(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】タッチ力推定のためのトランス容量データと絶対容量データとの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220728BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/041 560
G06F3/044 120
(21)【出願番号】P 2018551452
(86)(22)【出願日】2017-02-27
(86)【国際出願番号】 US2017019737
(87)【国際公開番号】W WO2017172169
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-02-06
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502161508
【氏名又は名称】シナプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【氏名又は名称】中尾 圭策
(74)【代理人】
【識別番号】100182187
【氏名又は名称】高岡 正之
(72)【発明者】
【氏名】シェペレフ, ペトル
(72)【発明者】
【氏名】ウィンガード, アンドリュー
【審査官】梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0210791(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0347314(US,A1)
【文献】中国実用新案第205038622(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0085335(US,A1)
【文献】特開2016-031672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0086666(US,A1)
【文献】特開2015-185169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0015539(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチイベントと関連付けられる、力に基づくデータを得る方法であって、
複数のセンサ電極をトランス容量モードで駆動して、複数のトランス容量測定値を取得するステップと、
前記複数のセンサ電極を絶対容量モードで駆動して、複数の絶対容量測定値を取得するステップと、
前記複数のトランス容量測定値と
、前記複数のトランス容量測定値の測定に使用された前記複数のセンサ電極に対応する前記複数の絶対容量測定値
との差に基づいて、前記力に基づくデータを判定するステップとを含み、
前記力に基づくデータは、入力オブジェクトから加えられる力に関連するデータである方法。
【請求項2】
前記複数のセンサ電極が少なくとも1つの表示電極を含み、前記表示電極が、表示の更新及び容量センシングの両方のために構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タッチイベントの間、前記複数のセンサ電極のうちの少なくとも1つのセンサ電極が、入力オブジェクトによって、前記複数のセンサ電極を含む入力デバイス内の導体に近付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記力に基づくデータを判定するステップが、
前記複数のトランス容量測定値を縮小して、複数の複合トランス容量測定値を取得するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のトランス容量測定値を縮小するステップが、
同じセンサ電極にそれぞれ対応する、前記複数のトランス容量測定値のうちのトランス容量測定値を組み合わせて、前記複数の複合トランス容量測定値のうちの複合トランス容量測定値を形成するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の複合トランス容量測定値を換算して、複数の換算された複合トランス容量測定値を取得するステップを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記力に基づくデータを判定するステップが、
前記換算された複合トランス容量測定値を前記複数の絶対容量測定値から減算して、前記力に基づくデータを得るステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
タッチイベントと関連付けられる、力に基づくデータを得る処理システムであって、
複数のセンサ電極をトランス容量モードで駆動して、複数のトランス容量測定値を取得し、
前記複数のセンサ電極を絶対容量モードで駆動して、複数の絶対容量測定値を取得するように構成された、センサ回路類と、
前記複数のトランス容量測定値と
、前記複数のトランス容量測定値の測定に使用された前記複数のセンサ電極に対応する前記複数の絶対容量測定値
との差に基づいて、前記力に基づくデータを判定するように構成された、判定プロセッサとを備え、
前記力に基づくデータは、入力オブジェクトから加えられる力に関連するデータである処理システム。
【請求項9】
前記複数のセンサ電極が少なくとも1つの表示電極を含み、前記表示電極が、表示の更新及び容量センシングの両方のために構成されている、請求項8に記載の処理システム。
【請求項10】
タッチイベントの間、前記複数のセンサ電極のうちの少なくとも1つのセンサ電極が、入力オブジェクトによって加えられる接触に応じて、前記複数のセンサ電極を含む入力デバイス内の導体に近付けられる、請求項8に記載の処理システム。
【請求項11】
前記判定プロセッサが、
前記複数のトランス容量測定値を縮小して、複数の複合トランス容量測定値を取得することによって、前記力に基づくデータを判定するように構成されている、請求項8に記載の処理システム。
【請求項12】
前記判定プロセッサが、
同じセンサ電極にそれぞれ対応する、前記複数のトランス容量測定値のうちのトランス容量測定値を組み合わせて、前記複数の複合トランス容量測定値のうちの複合トランス容量測定値を形成することによって、前記複数のトランス容量測定値を縮小するように構成されている、請求項11に記載の処理システム。
【請求項13】
前記判定プロセッサが更に、
前記複数の複合トランス容量測定値を換算して、複数の換算された複合トランス容量測定値を取得するように構成されている、請求項11に記載の処理システム。
【請求項14】
前記判定プロセッサが、
前記換算された複合トランス容量測定値を前記複数の絶対容量測定値から減算して、前記力に基づくデータを得ることによって、前記力に基づくデータを判定するように構成されている、請求項13に記載の処理システム。
【請求項15】
タッチイベントと関連付けられる、力に基づくデータを得る入力デバイスであって、
複数のセンサ電極と、
処理システムであって、
複数のセンサ電極をトランス容量モードで駆動して、複数のトランス容量測定値を取得し、
前記複数のセンサ電極を絶対容量モードで駆動して、複数の絶対容量測定値を取得するように構成された、センサ回路類と、
前記複数のトランス容量測定値と
、前記複数のトランス容量測定値の測定に使用された前記複数のセンサ電極に対応する前記複数の絶対容量測定値
との差に基づいて、前記力に基づくデータを判定するように構成された、判定プロセッサとを備える処理システムとを備え、
前記力に基づくデータは、入力オブジェクトから加えられる力に関連するデータである入力デバイス。
【請求項16】
前記複数のセンサ電極が少なくとも1つの表示電極を含み、前記表示電極が、表示の更新及び容量センシングの両方のために構成されている、請求項15に記載の入力デバイス。
【請求項17】
タッチイベントの間、前記複数のセンサ電極のうちの少なくとも1つのセンサ電極が、入力オブジェクトによって加えられる接触に応じて、前記複数のセンサ電極を含む入力デバイス内の導体に近付けられる、請求項15に記載の入力デバイス。
【請求項18】
前記判定プロセッサが、
前記複数のトランス容量測定値を縮小して、複数の複合トランス容量測定値を取得することによって、前記力に基づくデータを判定するように構成されている、請求項15に記載の入力デバイス。
【請求項19】
前記判定プロセッサが、
同じセンサ電極にそれぞれ対応する、前記複数のトランス容量測定値のうちのトランス容量測定値を組み合わせて、前記複数の複合トランス容量測定値のうちの複合トランス容量測定値を形成することによって、前記複数のトランス容量測定値を縮小するように構成されている、請求項18に記載の入力デバイス。
