(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220728BHJP
H02H 3/22 20060101ALI20220728BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20220728BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220728BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 A
H02H3/22
H02J9/06 120
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2019071515
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-119763(JP,A)
【文献】特開平09-331627(JP,A)
【文献】特開2001-197679(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103066558(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 3/22
H02J 9/06
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統から送られる電力が入力される系統入力部と、
蓄電池を充放電する蓄電回路と、
前記系統入力部または前記蓄電回路の少なくとも一方から供給される電力を負荷に出力する電力出力部と、
前記系統入力部から前記蓄電回路および前記負荷への電力供給が可能な第1状態と、前記系統入力部と前記蓄電回路および前記電力出力部とが遮断され、かつ前記蓄電池から前記負荷への電力供給が可能な第2状態とに切り替え可能な切替装置と、
少なくとも、雷の発生状況が、未発生状態、雷サージの商用電力系統への侵入の危険性を有する初期段階および前記初期段階より雷サージの商用電力系統への侵入の危険性が高い第2段階のいずれであるかを判別する判別回路と、
前記判別回路によって雷の発生状況が前記初期段階と判別されたとき、前記切替装置を前記第1状態とし、かつ前記系統入力部からの電力供給によって前記蓄電池の充電が開始されるように前記蓄電回路を制御し、雷の発生状況が前記第2段階と判別されたとき、前記切替装置を前記第2状態とし、かつ前記蓄電池から前記負荷に電力が供給されるように前記蓄電回路を制御する制御回路とを備えていることを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
雷サージの商用電力系統への侵入の危険性に応じて異なる、前記初期段階および前記第2段階に対応した少なくとも2段階の信号を前記判別回路に出力する雷検知回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記制御回路は、前記判別回路によって雷の発生状況が前記初期段階と判別されたとき、前記蓄電池の電池残量を確認し、電池残量が所定の閾値以下であれば前記蓄電池の充電が開始されるように前記蓄電回路を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記初期段階は、注意段階と、注意段階より雷サージの商用電力系統への侵入の危険性が高い警戒段階と、から構成され、
前記第2段階は、危険段階であって、
前記判別回路は、雷の発生状況が、前記未発生状態、前記注意段階、前記警戒段階、および前記危険段階のいずれであるかを判別し、
前記制御回路は、前記判別回路によって雷の発生状況が前記注意段階と判別されたとき、前記蓄電池の電池残量を確認し、電池残量が所定の閾値以下であれば前記蓄電池の充電が開始され、電池残量が前記所定の閾値を超えていれば充電が行われないように前記蓄電回路を制御し、雷の発生状況が前記警戒段階と判別されたとき、前記蓄電池の電池残量に拘わらずに前記蓄電池の充電が開始されるように前記蓄電回路を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記制御回路は、前記判別回路によって雷の発生状況が前記第2段階と判別されて以降、所定時間以上、雷の発生状況が前記第2段階と判別されなくなったとき、前記切替装置を前記第1状態とすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システム自体と当該蓄電システムに接続された家電製品等の電気機器を雷サージから防護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、商用電力系統から送られる電力は、電源プラグなどを介して電気機器に供給される。従来より、低価格の深夜電力を蓄電池に充電し、電力価格が高い昼間に蓄電池に充電した電力を必要に応じて商用電力と併せて使用することで電気料金の削減を図る蓄電システムがある。このような蓄電システムでは、例えば停電時など、商用電力の供給が見込めない場合において、蓄電池からの電力供給で電気機器を動作させることが可能である。
