IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ライフスタイル株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 25/00 20060101AFI20220728BHJP
   F25D 17/08 20060101ALI20220728BHJP
   F25D 11/02 20060101ALI20220728BHJP
   F25D 23/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
F25D25/00 D
F25D17/08 307
F25D11/02 J
F25D23/02 303L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019002776
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2020112301
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】燕 鵬
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215069(JP,A)
【文献】特開平09-256717(JP,A)
【文献】特開平08-141180(JP,A)
【文献】実開平06-056430(JP,U)
【文献】特開2008-075972(JP,A)
【文献】実開平02-116680(JP,U)
【文献】実開昭59-158980(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105890255(CN,A)
【文献】中国実用新案第204268794(CN,U)
【文献】中国実用新案第202995528(CN,U)
【文献】特開平11-139082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00-25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と、
前記貯蔵室内に配された回転部材支持部と、
前記回転部材支持部から突出した一対の軸受と、
一対の前記軸受の間に回転自在に配される回転部材と、
前記回転部材の両端から外方に突出し、一対の前記軸受の軸孔に内側から係合する一対のヒンジ軸と、
前記軸受から外方に斜めに突出し、前記ヒンジ軸を内面に沿って前記軸孔まで案内するガイド片と、
前記回転部材から突出する屈曲片と、
を有し、
前記屈曲片の先端の外方に前記ヒンジ軸が突出し、
前記屈曲片において、前記回転部材と前記ヒンジ軸の間にくびれ部が形成されている、
冷蔵庫。
【請求項2】
貯蔵室と、
前記貯蔵室内に配された回転部材支持部と、
前記回転部材支持部から突出した一対の軸受と、
一対の前記軸受の間に回転自在に配される回転部材と、
前記回転部材の両端から外方に突出し、一対の前記軸受の軸孔に内側から係合する一対のヒンジ軸と、
前記軸受から外方に斜めに突出し、前記ヒンジ軸を内面に沿って前記軸孔まで案内するガイド片と、
を有し、
前記ヒンジ軸は断面十字状であって4つの突部が90°毎に形成され、
前記ガイド片の内面に一つの前記突部が接触する、
冷蔵庫。
【請求項3】
前記回転部材支持部は、前記貯蔵室に配された棚板であり、
前記棚板の下方には容器が配され、
前記回転部材は、前記容器の前方を覆うカバーであり、
前記棚板の前端部から左右一対の前記軸受が前方に突出し、
前記回転部材の左右両側の上端から突出した左右一対の前記ヒンジ軸は、左右一対の前記軸受に内側から回転自在に係合している、
請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記棚板の下方にチルド室が形成され、
前記容器は、前記チルド室に収納されている引き出し式の容器であり、
前記カバーは、前記チルド室の前壁を形成する、
請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記ガイド片の前記内面には先端から前記軸孔まで延びるガイド溝が形成されている、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記回転部材を前記回転部材支持部に平行に配し、かつ、一対の前記軸受の間に一対の前記ヒンジ軸を配すると、前記ヒンジ軸の先端より前記ガイド片の先端が外側に位置する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記ガイド溝の溝壁の延長線上に前記軸孔が形成されている、
