(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】動作補助装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/50 20060101AFI20220728BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20220728BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20220728BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
A61F2/50
A61H3/00 B
A61H1/02 N
B25J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2019003405
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】507418692
【氏名又は名称】トヨフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇作
(72)【発明者】
【氏名】尾形 大樹
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-209443(JP,A)
【文献】特開2019-963(JP,A)
【文献】特開2015-188758(JP,A)
【文献】特開2018-199204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0161188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/50
B25J 11/00
A61H 3/00
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の上体を起こす動作を補助する動作補助装置であって、
第1回転軸を有し、当該第1回転軸を中心に回転可能な第1プーリと、
前記第1回転軸に設けられ、前記第1プーリの回転角度に応じた力を前記第1プーリに付勢する弾性体と、
前記第1プーリに第1端が連結される索状体と、
前記索状体の第2端が連結され、第2回転軸を中心に回転可能な第2プーリであって、前記第1プーリの外径より大きい外径を有する第2プーリと、
前記第2プーリに設けられ、前記第2プーリと共に前記第2回転軸を中心に回転する小ギアと、
前記小ギアより歯数が多く、前記小ギアと嵌合可能な大ギアであって、第3回転軸を中心に回転可能な大ギアと、を有し、前記使用者の側面に装着される補助ユニットと、
前記第3回転軸に連結され、前記使用者の大腿部に取付可能な下肢ロッドと、
前記大ギアの回転を前記下肢ロッドに伝達する、又は、前記下肢ロッドの回転を前記大ギアに伝達する伝達機構と、
を備え、
前記索状体は、前記第1プーリ及び前記第2プーリの外周面に巻回されており、
前記弾性体の付勢力により前記第1プーリが回転して前記索状体を前記第1プーリに巻回し、かつ前記索状体を前記第2プーリからほどくことで前記第2プーリが回転し、前記第2プーリの回転により前記小ギア及び前記大ギアが回転し、前記伝達機構を介して前記大ギアが前記下肢ロッドを回転させる
ことを特徴とする動作補助装置。
【請求項2】
前記伝達機構は、前記下肢ロッドと前記大ギアとの相対角度に応じて、前記下肢ロッドが前記大ギアを回転させない第1態様と、前記下肢ロッドが前記大ギアに回転方向の力を付与して前記大ギアを回転させる第2態様と、を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の動作補助装置。
【請求項3】
前記使用者の前側における前記第1態様と前記第2態様との切り替え角度は、前記使用者の後ろ側における前記第1態様と前記第2態様との切り替え角度以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の動作補助装置。
【請求項4】
前記大ギアは、前記下肢ロッドが連結されている側の面に、前記第3回転軸を中心とする扇状の窪みを有し、
前記窪みは、前記下肢ロッドの回転方向において、前記下肢ロッドの前記大ギアとの連結部よりも大きく形成されており、
前記下肢ロッドは、前記窪みの内部を前記窪みの底部の平面に沿って回動可能であり、
前記下肢ロッドと前記窪みの側壁とが当接すると、前記大ギアの回転が前記下肢ロッドに伝達可能になり、前記下肢ロッドの回転が前記大ギアに伝達可能になる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の動作補助装置。
【請求項5】
前記下肢ロッドは、前記大ギアとの対向面にピンを備え、
前記大ギアは、前記ピンが挿通される長孔を備え、
前記ピンは前記下肢ロッドの回動に応じて前記長孔内を移動可能であり、
前記ピンと前記長孔の端部とが当接すると、前記大ギアの回転が前記下肢ロッドに伝達可能になり、前記下肢ロッドの回転が前記大ギアに伝達可能になる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の動作補助装置。
【請求項6】
前記下肢ロッドと前記大ギアを連結する第2索状体をさらに備え、
前記第2索状体と前記大ギアとの固定部と、前記第2索状体と前記下肢ロッドとの固定部との距離が所定以上離間する方向に前記下肢ロッドが回動すると、前記大ギアの回転が前記下肢ロッドに伝達可能になり、前記下肢ロッドの回転が前記大ギアに伝達可能になる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の動作補助装置。
【請求項7】
