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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】ホイストロープ
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/02 20060101AFI20220728BHJP
【FI】
D07B1/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019503783
(86)(22)【出願日】2017-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2017058673
(87)【国際公開番号】W WO2017178484
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-01-22
(31)【優先権主張番号】2016586
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】518359487
【氏名又は名称】ランクホルスト ユーロネッテ ポルトガル ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】デ ソウザ ファリア、ルイ ペドロ
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-300376(JP,A)
【文献】国際公開第2004/020732(WO,A1)
【文献】特開平07-189060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B1/00-5/00
35/00-99/00
B66B7/00-7/12
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
D04C1/00-7/00
D04G1/00-5/00
D07B1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の一組のストランドの第2の編組耐荷重層によって囲まれた第1の一組のストランドの第1の編組耐荷重層によって囲まれた中実芯線を有する合成繊維製ホイストロープであって、前記第1の一組及び/又は第2の一組のストランドは、少なくとも15g/denの引っ張り強さを有する高性能繊維を含み、前記第2の編組耐荷重層は、ロープの全耐荷重能力の少なくとも60%の耐荷重能力を有し、各耐荷重層の耐荷重能力は、ISO 2307に準じて決定され、前記中実芯線の断面積が3%未満である、合成繊維製ホイストロープ
【請求項2】
前記高性能繊維、少なくとも20g/denの引っ張り強さを有する、請求項1に記載のロープ。
【請求項3】
前記第2の編組耐荷重層を囲む追加の一組のストランドの少なくとも1つの追加の編組層をさらに有する、請求項1又は2に記載のロープ。
【請求項4】
前記第1及び第2の一組のストランドが、独立して3~32個、好ましくは6~24個、より好ましくは12個のストランドを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項5】
前記第1及び第2の編組耐荷重層が、撚り合わされたストランドのサブセットを編組することによって独立して構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項6】
前記中実芯線が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、他のフルオロポリマー又はそれらの組み合わせのような熱可塑性樹脂を含む1本又は複数本のモノフィラメントを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項7】
前記第1及び第2の編組耐荷重層が、独立して、保護コーティング、好ましくはポリウレタン、シリコーン又はそれらの組み合わせを含有する保護コーティングを有する糸を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項8】
前記コーティングが、前記糸を囲み、好ましくは前記コーティングが、それらの糸を形成する個々の繊維を囲む、請求項7に記載のロープ。
【請求項9】
前記第2の編組耐荷重層が、ロープの全耐荷重能力の少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%の耐荷重能力を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項10】
