(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】多成分射出成型技術によるスナップ係合カバー
(51)【国際特許分類】
B65D 43/04 20060101AFI20220728BHJP
B65D 43/08 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
B65D43/04
B65D43/08
(21)【出願番号】P 2018541482
(86)(22)【出願日】2016-11-04
(86)【国際出願番号】 DE2016100523
(87)【国際公開番号】W WO2017076398
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-09-10
(31)【優先権主張番号】202015105951.5
(32)【優先日】2015-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518153058
【氏名又は名称】キットマン, ローランド
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【復代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】キットマン, ローランド
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0037654(US,A1)
【文献】米国特許第03080993(US,A)
【文献】米国特許第03559843(US,A)
【文献】特開平11-321907(JP,A)
【文献】実開昭61-188949(JP,U)
【文献】特表2011-521854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/04
B65D 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞対象の開口(1)に装着するためのカバー(10、20、30)であって、
装着の方向に反った第一状態と前記装着の方向の反対側に反った第二状態との間で双安定に変形される前壁部(11、21、31)と、
双安定な前記第一状態では、双安定な前記第二状態よりも大きな外径を有し、したがって、前記第一状態では内側から、または前記第二状態では外側から壁領域(2)に対し、縁部分(12、22、32)を押圧することによって、前記開口(1)の前記壁領域(2)に対する前記カバー(10、20、30)の締め付け装着をもたらすようになされた環状の前記縁部分(12、22、32)と、
を含み、
前記縁部分(12、22、32)は、プラスチック製の第二材料成分で作製された少なくとも1つの広張部分(14、24、34)を有し、前記第二材料成分は、残りの縁部分(12、22、32)が作製されているプラスチック製の第一材料成分よりも柔軟であり、双安定な前記第一状態において双安定な前記第二状態に比べ前記縁部分の外周の増大を可能にし、
前記前壁部(11、21、31)が前記縁部分(12、22、32)に移行する角度(μ)が一定であって、前記角度(μ)が双安定な前記第一状態と双安定な前記第二状態とで同じであ
り、
前記縁部分(12、22、32)が、前記縁部分(12、22、32)と前記前壁部(11、21、31)との間の移行部分から下方に向けて形成され、
前記残りの縁部分(12、22、32)を構成し、前記プラスチック製の第一材料成分で構成された中間部分(13、23、33)と、
円周方向において、前記中間部分(13、23、33)と交互に配置され、前記プラスチック製の第二材料成分で構成された複数の前記広張部分(14、24、34)を含むカバー(10、20、30)。
【請求項2】
前記角度(μ)は、90°~175°の間である請求項1に記載のカバー(10、20、30)。
【請求項3】
閉塞対象の開口(1)に装着するためのカバー(10、20、30)であって、
装着の方向に反った第一状態と前記装着の方向の反対側に反った第二状態との間で双安定に変形される前壁部(11、21、31)と、