前記補助ユニットは、前記使用者の左側に装着される第1補助ユニットと、前記使用者の右側に装着される第2補助ユニットと、を有し、
前記使用者の胸部に固定される胸部固定部材と、
前記使用者の腰部に固定される腰部固定部材と、
前記第1補助ユニットと、前記第2補助ユニットと、前記胸部固定部材と、前記腰部固定部材とを連結する連結部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の動作補助装置。
【請求項8】
前記第3回転軸を中心に回転可能に設けられた取付部材を備え、
前記腰部固定部材は、前記取付部材に第4回転軸を中心に回転可能に設けられており、
前記第3回転軸と前記第4回転軸は異なる位置に設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の動作補助装置。
【請求項9】
前記弾性体は、板状部材を面方向に巻きこんで渦巻き状にしたゼンマイばねであり、
前記弾性体は、前記第1回転軸に設けられており、
前記第1プーリの外周は先端に向かって次第に細くなる形状であり、
前記索状体は、前記第1プーリの根元から先端に向かうように、前記第1プーリの外周面に巻回されている
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の動作補助装置。
【請求項10】
前記第1プーリの外周には螺旋状の第1溝が設けられており、
前記第2プーリの外周には螺旋状の第2溝が設けられており、
前記索状体は前記第1溝及び前記第2溝に収容され、
前記索状体は前記第1プーリ及び前記第2プーリを側面から見たときに前記第1回転軸及び前記第2回転軸と略直交する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の動作補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人体の大腿部の側方側に配置された圧縮コイルスプリングと、人体の上体を支持する上体支持フレームとの間にワイヤが設けられており、上体支持フレームがベース部に対して傾動されることで圧縮コイルスプリングを圧縮させて上体支持フレームに人体を引き起こす方向への付勢力を伝達する前傾姿勢サポート装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の前傾姿勢サポート装置においては、索状体が直接弾性体に連結されており、発揮される補助力が弾性体の弾性力に依存するため、補助力の大きさが限定されてしまうという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたもので、大きな補助力を発生させて、使用者が直立状態へ戻るのを補助することができる動作補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る動作補助装置は、例えば、使用者の上体を起こす動作を補助する動作補助装置であって、第1回転軸を有し、当該第1回転軸を中心に回転可能な第1プーリと、前記第1回転軸に設けられ、前記第1プーリの回転角度に応じた力を前記第1プーリに付勢する弾性体と、前記第1プーリに第1端が連結される索状体と、前記索状体の第2端が連結され、第2回転軸を中心に回転可能な第2プーリであって、前記第1プーリの外径より大きい外径を有する第2プーリと、前記第2プーリに設けられ、前記第2プーリと共に前記第2回転軸を中心に回転する小ギアと、前記小ギアより歯数が多く、前記小ギアと嵌合可能な大ギアであって、第3回転軸を中心に回転可能な大ギアと、を有し、前記使用者の側面に装着される補助ユニットと、前記第3回転軸に連結され、前記使用者の大腿部に取付可能な下肢ロッドと、前記大ギアの回転を前記下肢ロッドに伝達する、又は、前記下肢ロッドの回転を前記大ギアに伝達する伝達機構と、を備え、前記索状体は、前記第1プーリ及び前記第2プーリの外周面に巻回されており、前記弾性体の付勢力により前記第1プーリが回転して前記索状体を前記第1プーリに巻回し、かつ前記索状体を前記第2プーリからほどくことで前記第2プーリが回転し、前記第2プーリの回転により前記小ギア及び前記大ギアが回転し、前記伝達機構を介して前記大ギアが前記下肢ロッドを回転させることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る動作補助装置によれば、第1プーリに第1端が連結され、第2プーリに第2端が連結された索状体は、第1プーリ及び第2プーリの外周面に巻回されており、第1プーリの回転軸である第1回転軸には、第1プーリの回転角度に応じた力を第1プーリに付勢する弾性体が設けられている。弾性体の付勢力により第1プーリが回転して索状体を第1プーリに巻回し、かつ索状体を前記第2プーリからほどくことで第2プーリが回転する。第2プーリの回転により、第2プーリと共に第2回転軸を中心に回転する小ギア及び小ギアと嵌合可能な大ギアが回転し、伝達機構を介して大ギアが下肢ロッドを回転させる。これにより、電源を用いることなく、簡易な構成で、使用者が直立状態へ戻るのを補助することができる。また、第2プーリの外径は第1プーリの外径より大きく、大ギアの歯数は小ギアの歯数より多い。これにより、弾性体の付勢力を2段階で増幅し、大きな補助力を発生させることができる。すなわち、弾性体と下肢ロッドとが索状体で直接連結されている構成に比べて、弾性体の弾性力の影響が少なく、トルクを大きくしたりトルクを略一定にしたりすることができる。
【0008】
ここで、前記伝達機構は、前記下肢ロッドと前記大ギアとの相対角度に応じて、前記下肢ロッドが前記大ギアを回転させない第1態様と、前記下肢ロッドが前記大ギアに回転方向の力を付与して前記大ギアを回転させる第2態様と、を切り替えてもよい。これにより、動作の補助の要否を切り替える操作を行う必要がなく、使用者は自身の動作を連続的に行うことができる。また、使用者の直立状態及び直立状態から前後所定角度の範囲(歩行時)には下肢ロッドが空隙内で空転するため、使用者はスムーズに歩行することができる。
