ元データのうち任意の1つにおいて当該需要家(A,B)に対して決定された
でもよい。または、上記シナリオの実行が成功したシナリオ元データにおいて需要家(A,B)に対して決定された
の平均でもよい。その他の方法で決定してもよい。
【0099】
なお、以上の例では、複数のシナリオ元データ(図12の例では27個のシナリオ元データ)を用いたが、複数のシナリオ元データの平均をとるなどして、シナリオ元データを一つだけ作成してもよい。この場合、|S|=1となる。この場合、問題が単純化されるため、処理の高速化が期待できる。
【0100】
(第3の実施形態)
前述した第2の実施形態で選択した需要家に対してDR実施を開始した場合、予想外に消費電力が増えて、電力削減量が契約削減量(削減目標量)に達しなそうになる状況もあり得る。その場合には、DR計画装置101が、選択した需要家の蓄電池システム311とリアルタイムに通信して、出力量(放電量)を増やすように蓄電池1を制御することも可能である。しかしながら、制御指令に対する蓄電池1の応答が遅く、リアルタイムの制御が困難な状況もある。この場合、放電計画を途中から変更することは困難である。本実施形態では、このような状況を想定し、DR計画を行う際に、第2の実施形態におけるすべてのシナリオで放電計画を共通にするとの制約条件を追加する。
【0101】
この場合、第2の実施形態における放電計画の変数
を、全シナリオ元データ共通の変数
に変更した上で、下記のように定式化すればよい。式(7)、(11)、(12)は、式(1)、(5)、(6)と同じである。式(8)、(9)、(10)は、式(2)、(3)、(4)において上記変数の置換を行った式に相当する。
【0102】
【数3】
【0103】
この場合、処理部24が問題を解くことにより、(x1,x2,x3)=(1,1,1)の最適解が得られる。適用放電計画は第2の実施形態と同様にして決めればよい。
【0104】
図13に、上記最適解に基づき、各シナリオ元データにおいて需要家1~3(需要家A~C)を選択した場合、すなわち需要家A~CのすべてにDR要請をする場合の各シナリオについて、図8と同様の項目の情報を格納した表を示す。他の需要家組合せ(A,B)、(A,C)、(B,C)を選択した場合のシナリオの情報は省略する。この表は処理部24で作成される。すべてのシナリオで放電計画が共通である。すなわち、シナリオ1~27のすべてで、スロット1(t1)では6kWh、スロット2(t2)では3kWh、スロット3(t3)及びスロット4(t4)では0kWhの放電量となっている。この例では、シナリオ1~27のうち18のシナリオでシナリオの実行が成功となっている。したがって、成功率rate=18/27=66.7%となる。
【0105】
(第4の実施形態)
本実施形態では、DR実施期間中に蓄電池に充電も可能な場合を扱う。これは、DR実施期間の途中で、スロットの削減目標量又は削除量の目標範囲に対して余裕がある場合は蓄電池を充電し、その後のスロットでの放電に用いることで、蓄電池を効果的に利用できる。
【0106】
この場合、第2の実施形態における放電計画の変数
を、正の値のみでなく、負の値もとれるように定義する。正の場合は、放電を表し、負の場合は、充電を表す。本実施形態では、混合整数線形計画の問題は、下記のように定式化される。
【0107】
【数4】
【0108】
第2の実施形態に対して新たに導入された定数を以下に示す。
A’i:需要家iの蓄電池のスロット当たりの充電量(kWh/slot)すなわち充電速度
Bi0:需要家iの蓄電池の初期充電可能量(初期充電量はBi-Bi0)(kWh)
【0109】
式(14)及び式(15)は、各スロットの電力削減量を、削減目標量20kWhの90%以上110%以下(18kWh以上22kWh以下)の範囲に収めることを要求している。
【0110】
式(16)は、需要家iにおいて各スロットの放電量がA以下であることに加えて、需要家iにおいて各スロットの充電量がA’以下であることを表す。
【0111】
具体例として、充電速度(A’=10(kWh/slots))とし、上記問題を解くと、(x1,x2,x3)=(1,1,1)の最適解が得られる。適用充放電計画(各スロットの充放電量)は、第2の実施形態の適用放電計画と同様にして決めればよい。なお、上記問題を解く際に、ある需要家組合せにおいてシナリオの実行を成功にさせる放電量及び充電量の値はそれぞれ範囲を有し、範囲内のどの値を採択してもよい。一例として、充電の場合は、削減量が目標範囲の下限値又はその近傍(ただし下限値より大きい)になるようできるだけ大きな充電量を決定し、放電の場合は、削減量が目標範囲の下限値又はその近傍(ただし下限値より大きい)になるようできるだけ小さな放電量を決定してもよい。
【0112】
図14に、上記最適解に基づき、各シナリオ元データにおいて需要家1~3(需要家A~C)を選択した場合、すなわち需要家A~CのすべてにDR要請をする場合の各シナリオについて、図8と同様の項目の情報を格納した表を示す。ただし、図8の「放電量」は、「充放電量」に変更され、「放電計画込みの削除量」は「充放電計画込みの削除量」に変更されている。「充放電計画込の削除量」は、需要家A,Bの合計削除量に放電量を加算又は充電量を減算したものである。本例では、蓄電池を保有しているのは需要家Aのみであるため、充放電を行う蓄電池も需要家Aの蓄電池のみである。もし複数の需要家の蓄電池を対象とする場合、「充放電量」の項目には複数の需要家の放電量の合計又は充電量の合計が入る。
【0113】
