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特許7112956プレス、特に鍛造クランクプレスの運転方法
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  • 特許-プレス、特に鍛造クランクプレスの運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】プレス、特に鍛造クランクプレスの運転方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/14 20060101AFI20220728BHJP
   B30B 1/26 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
B30B15/14 C
B30B15/14 B
B30B1/26 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018527193
(86)(22)【出願日】2016-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2016078613
(87)【国際公開番号】W WO2017089433
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-08-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】102015120546.7
(32)【優先日】2015-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511240092
【氏名又は名称】シューラー プレッセン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Schuler Pressen GmbH
【住所又は居所原語表記】Schuler-Platz 1, 73033 Goeppingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーゲル ゲルハード
(72)【発明者】
【氏名】ビーグ マルクス
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】刈間 宏信
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-27911(JP,A)
【文献】特開2003-11000(JP,A)
【文献】特開2013-136060(JP,A)
【文献】特許第5770586(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0189900(US,A1)
【文献】中国実用新案第203267237(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/14 B30B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定格プレス力の少なくとも80%でプレスを運転するための方法、特に鍛造クランクプレスのような、工作物を変形、特に鍛造するためのクランクプレスを運転するための方法であって、
前記プレスがサーボ駆動装置と、このサーボ駆動装置と工作物の間に配置された、前記プレスの運転中に動く質量系とを備え、
前記質量系の質量が少なくともスライドによっておよび少なくとも駆動軸によって形成され、
前記質量系が少なくとも一時的に前記サーボ駆動装置によって駆動され、
変形工程のために定格プレス力の最大で80%が前記サーボ駆動装置によって供され、
変形工程の際に定格プレス力の少なくとも100%が供されるように、前記サーボ駆動装置の回転数が連続的に上昇し、変形工程の前に前記質量系の質量が前記サーボ駆動装置によって加速され、それによって前記質量系内に含まれる運動エネルギが上昇増大し、
その後、前記サーボ駆動装置の回転数が保持され、
その後の前記変形工程の間、前記サーボ駆動装置の回転数が低下し、前記サーボ駆動装置によって供されるエネルギのほかに、前記質量系内に蓄えられたエネルギが前記変形工程に供され、
前記変形工程の後に前記サーボ駆動装置の回転数はさらに低下し、前記サーボ駆動装置をジェネレータとして運転することでエネルギ回収を行う、
上記方法。
【請求項2】
プレスの定格プレス力を高めるための方法、特に鍛造クランクプレスのような、工作物を変形、特に鍛造するためのクランクプレスの定格プレス力を高めるための方法であって、
前記プレスがサーボ駆動装置と、このサーボ駆動装置と工作物の間に配置された、前記プレスの運転中に動く質量系とを備え、
前記質量系の質量が少なくともスライドによっておよび少なくとも駆動軸によって形成され、
前記質量系が少なくとも一時的に前記サーボ駆動装置によって駆動され、
高められた定格プレス力が前記サーボ駆動装置と前記質量系によって割当量に応じて提供され、
前記サーボ駆動装置から供給される80%の定格プレス力と少なくとも100%の定格プレス力の差が、前記サーボ駆動装置の回転数が連続的に上昇して前記質量系の質量の回転数を高めることによって前記質量系内に含まれる運動エネルギが上昇増大することで調整され、
その後、前記サーボ駆動装置の回転数が保持され、
その後の前記変形工程の間、前記サーボ駆動装置の回転数が低下し、前記サーボ駆動装置によって供されるエネルギのほかに、前記質量系内に蓄えられたエネルギが前記変形工程に供され、
前記変形の後に前記サーボ駆動装置の回転数はさらに低下し、前記サーボ駆動装置をジェネレータとして運転することでエネルギ回収を行う、
上記方法。
【請求項3】
変形工程の際に放出された前記質量系のエネルギが次の変形工程まで前記サーボ駆動装置によって前記質量系に再び供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プレスが連続的に回転するプレスとして運転され、