双安定な前記第一状態では、双安定な前記第二状態よりも大きな外径を有し、したがって、前記第一状態では内側から、または前記第二状態では外側から壁領域(2)に対し、縁部分(12、22、32)を押圧することによって、前記開口(1)の前記壁領域(2)に対する前記カバー(10、20、30)の締め付け装着をもたらすようになされた環状の前記縁部分(12、22、32)と、
を含み、
前記縁部分(12、22、32)は、プラスチック製の第二材料成分で作製された少なくとも1つの広張部分(14、24、34)を有し、前記第二材料成分は、残りの縁部分(12、22、32)が作製されているプラスチック製の第一材料成分よりも柔軟であり、双安定な前記第一状態において双安定な前記第二状態に比べ前記縁部分の外周の増大を可能にし、
前記前壁部(11、21、31)から前記縁部分(12、22、32)への移行部分での材料厚さが、少なくとも部分的エリアにおいて、前記カバー(10、20、30)の残りのエリアよりも大き
く、
前記縁部分(12、22、32)が、前記縁部分(12、22、32)と前記前壁部(11、21、31)との間の移行部分から下方に向けて形成され、
前記残りの縁部分(12、22、32)を構成し、前記プラスチック製の第一材料成分で構成された中間部分(13、23、33)と、
円周方向において、前記中間部分(13、23、33)と交互に配置され、前記プラスチック製の第二材料成分で構成された複数の前記広張部分(14、24、34)を含むカバー(10、20、30)。
【請求項4】
前記移行部分での材料厚さが、前記前壁部(11、21、31)の最小材料厚さよりも倍数で大きく、具体的には約3~4倍大きい、
請求項3に記載のカバー(10、20、30)。
【請求項5】
閉塞対象の開口(1)に装着するためのカバー(10、20、30)であって、
装着の方向に反った第一状態と前記装着の方向の反対側に反った第二状態との間で双安定に変形される前壁部(11、21、31)と、
双安定な前記第一状態では、双安定な前記第二状態よりも大きな外径を有し、したがって、前記第一状態では内側から、または前記第二状態では外側から壁領域(2)に対し、縁部分(12、22、32)を押圧することによって、前記開口(1)の前記壁領域(2)に対する前記カバー(10、20、30)の締め付け装着をもたらすようになされた環状の前記縁部分(12、22、32)と、
を含み、
前記縁部分(12、22、32)は、プラスチック製の第二材料成分で作製された少なくとも1つの広張部分(14、24、34)を有し、前記第二材料成分は、残りの縁部分(12、22、32)が作製されているプラスチック製の第一材料成分よりも柔軟であり、双安定な前記第一状態において双安定な前記第二状態に比べ前記縁部分の外周の増大を可能にし、
前記前壁部(11、21、31)から前記縁部分(12、22、32)への移行部分は、前記プラスチック製の第一材料成分よりも高硬度のプラスチック製の第三材料成分によって形成され、前記カバー(10、20、30)全体がほぼ均一な材料厚さを有
し、
前記縁部分(12、22、32)が、前記縁部分(12、22、32)と前記前壁部(11、21、31)との間の移行部分から下方に向けて形成され、
前記残りの縁部分(12、22、32)を構成し、前記プラスチック製の第一材料成分で構成された中間部分(13、23、33)と、
円周方向において、前記中間部分(13、23、33)と交互に配置され、前記プラスチック製の第二材料成分で構成された複数の前記広張部分(14、24、34)を含むカバー(10、20、30)。
【請求項6】
カバー(10、20、30)全体がほぼ同じ厚さである、
請求項5に記載のカバー(10、20、30)。
【請求項7】
多成分射出成型工程によってプラスチック材料で一体的に作製される、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のカバー(10、20、30)。
【請求項8】
前記縁部分(12、22、32)が、
前記広張部分(24、34)を備える領域の内側および外側に、前記装着の方向に軸方向に延びる中間部分、および、これに隣接し、半径方向内方および/または外方に延びるリップ部(23a、24a、33a、34a、33b、34b)を有する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のカバー(10、20、30)。