0.5~10cm、好ましくは1~5cm、より好ましくは2~4cmの直径を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項11】
前記中実芯線の断面積が、ロープの構造全体の断面積の2%未満、より好ましくは1~2%である、請求項1~10のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項12】
最小破断荷重が、少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも30重量メトリックトンである、請求項1~11のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項13】
前記中実芯線が、金属被覆又は金属化されたモノフィラメント、または、埋め込まれた光ファイバを含む、非破壊試験機能(non-destructive testing functionality)を有する機能性中実芯線である、請求項1~12のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項14】
前記第2の編組耐荷重層を囲む1つ以上の連続編組層をさらに有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のロープ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のロープを有するクレーンドラム又はクレーン。
【請求項16】
吊り上げ、好ましくはクレーンによる吊荷吊り上げのための、請求項1~14のいずれか1項に記載のホイストロープの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープの分野にある。特に、本発明はクレーン用のホイストロープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクレーン用ホイストロープは、鋼製ワイヤーロープ(SWR)である。SWRは、良好な機械的特性を備えるものの、腐食、(再)潤滑を必要とすること、重い重量及びワイヤの破損時の安全性の問題にも関連している。改良されたSWRの代替物として、合成繊維製のホイストロープ、すなわち合成繊維を基にした(ポリマーベースの)ホイストロープが提案されている。合成繊維製のホイストロープは、ポリマーベースの繊維などの非金属材料を基礎とし、特徴である低重量を組み合わせて、好ましい機械的特性を示している。しかしながら、SWRと同様の機械的及び形状的特性を有する合成繊維製ホイストロープを提供することは困難であることが判明している。
【0003】
ホイストロープは、半径方向の性能だけでなく、軸方向の荷重-伸び及び耐荷重能力が良好であることを特徴とする。軸方向耐荷重特性は、最小破断力、引張強度、長手方向弾性率、破断伸び及び/又は重量として表すことができる。ホイストロープの半径方向性能は、側方剛性、側方弾性率、曲げ性能及び/又は曲げ耐屈曲疲労性としても表すことができる。
【0004】
半径方向の性能は、ホイストロープにとって特に重要である。半径方向の良好な性能が、荷重支持動作中にロープの円形断面の変形を最小にする。ロープの横断面が扁平な楕円形に変形すると、クレーンのドラム上へのロープの巻き取りが複雑になり(一直線になり)、シーブからロープが脱落したり、ロープの摩耗が増したりする原因となる。
【0005】
一般的な合成繊維製ロープは一般に曲げ性能に乏しく、概してホイストロープとして使用することができないのに対して、SWRは、ソリッドワイヤーを有し、一般に良好な曲げ性能を示す。
【0006】
特許文献1は、単一の編組層によって囲まれた非耐力コアを含むロープを記載している。コアは、ロープの破砕に抵抗するものとして開示されている。
【0007】
特許文献2には、外側コアと撚り合わされた繊維をそれぞれが含む撚られた外側ストランドによって囲まれた周囲の編組繊維と接触する内側コアを提供することによって合成ロープの曲げ性能を改善する試みが記載されている。このロープの欠点は、各ストランドがコア及び周囲の繊維を必要とし、その結果、固体モノフィラメント部分の不利な相対断面積及びそれに付随してロープの重量に対する強度が低いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2005/019525号
【文献】欧州特許第2511406号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第2の一組のストランドの第2の編組層によって囲まれた第1の一組のストランドの第1の編組層によって囲まれた中実芯線(solid core)を有する合成繊維製ホイストロープに関する。
