(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】電源回路、電源システム、及び電源回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20220728BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20220728BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20220728BHJP
H04B 3/54 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H02J1/00 309F
H02J1/00 304E
H02J1/00 306B
H02J13/00 B
H02M3/155 U
H02M3/155 H
H04B3/54
(21)【出願番号】P 2018212850
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】篠原 規将
(72)【発明者】
【氏名】桑野 聡
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-172485(JP,A)
【文献】特開2010-119257(JP,A)
【文献】特開2006-254685(JP,A)
【文献】特開2018-064382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J13/00
H02J1/00-1/16
H02M3/00-3/44
H04B1/76-3/44
H04B3/50-3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線から供給された電圧が入力され、入力された電圧を降圧して出力する降圧型DC/DCコンバータと、
前記降圧型DC/DCコンバータから出力された電圧又は前記電力線から供給された電圧が入力され、入力された電圧を昇圧又は降圧して電力線通信回路に出力する昇降圧型DC/DCコンバータと、
前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力を、前記降圧型DC/DCコンバータの出力又は前記電力線に接続するスイッチ回路と、
前記電力線から供給された電圧をモニタする電圧モニタ回路と、
前記電力線から供給された電圧の電圧値に基づいて、前記スイッチ回路の接続を制御する制御回路と、を備え
、
前記制御回路は、
前記電力線から供給された電圧の電圧値が切替電圧を超えていれば、前記スイッチ回路を制御して、前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力を、前記降圧型DC/DCコンバータの出力に接続し、
前記電力線から供給された電圧の電圧値が前記切替電圧以下であれば、前記スイッチ回路を制御して、前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力を、前記電力線に接続する、
電源回路。
【請求項2】
前記切替電圧は、前記昇降圧型DC/DCコンバータが動作する下限電圧と、前記昇降圧型DC/DCコンバータに間欠動作が発生する電圧と、の間に設定される、
請求項
1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記電力線から供給された電圧が上昇しているときは、前記切替電圧に所定値を加算した電圧値を前記切替電圧とし、
前記電力線から供給された電圧が減少しているときは、前記切替電圧から所定値を減算した電圧値を前記切替電圧とする、
請求項
1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記制御回路に電源電圧を供給する制御回路用電源をさらに備え、
前記制御回路用電源は、
前記電源回路の起動後は、まず、前記電力線から供給された電圧を、前記制御回路に電源電圧として供給し、その後、前記昇降圧型DC/DCコンバータから出力された電圧を、前記制御回路に電源電圧として供給する、
請求項1に記載の電源回路。
【請求項5】
前記電源回路の起動前の初期状態では、前記降圧型DC/DCコンバータ及び前記昇降圧型DC/DCコンバータは無効に設定され、前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力が、前記降圧型DC/DCコンバータの出力に接続された状態であり、
前記制御回路用電源は、前記電源回路の起動後は、まず、前記電力線から供給された電圧を、前記制御回路に電源電圧として供給し、
前記制御回路は、電源電圧の供給を受けて起動すると、前記降圧型DC/DCコンバータ及び前記昇降圧型DC/DCコンバータを有効に設定し、
前記制御回路用電源は、前記昇降圧型DC/DCコンバータから電圧が出力されると、その後、前記昇降圧型DC/DCコンバータから出力された電圧を、前記制御回路に電源電圧として供給する、
請求項
4に記載の電源回路。
【請求項6】
前記降圧型DC/DCコンバータ及び前記スイッチ回路の組を複数段備え、
最終段の前記スイッチ回路は、前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力を、自段の前記降圧型DC/DCコンバータの出力又は前記電力線に接続し、
最終段以外の前記スイッチ回路は、次段の前記降圧型DC/DCコンバータの入力を、自段の前記降圧型DC/DCコンバータの出力又は前記電力線に接続する、
請求項1に記載の電源回路。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記電力線通信回路から、前記電力線上の通信信号の有無が通知され、
前記電力線上に通信信号が存在するときは、前記スイッチ回路の接続の切り替えを行わない、
請求項1に記載の電源回路。
【請求項8】
前記制御回路は、
前記電力線上に通信信号が存在しないタイミングで、前記電力線から供給された電圧を、前記電圧モニタ回路にモニタさせる、
