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特許7112965周方向に連続的かつ収縮可能なテキスタイルスリーブおよびその構築方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】周方向に連続的かつ収縮可能なテキスタイルスリーブおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20220728BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20220728BHJP
   D03D 15/567 20210101ALI20220728BHJP
   D03D 15/60 20210101ALI20220728BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20220728BHJP
   H02G 15/18 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
D03D1/00 Z
D03D15/56
D03D15/567
D03D15/60
H01B17/58 F
H02G15/18 006
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018568230
(86)(22)【出願日】2017-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 US2017040550
(87)【国際公開番号】W WO2018006083
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】15/639,053
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/357,705
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エナン,デルフィーヌ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203948853(CN,U)
【文献】特開2012-132109(JP,A)
【文献】特開2012-082529(JP,A)
【文献】特開昭62-131424(JP,A)
【文献】特表2016-516912(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0272218(US,A1)
【文献】独国実用新案第202012103776(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00
D03D 15/56
D03D 15/567
D03D 15/60
H01B 17/58
H02G 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部間で長手方向軸に沿って長手方向に延在する周方向に連続的な壁を備え、前記壁は、その全体において非弾性で非熱収縮性の糸から形成される第1セクションと、弾性糸および熱収縮性糸のうちの少なくとも1つを含む第2セクションとを有し、前記第1セクションは、前記両端部間で長手方向に延在し、かつ長手方向に延在する対向する縁部間で前記壁の外周の周りに(X)度広がり、前記第2セクションは、前記両端部間で長手方向に延在し、かつ前記壁の外周の周りに(360-X)度広がり、前記第2セクションの前記弾性糸および熱収縮性糸のうちの少なくとも1つは、前記両端部間で途切れることのない糸として連続的に延在し、
前記第2セクションは、熱収縮性糸を含む、保護テキスタイルスリーブ。
【請求項2】
前記第2セクションは、弾性糸を含む、請求項1に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項3】
前記第2セクションは、全体的に熱収縮性糸で形成される、請求項1に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項4】
前記第2セクションは、非熱収縮性糸を含む、請求項1に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項5】
前記第2セクションは、長手方向に延在する縦糸マルチフィラメント糸を含む、請求項1に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項6】
前記第1セクションは、長手方向に延在する縦糸マルチフィラメント糸を含む、請求項1に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項7】
前記第1セクションは、周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸を含む、請求項に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項8】