請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記ガイド片は、一対の前記軸受の少なくとも一方に形成されている、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の冷蔵室にはチルド室が設けられ、このチルド室の前部にはカバーが設けられている。カバーの上端部には、左右一対のヒンジ軸が突出し、チルド室の天井面から突出した左右一対の軸受けに係合して、カバーが開閉自在となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-215069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような左右一対のヒンジ軸を有するカバーにおいて、左右一対のヒンジ軸を左右一対の軸受けに取り付ける作業が難しく、上手く取り付けできないと部品が破損するという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、一対の軸受けに一対のヒンジ軸を簡単に取り付けることができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、貯蔵室と、前記貯蔵室内に配された回転部材支持部と、前記回転部材支持部から突出した一対の軸受と、一対の前記軸受の間に回転自在に配される回転部材と、前記回転部材の両端から外方に突出し、一対の前記軸受の軸孔に内側から係合する一対のヒンジ軸と、前記軸受から外方に斜めに突出し、前記ヒンジ軸を内面に沿って前記軸孔まで案内するガイド片と、前記回転部材から突出する屈曲片と、を有し、前記屈曲片の先端の外方に前記ヒンジ軸が突出し、前記屈曲片において、前記回転部材と前記ヒンジ軸の間にくびれ部が形成されている、冷蔵庫である。他の本発明の実施形態は、貯蔵室と、前記貯蔵室内に配された回転部材支持部と、前記回転部材支持部から突出した一対の軸受と、一対の前記軸受の間に回転自在に配される回転部材と、前記回転部材の両端から外方に突出し、一対の前記軸受の軸孔に内側から係合する一対のヒンジ軸と、前記軸受から外方に斜めに突出し、前記ヒンジ軸を内面に沿って前記軸孔まで案内するガイド片と、を有し、前記ヒンジ軸は断面十字状であって4つの突部が90°毎に形成され、前記ガイド片の内面に一つの前記突部が接触する、冷蔵庫である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態を示す冷蔵庫の正面図。
図2】冷蔵庫の縦断面図。
図3】チルド室の正面図。
図4】上容器の斜視図。
図5】上容器の右側面図。
図6】上容器の左側面図。
図7】チルド室の天井面とカバーの斜視図及び左軸受の拡大図。
図8】カバーの左側の縦断面図。
図9】カバーの右側の縦断面図。
図10】カバーの右側の外側から見た斜視図。
図11】右軸受の内側から見た斜視図。
図12】右軸受に右ヒンジ軸を取り付けた状態の後方外側から見た斜視図。
図13】ガイド片に右ヒンジ軸を当接した状態の縦断面図。
図14】右ヒンジ軸をガイド片に沿って移動させている状態の縦断面図。
図15】右ヒンジ軸が右軸受けの軸孔に係合した状態の縦断面図。
図16】右ヒンジ軸をガイド片に沿って移動させている状態の右側の拡大図。
図17】右ヒンジ軸が右軸受の軸孔に係合した状態の右側から見た図。
図18】(a)は右軸受の第1の変更例、(b)は右軸孔の第2の変更例。
図19】上容器を収納している状態のチルド室の縦断面図。
図20】上容器を少し引き出した状態のチルド室の縦断面図。
図21】上容器をさらに引き出した状態のチルド室の縦断面図。
図22】上容器を最も引き出した状態のチルド室の縦断面図。
図23】カバーを取り付けて接触子が規制片の上にある状態のチルド室の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の冷蔵庫10について図1図23に基づいて説明する。
【0009】
(1)冷蔵庫10の構造
冷蔵庫10の構造について図1図3に基づいて説明する。図1は冷蔵庫10の正面図、図2は冷蔵庫10の側面から見た縦断面図である。
【0010】