【0003】
一方で、停電が落雷に起因する場合、雷サージが商用電力系統に侵入し、さらに電源プラグを介して電気機器に侵入することで、これを破損させるおそれがある。また、蓄電システム自体には雷サージ対策がなされていることが一般的だが、想定を超える雷サージが商用電力系統から侵入した場合、蓄電システムそのものが破損し、停電時の蓄電池による電力供給が行えない。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、雷によるサージ電流または電圧を検出する手段と、雷の検出時に電気機器への商用電力の供給を遮断する手段と、電気機器に対して蓄電池からの電力供給に切り替える手段とを備えた蓄電システムが開示されている。落雷が発生したときにおいて、商用電力系統からの電力供給を遮断しているので、雷サージの電気機器および蓄電システムへの侵入を防ぎ、ひいては破損を防ぐことが可能となる。また、商用電力系統からの電力供給を遮断しても、蓄電池からの電力供給によって電気機器への電力を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、蓄電池の電池容量には上限があり、電池容量の大きい蓄電池は非常に高価となることから、家庭用の蓄電池の多くは、経済性の観点から電池容量を小さく抑えられている。この場合、深夜に充電した電力で昼間に必要な電力全ての供給を担うことは困難である。また、上述したように、蓄電池の電力は、夜間に充電し、昼間に消費されているが、例えば、夕方では蓄電池の電力残量は使い切っているなど、時間帯によっては蓄電池の電力残量がほとんど残っていない場合も起こり得る。
【0007】
蓄電池に十分量の電力が充電されていない状況で雷が発生し、雷サージの侵入防止のために商用電力の供給を遮断した場合、蓄電池の電力残量だけでは、商用電力系統からの電力供給遮断時に電気機器への供給電力を十分に確保することができなくなるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、雷サージの侵入による、蓄電システム自体および当該蓄電システムに接続された電気機器の破損を防止し、かつ、商用電力系統からの電力供給遮断時に安定して電力供給を行いうる蓄電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る蓄電システムは、商用電力系統から送られる電力が入力される系統入力部と、蓄電池を充放電する蓄電回路と、前記系統入力部または前記蓄電回路の少なくとも一方から供給される電力を負荷に出力する電力出力部と、前記系統入力部から前記蓄電回路および前記負荷への電力供給が可能な第1状態と、前記系統入力部と前記蓄電回路および前記電力出力部とが遮断され、かつ前記蓄電池から前記負荷への電力供給が可能な第2状態とに切り替え可能な切替装置と、少なくとも、雷の発生状況が、未発生状態、雷サージの商用電力系統への侵入の危険性を有する初期段階および前記初期段階より雷サージの商用電力系統への侵入の危険性が高い第2段階のいずれであるかを判別する判別回路と、前記判別回路によって雷の発生状況が前記初期段階と判別されたとき、前記切替装置を前記第1状態とし、かつ前記系統入力部からの電力供給によって前記蓄電池の充電が開始されるように前記蓄電回路を制御し、雷の発生状況が前記第2段階と判別されたとき、前記切替装置を前記第2状態とし、かつ前記蓄電池から前記負荷に電力が供給されるように前記蓄電回路を制御する制御回路とを備える。
【0010】
上記構成によれば、雷の発生状況が雷サージの商用電力系統への侵入の危険性を有する初期段階と判別されたときに予め蓄電池の充電を行うことにより、雷の発生状況が初期段階より雷サージの商用電力系統への侵入の危険性が高い第2段階であると判別された時点では、既に十分量の電力が蓄電池に充電された状態となっている可能性が高くなる。したがって、雷の発生状況が第2段階と判別されたときに、切替装置が第2状態となることで、雷サージの侵入による蓄電システムおよび当該蓄電システムに接続された電気機器などの負荷の破損を防止することができ、かつ、蓄電池から負荷に安定して電力供給を行いうる。
【0011】