【請求項20】
前記判定プロセッサが更に、
前記複数の複合トランス容量測定値を換算して、複数の換算された複合トランス容量測定値を取得するように構成されている、請求項18に記載の入力デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概して、入力センシングに関し、特に、タッチ力推定のためにトランス容量データを絶対容量データと組み合わせることに関する。
【背景技術】
【0002】
近接センサデバイス(一般に、タッチパッド又はタッチセンサデバイスとも呼ばれる)を含む入力デバイスは、多種多様な電子システムで広く使用されている。近接センサデバイスは、一般的に、表面によって限界を定められている場合が多い、センシング領域を含み、そこで近接センサデバイスは、1つ以上の入力オブジェクトの存在、場所、及び/又は運動を判定する。近接センサデバイスは、電子システムに対するインターフェース接続を提供するのに使用されることがある。例えば、近接センサデバイスは、大型のコンピューティングシステム向けの入力デバイス(ノートブック若しくはデスクトップコンピュータに統合された、又はその周辺の、不透明タッチパッドなど)として使用される場合が多い。近接センサデバイスはまた、小型のコンピューティングシステムで使用される場合が多い(携帯電話に統合されたタッチパネルなど)。多くの近接センサは、センシング領域内で入力オブジェクトによって適用される力を正確に測定する能力を有さない。
【発明の概要】
【0003】
タッチイベントと関連付けられる、力に基づくデータを得る方法が提供される。方法は、複数のセンサ電極をトランス容量モードで駆動して、複数のトランス容量測定値を取得することを含む。方法はまた、複数のセンサ電極を絶対容量モードで駆動して、複数の絶対容量測定値を取得することを含む。方法は更に、複数のトランス容量測定値と複数の絶対容量測定値の差に基づいて、力に基づくデータを判定することを含む。
【0004】
タッチイベントと関連付けられる、力に基づくデータを得る処理システムも提供される。処理システムは、複数のセンサ電極をトランス容量モードで駆動して、複数のトランス容量測定値を取得するとともに、複数のセンサ電極を絶対容量モードで駆動して、複数の絶対容量測定値を取得するように構成された、センシング回路類を含む。処理システムはまた、複数のトランス容量測定値と複数の絶対容量測定値の差に基づいて、力に基づくデータを判定するように構成された、判定プロセッサを含む。
【0005】
タッチイベントと関連付けられる、力に基づくデータを得る入力デバイスも提供される。入力デバイスは複数のセンサ電極と処理システムとを含む。処理システムは、複数のセンサ電極をトランス容量モードで駆動して、複数のトランス容量測定値を取得するとともに、複数のセンサ電極を絶対容量モードで駆動して、複数の絶対容量測定値を取得するように構成された、センシング回路類を含む。処理システムはまた、複数のトランス容量測定値と複数の絶対容量測定値の差に基づいて、力に基づくデータを判定するように構成された、判定プロセッサを含む。
【0006】
実施形態の上記に列挙した特徴を詳細に理解することができるような形式で、上記で簡潔に概要を述べた実施形態のより詳細な説明を、実施形態に対する参照として有してもよく、それらの実施形態のいくつかを添付図面にて例証する。しかしながら、添付図面は典型的な実施形態のみを例証するものであり、したがって、他の有効な実施形態に関して許容され得る範囲を限定するものと見なされないことが留意されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施例による入力デバイスを含むシステムを示すブロック図である。
【
図2】
図2Aは、一実施例による容量センサデバイスを示すブロック図、
図2Bは、一実施例による別の容量センサデバイスを示すブロック図である。
【
図3】一実施例による
図2Aの容量センサデバイスの一部分を示す側面図である。
【
図4】
図4A及び4Bは、一実施例による、トランス容量センシング及び絶対容量センシングからプロファイルを得る手法を示すブロック図である。
【
図5】
図5A~5Eは、一実施例による、複合トランス容量センシング測定値を換算し、力に関連するデータを生成する技術を示す図である。
【
図6】一実施例による、入力オブジェクトによって適用される力を推定する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解を容易にするため、可能な場合は、図面に共通している同一の要素を指定するのに同一の参照番号が使用されている。1つの実施形態の要素が、他の実施形態に有益に組み込まれてもよいことが想起される。
【0009】
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、実施形態又はかかる実施形態の適用及び使用を限定しようとするものではない。更に、前述の技術分野、背景技術、発明の概要、又は以下の発明を実施するための形態において提示される、あらゆる明示又は暗示される理論によって束縛されることを意図しない。
【0010】
様々な実施形態は、力に関連するデータを得るための技術を提供する。入力デバイスは、絶対容量モード及びトランス容量モードで容量測定値を取得する。入力デバイスは、同じ次元で位置合わせされたトランス容量測定値を合算してプロファイルを生成し、そのプロファイルに対して変換を行って、換算されたトランス容量プロファイルを生成する。次に、入力デバイスは、換算されたトランス容量プロファイルを絶対容量測定値から減算して、力に関連するデータを得る。
【0011】
次に図面に移ると、
図1は、本発明の実施形態による例示的な入力デバイス100のブロック図である。入力デバイス100は、電子システム(図示なし)に対する入力を提供するように構成されてもよい。本明細書で使用するとき、「電子システム」(又は「電子デバイス」)という用語は、情報を電子的に処理することができる任意のシステムを広く指す。電子システムのいくつかの非限定例としては、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットブックコンピュータ、タブレット、ウェブブラウザ、電子書籍リーダ、及び携帯情報端末(PDA)など、全てのサイズ及び形状のパーソナルコンピュータが挙げられる。更なる例の電子システムとしては、入力デバイス100及び別個のジョイスティック又はキースイッチを含む、物理的キーボードなどの複合入力デバイスが挙げられる。更なる例の電子システムとしては、データ入力デバイス(リモートコントロール及びマウスを含む)並びにデータ出力デバイス(表示画面及びプリンタを含む)などの周辺機器が挙げられる。他の例としては、遠隔端末、キオスク、及びビデオゲーム機(例えば、ビデオゲームコンソール、携帯型ゲーミングデバイスなど)が挙げられる。他の例としては、通信デバイス(スマートフォンなどの携帯電話を含む)、並びにメディアデバイス(記録機、編集機、及び再生機(テレビ、セットトップボックス、音楽プレーヤー、デジタルフォトフレーム、及びデジタルカメラなど)を含む)が挙げられる。更に、電子システムは、入力デバイスに対するホスト又はスレーブであることができる。
【0012】
入力デバイス100は、電子システムの物理的部品として実装することができ、又は電子システムと物理的に別個であることができる。適切な場合、入力デバイス100は、バス、ネットワーク、及び他の有線又は無線相互接続のうち任意の1つ以上を使用して、電子システムの部品と通信してもよい。例としては、I2C、SPI、PS/2、ユニバーサルシリアルバス(USB)、ブルートゥース、RF、及びIRDAが挙げられる。
【0013】
図1では、入力デバイス100は、センシング領域120で1つ以上の入力オブジェクト140によって提供される入力を感知するように構成された、近接センサデバイス(「タッチパッド」又は「タッチセンサデバイス」と呼ばれる場合も多い)として示されている。入力オブジェクトの例としては、
図1に示されるように、指及びスタイラスが挙げられる。
【0014】
