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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-27
(45)【発行日】2022-08-04
(54)【発明の名称】伝熱表面
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/34 20060101AFI20220728BHJP
   F28D 1/04 20060101ALI20220728BHJP
   F28F 13/02 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
F28F1/34
F28D1/04
F28F13/02 A
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019533025
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 US2017068485
(87)【国際公開番号】W WO2018128882
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-08-23
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】15/398,417
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592179160
【氏名又は名称】ヴィーラント ウェルケ アクチーエン ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】WIELAND-WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】ジョージィ エヴラーム
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】田村 佳孝
【審判官】西村 泰英
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-523414(JP,A)
【文献】実開昭53-99057(JP,U)
【文献】特開昭53-105751(JP,A)
【文献】米国特許第4216826(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/34
F28D 1/04
F28F13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱抵抗を低くする目的で単位面積を大きくするため、伝熱管の外表面に、その伝熱管の長手方向軸に対して第1の角度で延伸する複数のフィンを有し、そのフィンの隣接する間に延伸するチャネルを有し、前記フィン上に伝熱管の長手方向軸に対して第1の角度と異なる第2の角度で延伸され、前記チャネルまでは届かない深さの切り込みを有し、前記切り込みによってフィンセグメントが生成され、各フィンセグメントが、ステムと、頂部と、前記頂部から延伸され、かつチャネルに向かって下方に屈曲する変形縁部を形成しており、この変形縁部が、フィンセグメントに隣接する前記切り込みと少なくとも部分的に重複する構成とした、外面を有することを特徴とする伝熱管。
【請求項2】
前記変形縁部が、前記変形縁部に隣接する前記チャネルと少なくとも部分的に重複する請求項1に記載の伝熱管。
【請求項3】
前記変形縁部が、切り込み重複縁部と、チャネル重複縁部とを含む請求項2に記載の伝熱管。
【請求項4】
隣接するフィンセグメントが、その間にキャビティを形成する請求項1に記載の伝熱管。
【請求項5】
前記キャビティが沸騰孔を含み、前記変形縁部、前記ステム及び前記切り込みの間に形成されている請求項4に記載の伝熱管。
【請求項6】
前記第1の角度が、85~89.5度である請求項1に記載の伝熱管。
【請求項7】
前記第2の角度が、10~35度である請求項1に記載の伝熱管。
【請求項8】
前記第2の角度が、15度である請求項7に記載の伝熱管。
【請求項9】
前記頂部が、概して台形の形状である請求項1に記載の伝熱管。
【請求項10】
前記変形縁部が、切り込みの半分以上、下方に延伸する請求項1に記載の伝熱管。
【請求項11】
熱抵抗を低くする目的で単位面積を大きくするため、複数の伝熱管の外側に延伸するフィンであって、隣接フィンの間に延伸するチャネルを有し、前記チャネルが伝熱管の長手方向軸に対して第1の角度で延伸するフィンと、前記フィン上に形成された複数の切り込みであって、伝熱管の長手方向軸に対して前記第1の角度と異なる第2の角度で延伸する切り込みとを含み、前記切り込みがフィンセグメントを生成し、各フィンセグメントが、ステムと、前記ステムから延伸し、かつ下方に屈曲してキャビティを形成する頂部とを含み、前記頂部が、4つの縁部、すなわち前記切り込みと実質的に平行な切り込み側縁部(53)と、前記チャネルと実質的に平行なチャネル側縁部(51)と、切り込みの上を少なくとも部分的に延伸する切り込み重複縁部(54)と、チャネルの上を少なくとも部分的に延伸し、チャネルに向かって下向きに屈曲し、切り込み重複縁部(54)と隣接するチャネル重複縁部(52)を有する構成としたことを特徴とする強化された沸騰伝熱表面。
