(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】遺伝子サイレンシングを増強するための薬学的組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/713 20060101AFI20220728BHJP
A61K 31/4422 20060101ALI20220728BHJP
A61K 31/554 20060101ALI20220728BHJP
A61K 31/277 20060101ALI20220728BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220728BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220728BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220728BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220728BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220728BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220728BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20220728BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220728BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220728BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20220728BHJP
A61K 31/4184 20060101ALN20220728BHJP
A61K 31/40 20060101ALN20220728BHJP
A61K 31/438 20060101ALN20220728BHJP
A61K 31/495 20060101ALN20220728BHJP
A61K 38/16 20060101ALN20220728BHJP
A61K 31/195 20060101ALN20220728BHJP
A61K 31/197 20060101ALN20220728BHJP
A61K 31/137 20060101ALN20220728BHJP
A61K 45/06 20060101ALN20220728BHJP
【FI】
A61K31/713
A61K31/4422
A61K31/554
A61K31/277
A61K47/22
A61P17/02
A61P17/00
A61P13/12
A61P9/00
A61P9/12
A61P9/14
A61P19/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/4184
A61K31/40
A61K31/438
A61K31/495
A61K38/16
A61K31/195
A61K31/197
A61K31/137
A61K45/06
(21)【出願番号】P 2018567890
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 KR2017006923
(87)【国際公開番号】W WO2018004284
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】10-2016-0081914
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518028055
【氏名又は名称】オリックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ドンキ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ダ セウル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン ヒー
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0111948(US,A1)
【文献】国際公開第2015/171641(WO,A1)
【文献】米国特許第7700541(US,B2)
【文献】国際公開第2006/084005(WO,A2)
【文献】国際公開第2005/063213(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1595152(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/713
A61K 31/4422
A61K 31/554
A61K 31/277
A61P 17/02
A61P 17/00
A61P 13/12
A61P 9/00
A61P 9/12
A61P 9/14
A61P 19/02
A61P 43/00
C12N 15/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)又は細胞透過性長鎖asiRNA(cp-lasiRNA);及び
アムロジピン、シルニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ベラパミル及びジルチアゼムから選択されるL型カルシウムチャネル遮断薬
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記組成物が、局所送達、肺送達、又は非経口送達のために製剤化されている、
請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記
cp-asiRNA又はcp-lasiRNAが、
CTGFコードmRNA、
MyD88 mRNA配列、又は、
TLR mRNA配列
との配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、
請求項1又は2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記
cp-asiRNA又はcp-lasiRNAが、チロシナーゼコードmRNA配列との配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、
請求項1~3のいずれか1項記載の薬学的組成物。
【請求項5】
細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)又は細胞透過性長鎖asiRNA(cp-lasiRNA);及び
アムロジピン、シルニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ベラパミル及びジルチアゼムから選択されるL型カルシウムチャネル遮断薬
を含む、対象における遺伝子サイレンシングのための薬学的組成物。
【請求項6】
アムロジピン、シルニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ベラパミル及びジルチアゼムから選択されるL型カルシウムチャネル遮断薬を含む、対象における遺伝子サイレンシングのための薬学的組成物であって、
細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)又は細胞透過性長鎖asiRNA(cp-lasiRNA)と併用されるものである、前記薬学的組成物。
【請求項7】
前記
cp-asiRNA又はcp-lasiRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬のうちの一方又は両方が、局所送達、肺送達、又は非経口送達のために製剤化されている、
請求項5又は6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記
cp-asiRNA又はcp-lasiRNAが、CTGFコードmRNAとの配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、
請求項5~7のいずれか1項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記薬学的組成物が、ケロイド、腎線維症、皮膚肥厚症、肺線維症、肝線維症、関節炎、高血圧、腎不全、脈管形成関連障害、皮膚線維症、及び循環器障害から選択されるCTGF関連疾患又は障害の処置に好適である、
請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記
cp-asiRNA又はcp-lasiRNAが、
MyD88 mRNA配列、
TLR mRNA配列、又は、
チロシナーゼコードmRNA配列
との配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、