【請求項9】
前記縁部分(12、22、32)の終端域において、前記縁部分(12、22、32)の周辺を取り囲み、さらに前記プラスチック製の第一材料成分よりもより柔軟か、より弾性的な材料で形成された係止リング(19、29、39a、39b)と一体的に設けられ、
前記係止リング(19、29、39a、39b)は、好ましくは前記プラスチック製の第二材料成分で作製される、
請求項1
から請求項7のいずれか1項に記載のカバー(10、20、30)。
【請求項10】
前記前壁部(11、21、31)が、前記カバー(10、20、30)を前記開口(1)から着脱するため配置され、好ましくは弓形の把手として形成された、前記装着の方向とは反対方向に突出した把手部材(15、25、35)を有する、
請求項1
から請求項9のいずれか1項に記載のカバー(10、20、30)。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の前記カバー(10、20、30)と、
前記カバー(10、20、30)を前記開口(1)の前記壁領域(2)に締め付けることによって閉塞する対象となる容器の前記開口(1)と、
を含む閉塞システムであって、
前記壁領域(2)が、前記カバーの縁部分(12、22、32)の締め付け構成部である前記係止リング(19、29、39a、39b)と係合するための溝(3、4)を有する、
閉塞システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1920年代以降、前壁部への加圧によって双安定方式で開閉の可能なスナップ閉塞具を備えた、小さな円形の金属缶の作製が知られている。かかるスナップ閉塞具は、例えば、特許文献1にも記載されており、双安定方式で凸状態と凹状態との間で変形可能な円形の前壁部と、金属缶の外縁部上に形成されたエンボス部を閉塞位置に包含するように設計された銃眼様の開いた指状の円周縁部分とから成る。
【背景技術】
【0002】
かかるブリキの金属缶は、例えばHoffmann Neopac社から、商品名Klick-Klack(登録商標)Klipp-Klapp(登録商標)で市販品として販売されている。これらの缶のさらに詳しい説明は、例えば以下の特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許第442634C号
【文献】欧州特許第2291315B1号
【0004】
従来技術では、前述の缶閉塞具のスナップメカニズムが機能するためには、前壁部の隣接環状縁部分上での双安定変形の切換えが最重要であることがまだ認識されていないか、または少なくとも記述はされていない。前壁部の凸湾曲と凹湾曲との間での反転動作が、その変形応力をこの縁部分に伝達された場合にだけ、金属銃眼部の開拡、および閉塞キャップの外周部での対応する増大がもたらされ、さらにこれが金属缶を開くことを可能にする。前壁部と縁部分との間の移行部分に囲われた角度が、両方の双安定状態に対して同一であること、すなわち、閉塞キャップ金属が、この移行部分において、前壁部の変形を縁部分に完全に伝達するために十分な硬度があることが中心的な重要性である。
【0005】
前述の金属缶キャップでは、前壁部と縁部分との間の移行部分における必要な金属硬度は、缶のキャップが、一体の板状金属から縁部領域を屈曲し金属銃眼部パンチすることによって形成される、という事実によって既に達成されている。前壁部と縁部分との間の移行部分の材料を曲げ焼き入れすることによって、必要な金属硬度は自動的に達成される。
【0006】
しかしながら、既知のクリッククラック式キャップは、今までのところ、金属材料、特にブリキにおいてだけ利用可能であるという不利点を抱えている。より安価で軽量なプラスチック材料で、これらを製造することが広く求められている。さらに、かかる缶を、意図しないいかなる開放も生じ難い、前壁部の凹湾曲閉塞状態を有するように作製できるようにすることが望まれている。最後に、薬容器としてかかる閉塞具の用途を従来の範囲を超えて拡大するために、これらをできるだけ気密で耐水性に作製することが望まれていよう。
【0007】