また、上記蓄電システムは、雷サージの商用電力系統への侵入の危険性に応じて異なる、初期段階および第2段階に対応した少なくとも2段階の信号を前記判別回路に出力する雷検知回路をさらに備えていることが好ましい。
【0012】
判別回路は例えば、インターネットから取得した雷情報に基づいて判別を行ってもよい。しかし、停電等の影響によりインターネット回線が不良となっている場合、判別回路が雷情報を取得するのが遅れ、負荷を雷サージから十分に防護することができない。そこで、雷検知回路を蓄電システム内に組み込むことで、インターネット回線の不良時においても、確実かつ迅速に雷情報を取得することができ、雷サージ対策及び系統からの電力供給遮断時の供給電力の確保をより確実に行うことができる。
【0013】
また、上記蓄電システムにおいて、前記制御回路は、前記判別回路によって雷の発生状況が初期段階と判別されたとき、前記蓄電池の電池残量を確認し、電池残量が所定の閾値以下であれば前記蓄電池の充電が開始されるように前記充電回路を制御することが好ましい。
【0014】
前述したように、昼間電力は高価格であるため、電力代削減の観点から考えると、深夜以外の時間帯に蓄電池を充電することは可能な限り避けたい。一方で、落雷によって生じた雷サージが商用電力系統に侵入する危険性を考えると、系統入力部からの電力供給を遮断したときに電力供給を行う蓄電池の電池残量は多い方が好ましい。例えば、雷の発生状況が初期段階であったとき、電池残量に十分余裕があれば、その後、雷の発生状況が第2段階と判別され、系統入力部からの電力供給が遮断された場合でも、蓄電池は電力供給源として十分に機能する。しかし、蓄電池の電池残量が不足している場合、系統入力部からの電力供給を遮断したときにおいて安定した電力供給を行うためには、予め蓄電池の充電をしておく必要がある。
【0015】
そこで、上記構成によれば、雷の発生状況が初期段階と判別された場合に、蓄電池の電池残量が所定の閾値以下のときにのみ充電を行うことで、系統からの電力供給遮断時等に電池残量が不足するのを抑制しつつ、必要以上の出費を回避することができる。
【0016】
また、上記蓄電システムにおいて、前記初期段階は、注意段階と、注意段階より雷サージの商用電力系統への侵入の危険性が高い警戒段階と、から構成され、前記第2段階は、危険段階であって、前記判別回路は、雷の発生状況が、前記未発生状態、前記注意段階、前記警戒段階、及び、前記危険段階のいずれであるかを判別し、前記制御回路は、前記判別回路によって雷の発生状況が注意段階と判別されたとき、前記蓄電池の電池残量を確認し、電池残量が所定の閾値以下であれば前記蓄電池の充電が開始され、電池残量が前記所定の閾値を超えていれば充電が行われないように前記蓄電回路を制御し、雷の発生状況が警戒段階と判別されたときに、前記蓄電池の電池残量に拘わらずに前記蓄電池の充電が開始されるように前記蓄電回路を制御することが好ましい。
【0017】
上記構成では、蓄電システムは、初期段階をさらに注意段階と警戒段階とに分けており、雷の発生状況が注意段階と判別されたときにおいて蓄電池の残量を所定の閾値と比較することで充電の必要性を判断している。そして、雷の発生状況が警戒段階と判別された時点で、その後に雷の発生状況が危険段階(第2段階)と判別される可能性、すなわち、系統入力部からの電力供給が遮断される可能性が高まったとして、電池残量にかかわらず蓄電池の充電を開始するように制御している。
【0018】
よって、上記構成によれば、近い将来に第2段階と判別される可能性が高い警戒段階では蓄電池の電池残量に拘わらずに蓄電池の充電を開始する一方において、注意段階では必要なときにのみ蓄電池の充電を行うようにすることで、商用電力系統からの電力供給遮断時等に電池残量が不足するのを極力抑制しつつ、必要以上の出費を回避することができる。
【0019】
また、上記蓄電システムにおいて、前記制御回路は、前記判別回路によって雷の発生状況が第2段階と判別されて以降、所定時間以上、雷の発生状況が第2段階と判別されなくなったとき、前記切替装置を前記第1状態とすることが好ましい。
【0020】
蓄電回路から負荷への電力供給は、電池残量が尽きた時点で停止するため、負荷への電力供給を途切れなく継続して行うには、雷サージの商用電力系統への侵入の危険性が低下したときに、速やかに系統入力部からの電力供給を再開することが望ましい。上記構成によれば、雷サージの商用電力系統への侵入の危険性が低下したと考えられる時点で、系統入力部からの電力供給を自動で再開することができる。これにより、電池残量の枯渇によって負荷への電力供給が途絶える可能性を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、雷サージの侵入による、蓄電システム自体および当該蓄電システムに接続された電気機器の破損を防止し、かつ、商用電力系統からの電力供給遮断時に安定して電力供給を行いうる蓄電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電システムのブロック図である。