請求項
7に記載の電源回路。
【請求項9】
前記電力線に電圧を供給する電圧供給源を備えると共に、
前記電圧供給源に前記電力線を介して接続された、請求項1に記載の前記電源回路を複数備える、
電源システム。
【請求項10】
電源回路に、
電力線から供給された電圧が入力され、入力された電圧を降圧して出力する降圧型DC/DCコンバータと、
前記降圧型DC/DCコンバータから出力された電圧又は前記電力線から供給された電圧が入力され、入力された電圧を昇圧又は降圧して電力線通信回路に出力する昇降圧型DC/DCコンバータと、
前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力を、前記降圧型DC/DCコンバータの出力又は前記電力線に接続するスイッチ回路と、
前記電力線から供給された電圧をモニタする電圧モニタ回路と、を設け、
前記電力線から供給された電圧の電圧値に基づいて、前記スイッチ回路の接続を制御する
こととし、
前記電力線から供給された電圧の電圧値が切替電圧を超えていれば、前記スイッチ回路を制御して、前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力を、前記降圧型DC/DCコンバータの出力に接続し、
前記電力線から供給された電圧の電圧値が前記切替電圧以下であれば、前記スイッチ回路を制御して、前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力を、前記電力線に接続する、
電源回路の制御方法。
【請求項11】
前記切替電圧は、前記昇降圧型DC/DCコンバータが動作する下限電圧と、前記昇降圧型DC/DCコンバータに間欠動作が発生する電圧と、の間に設定される、
請求項
10に記載の電源回路の制御方法。
【請求項12】
前記電力線から供給された電圧が上昇しているときは、前記切替電圧に所定値を加算した電圧値を前記切替電圧とし、
前記電力線から供給された電圧が減少しているときは、前記切替電圧から所定値を減算した電圧値を前記切替電圧とする、
請求項
10に記載の電源回路の制御方法。
【請求項13】
前記電源回路に、
制御回路と、
前記制御回路に電源電圧を供給する制御回路用電源と、をさらに設け、
前記制御回路用電源は、
前記電源回路の起動後は、まず、前記電力線から供給された電圧を、前記制御回路に電源電圧として供給し、その後、前記昇降圧型DC/DCコンバータから出力された電圧を、前記制御回路に電源電圧として供給する、
請求項
10に記載の電源回路の制御方法。
【請求項14】
前記電源回路の起動前の初期状態では、前記降圧型DC/DCコンバータ及び前記昇降圧型DC/DCコンバータは無効に設定され、前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力が、前記降圧型DC/DCコンバータの出力に接続された状態であり、
前記制御回路用電源は、前記電源回路の起動後は、まず、前記電力線から供給された電圧を、前記制御回路に電源電圧として供給し、
前記制御回路は、電源電圧の供給を受けて起動すると、前記降圧型DC/DCコンバータ及び前記昇降圧型DC/DCコンバータを有効に設定し、
前記制御回路用電源は、前記昇降圧型DC/DCコンバータから電圧が出力されると、その後、前記昇降圧型DC/DCコンバータから出力された電圧を、前記制御回路に電源電圧として供給する、
請求項
13に記載の電源回路の制御方法。
【請求項15】
前記電源回路に、
前記降圧型DC/DCコンバータ及び前記スイッチ回路の組を複数段設け、
最終段の前記スイッチ回路は、前記昇降圧型DC/DCコンバータの入力を、自段の前記降圧型DC/DCコンバータの出力又は前記電力線に接続し、
最終段以外の前記スイッチ回路は、次段の前記降圧型DC/DCコンバータの入力を、自段の前記降圧型DC/DCコンバータの出力又は前記電力線に接続する、
請求項
10に記載の電源回路の制御方法。
【請求項16】
前記電力線通信回路から、前記電力線上の通信信号の有無が通知され、
前記電力線上に通信信号が存在するときは、前記スイッチ回路の接続の切り替えを行わない、
請求項
10に記載の電源回路の制御方法。
【請求項17】
前記電力線上に通信信号が存在しないタイミングで、前記電力線から供給された電圧を、前記電圧モニタ回路にモニタさせる、
請求項
16に記載の電源回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関し、例えば、電力線通信(PLC:Power Line Communication)用の電源回路に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
電力線通信(以下、PLCと適宜称す)とは、AC(交流)やDC(直流)の電力線を使用して、PLC通信を行うものである。例えば、特許文献1には、AC電力線を使用するAC-PLC用の電源回路が開示されている。特許文献1に開示された電源回路は、電圧供給源からAC電力線を介して供給されたAC電圧をDC電圧に変換し、変換したDC電圧を通信機器に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1に開示された電源回路は、AC電力線を使用するAC-PLC用の電源回路である。しかし、最近は、DC電力線を使用するDC-PLCの需要も高まっている。
ここで、DC-PLCを実現する場合には、DC-PLC用の電源回路としては、電圧供給源との間の伝送距離を延ばすこと、通信性能の向上を図ることが必要になると考えられる。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態によれば、電源回路は、電力線から供給された電圧を降圧して出力する降圧型DC/DCコンバータと、降圧型DC/DCコンバータから出力された電圧又は電力線から供給された電圧を昇圧又は降圧して電力線通信回路に出力する昇降圧型DC/DCコンバータと、昇降圧型DC/DCコンバータの入力を、降圧型DC/DCコンバータの出力又は電力線に接続するスイッチ回路と、を設ける。そして、電力線から供給された電圧の電圧値に基づいて、スイッチ回路の接続を制御する。