前述の目的は、添付の請求項1の特徴によって少なくとも部分的に解決される。諸従属請求項は好ましい諸実施形態に関する。
【0008】
プラスチックでこれらのキャップをうまく産生するために、蓋の外周が変化可能で、同時に、前壁部と縁部分との間の移行部分での角度が、両方の双安定位置で一定に保たれなければならないとの認識を得て実施することが重要であることが判明している。従来式の金属缶閉塞具では、これら境界条件の一番目は、開拡可能な金属銃眼部によって計画的に満たされていた。二番目の境界条件は、移行領域中のブリキ金属が、金属曲げ工程によって既に生じている硬化によって十分に硬くなっているとの事実によって、偶発的に多少とも満たされていた。
【0009】
しかしながら、薄肉プラスチックの作製では、同種の材料処理法が良好な結果をもたらすことはあるまい。縁エリアを従来型の銃眼部の形状に切削することは、カバーを不安定すぎるものにすることになろう。さらに、金属加工と違って、作製過程の曲げ工程での硬化は生じない。したがって、これら境界条件は他の手段で満たされなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これは、カバーの縁部分の少なくとも1つの広張部分が、他の縁部分よりもより柔らかな材料で作製されるという点で、本発明によって達成される。この広張部分は、張力の下で弾性的に広張し、前壁部が凹状湾曲している状態で縁部分が広張することを可能にし、一方、カバーの基材(すなわち、第一材料成分)は、それ以外では、前壁部と縁部分との間の移行領域中の角度一定に保つのに十分な硬度である。これは、カバーが、より大きな外周を有する双安定状態に反転することを可能にする。
【0011】
好ましくは、この広張部分は、多成分射出成型工程によって、カバーの残りの部分と一体で一緒に形成される。広張部分に対しては、次いで、第二材料成分が射出され、該成分は、カバーの残りの部分に対して用いられた第一材料成分よりも柔軟および/またはより弾性的である。前壁部と縁部分との間の移行領域において一定の角度をさらに支えるために、カバーは、この移行領域において、好ましくは、前壁部の主エリアにおけるよりも高い硬度の(ベース)材料成分のより大きな材料厚さを有することができ、あるいはさらに高硬度の第三材料成分によって射出成型することが可能である。この射出成型は、カバーが全体として一定の材料厚さを有するという具体的な利点をもたらす。均一な厚さは、視覚的にアピールするのみならず、加工くずが発生する段部および縁の数も低減する。
【0012】
或る特に好適な実施形態によれば、前壁部は、前壁部を手で容易に持ち上げおよび押し込むことを可能にする把手部材をさらに含む。このことは、当該閉塞具が閉塞対象開口上のキャップとして外側からは係合しているのでなく、閉塞対象開口の蓋として側壁中に内側から係合している場合に特に重要である。閉じた状態では、この蓋は、適切な把手部材なしには、このときもはや開口から取り去ることができないことになろう。この把手部材は、それが前壁部の中央域を強化するという付加的利点を提供し、該中央域は、凸位置と凹位置との間での折り込みプロセスの過程でその水平方位ができるだけ硬直に留まる必要がある。
【0013】
本発明の特に好適な実施形態において、より柔軟な第二材料成分で作製された係止リングが、縁部分の外周全体の上に射出成型される。このリングは、開口の密閉閉塞すら可能なように、閉塞対象開口の側壁中の溝または段部の中に保密的に係合可能である。この封止の構想は、従来式の金属閉塞キャップの場合は、それらが常に外側からの金属と当節し、縁部分に星型形に配置された金属銃眼部が封止構成を可能にさせなかったので、成り立たなかった。
【0014】
本明細書では、閉塞対象開口の閉塞具を全般的にカバーと言う。カバーの締め付けアタッチメントが外側から開口壁上に係合する場合、そのカバーをキャップと呼び、他方、カバーが、開口壁に対し内側から締め付ける場合は、それを蓋と呼ぶ。
【0015】
以降において、いくつかの実施形態を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第一実施形態による、閉塞蓋の部分的に断面図の側面図である。
図1(b)は、
図1(a)の蓋の平面図である。