請求項5~9のいずれか1項記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容全体が参照により本明細書に援用される、2016年6月29日に出願された韓国特許出願第KR10-2016-0081914号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、siRNAの細胞侵入または活性を増強する化合物または薬剤を提供する。本発明は、かかる化合物または薬剤を特定するための方法を更に提供する。
【背景技術】
【0003】
RNA干渉(RNAi)は、特異性及び効率の高い様式で遺伝子発現を阻害する能力をもたらす。RNAiは、標的遺伝子のmRNAと相同な配列を有するセンス鎖と、標的遺伝子のmRNAと相補的な配列を有するアンチセンス鎖とを含む二本鎖RNAを細胞に導入することにより、標的mRNAの分解をもたらす。
【0004】
siRNAに基づく効果的な治療剤の開発のためには、例えば、安定性、細胞侵入、及びサイレンシング効率に関連する技術的問題を克服しなければならない。例えば、効果的なin vivo送達が困難であるのは、リン酸骨格構造の負電荷が原因でsiRNAが細胞膜を通過することができないためである。in vitro送達の場合は細胞透過を向上させるためにカチオン性脂質及びカチオン性ポリマーを用いる試薬が多く存在するものの、これらの試薬は、治療という観点からは使用に好適ではない。
【0005】
この有望な技術の進展のためには、siRNAの細胞侵入を向上させる組成物を含め、siRNA活性を改善または増強するための薬学的組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
種々の態様及び実施形態において、本発明は、siRNAの細胞侵入または活性を増強する化合物または薬剤を提供する。本発明は、かかる薬剤を特定するための方法を更に提供する。本明細書には、L型カルシウムチャネル遮断薬として機能し、かつsiRNAの細胞侵入を増強することが実証されている例示的な薬剤が記述される。
【0007】
一態様において、本開示は、細胞透過性非対称低分子干渉RNA(cp-asiRNA)などのsiRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬を含む薬学的組成物を提供する。L型カルシウムチャネル遮断薬は、siRNAの細胞透過を向上させ、遺伝子サイレンシングをより効率的にする。一部の実施形態では、L型カルシウムチャネル遮断薬は、ジヒドロピリジンまたは非ジヒドロピリジンのL型カルシウムチャネル遮断薬である。薬学的組成物は、処置の方法において使用するため、局所、肺、及び非経口を含む種々の送達経路のために製剤化されていてよい。
【0008】
他の態様では、本発明は、対象における遺伝子サイレンシングの方法を提供し、この方法は、有効量の低分子干渉RNA(siRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬を対象に投与することを含む。siRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬は、単一の薬学的組成物として投与される場合があり、一部の実施形態では、siRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬は、別々の薬学的組成物として投与される。一部の実施形態では、siRNAは、細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)または長鎖アンチセンスasiRNA(lasiRNA)などの非対称siRNA(asiRNA)である。L型カルシウムチャネル遮断薬は、ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬であっても、または非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬であってもよい。種々の実施形態において、siRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬のうちの一方または両方が、局所送達、肺送達、または非経口送達のために製剤化されている。
【0009】
別の態様では、本開示は、細胞透過性非対称低分子干渉RNA(cp-asiRNA)または長鎖アンチセンスasiRNA(lasiRNA)などのsiRNAの細胞侵入または遺伝子サイレンシング活性を改善する化合物のスクリーニング方法を提供する。この方法は、siRNAを細胞に接触させること、及び候補化合物を細胞に接触させること、及び細胞内のsiRNAを検出もしくは数量化すること、または一部の実施形態では、標的RNAの発現低下を数量化することを含み得る。siRNAの透過または活性を対照と比較することにより、siRNAの活性または細胞侵入を向上または増強する化合物または薬剤を特定し、任意選択で誘導体化し、薬学的組成物として製剤化することができる。一部の実施形態では、化合物は、活性の増強について高スループットでスクリーニングされ得る。
【0010】
更なる実施形態では、この方法は、siRNA(例えば、asiRNA、例えばcp-asiRNAまたはlasiRNA)の細胞透過または活性を増大させる候補化合物を選択することを更に含む。これらの化合物は、siRNAの遺伝子サイレンシング活性を増強するために、siRNAとともに製剤化されるか、または別々に製剤化され、患者に送達され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】高スループットスクリーニングの例示的なスキームを示す図である。パネル(A):高スループットスクリーニング方策の要旨。パネル(B):高スループットスクリーニング結果及びヒット化合物。
【
図2】スクリーニングにより特定された3つのヒット化合物によるcp-asiRNAの遺伝子サイレンシングの有効性の向上を例示する図である。パネル(A):3つのヒット化合物による遺伝子サイレンシング効力の向上の妥当性検証。パネル(B):シルニジピンによる遺伝子サイレンシング効力の向上の更なる解析。グラフ中のデータは全て、3つの独立した実験の平均±SDを表す。
【
図3】DHP(ジヒドロピリジン)L型カルシウムチャネル遮断薬の効果を例示する図である。パネル(A):DHP L型カルシウムチャネル遮断薬に由来するアムロジピンによる遺伝子サイレンシング活性の解析。パネル(B):DHP L型カルシウムチャネル遮断薬による細胞取り込みのNucleocounter(NC-3000)に基づく数量化。グラフ中のデータは全て、3つの独立した実験の平均±SDを表す。
【
図4】非DHP L型カルシウムチャネル遮断薬によるcp-asiRNAの遺伝子サイレンシングの有効性を例示する図である。グラフ中のデータは全て、3つの独立した実験の平均±SDを表す。
【
図5】L型カルシウムチャネル遮断薬とT型カルシウムチャネル遮断薬の比較を例示する図である。パネル(A):定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を使用して解析した相対mRNAレベル。パネル(B):L型カルシウムチャネル遮断薬と比較したT型カルシウムチャネル遮断薬による細胞取り込みのNucleocounter(NC-3000)に基づく数量化。グラフ中のデータは全て、3つの独立した実験の平均±SDを表す。
【
図6】L型カルシウムチャネル遮断薬によるcplasiRNAの遺伝子サイレンシングの有効性を示す図である。濃度別のアムロジピン及びシルニジピンを含むcp-lasiCTGF(0.01μM、0.03μM、0.1μM)をHeLa細胞に処置した。24時間後、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を使用して、相対mRNAレベルを解析した。GAPDHレベル(内部対照)を分割することにより、CTGF mRNAレベルを測定した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において参照される全ての特許及び公開文献は、参照によりそれらの全体が援用される。
【0013】
本開示は、siRNAを用いる遺伝子サイレンシングを増強するための組成物及び方法のほか、かかる組成物を化合物のスクリーニングによって調製するための方法を提供する。本明細書に開示されるように、L型カルシウムチャネル遮断薬は、cp-asiRNAまたはlasiRNAを含むsiRNAの取り込みを増強する。
【0014】