前記周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸は、0.15~0.25mmの間の直径を有する、請求項に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項9】
前記縦糸マルチフィラメント糸は、6.0グラム/デニール(g/d)以上の強度を有する、請求項に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項10】
前記周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸は、0.15~0.25mmの間の直径を有する、請求項に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項11】
(360-X)は、45~90度の間である、請求項1に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項12】
(360-X)は、15~30度の間である、請求項1に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項13】
前記熱収縮性糸は、低融点熱可融性モノフィラメントで巻き付けられた熱収縮性モノフィラメントを含む、請求項1に記載の保護テキスタイルスリーブ。
【請求項14】
テキスタイルスリーブを構築する方法であって、
糸をインターレースして両端部間で長手方向軸に沿って長手方向に延在する周方向に連続的な壁を形成することと、
非熱収縮性で非弾性の糸から形成される第1セクションを有する前記壁を形成することと、を備え、前記第1セクションは、前記両端部間で長手方向に延在し、かつ長手方向に延在する対向する縁部間で前記壁の外周の周りに(X)度広がり、前記方法はさらに、
熱収縮性糸または弾性糸のうちの1つから形成される第2セクションを有する前記壁を形成し、前記第2セクションは、前記両端部間で長手方向に延在し、かつ前記壁の外周の周りに(360-X)度広がり、前記熱収縮性糸または前記弾性糸を、前記第1セクションの前記対向する縁部間で途切れることのない糸として連続的に広げることを備え、
前記第2セクションを少なくとも部分的に熱収縮性糸で形成することをさらに含む、方法。
【請求項15】
前記第2セクションを少なくとも部分的に弾性糸で形成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1セクションを少なくとも部分的に長手方向に延在する縦糸マルチフィラメント糸で形成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1セクションを全体的に周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸で形成することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
6.0グラム/デニール(g/d)以上の強度を有する前記縦糸マルチフィラメント糸を提供することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
0.15~0.25mmの間の直径を有する前記周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸を提供することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
0.15~0.25mmの間の直径を有する前記周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸を提供することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
織り加工でインターレースを行うことをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
編み加工でインターレースを行うことをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
45~90度の間で広がる(360-X)度を形成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
15~30度の間で広がる(360-X)度を形成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記熱収縮性糸を低融点熱可融性モノフィラメントで巻き付けられた熱収縮性モノフィラメントとして提供することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記第2セクションを少なくとも部分的に非熱収縮性の縦糸で形成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2016年7月1日に提出された米国仮出願連続番号第62/357,705号および2017年6月30日に提出された米国特許出願連続番号第15/639,053号の利益を主張し、参照によりそれらの内容全体がここに組み込まれる。