【0009】
ここで、前記使用者の前側における前記第1態様と前記第2態様との切り替え角度は、前記使用者の後ろ側における前記第1態様と前記第2態様との切り替え角度以上であってもよい。これにより、第1態様と第2態様との切り替え角度を歩行動作に沿った大きさとすることができる。
【0010】
ここで、前記大ギアは、前記下肢ロッドが連結されている側の面に、前記第3回転軸を中心とする扇状の窪みを有し、前記窪みは、前記下肢ロッドの回転方向において、前記下肢ロッドの前記大ギアとの連結部よりも大きく形成されており、前記下肢ロッドは、前記窪みの内部を前記窪みの底部の平面に沿って回動可能であり、前記下肢ロッドと前記窪みの側壁とが当接すると、前記大ギアの回転が前記下肢ロッドに伝達可能になり、前記下肢ロッドの回転が前記大ギアに伝達可能になる。
【0011】
ここで、前記下肢ロッドは、前記大ギアとの対向面にピンを備え、前記大ギアは、前記ピンが挿通される長孔を備え、前記ピンは前記下肢ロッドの回動に応じて前記長孔内を移動可能であり、前記ピンと前記長孔の端部とが当接すると、前記大ギアの回転が前記下肢ロッドに伝達可能になり、前記下肢ロッドの回転が前記大ギアに伝達可能になる。
【0012】
ここで、前記下肢ロッドと前記大ギアを連結する第2索状体をさらに備え、前記第2索状体と前記大ギアとの固定部と、前記第2索状体と前記下肢ロッドとの固定部との距離が所定以上離間する方向に前記下肢ロッドが回動すると、前記大ギアの回転が前記下肢ロッドに伝達可能になり、前記下肢ロッドの回転が前記大ギアに伝達可能になる。
【0013】
ここで、前記補助ユニットは、前記使用者の左側に装着される第1補助ユニットと、前記使用者の右側に装着される第2補助ユニットと、を有し、前記使用者の胸部に固定される胸部固定部材と、前記使用者の腰部に固定される腰部固定部材と、前記第1補助ユニットと、前記第2補助ユニットと、前記胸部固定部材と、前記腰部固定部材とを連結する連結部と、をさらに備えてもよい。これにより、補助動作時の補助ユニットのねじれを抑制し、下肢ロッドを滑らかに回動させることができる。
【0014】
ここで、前記第3回転軸を中心に回転可能に設けられた取付部材を備え、前記腰部固定部材は、前記取付部材に第4回転軸を中心に回転可能に設けられており、前記第3回転軸と前記第4回転軸は異なる位置に設けられていてもよい。これにより、補助ユニット及び腰部固定部材の一方の回転運動が他方に直接伝達されることがなく、独立して回動可能である。補助ユニットは大腿部の角度に応じて回動するのに対し、腰部固定部材は腰部の角度に応じて回動する。人体においては、大腿部の回転軸と腰部の回転軸とで高さが異なる。したがって、仮に補助ユニットの回転軸と腰部固定部材の回転軸とを略同じ高さに構成すると、人体の前屈動作に追従することができず、腰部固定部材がねじれる原因となる。これに対し、胸部固定部材及び腰部固定部材の回転軸の高さを異ならせることにより、人体の前屈動作に追従可能となる。
【0015】
ここで、前記弾性体は、板状部材を面方向に巻きこんで渦巻き状にしたゼンマイばねであり、前記弾性体は、前記第1回転軸に設けられており、前記第1プーリの外周は先端に向かって次第に細くなる形状であり、前記索状体は、前記第1プーリの根元から先端に向かうように、前記第1プーリの外周面に巻回されていてもよい。第1プーリの外周に巻き付けられている索状体が引き出されるにつれて弾性体の弾性力は大きくなる一方、索状体が巻き付いている第1プーリの外径が大きくなる。したがって、索状体を第1プーリからほどくときに要する力(見かけのばね定数)を一定に保つことができる。
【0016】
ここで、前記第1プーリの外周には螺旋状の第1溝が設けられており、前記第2プーリの外周には螺旋状の第2溝が設けられており、前記索状体は前記第1溝及び前記第2溝に収容され、前記索状体は前記第1プーリ及び前記第2プーリを側面から見たときに前記第1回転軸及び前記第2回転軸と略直交していてもよい。これにより、索状体が斜めに引き出されることを防ぎ、索状体の摺動及び第1プーリ、第2プーリの回転を滑らかにし、付勢力のロスを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大きな補助力を発生させて、使用者が直立状態へ戻るのを補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】補助ユニット20の概略を示す左側面図である。
【
図6】パワーユニット40の概略を示す斜視図である。
【
図7】パワーユニット40の概略を示す斜視図であるる。
【
図9】使用者が歩行中に脚が後方に位置するときの動作補助装置1(補助ユニット20)の様子を示す図である。
【
図10】使用者が腰をやや屈曲させているときの動作補助装置1(補助ユニット20)の様子を示す図である。
【
図11】使用者が腰をさらに屈曲させているときの動作補助装置1(補助ユニット20)の様子を示す図である。
【
図12】第1プーリ42、第2プーリ44及び索状体43の様子を示す図である。
【
図13】第1プーリ42、第2プーリ44及び索状体43の様子を示す図である。
【
図16】第2の実施形態に係る動作補助装置2が有するパワーユニット40Aの概略を示す縦断面図である。
【
図17】第3の実施形態に係る動作補助装置3が有するパワーユニット40Bの概略を示す縦断面図である。
【
図18】第3の実施形態に係る動作補助装置3が有するパワーユニット40Bの概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る動作補助装置は、索状体を用いて使用者の上体を起こす動作(腰を伸ばす動作)を補助するものである。