一態様において、本開示は、細胞透過性非対称低分子干渉RNA(cp-asiRNA)または長鎖アンチセンスasiRNA(lasiRNA)などのsiRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬を含む薬学的組成物を提供する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「RNAi」(RNA干渉)という用語は、標的遺伝子のmRNAと相補的な配列を有する第1の鎖と、第1の鎖と相補的な配列を有する第2の鎖とを含む二本鎖RNA(dsRNA)が、細胞に導入され、標的mRNAの分解を誘導する機構を指す。第1の鎖はアンチセンス鎖であり得、アンチセンス鎖とは、標的mRNAと実質的に相補的な、すなわち約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%相補的なポリヌクレオチドを指す。例えば、アンチセンス鎖は、mRNA(メッセンジャーRNA)の分子、mRNAではないRNA配列(例えば、マイクロRNA、piwiRNA、tRNA、rRNA、及びhnRNA)、またはコードもしくは非コードのいずれかのDNA配列と、全体的または部分的に相補的であり得る。「アンチセンス鎖」及び「ガイド鎖」という用語は、本明細書では互換的に使用される。種々の実施形態において、第1の鎖は、概して、約16~約50ヌクレオチド長、例えば約16、17、18、19、20、21、22、23、24、及び25ヌクレオチド長を有する。第1の鎖において、標的核酸と相補的な領域は、約16~約31ヌクレオチド長、約19~約25ヌクレオチド長、または約19~約21ヌクレオチド長を有し得る。加えて、第2の鎖はセンス鎖であってもよく、センス鎖とは、標的核酸と全体的または部分的に同じヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを指す。第2の鎖は、約13~約25ヌクレオチド長、約13~約21ヌクレオチド長、または約16~約21ヌクレオチド長を有し得る。種々の実施形態において、第2の鎖は、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25のヌクレオチドを有し得る。
【0016】
非対称siRNA(asiRNA)は、全体が参照により本明細書に援用されるUS2012/0238017に記述されている。一部の実施形態では、asiRNAは、「17+2A」、「16+3A」、及び「15+4A」の構成を含む。17+2A siRNA構造とは、19ヌクレオチドのアンチセンス鎖と、それと相補的な配列を有する17ヌクレオチドのセンス鎖とを含む二本鎖siRNA分子で、アンチセンス鎖の5’末端が平滑末端であり、アンチセンス鎖の3’末端が2ヌクレオチドのオーバーハングを有するものを指す。同様に、16+3A siRNA構造という用語は、19ヌクレオチドのアンチセンス鎖と、それと相補的な配列を有する16ヌクレオチドのセンス鎖とを含む二本鎖siRNA分子で、アンチセンス鎖の5’末端が平滑末端であり、アンチセンス鎖の3’末端が3ヌクレオチドのオーバーハングを有するものである。15+4A siRNA構造は、19ヌクレオチドのアンチセンス鎖と、それと相補的な配列を有する15ヌクレオチドの鎖とを含む二本鎖siRNA分子で、アンチセンス鎖の5’末端が平滑末端であり、アンチセンス鎖の3’末端が4ヌクレオチドのオーバーハングを有するものである。asiRNAは、センス鎖によるオフターゲット効果の低減とともに、遺伝子サイレンシング効率における利点を提供する。
【0017】
一部の実施形態では、asiRNAの一方または両方の末端が、3’末端のオーバーハングを含む。一部の実施形態では、このオーバーハングは、ジヌクレオチドオーバーハング(例えば、dTdT)である。
【0018】
種々の実施形態において、asiRNAは、細胞透過性非対称siRNAすなわちcp-asiRNAである。Cp-asiRNAは、例えば、全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2015/0111948号に記述されている。一部の実施形態では、cp-asiRNAはいかなるトランスフェクション試薬も用いずに内部移行し、細胞内の標的遺伝子をサイレンシングし得る。
【0019】
種々の実施形態において、cp-asiRNAには、核酸分子内の少なくとも1つのヌクレオチドのリン酸骨格がホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートに置換されており、それにコンジュゲートされた細胞侵入を促進する親油性化合物を更に含む、asiRNAが含まれる。種々の実施形態において、核酸分子のうち標的核酸と相補的な領域以外の領域内にあるヌクレオチドのリン酸骨格(複数可)が、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートに置換され得る。一部の実施形態では、核酸分子内の少なくとも1つのヌクレオチドのリン酸骨格が、ホスホロチオエートに置換され得る。一部の実施形態では、親油性化合物は、脂質、親油性ペプチド、及び親油性タンパク質から選択される。脂質は、コレステロール、トコフェロール、及び10個以上の炭素原子を有する長鎖脂肪酸から選択される少なくとも1つであってよい。一部の実施形態では、親油性化合物は、コレステロール、コレステン、コレスタン、コレスタジエン、胆汁酸、コール酸、デオキシコール酸、またはデヒドロコール酸である。ある実施形態では、親油性化合物はコレステロールである。親油性化合物は、核酸分子の第1または第2の鎖の末端にコンジュゲートされていてもよい。
【0020】
種々の実施形態において、asiRNAは、長鎖アンチセンスasiRNAすなわちlasiRNAである。LasiRNAは、例えば、全体が参照により本明細書に援用される米国特許第9,637,742号に記述されている。
【0021】
種々の実施形態において、lasiRNAには、標的核酸と100%相補的な領域を含む約21~約121nt長(例えば約20~約125nt、または約20~約115nt、または約20~約105nt、または約20~約100nt、または約20~約90nt、または約20~約80nt、または約20~約70nt、または約20~約60nt、または約20~約50nt、または約20~約40nt、または約20~約30nt、または約30~約125nt、または約40~約125nt、または約50~約125nt、または約60~約125nt、または約70~約125nt、または約80~約125nt、または約90~約125nt、または約100~約125nt、または約24~約119nt長、または約26~31nt長、または約26、または約27、または約28、または約29、または約30、または約31nt長)の第1の鎖と、標的核酸と100%相補的な第1の鎖の領域に相補的に結合する16nt長の第2の鎖とを有する、asiRNAが含まれ、ここで、標的核酸と100%相補的な領域は、第1の鎖の5’末端から19個の核酸を含み、第2の鎖は、第2の鎖が結合する二本鎖領域と第2の鎖が結合しない一本鎖領域とを第1の鎖が有するように、第1の鎖に結合し、第1の鎖の5’末端及び第2の鎖の3’末端は、平滑末端を形成する。
【0022】
種々の実施形態において、本明細書に記述されるsiRNAは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはこれら両方から構成されていてもよく、また、ヌクレアーゼからの保護を行ったり、または塩基対合相互作用を強化したりする多様な修飾を含んでいてもよい。例えば、核酸分子は、ホスホロチオエート結合により結合された1つ以上のヌクレオチド、2’位に修飾を有するヌクレオチド、または多環式ヌクレオチドもしくはロックドヌクレオチドを含み得る。
【0023】
一部の実施形態では、本明細書に記述されるsiRNAは、多様なオリゴヌクレオチド化学構造を用いることができる。オリゴヌクレオチド化学の例としては、限定されないが、2’O-Me-修飾オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、ホスホロチオエート、及びモルホリノの各化学構造、ならびに前述のもののうちのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0024】
一部の実施形態では、RNAiを誘導する二本鎖核酸分子(例えば、asiRNAまたはcp-asiRNA)に含まれる少なくとも1つのヌクレオチドのリボースの2’位におけるヒドロキシル基は、水素原子、フッ素原子、-O-アルキル基、-O-アシル基、及びアミノ基から選択される少なくとも1つに置換されている。一部の実施形態では、核酸分子に含まれる少なくとも1つのヌクレオチドのリン酸骨格は、アルキルホスホネート形態、ホスホロアミデート形態、及びボラノホスフェート形態から選択される少なくとも1つに置換されていてもよい。
【0025】
一部の実施形態では、核酸分子に含まれる少なくとも1つのヌクレオチドは、LNA(ロックド核酸)、UNA(アンロックド核酸)、モルホリノ、及びPNA(ペプチド核酸)から選択される少なくとも1つに置換されていてもよい。一部の実施形態では、第1の鎖の一本鎖領域内のヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、嵩高な塩基類似体を含み得る。
【0026】
例えば、ある実施形態では、核酸分子は、1つ以上の多環式核酸またはロックド核酸(LNA)を含む。ロックド核酸は、修飾されたRNAヌクレオチドである。ロックド核酸ヌクレオチドのリボース部分は、2’の酸素及び4’の炭素をつなぐ追加の架橋で修飾されている。この架橋は、A型二重鎖に見られることが多い3’-エンド(North)コンフォメーションにリボースを「ロック」する。ロックド核酸ヌクレオチドは、必要に応じて、ポリヌクレオチド中のDNAまたはRNA残基と混合し、ワトソン-クリック塩基対合則に従ってDNAまたはRNAとハイブリダイズすることができる。ロックドリボースコンフォメーションは、塩基スタッキング及び骨格の事前構築を向上させる。これにより、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性(融解温度)が著しく高まる。ロックド核酸ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドには、それらの化学的安定性を増大させるヌクレアーゼ抵抗性がある。