【0002】
本発明の背景
1.技術分野
この発明は、概して、テキスタイルスリーブ、より特定的には、周方向に連続的かつ収縮可能なテキスタイルスリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
様々な環境の条件および影響に対してテキスタイルスリーブの中に細長い部材を保護すること、または結束および経路決めの目的のためにテキスタイルスリーブの中に細長い部材を単に収容することが知られている。さらに、スリーブを、周方向に連続的な熱収縮性糸で形成された縫い目のない周方向に連続的な壁を有する織られたスリーブとして構築することが知られており、熱収縮性糸は、熱収縮される際、その外面の全体の周りかつスリーブ内に保護されている部材の周りに壁を縮める。熱収縮性糸は、横糸方向の周方向において、完全にスリーブの外周の周りに延在するため、熱収縮される際スリーブの直径を効果的に低減させる。周方向に連続的な熱収縮性糸は、概ね、保護されている部材の周りに縫い目のない壁の全体を縮めるように機能するが、比較的費用のかかる糸である結果としてスリーブに費用を追加し、さらに、壁によって提供される保護ケーブルの種類を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、必要とされるのは、保護されている部材の周りに取り付け易いと同時に、費用効果の高い態様で部材の周りに相対的にぴったりとした嵌合をもたらすことが可能であると同時に、異なる種類の環境影響に対して最適な保護を提供するように選択的に適合されることが可能である保護スリーブである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要
本発明の1つの局面によれば、保護テキスタイルスリーブは、両端部間で長手方向軸に沿って長手方向に延在する周方向に連続的な壁を含む。壁は、非熱収縮性で非弾性の糸から形成される第1セクションと、熱収縮性糸または弾性糸のうちの1つから形成される第2セクションとを有する。第1セクションは、両端部間で長手方向に延在し、収縮されていないまたは伸張している間、長手方向に延在する対向する縁部間で壁の外周の周りに(X)度広がる。第2セクションは、両端部間で長手方向に延在し、壁の外周の周りに(360-X)度広がる。第2セクションの熱収縮性糸または弾性糸は、第1セクションの対向する縁部間で途切れることのない糸として連続的に延在する。
【0006】
本発明のさらなる局面によれば、壁は、熱収縮性糸が収縮されていない状態にあるまたは弾性糸が付勢された伸張状態にある、径方向に拡張された非収縮の第1状態を有し、壁は、熱収縮性糸が収縮された状態にあるまたは弾性糸が弛緩された低減長さ状態にある、径方向に収縮された第2状態を有する。
【0007】
本発明のさらなる局面によれば、第2セクションは、長手方向に延在する対向する縁部間で行ったり来たりして蛇行する、単一の熱収縮性糸または単一の弾性糸で形成されてもよい。
【0008】
本発明のさらなる局面によれば、第2セクションは、長手方向に延在する対向する縁部間で行ったり来たりして蛇行する、複数の熱収縮性糸または複数の弾性糸で形成されてもよい。
【0009】
本発明の別の局面によれば、第1セクションは、被覆保護および強度(tenacity)を高めるために、長手方向に延在する縦糸マルチフィラメント糸を含んでもよい。
【0010】
本発明の別の局面によれば、第1セクションは、フープ強度(hoop strength)および摩耗に対する耐性を高めるために、周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸を含んでもよい。
【0011】
本発明の別の局面によれば、第1セクションは、被覆保護および強度を高めるための長手方向に延在する縦糸マルチフィラメント糸、ならびにフープ強度および摩耗に対する耐性を高めるための周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸の両方を含んでもよい。
【0012】
本発明の別の局面によれば、第1セクションは、全体的に、高められた機械的保護のための6.0グラム/デニール(g/d)以上の強度を有する長手方向に延在する縦糸マルチフィラメント糸、および0.15~0.25mmの間の直径を有する周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸で形成されてもよい。
【0013】