【請求項12】
前記キャビティが沸騰孔を含み、前記チャネル重複縁部、前記切り込み重複縁部、前記ステム及び前記切り込みの間に形成されている請求項11に記載の伝熱表面。
【請求項13】
前記第1の角度が、85~89.5度である請求項11に記載の伝熱表面。
【請求項14】
前記第2の角度が、10~35度である請求項11に記載の伝熱表面。
【請求項15】
前記第2の角度が、15度である請求項11に記載の伝熱表面。
【請求項16】
前記頂部が、概して台形の形状であり、前記切込みと実質的に平行な側縁部及び前記チャネルと実質的に平行なチャネル側縁部が、前記台形の2辺を含む請求項11に記載の伝熱表面。
【請求項17】
前記チャネル重複縁部が、切り込みの半分以上、下方に延伸する請求項11に記載の伝熱表面。
【請求項18】
熱抵抗を低くする目的で単位面積を大きくするため、請求項1~17に記載された伝熱管の外面にフィーチャ(features;外観的な特色)を形成する方法であって、
前記外面に複数のチャネルを形成し、前記チャネルが、互いに実質的に平行であり、かつ長手方向軸に対して第1の角度で前記管に延伸し、
複数の切り込みを前記外面に切り込み、前記切り込みが、互いに実質的に平行であり、かつ長手方向軸に対して第2の角度で前記管に延伸し、前記第2の角度が、前記第1の角度とは異なり、切り込みステップが、前記外面から延伸する個別のフィンセグメントを形成し、前記フィンセグメントが、前記チャネル及び前記切り込みによって互いに分離され、
前記フィンセグメントが、前記チャネルに実質的に平行な隣接した第1チャネル隣接縁部と、前記切り込みに実質的に平行な第1切り込み隣接縁部と、第2チャネル隣接縁部及び第2切り込み隣接縁部によって形成されるコーナとを含み、前記コーナは、チャネルの上に引き上げられ、かつ前記チャネルに部分的に延伸させることを含む方法。
【請求項19】
ローラによって前記フィンセグメントを圧延し、前記フィンセグメントの縁部を前記切り込みの上に少なくとも部分的に屈曲させることを更に含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フィンセグメントを圧延するステップが更に、前記フィンセグメントの縁部を前記チャネルの上に少なくとも部分的に延伸させる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の角度が、86~89.5度である請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の角度が、10~35度である請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の角度が、15度である請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記フィンセグメントを圧延するステップが、前記フィンセグメント切り込みの近くに広いステムをもたらす請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記フィンセグメントを圧延するステップが、各フィンセグメント縁部、各フィンセグメントのステム及び前記切り込みの間に形成されたキャビティによる沸騰孔を更に形成する請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年1月4日に出願された米国出願第15/398417号の利益を主張し、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
強化伝熱表面は、多くの冷却用途で、例えばHVAC産業で、冷凍及び器具のために、電子機器の冷却で、電力産業で、並びに石油化学、精製及び化学処理産業で使用される。凝縮及び蒸発型熱交換器用の強化伝熱管は、高い伝熱係数を有する。本開示の管表面は、凝縮器管としての用途に理想的な表面を含み、また管形成方法における追加のステップは、蒸発器管としての用途に理想的な表面をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示による伝熱管の外面にフィーチャを形成する方法は、表面に複数のチャネルを形成することを含み、チャネルは、互いに実質的に平行であり、かつ長手方向軸に対して第1の角度で管に延伸する。複数の切り込みが、表面に入れられ、切り込みは、互いに実質的に平行であり、かつ長手方向軸に対して第2の角度で管に延伸し、第2の角度は、第1の角度とは異なる。切断ステップは、表面から延伸する個別のフィンセグメントを形成し、フィンセグメントは、チャネル及び切り込みによって互いに分離される。フィンセグメントは、チャネルに実質的に平行な隣接した第1チャネル隣接縁部と、切り込みに実質的に平行な第1切り込み隣接縁部と、第2チャネル隣接縁部及び第2切り込み隣接縁部によって形成されるコーナとを含み、コーナは、チャネルフロアから立ち上がり、かつチャネルに部分的に延伸する。この方法を使用して形成された管は、凝縮器管としての用途に優れた品質を持つ。