【0027】
一部の実施形態では、核酸分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。例示的な修飾ヌクレオチドは、全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,278,036号に記述されている。例えば、修飾ヌクレオチドは、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、5-メチルシチジン、またはN6-メチルアデノシン、5-ヒドロキシシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-カルボキシシチジン、5-ホルミルシチジン、5-ヒドロキシウリジン、5-ヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシウリジン、5-ホルミルウリジン、プソイドウリジン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-アザウリジン、5-アミノウリジン、5-メチルウリジン、2-チオプソイドウリジン、4-チオプソイドウリジン、5-ヒドロキシプソイドウリジン、5-メチルプソイドウリジン、5-アミノプソイドウリジン、プソイドイソシチジン、N4-メチルシチジン、2-チオシチジン、5-アザシチジン、5-アミノシチジン、N4-メチルプソイドイソシチジン、2-チオプソイドイソシチジン、5-ヒドロキシプソイドイソシチジン、5-アミノプソイドイソシチジン、5-メチルプソイドイソシチジン、7-デアザアデノシン、6-チオグアノシン、7-デアザグアノシン、8-アザグアノシン、6-チオ-7-デアザグアノシン、6-チオ-8-アザグアノシン、7-デアザ-8-アザグアノシン、及び6-チオ-7-デアザ-8-アザグアノシンのうちの1つ以上から選択され得る。一部の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、それらが核酸分子の2つの鎖の間の塩基対合に干渉しないように選択及び配置することができる。
【0028】
種々の実施形態において、本発明は、細胞透過性非対称低分子干渉RNA(cp-asiRNA)または長鎖アンチセンスasiRNA(lasiRNA)などのsiRNAと、siRNAの細胞透過を向上させ、効率的な遺伝子サイレンシングをより効率的にすることができる、L型カルシウムチャネル遮断薬とを含む、薬学的組成物を提供する。
【0029】
種々の実施形態において、L型カルシウムチャネル遮断薬は、ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬である。例示的なジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬としては、アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、クレビジピン、イスラジピン、エホニジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、及びプラニジピンが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、L型カルシウムチャネル遮断薬は、
【化1】
から選択され得る。
【0030】
他の実施形態では、L型カルシウムチャネル遮断薬は、非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬である。例示的な非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬としては、(i)ベラパミル、ジルチアゼム、ガロパミル、及びフェンジリンを含む、フェニルアルキルアミン及びベンゾチアゼピン系カルシウムチャネル遮断薬、(ii)ガバペンチン及びプレガバリンを含むガバペンチノイド、(iii)ジコノチド(zixonotide)、ならびに(iv)ミベフラジル、ベプリジル、フルナリジン、及びフルスピリレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
他の態様では、本発明は、対象における遺伝子サイレンシングの方法を提供し、この方法は、有効量の低分子干渉RNA(siRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬を対象に投与することを含む。siRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬は、単一の薬学的組成物として投与される場合があり、一部の実施形態では、siRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬は、別々の薬学的組成物として投与される。一部の実施形態では、siRNAは、細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)または長鎖アンチセンスasiRNA(lasiRNA)などの非対称siRNA(asiRNA)である。L型カルシウムチャネル遮断薬は、ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬であっても、または非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬であってもよい。
【0032】
本発明との関連で使用され得る例示的なasiRNAを以下の表1~3に列記する。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
種々の実施形態において、本発明は、標的遺伝子の遺伝子サイレンシングのための方法を提供する。種々の実施形態において、標的遺伝子は、mRNA(メッセンジャーRNA)、マイクロRNA、piRNA(piwi相互作用RNA)、コードDNA配列、及び非コードDNA配列から選択することができる。一部の実施形態では、標的遺伝子はmRNAである。更なる実施形態では、標的遺伝子は、結合組織増殖因子(CTGF)をコードするmRNAである。
【0037】
別の態様では、本開示は、siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)の活性を改善、増大、または向上させる化合物のスクリーニング方法であって、siRNAを細胞に接触させることと、候補化合物を細胞及び/またはsiRNAに接触させることと、細胞内に透過したsiRNAを検出することとを含む、スクリーニング方法を更に提供する。一部の実施形態では、この方法は、細胞内に透過したsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)の量を対照と比較して、候補化合物を用いた場合の細胞へのsiRNAの透過が候補化合物を用いない場合と比較して増大するかどうかを判定することを更に含む。一部の実施形態では、対照は、siRNAの細胞透過活性を改善、増大、または向上させるための二次的な化合物を一切用いずに透過したsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)の量の実測値、既知値、または推定値であり得る。対照は、過去の実験による既知値または所定値であってもよい。この方法は、細胞内へのsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)の透過を増大させる候補化合物を、siRNAの活性を改善する化合物として選択することを更に含み得る。
【0038】
更なる実施形態では、本明細書に記述される方法は、細胞におけるsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)の遺伝子サイレンシング活性を検出することを更に含む。細胞におけるsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)の遺伝子サイレンシング活性を増大させる候補化合物は、siRNAの活性を改善する化合物として選択され得る。更なる実施形態では、この方法は、siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)の遺伝子サイレンシング活性を対照と比較して、候補化合物を用いた場合のsiRNAの遺伝子サイレンシング活性が候補化合物を用いない場合と比較して増大するかどうかを判定することを更に含む。対照は、siRNAの遺伝子サイレンシング活性を改善、増大、または向上させるための二次的な化合物を一切用いないsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)の遺伝子サイレンシング活性の実測値、既知値、または推定値であり得る。対照は、過去の実験による既知値または所定値であってもよい。
【0039】