【発明の効果】
【0006】
前記一実施の形態によれば、上述した課題の解決に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】関連技術に係る電源システムの構成例を示す。
【
図2】関連技術に係る電源システムにおいて、DC電力線にPLCモデムが接続された場合の現象を表すための原理モデルの例を示す図である。
【
図3】関連技術に係るPLCモデム電源電圧の電圧降下現象の例を示す図である。
【
図4】関連技術に係る電源回路の構成例を示す図である。
【
図5】関連技術に係るDC/DCコンバータの出力段にあるスイッチングノードにおける電圧の例を示す図である。
【
図6】関連技術に係る電源回路から出力される平滑出力電圧の波形の例を示す図である。
【
図7】関連技術に係る電源回路において、DC/DCコンバータとして降圧型DC/DCコンバータを使用した場合に発生するスイッチング欠けという現象の例を示す図である。
【
図8】関連技術に係る電源回路において、間欠動作が発生しないPLCモデムの電源電圧範囲の例を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係るPLCモデムの構成例を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係るPLCモデムを含む電源システムの構成例を示す図である。
【
図11】実施の形態1に係るPLCモデムを含む電源システムの構成例を示す図である。
【
図12】実施の形態1に係るスイッチ切替電圧の設定方法の例を示す図である。
【
図13】実施の形態1に係る電源回路の起動後の動作フローの例を示す図である。
【
図14】実施の形態1に係るPLCモデムの構成例を示す図である。
【
図15】実施の形態2に係るPLCモデムの構成例を示す図である。
【
図16】実施の形態2に係る制御回路用電源の構成例を示す図である。
【
図17】実施の形態2に係るPLCモデムの構成例を示す図である。
【
図18】実施の形態2に係る電源回路の変形例の構成例を示す図である。
【
図19】実施の形態3に係るPLCモデムの構成例を示す図である。
【
図20】DC-PLC通信時のDC電力線の電圧変動の例を示す図である。
【
図21】実施の形態3に係るPLC通信回路における送信回路の構成例を示す図である。
【
図22】
図21に示した送信回路における増幅器制御信号と送信PLC信号との関係の例を示す図である。
【
図23】実施の形態3に係るPLC通信回路22における受信回路の構成例を示すである。
【
図24】
図23に示した受信回路における受信通知信号と受信PLC信号との関係の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0009】
<関連技術>
各実施の形態の説明をする前に、まず、本発明者等が検討した関連技術について説明する。なお、以下で説明する実施の形態及び関連技術は、DC電力線を使用するDC-PLCを前提とした技術である。
【0010】
図1に、関連技術に係る電源システムの構成例を示す。
図1に示されるように、関連技術に係る電源システムは、電圧供給源10と、n(nは2以上の自然数)個のPLCモデム90-1~90-n(以下、PLCモデム90-1~90-nを特定しない場合は単に「PLCモデム90」と称す)と、を備えている。なお、電圧供給源10とn個のPLCモデム90-1~90-nとはDC電力線PLを介して接続されている。
【0011】
電圧供給源10は、DC電力線PLにDC電圧を供給する
PLCモデム90-1~90-nの各々は、電源回路91と、PLC通信回路22と、を備えている。
電源回路91は、DC電力線PLから供給されたDC電圧を、PLC通信回路22に供給する回路である。
PLC通信回路22は、電源回路91から供給された電圧を受けて動作し、DC電力線PLを介して、PLC通信を行う回路である。PLC通信回路22は、PLCモデムLSI(Large Scale Integration)、送信PLC信号を変調する変調器、及び受信PLC信号を復調する復調器等を備えている。
【0012】
ここで、電圧供給源10からの距離が最も短いPLCモデム90-1と、電圧供給源10からの距離が最も長いPLCモデム90-nと、の間の伝送距離Lは、現状では、最大で約9kmになっている。PLCモデム90-nに供給される供給電圧(以下、PLCモデム電源電圧と称す)Vplc_nは、DC電力線PLの配線抵抗とDC電力線PLに接続される他のPLCモデム90の消費電流により降下し、その降下量は、DC電力線PLの伝送距離Lに比例して大きくなる。
【0013】
図2に、関連技術に係る電源システムにおいて、DC電力線PLにPLCモデム90-nが接続された場合の現象を表すための原理モデルの例を示す。なお、
図2においては、PLCモデム90-nに供給されるPLCモデム電源電圧V
plc_nは、V
plcとして示されている。
図2において、DC電力線PLの導体抵抗Rは、下記(1)式によって求められ、伝送距離Lに比例して、導体抵抗Rが大きくなる。導体抵抗Rが大きくなると、下記(2)式に示すように、DC電力線PLに流れる消費電流I
plcとDC電力線PLの導体抵抗RとによってPLCモデム電源電圧V
plcが降下してしまう。
【数1】
【数2】
ここで、上記(1)式及び(2)式において、ρはDC電力線PLの抵抗率、SはDC電力線PLの断面積、V
sorceは電圧供給源10から供給される供給電圧である。
【0014】
そのため、PLCモデム90-nは、電圧供給源10から遠距離になるほど、電圧供給源10からDC電力線PLに供給される供給電圧V
sorceに対して、PLCモデム電源電圧V
plcの値が低くなる。
図3に、関連技術に係るPLCモデム電源電圧V
plcの電圧降下現象の例を示す。
従って、
図3に示されるように、PLCモデム電源電圧V
plcが、最終的にPLCモデム90-nが動作しなくなる電圧(以下、PLCモデム動作電圧下限値と称す)を下回ると、PLCモデム90-nが動作しなくなってしまう。