【
図2】
図1に示す蓄電システムが雷を検知した場合における電力供給の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
本実施形態に係る蓄電システム1は、自立出力部(電力出力部)7に接続された負荷100に電力を供給するシステムである。
図1に示すように、蓄電システム1は、雷検知回路2と、判別回路3と、商用電力系統Gに接続された系統入力部4と、蓄電回路5と、切替装置6と、自立出力部7と、制御回路8と、から構成されている。また、系統入力部4と蓄電回路5とは、切替装置6を経由する配線9aによって接続されている。自立出力部7と蓄電回路5とは、切替装置6を経由する配線9bによって接続されている。配線9aと配線9bは、リレー51、52の系統入力部4側およびリレー55、56の自立出力部7側で切替装置6内の配線9cによって接続されている。
【0025】
雷検知回路2は、雷を検知する回路であり、判別回路3と接続されている。雷の検知は、例えば、雷発生時に放出される電磁波、雷検知回路2内の電流または電圧の上昇、雷の光や音、などを検出することによって行われる。本実施形態において、雷検知回路2は、雷サージの商用電力系統Gへの侵入の危険性に応じて、好ましくは3段階以上のいずれかの段階の離散的な信号を出力する。なお、雷検知回路2は、雷サージの商用電力系統Gへの侵入の危険性に応じて強度の異なる連続的な信号を出力するものであってもよい。
【0026】
判別回路3は、雷検知回路2および制御回路8と接続されており、雷検知回路2からの信号に基づいて、雷の発生状況が、未発生状態(未探知)、注意段階、警戒段階、および、危険段階のいずれであるかを判別して、判別情報を制御回路8に送信する。本実施形態において、それぞれの段階を、雷サージの商用電力系統Gへの侵入の危険性が小さい順に、注意段階、警戒段階、危険段階としている。
【0027】
雷の発生状況がいずれの段階であるかの判別は、雷検知回路2から供給された信号に基づいて行われる。例えば雷検知回路2が連続的な信号を出力する場合は、その強度と段階の境界に対応した閾値とを比較することによって段階の判別を行う。雷検知回路2が離散的な信号を出力する場合は、離散的な信号と各段階とを対応させたテーブルに基づいて段階の判別を行う。
【0028】
系統入力部4には、商用電力系統Gから送られる電力が入力される。雷の発生状況が危険状態であると判別回路3が判別した場合を除いて、夜間には、系統入力部4に入力された電力は、自立出力部7を介して負荷100に供給されるものと、後述する蓄電池22の充電に用いられるものとがある。また、昼間には、蓄電池22の充電された電力と、必要に応じて系統入力部4に入力された電力とが、自立出力部7を介して負荷100に供給される。
【0029】
蓄電回路5は、双方向DC/DCコンバータ23および双方向インバータ24と、蓄電回路5から生じるノイズを取り除くノイズフィルタ25と、リレー57と、を有する。双方向DC/DCコンバータ23の一方端側はリレー57を介して蓄電池22に接続され、他方端側は双方向インバータ24に接続されている。
【0030】
双方向DC/DCコンバータ23は、直流電力の電圧を変換する装置であり、本実施形態においては、蓄電池22側の電圧と、系統入力部4側の電圧と、を相互に変換し、それぞれに最適な電圧とする装置である。また、双方向インバータ24は、直流を交流に、または、交流を直流に変換する装置であり、本実施形態においては、系統入力部4側から送られる交流電力を直流電力に変換して蓄電池22を充電し、蓄電池22から放電される直流電力を交流電力に変換して負荷100に供給する装置である。双方向DC/DCコンバータ23および双方向インバータ24は、制御回路8に接続されており、それぞれの動作は制御回路8によって制御されている。
【0031】
また、停電が長期間継続し蓄電池22が過放電になる危険性が生じた場合、または、蓄電池22に異常が発生した場合等において、リレー57をOFF状態とすることで、蓄電池22からの電力供給を遮断し、蓄電池22の過放電を防ぐことができる。
【0032】