図1(c)は、
図1(a)中の断面A-Aの拡大詳細図である。
図1(d)は、
図1(a)の細部Xの拡大図である。
図1(e)は、
図1(c)中の断面C-Cの拡大詳細図である。
図1(f)は、
図1(c)中の断面B-Bの拡大詳細図である。
図1(g)は、反対の双安定位置における、
図1(e)中の詳細図によるカバーによって開口を閉塞する原理の表現を示す。
【
図2】
図2(a)は、開位置にある、第一実施形態によるカバーの変形例を用いた、本発明による閉塞システムの断面図である。
図2(b)は、閉位置にある、
図2(a)の閉塞システムの断面図である。
図2(c)は、
図2(b)の拡大された細部である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の第二実施形態による、閉塞キャップの部分的に断面図化された側面図である。
図3(b)は、
図3(a)のキャップの平面図である。
図3(c)は、
図3(a)中の断面A-Aの拡大詳細図である。
図3(d)は、
図3(a)の細部Xの拡大図である。
図3(e)は、
図3(c)中の断面C-Cの拡大詳細図である。
図3(f)は、
図3(c)中の断面B-Bの拡大詳細図であり、本図にはキャップを用いた開口の閉塞原理が同時に示されている。
【
図4】
図4(a)は、開位置にある、第二実施形態によるカバーの変形例を用いた、本発明に係る閉塞システムの断面図である。
図4(b)は、閉位置にある、
図4(a)の閉塞システムの断面図である。
図4(c)は、
図4(b)の拡大された細部を示す。
【
図5】
図5(a)は、本発明の第三実施形態によるカバーの部分的に断面図化された側面図である。
図5(b)は、
図5(a)のカバーの平面図である。
図5(c)は、
図5(a)中の断面A-Aの拡大詳細図である。
図5(d)は、
図5(a)の細部Xの拡大図である。
図5(e)は、
図5(c)中の断面C-Cの拡大詳細図である。
図5(f)は、
図5(c)中の断面B-Bの拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(a)~(d)中に示された蓋10は、ほぼ円形の基本形状の前壁部11を有し、その外周縁には環状の縁部分12が形成されている。
図1(a)は、部分的に断面図化された側面図を示す。この図の左半分には、側面からの蓋10が見取され、また、右半分には、蓋10の後部内側が見えるように、内側切り口が示されている。後記で説明する
図3(a)中のキャップ20および
図5(a)中のカバー30にも同様な表現が適用される。さらに、全ての図において、断面化されていない柔軟成分(第二材料成分)は点付きで描かれ、断面図の柔軟成分は網目状陰影をつけて描かれ、一方、断面化された硬性成分(第一材料成分)は単線で斜線付けされている。
【0018】
図1(a)~1(f)中に、蓋10がその開位置で示されている。すなわち、
図1(a)に見られるように、その前壁部11は凸状に上方に反った双安定状態にある。前壁部11が、下方に(装着方向に)反った凹状態にスナップすれば、
図1(g)に示されるように、縁部分12の外周は増大し、その結果、縁部分12の半径方向端が、閉塞対象開口1の壁領域2中の内部溝4と係合することが可能になる。
【0019】
移行領域において前壁部11と縁部分12との間の移行領域に包含される角度μを、
図1(e)および1(g)の2つの位置で一定に保つためには、蓋の材料が十分な硬度を有する必要がある。本発明によれば、このことは、前壁部11と縁部分12との間の移行部分が、少なくとも部分的に、だが好ましくは円周全体に亘って、前壁部11の中央域よりも大きな材料厚さを有するという点において達成される。
図1(e)~1(g)に示されるように、この材料は、前壁部11と縁部分12との間の移行領域が内側に円滑に延びるように、装着の方向とは反対の外方に向かって厚くされる。上記に換えて、該材料の厚み増大を内側に出張らせ、蓋の内側の壁部に対応する輪郭をもたらすことも可能である。かくすれば、移行領域の外側が円滑となり、とりわけ均質な外観が得られる。
【0020】
図1(g)に示される凹状双安定状態での、