種々の実施形態において、この方法は、基質上の細胞を含む細胞培養物を調製することを更に含む。一部の実施形態では、この方法は、複数の別個の基質上の細胞を含む細胞培養物を調製することを含む。一部の実施形態では、基質上の細胞をsiRNA(例えば、asiRNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)またはsiRNAの組み合わせに接触させる。例えば、基質上の細胞は、第1のsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)または第1の組み合わせのsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)、及び第2のsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)または第2の組み合わせのsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)に接触してもよい。一部の実施形態では、複数の別個の基質のうちの1つにある細胞に接触する第1のsiRNAまたは第1の組み合わせのsiRNAは、複数の別個の基質のうちの別の1つにある細胞に接触する第2のsiRNAまたは第2の組み合わせのsiRNAと異なっていてもよい。複数の別個の基質のそれぞれにある細胞は、異なるsiRNAまたはsiRNAの組み合わせに接触してもよい。一部の実施形態では、この方法は、複数の候補化合物を複数の基質上の細胞に接触させることと、細胞上の複数の候補化合物を同時にインキュベートすることとを含む。更なる実施形態では、この方法は、複数の候補化合物を複数の基質上の細胞に同時に接触させることを含む。一部の実施形態では、基質はウェルである。一部の実施形態では、細胞はヒト細胞である。
【0040】
一部の実施形態では、siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)は、例えば蛍光色素で標識されている。siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)は、例えば、標識を検出することにより検出され得る。siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)の量は、例えば、標識の量を測定することにより判定され得る。
【0041】
種々の実施形態において、本発明は、直腸、頬側、鼻腔内、及び経皮の各経路、動脈内注射による送達、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、経口、局所、または吸入薬としての送達を含む種々の送達経路のために製剤化された薬学的組成物を提供する。一部の実施形態では、本明細書において他所に記述される種々の処置方法で使用するための送達経路は、局所、肺、または非経口である。一部の実施形態では、siRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬のうちの一方または両方が、局所送達、肺送達、または非経口送達のために製剤化されている。一部の実施形態では、薬学的組成物は、皮膚、眼、肺への適用、または全身送達のために製剤化されている。種々の実施形態において、薬学的組成物は、限定されないが例えばリポソーム、カチオン性ポリマー、抗体、アプタマー、またはナノ粒子などの種々の送達ビヒクルとともにin vitro及び/またはin vivo送達のために使用される。
【0042】
一部の実施形態では、本明細書に記述される薬学的組成物は、siRNA(例えば、asiRNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬と、任意選択で、経口投与に好適な薬学的賦形剤とを含有する、経口投与のための薬学的組成物であり得る。一部の実施形態では、薬学的組成物は、siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)のための別々の送達ビヒクルを含まない場合がある。種々の実施形態において、薬学的組成物は、経口投与に好適な形態で、すなわち固体または液体調製物として製剤化されている。好適な固体経口製剤としては、錠剤、カプセル、丸剤、顆粒、ペレットなどが挙げられる。好適な液体経口製剤としては、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、油類などが挙げられる。
【0043】
一部の実施形態では、本明細書に記述される薬学的組成物は、本明細書に記述されるsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬と、任意選択で、注射に好適な薬学的賦形剤とを含有する、注射のための薬学的組成物であり得る。一部の実施形態では、薬学的組成物は、siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)のための別々の送達ビヒクルを含まない場合がある。
【0044】
一部の実施形態では、注射による投与のために本発明の薬学的組成物が組み込まれ得る形態としては、ゴマ油、トウモロコシ油、綿実油、またはピーナッツ油を含む水性懸濁液もしくは油懸濁液またはエマルジョン、ならびにエリキシル剤、マンニトール、デキストロース、または滅菌水溶液、及び同様の薬学的ビヒクルが挙げられる。一部の実施形態では、食塩水中の水溶液が注射のために使用される。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール(及びそれらの好適な混合物)、シクロデキストリン誘導体、及び植物油を用いることもできる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合は界面活性剤の使用によって維持することができる。薬学的組成物は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、及びチメロサールを更に含んでいてもよい。
【0045】
滅菌注射溶液は、適切な溶媒中で必要量の医薬品有効成分または医薬品有効成分の組み合わせを上記に列挙したような種々の他の成分と合わせ、続いて濾過滅菌を行うことによって調製される。一般に、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙したもののうち必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに種々の滅菌活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、ある特定の望ましい調製方法は、活性成分と任意の更なる望ましい成分の粉末が前もって滅菌濾過したそれらの溶液から得られる真空乾燥及びフリーズドライ技術である。
【0046】
一部の実施形態では、薬学的組成物は体表面に局所的に投与されるため、局所投与に好適な形態で製剤化されている。好適な局所製剤としては、限定されないが、ゲル、軟膏、クリーム、ローション、点滴薬などが挙げられる。
【0047】
種々の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体または希釈剤を更に含む。薬学的に許容される担体または希釈剤は当業者に周知である。担体または希釈剤は、種々の実施形態において、固体製剤のための固体担体もしくは希釈剤、液体製剤のための液体担体もしくは希釈剤、またはそれらの混合物であり得る。別の実施形態では、固体担体/希釈剤としては、ガム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース系材料(例えば、微結晶セルロース)、アクリレート(例えば、ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
一部の実施形態では、薬学的組成物は制御放出組成物、すなわち、活性剤が投与後一定期間にわたって放出される組成物である。制御放出組成物または持続放出組成物としては、親油性デポ(例えば、脂肪酸、ワックス、油類)中の製剤が挙げられる。別の実施形態では、この組成物は即時放出組成物、すなわち、活性剤が投与後直ちに放出される組成物である。
【0049】
種々の実施形態において、本明細書に記述されるsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬は、薬学的組成物として共投与される。本明細書で使用される「共投与」、「共投与すること」、「と組み合わせて投与される」、「と組み合わせて投与すること」、「同時」、及び「併用」という用語は、2種以上の医薬品有効成分を、両方の医薬品有効成分及び/またはそれらの代謝物がヒト対象において同時に存在するようにヒト対象に投与することを包含する。共投与は、異なる組成物の同時投与もしくは時間を隔てた投与、別々の組成物の異なる時点での投与、または2種以上の医薬品有効成分が存在する薬学的組成物の投与を含み得る。別々の組成物の同時投与及び両薬剤が存在する薬学的組成物の投与も、本発明の方法に包含される。
【0050】
一部の実施形態では、薬学的組成物または医薬品有効成分は、単回用量で投与される。そのような投与は、医薬品有効成分を迅速に導入するために、注射、例えば静脈内注射によるものであり得る。しかしながら、必要に応じて経口経路を含む他の経路を使用してもよい。単回用量の薬学的組成物は、急性状態の処置のためにも使用され得る。一部の実施形態では、薬学的組成物または医薬品有効成分は、複数用量で投与される。ある実施形態では、薬学的組成物が複数用量で投与される。投薬は、1日に1回、2回、3回、4回、5回、6回、または7回以上であってもよい。投薬は、1か月に1回、2週間毎に1回、1週間に1回、または2日毎に1回であってもよい。他の実施形態では、薬学的組成物は、1日に約1回から1日に約6回投与される。一部の実施形態では、薬学的組成物は毎日1回投与され、他の実施形態では、薬学的組成物は、毎日2回投与され、他の実施形態では、薬学的組成物は、毎日3回投与される。