【0004】
方法における追加のステップは、優れた蒸発器管をもたらす。以上に論じた切断ステップに続き、フィンセグメントは、ローラによって圧延され、フィンセグメントの縁部を切り込みの上に少なくとも部分的に屈曲させる。フィンセグメントを圧延するステップは更に、フィンセグメントの縁部をチャネルの上に少なくとも部分的に延伸させる。
【0005】
本発明を要約するために、本発明の若干の態様、利点及び新規特徴が、本明細書に記載された。全てのかかる利点は、本発明のいずれかの特定の実施形態によって必ずしも達成され得るわけでないことが理解されるべきである。それ故に、本発明は、本明細書において教示された一つの利点又は利点群を達成又は最適化し、本明細書において教示又は示唆され得るような他の利点を必ずしも達成しないように具現化又は実行できる。
【0006】
本開示は、次の図面を参照してより良く理解できる。図面の要素は、必ずしも縮尺通りでなく、本開示の原理を明瞭に例示することに代わりに重点が置かれている。更に、同様の参照番号は、幾つもの図を通して対応する部品を指し示す。本出願は、カラーで作成された少なくとも1枚の図面を含む。カラー図面を有するこの特許又は特許出願公報の写しは、請求及び必要な料金の納付により、庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の代表的な実施形態による蒸発器伝熱管の外面の拡大写真である。
図2】表面に形成されたチャネルを有した管の外面の拡大写真である。
図3図2の断面A-Aに沿って切った図2の表面の断面図である。
図4】チャネルに対して角度を付けて切り込みを形成するために、切断操作を受けた管の外面の拡大写真である。
図5図4による切断された(但し圧延されない)表面の平面図を表す。
図6図5の詳細線「C」に沿って切った図5のフィンセグメントの拡大図である。
図7図1の表面の拡大平面図を表す。
図8図7の切断線B-Bに沿って切った図7の表面の断面図である。
図9】先行技術の管と比較した、本開示による凝縮器管の性能データを表す。
図10】先行技術の管と比較した、本開示による蒸発器管の性能データを表す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、蒸発器管として使用される伝熱管(図示せず)の外面11の拡大写真であり、その表面11は、幾分台形の形状をした頂部を有する複数のフィンセグメント12を形成するために、フィンを形成し、切断され、かつ圧延された。フィンの形成、切断及び圧延は、藤掛の米国特許第4,216,826号に開示された技術に類似した技術を使用して達成される。
【0009】
チャネル13は、フィンセグメント12の隣接した列14の間で互いに実質的に平行に延伸する。チャネルは、管の長手方向16に対して角度「α」で形成される。一実施形態において、角度αは、85~89.5度である。
【0010】
切り込み15は、管の長手方向16に対して角度「β」で延伸し、かつフィンセグメント12の境界を定める。この点について、フィンセグメント12は、本明細書で更に論じるように、チャネル14及び切り込み15と対向する側部で境界を接する。角度βは、10度~35度であっても良く、かつ一実施形態において、約15度である。
【0011】
図2は、チャネル13が形成された後、かつ切り込み15(図1)が作られる前の管の外面20の拡大写真である。チャネルは、当技術分野で既知の、かつ特に藤掛で開示された方法を使用して形成される。この点について、フィン形成ディスク工具(図示せず)を有する圧延工具(図示せず)は、フィン21を形成するために、フィンディスクが回転する間、管の表面に押し付けられる。図1に関して以上で論じたように、チャネル13は、管の長手方向16に対して角度α(図1)で配置される。フィン21は、チャネル13によって互いに分離される。
【0012】
図3は、図2の表面20の断面図である。フィン21は、図示したように、チャネル底部30から上方に延伸する。各フィン21は、フィン21の基部32がフィン21の頂部33より広いように角度を付けた側縁部31を含む。フィン21が形成された後、切断ディスク(図示せず)は、切り込み15(図1)を形成するために、表面20に当てられる。
【0013】