切替装置6は、系統入力部4と蓄電回路5とを接続する配線9aに配設されたリレー51および52と、配線9aと配線9bとを接続する配線9c上に配設されたリレー53および54と、自立出力部7と蓄電回路5とを接続する配線9b上に配設されたリレー55および56と、を有している。雷が未発生状態であるとき、リレー51~54はON状態となり、リレー55および56はOFF状態となっており、このときの切替装置6の状態を第1状態とする。そして、昼間は蓄電回路5および必要に応じて系統入力部4から負荷100へ電力が供給されている。また、夜間、または昼間であって、雷の発生状況が注意段階と判別され且つ蓄電池22の電池残量が所定の閾値以下であるとき、若しくは、雷の発生状況が警戒段階と判別されたとき、系統入力部4から蓄電池22への充電が行われる。
【0033】
また、切替装置6は、昼夜いずれにおいても、雷の発生状況が危険段階と判別されたとき、制御回路8によってリレー51~54はOFF状態、リレー55および56はON状態となり、系統入力部4と蓄電回路5および自立出力部7とが遮断され、蓄電池22から自立出力部7を介した負荷100への電力供給が可能な第2状態となる。
【0034】
なお、例えば、通常時においてリレー55および56だけでなくリレー51および52をOFFとしておけば、昼間における蓄電回路5からの電力供給を停止できる。この場合、蓄電池22の電池残量を確保できるため、停電時、すなわち、系統入力部4からの電力供給が停止され蓄電回路5からの電力供給のみを行うときにおいて、より長期間の電力供給が可能となる。但し、安価な夜間電力を蓄えた蓄電池22を昼間に使用しない場合、通常時の負荷100への電力供給は全て系統入力部4からの昼間電力で賄わなければならず、昼間電力は夜間電力と比べて高価であるため、電力代が増大する。
【0035】
自立出力部7は、電源プラグおよび電源ケーブル等を介して負荷100と接続する部分であり、系統入力部4または蓄電回路5の少なくとも一方から供給される電力を負荷100に出力する。
【0036】
制御回路8は、判別回路3および蓄電回路5と接続されており、判別回路3から出力された雷情報の読み込み、および、蓄電池22の電池残量の確認をすることが可能な回路である。制御回路8は、判別回路3によって判別された雷の発生状況の段階、および、蓄電池22の電池残量に基づいて、リレー51~57のON/OFFの切り替え、並びに、蓄電池22の充電および放電などの制御を行う。
【0037】
次に、以上の構成からなる蓄電システム1が雷を検知した場合における電力供給の制御動作について説明する。
【0038】
図2は、蓄電システム1が雷を検知した場合における電力供給の制御動作を示すフローチャートである。雷が未発生状態であるときにおいて、蓄電システム1のリレー51~54および57はON状態となっており、リレー55および56はOFF状態となっている。このとき、切替装置6は第1状態であり、負荷100への電力供給は、系統入力部4および/または蓄電回路5から行われている。
【0039】
雷検知回路2の出力信号に基づいて雷が未発生状態以外の段階であると判別回路3が判別すると同時に(S1:YES)、判別回路3は、雷の発生状況が注意段階、警戒段階または危険段階のいずれかであるかを判別する(S2)。
【0040】
検知された雷の発生状況が注意段階と判別されたとき、制御回路8は、蓄電池22の電池残量が所定の閾値(第1閾値)以下か否かを確認する(S3)。
【0041】
ここで、所定の閾値とは、例えば、蓄電池22の最大容量の20%である。但し、本願発明において、所定の閾値は、使用者のニーズによって自由に設定されるものである。例えば、電力代の削減を優先させたい使用者であれば、高価格である昼間の時間帯において蓄電池22の充電を行うことは好ましくない。この場合、所定の閾値を、例えば5%といったように、できるだけ低く設定することで、蓄電池22の充電を可能な限り回避できる。これにより、停電時の安定した電力供給の確保をある程度犠牲とすることで、電力代の削減を実現できる。
一方で、停電時において確実に安定した電力供給の確保をしたい使用者であれば、電力代を犠牲にしてでも、なるべく多くの電力を蓄電池22に蓄えておきたいと考える。この場合、所定の閾値は、例えば50%など、高く設定することで、電力代は増大するが、常に安定した電力供給が可能な蓄電池の電力量を確保することができる。
【0042】
蓄電池22の電池残量が所定の閾値(第1閾値)以下の場合(S3:YES)、蓄電池22の充電を開始する(S4)。そして、蓄電池22を充電した状態のまま、ステップS1に戻り、次の雷検知まで待機する。なお、待機中に、蓄電池22の電池残量が別の所定の閾値(第1閾値よりも大きい第2閾値)以上となったときに、充電を中止してもよい。蓄電池22の電池残量が所定の閾値(第1閾値)より大きい場合(S3:NO)、蓄電池22の充電は行わず、ステップS1に戻る。
【0043】