センシング領域120は、入力デバイス100がユーザ入力(例えば、1つ以上の入力オブジェクト140によって提供されるユーザ入力)を検出することができる、入力デバイス100の上方、周り、中、及び/又は近くのあらゆる空間を包含する。特定のセンシング領域のサイズ、形状、及び場所は、実施形態ごとに大きく異なることがある。いくつかの実施形態では、センシング領域120は、信号雑音比が十分に正確なオブジェクト検出を妨げるまで、入力デバイス100の表面から1つ以上の方向で空間内へと延在する。このセンシング領域120が特定の方向で延在する距離は、様々な実施形態では、1ミリメートル未満、数ミリメートル、数センチメートル、又はそれ以上の程度であってもよく、使用されるセンシング技術のタイプ及び望まれる精度に伴って大幅に変動することがある。したがって、いくつかの実施形態は、入力デバイス100のいずれの表面との接触も含まない入力、入力デバイス100の入力表面(例えば、タッチ表面)との接触を含む入力、適用されたある量の力若しくは圧力と結合された入力デバイス100の入力表面との接触を含む入力、及び/又はそれらの組み合わせを感知する。様々な実施形態では、入力表面は、センサ電極が中に存在するケーシングの表面によって、センサ電極の上に適用される表面板によって、又は任意のケーシングなどによって提供されてもよい。いくつかの実施形態では、センシング領域120は、入力デバイス100の入力表面上に投影されたときに長方形の形状を有する。
【0015】
入力デバイス100は、センシング領域120でユーザ入力を検出するのに、センサ構成要素とセンシング技術の任意の組み合わせを利用してもよい。入力デバイス100は、ユーザ入力を検出する1つ以上のセンシング要素を備える。いくつかの非限定例として、入力デバイス100は、容量、弾性、抵抗、誘導、磁気、音響、超音波、及び/又は光学技術を使用してもよい。いくつかの実現例は、一次元、二次元、三次元、又は更に多次元の空間に及ぶ画像を提供するように構成されている。いくつかの実現例は、特定の軸線又は面に沿って入力の投影を提供するように構成されている。入力デバイス100のいくつかの抵抗性の実現例では、可撓性及び導電性の第1の層は、1つ以上のスペーサ要素によって導電性の第2の層から分離される。動作の間、1つ以上の電圧勾配が層の間に作られる。可撓性の第1の層を押圧することによって、層間の電気的接触をもたらすのに十分に屈曲してもよく、その結果、層間の接触点を反映する電圧出力が得られる。これらの電圧出力は、位置情報を判定するのに使用されてもよい。
【0016】
入力デバイス100のいくつかの誘導性の実現例では、1つ以上のセンシング素子が、共振コイル又はコイル対によって誘導されるループ電流を取り出す。次に、電流の大きさ、位相、及び周波数の何らかの組み合わせを使用して、位置情報を判定してもよい。
【0017】
入力デバイス100のいくつかの容量性の実現例では、電圧又は電流が印加されて電界が作られる。近くの入力オブジェクトによって電界の変化が引き起こされ、電圧、電流などの変化として検出されてもよい、容量結合の検出可能な変化が生み出される。
【0018】
いくつかの容量性の実現例は、電界を作成するのに、容量センシング素子のアレイ又は他の規則的若しくは不規則なパターンを利用する。いくつかの容量性の実現例では、別個のセンシング素子がオームの法則にしたがって互いに短絡されて、より大きいセンサ電極が形成されてもよい。いくつかの容量性の実現例は、均一な抵抗性であってもよい抵抗シートを利用する。
【0019】
いくつかの容量性の実現例は、センサ電極と入力オブジェクトとの間の容量結合の変化に基づいた、「自己容量」(又は「絶対容量」)センシング方法を利用する。様々な実施形態では、センサ電極近くの入力オブジェクトはセンサ電極近くの電界を変化させ、それにより、測定された容量結合が変化する。1つの実現例では、絶対容量センシング方法は、基準電圧(例えば、システム接地)に対してセンサ電極を変調することによって、またセンサ電極と入力オブジェクトとの間の容量結合を検出することによって動作する。
【0020】
いくつかの容量性の実現例は、センサ電極間の容量結合の変化に基づいた、「相互容量」(又は「トランス容量」)センシング方法を利用する。様々な実施形態では、センサ電極近くの入力オブジェクトはセンサ電極間の電界を変化させ、それにより、測定された容量結合が変化する。1つの実現例では、トランス容量センシング方法は、1つ以上の送信機センサ電極(「送信機電極」又は「送信機」でもある)と、1つ以上の受信機センサ電極(「受信機電極」又は「受信機」でもある)との間の容量結合を検出することによって動作する。送信機センサ電極は、送信機信号を送信するように、基準電圧(例えば、システム接地)に対して変調されてもよい。受信機センサ電極は、結果として得られる信号の受信を容易にするため、基準電圧に対して実質的に一定に保たれてもよい。結果として得られる信号は、1つ以上の送信機信号、及び/又は1つ以上の環境干渉源(例えば、他の電磁信号)に相当する影響を含むことがある。センサ電極は、専用の送信機若しくは受信機であってもよく、又はセンサ電極は、送信及び受信の両方に対して構成されてもよい。或いは、受信機電極は接地に対して変調されてもよい。
【0021】
図1では、処理システム110は入力デバイス100の一部として示されている。処理システム110は、入力デバイス100のハードウェアを動作させて、センシング領域120における入力を検出するように構成されている。処理システム110は、1つ以上の集積回路(IC)及び/又は他の回路構成要素の一部若しくは全てを含む。例えば、相互容量センサデバイス向けの処理システムは、送信機センサ電極を用いて信号を送信するように構成された送信機回路類、及び/又は受信機センサ電極を用いて信号を受信するように構成された受信機回路類を含んでもよい。いくつかの実施形態では、処理システム110はまた、ファームウェアコード、ソフトウェアコード、及び/又はその他など、電子的に読取り可能な命令を含む。いくつかの実施形態では、処理システム110を構成する構成要素は、入力デバイス100のセンシング素子の近くなど、共に配置される。他の実施形態では、処理システム110の構成要素は、入力デバイス100のセンシング素子に近い1つ以上の構成要素、及び他の場所にある1つ以上の構成要素とは物理的に別個である。例えば、入力デバイス100は、デスクトップコンピュータに結合された周辺機器であってもよく、処理システム110は、デスクトップコンピュータの中央処理装置で稼動するように構成されたソフトウェアと、中央処理装置とは別個の1つ以上のIC(場合によっては、関連するファームウェアを含む)とを備えてもよい。別の例として、入力デバイス100は、電話に物理的に統合されてもよく、処理システム110は、電話の主プロセッサの一部である回路及びファームウェアを備えてもよい。いくつかの実施形態では、処理システム110は、入力デバイス100を実装するための専用のものである。他の実施形態では、処理システム110はまた、表示画面の操作、触覚アクチュエータの駆動など、他の機能を実施する。
【0022】
処理システム110は、処理システム110の異なる機能を扱う一連のモジュールとして実装されてもよい。各モジュールは、処理システム110の一部である回路類、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせを備えてもよい。様々な実施形態では、モジュールの異なる組み合わせが使用されてもよい。モジュールの例としては、センサ電極及び表示画面などのハードウェアを操作するハードウェア操作モジュール、センサ信号及び位置情報などのデータを処理するデータ処理モジュール、並びに情報を報告する報告モジュールが挙げられる。モジュールの更なる例としては、センシング素子を操作して入力を感知するように構成されたセンサ操作モジュール、モード変更ジェスチャーなどのジェスチャーを識別するように構成された識別モジュール、並びに動作モードを変更するモード変更モジュールが挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、処理システム110は、1つ以上のアクションを引き起こすことによって直接、センシング領域120におけるユーザ入力(又はユーザ入力の欠如)に応答する。アクションの例としては、動作モードの変更、並びにカーソル移動、選択、メニュー案内、及び他の機能などのGUIアクションが挙げられる。いくつかの実施形態では、処理システム110は、入力(又は入力の欠如)に関する情報を、電子システムのある部分に対して(例えば、別個の中央処理システムが存在する場合、処理システム110とは別個である電子システムのかかる中央処理システムに対して)提供する。いくつかの実施形態では、電子システムのある部分は、処理システム110から受信した情報を処理して、モード変更アクション及びGUIアクションを含むアクション全般を容易にするなど、ユーザ入力に対して作用する。
【0024】
例えば、いくつかの実施形態では、処理システム110は、入力デバイス100のセンシング素子を動作させて、センシング領域120における入力(又は入力の欠如)を示す電気信号を生成する。処理システム110は、電子システムに提供される情報を生成する際に、電気信号に対して任意の適切な量の処理を実施してもよい。例えば、処理システム110は、センサ電極から得られるアナログ電気信号をデジタル化してもよい。別の例として、処理システム110は、フィルタ処理又は他の信号調整を実施してもよい。更に別の例として、処理システム110は、情報が電気信号とベースラインとの差を反映するように、ベースラインに対して減算又は他の計算を行ってもよい。更なる別の例として、処理システム110は、位置情報を判定すること、入力をコマンドとして認識すること、手書きを認識することなどを行ってもよい。