【0051】
別の態様では、本開示は、本明細書に記述される薬学的組成物を有効量で対象に投与することを含む、対象における遺伝子サイレンシングの方法に関する。siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)を使用した遺伝子サイレンシングの方法は、少なくとも米国特許出願公開第2017/0137828号及び同第2017/0027837号に記述されており、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0052】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記述されるsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)及び/またはL型カルシウムチャネル遮断薬を含む有効量の薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の結合組織増殖因子(CTGF)関連疾患または障害を処置または防止する方法に関する。一部の実施形態では、siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)は、CTGFコードmRNAとの配列相補性を有する少なくとも19ヌクレオチド長のアンチセンス鎖と、アンチセンス鎖との配列相補性を有する15~17ヌクレオチド長のセンス鎖とを含む。種々の実施形態において、CTGF関連疾患または障害は、ケロイド、腎線維症、皮膚肥厚症(pachy-dermatosis)、肺線維症、肝線維症、関節炎、高血圧、腎不全、脈管形成関連障害、皮膚線維症、及び循環器障害から選択され得る。一部の実施形態では、siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)は、親油性化合物にコンジュゲートされていてもよく、かつ、配列番号1及び2の一対のヌクレオチド配列、配列番号3及び4の一対のヌクレオチド配列、ならびに配列番号5及び6の一対のヌクレオチド配列から選択される一対の核酸配列を有する。CTGF関連疾患または障害を処置または防止するために利用され得る更なるsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)は、開示内容全体が参照により本明細書に援用される米国特許公開第20150111948号に記述されている。
【0053】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記述される薬学的組成物を有効量で対象に投与することを含む、眼の状態、例えば加齢黄斑変性(AMD;例えば、非滲出型(dry)または滲出型(wet)AMD)の処置を必要とする対象においてそれを行う方法に関し、ここで、siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)は、MyD88 mRNA配列またはTLR3 mRNA配列との配列相補性を有する少なくとも19ヌクレオチド長のアンチセンス鎖と、アンチセンス鎖との配列相補性を有する15~17ヌクレオチド長のセンス鎖とを含み、アンチセンス鎖及びセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端及びセンス鎖の3’末端が平滑末端を形成する複合体を形成する。AMDを処置または防止するために利用され得る例示的なsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)は、開示内容全体が参照により本明細書に援用される米国特許公開第20170137828号に記述されている。
【0054】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記述される薬学的組成物を有効量で対象に投与することを含む、対象のメラニン産生を阻害及び/または低減する方法に関し、ここで、siRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNA)は、チロシナーゼmRNA配列との配列相補性を有する少なくとも19ヌクレオチド長のアンチセンス鎖と、アンチセンス鎖との配列相補性を有する15~17ヌクレオチド長のセンス鎖とを含み、アンチセンス鎖及びセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端及びセンス鎖の3’末端が平滑末端を形成する複合体を形成する。メラニン産生の阻害及び/または低減のために利用され得る例示的なsiRNA(例えば、asi-RNAまたはcp-asiRNAまたはlasiRNA)は、開示内容全体が参照により本明細書に援用される米国特許公開第20170027837号に記述されている。一部の実施形態では、本開示は、皮膚の白化、黒化、もしくは瘢痕、アトピー性皮膚炎、乾癬、強皮症、脱毛症、または皮膚のしわを含むがこれらに限定されない、皮膚疾患または状態を処置する方法を更に提供する。
【0055】
種々の実施形態において、本発明の方法により処置される対象はヒトである。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)低分子干渉RNA(siRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬を含む、薬学的組成物。
(2)前記siRNAが、非対称siRNA(asiRNA)である、(1)に記載の薬学的組成物。
(3)前記siRNAが、細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)または長鎖アンチセンスasiRNA(lasiRNA)である、(2)に記載の薬学的組成物。
(4)前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬である、(1)~(3)のいずれか1に記載の薬学的組成物。
(5)前記ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬が、アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、クレビジピン、イスラジピン、エホニジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、及びプラニジピンから選択される、(4)に記載の薬学的組成物。
(6)前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬である、(1)~(3)のいずれか1に記載の薬学的組成物。
(7)前記非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬が、(i)フェニルアルキルアミン及びベンゾチアゼピン系カルシウムチャネル遮断薬、(ii)ガバペンチン及びプレガバリンを含むガバペンチノイド、(iii)ジコノチド、ならびに(iv)ミベフラジル、ベプリジル、フルナリジン、及びフルスピリレンから選択される、(6)に記載の薬学的組成物。
(8)前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、ベラパミル、ジルチアゼム、ガロパミル、及びフェンジリンから選択される、(7)に記載の薬学的組成物。
(9)前記組成物が、局所送達、肺送達、または非経口送達のために製剤化されている、(1)~(8)のいずれか1に記載の薬学的組成物。
(10)前記siRNAが、CTGFコードmRNAとの配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、(1)~(9)のいずれか1に記載の薬学的組成物。
(11)前記siRNAが、MyD88 mRNA配列またはTLR mRNA配列との配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、(1)~(9)のいずれか1に記載の薬学的組成物。
(12)前記siRNAが、チロシナーゼコードmRNA配列との配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、(1)~(9)のいずれか1に記載の薬学的組成物。
(13)有効量の低分子干渉RNA(siRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬を対象に投与することを含む、前記対象における遺伝子サイレンシングの方法。
(14)前記siRNA及び前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、単一の薬学的組成物として投与される、(13)に記載の方法。
(15)前記siRNA及び前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、別々の薬学的組成物として投与される、(13)に記載の方法。