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、本発明にかかるの第1の実施形態にかかる動作補助装置1について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は動作補助装置1の斜視図であり、
図2は動作補助装置1の正面図であり、
図3は動作補助装置1の右側面図であり、
図4は動作補助装置1の背面図である。動作補助装置1は、使用者の両側面から背中を覆うように装着される。使用者の正面及び動作補助装置1の正面は、同方向である。以下、使用者の後から前に向かう方向を+X方向とし、使用者の右から左に向かう方向を+Y方向とし、使用者の下から上に向かう方向を+Z方向とする。
【0022】
図1~
図4に示すように、動作補助装置1は、主として、使用者の右側面に装着される補助ユニット10と、使用者の左側面に装着される補助ユニット20と、補助ユニット10、20を使用者に装着させるための部材である装着部30と、下肢ロッド50と、を有する。
【0023】
装着部30は、主として、背当て部31と、胸当て部32と、連結部33a、33bと、腰部固定部材34と、パッド35と、を有する。
【0024】
背当て部31は、装着時に使用者の背中に当接する平板である。背当て部31は、使用者の背中に当接する面、すなわち動作補助装置1の正面側の面が、弾性力のある柔らかい素材で形成されている。したがって、装着時にも背当て部31が背中に食い込むことがなく、快適である。なお、背当て部31の形状は図示する形態に限られない。
【0025】
胸当て部32(本発明の胸部固定部材に相当)は、装着時において使用者の胸部に固定される部材である。本実施の形態では、胸当て部32は、使用者の動きに追従して変形できるように、弾性力のある柔らかい素材で形成された1対の帯状部材を有する。胸当て部32の正面側の両端には連結部(図示せず)が設けられており、連結部により1対の帯状部材を連結することで胸当て部32が筒状に保持されるようになっている。ベルト(図示せず)等の調整機構により胸当て部32の内周長は調節可能であり、胸当て部32を使用者の胸部に当接させることができる。
【0026】
連結部33a、33bは、左右対称であり、補助ユニット10、20と、背当て部31と、胸当て部32とを互いに連結する部材である。連結部33a、33bは、中空丸棒等の棒材を湾曲させて形成する。連結部33a、33bは剛体であり、補助ユニット10、20、背当て部31及び胸当て部32の相対位置関係を固定する。特に、背当て部31及び連結部33a、33bが剛体であるため、補助ユニット10と補助ユニット20とは、背当て部31及び連結部33a、33bにより連結されて固定される。したがって、補助ユニット10と補助ユニット20とが互いにねじれるような力が発生しても、補助ユニット10、20のねじれを抑制し、補助ユニット10、20の補助力を使用者に確実に伝達することができる。
【0027】
連結部33aは、背当て部31の背面側に設けられている棒状の部材であり、背当て部31及び1対の連結部33bを固定する。連結部33aは、上方側に凸状に湾曲している。連結部33bは、背当て部31の上下に伸び出ている部材であり、下端にはそれぞれ補助ユニット10、20の上端が連結されている。
【0028】
1対の連結部33bの上端には、それぞれ胸当て部32が連結されている。胸当て部32は、動作補助装置1の正面から見て左右に開くようになっている。使用者は、胸当て部32を左右に開いた状態で動作補助装置1を背負うように背中に沿わせた後、胸当て部32を体の前で閉じることにより、胸当て部32の内側面を体に当接させる。
【0029】
腰部固定部材34は、1本の帯状の部材であり、補助ユニット10、20に連結されている。腰部固定部材34により左右の補助ユニット10、20が使用者の腰部付近に保持される。腰部固定部材34の正面側の両端には、例えば面ファスナが固着されており、面ファスナの結合力により腰部固定部材34が筒状に保持されるようになっている。面ファスナの結合面積を変えることで腰部固定部材34の内周長は調節可能であり、腰部固定部材34を使用者の腰部に当接させることができる。腰部固定部材34は、柔らかい部材であり、使用者の動きに追従して変形できるため、使用者が動きやすいようになっている。
【0030】
補助ユニット10、20、胸当て部32、腰部固定部材34が連結部33により連結され、補助ユニット10、20が胸当て部32及び腰部固定部材34により使用者に固定されるため、索状体の引張力により補助ユニット10、20にねじれの力が発生しても、補助ユニット10、20のねじれを抑制し、大腿部の回動運動に応じて下肢ロッド50が滑らかに回動することができる。
【0031】
なお、補助ユニット10、20を使用者の側面に装着する形態はこれに限られない。例えば、腰部固定部材を固い材料で形成し、変形しない腰部固定部材を用いて補助ユニット10、20を使用者の側面に装着してもよい。ただし、補助ユニット10、20のねじれを防止し、補助力を使用者に確実に伝達するためには、胸当て部32及び腰部固定部材34を用いて補助ユニット10、20を使用者の側面に装着することが望ましい。
【0032】
また、装着部30の形態もこれに限られない。例えば、背当て部31と胸当て部32との高さ方向(z方向)の位置が略同じであってもよい。また、背当て部31を無くし、胸当て部32を1本の帯状の部材としてもよい。
【0033】
図5は、補助ユニット20の概略を示す左側面図である。補助ユニット20の左側面には、連結部20aが連結されている。連結部20aは平板状の部材である。補助ユニット20及び連結部20aには回転軸20rが挿通されており、補助ユニット20及び連結部20aは回転軸20rを中心に回転可能である。