本発明のさらなる局面によれば、テキスタイルスリーブを構築する方法が提供される。上記方法は、糸をインターレースして両端部間で長手方向軸に沿って長手方向に延在する周方向に連続的な壁を形成することと、両端部間で長手方向に延在する非熱収縮性で非弾性の糸から形成され、かつ長手方向に延在する対向する縁部間で壁の外周の周りに(X)度広がる第1セクションを有する壁を形成することと、両端部間で長手方向に延在する熱収縮性糸または弾性糸から形成され、かつ壁の外周の周りに(360-X)度広がる第2セクションを有する壁を形成し、熱収縮性糸または弾性糸を、第1セクションの対向する縁部間で途切れることのない糸として周方向にインターレースすることとを含む。
【0014】
本発明のさらなる局面によれば、上記方法は、熱収縮性糸または弾性糸を、第1セクションの長手方向に延在する対向する縁部間で行ったり来たりして蛇行する単一の糸としてインターレースすることをさらに含んでもよい。
【0015】
本発明のさらなる局面によれば、上記方法は、熱収縮性糸または弾性糸を、第1セクションの長手方向に延在する対向する縁部間で行ったり来たりして蛇行する複数の糸としてインターレースすることをさらに含んでもよい。
【0016】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、フープ強度および摩耗に対する耐性を高めるために、周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸を含む第1セクションを形成することをさらに含んでもよい。
【0017】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、被覆保護および強度を高めるための長手方向に延在する縦糸マルチフィラメント糸、ならびにフープ強度および摩耗に対する耐性を高めるための周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸の両方を含む第1セクションを形成することをさらに含んでもよい。
【0018】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、全体的に、高められた機械的保護のための6.0グラム/デニール(g/d)以上の強度を有する長手方向に延在する縦糸マルチフィラメント糸、および0.15~0.25mmの間の直径を有する周方向に延在する非熱収縮性の横糸モノフィラメント糸で第1セクションを形成することをさらに含んでもよい。
【0019】
本発明のさらなる局面によれば、上記方法は、スリーブの壁を織ることを含んでもよい。
【0020】
本発明のさらなる局面によれば、上記方法は、スリーブの壁を編むことをさらに含んでもよい。
【0021】
本発明のこれらのおよび他の局面、構成ならびに利点は、現在好ましい実施形態およびベストモードの以下の詳細な説明、添付の請求項、ならびに添付の図面と結び付けて考慮されたとき、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】保護対象となる細長い部材の周りに径方向に拡張された第1状態で示される、本発明の1つの実施形態にしたがって構築された管状スリーブの概略等角図である。
図1B図1Aのスリーブおよび細長い部材の概略端部図である。
図2A】細長い部材の周りに相対的にぴったりとした嵌合で径方向に縮められた第2状態で示される、図1Aの管状スリーブの概略等角図である。
図2B図2Aのスリーブおよび細長い部材の概略端部図である。
図3A】保護対象となる細長い部材の周りに径方向に拡張された第1状態で示される、本発明の別の実施形態にしたがって構築された管状スリーブの等角図である。
図3B】細長い部材の周りに相対的にぴったりとした嵌合で径方向に縮められた第2状態で示される、図3Aの管状スリーブの概略等角図である。
図4A】保護対象となる細長い部材の周りに径方向に拡張された第1状態で示される、本発明のさらに別の実施形態にしたがって構築された管状スリーブの等角図である。
図4B】細長い部材の周りに相対的にぴったりとした嵌合で径方向に縮められた第2状態で示される、図4Aの管状スリーブの概略等角図である。
図5A】保護対象となる細長い部材の周りに径方向に拡張された第1状態で示される、本発明のさらに別の実施形態にしたがって構築された管状スリーブの等角図である。
図5B】細長い部材の周りに相対的にぴったりとした嵌合で径方向に縮められた第2状態で示される、図5Aの管状スリーブの概略等角図である。
図6A】本開示のスリーブの収縮可能部分を構築するための収縮性糸の代替的な実施形態を示す図である。
図6B】本開示のスリーブの収縮可能部分を構築するための収縮性糸の別の代替的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