図1図2に示すように、冷蔵庫10のキャビネット12は断熱箱体であって、内箱と外箱とより形成され、その間に断熱材が充填されている。このキャビネット12内は、上から順番に冷蔵室14、野菜室16、小型冷凍室18及び冷凍室20を有し、小型冷凍室18の横には製氷室21が設けられている。野菜室16と小型冷凍室18及び製氷室21の間には水平な断熱仕切体36が設けられている。冷蔵室14と野菜室16とは水平な仕切体38によって仕切られている。冷蔵室14の前面には、観音開き式の左扉14a、右扉14bが設けられ、野菜室16には引出し式の野菜扉16aが設けられ、小型冷凍室18、冷凍室20及び製氷室21にもそれぞれ引出し式の扉18a、20a、21aが設けられている。
【0011】
冷蔵室14内には、複数のガラス製の棚40が水平に設けられ、下部にはチルド室42が設けられている。冷蔵室14の左右扉14a、14bの後面には複数のドアポケット44が設けられている。チルド室42については、後から詳しく説明する。野菜室16には、引出し式の野菜容器46が設けられている。
【0012】
冷蔵室14の後面下部から野菜室16の後面において、冷蔵用蒸発器(以下、「Rエバ」という)28が設けられ、その下方には冷蔵用送風機(以下、「Rファン」という)30が設けられている。Rエバ28とRファン30とは、エバカバー48で囲まれた冷却室であるRエバ室29に配されている。
【0013】
Rエバ室29から上方に冷気通路50が冷蔵室14の背面に沿って延び、この冷気通路50には複数の吹き出し口52が設けられ、この吹き出し口52から冷蔵室14に冷気が吹き出される。また、チルド室42の背面にも吹き出し口54が設けられ、冷気がチルド室42内部に吹き出される。
【0014】
小型冷凍室18、製氷室21の後面から冷凍室20の後面にかけてのFエバ室31には、冷凍用蒸発器(以下、「Fエバ」という)32が設けられ、その上方には冷凍用送風機(以下、「Fファン」という)34が設けられている。Fエバ32の下方には、不図示の除霜ヒータが設けられている。
【0015】
キャビネット12の後面底部には、機械室22が設けられ、冷凍サイクルを構成する圧縮機24などが載置されている。この機械室22の後面上部には、制御板26が設けられている。
【0016】
(2)チルド室42
次に、チルド室42について図2図19に基づいて説明する。図2図3に示すように、チルド室42は、冷蔵室14の底部右側に配され、その左側には水タンク56が設けられている。この水タンク56は、製氷室21内部に設けられている製氷装置の製氷皿に製氷用の水を供給するためにある。
【0017】
チルド室42は、図3に示すように、天井面58、左側面60、右側面62、底面64、後面から構成され、前方が開口している。チルド室42内部には、合成樹脂製の上容器72と下容器74が上下2段に配されている。左側面60は、水タンク56とを仕切る部材とを兼ね、右側面62は冷蔵室14の右側面も兼ねている。図7に示すように、天井面58は水平に配され、合成樹脂製の枠部材68と、枠部材68の内部に配された長方形のガラス板70とを有する。天井面58の前端部には回転自在にカバー90が設けられ、上容器72の前上方を覆っている。
【0018】
上容器72は、図4に示しように、左側面76、右側面78、前面80、後面82、底面84とより構成された皿状であって、上方が開口している。上容器72の前面80の中央下部には手掛け部86が切り欠かれている。
【0019】
上容器72の左側面76の前部には、図4図5に示すように、左膨出部92が上方に延設されている。左膨出部92の外周面には、前後方向にガイド部94が突条に設けられている。このガイド部94は、前方ほど下方になるように設けられている。ガイド部94の後部は前部よりも傾斜が緩やかになりほぼ水平になった後、左膨出部92と左側面76のフランジ部96と連続している。ガイド部94の前端部には段差片98が連続して設けられている。この段差片98は、ガイド部94の傾斜よりも前方にいくほど下方に急激に傾斜し、前面80の高さの位置でほぼ水平になり、前面80の上端部と連続している。図4図5に示すように、左膨出部92の上縁部の前部であって、ガイド部94の上方には規制片100が突条に設けられている。規制片100は、ガイド部94の傾斜した部分と同じ長さを有し、かつ、平行に配されている。また、規制片100の前端部は下方に屈曲し屈曲部102が形成されている。屈曲部102の下端部と、ガイド部94の前端部及び段差片98との間には空間104が設けられている。上容器72の左側面76におけるガイド部94の下方には、前後方向にレール突条部106が設けられている。
【0020】