【0034】
連結部20aには、平板状の連結部20bが設けられている。連結部20bには、腰部固定部材34が設けられている。連結部20a及び連結部20bには、回転軸20qが挿通されており、連結部20a及び連結部20bは回転軸20qを中心に回転可能である。言い換えれば、腰部固定部材34は、連結部20aに回転軸20qを中心に回転可能に設けられている。
【0035】
補助ユニット20と腰部固定部材34との間に連結部20aが介在していることにより、連結部20aと補助ユニット20との回転軸20rと、連結部20aと腰部固定部材34との回転軸20qとを異なる位置に配置することができる。ここでは、回転軸20qは、回転軸20rに対して+Z軸方向にオフセットしている。そのため、補助ユニット20及び腰部固定部材34の一方の回転運動が他方に直接伝達されることがなく、独立して回動可能である。また、補助ユニット20は大腿部の角度に応じて回動するのに対し、腰部固定部材34は腰部の角度に応じて回動する。人体においては、大腿部の回転軸と腰部の回転軸とでZ軸方向の高さが異なる。したがって、仮に補助ユニット20の回転軸と腰部固定部材34の回転軸とを略同じ高さに配置すると、人体の前屈動作に追従することができず、腰部固定部材34がねじれる原因となる。それに対し、回転軸20rと回転軸20qとを異なる位置にすることで、回転軸20rの位置を使用者の大腿部の回転位置と略一致させ、回転軸20qの位置を使用者の腰部の回転位置と略一致させて、動作補助装置1が人体の前屈動作により追従しやすくなる。
【0036】
図1~4の説明に戻る。パッド35は、使用者の大腿部の前側を覆う湾曲形状を有する部材である。パッド35は、下肢ロッド50に設けられる。使用者が、パッド35を使用者の大腿部前側に当接させることで、大腿部の動作が補助ユニット10、20に伝達される。
【0037】
下肢ロッド50は、使用者の大腿部に略沿って設けられ、パッド35を介して使用者の大腿部に取付可能である。下肢ロッド50は、回転軸46r(
図6、7等参照)に連結され、回転軸46rを中心に回転可能である。
【0038】
下肢ロッド50は、下肢ロッド連結部50aを有する。下肢ロッド連結部50aの一端は、回転軸46rに連結されている。下肢ロッド連結部50aの他端には、ヒンジ50bが設けられている。ヒンジ50bを介して、下肢ロッド連結部50aにパッド支持体50cが連結される。ヒンジ50bは、下肢ロッド連結部50aの長手方向と略直交する方向に軸を有する。したがって、パッド支持体50cの先端に連結されているパッド35の+X軸方向の動きが下肢ロッド連結部50aに伝達される。また、パッド35の+Y軸方向の動きは、ヒンジ50bの回動に変換され、下肢ロッド連結部50aの回動を行わない。
【0039】
次に、補助ユニット10、20について説明する。補助ユニット10と補助ユニット20とは左右対称であるため、以下補助ユニット20を用いて説明する。
【0040】
図6、7は、補助ユニット20が有するパワーユニット40の概略を示す斜視図である。
図6では、-Z軸方向から+Z軸方向に向かって見たときの様子を示す。また、
図6では、第1カバー40aが省略されている。
図7は、
図6と同方向からみたときの斜視図であって、第1カバー40aを取り付けた状態を示す。また、
図6、7では、下肢ロッド50の一部を図示している。
【0041】
パワーユニット40は、主として、第1カバー40aと、第2カバー40bと、弾性体ユニット41と、第1プーリ42と、索状体43(
図11、12等参照)と、第2プーリ44と、小ギア45と、大ギア46と、を有する。
【0042】
第1カバー40a及び第2カバー40bは、それぞれがパワーユニット40の+Y側及びY側の外縁をなす略平板であり、互いに隙間を空けて対向している。第1カバー40a及び第2カバー40bには、複数の円柱状の柱状部40cの両端がそれぞれ連結されており、柱状部40cにより第1カバー40a及び第2カバー40b間の隙間が保持されている。第1カバー40a及び第2カバー40bの間には、弾性体ユニット41、第1プーリ42、索状体43、第2プーリ44、小ギア45、大ギア46、及び下肢ロッド連結部50aの一部が設けられている。
【0043】
弾性体ユニット41は、ケース41aと、ケース41a内部に保持された弾性体(図示省略)と、を有する。弾性体は、板状部材を面方向に巻きこんで渦巻き状にしたゼンマイばねである。なお、本実施の形態では、弾性体としてゼンマイばねを使用したが、弾性体の形態はこれに限られない。
【0044】
第1プーリ42は、主として、略円錐台形状のプーリ本体42aと、回転軸42rと、を有する。第1プーリ42は、回転軸42rを中心に、回転軸42rと共に回転可能である。プーリ本体42aの外周は、先端に向かって次第に細くなる形状である。プーリ本体42aの外周には、索状体43の径に対応する螺旋状の溝42bが設けられている。
【0045】
第1プーリ42は、土台42cを介して弾性体ユニット41のケース41aに設けられている。回転軸42rは、図示しないが、ケース41a内部に突出している。弾性体の一端は回転軸42rに設けられており、他端はケース41aに設けられている。したがって、第1プーリ42が回転すると、弾性体は、第1プーリ42の回転角度に応じた力を第1プーリ42に付勢する。
【0046】
図7に示すように、第1プーリ42の回転軸41rには、第1カバー40aの外側(+Y側)に、ラチェット歯車41tが設けられている。また、第1カバー40aには、ラチェット歯車41tの歯と噛み合うラチェット受け部41uが配設されている。ラチェット歯車41t及び回転軸41rは、ラチェット受け部41uにより反時計回りの回転が規制されている。ラチェット歯車41t及び回転軸41rにより、弾性体は初期状態(下肢ロッド50により大ギア46に負荷がかかっていない状態)においても一定の回転数分だけ巻き締められており、その巻き締め状態が保持されている。これにより、弾性体の付勢力の強弱が調整可能である。