現在好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、図1Aは、本発明の1つの局面にしたがって構築される周方向に連続的な壁12を有する、以下スリーブ10と呼ばれるテキスタイルスリーブの概略図を示す。周方向に連続的な壁は、「開放した」壁とは対照的に、長手方向に延在する自由端部を有しないような「閉鎖した」壁と呼ばれることもある。スリーブ10は、管、ワイヤ、シースに収容されたワイヤ、または束ねられたワイヤハーネスなどの、その中に収容される細長い部材14を経路決めし、たとえば例示であって限定ではなく、摩耗、および汚染、瓦礫等の侵入などの環境的な影響に対する暴露から保護するために用いられる。壁12は、両開放端部20,22間で長手方向中心軸18に沿って延在する中央キャビティ16を画定する。細長い部材14は、キャビティ16に配置され収容される。壁12は、中心軸18に対して概ね平行の関係で長手方向に延在する縦糸24と、壁12の周りに横糸方向(weft-wise)または緯糸方向(fill direction)に周方向にかつ中心軸18に対して概ね横方向に延在する緯糸(fill yarns)とも呼ばれる横糸(weft yarns)26とで、本発明の1つの局面にしたがって織られ、または代替法においては編まれ得る。壁12の緯糸26は、非熱収縮性糸26、および熱収縮性糸26’または代替法では弾性糸26”の両方として提供される。非熱収縮性糸26は、壁12に対して所望の保護特性を提供する。一方、熱収縮性糸26’または弾性糸26”は、熱収縮されていないまたは弾性的に伸ばされた場合には伸張された「織られたままもしくは編まれたままの」第1状態(図1A図1B)の間に、細長い部材14の周りに容易にかつすぐに導入される能力、および、次にそこへの熱の印加を介して収縮されてまたは弾性的に伸張された場合には弛緩されて熱収縮された糸26’または弾性糸26”の長さを低減することによって、壁12が径方向に縮められた第2状態(図2A図2B)へ直径方向に収縮し縮んで、壁12に細長い部材14の周りへのぴったりとしたまたは相対的にぴったりとした嵌合をもたらす能力を、壁12に提供する。
【0024】
壁12は、非熱収縮性糸26から形成された横糸方向の糸または緯糸26とともに織られた非熱収縮性かつ非弾性の縦糸24を含む第1セクション28と、熱収縮性糸26’または弾性糸26”から形成された横糸方向の糸または緯糸を含む第2セクション30とを有する。第1セクション28は、両端部20,22間で長手方向に延在し、長手方向に延在する対向する縁部32,34間で壁12の外周の周りに(X)度広がる。第2セクション30は、両端部20,22間で長手方向に延在し、壁12の外周の周りに(360-X)度広がる。第2セクション30、およびその熱収縮性糸26’または弾性糸26”は、第1セクション28の対向する縁部32,34間で途切れることのない糸として連続的に延在する。熱収縮性糸26’もしくは弾性糸26”は、第2セクション30の全体を形成する単一の糸として提供されてもよく、または熱収縮性糸26’もしくは弾性糸26”は、第2セクション30を形成する複数の分離した個々の糸として提供されてもよい。熱収縮性糸26’または弾性糸26”は、靴紐状またはコルセット紐状の態様で、対向する縁部32,34間で行ったり来たりして曲がりくねるように蛇行する。
【0025】
図1A図1Bに示されるように、第2セクション30の熱収縮性の横糸26’または弾性の横糸26”が熱収縮されていない状態または伸張状態にあるとき、初めに作られたように、スリーブ壁12は、スリーブ10に導入されることとなる細長い部材14の直径Dよりも十分に大きい拡張された第1直径D1を有する。このように、スリーブ10は、保護対象となる細長い部材14の上かつ周りに容易に配置されることができる。その後、細長い部材14の周りの所望の位置に配置されたとき、熱が熱収縮性の横糸26’にすぐに印加されることにより、糸26’が所定の長さに収縮し、壁12を拡張された第1直径D1から第1直径D1よりも小さい縮められた第2直径D2(図2A図2B)まで縮める。代替法では、横糸が弾性糸の横糸26”として提供される場合、糸26”を伸張するために加えられる力が解放され得、そうすると弾性糸26”の長さが減少することより、壁12を拡張された第1直径D1から第1直径D1よりも小さい縮められた第2直径D2(図2A図2B)まで周方向に縮める。壁12の収縮は、熱収縮性糸26’の収縮または弾性糸26”の緩和された張力に応じて、対向する縁部32,34を互いに向かって引くことによって生じることが理解されるべきである。このように、糸26’を熱収縮する際または弾性糸26”からの張力の解放の際、壁12は、細長い部材14の外面とぴったりとした密接嵌合の関係へ持ち込まれることができる。これにより、アセンブリに占められる空間の外囲を最小化し、所望の場合には、壁12は、細長い部材14とのぴったりとした当接へ収縮されてスリーブ10と細長い部材14との間の滑動の可能性を低減する。壁の表面の一部のみが熱収縮性26’または弾性糸26”を含むことによって、熱収縮性糸26’または弾性糸26”に関する費用が、壁の外周の全体の周りに延在する熱収縮性糸または弾性糸を有するスリーブと比較して低減されることが認識されるべきである。さらに、対向する縁部32,34間で途切れないように延在する熱収縮性糸26’または弾性糸26”によれば、細長い部材14の周りにスリーブ10を固定するために、二次的な留め具は必要とされない。
【0026】