図6に示すように、上容器72の右側面78の前部にも右膨出部108が設けられ、左側のガイド部94と左右対称に右側のガイド部110が設けられている。ガイド部110の後端部からフランジ部112が設けられ、前端部から段差部114が設けられている。また、右側の規制片116は、左側の規制片100より短く、段差部114の上方とガイド部110の前部の上方のみ設けられている。また、右側の規制片116の前端部には、屈曲部118が設けられている。右側面78にも、前後方向にレール突条部120が設けられている。
【0021】
チルド室42の左側面60と右側面62にはそれぞれ前後方向に左右一対のレール61,61が設けられ、これらに沿って左右一対のレール突条部106,120が前後方向に移動する。これによって、上容器72がチルド室42内部を前後方向に移動自在、及び、引き出し可能となっている。
【0022】
下容器74は、平面矩形の皿状であり、チルド室42の底面64に載置され、前方に引き出し可能である。また、下容器74の前面中央上部には手掛け部88が切り欠かれている。
【0023】
(3)カバー90
次に、カバー90について図3図8図16に基づいて説明する。カバー90は、長方形であって、図3に示すように、チルド室42の天井面(冷蔵室14の最下段の棚板)58と同じ幅を有し、その高さは天井面58から上容器72の前面80の上端部までである。
【0024】
まず、図7に示すように、チルド室42の天井面58の前端部には、カバー90を吊り下げるための左右一対の軸受132,134が前方に突出している。
【0025】
カバー90は、図7図9に示すように、長方形の枠部材122とガラス板124とが一体成形され、ガラス板124の外縁部が枠部材122の内縁部によって覆われている。ガラス板124は、JIS R3206:2003に規定された強化ガラスを用いる。なお、このJIS規格を含めた広い意味での強化ガラスを用いてもよい。また、ガラス板124は無色透明であって、上容器72に収納された食品を透視可能にある。
【0026】
図3に示すように、カバー90の枠部材122の上端部は左右両方共に内方に凹み、この凹み部136,138が形成されている。左側の凹み部136からは左ヒンジ軸140が外方に水平に突出し、左側の軸受132の軸孔に係合する。右側の凹み部138からは右ヒンジ軸142が水平に突出し、右側の軸受134の軸孔に係合する。カバー90の左側の凹み部136には、天井面58の左軸受132が嵌め込まれ、右側の凹み部138には、右軸受134が嵌め込まれる。これにより、左軸受132と右軸受134がカバー90から突出しない。以下、右ヒンジ軸142が、右側の軸受134に係合する構造について詳しく説明する。
【0027】
右側の凹み部138の縦面144には、図9図10に示すように、逆U字型の貫通孔146が形成されている。この貫通孔146は、縦面144の前部下端から上方に直線状に延び、その後に縦面144の上端部で円弧状に屈曲し、その後に上端部から縦面144の下方に直線状に延びている。貫通孔146に囲まれてた部分は、下端部のみが縦面144と繋がっている屈曲片148を形成している。図9図10に示すように、屈曲片148の外面には上記で説明した右ヒンジ軸142が突出している。この右ヒンジ軸142は、断面十字状であり、図10図17に示すように、4つの突部150が90°毎に設けられた形状となっている。図13図15に示すように、屈曲片148の縦断面形状は、縦面144と連続している部分から次第に厚みが大きくなり、その後に再び薄くなっている。すなわち、屈曲片148の下部は、くびれ部152が形成されている。このくびれ部152の位置は、軸挿入方向においてガイド片156とラップしない位置、すなわち、ガイド片156よりも下方に形成されている。これにより、屈曲片148をより屈曲変形させ易い。
【0028】
右軸受134は、図11に示すように、その中心に軸孔154が貫通し、図12図15に示すように、右ヒンジ軸142が係合する。軸孔154の下端から外方に板状のガイド片156が突出している。また、図15に示すように、ガイド片の下端が右軸受134、凹み部138、枠部材122の右短縁よりも寸法B‘だけ内側に位置している。図15に示すように、ガイド片156は、垂直面に対し5°~40°好ましくは20°~30°の傾斜角を有し、言い換えると、図15に示すように、右ヒンジ軸142の回転軸に対する傾斜角θ=40°~10°、好ましくは20°~30°傾斜している。この範囲にするのは、θ°が小さいと挿入に必要な力が大きくなり、逆に、θ°が大きいと、ガイド片156の長さが長くなるからである。