【0015】
図4に、関連技術に係る電源回路91の構成例を示す。
図4に示されるように、関連技術に係る電源回路91は、DC/DCコンバータ911と、平滑回路912と、を備えている。
図5に、関連技術に係るDC/DCコンバータ911の出力段にあるスイッチングノードにおける電圧の例を示す。
DC/DCコンバータ911は、DC電力線PLから供給された電圧を降圧して出力する。このとき、DC/DCコンバータ911は、
図5に示されるように、出力するパルス電圧のパルス幅を特定の周波数(以下、スイッチング周波数と称す)で制御する。
平滑回路912は、DC/DCコンバータ911から出力された電圧を平滑化することで平滑出力電圧を生成して出力する。この平滑出力電圧が、内部電圧V
0(
図1参照)として、PLC通信回路22に供給される。
【0016】
図6に、関連技術に係る電源回路91から出力される平滑出力電圧の波形の例を示す。
上述のように、関連技術に係る電源回路91は、DC/DCコンバータ911から出力されたパルス電圧のパルス幅をスイッチング周波数で制御し、その電圧を平滑回路912により平滑化することで平滑出力電圧を生成する。
そのため、
図6に示されるように、平滑回路912の出力段ではスイッチングのタイミングでリップルが残留し、このリップルがノイズとなってしまう。このリップルによるノイズはスイッチング周波数と同じ周波数帯域に発生してしまう。
従って、DC-PLC通信において、DC/DCコンバータ911を使用する場合は、DC-PLC通信で使用する周波数よりも高い周波数のスイッチング周波数で動作するDC/DCコンバータ911を使用する必要がある。
【0017】
図7に、関連技術に係る電源回路91において、DC/DCコンバータ911として降圧型DC/DCコンバータを使用した場合に発生するスイッチング欠けという現象の例を示す。なお、
図7は、DC/DCコンバータ911の出力段にあるスイッチングノードにおける電圧を示している。
DC/DCコンバータ911は、スイッチングのタイミングで、不図示のコイルをON/OFFする。しかし、DC/DCコンバータ911として降圧型DC/DCコンバータを使用した場合、「DC/DCコンバータの入出力の電位比が大きい」かつ「DC/DCコンバータの消費電流が低い」という条件下では、コイルをON/OFFする際に、
図5に示されるパルス幅が狭まることで、スイッチングが追い付かず、
図7に示されるようなスイッチング欠け(以下、間欠動作と称す)という現象が発生してしまう。この現象は、スイッチングノードへの電荷の供給が不要になり、スイッチングノードの電荷が減ることで、パルス幅が細くなり、応答しなくなることに起因している。
【0018】
この間欠動作が発生すると、スイッチング周波数以下の周波数帯域にノイズが発生してしまう。この影響により、DC-PLC通信で使用する周波数帯域にもノイズが発生してしまうため、DC-PLC通信の通信性能を劣化させてしまう。
【0019】
図8に、間欠動作が発生しないPLCモデム90の電源電圧範囲の例を示す。なお、
図8において、V
maxは、V
plcの最大電圧を示す入力最大電圧、V
thは、PLCモデム90に間欠動作が発生するときのV
plcの電圧を示す間欠動作閾値電圧、V
minは、V
plcの最小電圧であってDC/DCコンバータ911が動作する下限電圧を示すDC/DC動作下限電圧である(以降の
図12において同じ)。
PLCモデム90を使用する際には、PLCモデム90への入力(すなわち、V
plc)の電位差が大きく変動するパターンが多々存在するが、DC電力線PLに流れる消費電流の変動は既知である。そのため、PLCモデム90に間欠動作が発生するか否かは、PLCモデム90への入力の電位差変動が支配的になる。そこで、PLCモデム90では、
図8に示されるように、間欠動作が発生しない電位差でDC/DCコンバータ911を使用する必要がある。
なお、
図8は、V
minとV
thとの電位差が、間欠動作が発生しない所定範囲となるように、V
thが設定されているが、これには限定されない。V
maxとV
thとの電位差が所定範囲となるように、V
thが設定されても良い。
【0020】
以上の通り、関連技術に係る電源回路91は、DC電力線PLの伝送距離Lに比例して、PLCモデム電源電圧Vplcが降下してしまうため、電圧供給源10との間の伝送距離を延ばすことができないという課題がある。
さらに、関連技術に係る電源回路91は、間欠動作の影響により、DC-PLC通信で使用する周波数にノイズが発生してしまうため、DC-PLC通信の通信性能が劣化してしまうという課題がある。
以下で説明する各実施の形態は、上記の課題のうち少なくとも1つを解決するものである。
【0021】
<実施の形態1>
図9に、本実施の形態1に係るPLCモデム20Aの構成例を示す。
図9に示されるように、本実施の形態1に係るPLCモデム20Aは、
図1に示される関連技術に係るPLCモデム90と比較して、電源回路91を電源回路21Aに置き換えた点が異なる。
なお、
図9において、PLCモデム20Aには、DC電力線PLからPLCモデム電源電圧V
plcが供給されるものとする。また、点線は、DC電力線PL、実線は、PLCモデム20A内部の構成要素に供給する電源電圧を伝送する電源供給線、破線は、制御信号を伝送する制御線を、それぞれ示しているものとする(以降の
図10、
図11、
図14-
図19において同じ)。
【0022】
電源回路21Aは、降圧型DC/DCコンバータ211と、スイッチ回路212と、昇降圧型DC/DCコンバータ213と、電圧モニタ回路214と、制御回路215と、を備えている。
降圧型DC/DCコンバータ211は、DC電力線PLから供給されたPLCモデム電源電圧V
plcが入力され、入力されたPLCモデム電源電圧V
plcを降圧して、出力電圧V
o1として出力する。
昇降圧型DC/DCコンバータ213は、降圧型DC/DCコンバータ211から出力された出力電圧V
o1又はDC電力線PLから供給されたPLCモデム電源電圧V
plcが入力され、入力されたV
o1又はV