【0010】
ロープは、一般的には、繊維のストランドを編組及び/又は撚り合わせることによって構成される。さらに、ロープは、樹脂又は複合材料の1つ又は複数のモノフィラメントを含む。本発明者らは、中実芯線の周りに、編組層を2層設けることによって、非常に高い横剛性を有するロープが得られることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の特定の実施形態の概略図を示す。
図2図2は、本発明の特定の実施形態の概略断面図を示す。
図3図3は、4つの連続編組層(200,300,400,500)を有するロープの特定の実施形態を示す。
図4図4は、CBOS試験の図である。
図5図5は、ロープの横方向の剛性を示す図である。
図6図6は、本発明による特定のロープの典型的な伸び-破断曲線を示す。
図7図7は、O.Vennemannら、Acergy-OTC 2008によって決定されたSWRの比較結果を示す。
図8図8は、ロープの2つのサンプル(1と2)のCBOS試験中の経時的な温度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の特定の実施形態の概略図を示す。中実芯線(100)は、第2の編組層(300)によって囲まれた第1の編組層(200)によって囲まれている。編組層は、繊維(図示せず)をそれぞれ含む一組のストランド(210,220,230,240,310,320,330,340)を有する。
【0013】
図2は、本発明の特定の実施形態の概略断面図を示す。中実芯線(100)は、第1の編組層(200)によって囲まれており、該第1の編組層(200)は、第2の編組層(300)によって囲まれている。編組層は、それぞれが複数の繊維(図示せず)を有するストランド(中実形状として描かれている)を有する。
【0014】
追加の横方向の剛性を付加するために、第2の編組層を囲む追加の編組層が存在することができる。このように、本発明のホイストロープは、少なくとも2つ連続編組層を含むが、複数の連続編組層を含んでもよい。図3は、4つの連続編組層(200,300,400,500)を有するロープの特定の実施形態を示す。
【0015】
各々のストランドの組は、好ましくは、独立して高性能繊維を含む。高性能繊維は、この分野では公知である。高性能繊維の例は、超高分子量ポリエチレン系(UHMWPE、例えば、Dyneema(商標)及びSpectra(商標)の商品名で入手可能)、(パラ)アラミド系(例えばTwaron(商標)、Kevlar(商標)及びTechnora(商標)の商品名で入手可能)、液晶芳香族ポリエステル系(例えばVectran(商標)の商品名で入手可能)、炭素繊維系などの繊維が挙げられる。例えば、第1の組のストランドがダイニーマ(Dyneema)繊維を有しており、一方、第2の組がベクトラン(Vectran)(登録商標)繊維を含んでいてもよい。ストランドの各組は、異なるタイプの繊維の混合物を有していてよい。
【0016】
繊維は、例えば、オランダのDSM社から入手可能なXBOを含むDyneema(商標)繊維のように、オーバーレイ仕上げを更に有してもよい。
【0017】
高性能繊維は、その高い引っ張り強さ及び低い伸び(破断伸び)で知られている。第1のセット及び/又は第2のセットのストランドは、少なくとも15g/デニール、より好ましくは少なくとも20g/デニールの強度を有する高性能繊維を含むことが好ましい。一般的に使用されている繊維の強度は、この分野では知られている:例えば、Handbook of Fibre Rope Technology、H. A. McKenna, J. W. S. Hearle and N. O’Hear, 2004, Woodhead Publishing Ltd.参照。高性能繊維は、好ましくは、低破断伸び(特に3.5%未満)も特徴とする。これは、ホイストロープに応用に有利な、その他の特性である。
【0018】
製造を容易にするために、例えば、必要とされる製造工程の数を制限するために、第1及び第2の編組層は同じ構成物を含み、より好ましくは、同じ構成物からなることが好ましい。更に、必要に応じて存在する追加編組層もまた、第1及び/又は第2の編組層と同じ構成物を有することが好ましい。最も好ましくは、全ての編組層が同じ繊維を有する。全ての編組層が、Dyneema(商標)の商品名で入手可能なUHMWPEを有することが好ましい。
【0019】
各組のストランドは、独立して3~32本のストランドを含む。例えば、第1の組のストランドが、12本のストランドを有し、一方、第2の組のストランドが16本のストランドを有することができる。特に、各々が12本のストランドを含む各組のストランドを使用することで、特に良好な結果が得られている。このストランドの好ましい数から、多少の逸脱は許容される。例えば、各組のストランドは、独立して少なくとも6本から最大24本のストランドを含むことができる。