【0047】
第2プーリ44は、主として、外周に索状体43が巻回される略円板形状のプーリ部44aと、プーリ部44aの-Y側を向く面に、プーリ部44aと同心円上に設けられている薄い円柱状の凸部44i(
図15等参照)と、を有する。プーリ部44aの外周には、索状体43の径に対応する螺旋状の溝44bが設けられている。プーリ部44a及び凸部44iの略中央には、回転軸44rが挿通される貫通孔44gが設けられている。第2プーリ44は、回転軸44rを中心に回転可能である。
【0048】
索状体43は、第1端が第1プーリ42に設けられ、第2端が第2プーリ44に設けられ、溝42b及び溝44bに収容される。索状体43の配置等については後に詳述する。
【0049】
小ギア45は、第2プーリ44に設けられ、略中央には回転軸44rが挿通される貫通孔45g(
図9、10等参照)が設けられている。小ギア45は、第2プーリ44と共に、回転軸44rを中心に回転する。
【0050】
大ギア46は、小ギア45より歯数の多いギアである。大ギア46の略中央には回転軸46rが挿通される貫通孔46g(
図8参照)が設けられており、大ギア46は回転軸46rを中心に回転可能である。大ギア46は、小ギア45と嵌合可能であり、小ギア45の回転に伴い大ギア46が回転する。
【0051】
第1カバー40aには、固定板40dがねじ止めされている。固定板40dには、大ギア固定ピン40pが設けられている。
図6に示すように、大ギア固定ピン40pは、第1カバー40aに形成された孔(図示省略)を介して、第2カバー40bへ向かう方向(-y側)に突設されている。
【0052】
大ギア46のスポーク46sには、ピン受け部46qが設けられている。ピン受け部46qは、略円柱形状の凹部であり、Y方向に沿って延設されている。ピン受け部46qには、大ギア固定ピン40pが嵌合可能である。これにより、+Y方向から見て大ギア46が半時計回りに回動する動きを規制することができる。
【0053】
図8は、大ギア46の概略を示す図であり、(a)は+Y方向から見た平面図、(b)は斜視図、(c)、(d)は側面図であるである。大ギア46の-Y側の面(下肢ロッド50が連結されている側の面)には、回転軸46rを中心とする略扇状の窪み46bが設けられている。窪み46bは、側壁46c、46dを有する。
【0054】
図6、7の説明に戻る。下肢ロッド連結部50aは、窪み46bの深さより薄い細長い平板状の部材であり、窪み46bの内部を窪み46bの底部の平面に沿って回動可能である。下肢ロッド連結部50aと側壁46cとが当接すると、下肢ロッド50の回動が大ギア46に伝達可能になり、大ギア46の回動が下肢ロッド50に伝達可能になる。
【0055】
図9は、使用者が歩行中に脚が後方に位置するときの動作補助装置1(補助ユニット20)の様子を示す図である。
図10は、使用者が腰をやや屈曲させているときの動作補助装置1(補助ユニット20)の様子を示す図である。
図11は、使用者が腰をさらに屈曲させているときの動作補助装置1(補助ユニット20)の様子を示す図である。なお、
図9~11では、索状体43及び第2プーリ44の図示を省略している。
【0056】
窪み46bは、内部で下肢ロッド連結部50aが回転できるように下肢ロッド連結部50aよりも大きく形成されている。
図9に示す状態では、下肢ロッド連結部50aが最も-X側に位置し、下肢ロッド連結部50aが側壁46dに当接している。
【0057】
大ギア46には、+Y方向へ向かって突出するピン46pが設けられている。また、下肢ロッド連結部50aには、+Y方向へ向かって突出するピン50pが設けられている。ピン50pとピン46pとの間には、下肢ロッド付勢部材50d(例えば、引張コイルばね)が設けられており、下肢ロッド連結部50aが側壁46dに当接する方向(パッド35が使用者の脚に押圧される方向)に下肢ロッド連結部50aを付勢する。なお、
図9に示す状態では、大ギア固定ピン40pがピン受け部46q(
図9、10では図示省略)に嵌合しているため、+Y方向から見て大ギア46が反時計回りに回転しない。
【0058】
側壁46c、46dの間では、下肢ロッド連結部50aは窪み46bの内部で空転可能である。
図9に示す状態から使用者が腰の屈曲を開始すると、下肢ロッド連結部50aが窪み46bの内部において時計回り(
図9矢印参照)に空転する。下肢ロッド連結部50aが所定角度以上回動すると、
図10に示すように、下肢ロッド連結部50aが側壁46cに当接する。
【0059】
図10に示す状態から、使用者が腰をさらに屈曲し、下肢ロッド連結部50aがさらに前方(
図10における時計回り、
図10矢印参照)回転すると、下肢ロッド連結部50aは、側壁46cを押圧し、大ギア46に回転方向の力を付与して大ギア46を回転させる。その結果、大ギア46が時計回りに回転して(
図10太矢印参照)、大ギア固定ピン40pがピン受け部46qから外れ、
図11に示す状態になる。すなわち、窪み46b、側壁46c及び下肢ロッド連結部50aからなる伝達機構は、下肢ロッド連結部50aが大ギア46を回転させない第1態様と、下肢ロッド連結部50aが大ギア46に回転方向の力を付与して大ギア46を回転させる第2態様と、を切り替え可能である。
【0060】
なお、第1態様と第2態様との切り替え角度及び下肢ロッド50の空転角度は側壁46c、46dによって定められる。
図9に示すように、側壁46cは、使用者の前側における第1態様と第2態様との切り替え角度を定める。また、側壁46c、46dは、使用者の前側及び後ろ側における下肢ロッド50の空転角度を定める。本実施の形態では、中心線と側壁46cとのなす角度θ1及び中心線と側壁46dとのなす角度θ2は、略20度である。ただし、角度θ1、θ2は図示した形態に限られず、角度θ1は角度θ2以上であればよい。角度θ1を角度θ2以上とすることで、第1態様と第2態様との切り替え角度を歩行動作に沿った大きさとすることができる。