【0025】
「位置情報」は、本明細書で使用するとき、絶対位置、相対位置、速度、加速度、及び他のタイプの空間情報を広く包含する。例示の「ゼロ次元」位置情報は、近距離/遠距離又は接触/非接触情報を含む。例示の「一次元」位置情報は、軸線に沿った位置を含む。例示の「二次元」位置情報は、面内における運動を含む。例示の「三次元」位置情報は、空間内における瞬間速度又は平均速度を含む。更なる例としては、空間情報の他の表現が挙げられる。例えば、時間に伴う位置、運動、又は瞬間速度を追跡する履歴データを含む、1つ以上のタイプの位置情報に関する履歴データも、判定及び/又は記憶されてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、入力デバイス100には、処理システム110によって、又は他の何らかの処理システムによって操作される、追加の入力構成要素が実装される。これらの追加の入力構成要素は、センシング領域120における入力に対する冗長な機能性、又は他の何らかの機能性を提供してもよい。
図1は、入力デバイス100を使用した項目の選択を容易にするのに使用することができる、センシング領域120近くのボタン130を示している。他のタイプの追加の入力構成要素としては、スライダ、ボール、ホイール、スイッチなどが挙げられる。反対に、いくつかの実施形態では、入力デバイス100には他の入力構成要素が実装されなくてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、入力デバイス100はタッチパネルインターフェースを備え、センシング領域120は、表示画面の活性面積の少なくとも一部に重なる。例えば、入力デバイス100は、表示画面に重なる実質的に透明なセンサ電極を備え、関連する電子システムに対してタッチパネルインターフェースを提供してもよい。表示画面は、視覚的インターフェースをユーザに対して表示することができる、任意のタイプの動的なディスプレイであってもよく、任意のタイプの発光ダイオード(LED)、有機LED(OLED)、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマ、電界発光(EL)、又は他の表示技術を含んでもよい。入力デバイス100及び表示画面は物理的要素を共有してもよい。例えば、いくつかの実施形態は、表示及び感知のために同じ電気的構成要素のいくつかを利用してもよい。別の例として、表示画面は、処理システム110によって部分的又は全体的に操作されてもよい。
【0028】
本発明の多くの実施形態は、完全に機能している装置に関連して記載しているが、本発明のメカニズムは、様々な形態のプログラム製品(例えば、ソフトウェア)として分配できることが理解されるべきである。例えば、本発明のメカニズムは、電子プロセッサによって読取り可能な情報担持媒体(例えば、処理システム110によって読み取ることができる、非一時的なコンピュータ読取り可能及び/又は記録可能/書込み可能な情報担持媒体)上のソフトウェアプログラムとして実装され分配されてもよい。それに加えて、本発明の実施形態は、分配を実施するのに使用される媒体の特定のタイプにかかわらず等しく当てはまる。非一時的な電子読取り可能な媒体の例としては、様々なディスク、メモリスティック、メモリカード、メモリモジュールなどが挙げられる。電子読取り可能な媒体は、フラッシュ、光学、磁気、ホログラフィ、又は他の任意の記憶技術に基づいてもよい。
【0029】
図2Aは、一実施例による容量センサデバイス200Aを示すブロック図である。容量センサデバイス200Aは、
図1に示される入力デバイス100の例示の実現例を含む。容量センサデバイス200Aは、処理システム110の例示の実現例(「処理システム110A」と呼ばれる)に結合されたセンサ電極集合体208を含む。本明細書で使用するとき、処理システム110に対する包括的な参照は、
図1に記載される処理システム、又は本明細書に記載するシステムの他の任意の実施形態(例えば、処理システム110A、110Bなど)に対する参照である。いくつかの実施形態では、別段の指示がない限り、処理システム110Bは処理システム110Aと同じ機能性を実施することに留意されたい。
【0030】
センサ電極集合体208は、センシング領域120を提供するのに基板202上に配設される。センサ電極集合体208は、基板202上に配設されたセンサ電極を含む。本例では、センサ電極集合体208は、二組の複数のセンサ電極220-1~220-N(集合的に「センサ電極220」)及び230-1~230-M(集合的に「センサ電極230」)を含む(M及びNはゼロよりも大きい整数)。センサ電極220及び230は誘電体(図示なし)によって分離される。センサ電極220及びセンサ電極230は非平行であることができる。一例では、センサ電極220はセンサ電極230と直交して配設される。
【0031】
いくつかの例では、センサ電極220及びセンサ電極230は、基板202の別個の層上に配設することができる。他の例では、センサ電極220及びセンサ電極230は基板202の単一層上に配設することができる。センサ電極は単一の基板202上に配設されて示されているが、いくつかの実施形態では、センサ電極は1つを超える基板上に配設することができる。例えば、いくつかのセンサ電極を第1の基板上に配設することができ、他のセンサ電極を、第1の基板に接着された第2の基板上に配設することができる。
【0032】
本例では、センサ電極集合体208は、直交するセンサ電極の交点の長方形グリッドの形でセンサ電極220、230が全体的に配置されて示されている。センサ電極集合体208はかかる配置に限定されず、代わりに多数のセンサパターンを含み得ることを理解されたい。センサ電極集合体208は長方形として示されているが、センサ電極集合体208は、円形などの他の形状を有することができる。
【0033】
後述するように、処理システム110Aは、相互容量センシング(「トランス容量センシング」)及び/又は自己容量センシング(「絶対容量センシング」)のための励起スキームを含む複数の励起スキームにしたがって、センサ電極220、230を動作させることができる。トランス容量励起スキームでは、処理システム110Aは、センサ電極230を送信機信号で駆動し(センサ電極230は「送信機電極」である)、結果として得られる信号をセンサ電極220から受信する(センサ電極220は「受信機電極」である)。いくつかの実施形態では、センサ電極220は送信機電極として駆動されてもよく、センサ電極230は受信機電極として操作されてもよい。センサ電極230は、センサ電極220と同じ又は異なる幾何学形状を有することができる。一例では、センサ電極230は、より薄く、またより疎に分配されたセンサ電極220よりも幅広であり、より密に分配される。同様に、一実施形態では、センサ電極220は、より幅広であり、並びに/又はより疎に分配されてもよい。或いは、センサ電極220、230は、同じ幅及び/又は同じ分布を有することができる。
【0034】
センサ電極220及びセンサ電極230は、導電性ルーティングトレース204及び導電性ルーティングトレース206によってそれぞれ処理システム110Aに結合される。処理システム110Aは、入力を感知するセンシング領域120を実現するのに、導電性ルーティングトレース204、206を通してセンサ電極220、230に結合される。センサ電極220はそれぞれ、ルーティングトレース206のうち少なくとも1つのルーティングトレースに結合することができる。同様に、センサ電極230はそれぞれ、ルーティングトレース204のうち少なくとも1つのルーティングトレースに結合することができる。
【0035】
図2Bは、一実施例による容量センサデバイス200Bを示すブロック図である。容量センサデバイス200Bは、
図1に示される入力デバイス100の別の例示の実現例を含む。本例では、センサ電極集合体208は、複数のセンサ電極210
1,1~210
J,K(J及びKは整数)(集合的に「センサ電極210」)を含む。本例では、センサ電極210は長方行列パターンで配置され、J又はKの少なくとも一方はゼロよりも大きい。センサ電極210は、極性配列、繰返しパターン、非繰返しパターン、又は類似のタイプの配置など、他のパターンで配置することができる。様々な実施形態では、グリッド電極は任意であり、含まれなくてもよい。容量センサデバイス200Aと同様に、処理システム110Bは、トランス容量センシング及び/又は絶対容量センシングの励起スキームを含む、複数の励起スキームにしたがってセンサ電極210を動作させることができる。