(16)前記siRNAが、非対称siRNA(asiRNA)である、(13)~(15)のいずれか1に記載の方法。
(17)前記siRNAが、細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)または長鎖アンチセンスasiRNA(lasiRNA)である、(16)に記載の方法。
(18)前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬である、(13)~(17)のいずれか1に記載の方法。
(19)前記ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬が、アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、クレビジピン、イスラジピン、エホニジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、及びプラニジピンから選択される、(18)に記載の方法。
(20)前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬である、(13)~(17)のいずれか1に記載の方法。
(21)前記非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬が、(i)フェニルアルキルアミン及びベンゾチアゼピン系カルシウムチャネル遮断薬、(ii)ガバペンチン及びプレガバリンを含むガバペンチノイド、(iii)ジコノチド、ならびに(iv)ミベフラジル、ベプリジル、フルナリジン、及びフルスピリレンから選択される、(20)に記載の方法。
(22)前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、ベラパミル、ジルチアゼム、ガロパミル、及びフェンジリンから選択される、(21)に記載の方法。
(23)前記siRNA及びL型カルシウムチャネル遮断薬のうちの一方または両方が、局所送達、肺送達、または非経口送達のために製剤化されている、(13)~(22)のいずれか1に記載の方法。
(24)前記siRNAが、CTGFコードmRNAとの配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、(13)~(23)のいずれか1に記載の方法。
(25)前記対象が、ケロイド、腎線維症、皮膚肥厚症、肺線維症、肝線維症、関節炎、高血圧、腎不全、脈管形成関連障害、皮膚線維症、及び循環器障害から選択されるCTGF関連疾患または障害を有する、(24)に記載の方法。
(26)前記siRNAが、MyD88 mRNA配列またはTLR mRNA配列との配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、(13)~(23)のいずれか1に記載の方法。
(27)前記siRNAが、チロシナーゼコードmRNA配列との配列相補性を有するアンチセンス鎖を含む、(13)~(23)のいずれか1に記載の方法。
(28)siRNA組成物を作製する方法であって、
siRNA及び候補化合物に細胞を接触させることと、
前記細胞への前記siRNAの透過を数量化すること、または標的RNAの発現低下を数量化することと、
前記siRNAとの共製剤化のための、任意選択で誘導体化される候補化合物を選択することと
を含む、前記方法。
(29)前記siRNAが、非対称siRNA(asiRNA)である、(28)に記載の方法。
(30)前記asiRNAが、細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)または長鎖アンチセンスasiRNA(lasiRNA)である、(29)に記載の方法。
(31)前記asiRNAが蛍光色素で標識されている、(28)~(30)のいずれか1に記載の方法。
(32)前記細胞がヒト細胞である、(28)~(31)のいずれか1に記載の方法。
(33)有効量の低分子干渉RNA(siRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬を対象に投与することを含む、CTGF関連疾患または障害を処置する方法。
(34)前記siRNA及び前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、単一の薬学的組成物として投与される、(33)に記載の方法。
(35)前記siRNA及び前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、別々の薬学的組成物として投与される、(33)に記載の方法。
(36)前記siRNAが、非対称siRNA(asiRNA)である、(33)~(35)のいずれか1に記載の方法。
(37)前記siRNAが、細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)または長鎖アンチセンスasiRNA(lasiRNA)である、(36)に記載の方法。
(38)前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬である、(33)~(37)のいずれか1に記載の方法。
(39)前記ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬が、アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、クレビジピン、イスラジピン、エホニジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、及びプラニジピンから選択される、(38)に記載の方法。
(40)前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬である、(33)~(37)のいずれか1に記載の方法。
(41)前記非ジヒドロピリジンL型カルシウムチャネル遮断薬が、(i)フェニルアルキルアミン及びベンゾチアゼピン系カルシウムチャネル遮断薬、(ii)ガバペンチン及びプレガバリンを含むガバペンチノイド、(iii)ジコノチド、ならびに(iv)ミベフラジル、ベプリジル、フルナリジン、及びフルスピリレンから選択される、(40)に記載の方法。
(42)前記L型カルシウムチャネル遮断薬が、ベラパミル、ジルチアゼム、ガロパミル、及びフェンジリンから選択される、(41)に記載の方法。
(43)前記CTGF関連疾患または障害が、ケロイド、腎線維症、皮膚肥厚症、肺線維症、肝線維症、関節炎、高血圧、腎不全、脈管形成関連障害、皮膚線維症、及び循環器障害から選択される、(33)に記載の方法。
(44)CTGF関連疾患または障害の処置に使用するための、低分子干渉RNA(siRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬。
(45)CTGF関連疾患もしくは障害を処置するため、またはCTGF関連疾患もしくは障害の処置のための医薬を調製するための、低分子干渉RNA(siRNA)及びL型カルシウムチャネル遮断薬の使用。
【0056】
発明の形態
これより、以下の実施例を参照して、本明細書に包含される実施形態について記述する。これらの実施例は例示を目的として提供されるに過ぎず、本開示は決してこれらの実施例に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ本開示は、本明細書において提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形形態を包含するものと解釈されるべきである。
【0057】
実施例1 cp-asiRNA遺伝子サイレンシング活性の改善のための高スループットスクリーニング。
【0058】
DMSO毒性試験後、Korea Chemical Bankの化合物ライブラリから2354種の臨床的に活性な候補化合物を蒸留水で希釈し、密閉した96ウェルプレートに保存した。cp-asiGFP及び化学物質のインキュベーションの前に、HeLa/GFP安定細胞株の細胞4,000個を96ウェルプレートに播種した。播種の24時間後、cp-asiRNAをトランスフェクトした。リポフェクタミンまたはリポフェクタミン2000などのトランスフェクション試薬を一切用いずに行ったトランスフェクションの24時間後、培地をOpti-MEM(Gibco)から10% FBS(Gibco)を含むDMEM(Gibco)に交換した。マルチウェルプレートリーダーを使用して、化学物質を含むcp-asiRNAの相対蛍光強度を測定した(
図1)。第1のスクリーニングでは、相対蛍光強度は各化学物質につき2回測定した。第1のスクリーニングに基づき、各プレートにおいて最も強度の高い5つの候補化学物質を選択し、第2のスクリーニングを行った。二次的なスクリーニングは10種のヒット化合物をもたらした。10種の化合物の構造を解析した後、ヒット化合物のうちの3つはコア構造を共有しており、L型カルシウムチャネル遮断薬として機能する。
【0059】
実施例2 スクリーニングにより特定された小分子はcp-asiRNAの遺伝子サイレンシングを改善する。
【0060】