図1(e)に示された凸状態に対する外周の拡大は、円周縁部分12の十分な広張フレキシビリティを必要とする。これは、本発明による、円周状に(好ましくは等距離に)配置された、より柔軟な第二材料成分の広張部分14によって達成され、これが、
図1(a)~(d)でとりわけよく見取れるように、より硬度の高い第一材料成分の中間部分13と交互配置される。
図1(b)に示されるように、広張部分14は、前壁部11と縁部分12との間の移行領域で始まり、半径方向外部縁に向かって拡がる。
【0021】
縁部分12は、その広張部分14およびその中間部分13の両方において円周部の係止リング19で終端し、該リングも、好ましくは広張部分14と同じより柔軟な材料成分で形成される。この円周部の係止リング19は、薄壁のカバー10に付加的な寸法安定性を与えるが、さらに、
図1(g)に示される凹状折り込み位置において外周の拡大を可能にするのに十分な弾性を有する。係止リング19は、そのより柔軟な材料特性のゆえに、閉塞対象開口の壁部2の内側溝4の中へ特にうまく締め付くだけでなく、封止リングの役割を担うことさえ可能である。
【0022】
最後に、カバー10は、さらにストラップまたはU字型バー15の形で、把手部材を有する。この把手部材は、蓋10を、横方向に傾けることなく閉塞対象開口1上に設置し、それを再び引き上げるため、手によってまたはフックなどを使って、安全に且つ確実に取り扱うことが可能である。
【0023】
蓋10の製造方法として、前述した1つ以上の熱可塑性プラスチックの多成分射出成型がとりわけよく適している。多成分技法により、単一の製造工程において、前壁部11および中間部分13に対する第一(ベース)成分を射出することができ、一方、広張部分14および係止リング19は、より柔軟な第二成分から直接成型される。また、前壁部と縁部分との間の移行領域に対する任意の第三(のとりわけ、高硬度の)材料成分も、単一回の多成分射出成型において一体的に射出成型が可能である。
【0024】
第一成分のための好適な材料は、熱可塑性エラストマ(TPE:thermoplastic elastomer)および熱可塑性ウレタン(TPU:thermoplastic urethane)である。
【0025】
第二成分のための好適な材料は、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS:acrylonitrile-butadiene-styrene)、およびポリスチレン(PS:polystyrene)である。
【0026】
第三成分のための好適な材料は、ガラス繊維補強ポリアミド(PA:polyamide)または他のガラス繊維補強プラスチックである。
【0027】
完全に射出成型によってカバーを作製する代わりに、事前に別個に製造された半加工品を挿入成型によってコートすることも可能である。例えば、板状金属または軽金属(例えばアルミニウム)製で、展開された金属銃眼部を備えた従来型のクリッククラック式缶キャップの形状を実質的に有するキャップを、その縁領域中により柔軟な(第二)プラスチック成分でオーバーモールドすることも考えられる。こうすれば、それが封止する対象の缶からの液体またはガスの漏出に対し、大きく改善された気密性を備えたカバーが生成される。
【0028】
図2(a)~2(c)は、本発明に係る閉塞システムの動作を示し、これらの図では、開口1を閉塞するために第一実施形態の蓋10が使われている。閉塞対象開口1の壁部分2はその内側に、蓋10がその中に係合することになる、下部縁に肩部5aを持つ環状の溝4を有する。
【0029】
蓋10を上方から開口1中に導入すると、縁部分12は、肩部5aに対して係止リング12を当接することになる。その結果、ユーザは、蓋10がロックのため意図された軸端位置に到達したことを知る。このときユーザが前壁部11を(最善は、把手部材15上に力F
1で垂直下方に)押し下げると、前壁部11は、
図2(a)に示されたその凸状双安定状態から
図2(b)に示されたその凹状双安定状態に切り替わる。前壁部11と縁部分12との間の移行領域における蓋材料の、好ましくは材料の増厚にサポートにされた高硬度に起因して、この反転プロセスにおいて角度μは一定に留まり、これにより、縁部分12はわずかに横外方に拡動して係止リング19を溝中に押し込む。結果として、該材料は、広張部分14に及んで平面的に広がった状態にする。