【0020】
ロープの各層は、編組ストランドを有する。このように、層は編組層である。編組層は、好ましくは、編組されたストランドによって、それぞれ構成されている。これらのストランドは、典型的には、1本以上の糸を左巻き又は右巻きにより合わせて製造されるか、又は、編んであっても又はストランドの層であってもよい。糸は、一般に、上記の高性能繊維の束から調製される。
【0021】
第1及び第2の編組層は、それぞれ耐荷重層である。耐荷重はこの分野で使用される用語であり、層がロープの全耐荷重能力に寄与することを示す。非耐荷重層は、例えばジャケットである。ジャケットは、一般的に編組されたストランドであり、摩耗によるロープの擦り切れを防ぐ働きをする。このようなジャケットは、本明細書で説明される構成に追加することができる。
【0022】
好ましい実施形態では、第2の編組耐荷重層は、ロープの全耐荷重能力の少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%の耐荷重能力を有する。
【0023】
各層の耐荷重能力は、以下のように経験的に決定することができる。ロープが中央層から最外層まで段階的に構築されている場合、各層の製造の最後にロープ構造が得られ、その時に、任意のロープ試験法(例えばISO 2307に記載されている)によって試験することができる。各層(その層までの累積構成)を個別にテストすると、各層の寄与を確立することが可能になる。あるいは、(主に)耐荷重能力を提供する各層の繊維の量であるからであるから、耐荷重能力は各層の線密度間の関係によって理論的に見積もることができる。
【0024】
本発明のロープの耐摩耗性を向上させるために、保護コーティングを施してもよい。保護コーティングは、ポリウレタン、シリコーン又はそれらの組み合わせを含むことが好ましい。適切なコーティングは、例えばアニオン性ポリウレタン系のコーティングである。
【0025】
驚くことに、ロープを糸レベルで被覆することにより、ロープの横方向の剛性及び耐曲げ疲労が更に改善されることが判明した。このように、編組層は、保護コーティングを含む糸を独立して含むことが好ましい。さらに好ましい実施形態は、コーティングが糸を囲んでいるロープである。理論に縛られることを望むものではないが、ロープを曲げている間(例えば、ロープの巻き取り又は巻き戻し中)には、糸は、その隣接する糸に対する糸の動きによって生じる内部摩擦を受けている可能性がある。編組層に存在する各糸(内部に配置された糸を含む)を被覆することにより、耐曲げ疲労及び横方向の剛性が改善される。このように、特に好ましい実施形態では、本質的に全ての第1、第2及び必要に応じて追加の編組層に存在する糸は、保護コーティングによって囲まれている。糸は、典型的には多数の繊維を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、1つ以上の、好ましくは全ての繊維が保護コーティングによって囲まれていることが好ましい。
【0026】
ロープのコーティングがロープレベルで行われる場合、すなわち、上記の糸のレベルではない場合、コーティングの最大レベルは一般にロープの総重量に基づいて約15重量%である。しかしながら、糸のレベルでコーティングすることにより、はるかに高いコーティングレベル、例えば25又は30重量%までのコーティングレベルを得ることができる。より高いレベルのコーティングは、より良好な耐摩耗性及び増加した横方向剛性をもたらす。従って、本発明のロープは、ロープの総重量に基づいて、好ましくは、20重量%超、より好ましくは25重量%超のコーティングを有する。
【0027】
ロープを糸レベルでコーティングすることのさらなる利点は、作業状態にある間のロープの温度を、作動限度内に自然に維持できることである。ロープの曲げや荷重を受けたことにより生じるロープの応力によって、通常では危険なレベルを超える温度に至ることはない。ロープの温度は、「シーブ上繰り返し曲げ(CBOS)試験」中のダブルベンドゾーンにおいて、70℃未満に維持されていることが好ましく、55℃未満であることがより好ましい。
【0028】
CBOS試験は、ホイストロープの曲げ性能を試験するための、この分野では既知の試験である。CBOSテストは非常に厳しい作業条件を模している。本明細書に記載のCBOS試験は、2つのシーブ(600,700)を有する機械により実行され、図4に示すように、ロープ(800)は、シーブ上に配置され、回転される。CBOS試験中、ロープは、設定された周期及び張力で、シーブ上で曲げられながら、前後に回転する。曲げられるのは、常に同じロープの断面であり、これが、曲げ疲労のメカニズムを加速させる。以下の表1に示すパラメータを有するCBOS試験において、ロープは、好ましくは、少なくとも10000の破壊までのロープ曲げ回転(CTF)を有する。