plcを昇圧又は降圧して、出力電圧V
o2として出力する。この出力電圧V
o2は、昇降圧型DC/DCコンバータ213の後段に設けられた不図示の平滑回路(
図4に示される平滑回路912に相当)により平滑化された上で、制御回路215及びPLC通信回路22に電源電圧として供給される。
【0023】
スイッチ回路212は、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力を、降圧型DC/DCコンバータ211の出力又はDC電力線PLに接続する。
電圧モニタ回路214は、DC電力線PLから供給されたPLCモデム電源電圧Vplcをモニタする。
制御回路215は、電圧モニタ回路214によりモニタされたPLCモデム電源電圧Vplcの電圧値に基づいて、スイッチ回路212の接続及び降圧型DC/DCコンバータ211の有効/無効を制御する。
【0024】
図10及び
図11に、本実施の形態1に係るPLCモデム20Aを含む電源システムの構成例を示す。
図10及び
図11に示されるように、本実施の形態1に係るPLCモデム20Aは、電源システムを構成する複数のPLCモデム20Aの1つである。複数のPLCモデム20Aは、DC電力線PLを介して、電圧供給源10に接続される。複数のPLCモデム20Aと電圧供給源10との接続態様は、
図10に示される例ではスター接続、
図11に示される例ではライン接続となっている。ただし、複数のPLCモデム20Aと電圧供給源10との接続態様は、
図10及び
図11に示される接続態様には限定されない。
なお、後述する実施の形態2,3に係るPLCモデム20B,20Cを含む電源システムも、本実施の形態1に係るPLCモデム20Aを含む電源システムの構成と同様の構成である。
【0025】
図12に、本実施の形態1に係るスイッチ切替電圧の設定方法の例を示す。スイッチ切替電圧は、スイッチ回路212の接続を切り替えるときのV
plcの電圧である。なお、
図12において、V
limは、スイッチ切替電圧を示している。
図8を用いて説明したように、降圧型DC/DCコンバータ(関連技術に係るDC/DCコンバータ911)を単体で使用した場合に間欠動作が発生する電圧では、昇降圧型DC/DCコンバータ213を使用することができない。また、PLCモデム電源電圧V
plcは、DC/DC動作下限電圧V
minから入力最大電圧V
maxの範囲で、降圧型DC/DCコンバータ211及び昇降圧型DC/DCコンバータ213に供給される。そのため、PLCモデム電源電圧V
plcがV
th以上の電圧になったときは間欠動作が発生してしまう。
そこで、
図12に示されるように、スイッチ回路212のスイッチ切替電圧V
limは、PLCモデム電源電圧V
plcのDC/DC動作下限電圧V
minから間欠動作が発生するV
thの間に設定する。
【0026】
例えば、V
plcがV
lim以下である場合、V
minとV
plcとの電位差は、昇降圧型DC/DCコンバータ213に間欠動作が発生しない電位差となる。そのため、V
plcを昇降圧型DC/DCコンバータ213に直接供給しても、間欠動作は発生しない。そこで、V
plcを昇降圧型DC/DCコンバータ213に直接供給するため、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力をDC電力線PLに接続する。
一方、V
plcがV
limを超えている場合、V
plcがさらに上昇してV
th以上の電圧になったときは、V
minとV
plcとの電位差は、昇降圧型DC/DCコンバータ213に間欠動作が発生する電位差となる。そのため、V
plcを昇降圧型DC/DCコンバータ213に直接供給すると、間欠動作が発生してしまう。そこで、V
plcを降圧してから昇降圧型DC/DCコンバータ213に供給するため、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力を降圧型DC/DCコンバータ211の出力に接続する。
なお、
図12は、V
minとV
thとの電位差が、間欠動作が発生しない所定範囲となるように、V
thが設定されているが、これには限定されない。V
maxとV
thとの電位差が所定範囲となるように、V
thが設定されても良い。この場合、V
limは、V
thからV
maxの間に設定する。
【0027】
図12に示されるように、スイッチ回路212のスイッチ切替電圧V
limは、昇降圧型DC/DCコンバータ213が間欠動作をしない電圧に設定される。
しかし、V
plcがV
lim近傍の電圧になっている場合、DC電力線PLの状態によっては、スイッチ回路212の接続が頻繁に切り替わってしまい、DC-PLC通信の通信特性に悪影響を及ぼしてしまう。
そこで、V
limにヒステリシス特性を持たせることで頻繁にスイッチ回路212の接続が切り替わることを防ぐ。すなわち、V
plcが上昇しているときは、V
limにαを加算したV
lim+αをスイッチ切替電圧とし、V
plc電圧が減少しているときは、V
limからαを減算したV
lim-αをスイッチ切替電圧とする。αは、V
lim+αがV
thを超えない値で、かつ、V
lim-αがV
min未満にならない値に設定する。
【0028】
以下、本実施の形態1に係る電源回路21Aの動作について説明する。
本実施の形態1に係る電源回路21Aは、電源回路21Aの起動前の初期状態では、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力は、
図1に示されるように、DC電力線PLに接続され、また、降圧型DC/DCコンバータ211が無効に設定された状態となっている。なお、降圧型DC/DCコンバータ211の無効とは、降圧型DC/DCコンバータ211をディープスタンバイ状態(動作せずに停止させている状態)にすることを示す。一方、降圧型DC/DCコンバータ211の有効とは、降圧型DC/DCコンバータ211をアクティブ状態(動作させている状態)にすることを示す。
また、本実施の形態1に係る電源回路21Aは、電源回路21Aの起動後は、
図13に示される動作フローに従って動作を行う。