【0030】
縁部分12の外径は、この折り込みプロセスの過程で、
図2(a)のaから2(b)のa’に増大する。
図2(b)の凹状前壁部位置において、係止リング19は、横方向に内側から開口の壁部2の環状溝4の中に押し付けられ、しかして蓋10をその閉塞位置にロックする。
図2(c)中で、係止リング19の溝4の中への係合が再度詳細に示されている。
【0031】
開口1を開放するために、前壁部11は、力F2で上方に(好ましくは把手ストラップ15を握って)引っ張られ、これにより、蓋10は当初の状態にスナップバックし、その外径が再び値aに低減されるので、開口1から取り外すことができる。
【0032】
図2(a)~2(c)による閉塞システムの具体的な利点は、外側からの前壁部11上への圧力によって、カバー10を開くことができない点にある。従来式のクリッククラックの缶とは違って、
図2(b)中の蓋10は、上方からの前壁部11上への(例えば、輸送中の衝撃による)垂直圧力によっては開放できない。代わりに、前壁部11は、把手ストラップ15の目的的な上方への引き上げによってそのロック位置から持ち上げる必要がある。結果として、意図しない開口に対する、カバー10の安全性は向上される。好ましくは、カバー10は、
図2(a)~(c)に示されるように、溝4および肩部5aが対応する深さの内側に配置されれば、閉塞対象のパイプの端部内に完全に配することが可能である。
【0033】
図3および
図4中に示される第二実施形態において、本発明に係るカバーは、もはや閉塞対象開口中の内側から開口に係合する蓋でなく、外側から閉塞対象開口1を取り囲むキャップ20として形成されている。
図3(a)~3(f)は全て、外方(すなわち、装着の方向とは反対側)に反ったその凸状位置、すなわちその閉位置にあるキャップ20を示す。
図3(f)中には、この位置において、閉塞対象開口の壁2中への係止がどのようにして可能なのかがさらに示され、これについては、
図4(a)~4(c)においてさらに詳しく説明することとする。
【0034】
第一実施形態中の蓋10と同様に、キャップ20は、ほぼ円形のまたはディスク形状の前壁部21を有し、これが環状の縁部分22に続いている。前壁部21と縁部分22との間の移行領域において、
図3(e)および3(f)に見取れるように、角度μ(
図3(e)および3(f)には描かれていないが、
図4(a)には示されている)が凹状スナップ位置においても一定に留まることを確実にするため、ここでも同様に材料は厚くされる。
【0035】
さらに、縁部分22は、これもまたその円周上に断続的に成型された広張部分24を含み、該広張部分は、間に置かれた中間部分23と等間隔で交互配置され、広張部分は、中間部分23に対して使われる第一材料成分よりも柔軟な第二材料成分で形成される。第一実施形態と同様に、広張部分24のより柔軟な材料は、縁部分22が、キャップ20の凹状すなわち開状スナップ位置においてその外周を拡大することを可能にする。広張部分24は、このときもはや、
図3(a)および3(d)に示されるような一定の幅を有さず、半径方向外側に(
図1(a)および1(d)に示された広張部分14と同様に)広がることになろう。
【0036】
第一実施形態と違って、係止リング29は、縁部分22のリップ部23a、24a上に一体的に形成され、このリップ部は90°で半径方向内側に突き出している。これは、キャップ20が閉塞対象開口1を外側から取り囲むためであり、これについては、
図3(f)および特に
図4(a)~(c)においてさらに詳しく説明することとする。リップ部24aは、広張部分24と連続しており、より柔軟な第二材料成分で作製され、一方、中間部分23に隣接するリップ部23aはより硬度のある第一材料成分で作製される。但し、リップ部23aと24aとの全体をより柔軟な第二材料成分で形成することも可能である。この場合、縁部分22の半径内部方向に延びている部分の全体が係止リング29に属するか、または(第一実施形態におけるように)リップ部はないことになろう。
【0037】
図4(a)~(c)は、本発明に係る閉塞システムにおける第二実施形態による、キャップ20の動作原理を示す。閉塞対象開口1は、図示の壁部分2の外側に環状溝3を有する。この溝の下端に肩部5bが形成されるが、必要ではなく省略さえできる。