【0036】
いくつかの例では、センサ電極210は基板202の別個の層上に配設することができる。他の例では、センサ電極210は基板202の単一層上に配設することができる。センサ電極210は、センサ電極220及びセンサ電極230と同じ及び/又は異なる層上にあってもよい。センサ電極は単一の基板202上に配設されて示されているが、いくつかの実施形態では、センサ電極は1つを超える基板上に配設することができる。例えば、いくつかのセンサ電極を第1の基板上に配設することができ、他のセンサ電極を、第1の基板に接着された第2の基板上に配設することができる。
【0037】
処理システム110Bは、入力を感知するセンシング領域120を実現するのに、導電性ルーティングトレース212を通してセンサ電極210に結合される。1つ以上の実施形態では、センサ電極集合体208は、センサ電極210の間に配設された1つ以上のグリッド電極を更に含んでもよい。グリッド電極は、センサ電極210の1つ以上を少なくとも部分的に包含してもよい。
【0038】
図2A及び2Bを参照すると、容量センサデバイス200A又は200Bは、ユーザ入力(例えば、ユーザの指、スタイラスなどのプローブ、及び/又は他の何らかの外部入力オブジェクト)を、電子システム(例えば、コンピューティングデバイス若しくは他の電子デバイス)に通信するのに利用することができる。例えば、容量センサデバイス200A又は200Bは、下にある画像又は情報表示デバイス(図示なし)の上に配置することができる、容量性タッチパネルデバイスとして実装することができる。このようにして、ユーザは、センサ電極集合体208の実質的に透明な素子を通して見ることによって、下にある画像又は情報表示を視認する。タッチパネルに実装された場合、基板202は、少なくとも1つの実質的に透明な層(図示なし)を含むことができる。センサ電極及び導電性ルーティングトレースは、実質的に透明な導電性材料で形成することができる。インジウムスズ酸化物(ITO)及び/又は薄くほとんど見えないワイヤは、センサ電極及び/又は導電性ルーティングトレースを形成するのに使用することができる、実質的に透明な材料の多くの可能な例のうちのただ2つである。他の例では、導電性ルーティングトレースは、非透明材料で形成し、次にセンサ電極集合体208の境界領域(図示なし)に隠すことができる。
【0039】
別の例では、容量センサデバイス200A又は200Bは、容量性タッチパッド、スライダ、ボタン、又は他の容量センサとして実現することができる。例えば、基板202は、1つ以上の透明又は不透明材料を用いて実現することができるが、それらに限定されない。同様に、透明又は不透明の導電性材料は、センサ電極集合体208のセンサ電極及び/又は導電性ルーティングトレースを形成するのに利用することができる。
【0040】
一般に、処理システム110(処理システム110は、110A若しくは110Bのどちらを指してもよいことに留意)は、センシング信号を用いてセンサ電極集合体208のセンシング素子を励起又は駆動し、センシング信号、入力オブジェクト、及びセンシング領域120における干渉の少なくとも1つに相当する効果を含む、誘導信号又は結果として得られる信号を測定する。「励起」及び「駆動」という用語は、本明細書で使用するとき、被動要素の何らかの電気的側面を制御することを包含する。例えば、ワイヤを通して電流を駆動すること、導体への電荷を駆動すること、電極上への実質的に一定の若しくは変動する電圧波形を駆動することなどが可能である。センシング信号は、一定であるか、実質的に一定であるか、又は時間に伴って変動することができ、一般に、形状、周波数、振幅、及び位相を含む。センシング信号は、接地信号又は他の基準信号などの「受動信号」とは対照的に、「能動信号」と呼ぶことができる。センシング信号は、トランス容量センシングで使用されるときは「送信機信号」、又は絶対センシングで使用されるときは「絶対センシング信号」若しくは「変調信号」と呼ぶこともできる。
【0041】
一例では、処理システム110は、電圧を用いてセンサ電極集合体208の1つ以上のセンサ電極を駆動し、センサ電極に対する結果として得られるそれぞれの電荷を感知する。つまり、センシング信号は電圧信号であり、結果として得られる信号は電荷信号(例えば、統合電流信号など、蓄積電荷を示す信号)である。容量は、印加電圧に比例し、蓄積電荷に反比例する。処理システム110は、感知した電荷から容量の測定値を判定することができる。他の例では、処理システム110は、電荷を用いてセンサ電極集合体208の1つ以上のセンサ電極を駆動し、センサ電極に対する結果として得られるそれぞれの電圧を感知する。つまり、センシング信号は、電荷の蓄積を引き起こす信号(例えば、電流信号)であり、結果として得られる信号は電圧信号である。処理システム110は、感知した電圧から容量の測定値を判定することができる。一般に、「センシング信号」という用語は、電圧を駆動して電荷を感知すること、及び電荷を駆動して電圧を感知することの両方、並びに容量の印を得るのに使用することができる他の任意のタイプの信号を包含することを意味する。「容量の印」は、容量を導出するのに用いることができる、電荷、電流、電圧などの測定値を含む。
【0042】
処理システム110はセンサ回路類240を含むことができる。センサ回路類240は、センシングのために信号を用いてセンサ電極を駆動すること、処理のためにセンサ電極から信号を受信すること、及び他の機能など、処理システム110のセンシングに関連する機能を実施する。センサ回路類240は、回路類と協働して動作する、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせを含む、センサモジュールの一部であってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、処理システム110は判定モジュール260を含む。判定モジュール260は、センサ回路類240を介して受信した信号を解析して入力オブジェクトの存在を判定するなど、本明細書の判定モジュール260によって実施されるものとして記載される動作のいくつか若しくは全てを実施するように構成された、判定プロセッサとして具体化されてもよく、又はそれを含んでもよい。いくつかの実施形態では、判定プロセッサは、かかる動作を実施する、ソフトウェア若しくはファームウェアの形態の、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又は命令を実行する他の命令処理電子素子である。他の実施形態では、判定プロセッサは、記載される動作を実施するように選択され配置される回路素子を有する特定用途向け集積回路である。様々な実施形態では、判定プロセッサは、処理システム110の他の部分のいくつか又は全てと同じ集積回路内に含まれることに留意されたい。
【0044】
センサ回路類240及び判定モジュール260によって実施される機能性は、処理システム110によって実施されるものと見なされてもよいことに留意されたい。また、センサ回路類240及び判定モジュール260の両方が記載され、特定の機能性がそれらの素子に属するが、様々な実施形態では、機能性は、センサ回路類240及び判定モジュール260の間で異なる形で分割されてもよいことにも留意されたい。
【0045】
センサ回路類240は、1つ以上のスキーム(「励起スキーム」)にしたがって、1つ以上のサイクル(「励起サイクル」)にわたって、センサ電極集合体208の1つ以上のセンシング素子に対するセンシング信号を選択的に駆動する。各励起サイクルの間、センサ回路類240は、センサ電極集合体208の1つ以上のセンシング素子から結果として得られる信号を選択的に感知することができる。各励起サイクルは、その間にセンシング信号が駆動され、結果として得られる信号が測定される、関連する期間を有する。
【0046】
1つのタイプの励起スキームでは、センサ回路類240は、絶対容量センシングのため、センサ電極集合体208のセンシング素子を選択的に駆動することができる。絶対容量センシングでは、センサ回路類240は、絶対センシング信号を用いて選択されたセンサ電極を駆動し、選択されたセンサ電極から結果として得られる信号を感知する。かかる励起スキームでは、選択されたセンシング素子と入力オブジェクトとの間の絶対容量の測定値は、結果として得られる信号から判定される。一例では、センサ回路類240は、絶対センシング信号を用いて、選択されたセンサ電極220及び/又は選択されたセンサ電極230を駆動することができる。別の例では、センサ回路類240は、絶対センシング信号を用いて選択されたセンサ電極210を駆動することができる。
【0047】