サイクルの終わりに前記質量系に含まれるエネルギが、前記プレスの連続的な回転によって次のサイクルに受け渡されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
クランク軸が前記サーボ駆動装置によって駆動され、
前記スライドが前記クランク軸によって駆動され
変形工程の外でおよび変形工程中に、精々、必要なトルクの最大で80%のトルクが、前記サーボ駆動装置から前記クランク軸に加えられることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記質量系に含まれる運動エネルギを利用し、その都度必要な変形エネルギの全部を電源網から調達しないことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
変形工程が前記プレスの定格出力の少なくとも80%を必要とする場合、前記工作物が前記サーボ駆動装置の駆動出力によって割当量に応じておよび前記質量系の運動エネルギの放出下で割当量に応じて変形されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
変形の際に、前記プレスの定格出力の少なくとも20%の範囲内で、前記質量系から運動エネルギが放出されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
プレス、特に鍛造クランクプレスのような、工作物を変形、特に鍛造するためのクランクプレスであって、
前記プレスがサーボ駆動装置を備え、前記プレスが前記サーボ駆動装置と工作物の間に配置された、前記プレスの運転中に動く質量系を備え、前記質量系の質量が少なくともスライドによっておよび少なくとも駆動軸によって形成されている、プレスにおいて、
前記サーボ駆動装置が変形工程のためにプレスの定格プレス力の最大で80%を提供し、
前記サーボ駆動装置の回転数が連続的に上昇する結果として、前記質量系の質量の回転数を高め、前記質量系内に含まれる運動エネルギが上昇増大し、
その後、前記サーボ駆動装置の回転数が保持され、
その後の前記変形工程の間、前記サーボ駆動装置の回転数が低下し、前記サーボ駆動装置によって供されるエネルギのほかに、前記質量系内に蓄えられたエネルギが前記プレスの定格プレス力の少なくとも10%として変形工程のために供され、
前記変形工程の後に前記サーボ駆動装置の回転数はさらに低下し、前記サーボ駆動装置をジェネレータとして運転することでエネルギ回収を行うことを特徴とするプレス。
【請求項10】
前記サーボ駆動装置が前記駆動軸に連結されていることを特徴とする請求項に記載のプレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1または2に記載のプレスを運転するための方法と、請求項10に記載のプレスに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許発明第102009049146B3号明細書から、サーボプレスが知られている。この場合、運動経過を選択または決定するために、スライド運動に影響が及ぼされる。例えば、部品搬送を容易にするために、スライドの下降速度またはスライドの上昇速度が変更される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、プレスの出力が比較的に高いにもかかわらず、サーボ駆動装置とその変圧整流器を小さく、ひいては低コストになるように採寸することを可能にする、プレスを運転するための方法またはプレスを提案することである。本発明の課題は特に、サーボ駆動装置と定格プレス力の比を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は請求項1または2または10の特徴によって解決される。それぞれの従属請求項には、有利で合目的な発展形態が記載されている。
【0005】
定格プレス力の少なくとも80%でプレスを運転するための本発明に係る方法、特に鍛造クランクプレスのような、工作物を変形、特に鍛造するためのクランクプレスを運転するための本発明に係る方法において、プレスがサーボ駆動装置と、このサーボ駆動装置と工作物の間に配置された、プレスの運転中に動く質量系とを備え、質量系の質量が少なくともスライドによっておよび少なくとも駆動軸によって形成され、質量系が少なくとも一時的にサーボ駆動装置によって駆動され、変形工程のために定格プレス力の最大で80%がサーボ駆動装置によって供され、変形工程の際に定格プレス力の少なくとも100%が供されるように、変形工程の前に質量系の質量がサーボ駆動装置によって加速される。これにより、プレスの最大定格プレス力と比較して最大出力のサーボ駆動装置を小さく採寸することができる。これによって、サーボ駆動装置と、このサーボ駆動装置の手前に接続配置された変圧整流器が、プレスの定格プレス力で測定して、低コストの部品になる。
【0006】
プレスを運転するための本発明に係る方法、特に鍛造クランクプレスのような、工作物を変形、特に鍛造するためのクランクプレスを運転するための本発明に係る方法において、プレスがサーボ駆動装置と、このサーボ駆動装置と工作物の間に配置された、プレスの運転中に動く質量系とを備え、質量系の質量が少なくともスライドによっておよび少なくとも駆動軸によって形成され、質量系が少なくとも一時的にサーボ駆動装置によって駆動され、高められた定格プレス力がサーボ駆動装置と質量系によって割当量に応じて提供され、80%の定格プレス力と少なくとも100%の定格プレス力の差が、質量系の質量の回転数を高めることによっておよび/または質量系の質量を増大することによって調整される。これにより、プレスの最大定格プレス力と比較して最大出力のサーボ駆動装置を小さく採寸することができる。これによって、サーボ駆動装置と、このサーボ駆動装置の手前に接続配置された変圧整流器が、プレスの定格プレス力で測定して、低コストの部品になる。