【0029】
図13に、本実施の形態1に係る電源回路21Aの起動後の動作フローの例を示す。
図13に示されるように、電圧モニタ回路214は、DC電力線PLから供給されたPLCモデム電源電圧V
plcをモニタする(ステップS1)。電圧モニタ回路214は、モニタしたV
plcを制御回路215で読み取れる情報へ変換し、変換した情報を制御回路215に渡す。以降、制御回路215は、PLCモデム電源電圧V
plcの変動があった時点で処理を開始する。
制御回路215は、電圧モニタ回路214によりモニタされたV
plcが、スイッチ切替電圧V
limを超えているか否かを判定する(ステップS2)。
【0030】
V
plcがV
limを超えている場合(ステップS2のYes)、制御回路215は、降圧型DC/DCコンバータ211を有効に設定し(ステップS3)、また、スイッチ回路212を制御して、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力を降圧型DC/DCコンバータ211の出力に接続する(ステップS4)。
図14に、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力を降圧型DC/DCコンバータ211の出力に接続した状態を示す。
以降、ステップS1に戻って、ステップS1以降の処理が行われる。
【0031】
一方、V
plcがV
lim以下である場合(ステップS2のNo)、制御回路215は、スイッチ回路212を制御して、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力をDC電力線PLに接続し(ステップS5)、また、降圧型DC/DCコンバータ211を無効に設定する(ステップS6)。昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力をDC電力線PLに接続した状態は、
図1に示した通りである。
以降、ステップS1に戻って、ステップS1以降の処理が行われる。
【0032】
上述したように本実施の形態1によれば、降圧型DC/DCコンバータ211は、DC電力線PLから供給されたPLCモデム電源電圧Vplcが入力され、入力されたVplcを降圧して、出力電圧Vo1として出力する。昇降圧型DC/DCコンバータ213は、降圧型DC/DCコンバータ211から出力されたVo1又はDC電力線PLから供給されたVplcが入力され、入力されたVo1又はVplcを昇圧又は降圧して、PLC通信回路22に出力する。スイッチ回路212は、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力を、降圧型DC/DCコンバータ211の出力又はDC電力線PLに接続する。電圧モニタ回路214は、DC電力線PLから供給されたVplcをモニタする。制御回路215は、電圧モニタ回路214によりモニタされたVplcの電圧値に基づいて、スイッチ回路212の接続を制御する。
【0033】
従って、本実施の形態1によれば、電圧供給源10からの距離が遠距離になって、Vplcの電圧値が低い場合には、昇降圧型DC/DCコンバータ213によりVplcを昇圧することができる。これにより、PLCモデム20AのPLCモデム動作電圧下限値の範囲を広げることができるため、電圧供給源10との間の伝送距離を延ばすことができる。
また、本実施の形態1によれば、Vplcの電圧値が高い場合には、降圧型DC/DCコンバータ211によりVplcを降圧し、降圧した電圧を昇降圧型DC/DCコンバータ213に供給することができる。そのため、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力の電位差が、昇降圧型DC/DCコンバータ213に間欠動作が発生する電位差になることが抑制される。これにより、昇降圧型DC/DCコンバータ213の間欠動作の影響により、DC-PLC通信で使用する周波数帯域にノイズが発生してしまうことが抑制されるため、DC-PLC通信の通信性能の向上を図ることができる。
【0034】
<実施の形態2>
図15に、本実施の形態2に係るPLCモデム20Bの構成例を示す。
図15に示されるように、本実施の形態2に係るPLCモデム20Bは、
図9に示される実施の形態1に係るPLCモデム20Aと比較して、電源回路21Aを電源回路21Bに置き換えた点が異なる。また、電源回路21Bは、電源回路21Aと比較して、制御回路用電源216を追加した点と、制御回路215へ電源電圧を供給するための電源供給線の経路を変更した点と、制御回路215と昇降圧型DC/DCコンバータ213とを制御線で接続した点と、が異なる。
【0035】
制御回路用電源216は、制御回路215用の電源である。制御回路用電源216は、電源回路21Bの起動後は、まず、DC電力線PLから供給されたPLCモデム電源電圧Vplcを、制御回路215に電源電圧として供給し、その後、昇降圧型DC/DCコンバータ213から出力された出力電圧Vo2を、制御回路215に電源電圧として供給する。
【0036】
図16に、本実施の形態2に係る制御回路用電源216の構成例を示す。
図16に示されるように、本実施の形態2に係る制御回路用電源216は、抵抗素子R1と、ツェナーダイオードZDと、2つのダイオードD1,D2と、を備えている。抵抗素子R1は、一端がDC電力線PLに接続され、他端がツェナーダイオードZDのカソードに接続される。ダイオードD1のアノードは、昇降圧型DC/DCコンバータ213の出力に接続され、ダイオードD2のアノードは、抵抗素子R1とツェナーダイオードZDとの接続点に接続される。ダイオードD1,D2のカソードは、制御回路215に接続される。
【0037】
本実施の形態2に係る電源回路21Bは、電源回路21Bの起動前の初期状態では、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力は、
図15に示されるように、降圧型DC/DCコンバータ211の出力に接続され、また、降圧型DC/DCコンバータ211及び昇降圧型DC/DCコンバータ213が無効に設定された状態となっている。