別のタイプの励起スキームでは、センサ回路類240は、トランス容量センシングのため、センサ電極集合体208のセンシング素子を選択的に駆動することができる。トランス容量センシングでは、センサ回路類240は、送信機信号を用いて選択された送信機センサ電極を駆動し、選択された受信機センサ電極から結果として得られる信号を感知する。かかる励起スキームでは、送信機電極と受信機電極との間のトランス容量の測定値は、結果として得られる信号から判定される。一例では、センサ回路類240は、送信機信号を用いてセンサ電極230を駆動し、結果として得られる信号をセンサ電極220で受信することができる。別の例では、センサ回路類240は、送信機信号を用いて選択されたセンサ電極210を駆動し、センサ電極210の他のものから結果として得られる信号を受信する。
【0048】
任意の励起サイクルで、センサ回路類240は、シールディング又はシールド信号などの他の信号を用いて、センサ電極集合体208のセンシング素子を駆動することができる。シールド信号は、任意の実質的に一定の電圧信号又は変動する電圧信号であってもよい。センシング信号によって駆動されない、又は結果として得られた信号を受信するように感知される、センサ電極集合体208のセンサ電極は、シールド信号を用いて駆動するか浮遊したままにする(即ち、いかなる信号によっても駆動されない)ことができる。シールド信号は、入力デバイスの接地信号(例えば、システム接地)であってもよい。変動する電圧信号を含むシールド信号は、保護信号と呼ばれることもある。かかる信号は、送信機信号又は絶対容量センシング信号の形状、振幅、周波数、若しくは位相のうち少なくとも1つにおいて同様又は同じである信号であることができる。
【0049】
「システム接地」は、入力デバイス100の任意の基準電圧を示してもよい。例えば、移動デバイスの容量センシングシステムは、時には、電話の電源(例えば、充電器若しくは電池)によって提供されるシステム接地を基準とすることができる。システム接地は、地面又は他の任意の基準に対して固定されなくてもよい。例えば、テーブル上の移動デバイスは、通常、浮遊するシステム接地を有する。自由空間を通して地面接地に強く結合された人が保持している移動デバイスは、その人に対して接地されてもよいが、人-接地は地面接地に対して変動してもよい。多くのシステムでは、システム接地はシステムの大面積電極に接続されるか、又はそれによって提供される。容量センサデバイス200A又は200Bは、かかるシステム接地電極に近接して位置することができる(例えば、接地平面又はバックプレーンの上方に位置する)。
【0050】
判定モジュール260は、センサ回路類240によって結果として得られる信号に基づいて容量測定を実施する。容量測定は、素子間の容量結合の変化(「容量の変化」とも呼ばれる)を含むことができる。例えば、判定モジュール260は、入力オブジェクトの存在なしに、素子間の容量結合のベースライン測定値を判定することができる。次いで、判定モジュール260は、入力オブジェクトの存在下で容量結合のベースライン測定値を容量結合の測定値と組み合わせて、容量結合の変化を判定することができる。
【0051】
一例では、判定モジュール260は、「容量ピクセル」としてのセンシング領域120の特定の部分と関連付けられた複数の容量測定を実施して、「容量画像」又は「容量フレーム」を作成することができる。容量画像の容量ピクセルは、センサ電極集合体208のセンシング素子を使用して容量結合を測定することができる、センシング領域120内の場所を表す。例えば、容量ピクセルは、入力オブジェクトによって影響される、センサ電極220とセンサ電極230との間のトランス容量結合に相当し得る。別の例では、容量ピクセルは、センサ電極210の絶対容量に相当し得る。判定モジュール260は、センサ回路類240によって結果として得られる信号を使用して、容量結合変化のアレイを判定して、容量画像を形成する容量ピクセルのx×yアレイを生成することができる。容量画像は、トランス容量センシングを使用して得ることができ(例えば、トランス容量画像)、又は絶対容量センシングを使用して得ることができる(例えば、絶対容量画像)。このように、処理システム110は、センシング領域120の入力オブジェクトに関連して測定される応答のスナップショットである、容量画像を取得することができる。所与の容量画像は、センシング領域内の容量ピクセルの全て、又は容量ピクセルの部分集合のみを含むことができる。
【0052】
別の例では、判定モジュール260は、センシング領域120の特定の軸線と関連付けられた複数の容量測定を実施して、その軸線に沿った「容量プロファイル」を作成することができる。例えば、判定モジュール260は、センサ電極220及び/又はセンサ電極230によって規定される軸線に沿った絶対容量結合変化のアレイを判定して、容量プロファイルを生成することができる。容量結合変化のアレイは、所与の軸線に沿ったセンサ電極の数以下の数の点を含むことができる。
【0053】
容量画像又は容量プロファイルなど、処理システム110による容量の測定によって、接触、ホバリング、又はセンサ電極集合体208によって形成されたセンシング領域に関連する他のユーザ入力を感知することができる。判定モジュール260は、容量の測定値を利用して、センサ電極集合体208によって形成されたセンシング領域に関連するユーザ入力に対する位置情報を判定することができる。判定モジュール260は、それに加えて又はその代わりに、かかる測定値を使用して、入力オブジェクトのサイズ及び/又は入力オブジェクトのタイプを判定することができる。
【0054】
処理システム110A及び処理システム110Bはまた、表示の更新のために入力デバイス100の表示素子を駆動する、ディスプレイドライバ280を含む。様々な実施形態では、ディスプレイドライバ280は、ゲートライン及びソースラインを駆動してもよく、ゲートラインは表示更新のために表示素子の行を選択し、ソースラインは特定のサブピクセル素子に表示の更新値を提供する。以下の説明では、処理システム110によって実施されるものと記載される表示の更新に関連する機能性の任意の部分(全てを含む)は、ディスプレイドライバ280によって実施されるものと見なされてもよい。ディスプレイドライバ280は、例えば、ソフトウェア若しくはファームウェア命令を実行することによって、本明細書に記載される機能性を実施するように構成された処理システムとして具体化されてもよく、又はそれを含んでもよい。ディスプレイドライバ280は、その代わりに又はそれに加えて、本明細書に記載する機能性を実施するように構成された、他の非プロセッサハードウェア構成要素を含んでもよい。
【0055】
上述した技術によって入力オブジェクト140の存在及び場所を検出することに加えて、処理システム110は、センサ電極を介して得られる容量センシングデータから、入力オブジェクト140のために力に関連するデータを得ることもできる。力に関連するデータは、入力オブジェクト140によって入力デバイス100に適用される、力の量に関連するデータを含む。力に関連するデータを判定する技術については、以下に詳細に記載している。
【0056】
図3は、一実施例による
図2Aの容量センサデバイス200Aの一部分の側面図である。図示されるように、容量センサデバイス200Aは、カバー302と、受信機電極304と、送信機電極306と、基準プレート308とを含む。カバー302は、入力オブジェクト140などの外部オブジェクトからの、入力デバイス100のセンサ電極又は他の素子に対する損傷を防ぐ保護要素である。カバー302は、入力オブジェクト140と接触するようになる、入力デバイス100の最も外側の要素であってもよい。受信機電極304は、
図2Aのセンサ電極220又はセンサ電極230の一方であってもよく、送信機電極306(「tx」)は、センサ電極220又はセンサ電極230の他方であってもよい。送信機電極306は受信機電極304に対して実質的に垂直であり、受信機電極304とは異なる層に配設される。受信機電極304は送信機電極306に対して実質的に垂直なので、受信機電極304の単一の長さ方向縁部が
図3に示されており、一方で複数の正面の送信機電極306が
図3に示されている。基準プレート308は、絶対容量センシングの間に送信機電極306を駆動するのに用いられる電圧信号とは異なる、電圧信号を用いて駆動される。基準プレート308は、一定の電圧に保たれてもよく、センサ電極の一方の側を遮蔽するなどの機能を提供する。いくつかの実施形態では、基準プレート308は入力デバイス100の表示素子の一部である。他の実施形態では、基準プレート308は入力デバイス100の表示素子の外部にあってもよい。いくつかの実施形態では、基準プレート308は入力デバイス100のハウジングの一部である。上述の実施形態のいずれかでは、基準プレート308は、1つの導体で構成されてもよく、又は複数の異なる導体で構成されてもよい。
【0057】