【0029】
ロープの横方向の剛性(横方向の弾性係数またはESQ係数とも呼ばれる)は、図5に示すように、一般的に、ロープがロープの横方向に変形するように(直径dに対するd1)、ロープに縦方向の力および横方向の力(FQ)を加えることによって決定される。これらの条件下での横方向のロープの変形に対する抵抗は、横方向の剛性である。ロープの横方向剛性は、好ましくは少なくとも500N/mm2である。
【0030】
一般的に、20mmの直径を有する本発明によるロープの最小破壊力(MBF)は、ISO 2307によって決定されるように、少なくとも10重量トン、好ましくは少なくとも20重量トン、より好ましくは少なくとも30重量トンである。
【0031】
本発明のロープの破断-伸びは、通常、10%未満、好ましくは6%未満である。図6は、本発明による特定のロープの典型的な伸び-破断曲線を示す。
【0032】
本発明のホイストロープは、強度に対する重量の比率が低い。該ロープは、一般的に、半径方向の性能だけでなく、ロープの荷重-伸び及び耐荷重能力を損なうことなく、重量は、0.2~1kg/mである。例えば、約20mmの直径を有するロープは、0.2~0.3kg/mの重量とすることができる。
【0033】
本発明における中実芯線は、1つ以上のモノフィラメントを含む。中実芯線は、1つのモノフィラメントを有することが好ましい。一般的に、中実芯線には適切な剛性が必須である。それは、1本のモノフィラメントによって実現できる。2つ以上のモノフィラメントを有する実施形態では、層又は編組構成を使用することができ、又は、中実芯線は、例えば、いくつかの別々の要素(繊維又はモノフィラメント)が樹脂によって接合されている、複合モノフィラメントを有してもよい。一般的には、モノフィラメントは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、他のフルオロポリマー又はそれらの組み合わせなどの熱可塑性樹脂を含む。モノフィラメントは、複合樹脂又は熱硬化性樹脂系のものとすることもできる。モノフィラメントに使用される樹脂は、機械的又は特定の材料特性を改善するための充填剤及び/又は添加剤を含んでいてもよい。中実芯線におけるモノフィラメントの通常の直径の寸法は、1~4mmであり、好ましくは1.5~3.0mmである。中実芯線の断面積は、ロープ構造全体の断面積に基づいて3%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1~2%である。本発明の一実施形態では、中実芯線の断面積は、ロープ構造全体の断面積の約1.5%である。使用される中実芯線、又は、1つ以上のモノフィラメントは、ハイブリッドモノフィラメントを含んでもよい。これらのハイブリッドモノフィラメントは、樹脂を押し出し成形することによって高強度の繊維又は糸に製造された、中実の高強度モノフィラメントである。このように、本発明の中実芯線は、ホイストロープの耐荷重能力に寄与し、従って、第1の編組層における空隙の充填材より大きく寄与しているものとみなされる。
【0034】
耐荷重への寄与は、ロープの非破壊試験(non-destructive testing functionality)に使用することができる。この目的のために好ましい実施形態では、中実芯線は、好ましくは非破壊試験(NDT)機能を有する、機能的な中実芯線である。中実芯線は、例えば電気伝導性又は電気抵抗性を利用することにより、ロープの状態を表示することができる、導電性のモノフィラメントを有してもよい。あるいは、中実芯線は、磁束漏れ又は渦電流出力の変化を検出することができるように、磁気NDT装置によって検出可能になるように処理された構成部分を有してもよい。従って、中実芯線は、非破壊試験に適合した金属被覆又は金属化されたモノフィラメントを含むことが好ましい。さらに別の実施形態では、中実芯線は、例えば非破壊試験に適した埋め込まれた光ファイバを有してもよい。
【0035】
特定の実施形態では、芯線中の1つ以上のモノフィラメントは、非破壊試験に適合した金属被覆又はコーティングされた、又は、他の方法で処理された高性能繊維を含む複合モノフィラメントである。これらの高性能繊維は、例えば、繊維の全長に亘って導電性樹脂で覆うことができる。
【0036】
本発明のロープは、例えば釣り(トロール引綱)、採掘(ウインチ上のロープ)、海底石油及びガス採取(ウインチ上のロープ)などに使用することができる。
【0037】
本発明は、以下の実施例により説明することができる。
【0038】
(実施例1)