【0061】
図11の説明に戻る。大ギア46の回転に応じて、大ギア46に嵌合する小ギア45が回転する。すると、小ギア45と共に第2プーリ44が回転する。索状体43は、第2プーリ44の回転に応じて第1プーリ42から引き出され、第1プーリ42を回転させる。
【0062】
ここで、第2プーリ44の回転によって第1プーリ42を回転させる構成について説明する。
図12、13は、第1プーリ42、第2プーリ44及び索状体43の様子を示す図であり、
図12は索状体43が主に第1プーリ42に巻回されている状態を示し、
図13は索状体43が第1プーリ42及び第2プーリ44に巻回されている状態を示す。
【0063】
索状体43は、例えばワイヤロープであり、第1プーリ42に第1端が連結され、第2プーリ44に第2端が連結されている。なお、本実施の形態では、ワイヤロープを索状体43として用いたが、紐、鋼線等を索状体43として用いてもよい。索状体43の両端には、索状体43の中腹より径の大きい係止部材(図示は省略)が連結されている。
【0064】
図14は、第1プーリ42の概略を示す図であり、(a)は+Y方向から見た平面図、(b)は斜視図、(c)、(d)は側面図である。第1プーリ42には、索状体取付部42dが設けられている。索状体取付部42dは、主として、長孔42eと、円孔42fとを有する。係止部材を円孔42fに嵌め込んでカシメ等により固定することで、索状体43の一端が第1プーリ42に係止される。索状体43は、端部が索状体取付部42dに固定され、そのまま溝42bに収容されてプーリ本体42aの外周に螺旋状に巻回される。
【0065】
図15は、第2プーリ44の概略を示す図であり、(a)は+Y方向から見た平面図、(b)は斜視図、(c)、(d)は側面図である。第2プーリ44には扇形形状の窪み44cが設けられており、窪み44cには索状体取付部44dが設けられている。索状体取付部44dは、主として、長孔44eと、円孔44fとを有する。係止部材を円孔44fに嵌め込んでカシメ等により固定することで、索状体43の一端が第2プーリ44に係止される。索状体43は、端部が索状体取付部44dに固定され、そのまま溝44bに収容されてプーリ部44aの外周に螺旋状に巻回される。
【0066】
図12、13の説明に戻る。
図12は、第2プーリ44が回転されていないため、索状体43は、第1プーリ42の略全体にわたって巻回され、第2プーリ44にはほとんど巻回されていない(第2プーリ44における索状体43の巻回は略1/4周程度)。そして、第2プーリ44が回転することで、索状体43は、
図13に示すように、第1プーリ42からほどかれて第2プーリ44に巻回される。
【0067】
溝42b、44bは、それぞれ螺旋状であり、第1プーリ42及び第2プーリ44を側面から見たときに索状体43が回転軸42r及び回転軸44rと直交するように配置されている。したがって、索状体43の第1プーリ42及び第2プーリ44の間において索状体43が斜めに引き出されることを防ぎ、索状体43の摺動を滑らかにし、力の伝達におけるロスを抑制することができる。
【0068】
第2プーリ44が回転することで、索状体43が第1プーリ42を回転させるが、第1プーリ42には弾性体が設けられているため、第2プーリ44及び第1プーリ42の回転は弾性体の付勢力に抗して行われる。第1プーリ42の回転量が多くなればなるほど弾性体の弾性力は大きくなるが、それに伴って索状体43が巻回されている第1プーリ42のプーリ本体42aの外径が大きくなる。したがって、索状体43を第1プーリ42からほどく(第1プーリ42から引き出す)ときに要する力(見かけのばね定数)を略一定に保つことができる。
【0069】
第2プーリ44の外径は第1プーリ42の外径より大きいため、弾性体の付勢力が第1プーリ42から第2プーリ44に伝達されることで、第1プーリ42と第2プーリ44との間でトルクが増幅する。また、小ギア45の外径は第2プーリ44の外径より小さく、小ギア45は歯数の多い大ギア46に噛み合っているため、第2プーリ44及び小ギア45と大ギア46との間でトルクが増幅される。したがって、弾性体の付勢力よりも大きな補助力を下肢ロッド50に加えることができる。
【0070】
図9~11の説明に戻る。使用者が腰をかがめる方向に動くと、下肢ロッド50及び大ギア46は、弾性体の付勢力に抗して時計回り(
図9~11の矢印参照)に回転し、大ギア46の回転により小ギア45及び第2プーリ44が弾性体の付勢力に抗して回転する。また、第2プーリ44の回転により索状体43が第1プーリ42から解かれて第2プーリ44に巻回されることで、弾性体の付勢力に抗して第1プーリ42が回転する。
【0071】
使用者が腰を伸ばす方向に動くときには、弾性体は、引き出された索状体43を元の位置に引き込む復元力が働く。つまり、弾性体の付勢力により第1プーリ42が回転して、索状体43をプーリ本体42aに巻回し、かつ索状体43を第2プーリ44からほどくことで、索状体43が第2プーリ44を回転させ、第2プーリ44の回転により小ギア45及び大ギア46がそれぞれ回転することで、下肢ロッド50が元の位置に戻る。
【0072】