入力オブジェクト140がカバー302に接触すると、カバー302、及びしたがって、受信機電極304及び送信機電極306を含む入力デバイス100内の他の素子は、基準プレート308に向かって変形してもよい。送信機電極306が信号を用いて駆動され、「絶対容量」(即ち、「環境」に対する容量)が検出される絶対センシングモードでは、送信機電極306が基準プレート308に近付けられるので、変形によって送信機電極306の容量が修正される。しかしながら、1つ以上の送信機電極306が実質的に駆動されてもよく、結果として得られる信号が受信機電極304で受信されるトランス容量センシングモードでは、センシングのために駆動されない送信機電極306は、接地電圧などの基準電圧まで駆動され、したがって、送信機電極306の変形による影響を受信機電極304が受けないように遮蔽する。いくつかの実施形態では、トランス容量センシングモードにおいて、複数の送信機電極306が同時に駆動されてもよい。いくつかの実施形態では、絶対容量モードにおいて、複数の送信機電極306を同時に感知することができる。それに加えて、送信機電極306に対して駆動される信号は、トランス容量センシング及び絶対容量センシングの両方に使用されてもよい。
【0058】
上記の理由から、入力オブジェクト140によって入力デバイス100に(例えば、カバー302に)適用される力を反映するデータは、トランス容量モードで実施される測定を絶対容量モードで実施される測定から減算することによって得ることができる。処理システム110は、同じ「タッチイベント」の間に、即ち入力オブジェクト140が入力デバイス100に触れる同じイベントの間に、トランス容量測定値及び絶対容量測定値を取得する。いくつかの実施形態では、処理システム110は、入力オブジェクト140がその間に大きく移動しない時間の特定の閾値内など、互いに時間的に近いトランス容量測定値及び絶対容量測定値を取得する。いくつかの実施形態では、処理システム110は、絶対容量測定値を取得するのと同時にトランス容量測定値を取得する。トランス容量モードで得られる実際の測定値は、絶対容量モードで得られる測定値と必ずしも「適合」しない。したがって、処理システム110は、トランス容量モードデータをアセンブルしてトランス容量プロファイルを生成することによって、またトランス容量プロファイルに換算を適用することによって、トランス容量モードデータを変換する。次に、処理システム110は、換算されたトランス容量プロファイルを、絶対容量測定値を含む絶対容量プロファイルから減算する。「プロファイル」という用語は、本明細書で使用するとき、各測定値が入力デバイス100の異なる場所(及びセンサ電極)に相当する、一連の測定値を指す。
【0059】
いくつかの実施形態では、
図3に示されている要素は、容量センシングデバイスが統合された表示デバイスを備える、入力デバイスの一部であってもよい。様々な実施形態では、1つ以上のセンサ電極は表示デバイスの少なくとも1つの表示電極を含む。例えば、一実施形態では、送信機電極はそれぞれ、表示デバイス内の第1の層上に配設された、セグメント化された共通電極の1つ以上のセグメントを含み、受信機電極は第2の層上に配設されてもよい。第2の層は、表示デバイス内又は表示デバイスの外部にあってもよい。1つ以上の実施形態では、液晶材料が送信機電極と受信機電極との間に配設される。他の実施形態では、送信機電極及び受信機電極の両方が、表示電極で構成され、ディスプレイ又は別個の層内の共通層上に配設されてもよい。更に、いくつかの実施形態では、送信機及び受信機電極は離散的な電極であってもよいので、送信機及び受信機電極は表示電極で構成されない。
【0060】
図4A及び4Bは、
図2Aのセンサ電極パターン208と、一実施例による、トランス容量センシング及び絶対容量センシングからプロファイルが得られる手法とを示すブロック図である。
図4Aは、絶対容量モードで駆動される
図2Aのセンサ電極集合体208を示し、
図4Bは、トランス容量モードで駆動されるセンサ電極集合体208を示している。
【0061】
図4Aでは、処理システム110は、垂直センサ電極230のそれぞれ(
図3の送信機電極306に相当)を駆動して、絶対容量センサ測定値を取得する。各垂直センサ電極230に関する絶対容量センサ測定値は、「a-x」として示され、「x」は特定のセンサ電極230を一意に特定する。絶対センシングプロファイルは、複数の異なる垂直センサ電極230に相当する、複数のかかる測定値を含む。例えば、絶対センシングプロファイルはa-1~a-xの測定値を含んでもよい。
【0062】
図4Bでは、処理システム110はトランス容量センサ測定値を取得する。具体的には、処理システム110は、信号を用いて送信機電極(垂直センサ電極230)を駆動し、結果として得られる信号を受信機電極(水平センシング電極220)で受信する。処理システム110は、送信機電極230と受信機電極220との間の各交点に対して1つの測定値を取得する。得られる異なる測定値は、
図4Bに「a-x,y」の形式で示されており、xは送信機電極230を一意に特定し、yは受信機電極220を一意に特定する。
【0063】
処理システム110が、
図4Aに示されるような絶対容量測定値、及び
図4Bに示されるようなトランス容量測定値を取得すると、処理システム110は、トランス容量測定値を縮小してプロファイルにするので、処理システム110がトランス容量データを絶対容量データから減算して、曲げに関連するデータを得ることができる。
【0064】
トランス容量測定値を縮小することは、トランス容量測定値からプロファイルを生成することを含む。
図4Aに示されるように、垂直センサ電極230からの測定値は、垂直センサ電極230それぞれに対して1つの測定値を含む。対照的に、
図4Bに示されるように、トランス容量測定値は、垂直電極230と水平電極220との各交点に対する測定値を含む。より多くのトランス容量測定値があるので、処理システム110は、各垂直電極230に関して、その垂直電極230に対して得られた各測定値を加算することによって、トランス容量測定値を縮小して複合測定値を取得する。複合測定値の組み合わせは、絶対容量データのプロファイルと相似した、トランス容量データのプロファイルを含む。
【0065】
トランス容量センシングを介して得られる測定値は、絶対センシングを介して得られる測定値と必ずしも同じスケールではない。例えば、絶対容量モードで得られる最大測定値は、トランス容量センシングモードで得られる最大測定値と実質的に異なる大きさのものであってもよい。
図5A~5Eは、一実施例による、複合トランス容量センシング測定値を換算し、力に関連するデータのプロファイルを生成する技術を示している。
【0066】
図5Aは、一実施例による、
図2Aのセンサ電極集合体208における絶対容量センシングのセンシング結果を示すグラフ500である。図示されるように、センサ電極位置(x軸)対信号強度(y軸)のグラフ500は、測定値502のプロット504(1)を含む。プロット504(1)自体は、単に例示の目的で示されているものであり、測定値502は処理システム110によって実際に得られるものであることに留意されたい。
【0067】
プロット504(1)では、最大測定値502は、入力オブジェクト140に近接した電極を用いて得られる測定値502(3)である。他の測定値502は、入力オブジェクト140、曲げ、又は両方による寄与を含む、低い信号強度を有する。
【0068】
図5Bは、一実施例による、
図2Aのセンサ電極集合体208におけるトランス容量センシングに対する測定値を縮小することによって生成されるプロファイルを示すグラフ520である。図示されるように、やはりセンサ電極位置(x軸)対信号強度(y軸)のものであるグラフ520は、縮小測定値522のプロット504(2)を含む。プロット504(2)では、最大測定値522(3)は、入力オブジェクト140の近くのセンサ電極で受信される。他の縮小測定値522は、異なる場所でセンサ電極を用いて受信される測定値に基づく。トランス容量モードで受信される縮小測定値522は、入力オブジェクト140からの影響を含むが、
図3に関連して記載した遮蔽効果による曲げからの影響は実質的に含まない。
【0069】
図5Cは、一実施例による、
図5Bのトランス容量センシングのグラフ504(2)と重畳された、
図5Aの絶対センシングのグラフ504(1)を示すグラフ540である。この重畳は、グラフ504(1)及びグラフ504(2)の強度の相対的な大きさを示している。グラフ504(2)の最大の大きさ測定値522(3)は、グラフ504(1)の最大の大きさ測定値520(3)と同等ではない。
【0070】