【0007】
方法ではさらに、変形工程の際に放出された質量系のエネルギが次の変形工程までサーボ駆動装置によって質量系に再び供給される。これにより、プレスの連続的で中断のない運転が可能である。
【0008】
さらに、プレスが連続的に回転するプレスとして運転される。これにより、サイクルの終わりに質量系が有する動的エネルギが、次のサイクルに受け渡される。
【0009】
さらに、クランク軸がサーボ駆動装置によって駆動され、変形工程の外でおよび変形工程中に、精々、100%の定格プレス力のトルクよりも少なくとも20%小さなトルクが、サーボ駆動装置からクランク軸に加えられる。このような方法を適用すると、サーボ駆動装置とその変圧整流器を、類似の定格プレス力を有するプレスのサーボ駆動装置および変圧整流器よりも非常に小さく採寸することができる。
【0010】
さらに、プレスの自己遠心質量がスライドによっておよび特にスライドと駆動軸によって好ましくは追加質量によって形成される。これにより、エネルギを供給するために、十分な質量が供される。この質量は追加質量を使用する際に、既存のプレスでも後付けの方法で高めることができる質量である。
【0011】
さらに、変形工程のために、質量系に含まれる運動エネルギを利用すべきであり、その都度必要な変形エネルギの全部を電源網から調達すべきではない。これにより、質量系から相当なエネルギ割当量を供することができる。
【0012】
さらに、変形工程がプレスの定格出力の少なくとも80%を必要とする場合、工作物がサーボ駆動装置の駆動出力によって割当量に応じておよび質量系の運動エネルギの放出下で割当量に応じて変形される。これにより、サーボ駆動装置をプレスの定格出力と比較して小さく採寸することができる。
【0013】
変形の際に、少なくともプレスの定格出力の20%の範囲内の運動エネルギが、質量系から放出される。これにより、質量系が変形のために大いに寄与する。
【0014】
本発明に係るプレスの場合、サーボ駆動装置が変形工程のためにプレスの定格プレス力の最大で80%を提供し、質量系が変形工程のためにサーボ駆動装置による加速の結果として、プレスの定格プレス力の少なくとも20%を提供する。これにより、プレスの定格プレス力に関連して、サーボ駆動装置をその最大出力に関して小さく採寸することができる。これによって、サーボ駆動装置と、このサーボ駆動装置の手前に接続配置された変圧整流器が、プレスの定格プレス力で測定して、低コストの部品になる。
【0015】
サーボ駆動装置は駆動軸に連結されている。これにより、サーボ駆動装置は質量系に直接接続され、この質量系に直接作用することができる。
【0016】
概略的に図示した実施の形態に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】プレスについての、サーボ駆動装置の回転数をスライドの位置に対して示すグラフである。このプレスはスライドが上死点にある位置から動き始める。
図2】プレスについての、サーボ駆動装置の回転数をスライドの位置に対して示すグラフである。このプレスは、第1グラフに示したスライドの経過の進行方向で、10回転/分の回転数で上死点を通過する位置からさらに回転する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すグラフD1は、プレスにおける、1分間あたりの回転で表示されるサーボ駆動装置の回転数DZをスライドの位置STに対して示している。この場合、プレスはスライドが上死点OT1にある位置Iから動き始める。サーボ駆動装置の回転数DZは停止状態から75回転/分まで連続的に上昇する。この場合、サーボ駆動装置の後に支持された質量系内に含まれる運動エネルギも上昇増大する。方向転換点または下死点UT1の手前約50mmにあるスライドの位置IIから、75回転/分の回転数が保持される。スライドがおおよそ下死点UT1の手前1.5mmにあるときに始まり、スライドがおおよそ下死点UT1の前方約2.5~4.5mmにあるときに終わる変形工程UFP1の間、回転数DZは75回転/分から60回転/分へ20%だけ低下する。というのは、変形工程のために、サーボ駆動装置によって供されるエネルギのほかに、質量系に蓄えられたエネルギが必要となるからである。続いて、サーボ駆動装置の回転数DZはさらに低下する。というのは、部品搬送と受型の手入れのために十分な時間ウインドウを確保するために、サーボ駆動装置の使用下ではエネルギ回収が行われるからである。エネルギ回収の間、サーボ駆動装置はジェネレータとして運転される。部品搬送と受型の手入れが終了するや否や、スライドの位置IIIから - スライドが再び上死点OT2に達する前に - サーボ駆動装置の回転数を上昇させることによって再びエネルギが質量系に供給される。
【0019】
これに相応して、図2に示した第2のグラフD2に示すように、スライドは第2サイクルの開始時に、10回転/分のサーボ駆動装置の回転数で、ひいてはエネルギを既に有する状態で上死点OT2を通過する。図2に示した第2サイクルでは、サーボ駆動装置はその後、75回転/分の回転数へさらに上昇し、この場合質量系の運動エネルギがさらに増大する。それ以降の経過は、図1を参照して説明した経過と同じである。より強力な回転数低下が再び下死点UT2の周辺で行われる。というのは、質量系がエネルギを放出するからである。続いて、回転数はエネルギ回収によって再びさらに低下し、そして再び上昇し、それによってスライドは10回転/分のサーボ駆動装置の回転数で、上死点OT3を通過する。
【符号の説明】
【0020】
D1 第1グラフ
D2 第2グラフ
DZ サーボ駆動装置の回転数
OT1 第1サイクルの上死点
OT2 第2サイクルの上死点
ST スライドの位置
UFP1 第1サイクルの変形工程
UFP2 第2サイクルの変形工程
UT1 第1サイクルの下死点
UT2 第2サイクルの下死点
I 第1サイクルのスライドの第1位置
II 第1サイクルのスライドの第2位置
III 第1サイクルのスライドの第3位置
図1
図2