図3A(縮められる前)および図3B(縮められた後)には、スリーブ110の別の実施形態が示される。100の係数によってオフセットされた上記で用いられたものと同じ参照番号が、同様の構成を示すために用いられる。スリーブ110は、縦糸24および緯糸26について上述された糸と同じ種類の糸として提供され得る、縦糸124および緯糸126を含む、周方向に連続的な織られた壁112を有する。しかしながら、緯糸126が熱収縮性糸として提供されるよりはむしろ、1以上であるが縦糸の全体よりも少ないような、選択された数の縦糸が熱収縮性糸124’または弾性糸124”として提供されてもよい。横糸挿入された延在する縦糸124’,124”を熱収縮または弛緩する際、壁112が径方向かつ周方向に縮むように、熱収縮性糸124’または弾性糸124”が、縦糸として織られ、横糸方向(横糸挿入)に沿って所定の位置に逸らされまたは挿入され、アンカー縦糸の周りに束ねられる。用途に応じて、概ね正弦曲線の態様で壁112の全体長さに沿って連続的に挿入されるように図3Aおよび図3Bに示される横糸方向に沿った所定の位置に、かつ、たとえば約15~90度の間の範囲の外周の周りの所定の弧の角度(360-X)で挿入される選択数の縦糸124’,124”を有する壁112を収縮可能であることによって、すべて熱収縮性の横糸を含むスリーブと比較して、熱収縮またはそうでなければスリーブ110の収縮能力を提供するために、実質的により熱収縮性の低い糸が要求されることが認識されるべきである。
【0027】
図4Aおよび図4Bには、スリーブ210の別の実施形態が示される。200の係数によってオフセットされた上記で用いられたのと同じ参照番号が、同様の構成を示すために用いられる。スリーブ210は、スリーブ110に類似し、したがって縦糸224および緯糸226を含む周方向に連続的な織られた壁212を有する。さらに、1以上であるが縦糸の全体よりも少ないような、選択された数の縦糸が熱収縮性糸224’または弾性糸224”として提供されてもよい。熱収縮性糸224’または弾性糸224”は、縦糸として織られ、横糸方向(横糸挿入)に沿って所定の位置に逸らされまたは挿入され、アンカー縦糸の周りに束ねられる。スリーブ110とは対照的に、熱収縮性糸224’または弾性糸224”は、選択位置に途切れ途切れに挿入されるように示される、横糸方向に沿った所定の位置に、逸らされるまたは挿入される。選択位置は、熱収縮性糸224’または弾性糸224”の直線長さ(straight length)SLによって互いに軸方向に離間される。したがって、直線長さSLセクションの存在が与えられた場合、スリーブ210の収縮および機能のために、熱収縮性糸224’または弾性糸224”はあまり要求されない。所望の割合およびスリーブ壁212の収縮の力を提供するために必要とされるだけ、途切れ途切れに挿入されるセクションが提供されてもよいこと、およびさらに、途切れ途切れに挿入されるセクションが互いに直線長さセクションSLを介して任意の好適な長さに離間されてもよいことが認識されるべきである。
【0028】
図5Aおよび図5Bには、スリーブ310の別の実施形態が示される。300の係数によってオフセットされた上記で用いられたのと同じ参照番号が、同様の構成を示すために用いられる。スリーブ310は、スリーブ10に類似し、したがって縦糸324および緯糸336を含む周方向に連続的な織られた壁312を有する。壁312は、非熱収縮性かつ非弾性の横糸方向の糸もしくは緯糸326とともに織られた非熱収縮性または非弾性の縦糸324を含む第1セクション328と、熱収縮性糸326’または弾性糸326”から形成された横糸方向の糸もしくは緯糸を含む第2セクション330とを有する。第1セクション328は、両端部320,322間で長手方向に延在し、壁312の外周の周りに(X)度広がる。第2セクション330は、両端部320,322間で長手方向に延在し、壁312の外周の周りに(360-X)度広がる。熱収縮性糸326’または弾性糸326”を含むことに加え、第1セクション328の対向する縁部332,334間の途切れることのない糸として連続的に延在するように織られ得る第2セクション330は、第1セクション328に提供されるような非熱収縮性かつ非弾性の縦糸324をさらに含んでもよい。このように、壁312を縮ませる際、追加された保護が第2セクション330の縦糸324を介して提供される。縦糸324は、他の方法でなくされることとなり得る隙間を埋めて覆う。縦糸の熱収縮性糸326’または弾性糸326”は、第1セクション328を織るのに用いられたのと同じパターンなど、任意の所望のパターンで縦糸324とともに織られ得るが、これは例示であって限定ではない。
【0029】
本願において、上述された実施形態について、熱収縮性糸または弾性糸26’,26”,124’,124”,224’,224”,326’,326”に生じる弧の角度は、壁12,112,212,312の所望の量の径方向の収縮を提供するように制御され得ることが考えられる。所望の量の収縮は、保護されている細長い部材の種類に依存し得る。たとえば、たとえばポリアミド燃料ラインなどの細長い部材がより硬い部材である場合、径方向の収縮の量は、ゴムホースなどのより弾性の高い細長い部材についてのそれよりも小さくされ得る。前者において、弧の角度(360-X)は約15~30度の間であり得る一方、後者において、弧の角度(360-X)は約45~90度の間であり得る。これは上述のスリーブ10にも当てはまることが認識されるべきである。