また、検知された雷の発生状況が警戒段階と判別されたとき、蓄電池22の電池残量にかかわらず強制的に充電を開始し(S4)、ステップS1に戻る。この場合も、待機中に、蓄電池22の電池残量が別の所定の閾値(第2閾値)以上となったときに、充電を中止してもよい。
【0044】
ここで、蓄電池22を充電する際は、系統入力部4より供給される商用電力を用いる。商用電力は交流電力であるため、双方向インバータ24によって直流電力に変換する。また、双方向DC/DCコンバータ23によって、蓄電池22の充電に使用される電圧に変換し、蓄電池22を充電する。なお、放電時、すなわち、蓄電池22に蓄えた電力を負荷100に供給する際には、上述とは逆の変換が行われる。 また、これらの変換制御は制御回路8によって行われる。
【0045】
検知された雷の発生状況が危険段階と判別されたとき、制御回路8によって、リレー51~54をOFF状態にして系統入力部4からの電力供給を遮断し、続いて、リレー55および56をON状態にすることで、切替装置6を第2状態に切り替える(S5)。危険段階の雷が検知された場合、商用電力系統Gから侵入した雷サージが蓄電システム1の蓄電回路5側、および、負荷100に流れ込むおそれがある。そこで、リレー51および52をOFFにして系統入力部4と蓄電回路5との接続を切り離し、リレー53および54をOFFにして系統入力部4と負荷100との接続を切り離している。そして、この状態では、系統入力部4からの商用電力が負荷100に供給されないため、リレー55および56をONにして蓄電池22からの電力を供給可能にしている。
【0046】
一般に、雷雲は徐々に接近すると考えられるため、注意段階、警戒段階、危険段階と、段階的に移行することが考えられる。したがって、危険段階に到達した時点で、蓄電池22には十分量の電力が充電されている。但し、突発的に雷雲が出現し、段階を踏まずに危険段階の雷が検知される場合も想定される。この場合、蓄電池22の充電よりも優先して、系統入力部4からの電力供給の遮断、および、蓄電回路5のみによる電力供給への切り替えを行う。
【0047】
続いて、検知された雷の発生状況が危険段階と判別されて以降、雷検知回路2によって雷の発生状況が危険段階と判別されなくなってから所定時間経過したか否か判断する(S6)。雷の発生状況が危険段階であるまたは危険段階と判別されなくなってからの経過時間が所定時間未満である場合(S6:NO)、蓄電池22による停電時の電力供給を維持したまま、ステップS6に戻る。雷の発生状況が危険段階と判別されなくなってからの経過時間が所定時間以上である場合(S6:YES)、リレー51~54をONにし、さらにリレー55および56をOFFにすることで切替装置6を第1状態に切り替え、系統入力部4からの電力供給を再開し、系統入力部4または系統入力部4と蓄電回路5の両方からの負荷100への電力供給とする(S7)。
なお、「雷の発生状況が危険段階と判別されなくなる」とは、注意段階および警戒段階のほか、雷自体を検知しない場合、つまり未発生状態を含む。
【0048】
また、所定時間とは、例えば10分である。但し、本願発明において、所定時間は、使用者のニーズによって自由に設定されるものである。例えば、雷サージから電気機器および蓄電システムを防護することを優先させたい場合、所定時間は長く設定される。対して、雷サージの侵入の危険性を犠牲にしてでも、安定した電力供給を確保したい使用者であれば、電池残量に限りのある蓄電池22ではなく、系統入力部4から供給される電力を用いることが望ましく、この場合、所定時間は短く設定される。本願発明において、所定時間はゼロであってもよい。
【0049】
上記実施形態によれば、雷の発生状況が注意段階と判別された場合、蓄電池22の電池残量が所定の閾値以下のときにのみ充電を行うことで、系統からの電力供給遮断時等に電池残量が不足するのを抑制しつつ、必要以上の出費を回避することができる。
【0050】
また、雷の発生状況が警戒段階と判別された時点で、近い将来に雷の発生状況が危険段階と判別される可能性、すなわち、商用電力系統Gからの電力供給が遮断される可能性が高まったとして、電池残量に拘わらず蓄電池22の充電を開始するように制御している。これにより、商用電力系統Gからの電力供給遮断時等に電池残量が不足するのを極力抑制することができる。
【0051】
そして、雷の発生状況が危険段階と判別された時点で、切替装置6が第2状態となることで、雷サージの侵入による電気機器などの負荷100および蓄電システム1の破損を防止することができる。雷の発生状況は注意段階または警戒段階を経てから危険段階であると判別されることが多い。したがって、この時点で十分量の電力が蓄電池22に充電された状態となっている可能性が高いため、蓄電池22から負荷100に安定して電力供給を行うことのできる可能性が高くなる。
【0052】