例えば、シナリオABC4では、スロット1(t1)で2kWhを放電し、スロット2(t2)で4kWhを充電し、スロット3(t3)で2kWhを充電し、スロット4(t4)では放電も充電も行わない。スロット2(t2)で4kWhを充電しても、充放電計画込みの削除量は18(=22-4)kWhであるため、削除量の目標範囲(18kWh以上22kWh以下)に収まる。同様に、スロット3(t3)で2kWhを充電しても、充放電計画込みの削除量は18(=20-2)kWhであるため、削除量の目標範囲(18kWh以上22kWh以下)に収まる。このように削減量の目標範囲に対して余裕がある場合には蓄電池を充電することで、充電した電力を、後の放電に活用できる。よって、削除量の目標範囲の下限又はその近傍になるように充電量を決めることで、DR要請の実行を成功させつつ、より効率的に蓄電池を活用できる。
【0114】
図14の例では、27個のシナリオのうち21個のシナリオで成功となっている。したがって、成功率rate=21/27=77.8%となる。
【0115】
(第5の実施形態)
第1~第4の実施形態において系統運用者システム201からDR要請を受信してからDR実施の開始時刻までの間に、DR計画装置101の蓄電池制御部26は、需要家の蓄電池を充電するよう制御してもよい。充電対象となる蓄電池は、蓄電池の残存電力量が例えば契約で定めた所定値(例えばDR開始時に要求される電力量)に達していない需要家の蓄電池でもよい。この場合、需要家は、DR実施の開始時刻までに、所定値まで充電する必要がある。
【0116】
また、充電対象となる蓄電池の他の例として、全需要家の蓄電池でもよいし、全需要家から例えばランダムに選択した一定数の需要家の蓄電池でもよいし、その他の方法で、充電対象となる蓄電池を選択してもよい。
【0117】
充電は満充電でもよいし、所定値までの充電でもよいし、その他の方法で充電量を定義してもよい。例えば12:30にDR要請を受信し、DR要請がDRの開始時刻として13:00を指定しているケースでは、12:30~13:00に、上記の方法で選択した蓄電池を満充電する。これにより、DRに利用する放電量を増やすことができる。
【0118】
(第6の実施形態)
第1~第4の実施形態では需要家の蓄電池の電力量をすべて放電に使える場合を想定したが、最大で定格容量の80%まで放電に使用可能とし、20%は残しておくとの制約を追加してもよい。これにより、例えば、一部の電力を非常用に残しておくなど、需要家の蓄電池に対する要求(他の用途で使いたいなど)を考慮した蓄電池利用が可能となる。なお、80%及び20%は一例であり、他の数値でもよい。
【0119】
また、需要家の蓄電池に対する要求は、蓄電池に残しておく電力量に関するものに限られない。例えば、蓄電池の劣化を抑制したいという要求を有する需要家も存在し得る。そこで、各需要家の蓄電池に優先度を設定しておき、優先度の高い蓄電池から優先的に放電又は充電に利用するようDR計画を作成してもよい。また、優先度の高い蓄電池から優先的にリアルタイムの放電又は充電に利用してもよい。また、蓄電池に利用回数の制限を設定し、利用回数が制限に達した蓄電池はDR実施中の放電又は充電に利用しないようにDR計画を作成してもよい。優先度又は利用回数の情報は、蓄電池情報DB_44(図5参照)に格納すればよい。
【0120】
(第7の実施形態)
DR計画装置101からの指令に対して需要家の蓄電池に応答遅れが存在する場合に、応答遅れを需要家又は蓄電池の選択に考慮してもよい。例えばDR開始時刻の10分前にDR要請と放電計画を需要家に送信する場合を想定する。例えば、蓄電池の応答遅れが15分ある場合(例えば蓄電池に指示を送ってからその指示を処理するまでに15分かかる場合)、10分前に放電計画(最初のスロットの放電計画を含む)を蓄電池に送信してもDR開始時刻に間に合わない。そのような場合には、最初のスロットで放電の必要のある蓄電池として、10分以上の応答遅れがある需要家の蓄電池を選択しないようにしてもよい。蓄電池の応答の遅延量の測定は、一例として蓄電池に指示メッセージを送信し、その応答となるメッセージを受信するまでの時間を測定することで行ってもよい。応答遅延量はネットワーク遅延や、蓄電池1の負荷状況に依存し得る。
【0121】
(第8の実施形態)
第1~第7の実施形態ではDR要請として電力削減要請を行う場合を扱ったが、電力の消費を促す電力消費要請を行う場合にも本発明は適用可能である。この場合、アグリゲータと系統運用者との間で電力消費の目標量を定める。各需要家の電力消費履歴に基づき、DR要請された期間において、選択した需要家の消費電力量の合計が目標量以上となるよう、DR要請を行う需要家を選択すればよい。また、目標量に達しない時間帯については、充電量と、選択した需要家の消費電力量の合計との合計が目標量以上になるよう蓄電池の充電計画を作成すればよい。その他適宜、前述した各実施形態の説明を読み替えることで、電力消費要請の場合にも適用可能である。
【0122】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0123】
20:DR計画最適化部
21:シナリオ作成部
23:充放電計画作成部(計画作成部)
22:需要家組合せ作成部
24:処理部25:情報通信部
27:入出力I/F
28:操作入力部
29:表示部
41:削減シナリオDB
40:需要家削減履歴DB
42:削減目標量DB
43:計画作成パラメータDB
44:蓄電池情報DB
45:充放電計画DB
46:DR要請需要家組合せDB
101:DR計画装置(デマンドレスポンス計画装置)
201:系統運用者システム
301:需要家システム
311:需要家蓄電池
150:コンピュータ装置
151:プロセッサ(CPU)
152:入力インタフェース
153:表示装置
154:通信装置
155:主記憶装置
156:外部記憶装置
157:バス
図1
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