そのため、電源回路21Bの起動前の初期状態では、制御回路215には、電源電圧が供給されていない。そこで、電源回路21Bの起動後に、制御回路用電源216は、DC電力線PLから供給されたV
plcから制御回路215用の電源電圧を生成し、生成した電源電圧を制御回路215に供給する。制御回路215は、電源電圧の供給を受けて起動し、降圧型DC/DCコンバータ211及び昇降圧型DC/DCコンバータ213を有効に設定する。従って、V
plcが降圧型DC/DCコンバータ211の動作電圧以上であると、以降、昇降圧型DC/DCコンバータ213から出力電圧V
o2が出力される。すると、制御回路用電源216は、制御回路215に供給する電源電圧を、V
o2に切り替える。
【0038】
なお、本実施の形態2に係る電源回路21Bは、電源回路21Bの起動後、制御回路215に供給する電源電圧がV
o2に切り替えられた以降は、実施の形態1と同様に、
図13に示される動作フローに従って動作を行う。
すなわち、
図13に示されるように、電圧モニタ回路214は、V
plcをモニタし(ステップS1)、制御回路215は、V
plcがV
limを超えているか否かを判定する(ステップS2)。なお、本実施の形態2に係るスイッチ切替電圧V
limは、実施の形態1と同様に、PLCモデム電源電圧V
plcのDC/DC動作下限電圧V
minから間欠動作が発生するV
thの間に設定する。
【0039】
V
plcがV
limを超えている場合(ステップS2のYes)、制御回路215は、降圧型DC/DCコンバータ211を有効に設定し(ステップS3)、また、スイッチ回路212を制御して、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力を降圧型DC/DCコンバータ211の出力に接続する(ステップS4)。昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力を降圧型DC/DCコンバータ211の出力に接続した状態は、
図15に示した通りである。
【0040】
一方、V
plcがV
lim以下である場合(ステップS2のNo)、制御回路215は、スイッチ回路212を制御して、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力をDC電力線PLに接続し(ステップS5)、また、降圧型DC/DCコンバータ211を無効に設定する(ステップS6)。
図17に、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力をDC電力線PLに接続した状態を示す。
【0041】
上述した実施の形態1においては、起動前の初期状態では、スイッチ回路212の入力は、DC電力線PLに接続される必要がある。これは、スイッチ回路212の入力を降圧型DC/DCコンバータ211の出力に接続すると、DC電力線PLから供給されるVplcが降圧型DC/DCコンバータ211の動作電圧未満だった場合には、制御回路215へ電源電圧を供給できなくなってしまうためである。そのため、実施の形態1においては、DC電力線PLから電源回路21Aに入力されるVplcの最大電圧は、昇降圧型DC/DCコンバータ213の動作上限電圧に制約されてしまう。
【0042】
これに対して本実施の形態2においては、起動後は、まず、DC電力線PLから供給されたVplcを、制御回路215に電源電圧として供給し、その後、昇降圧型DC/DCコンバータ213から出力されたVo2を、制御回路215に電源電圧として供給する。これにより、本実施の形態2においては、DC電力線PLから電源回路21Aに入力されるVplcの最大電圧は、実施の形態1のように、昇降圧型DC/DCコンバータ213の動作上限電圧に制約されず、降圧型DC/DCコンバータ211の入力最大電圧まで使用することができる。
【0043】
<実施の形態2の変形例>
図18に、本実施の形態2に係る電源回路21Bの変形例の構成例を示す。なお、
図18においては、昇降圧型DC/DCコンバータ213よりも後段の構成は、図示を省略している。
図14に示される構成は、降圧型DC/DCコンバータ211及びスイッチ回路212の組を1段のみ設けた構成であった。
これに対して、
図18に示される構成は、降圧型DC/DCコンバータ211及びスイッチ回路212の組を複数段(
図18は2段の例)設けた構成としている。この場合、最終段のスイッチ回路212は、昇降圧型DC/DCコンバータ213の入力を、自段の降圧型DC/DCコンバータ211の出力又はDC電力線PLに接続し、最終段以外のスイッチ回路212は、次段の降圧型DC/DCコンバータ211の入力を、自段の降圧型DC/DCコンバータ211の出力又はDC電力線PLに接続する。
そのため、V
plcの電圧値が非常に高い場合でも、複数の降圧型DC/DCコンバータ211によりV
plcを十分に降圧した上で、昇降圧型DC/DCコンバータ213に供給することができる。よって、
図9に示される実施の形態1及び
図14に示される実施の形態2の構成と比較して、V
plcの電圧値が非常に高い場合にも対応することができるようになる。
【0044】
<実施の形態3>
図19に、本実施の形態3に係るPLCモデム20Cの構成例を示す。
図19に示されるように、本実施の形態3に係るPLCモデム20Cは、
図15に示される実施の形態2に係るPLCモデム20Bと比較して、電源回路21Bを電源回路21Cに置き換えた点が異なる。また、電源回路21Cは、電源回路21Bと比較して、制御回路215とPLC通信回路22とを通信状態通知線で接続した点と、が異なる。通信状態通知線は、DC電力線PL上のPLC信号の有無を通知するための制御線である。
なお、
図19において、一点鎖線は、通信状態通知線を示しているものとする。
【0045】
図20に、DC-PLC通信時のDC電力線PLの電圧変動の例を示す。
図20に示されるように、DC-PLC通信では、振れ幅が最大±12VであるPLC信号をDC電力線PLに重畳して通信を行う。そのため、PLC信号が送受信されている最中に、スイッチ回路212の接続の切り替えが発生すると、その切り替え時にPLC通信回路22に供給される電源電圧V