図4は、切断操作が完結した後、かつ表面11が圧延される前の、図1の表面11の角度を付けた拡大写真である。図1に関して以上で論じたように、切り込み15は、管の長手方向16に対して角度βで配置される。角度βは、例示した実施形態において一般に15度である。切断操作は、個別のフィンセグメント12を形成する。
【0014】
図5は、切断後、かつ圧延前の図4の表面の平面図である。個別のフィンセグメント12は、チャネル13及び切り込み15によって分離される。
【0015】
図6は、図5の詳細線「C」に沿って切った図5のフィンセグメント12の拡大詳細図である。フィンセグメント12は、切り込み隣接側部61及び62と、チャネル隣接側部60及び63とからなる。側部61~63のいずれも直線を含まないが、側部60は、チャネル13と概して平行である。側部62は、切り込み15と概して平行である。側部61及び62は、コーナ64で互いに接する。コーナ64は、若干鋭く、かつチャネル13の上に引き上げられ、かつチャネル13まで延伸する。
【0016】
工程のこの時点で、フィンセグメント12の切断後、(図4及び図5に描かれたような)管表面は、凝縮器管の用途に理想的である。代わりに蒸発器管表面が望ましいならば、図1に示す表面を生成するために、最終圧延操作が実行される。この点について、切り込み15が形成された後、圧延操作が実行され、それによりローラ(図示せず)は、フィンセグメント12の最終形状(図7)を形成するために、表面に押し当てられる。
【0017】
図7は、対向する側部でチャネル13と、かつ対向する側部で切り込み15と境界を接する複数のフィンセグメント12を示す、図1の蒸発器管表面11の拡大平面図を表す。この点について、各フィンセグメント12は、4つの縁部、すなわちチャネル重複縁部52と対向するチャネル側縁部51と、切り込み重複縁部54と対向する切り込み側縁部53とを含む。チャネル側縁部51は、圧延操作によって引き起こされる、図示するような若干湾曲した縁部を有するが、概してチャネル13に平行である。切り込み側縁部53は、圧延操作によって引き起こされる、図示するような若干湾曲した縁部を有するが、概して切り込み15に平行である。
【0018】
チャネル重複縁部52は、図示するように圧延操作によってチャネル13と少なくとも部分的に重複した。圧延操作は、それ故にチャネル13と重複させるため、チャネル重複縁部52を変形させる。同様に、切り込み重複縁部54は、図示するように圧延操作によって切り込み15と少なくとも部分的に重複した。切り込み重複縁部54は、チャネル重複縁部52に隣接する。切り込み側縁部53は、チャネル側縁部51に隣接する。
【0019】
図8は、図7の切断線B-Bに沿って切った図7の表面11の断面図である。フィンセグメント12のステム86は、チャネル底部82から上方に延伸する。切り込み底部81は、切り込みがチャネルほど深くないので、チャネル底部82の上に配置される。チャネル13と重複するチャネル重複縁部52、及び切り込み15と重複する切り込み重複縁部54(図5)は、ステム86の縁部52及び54、並びに切り込み15の下にキャビティ84を形成する。
【0020】
チャネル重複縁部52は、チャネルに向かって下向きに屈曲し、かつ(参照番号83によって示される)場所によっては、切り込み底部81の下に延伸することもある。
【0021】
図9は、平滑管91と比較した、(図9に「新規表面」と注釈を付した)本開示による3/4インチ凝縮器管92の性能データを表す。管表面の伝熱性能は、表面の熱抵抗を検査することによって評価できる。熱抵抗は、単位面積当たりの熱負荷の種々のレベルで表面効率を評価するために、熱流束範囲に対して示される。低い熱抵抗は、効率的な伝熱工程を示す。
【0022】
図10は、典型的な先行技術構造の表面管71及び平滑管72と比較した、(図10に「新規表面」と注釈を付した)本開示による3/4インチ蒸発器管70の性能データを表す。管表面の伝熱性能は、表面の熱抵抗を検査することによって評価できる。熱抵抗は、単位面積当たりの熱負荷の種々のレベルで表面効率を評価するために、熱流束範囲に対して示される。低い熱抵抗は、効率的な伝熱工程を示す。
【0023】
本開示による蒸発器又は凝縮器管は、一般に沸騰伝熱用途に使用されるが、単一管又は管束は、熱交換器内で使用される。冷媒蒸発器は、開示された表面が使用される一例である。
【0024】
本明細書で論じた実施形態は、強化管表面用である。しかしながら、当業者のように、同じ原理及び方法が、平面を強化するためにも応用できる。
【符号の説明】
【0025】
11 伝熱管の外面(表面)
12 フィンセグメント
13 チャネル
14 列
15 切り込み
20 表面
21 フィン
32 基部
33 頂部
51 チャネル側縁部
52 チャネル重複縁部
53 切り込み側縁部
54 切り込み重複縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10