そのように、処理システム110は、測定値に対する減算操作を実施するために、縮小トランス容量測定値504を換算する。いくつかの実施形態では、処理システム110は、最大縮小トランス容量測定値と最大絶対容量測定値との比を判定し、その比を他のトランス容量測定値それぞれに適用することによって、縮小トランス容量測定値を換算する。いくつかの実施形態では、処理システム110は、固定の換算係数又は動的に変動する換算係数を、縮小トランス容量測定値に適用する。いくつかの実施形態では、処理システム110は、入力デバイス100の接地状態を判定する。「接地状態」とは、入力デバイス100が接地されている程度を指す。より具体的には、入力デバイス100が地上電力に接続されていない場合、入力デバイス100の接地質量が低くなり、入力デバイス100が地上電力に接続されていた場合とは電圧が異なることがある。これらの理由により、処理システム110は、入力デバイス100が地上電力に接続されているか否かに基づいて、縮小トランス容量測定値を異なるように換算する。
【0071】
図5Dは、一実施例による、絶対センシングのグラフ504(1)と重畳されたトランス容量センシングのグラフ504(2)に相当する換算された測定値562を示すグラフ560である。この重畳は、減算操作を介して抽出されるべき力に関連するデータに相当する、個々の測定における差を示している。
【0072】
図5Eは、一実施例による、上述の絶対容量及びトランス容量データから導出される力に基づくデータを示すグラフ580である。図示されるように、力データプロット504(3)は、力に基づくデータ点582によって規定される。処理システム110は、換算されたトランス容量測定値562を絶対容量測定値504から減算することによって、力に基づくデータ点582を得る。より具体的には、処理システム110は、
図4Bに関して記載したように生成される、特定の垂直電極に関する換算された複合トランス容量測定値を、同じ垂直電極から得られる絶対容量測定値から減算する。力に基づくデータは、実質的には複合トランス容量測定値中に存在せず、絶対データ中に存在するので、減算の結果は力に基づくデータである。処理システム110は、センシング電極パターン208の複数の垂直センサ電極に対してこの減算を実施する。
【0073】
いくつかの実施形態では、処理システム110が、
図5Eに示される形式で力に基づくデータを得ると、処理システム110は力の基準値を計算する。いくつかの実施形態では、力の基準値は、入力オブジェクト140によって入力デバイス100に適用される力が変動するにつれて変動するスカラー値である。いくつかの実施形態では、力に基づくデータに基づいて力の基準値を計算する技術としては、ヒストグラムに基づく技術が挙げられる。いくつかの実施形態では、それらの技術は、ヒストグラムの形に配置されたセンシングデータに基づいて力の基準値を導出することを伴う。一般に知られているように、ヒストグラムは一連のビンを含み、各ビンはそのビンの範囲内にある測定値の範囲によって規定される。各ビンは、そのビンの範囲内にある測定値の数を特定する、関連する計数を有する。
図5Eに示されるような力に基づくデータの場合、各測定値582はビンに入れられるであろう。ビンは、事前に計算された(又は別の形で予め定められた)事前調整済みマップに基づいて規定される。事前調整済みマップは指の場所に基づいて変化してもよい。したがって、処理システム110は、指の場所を判定し、指の場所に基づいて事前調整済みマップを検索し、次に事前調整済みマップに基づいて測定値をビンに入れる。測定値がビンに入れられると、処理システム110は、ビン内の計数に基づいて力の基準値を計算する。その際、計算は、ビンの計数を力の基準値と相関させる所定の機能に基づいて実施される。
【0074】
本明細書では
図2Aのセンサ電極の集合体に関連して考察したが、本明細書に示される技術は、行列の形で配列された
図2Bに示されるセンサ電極の集合体で使用されてもよい。より具体的には、処理システム110は、絶対センシングモード及びトランス容量センシングモードの両方でセンサ電極210を駆動し、絶対及びトランス容量データからプロファイルを構築し、トランス容量プロファイルを絶対プロファイルから減算して、力に関連するデータを得てもよい。
図2Bに示されるように行列の形で配列されたセンサ電極は、送信機信号を用いてセンサ電極の少なくとも1つを駆動し、1つ以上の他のセンサ電極を用いて受信することによって、トランス容量の変化を検出するように操作されてもよい。一実施形態では、少なくとも1つのセンサ電極が、第1の期間中は送信機電極として駆動され、第1の期間中は受信機電極として操作されてもよい。トランス容量センシングモードで動作している間、センサ電極は、1つ以上の軸線に沿ってプロファイルを生成するように選択的に操作されてもよい。絶対容量の変化を判定するため、1つ以上のセンサ電極は絶対センシング信号を用いて変調されてもよく、結果として得られる信号は同じ1つ以上のセンサ電極で受信される。様々な実施形態では、センサ電極は、軸線に沿って絶対容量プロファイルを生成するように、まとめて操作されてもよい。更に、他の実施形態では、各センサ電極からの絶対容量が判定されてもよく、プロファイルは処理システム110内で生成されてもよい。
【0075】
図6は、一実施例による、入力オブジェクト140によって適用される力を推定する方法600を示している。
図1~3のシステムに関連して記載しているが、当業者であれば、方法600を実施することができる任意のシステムに関連して、また様々な技術的に実現可能な代替順序で実施される方法600が、本開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0076】
図示されるように、方法600は、処理システム110がセンサ電極を駆動してトランス容量測定値を取得する、ステップ602で始まる。処理システム110はまた、トランス容量測定値を縮小してプロファイルにして絶対容量測定値の形式と整合させることによって、また縮小トランス容量測定値を換算することによって、トランス容量測定値を変換する。トランス容量測定値を縮小することは、特定のセンサ電極それぞれに相当する特定の軸線に沿った測定値それぞれを加算して、それぞれの電極に対する複合トランス容量測定値を形成することを含む。
【0077】
ステップ604で、処理システム110は、送信機電極を駆動し、かかる電極で信号を受信することによって、絶対容量測定値を取得する。ステップ606で、処理システム110は、本明細書に記載する技術にしたがってトランス容量測定値を換算する。
【0078】
ステップ608で、処理システム110は、換算され変換されたトランス容量データを絶対容量データから減算して、力に関連するデータを得る。より具体的には、絶対容量センシングデータ(特定のセンサ電極に相当する)の複数の測定値に関して、処理システム110は、複合トランス容量センシング測定値を絶対容量測定値と関連付けられたセンサ電極から減算して差分を得る。結果は、力に基づくデータを含む複数の差分値である。
【0079】
処理システム110が方法600を実施し、力に基づくデータを得た後、処理システム110は力の基準値を得てもよい。上述したように、力の基準値は力に基づくデータから導出されるスカラー値である。いくつかの実施形態では、処理システム110は、上述したように、ヒストグラムに基づく技術を使用して力の基準値を得る。
【0080】
このように、本明細書に記述した実施形態及び実施例は、本発明及びその特定の適用例を最良に説明し、それによって当業者が本発明を作成し使用できるようにするために提示したものである。しかしながら、当業者であれば、上述の説明及び実施例は単に例証及び例示の目的で提示したものであることを認識するであろう。記述したような説明は、網羅的であること、又は開示される正確な形態に本発明を限定することを意図したものではない。
【0081】
本発明の多くの実施形態は、完全に機能している装置に関連して記載しているが、本発明のメカニズムは、様々な形態のプログラム製品(例えば、ソフトウェア)として分配できることが理解されるべきである。例えば、本発明のメカニズムは、電子プロセッサによって読取り可能な情報担持媒体(例えば、処理システム110によって読み取ることができる、非一時的なコンピュータ読取り可能及び/又は記録可能/書込み可能な情報担持媒体)上のソフトウェアプログラムとして実装され分配されてもよい。それに加えて、本発明の実施形態は、分配を実施するのに使用される媒体の特定のタイプにかかわらず等しく当てはまる。非一時的な電子読取り可能な媒体の例としては、様々なディスク、メモリスティック、メモリカード、メモリモジュールなどが挙げられる。電子読取り可能な媒体は、フラッシュ、光学、磁気、ホログラフィ、又は他の任意の記憶技術に基づいてもよい。
【符号の説明】
【0082】
100 入力デバイス
110 処理システム
220、230 センサ電極
240 センサ回路類
260 判定モジュール