ポリエチレン(Lankhorst Yarns社から市販されているTiptolene(商標)Thick Mono)を含むモノフィラメントの中実芯線、ダイニーマ(Dyneema)(商標)繊維の第1の12ストランド編組層、及び、ダイニーマ(Dyneema)(商標)繊維の第2の12ストランド編組層からなる直径20.0mmのホイストロープであり、繊維はアニオン性ポリウレタン系の合成ポリマーで被覆されている。
【0039】
ロープは、表1のテスト条件により、CBOSテストされた。
【0040】
【表1】
【0041】
ロープがLankoLift S 20mm表示である場合の、ロープの曲げ疲労特性を、図7及び8に示す。また、図7は、O.Vennemannら、Acergy-OTC 2008によって決定されたSWRの比較結果を示す。本実施例のロープは、優れた曲げ疲労特性を示す。図8は、ロープの2つのサンプル(1と2)のCBOS試験中の経時的な温度プロファイルを示す。
【0042】
(実施例2)
表2に示されているように、異なる直径及び特性を有する実施例1のロープによるホイストロープを調製した。
【0043】
【表2】
【0044】
(付記)
(付記1)
第2の一組のストランドの第2の編組耐荷重層によって囲まれた第1の一組のストランドの第1の編組耐荷重層によって囲まれた中実芯線を有する合成繊維製ホイストロープ。
【0045】
(付記2)
前記第1の一組及び/又は第2の一組のストランドが、好ましくは少なくとも15g/den、より好ましくは少なくとも20g/denの引っ張り強さを有する高性能繊維を含む、付記1に記載のロープ。
【0046】
(付記3)
前記第2の編組層を囲む追加の一組のストランドの少なくとも1つの追加の編組層をさらに有する、付記1又は2に記載のロープ。
【0047】
(付記4)
前記第1及び第2の一組のストランドが、独立して3~32個、好ましくは6~24個、より好ましくは12個のストランドを含む、付記1~3のいずれか1つに記載のロープ。
【0048】
(付記5)
前記第1及び第2の編組層が、撚り合わされたストランドのサブセットを編組することによって独立して構成されている、付記1~4のいずれか1つに記載のロープ。
【0049】
(付記6)
前記中実芯線が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、他のフルオロポリマー又はそれらの組み合わせのような熱可塑性樹脂を含む1本又は複数本のモノフィラメントを有する、付記1~5のいずれか1つに記載のロープ。
【0050】
(付記7)
前記第1及び第2の編組層が、独立して、保護コーティング、好ましくはポリウレタン、シリコーン又はそれらの組み合わせを含有する保護コーティングを有する糸を有する、付記1~6のいずれか1つに記載のロープ。
【0051】
(付記8)
前記コーティングが、前記糸を囲み、好ましくは前記コーティングが、それらの糸を形成する個々の繊維を囲む、付記7に記載のロープ。
【0052】
(付記9)
前記第2の編組耐荷重層が、ロープの全耐荷重能力の少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%の耐荷重能力を有する、付記1~8のいずれか1つに記載のロープ。
【0053】
(付記10)
0.5~10cm、好ましくは1~5cm、より好ましくは2~4cmの直径を有する、付記1~9のいずれか1つに記載のロープ。
【0054】
(付記11)
前記中実芯線の断面積が、ロープの構造全体の断面積の3%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1~2%である、付記1~10のいずれか1つに記載のロープ。
【0055】
(付記12)
最小破断荷重が、少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも30重量メトリックトンである、付記1~11のいずれか1つに記載のロープ。
【0056】
(付記13)
前記中実芯線が、機能性中実芯線であり、好ましくは非破壊試験機能(non-destructive testing functionality)を有する、付記1~12のいずれか1つに記載のロープ。
【0057】
(付記14)
前記第2の編組耐荷重層を囲む1つ以上の連続編組層をさらに有する、付記1~13のいずれか1つに記載のロープ。
【0058】
(付記15)
付記1~14のいずれか1つに記載のロープを有するクレーンドラム又はクレーン。
【0059】
(付記16)
吊荷の吊り上げ、好ましくはクレーンによる吊荷の吊り上げのための、付記1~14のいずれか1つに記載のホイストロープの使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8