o2が変動することで、PLC信号が正常に送受信できなくなってしまう。
【0046】
そこで、制御回路215において、DC電力線PL上のPLC信号の有無を確認するため、制御回路215とPLC通信回路22との間に通信状態通知線を追加する。そして、制御回路215は、DC電力線PL上にPLC信号が存在しないタイミングで、電圧モニタ回路214にPLCモデム電源電圧Vplcをモニタさせる。これにより、Vplcの値を正確にモニタできるようになる。また、制御回路215は、DC電力線PL上にPLC信号が存在するときには、スイッチ回路212の接続の切り替えを行わない。これにより、DC電力線PL上にPLC信号が存在するときには、スイッチ回路212の接続の切り替えが発生しないため、スイッチ回路212の切り替えがPLC信号の送受信に影響を与えてしまうことが抑制される。
【0047】
図21に、本実施の形態3に係るPLC通信回路22における送信回路の構成例を示す。また、
図22に、
図21に示した送信回路における増幅器制御信号と送信PLC信号との関係の例を示す。
図21に示されるように、PLC通信回路22における送信回路は、PLCモデムLSI221と、送信用増幅回路222と、を備える。
PLC信号をDC電力線PLに送出するときは、PLC信号を送信用増幅回路222で増幅するため、PLCモデムLSI221は、送信用増幅回路222を制御する必要がある。そのため、PLCモデムLSI221は、送信用増幅回路222をON/OFFする増幅回路制御信号を出力している。
そのため、PLC通信回路22は、増幅回路制御信号をモニタすることで、DC電力線PL上にPLC信号が存在するか否かを判定することができる。
【0048】
図23に、本実施の形態3に係るPLC通信回路22における受信回路の構成例を示す。また、
図24に、
図23に示した受信回路における受信通知信号と受信PLC信号との関係の例を示す。
図23に示されるように、PLC通信回路22における受信回路は、上述したPLCモデムLSI221を備える。
PLCモデムLSI221は、DC電力線PL上を伝送されているPLC信号をチェックしており、PLC信号中の同期信号を検出すると、受信動作を開始する。PLCモデムLSI221は、受信動作を開始すると、受信通知信号を外部に出力している。
そのため、PLC通信回路22は、受信通知信号をモニタすることで、DC電力線PL上にPLC信号が存在するか否かを判定することができる。
なお、DC電力線PL上にPLC信号が存在するか否かの判定は、制御回路215自身が行っても良い。この場合、制御回路215は、通信状態通知線を介して、増幅回路制御信号や受信通知信号をモニタし、DC電力線PL上にPLC信号が存在するか否かを判定すれば良い。
【0049】
なお、本実施の形態3に係る電源回路21Cは、DC電力線PL上にPLC信号が存在しないタイミングでVplcをモニタする点と、DC電力線PL上にPLC信号が存在するときには、スイッチ回路212の接続の切り替えを行わない点と、を除いて、実施の形態2と動作が同様である。そのため、本実施の形態3に係る電源回路21Cの動作の説明は省略する。
【0050】
上述したように本実施の形態3によれば、PLC通信回路22から、DC電力線PL上のPLC信号の有無が通知される。そして、DC電力線PL上にPLC信号が存在しないタイミングで、PLCモデム電源電圧Vplcをモニタする。これにより、本実施の形態3においては、Vplcの値を正確にモニタできるようになる。また、本実施の形態3によれば、DC電力線PL上にPLC信号が存在するときには、スイッチ回路212の接続の切り替えを行わない。これにより、本実施の形態3においては、スイッチ回路212の接続の切り替えがPLC信号の送受信に影響を与えてしまうことが抑制される。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0052】
例えば、上述した実施の形態3では、実施の形態2の構成をベースとしていたが、実施の形態1の構成をベースとするものでも良い。
【0053】
また、上述した実施の形態では、電源回路の機能ブロックをハードウェア的に実現していたが、電源回路の機能ブロックの全部又は一部を、メモリから読み出されたプログラム等によってソフトウェア的に実現しても良い。その場合、電源回路は、演算処理や制御処理等を行うCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、プロセッサにより読み出されて実行されるプログラムや各種のデータを記憶するメモリ等を含むコンピュータで構成することができる。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによって色々な形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0054】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(compact disc read only memory)、CD-R(compact disc recordable)、CD-R/W(compact disc rewritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(programmable ROM)、EPROM(erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0055】
10 電圧供給源
20A,20B,20C PLCモデム
21A,21B,21C 電源回路
211 降圧型DC/DCコンバータ
212 スイッチ回路
213 昇降圧型DC/DCコンバータ
214 電圧モニタ回路
215 制御回路
216 制御回路用電源
22 PLC通信回路
221 PLCモデムLSI
222 送信用増幅回路
PL DC電力線
R1 抵抗素子
D1,D2 ダイオード
ZD ツェナーダイオード