図11に示すように、ガイド片156の内面には、ガイド溝158が、ガイド片156の下端から軸孔154に向かって形成されている。このガイド溝158は、軸孔154に行くほど狭くなり、かつ、ガイド溝158の溝壁160の延長線A上に軸孔154が存在している(図11参照)。カバー90を天井面58に平行に配し、かつ、左軸受132と右軸受134との間に左ヒンジ軸140と右ヒンジ軸142を配した場合に、右ヒンジ軸142の先端が、図15に示すように、ガイド片156の下端よりも寸法Bだけ内側に位置する。このようにすることで、左ヒンジ軸140を左軸受132に係合させた後、右ヒンジ軸142を右軸受134に係合させる際に、屈曲片148を人為的に撓ませなくとも、ガイド片156を移動させることにより自然に撓み、右ヒンジ軸142が軸孔154に係合し、その挿入性が良い。
【0029】
図7図9に示すように、枠部材122の左右両側部から三角形の回転腕部128,128が後方に突出している。回転腕部128の三角形の先端部であって、かつ、その内側から円柱型の接触子130が突出している。
【0030】
(4)上容器72の収納、引き出し状態
チルド室42における上容器72の収納、引き出し状態について図3図19図22を参照して説明する。
【0031】
第1に、冷蔵室14の扉14a、14bが閉じられ、チルド室42に上容器72と下容器74が収納されている状態について説明する。図3図19に示すように、上容器72の前面80と、下容器74の前面が上下方向に並んで位置し、上容器72の前上方の空間は、カバー90によって覆われている。このときカバー90から後方に突出した回転腕部128の接触子130は、規制片100の前端にある屈曲部102の内側(後側)に位置している。冷蔵室14の扉14a、14bの後面に設けられたドアポケット44は、チルド室42の前方に位置し、ドアポケット44の後面は、カバー90、上容器72の前面80、下容器74の前面の前方に位置している。上容器72の右側も同様である。
【0032】
第2に、ユーザが、扉14a、14bを開くと、チルド室42が、図3のように現れる。そこで、ユーザは、上容器72の手掛け部86に手を掛けて上容器72のみを前方に引き出す。図20に示すように、上容器72のレール突条部106,120は、レール61,61に沿って前方に移動する。また、規制片100も前方に移動するため、屈曲部102の内側にあった接触子130が規制片100の下側に沿って相対的に後方に移動し、それと共にカバー90がヒンジ軸126を中心に上方に回転して開き始める。
【0033】
第3に、ユーザが、続けて上容器72を前方に引き出すと、図21に示すように、カバー90の接触子130は、規制片100の下部に沿ってさらに後方に移動する。このときに規制片100は後方にいくほど上方(すなわち、前方にいくほど下方)になっているため、接触子130が上に動き、カバー90がより開く。なお、接触子130は、規制片100とガイド部94の間を移動する場合には、上容器72の引き出し方によってはガイド部94の上面を滑ったり、規制片100の下面を滑ったりする。すなわち、接触子130が存在する部分は、規制片100とガイド部94の間の空間である。
【0034】
第4に、ユーザが、最も上容器72を前方に引き出すと、図22に示すように、カバー90の接触子130は、規制片100の後端部を過ぎるため、規制片100の位置からガイド部94の上に落下する。そしてカバー90の接触子130は、ガイド部94の上を後方に移動する。さらに、接触子130がガイド部94の後端部からフランジ部96に達する前に、上容器72は引き出しができない状態にするためレール突条部120の後端部には突部が設けられている。
【0035】
また、上容器72の右側面78も、ガイド部110、規制片116によって右側の接触子130が左側と同様の動きをする。但し、規制片116の後端部が、左側の規制片100よりも短いため、その殆どが右側のガイド部110上を移動する。
【0036】
ユーザが上容器72を収納する場合には、接触子130は上記とは逆の前方に移動する。
【0037】
これにより、カバー90をスムーズに開けたり閉めたりしながら、上容器72を引き出したり収納できる。
【0038】
(5)カバー90を取り付けるときの状態
冷蔵庫10を組み立てる作業員が、カバー90を取り付ける作業について説明する。
【0039】
第1に、作業員がカバー90の左ヒンジ軸140を、チルド室42の天井面58の左軸受132の軸孔に係合させる。
【0040】
第2に、作業員は、図13に示すように、右ヒンジ軸142を、ガイド片156の内面にあるガイド溝158の下端に当接する。