本実施の形態によれば、電気等の外部の動力を用いることなく、簡易な構成で、前屈姿勢から起き上がるときの腰の伸展動作を補助することができる。また、弾性体の付勢力を2段階で増幅させることができるため、弾性体の付勢力よりも大きい力で下肢ロッド50を付勢することができる。これにより、弾性体の付勢力よりも大きな補助力を発生させ、使用者の腰を直立状態に戻す動作を効率良く補助することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、所定角度以内で下肢ロッド50が動いている間、例えば使用者が歩行している間は、下肢ロッド50が空転するため、補助力が発生しない。したがって、歩行動作中に使用者の動作を妨げることがない。また、補助の有無は下肢ロッド50と大ギア46との相対角度に応じて切り替わるため、補助力を発生させるか否かについて切り替え操作を行う必要がなく、使い勝手をよくすることができる。
【0074】
<第2の実施の形態>
本発明にかかる動作補助装置の第2の実施形態について、先に説明した実施の形態と異なる部分を中心に説明する。なお、以降の説明において、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付した。
図16は、第2の実施形態に係る動作補助装置2が有するパワーユニット40Aの概略を示す縦断面図であって、(a)はパワーユニット40Aの全体図であり、(b)はパワーユニット40Aの部分拡大図である。
【0075】
大ギア46Aは、回転軸46rを中心に円弧を描いて湾曲する長孔46jを有する。また、下肢ロッド50Aは、長孔46jに嵌合するピン50fを有する。下肢ロッド50Aが回転すると、ピン50fが長孔46j内を移動する。ピン50fが長孔46j内を移動する間は、下肢ロッド50Aが回転しても大ギア46Aは回転せず(第1態様)、動作を補助する力が発生しない。
【0076】
下肢ロッド50Aの回転角度が所定以上になると、ピン50fと長孔46jの端部とが当接する。その結果、ピン50fが長孔46jの端部を押圧し、下肢ロッド50Aが回転すると大ギア46Aも回転する(第2態様)。また、長孔46jの端部がピン50fを押圧し、大ギア46Aが回転すると下肢ロッド50Aも回転する(第2態様)。第1態様と第2態様との切り替え角度及び下肢ロッド50の空転角度は長孔46jの長さによって定められる。本実施の形態では、伝達機構はピン50f及び長孔46jによって実現される。
【0077】
<第3の実施の形態>
本発明にかかる動作補助装置の第3の実施形態について、先に説明した実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
図17、18は、第3の実施形態に係る動作補助装置3が有するパワーユニット40Bの概略を示す縦断面図ある。
図17は、使用者が直立している状態を示し、
図18(a)は歩行動作中の様子を示し、
図18(b)は使用者が腰を曲げたときの様子を示す。
【0078】
動作補助装置3は、下肢ロッド50Bと大ギア46Bとを連結する第2索状体47を備える。下肢ロッド50Bは、第2索状体47が伸長しない範囲内で空転する。したがって、第2索状体47が伸長していない場合は、下肢ロッド50Bが回転しても大ギア46Bは回転せず(第1態様)、動作を補助する力が発生しない。
【0079】
下肢ロッド50Bが前方(
図17、18の右方向)に移動し、第2索状体47と大ギア46Bとの固定部46kと、第2索状体47と下肢ロッド50Bとの固定部50gとの距離が所定以上離間すると、下肢ロッド50Bが第2索状体47を引っ張ることにより大ギア46Bが回転し、大ギア46Bが第2索状体47を引っ張ることにより下肢ロッド50Bが回転する(第2態様)。第1態様と第2態様との切り替え角度及び下肢ロッド50の空転角度は第2索状体47の長さ及び第2索状体47の両端の固定部46k、50g間の距離によって定められる。本実施の形態では、伝達機構は第2索状体47によって実現される。
【0080】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、本発明の技術的思想は、人体の動作を補助する動作補助装置以外にも適用可能である。
【0081】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略平行、略直交とは、厳密に平行、直交の場合には限られない。また、例えば、単に平行、直交等と表現する場合においても、厳密に平行、直交等の場合のみでなく、略平行、略直交等の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、例えばAの近傍であるときに、Aの近くであって、Aを含んでも含まなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0082】
1,2,3:動作補助装置
10、20:補助ユニット
20a、20b:連結部
20q、20r:回転軸
30 :装着部
31 :背当て部
32 :胸当て部
33 :連結部
33a、33b:連結部
34 :腰部固定部材
35 :パッド
40、40A、40B:パワーユニット
40a :第1カバー
40b :第2カバー
40c :柱状部
40d :固定板
40p :大ギア固定ピン
41 :弾性体ユニット
41a :ケース
41r :回転軸
41t :ラチェット歯車
41u :ラチェット受け部
42 :第1プーリ
42a :プーリ本体
42b :溝
42c :土台
42d :索状体取付部
42e :長孔
42f :円孔
42r :回転軸
43 :索状体
44 :第2プーリ
44a :プーリ部
44b :溝
44c :窪み
44d :索状体取付部
44e :長孔
44f :円孔
44g :貫通孔
44i :凸部
44r :回転軸
45 :小ギア
46、46A、46B:大ギア
46b :窪み
46c、46d:側壁
46j :長孔
46k :固定部
46p :ピン
46q :ピン受け部
46r :回転軸
46s :スポーク
47 :第2索状体
50、50A、50B:下肢ロッド
50a :下肢ロッド連結部
50b :ヒンジ
50c :パッド支持体
50d :下肢ロッド付勢部材
50f :ピン
50g :固定部
50p :ピン