【0030】
非熱収縮性糸または非弾性糸24,26,124,126,224,226,324,326は、モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントを含む任意の好適な糸として提供され得る。縦糸フィラメント24,124,224,324を、約6.3グラム/デニール(g/d)の強度を有するPETテクスチャードヤーンなどからなる高強度マルチフィラメントとして提供すること、および横糸フィラメント26,126,226,326を、約0.22mmの直径を有するPETなどからなるモノフィラメントとして提供することが、摩耗に対する優れた機械的保護を提供するとともに、製造可能性を高めることがわかっている。しかしながら、非熱収縮性糸または非弾性糸24,26,124,126,224,226,324,326は、特に用途が機械的保護をあまり必要とせず、より高い聴覚的および/または電磁的干渉保護を必要とする場合においては、6g/d未満の強度を有して提供されてもよいことが認識されるべきである。
【0031】
さらに、本願においては、熱収縮性糸26’,124’,224’,326’のために用いられる糸の種類が、単に熱的に収縮可能なポリエチレン(PE)モノフィラメント糸として提供されてもよいことが考えられる。しかしながら、低融点熱可融性糸(low melt, heat-fusible yarn)を有する熱収縮性糸26’,124’,224’,326’を巻き付けることによって、スリーブ10,110,210,310の所定の長さへの切断の間および使用の間などにおいて、端部ほつれが大幅に低減され得ることが発見されている。1つの実施例によれば、巻き付けられた熱収縮性糸26’,124’,224’,326’は、たとえば約0.20~0.40mmの間の直径を有するポリエチレン(PE)などのポリマー材料の熱収縮性モノフィラメント36(図6Aおよび図6B)として提供されてもよい。たとえば、サンプルは0.38mmの直径を有して作られた。さらに、糸26’,124’,224’,326’は、モノフィラメント36の周りに螺旋状に供給される単一の低融点熱可融性糸38として図6Aに示される、および互いに反対の螺旋方向にモノフィラメント36の周りに螺旋状に供給される一対の低融点熱可融性糸38として図6Bに示される、それとともに供給されるまたは撚り合わされる少なくとも1つの低融点熱可融性糸38を含む。低融点熱可融性糸38は、熱収縮性モノフィラメント36よりも低い融点を有し、熱収縮性モノフィラメント36を収縮させることなく、または熱収縮性モノフィラメント36を実質的に収縮させることなく、低融点熱可融性糸38が少なくとも部分的に融解されることを可能にする。さらに、低融点熱可融性糸38は、供給された糸に対して大幅に低減された直径を有するすべての実施形態において提供され、一般に約0.05~0.10mmの範囲内の直径を有して提供される。このように、低融点熱可融性糸38のために用いられる材料の量が最小化されることにより、スリーブ10,110,210,310の費用を低減すると同時に、きれいな、実質的に端部ほつれのない切断端部20,22;120,122;220,222;320,322を得る能力を高める。
【0032】
用途の必要に応じて、壁12,112,212,312は、長さ、幅、および直径を含む任意の好適な大きさを有して構築され得る。さらに、糸24,26,124、126,224,226,324,326は、織物の技術において理解されるように、各縦糸および緯糸24,26,124、126,224,226,324,326が互いの上および下に交互になるように波打つ平織(plain weave)パターンなどの、任意の所望の織パターンを用いて織られ得る。しかしながら、本願では、例示であって限定ではないが、織物の分野において理解される、綾織(twill)、バスケット織(basket)、繻子織(satin)、または朱子織(sateen)など、他の織パターンが考慮される。さらに、糸24,26,124、126,226,324,326は、任意の所望の編パターンを用いて編まれてもよい。
【0033】
本発明の多くの修正および変形が上記の教示に照らして可能である。したがって、本発明は、特定的に説明された以外の方法で実行され得ること、および本発明の範囲は最終的に許可された請求項によって規定されることが理解されるべきである。すべての請求項のおよびすべての実施形態のすべての構成は、そのようか組み合わせが互いに矛盾しない限り、互いに組み合わされることが可能であることが理解される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B