図4(a)は、開状凹位置、すなわち、下方に反った前壁部21のキャップ20を示す。これは、縁部分22の、対応して拡大された内径a’を有する。
図4(a)の開状態において、この内径a’は、開口1からキャップ20を除去できるように、外側溝3の外径よりも大きい。装着の方向と反対側に前壁部21上に作用する力F
2を(好ましくは、把手部材25を持ち上げることによって)加えることによって、キャップ20は、その第一双安定状態にスナップバックし、これは
図3(a)~(f)にも示されている。
【0038】
このとき、前壁部21は、
図4(b)中に示された凸湾曲を有する。すなわち、装着の方向と反対に上方に反っている。内側方向に突き出した係止リング29を備える縁部分22は、このとき、溝3の外径よりも小さな内径aだけを有する。結果として、キャップ20は、閉塞対象開口の壁部2と堅固に係合され、装着の方向に作用する力F
1が前壁部21上に加えられたときにだけ、その第二双安定状態にスナップバックする。
【0039】
図4(c)中にさらに詳細に示されているように、より柔軟な第二材料成分で作製された係止リング29は、外側の溝3中への縁部分22の堅固な締め付け装着をもたらす。また、係止リング29は、その弾力的材料特性のため、開口1からのガスまたは液体の放出を防止するための封止リングとしての役割も果たす。
【0040】
図5(a)~(f)は、基本的に
図3(a)~(f)と同様に構成され、本発明の第三実施形態による、キャップおよび蓋の両方として使用可能なカバー30を示す。第二実施形態によるキャップ20と対照的に、第三実施形態によるカバー30は、半径内側方向に突き出た係止リング39aに加え、より柔軟な第二材料成分で作製された半径外側方向に突き出た係止リング39bを含む。これは、
図5(e)および5(f)中にとりわけうまく表されており、このカバー30が、
図2(a)~(c)、および
図4(a)~(c)両方において説明した原理によって、キャップ(
図5(a)はその閉位置を示す)および蓋(
図5(a)がその開位置を示す)として使用可能であるという利点を有する。しかして、本発明のこの変形例は、特に多目的可用性の利点によってもさらに特徴付けられる。
【0041】
この図示の実施形態において、縁部分32は、その広張部分34および中間部分33の両方において、半径方向に延びるリップ部33a、b、34a、bを有し、係止リングの両側39a、39bで終端する。ここでもまた、リップ部33a、bは、より柔軟な第二材料成分から射出成型することができ、これによって、内側および外側係止リング39a、39bはそれぞれ広張される。係止リング39a、39bは、この場合、装着の方向に延びている、縁部分32の中間部分に直接接続することになろう。
【0042】
要約すれば、本発明は、少なくとも2つの材料成分を有するプラスチック材料で作製された双安定折り込みメカニズムを備えるカバー10、20、30に関する。このカバー10、20、30は、多成分技術を用いる射出成型工程において一体的に産生することができる。前壁部11、21、31と縁部分12、22、32との間の移行領域において、プラスチック材料は、前壁部11、21、31と縁部分12、22、32との間の移行領域中に含まれる角度μが両方の双安定状態において一定に留まることを確実にするのに(好ましくは、より大きな材料厚さによって)十分な硬度である。縁部分12、22、32中に設けられた広張部分14、24、34は、縁部分12、22、32の外周が、一方の双安定状態から他方の双安定状態へと増大/低減できることを確実にする。
【符号の説明】
【0043】
1 開口
2 側壁
3 外側溝
4 内側溝
5a、b 肩部
10、20、30 カバー
11、21、31 前壁部
12、22、32 縁部分
13、23、33 中間部分(硬い)
14、24、34 広張部分(柔軟)
15、25、35 把手部材
23a、33a リップ部内側(硬い)
24a、34a リップ部外側(柔軟)
33b リップ部外側(硬い)
34b リップ部外側(柔軟)
19、39b 係止リング外側(柔軟)
29、39a 係止リング内側(柔軟)