また、本実施形態に係る制御回路8は、判別回路3によって雷の発生状況が危険段階(第2段階)と判別されて以降、所定時間以上、雷の発生状況が危険段階に判別されなくなったとき、切替装置6を第1状態とする。
【0053】
蓄電回路5から負荷100への電力供給は、蓄電池22の電池残量が尽きた時点で停止するため、負荷100への電力供給を途切れなく継続して行うには、雷サージの商用電力系統Gへの侵入の危険性が低下したときに、速やかに系統入力部4からの電力供給を再開することが望ましい。本実施形態によれば、雷サージの商用電力系統Gへの侵入の危険性が低下したと考えられる時点で、系統入力部4からの電力供給を自動で再開することができる。これにより、蓄電池22の電池残量の枯渇によって負荷100への電力供給が途絶える可能性を抑えることができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、これらの例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0055】
例えば、判別回路3は、雷の発生状況が、未発生状態、雷サージの商用電力系統Gへの侵入の危険性を有する初期段階、および、初期段階より雷サージの商用電力系統Gへの侵入の危険性が高い第2段階のいずれかであるかを判別してもよい。その場合、初期段階と判別されたときに、蓄電池22の電池残量に拘わらずに蓄電池22の充電を強制的に開始してもよいし、蓄電池22の電池残量が第1閾値以下であれば蓄電池22の充電を開始し、そうでなければ充電を開始しないようにしてもよい。但し、系統からの電力供給遮断時等に蓄電池22の電池残量が不足するのを極力抑制するためには、未発生状態、注意段階、警戒段階、および、危険段階のいずれかであるかを判別することが好ましい。また、判別回路3は雷の発生状況が4段階以上のいずれの段階であるかを判別するようにしてもよい。この場合、例えばS2において、注意段階をさらに細分化し、雷サージの商用電力系統Gへの侵入の危険性が高い段階ほど電池残量の閾値を大きくしてもよい。
【0056】
また、雷検知回路2が、蓄電システム1に搭載されていなくてもよい。この場合、例えば、蓄電システム1をインターネットに接続し、インターネットから雷情報を取得する。そしてこの場合、判別回路3による雷の発生状況の判別は、蓄電システム1の設置位置から雷発生地点までの距離に基づいて行ってもよく、例えば、雷が40km圏内で発生している場合を注意段階、20km圏内で発生している場合を警戒段階、10km圏内で発生している場合を危険段階としてよい。または、雷の強度に基づいて行ってもよく、さらに別の指標によって行ってもよい。また、例えば、雷発生地点までの距離と雷の強度とを組み合わせるなど、複数の指標の組み合わせに基づいて、雷サージの電力系統への侵入の危険性を判断し、いずれの段階であるかを判別してもよい。上述した実施形態において、雷検知回路2は、少なくとも3段階の信号を判別回路3に出力するものであるが、本発明において、雷検知回路は、初期段階および第2段階に対応した2段階の信号を判別回路に出力するものであってもよい。
【0057】
しかし、停電等の影響によりインターネット回線が不良となっている場合、判別回路が雷情報を取得するのが遅れ、負荷を雷サージから十分に防護することができない。よって、インターネット回線の不良時においても、確実かつ迅速に雷情報を取得し、雷サージ対策および商用電力系統からの電力供給遮断時の供給電力の確保をより確実に行うために、雷検知回路2は、蓄電システム1に搭載されていることが好ましい。
【0058】
また、判別回路3は、雷検知回路2または制御回路8に内包されていてもよく、この場合、雷検知回路2と制御回路8とが接続されることになる。
【0059】
通常時と停電時の蓄電システムから生じるノイズは通常時と停電時で異なっており、これらノイズの違いに合わせて、ノイズフィルタ25は2つ設置されていてもよい。但し、この場合、蓄電システム1のコストは嵩み、サイズは増大するため、ノイズフィルタ25は1つであることが好ましい。
【0060】
また、双方向DC/DCコンバータ23の替わりに、2つのDCコンバータが設置されていてもよい。この場合、一方のDCコンバータは系統入力部4側から蓄電池22側への電圧の変換を行い、他方のDCコンバータは蓄電池22側から系統入力部4側への電圧の変換を行う。
【符号の説明】
【0061】
1 蓄電システム
2 雷検知回路
3 判別回路
4 系統入力部
5 蓄電回路
6 切替装置
7 自立出力部(電力出力部)
8 制御回路
9a、9b、9c 配線
22 蓄電池
23 双方向DC/DCコンバータ
24 双方向インバータ
25 ノイズフィルタ
100 負荷