【0041】
第3に、作業員は、図14に示すように、ガイド溝158に沿って右ヒンジ軸142を軸孔154の方向に移動させる。この場合に、くびれ部152が屈曲片148に形成されているため、ガイド片156に沿って屈曲片148が屈曲し、また、図14図16に示すように、右ヒンジ軸142の上方に位置する突部150と接触しているため、スムーズに移動できる。このくびれ部152が、軸挿入方向においてガイド片156とラップしない位置、すなわち、ガイド片156よりも下方に形成されているので、屈曲片148をより屈曲変形させ易くなっている。
【0042】
第4に、右ヒンジ軸142をガイド片156の内面に沿ってさらに押し込むと、図15図17に示すように、右ヒンジ軸142が軸孔154に係合する。これにより、図3に示すように、左右一対の左ヒンジ軸140と右ヒンジ軸142が、左右一対の左軸受132と右軸受134に係合することができる。なお、右ヒンジ軸142の先端が、図15に示すように、ガイド片156の下端よりも寸法Bだけ内側に位置しているので、屈曲片148を人為的に撓ませなくとも、ガイド片156を移動させることにより自然に撓み、右ヒンジ軸142が軸孔154に係合し、その挿入性が良い。
【0043】
第5に、作業員は、図23に示すように、カバー90を左ヒンジ軸140、右ヒンジ軸142を中心に最も上方に回転させた状態とする。この場合において、接触子130は、規制片100の上に載置された状態となる。
【0044】
第6に、作業員が、上容器72を前方に引き出すと、接触子130が規制片100の上に位置していても、接触子130が規制片100の後端部からガイド部94の上に落下し、図22に示すように、接触子130が通常状態の位置に移動する。
【0045】
第7に、作業員は、上容器72を再び後方に移動させると、カバー90が正常な状態で閉じる。
【0046】
(6)効果
本実施形態によれば、左ヒンジ軸140を左軸受132に係合させた後、右ヒンジ軸142をガイド片156に沿って移動させるだけで、右ヒンジ軸142が簡単に右軸受134の軸孔154に係合できる。
【0047】
また、右ヒンジ軸142がガイド片156のガイド溝158に沿って移動する場合に、屈曲片148がくびれ部152で屈曲するため、簡単にガイド片156に沿って右ヒンジ軸142を移動させることができる。
【0048】
また、右ヒンジ軸142の突部150を、ガイド溝158に当接しつつ移動するときに、屈曲片148を確実に屈曲させて移動させることができる。
【0049】
また、ガイド溝158の溝壁160の延長線A上に軸孔154があるため、ガイド溝158に沿って右ヒンジ軸142を移動させるだけで軸孔154に確実に案内できる。
【0050】
また、ガイド溝158が軸孔154に近づくほど狭くなっているため、より確実に右ヒンジ軸142を軸孔154に案内できる。
【0051】
(7)変更例
上記実施形態では、ガイド片156の内面に設けられたガイド溝158は、図11に示すように、軸孔154に行くほど狭くなっていたが、これに代えてガイド溝158の幅を図18(a)に示すように、一定にしてもよい。但し、その場合であっても溝壁160の延長線C上に軸孔154が位置するようにする。また、図18(b)に示すように、ガイド片156の内面に設けられたガイド溝158の中央の延長線D上に、軸孔154が位置するようにしてもよい。
また、上記実施形態では右側の右軸受134にガイド片156を設けたが、これに代えて左軸受132にガイド片156を設け、左ヒンジ軸140に屈曲片148を形成してもよい。さらに、左右両側にガイド片156と屈曲片148を形成してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、チルド室42のカバー90について説明したが、これ以外の貯蔵室に設けられたヒンジ式のカバーに本実施形態の右ヒンジ軸142と右軸受134の構造を適用してもよい。
【0053】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10・・・冷蔵庫、14・・・冷蔵室、42・・・チルド室、58・・・天井面、90・・・カバー、132・・・左軸受、134・・・右軸受、140・・・左ヒンジ軸、142・・・右ヒンジ軸、146・・・貫通孔、148・・・屈曲片、150・・・突部、152・・・くびれ部、154・・・軸孔、156・・・ガイド片、158・・・ガイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23