スクリーニングにより確認された3つのヒット化合物を再試験して、cp-asiRNAに対するRNA干渉効果を検証した。細胞毒性による影響を受けない最適な範囲を設定するため、MTTアッセイを行った。この範囲(50%致死量)に基づいて、3つのヒット化合物の濃度を選択し、選択された範囲内で化合物を再試験した。HeLa/GFP細胞をCp-asiGFP(100nM)及び3つの候補化学物質で処置した。インキュベーションの24時間後、培地をOpti-MEM(Gibco)から10% FBS(Gibco)を含むDMEM(Gibco)に交換した。培地交換の24時間後、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を使用して相対GFP mRNAレベルを測定した(
図2のパネルA)。これら3つの化学物質で処置したとき、cp-asiGFP単独と比較してcp-asiGFP活性の向上が観察された。cp-asiRNAの遺伝子サイレンシング活性が配列特異的であるかどうかを試験するため、サバイビンを標的とする別のcp-asiRNA(0.3μM)も試験した。3つの候補化学物質を含むCp-asiサバイビンをHeLa細胞に加え、標的mRNAレベルをqRT-PCRにより解析した(
図2のパネルA)。内部対照としてのチューブリンレベルで除算することにより、GFP mRNAレベル及びサバイビンmRNAレベルを計算した。この結果は、3つの候補化合物で処置することによりcp-asiサバイビンの遺伝子サイレンシング活性が向上したことを示した。
【0061】
cp-asiRNAに対して最も高い遺伝子サイレンシング効果を示したシルニジピンを選択した。様々な濃度のシルニジピンを含む、GFPを標的とするcp-asiRNA(50nM及び250nM)及びサバイビンを標的とするcp-asiRNA(0.5μM及び1μM)を、HeLa/GFP細胞及びHeLa細胞に加えた。48時間後、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を使用して、シルニジピンを含むcp-asiRNAの活性を解析した。チューブリンレベル(内部対照)を分割することにより、相対的なGFP mRNAレベル及びサバイビンmRNAレベルを測定した(
図2のパネルB)。cp-asiRNA活性の濃度依存的向上が観察された。これらの結果は、スクリーニングにより特定された3つのヒット化合物がcp-asiRNAの遺伝子サイレンシング活性を向上させることを実証する。
【0062】
実施例3 ジヒドロピリジン(DHP)L型カルシウムチャネル遮断薬はcp-asiRNAの遺伝子サイレンシングを改善する。
【0063】
化合物ライブラリには含まれていなかったアムロジピンも試験した。この化合物はDHPと共通の構造を有し、L型カルシウムチャネル遮断薬として機能する。アムロジピンを含むCp-asiGFP及びcp-asiサバイビンをHeLa/GFP細胞及びHeLa細胞に処置した。それらの遺伝子サイレンシング効果を48時間のインキュベーション後にqRT-PCRによって測定した(
図3のパネルA)。チューブリンレベル(内部対照)で除算することにより、GFP mRNAレベル及びサバイビンmRNAレベルを計算した。様々な濃度のアムロジピンを含むcp-asiGFP(50nM、100nM、250nM)及びcp-asiサバイビン(0.3μM、0.5μM、1μM)とのインキュベーションにより、GFP及びサバイビンmRNAの発現レベルの低下が示された。これらの結果は、アムロジピンも相対的な標的mRNAレベルを低下させ、またcp-asiRNAの遺伝子サイレンシング効果を用量依存的様式で向上させることを示す。こうした結果は、スクリーニングにより特定された3つの化学化合物のみならず、DHP L型カルシウムチャネル遮断薬によってもcp-asiRNAのRNAi有効性が向上することを裏付ける。連続して、Cy3標識cp-asiGFPを使用したNucleocounter(NC3000)に基づく技術を用い、DHP L型カルシウムチャネル遮断薬が細胞取り込みに影響するかどうかを判定した(
図3のパネルB)。DHP L型カルシウムチャネル遮断薬を含む100nMのCy3標識cp-asiGFPでHeLa細胞を処置した。8時間のインキュベーションの後、固定細胞及び生細胞を用いたDNA及び核の蛍光染色のためにHoechst 33342(Biotium)を使用した。ゲーティングした細胞集団の細胞内蛍光強度と比較して相対蛍光強度を数量化した。蛍光強度は、細胞内Cy3シグナルに基づき、Nucleocounter法によって数量化した。1として示されるCy3標識cp-asiGFP発現に対して正規化された蛍光強度を計算した。DHP L型カルシウムチャネル遮断薬を用いたcp-asiGFPの細胞取り込みは、cp-asiGFP単独によるものよりも高かった。こうした結果は、DHP L型カルシウムチャネル遮断薬が細胞取り込みを向上させ、cp-asiRNAの遺伝子サイレンシングの有効性増大をもたらすことを裏付ける。
【0064】
実施例4 非ジヒドロピリジン(非DHP)L型カルシウムチャネル遮断薬もcp-asiRNAの遺伝子サイレンシングを改善する。
【0065】
非DHP L型カルシウムチャネル遮断薬のような別のタイプのカルシウムチャネル遮断薬を試験のために選択する。ジルチアゼム及びベラパミルを含むCp-asiGFP及びcp-asiサバイビンをHeLa/GFP細胞及びHeLa細胞に処置した。濃度別のジルチアゼム及びベラパミルを含むcp-asiGFP(50nM、100nM)及びcp-asiサバイビン(0.3μM、0.5μM、1μM)で処置した48時間後、GFP mRNAレベル及びサバイビンmRNAレベルの低下が、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を使用して観察された。GFP mRNAレベル及びサバイビンmRNAレベルは、内部対照としてのチューブリンレベルで除算して計算した。
図4に見られるように、ジルチアゼム及びベラパミルで処置したとき、cp-asiRNAの遺伝子サイレンシングの有効性は、cp-asiRNA単独での処置と比べてより効率的であった。したがって、これら2つの化合物もまた、DHP L型カルシウムチャネル遮断薬と比較して同様のcp-asiRNA対する効果を示し、遺伝子サイレンシング効果の向上がL型カルシウムチャネル遮断薬による影響を受けていることが確認される。
【0066】
実施例5 cp-asiRNAに対するL型カルシウムチャネル遮断薬の効果の検証。
【0067】
T型カルシウムチャネル遮断薬などの別のタイプのカルシウムチャネル遮断薬の効果を試験した。濃度別のペンフルリドール及びエトスクシミドを含むcp-asiGFP(50nM、100nM、250nM)及びcp-asiサバイビン(0.3μM、0.5μM、1μM)をHeLa/GFP細胞及びHeLa細胞に加えた。48時間後、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を使用して、相対mRNAレベルを解析した。チューブリンレベル(内部対照)を分割することにより、GFP mRNAレベル及びサバイビンmRNAレベルを測定した(
図5のパネルA)。L型カルシウムチャネル遮断薬とは異なり、T型カルシウムチャネル遮断薬は、cp-asiRNAの遺伝子サイレンシングの有効性を改善しなかった。更に、Nucleocounter(NC3000)に基づく技術を使用し、細胞取り込みを解析した。非DHP L型及びT型のカルシウムチャネル遮断薬を含むCy3標識cp-asiGFPをHeLa細胞に処置した。非DHP L型カルシウムチャネル遮断薬及びT型カルシウムチャネル遮断薬を含むCy3標識cp-asiGFP(100nM)とともにHeLa細胞をインキュベートした。8時間のインキュベーション後、ゲーティングした細胞集団の細胞内蛍光強度を数量化した。細胞内Cy3シグナルをNC-3000により測定し、Cy3標識cp-asiGFP発現に対して正規化した。
図5のパネルBに見られるように、cp-asiGFPの細胞取り込みの向上は、非DHP L型カルシウムチャネル遮断薬で処置したときにのみ検出され、T型カルシウムチャネル遮断薬で処置したときには検出されない。
【0068】
実施例6。種々の形態のcp-asiRNAに対するL型カルシウムチャネル遮断薬の効果。
【0069】
種々の形態のcp-asiRNAに対するL型カルシウムチャネル遮断薬の効果を特定するため、構造変化及びいくつかの化学修飾をcp-asiRNAに適用した。結果として得られたRNA分子(細胞透過性長鎖非対称siRNA(cp-lasiRNA)と呼ぶ)は、効率的な標的遺伝子サイレンシングを示した。アムロジピン及びシルニジピンを含むCTGF(cp-lasiCTGF)を標的とするcp-lasiRNAをHeLa細胞に処置した。それらの遺伝子サイレンシング活性をqRT-PCRにより測定した(
図6)。アムロジピン及びシルニジピンなどのL型カルシウムチャネル遮断薬は、用量依存的様式でcp-lasiRNAの遺伝子サイレンシング効果を向上させるのに役立つ。これらの結果は、L型カルシウムチャネル遮断薬が種々の形態のcp-asiRNAに作用して標的遺伝子サイレンシングの有効性を改善することを裏付ける。
【0070】
cp-lasiRNA配列情報(配列番号145及び146、「m」:OMe修飾、「*」:ホスホロチオエート(PS)修飾、及び「chol」:コレステロール修飾)。
【0071】
CTGF及びGAPDHプライマー配列情報(配列番号147~150)
【配列表】